(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】電池試験装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20220405BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220405BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01R31/392
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020045904
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2020-04-16
(32)【優先日】2019-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】505441638
【氏名又は名称】致茂電子股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Chroma Ate Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】張碩傑
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼哲維
(72)【発明者】
【氏名】林大正
(72)【発明者】
【氏名】鄒明穎
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-258797(JP,A)
【文献】特開2003-9405(JP,A)
【文献】特開2006-306376(JP,A)
【文献】特開2011-135656(JP,A)
【文献】国際公開第2010/029942(WO,A1)
【文献】特開2009-32506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象電池を試験するための電池試験装置であって、
定電圧モード及び定電流モードを有する電源モジュールと、
前記電源モジュールに結合された短絡感知モジュールであって、前記電源モジュールによって
前記対象電池に供給される第1の試験電圧又は第1の試験電流を第1の試験期間の間積分することにより、前記電源モジュールによって供給される第1の出力エネルギーを計算するように構成された、短絡感知モジュールと、を含み、
前記短絡感知モジュールは、前記第1の出力エネルギーが所定のエネルギー範囲を超えているかどうかを判断し、
前記短絡感知モジュールは、前記第1の出力エネルギーが前記所定のエネルギー範囲を超えている場合にエラー信号を生成し、
第2の試験期間の間、前記短絡感知モジュールが前記エラー信号を生成する回数を計算することにより、前記短絡感知モジュールはエラーカウントを生成
し、
前記電源モジュールが前記定電圧モードで動作する場合、前記短絡感知モジュールは、前記電源モジュールによって供給される前記第1の試験電流を積分し、
前記電源モジュールが前記定電流モードで動作する場合、前記短絡感知モジュールは、前記電源モジュールによって供給される前記第1の試験電圧を積分する、電池試験装置。
【請求項2】
前記短絡感知モジュールは前記電源モジュールに結合された帯域通過フィルタを有し、前記帯域通過フィルタは、ある周波数
範囲内の前記第1の試験電圧又は前記第1の試験電流を選択的に抽出するように構成される、請求項
1に記載の電池試験装置。
【請求項3】
前記短絡感知モジュールは前記帯域通過フィルタに結合されたサンプリング回路を更に有し、前記サンプリング回路は、前記第1の試験期間の間、前記周波数
範囲内の前記第1の試験電圧又は前記第1の試験電流を積分するように構成される、請求項
2に記載の電池試験装置。
【請求項4】
対象電池を試験するための電池試験方法であって、
第1の試験電圧又は第1の試験電流を
前記対象電池に供給するように構成された電源モジュールを設けるステップと、
第1の試験期間の間、前記第1の試験電圧又は前記第1の試験電流を積分することにより、第1の出力エネルギーを計算するステップと、
前記第1の出力エネルギーが所定のエネルギー範囲を超えているかどうかを判断するステップと、
前記第1の出力エネルギーが前記所定のエネルギー範囲を超えている場合にエラー信号を生成するステップと、
第2の試験期間の間、前記エラー信号が生成された回数を計算することにより、エラーカウントを生成するステップと、を含
み、
前記電源モジュールは定電圧モード及び定電流モードを有し、
前記電源モジュールが前記定電圧モードで動作する場合、前記電源モジュールによって供給される前記第1の試験電流が積分され、
前記電源モジュールが前記定電流モードで動作する場合、前記電源モジュールによって供給される前記第1の試験電圧が積分される、電池試験方法。
【請求項5】
前記第1の試験期間の間、前記第1の試験電圧又は前記第1の試験電流を積分することにより、前記第1の出力エネルギーを計算する前記ステップの間、
ある周波数範囲内の前記第1の試験電圧又は前記第1の試験電流
が積分される、請求項
4に記載の電池試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年3月18日に出願された台湾特許出願第108109004号明細書の優先権を主張するものであり、該明細書の内容全体が参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、電池試験装置及びその方法に関し、とりわけ、電池内部の短絡を探すものに関する。
【背景技術】
【0003】
電子機器の市場の進化は決して止まることがない。今では、消費者は、新しい製品が従来製品を凌ぎ、電池寿命の点で従来製品よりも長くもつことを期待している。これらの製品に、より大きな容量の電池をより多く組み込むことは、消費者の需要を満たす1つの方法であるが、これにより、安定性、信頼性、及び安全性について電池を試験するという課題ももたらされる。
【0004】
電池の電気的特性は、その電池を一般的な試験装置を用いて繰り返し充放電することで得られる。特に、試験装置は、充電電圧又は充電電流を分析して電池の品質が正常であるかどうかを評価する。しかしながら、上記の試験は、効率面での要件に依存している。試験装置が各対象に費やすことのできる時間が限られている場合、充電電圧又は充電電流には、見過ごされているものの実際には存在する危険要因が存在するはずである。
【0005】
説明のために、絶縁膜を用いて異なる層又は隣接するエネルギー貯蔵ユニットを分離している大容量電池について考える。絶縁膜が破けると、隣接する層又はユニットが短絡し、それによって、充電電圧又は充電電流の特性が直ちに変化する。この変化は非常に僅かなので正確に突きとめることは困難であるが、対象となる電池の安定性及び寿命を不確かなものにする。一般的な試験装置には、明らかに改善の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電源モジュールによって供給される電圧又は電流を積分することによって、電池の内部に短絡があるかどうかを判断する電池試験装置を提供する。
【0007】
本発明は、対象の電池を試験するための電池試験装置を開示する。電池試験装置は、電源モジュール及び短絡感知モジュールを含む。電源モジュールに結合された短絡感知モジュールは、電源モジュールによって供給される第1の試験電圧又は第1の試験電流を第1の試験期間の間積分し、それによって電源モジュールによって供給された第1の出力エネルギーを計算するように構成される。短絡感知モジュールは、第1の出力エネルギーが所定のエネルギー範囲を超えているかどうかも判断する。短絡感知モジュールは、第1の出力エネルギーが所定のエネルギー範囲を超えている場合にエラー信号を生成する。
【0008】
一実施形態では、電源モジュールは定電圧モード及び定電流モードを有する。電源モジュールが定電圧モードで動作する場合、短絡感知モジュールは、電源モジュールによって供給される第1の試験電流を積分する。電源モジュールが定電流モードで動作する場合、短絡感知モジュールは、電源モジュールによって供給される第1の試験電圧を積分する。短絡感知モジュールは帯域通過フィルタを含むことがあり、帯域通過フィルタは電源モジュールに結合され、ある周波数間隔内の第1の試験電圧又は電流を選択的に抽出するように構成される。短絡感知モジュールは、サンプリング回路を更に含むことがあり、サンプリング回路は、帯域通過フィルタに結合され、前述の周波数間隔内の第1の試験電圧又は電流を第1の試験期間の間積分するように構成される。第2の試験期間の間、短絡感知モジュールは、エラー信号を生成する回数を計算し、それによってエラーカウントを生成することがある。
【0009】
本発明は、対象の電池を試験するための電池試験方法も開示する。この電池試験方法は、以下のステップを含む。第1のステップは、第1の試験電圧又は第1の試験電流を供給するように構成された電源モジュールを設けるステップである。第1の試験期間の間、第1の試験電圧又は電流は、第1の出力エネルギーを計算するために積分される。その後、第1の出力エネルギーが所定のエネルギー範囲を超えているかどうかが判断される。その範囲を超えている場合、エラー信号が生成される。
【0010】
要約すると、電源モジュールによって供給される電圧又は電流を積分することにより、本発明による電池試験装置は、電源モジュールの瞬時出力レートを計算し、従って、対象の電池の内部に短絡があるかどうかを判断することができる。同様の能力の試験と比較すると、本発明は内部短絡をより素早く且つより正確に発見する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態による電池試験装置のブロック図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、内部短絡のない対象電池の回路図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による、内部短絡がある対象電池の回路図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、充電電流のオシログラムである。
【
図4】
図3による、充電電流の積分を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、充電電圧のオシログラムである。
【
図6】本発明の別の実施形態による電池試験装置のブロック図である。
【
図7】本発明の一実施形態による電池試験方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴、異議、及び機能について、以下で更に開示する。しかしながら、それは本発明の可能な実施形態のうちの幾つかに過ぎず、本発明の範囲はこれに限定されない。即ち、本発明の特許請求の範囲に従って生成された等価な変更例及び修正例は、本発明の対象のままである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それは本発明の更なる実施可能性とみなされるべきである。
【0013】
ここで
図1を参照する。
図1は、本発明の一実施形態による電池試験装置のブロック図である。
図1に示すように、電池試験装置1は対象電池2に電気的に且つ取り外し可能に接続されて、対象電池2に対して電気的試験を実施する。本実施形態は、対象電池2の種類及び容量に関わらず当てはまる。対象電池2は、携帯電話、タブレットコンピュータ、又はラップトップ用のもののように、少ない容量のものであることがある。或いは、対象電池2は、電気自動車又はかなり大型の機械で使用される大容量電池であり得る。対象電池2は、リチウム系の電池であることがあり、又は、アノード及びカソードが1つ又は複数の絶縁膜によって分離されている、構造的に等価であるが他の材料から作製される電池であり得る。電池試験装置1は、電源モジュール10及び短絡感知モジュール12を含む。モジュール10及び12は、互いに結合されている。電池試験装置1が対象電池2に電気的に接続されている間、電源モジュール10及び短絡感知モジュール12は同様であると言える。
【0014】
電源モジュール10は、対象電池2に、大まかに言って前述の電気的試験で用いられる電気エネルギーを供給するように構成される。一例では、電源モジュール10は商用電源であり、複数のモードでエネルギーを供給する。例えば、電源モジュール10は、定電圧、定電流、又は特定のパターンの電圧若しくは電流で対象電池2を充電するために、定電圧モード、定電流モード、又はユーザ定義モードで動作することができる。電源モジュール10は対象電池2を充電するように構成されるが、対象電池2に対して実施される電気的試験は、充電特性の試験に限定されない。電池試験装置1は、例えば、対象電池2に蓄積された電気エネルギーを消費するように構成された別のモジュールを含むことがある。言い換えると、前述の試験は放電試験を含むことがある。
【0015】
従来の知識によれば、対象電池2の内部短絡を検出することは、特にその短絡が軽微である場合には、容易ではない。内部短絡の影響を説明するために、直近の説明において、対象電池2を等価回路としてモデル化する。
図1、
図2A及び
図2Bを一緒に参照されたい。
図2A及び
図2Bは、本発明の一実施形態による、それぞれ内部短絡がない場合とある場合の対象電池2の回路図である。内部短絡がない場合、対象電池2は、
図2Aに示すように、エネルギー貯蔵ユニットEと抵抗器ユニットRとの単純な組み合わせとして見ることができる。充電電流Iは、電源モジュール10によって供給されるものである。エネルギー貯蔵ユニットE及び抵抗器ユニットRを流れる電流は、I
Rと命名される。対象電池2は定電圧モードで充電され、電源モジュール10はI及び充電電圧Vを供給していると仮定する。当業者であれば、I
Rは充電電流Iと等しいが、両方とも、エネルギー貯蔵ユニットEの電圧がVに近づくにつれて減少することに注目するであろう。
【0016】
対象電池2の等化回路は、ある時点で電池の内部に短絡が発生すると、
図2Bに変わる。
図2Bでは、エネルギー貯蔵ユニットEと抵抗器ユニットRとの組み合わせは、内部短絡抵抗器ユニットR
ISCと並列に接続されている。R
ISCを流れる電流はI
ISCと命名される。キルヒホッフの電流の法則によれば、充電電流IはI
RとI
ISCの総和である。言い換えると、電源モジュール10によって供給される充電電流Iの一部は、突然に発生した内部短絡のせいで分流され、直ちにI
ISCが発生し、I
Rが減少する。電源モジュール10は、定電圧モードでは、充電電流Iをしかるべく上昇させて、ユニットE及びRの両端の合成電圧を維持し、これは、当業者が必要であると分かる反応である。
【0017】
本実施形態では、内部短絡のひどい場合と、存在するもののあまり深刻ではない「微小内部短絡」とを区別することができる。「微小」な場合とは、絶縁膜に裂け目が見つかったもののすぐさま炭化され閉じられた場合などの、短絡の一過性の発生であることがある。又は、絶縁膜が殆ど破れているといっていい程まで薄くなり、従って完全に絶縁していない場合などに、等価抵抗RISCがRよりも大幅に大きくなっている場合でありうる。
【0018】
RISCがRよりも大幅に大きい場合を考える。内部短絡抵抗器ユニットRISCを流れる電流IISCは、抵抗器ユニットRを流れるIRよりも大幅に小さくなる。IISCはIRに比べると無視できるため、IRは充電電流Iそのものとほぼ等しくなる。言い換えると、電源モジュール10の出力であるIの時間変動はかすかであるので、その変動はむしろ、一般的な干渉又は雑音として誤認されることがある。従って、充電電流Iの変動に基づいて微小内部短絡を検出することは殆ど不可能である。本実施形態は、RISC対Rの比を規定しない。RISCはRの10倍、50倍、100倍、又は更には100倍であり得る。
【0019】
電源モジュール10に結合された短絡感知モジュール12は、微小内部短絡の検出を容易にするために存在する。対象電池2は定電圧モードで充電されると依然として仮定して、
図1、
図2B、
図3、及び
図4を一緒に参照する。本発明の一実施形態によれば、
図3は充電電流Iのオシログラムであり、
図4はIの積分を示す。
図3に示すように、期間Δtの間に微小内部短絡が発生し、充電電流Iを変化させる。
図3では、当業者の利便性のために、Δtの間のIの変動は誇張されている。充電電流に対して微小内部短絡により引き起こされる変化は、通常、オシログラムに現れるにはあまりに小さい。いずれにしても、短絡感知モジュール12は、期間Δt(第1の試験期間)の間、電源モジュール10によって供給される充電電流I(第1の試験電流)を積分し、それによって、電源モジュール10によって供給されるエネルギー値Q1(第1の出力エネルギー)を計算する。
【0020】
ここが、本発明と従来技術が異なる点である。従来技術では、雑音による干渉を受けやすい充電電流の変動のみに基づいているので、ターゲットを見落としてしまうことが多い。一方、感知モジュール12の回路は、Δtに渡って充電電流Iに対して直接的に積分を適用して、関連する境界をつけられた領域を取得する。この境界をつけられた領域は、当業者であれば思い起こすように、Δtの間に電源モジュール10によって供給される電気の総量である。電気の総量は、エネルギー値Q1に関係する。モジュール12は、積分を使用しているおかげで、微小内部短絡により敏感である。
【0021】
更に、短絡感知モジュール12は、Q1が所定のエネルギー範囲を超えているかどうかを判断する。Q1が所定のエネルギー範囲を超えている場合、短絡感知モジュール12はエラー信号を生成する。微小内部短絡が全くない場合を考える。Δtに渡ってIを積分した後で感知モジュール12が計算するエネルギー値は、たとえ充電電流Iが雑音による干渉のせいで多少変動するとしても、所定の範囲内に収まるはずである。言い換えると、短絡感知モジュール12が、Q1が所定のエネルギー範囲を超えていないと判断することは、モジュール12が期間Δtの間に対象電池2における微小内部短絡を発見しないのと同じことであり、従って、エラー信号は生成されない。逆に、短絡感知モジュール12が、Q1が所定のエネルギー範囲を超えたと判断した場合、モジュール12は、Δtの間に対象電池2に微小内部短絡が発生したとみなし、エラー信号を生成する。
【0022】
実際には、電池試験装置1が対象電池2に対して行う電気的試験は、通常、ある持続した期間(第2の試験期間)の間継続する。この試験は、例えば、数分間又は数時間の連続的な充電であり得る。第2の試験期間の間、短絡感知モジュール12は、第1の試験期間(これはΔtと同じ程度の長さであり得る)毎に、充電電流Iをそれぞれ積分する。微小内部短絡が幾つかの第1の試験期間中に発生した場合、モジュール12は、エラー信号を複数回生成することが期待される。電池試験装置1は、電気的試験の間に短絡感知モジュール12がエラー信号を生成する回数を計算することにより、エラーカウントを生成することができる。次いで、そのエラーカウントは、対象電池2の品質又は健全性のしるしとして機能することができる。試験中、エラーカウントが首尾よく第1の閾値未満に留まった場合、試験装置1は、例えば、対象電池2を出荷用に適していると記録することがある。逆に、試験装置1は、試験中にエラーカウントが第2の閾値を超えた場合に、対象電池2を不良品として記録することがある。
【0023】
別の例では、エラーカウントは、電池試験装置1が中断するサインとして機能することができる。試験中に第2の閾値が超えられたと想定する。対象電池2を不良品として記録するのに加えて、電池試験装置1は、微小内部短絡が繰り返し発生するせいで、対象電池2をもはや充電には適していないと判断することもある。充電試験の実行を押し通すと、対象電池2が過熱することがあり、更には試験装置1自体を危険にさらすことがあり、結果としてより多くの損傷につながり得る。当然ながら、エラーカウントが第2の閾値を超え、且つ対象電池2が不良品であると記録されたという事実は、試験を中断するのに十分な根拠である。なお、第1及び第2の閾値の正確な値は、当業者にとっては設計上の選択の問題であり、本実施形態は、その設計上の選択には何の制限も課さない。
【0024】
そして、電池試験装置1のユーザには、所定のエネルギー範囲を指定する自由があることにも留意されたい。この範囲は、背景雑音、又は対象電池2が微小内部短絡に対してどの程度耐性があるか、に照らして設定されることがある。エネルギー値Q1は、充電電流Iの変動及び期間Δtに関連していることを思い起こされたい。内部短絡抵抗RISCが小さくなるほど、Iにおける変動が大きくなる。微小内部短絡がどれ位長く続くかは、Δtの長さと正の相関関係がある。従って、エネルギー範囲を予め決めるときにユーザが考慮に入れることができる複数の要因がある。そのような要因の1つは、対象電池2における微小短絡の発生に関して登録された最小のRISCである。別の要因は、微小内部短絡によって維持される最長時間である。本実施形態は所定のエネルギー範囲の上限及び下限を規定してはおらず、これらの上限及び下限は異なる対象電池に対応するように調節することができる。
【0025】
電源モジュール10は様々なモードで動作できることを思い起こされたい。従って、短絡感知モジュール12は、Δtの間に充電電流Iを積分する必要はない。その代わりに、短絡感知モジュール12は、Δtに渡って充電電圧Vを(適切な変換の後で)積分することにより、エネルギー値を計算することがある。対象電池2は定電流モードで充電されると仮定して、
図1、
図2B、及び
図5を参照する。本発明の一実施形態によれば、
図5は充電電圧Vのオシログラムである。
図5に示すように、期間Δtの間に微小内部短絡が発生し、充電電圧Vを変化させる。Δtの間のVの変動は、
図5では誇張されており、内部短絡抵抗R
ISCはさしあたり未知であることを考慮して、エネルギー貯蔵ユニットE及び抵抗器ユニットRを流れる電流であるI
Rは減少するということを反映している。I
Rを安定させるために、電源モジュール10はより多くの充電電流Iを供給しなくてはならず、これは、当業者が同情する反応である。
【0026】
短絡感知モジュール12の回路を用いれば、Vの変動を電源モジュール12に必要とされる余分なIに変換することが実現可能になり、この変換は、f(v)で示される関数の形式をしている。期間Δtに渡って前述の関数を積分すると、Δtの間に電源モジュール10によって供給された電気の総量が得られる。その量は、図には示されていないエネルギー値Q2に関係する。充電電流Iは充電電圧Vの関数であるので、Δtに渡るIの積分は、Iをf(v)で置き換えることによって達成することができる。言い換えると、期間Δtの間Vを積分することによりエネルギー値Q2を計算することは、理にかなった案である。その動作を処理するために、短絡感知モジュール12は、Q2が所定のエネルギー範囲を超えているかどうかを判断する。Q2が所定のエネルギー範囲を超えている場合、感知モジュール12はエラー信号を生成する。重要な点は、感知モジュール12は、電源モジュール10がどのモードで動作していようと、電源モジュール10からの充電電圧V又は電流Iを参照することにより、対象電池2の微小内部短絡を検出し、従って欠陥がもしあればそれを正確に発見することができる、ということである。
【0027】
短絡感知モジュール12は、基本的に、充電電圧V又は電流Iの変動を検出するように構成される。従って、モジュール12はその実装に帯域通過フィルタ及びサンプリング回路を更に組み込んで、雑音による干渉を低減することが望ましい。
図1及び
図6を一緒に参照されたい。
図6は、本発明の別の実施形態による電池試験装置のブロック図である。
図6が示すように、短絡感知モジュール12は、帯域通過フィルタ120及びサンプリング回路122を含むことがある。帯域通過フィルタ120は電源モジュール10に結合されており、サンプリング回路122は帯域通過フィルタ120に結合されている。定義により、帯域通過フィルタ120は、関連する周波数間隔の外側の信号を除去する。この周波数間隔は、50Hz~500Hzの間に設定されることがある、というのも、実際には、電源モジュール10からの充電電圧V又は電流Iの変動は、その範囲内に概ね含まれるからである。言い換えると、帯域通過フィルタ120は、処理しなくてはならない信号の量を減らそうとして、50Hzを下回る低周波雑音及び500Hzを上回る高周波雑音を破棄する。
【0028】
一例では、帯域通過フィルタ120は、周波数間隔内の充電電圧V又は電流Iの変動を抽出し、そのフィルタリングされたV又はIをサンプリング回路122に供給する。期間Δtの間、サンプリング回路122はフィルタリングされたV又はIを積分し、それによって電源モジュール10によって供給されたエネルギー値を計算する。サンプリング回路122は、Δtの間フィルタリングされたV又はIの最大変動を記録し、ひいては積分されたエネルギー値を生成するように構成された、ピーク値保持型のものであり得る。当然ながら、当業者がサンプリング回路122として手に入れることができる他のタイプの積分回路もある。
【0029】
本発明の電池試験方法の概要について、
図1、
図2A、
図2B、及び
図7を一緒に参照されたい。本発明の一実施形態によれば、この方法は対象電池2を試験するためのものであり、
図7に図示されるような以下のステップを含む。ステップS30で設けられる電源モジュール10は、第1の試験電圧又は第1の試験電流、特に充電電圧V又は電流Iを供給するように構成される。充電電流Iは、エネルギー貯蔵ユニットE及び抵抗器ユニットRを流れる電流であるI
Rに等しい。対象電池2は定電圧モードで充電されると仮定すると、次いでステップS32で、短絡感知モジュール12は、期間Δt(第1の試験期間)の間、電源モジュール10によって供給される充電電流I(第1の試験電流)を積分することにより、電源モジュール10によって供給されるエネルギー値Q1(第1の出力エネルギー)を計算する。短絡感知モジュール12は、ステップS34で、Q1が所定のエネルギー範囲を超えているかどうかを更に判断する。Q1が所定のエネルギー範囲を超えている場合、ステップS36で、短絡感知モジュール12はエラー信号を生成する。ステップS38で、第2の試験期間の間、短絡感知モジュール12がエラー信号を生成する回数を計算することにより、短絡感知モジュール12はエラーカウントを生成する。なお、これらのステップについては、前の実施形態において既に詳細に説明しており、ここでは繰り返さない。
【0030】
要約すると、本発明の電池試験装置は、前述の充電電圧又は電流を積分することによりエネルギー値を計算し、そのエネルギー値が所定のエネルギー範囲を超えているかどうかを判断し、それによって、対象電池の内部の短絡などの異常を機敏に発見する、短絡感知モジュールを有する。
【符号の説明】
【0031】
1 電池試験装置
2 対象電池
10 電源モジュール
12 短絡感知モジュール
120 帯域通過フィルタ
122 サンプリング回路
E エネルギー貯蔵ユニット
R 抵抗器ユニット
RISC 内部短絡抵抗器ユニット