(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】デニムの加工方法、および、デニム製品の生産方法
(51)【国際特許分類】
D06M 11/34 20060101AFI20220405BHJP
D06P 7/00 20060101ALI20220405BHJP
D06B 1/02 20060101ALI20220405BHJP
D06M 101/06 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
D06M11/34
D06P7/00
D06B1/02
D06M101:06
(21)【出願番号】P 2020051374
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】397030455
【氏名又は名称】株式会社エドウイン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】及川 典実
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081993(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109505172(CN,A)
【文献】米国特許第05611816(US,A)
【文献】特開2016-128619(JP,A)
【文献】特開2004-068170(JP,A)
【文献】特表2012-514139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 11/00-15/715
D06P 1/00-7/00
D06B 1/00-1/16
D06L 1/00-4/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デニムの加工方法であって、
デニムをオゾン処理装置に投入する工程と、
オゾンを用いてデニムの糊抜きを行なう工程と、
前記糊抜き後のデニムを洗濯機に投入する工程と、
前記洗濯機内で水を循環させて、ジェット噴射によって当該水を前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第1すすぎ工程と、
新たな水を前記洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該新たな水を前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第2すすぎ工程と、
水と堅牢度向上剤とを混ぜ合わせる工程と、
前記混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを前記洗浄されたデニムに繰り返し吹きかける仕上げ工程とを含む、デニムの加工方法。
【請求項2】
前記第1すすぎ工程の後に、酵素が含まれた水を前記洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該酵素が含まれた水を前記デニムに拭きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出するバイオウォッシュ工程をさらに含む、請求項1に記載のデニムの加工方法。
【請求項3】
染料が含まれる水を洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該染料が含まれる水を前記デニムに吹きかけて当該デニムを染色する染色工程をさらに含む、請求項1または2に記載のデニムの加工方法。
【請求項4】
前記第2すすぎ工程の後に、オゾンを用いて漂白する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載のデニムの加工方法。
【請求項5】
前記仕上げ工程の後に、オゾンを用いて汚染除去を行なう工程をさらに含む、請求項1~4のいずれかに記載のデニムの加工方法。
【請求項6】
デニムの加工方法であって、
デニムをオゾン処理装置に投入する工程と、
オゾンを用いてデニムの糊抜きを行なう工程と、
前記糊抜き後のデニムを洗濯機に投入する工程と、
前記洗濯機内に酵素と水とを注入し、当該酵素が溶けた水を循環させながらジェット噴射によって前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する工程と、
前記デニム製品を脱水する工程と、
前記デニム製品をオゾン処理装置に投入し、オゾンを用いて前記デニム製品を洗浄する脱色工程と、
前記デニム製品を洗濯機に投入し、前記洗濯機に洗剤と水とを注入し、前記洗剤が溶けた水を循環させながら、ジェット噴射によって当該水を前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する工程と、
前記洗濯機内で新たな水を循環させながら、ジェット噴射によって当該新たな水を前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出するすすぎ工程と、
前記デニム製品をオゾン処理装置に投入し、オゾンを用いて前記デニム製品を洗浄する汚染除去工程と、
前記洗濯機に新たな水と堅牢度向上剤とを注入し、前記堅牢度向上剤が溶けた水を循環させながら、ジェット噴射によって前記堅牢度向上剤が溶けた水を前記デニム製品に繰り返し吹きかける仕上げ工程とを含む、デニムの加工方法。
【請求項7】
前記糊抜きを行う工程で使用されるオゾンの濃度は、前記脱色工程で使用されるオゾンの濃度よりも高く、
前記脱色工程で使用されるオゾンの濃度は、前記汚染除去工程で使用されるオゾンの濃度よりも高い、請求項6に記載のデニムの加工方法。
【請求項8】
デニム製品の生産方法であって、
デニムをオゾン処理装置に投入する工程と、
オゾンを用いてデニムの糊抜きを行なう工程と、
前記糊抜き後のデニムを洗濯機に投入する工程と、
前記洗濯機内で水を循環させて、ジェット噴射によって当該水を前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第1すすぎ工程と、
新たな水を前記洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該新たな水を前記デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第2すすぎ工程と、
水と堅牢度向上剤とを混ぜ合わせる工程と、
前記混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを前記洗浄されたデニムに繰り返し吹きかける仕上げ工程とを含む、
デニム製品の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はデニムの加工方法に関し、より特定的には、環境への負担が軽減される加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジーンズに使用されるデニムは、糊抜き、すすぎ、漂白、染色、仕上げ、等の加工が行なわれる。ジーンズの加工に関し、例えば、特開2004-324015号公報(特許文献1)は、「ジーンズ製品の色抜きを安全で低コストに行なう」技術を開示している([要約]参照)。また、特開2009-007680号公報(特許文献2)は、特開「洗濯での色の脱落(変化)の少ないデニム生地(建染染色布帛)を作る」ための技術を開示している([要約]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-324015号公報
【文献】特開2009-007680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各工程では、大量の水が使用され、また、工程によっては、水を加熱するためのエネルギーが必要となる。そのため、環境負荷の増大が問題となっている。
【0005】
本開示は上述のような背景に鑑みてなされたものであって、ある局面に従う目的は、水の使用量が削減されるデニムの加工方法を提供することである。他の局面に従う目的は、加工時間が短縮されるデニムの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある実施の形態に従うと、デニムの加工方法が提供される。この加工方法は、デニムをオゾン処理装置に投入する工程と、オゾンを用いてデニムの糊抜きを行なう工程と、糊抜き後のデニムを洗濯機に投入する工程と、洗濯機内で水を循環させて、ジェット噴射によって当該水をデニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第1すすぎ工程と、新たな水を洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該新たな水をデニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第2すすぎ工程と、水と堅牢度向上剤とを混ぜ合わせる工程と、混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを洗浄されたデニムに繰り返し吹きかける仕上げ工程とを含む。
【0007】
ある局面において、当該加工方法は、第1すすぎ工程の後に、酵素が含まれた水を洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該酵素が含まれた水をデニムに拭きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出するバイオウォッシュ工程をさらに含む。
【0008】
ある局面において、当該加工方法は、染料が含まれる水を洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該染料が含まれる水をデニムに吹きかけて当該デニムを染色する染色工程をさらに含む。
【0009】
ある局面において、当該加工方法は、第2すすぎ工程の後に、オゾンを用いて漂白する工程をさらに含む。
【0010】
ある局面において、当該加工方法は、仕上げ工程の後に、オゾンを用いて汚染除去を行なう工程をさらに含む。
【0011】
他の実施の形態に従うと、上記のいずれかの加工方法により製造されたデニム製品が提供される。
【発明の効果】
【0012】
ある実施の形態に従うと、デニムの加工において、水の使用量が削減される。また、デニムの加工時間が短縮される。
【0013】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ある局面に従う洗濯機100,110の構成を表わす図である。
【
図2】洗濯機110の洗濯槽111の上部構成の概要を表わす図である。
【
図3】ある局面に従う加工方法の手順を表わすフローチャートである。
【
図4】二つの加工方法の対比を表わす表400を示す図である。
【
図5】他の二つの加工方法の対比を表わす表500を示す図である。
【
図6】ある実施の形態に従うデニムの加工工程を表わすフローチャートである。
【
図7】ある実施の形態に従う加工方法E,Fの工程を表わす図である。
【
図8】デニム製品の加工のために使用される水を再利用可能なシステム800の概要を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0016】
[洗濯機の構成]
図1および
図2を参照して、デニムの加工に使用される洗濯機の構成について説明する。
図1(A)は、ある局面に従う洗濯機100の構成の概要を表わす図である。
図1(B)は、他の局面に従う洗濯機110の構成の概要を表わす図である。
【0017】
図1(A)に示されるように、洗濯機100は、洗濯槽101を含む。洗濯槽101には、加工対象のジーンズが投入され、さらに、デニムを洗浄する水が注入される。洗濯機100は、洗濯槽101の内部を攪拌する機構を有し、デニムおよび水を攪拌して対流を発生することで、デニムを洗浄する。洗濯機100の構成は、洗濯槽101の大きさおよび投入されるデニムの量に応じた水を必要とする。
【0018】
図1(B)を参照して、洗濯機110は、洗濯槽111に加えて、ホース112を備える。ホース112は、洗濯槽111の下部に形成された排水口(図示しない)と、洗濯槽上部の給水口(図示しない)との間に設けられる。洗濯槽111の下部に溜まった水は、ポンプ(図示しない)によって給水口に吸い上げられ、再度、洗濯槽111の内部に供給される。このように洗濯機110は、水が内部で循環するように構成されているので、水の使用量を抑制することができる。
【0019】
また、給水口の先端には、ジェット噴射のためのノズル(図示しない)が設けられている。これにより、水は、選択の対象となるデニム全体に吹きかけられやすくなるので、洗濯時間を短くすることができる。
【0020】
図2は、洗濯機110の洗濯槽111の上部構成の概要を表わす図である。洗濯機110は、洗濯槽111の上部にノズル210を備える。ノズル210は、ジェット噴射可能に構成されている。ある局面において、ノズル210は、ホース112から供給される水を円錐状に飛散させるように構成されている。他の局面において、ノズル210は、水を噴霧可能に構成されていてもよい。
【0021】
図3を参照して、ある局面に従うデニムの加工方法について説明する。
図3は、デニムの加工方法の概要を表わすフローチャートである。
【0022】
ステップS310にて、デニム製品(例えばジーンズ)がオゾン処理機に投入される。
【0023】
ステップS320にて、糊抜き工程の準備が行なわれる。糊抜き工程は、オゾン処理によりデニム生地の表面に固着した糊分子の結合を分離させる工程である。当該処理によりデニム生地の表面から糊を除去し易くすることが可能となる。
【0024】
ステップS330にて、デニム製品が洗濯機110に投入される。
【0025】
ステップS340にて、第1すすぎ工程が洗濯機110で行なわれる。洗濯機110は、洗濯槽111に注入された一定量(例えば150リットル)の水を循環させることによりジェット噴射して、洗濯槽111に投入されたデニムに水を噴霧する。当該処理によりデニム生地の表面に付着した糊が除去される。その後、洗濯機110の水は排出され、新たな水が注入される。
【0026】
ステップS350にて、第2すすぎ工程が洗濯機110で行われる。第2すすぎ工程では、第1すすぎ工程で行われる洗浄と同じ洗浄が行なわれる。
【0027】
ステップS360にて、薬品タンクに堅牢度向上剤が投入される。ある局面において、堅牢度向上剤は、ワンウォッシュ製品にのみ使用される。
【0028】
ステップS370にて、水と堅牢度向上剤が混合される。
【0029】
ステップS380にて、仕上げ工程が行なわれる。
【0030】
ステップS390にて、脱水工程が行なわれる。その後、デニム製品は乾燥機(図示しない)に投入され、予め定められた温度で乾燥が行なわれる。
【0031】
【0032】
[デニムの加工工程]
図4を参照して、デニムの加工方法について説明する。
図4は、二つの加工方法の対比を表わす表400を示す図である。
【0033】
[加工方法A]
ある局面に従う加工方法Aは、洗濯機100を用いて行なわれる。加工方法Aは、つけ込み工程と、洗い工程と、第1すすぎ工程と、脱水工程と、乾燥工程と、オゾン工程と、第2すすぎ工程と、仕上げ工程と、脱水工程と、乾燥工程とを含む。
【0034】
つけ込み工程では、例えば、3分間に、1,800リットルの水が使用される。洗い工程では、例えば、3分間に800リットルの水が使用される。洗い工程では、デニムの糊抜きが行なわれる。第1すすぎ工程では、例えば、5分間に1,800リットルの水が使用される。
【0035】
脱水工程の処理時間は、例えば3分であり、水は使用されない。乾燥工程の処理時間は、例えば60分であり、水は使用されない。オゾン工程の処理時間は、例えば10分であり、水は使用されない。オゾン工程では汚染除去が行なわれる。
【0036】
第2すすぎ工程では、例えば、2分間に1,200リットルの水が使用される。仕上げ工程では、例えば5分間に800リットルの水が使用される。
【0037】
脱水工程の処理時間は、例えば3分であり、水は使用されない。乾燥工程の処理時間は、例えば60分であり、水は使用されない。
【0038】
図4に例示される加工方法Aにおいて使用される水量の合計は、6,400リットルとなる。
【0039】
[加工方法B]
次に、ある実施の形態に従う加工方法Bは、洗濯機110を用いて行なわれる。加工方法Bは、オゾン工程(ステップS310)と、第1すすぎ工程(ステップS340)と、第2すすぎ工程(ステップS350)と、仕上げ工程(ステップS380)と、脱水工程(ステップS390)と、乾燥工程とを含む。加工方法Bは、水循環ジェットシステムを用いて実現される。水循環ジェットシステムでは、水の使用量を抑制するために、洗濯機110の浴槽に注入された最小限の水が循環し、その水は、ジェット噴射により洗濯槽に供給される。
【0040】
オゾン工程(「糊抜き工程」ともいう。)の処理時間は、約10分間である。オゾン工程では、糊抜きの準備として、デニムに付着している糊を浮かす処理が行なわれ、水は使用されない。ある局面において、オゾン処理機として、Jeanologia社のG2型機が使用される。より具体的には、G2型機は、空気からオゾンを生成し、そのオゾンの酸化作用を利用してデニムに付着していた糊を当該デニムから遊離する。オゾン加工に使用されたオゾンは酸素に戻る。オゾン加工により有害な洗浄剤が使用されなくなり、また、水が使用されなくなるので、環境への負荷が軽減される。オゾン加工後のデニムは、すすぎのため、洗濯機に投入される。洗濯機の一例は、Tonello社のG1-325型である。
【0041】
第1すすぎ工程の処理時間は、約5分間である。第1すすぎ工程では、約40℃の水(約150リットル)が、洗濯機110の洗濯槽111に注入される。洗濯機110のポンプ(図示しない)は、この水を循環させて、デニムに対してジェット噴射することにより、すすぎ加工を行なう。すすぎ加工に使用された水は、排水され、続いて、第2すすぎ工程が行なわれる。なお、第1すすぎ工程に使用される水の温度は、上記の例に限られない。約40℃より高い温度、または、40℃よりも低い温度のいずれであってもよい。
【0042】
第2すすぎ工程の処理時間は、約5分間である。第2すすぎ工程では、30℃の水(約150リットル)が、洗濯槽111に注入される。洗濯機110は、第1すすぎ工程と同様に、約150リットルの水を循環させて、デニムに対してジェット噴射することにより、すすぎ加工を行なう。すすぎ加工に使用された水は、排水される。なお、第2すすぎ工程に使用される水の温度は、上記の例に限られない。約30℃より高い温度、または、30℃よりも低い温度のいずれであってもよい。
【0043】
仕上げ工程の処理時間は、約5分間である。仕上げ工程では、まず、その準備として、薬品(堅牢度向上剤EX-5)が、薬品タンクに注入される。次に、約40℃の水(約150リットル)が洗濯槽111に注入される。薬品が薬品タンクから洗濯機110に投入される。洗濯機110は、水と薬品とを混ぜ合わせる。さらに、洗濯機110は、薬品が混ぜ合わされた水を循環させて、デニムに対してジェット噴射を約5分間繰り返す。その後、水は排水される。
【0044】
脱水工程の処理時間は、約3分間である。脱水工程では、洗濯機110は、洗濯槽111の回転数を高くすることにより、デニムの脱水を行なう。脱水工程は、例えば3分間行なわれる。脱水工程が終わると、デニムは、洗濯機110から取り出され、乾燥機に投入される。
【0045】
乾燥工程の処理時間は、約60分間である。乾燥工程では、デニムは、約100℃の温度で乾かされる。デニムは乾燥機から取り出される。その後、所定の検査が行なわれる。
【0046】
以上のようにして、ある実施の形態に従う加工方法Bによれば、約450リットルの水が使用される。これに対して、加工方法Aによる水の使用量は、約6,400リットルであるので、加工方法Bによれば、水の使用量は大幅に削減される。また、加工方法Bは、約88分で完了する。これに対して、加工方法Aによる加工時間は、約154分であるので、加工方法Bによれば、加工時間も短縮される。
【0047】
[デニムの加工工程]
図5を参照して、デニムの他の加工方法について説明する。
図5は、他の二つの加工方法の対比を表わす表500を示す図である。各加工方法では、100本のデニムが加工される。以下では、品番E403-40の加工例が示される。
【0048】
[加工方法C]
ある局面に従う加工方法Cは、洗濯機100を用いて行なわれる。加工方法Cは、つけ込み工程と、糊抜き工程と、第1すすぎ工程と、BIO洗い工程と、第2すすぎ工程と、ブリーチ工程と、第3すすぎ工程と、中和工程と、第4すすぎ工程と、染色工程と、FIX工程と、ソーピング工程と、第5すすぎ工程と、第6すすぎ工程と、仕上げ工程とを含む。
【0049】
つけ込み工程では、例えば、10分間に、1,800リットルの水が使用される。糊抜き工程では、例えば、10分間に1,200リットルの水が使用される。
【0050】
第1すすぎ工程では、約5分間に1,800リットルの水が使用される。BIO洗い(バイオウォッシュ)工程では、約20分間に、1,200リットルの水が使用される。BIO洗い工程は、新品のデニムを着古したように加工する。ある局面において、BIO洗い工程は、セルロースを溶かす「セルラーゼ」という酵素が使用される。BIO洗い工程は、所謂ストーンウォッシュ工程よりも、デニムの傷みが抑制され得る。
【0051】
第2すすぎ工程では、約5分間に1,800リットルの水が使用される。ブリーチ工程では、約15分間に、2,000リットルの水が使用される。第3すすぎ工程では、約5分間に1,800リットルの水が使用される。中和工程では、約10分間に1,800リットルの水が使用される。第4すすぎ工程では、約5分間に1,800リットルの水が使用される。
【0052】
染色工程では、約20分間に1,200リットルの水が使用される。FIX工程では、約10分間に1,800リットルの水が使用される。FIX工程では、染料がデニムに定着する。ソーピング工程では、約10分間に1,200リットルの水が使用される。ソーピング工程は、デニムの加工後に石けん溶液をデニムの表面に噴射して、繊維の表面に付着している不要な染料、樹脂またはその他の表面付着物が除去される。第5すすぎ工程では、約5分間に1,800リットルの水が使用され、デニムが洗浄され、ソーピング工程で付着した石けん溶液が除去される。第6すすぎ工程では、約5分間に1,800リットルの水が使用される。これにより、デニムがさらに洗浄される。仕上げ工程では、約10分間に1,200リットルの水が使用される。
【0053】
以上より、加工方法Cによれば、約150分の間に26,000リットルの水が使用される。デニム製品、すなわち、ジーンズ1本あたり、260リットルの水が使用されることになる。
【0054】
[加工方法D]
他の実施の形態に従う加工方法Dは、オゾン(糊抜き)工程(ステップS320)と、第1すすぎ工程(ステップS340)と、BIO洗い工程と、第2すすぎ工程(ステップS350)と、漂白工程と、染色工程と、第3すすぎ工程と、FIX工程と、ソーピング工程と、第4すすぎ工程と、第5すすぎ工程と、仕上げ工程(ステップS380)と、汚染除去工程とを含む。
【0055】
オゾン工程の処理時間は、約10分間である。加工方法Dのオゾン工程では、加工方法Bにおけるオゾン工程の処理と同様のオゾン処理機を用いて、糊抜きが行なわれる。
【0056】
第1すすぎ工程の処理時間は、約5分間である。加工方法Dの第1すすぎ工程では、加工方法Bの第1すすぎ工程における処理と同様の処理が行なわれる。より具体的には、洗濯機110は、約40度の水を循環させてジェット噴射することによりデニムを洗浄する。
【0057】
BIO洗い工程では、約20分間に、150リットルの水が使用される。加工方法DのBIO洗い工程では、加工方法CのBIO洗い工程における処理と同様の処理が行なわれる。
【0058】
第2すすぎ工程の処理時間は、約5分間である。加工方法Dの第2すすぎ工程では、加工方法Bの第2すすぎ工程における処理と同様の処理が行なわれる。より具体的には、洗濯機110は、約30度の水を循環させてジェット噴射することによりデニムを洗浄する。
【0059】
漂白工程の処理時間は約10分である。漂白工程は、オゾン漂白を使用する。オゾン漂白によれば、低温でオゾンとデニムとが反応することにより漂白されるので、漂白のための薬品使用を抑制できる。また、オゾン漂白では水は使用されないので、従来の漂白により使用された排水による環境負荷がなくなる。
【0060】
染色工程の処理時間は、約20分である。染色工程では、インディゴ染料を用いた染色が行なわれる。染色工程では、150リットルの水が使用される。ある局面において、デニムは、密閉式の染色槽(図示しない)に投入される。染色槽は、洗濯機110と同様に染料を循環させることにより染料をジェット噴射して、デニムを染色する。その後、デニムは、染色槽から取り出されて、第3すすぎ工程用の洗濯機110に投入される。
【0061】
第3すすぎ工程の処理時間は、約5分である。第3すすぎ工程では、約150リットルの水が使用される。第3すすぎ工程で使用される洗濯機110は、第1すすぎ工程または第2すすぎ工程で使用される洗濯機110と同様に、水を循環させることによりジェット噴射して、染色後のデニムのすすぎが行なわれる。
【0062】
FIX工程の処理時間は、約10分である。デニムは、FIX工程のための洗濯機110に投入され、150リットルの水が注入される。洗濯機110は、水を循環させることによりジェット噴射する。FIX工程の後、デニムはソーピング工程のための洗濯機110に投入される。
【0063】
ソーピング工程の処理時間は、約10分である。ソーピング工程では、約150リットルの水が使用される。ある局面において、洗濯機110は、比較的温度の高いセッケン溶液(例えば、40℃~60℃)を循環させることによりジェット噴射して、ソーピングを行う。ソーピングが行なわれると、染色後にデニムの表面に付着している不要な染料あるいは樹脂、その他の表面付着物が取り除かれる。ソーピングには、例えばセッケンが用いられますが、アルカリが添加されている合成洗剤などが使用されてもよい。ソーピング工程が終了すると、デニムは、ソーピング工程のための洗濯機110から取り出されて、第4すすぎ工程のための洗濯機110に投入される。この洗濯機110は、第1~第3すすぎ工程で使用される洗濯機110と同じでもよく、他の局面において、異なっていてもよい。
【0064】
第4すすぎ工程の処理時間は、約5分間である。第4すすぎ工程では、第1すすぎ工程における処理と同様の処理が行なわれる。より具体的には、洗濯機110は、約40度の水を循環させてジェット噴射することによりデニムを洗浄する。第4すすぎ工程が終了すると、すすぎに使用された150リットルの水は、洗濯機110から排出される。その後、第5すすぎ工程のために、新たに150リットルの水が洗濯槽111に注入される。
【0065】
第5すすぎ工程の処理時間は、約5分間である。第5すすぎ工程では、第4すすぎ工程における処理と同様の処理が行なわれる。より具体的には、洗濯機110は、約30度の水を循環させてジェット噴射することによりデニムを洗浄する。なお、第5すすぎ工程の水温は、第4すすぎ工程で使用される水の温度と同じでもよく、または、異なっていてもよい。第5すすぎ工程が終了すると、すすぎに使用された150リットルの水は、洗濯機110から排出される。その後、仕上げ工程のために、新たに150リットルの水が洗濯槽111に注入される。
【0066】
仕上げ工程の処理時間は、約10分間である。仕上げ工程では、約150リットルの水が使用される。仕上げ工程では、洗濯機110は、約40度の水を循環させてジェット噴射することによりデニムを洗浄する。仕上げ工程が終了すると、デニムは洗濯機110から取り出されて、オゾン処理機に投入される。オゾン処理機は、オゾン工程で使用されるものである。
【0067】
オゾン工程の処理時間は、約10分間である。オゾン工程により、デニムから汚染物が除去される。オゾン工程が終了すると、デニムはオゾン処理機から取り出される。
【0068】
以上のようにして、ある実施の形態に従う加工方法Cによれば、約150分の間に26,000リットルの水が使用される。他方、加工方法Dによれば、約125分の間に1,500リットルの水が使用される。デニム製品、すなわち、ジーンズ1本あたり、150リットルの水が使用されることになる。加工方法Dによる水の使用量は、加工方法Cによる水の使用量と比べると、約94%少なくなる。また、洗濯機110で使用される水の量が従来の工程で使用される水の量(例、1,200リットル、1,800リットル、2,000リットル等)よりも大幅に少なくなるので、水温を高くするためのエネルギーの消費量を抑制することができる。
【0069】
なお、洗濯機110は、各工程毎に当該工程専用の洗濯機が使用されてもよく、あるいは、別の局面において、すすぎ工程は1つの洗濯機110で行なわれ、その他の工程は各工程に固有の洗濯機110で行なわれてもよい。
【0070】
図6は、ある実施の形態に従うデニムの加工工程を表わすフローチャートである。この加工工程は、水循環ジェットシステムを用いて実現される。
【0071】
ステップS610にて、糊抜き工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品をオゾン機(例えば、Jeanologia社製G2)に投入し、オゾンガスで洗浄して、デニムから糊抜きを行なう。このとき、水は使用されない。オゾン濃度は約48%である。この工程は、約10~15分、例えば約11分行なわれる。
【0072】
ステップS615にて、BIO工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品を洗濯機(例えば、トネロ社製 G1-325)に投入する。洗濯機のタンクには温水(約50℃、約150リットル)が溜められている。オペレーターは、そのタンクに酵素(1リットル当たり1g)を溶かす。洗濯機は、酵素が溶けた温水を循環させながら、ジェット噴射によりデニム製品を洗浄する。この工程は、約35~40分、例えば約38分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。温水を循環させる回数は、例えば、循環ポンプの吐出能力と、洗濯機に投入されるデニム製品の量とに基づいて決定され得る。
【0073】
ステップS620にて、脱水工程が行なわれる。洗濯機は遠心分離によりデニム製品を脱水する。この工程は、約5~10分、例えば約5分行なわれる。
【0074】
ステップS625にて、失活および脱色工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品をオゾン機(例えば、Jeanologia社製G2)に投入する。オゾン機は、オゾンガスを用いてデニム製品を洗浄し、上記酵素が有する機能を失わせる失活と、脱色とを行なう。水は使用されない。オゾンガスの濃度は、約33%である。この工程は、約10~15分、例えば約13分行なわれる。
【0075】
ステップS630にて、洗い工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品を洗濯機(例えば、トネロ社製 G1-325)に投入する。洗濯機のタンクには温水(約60℃、約150リットル)が溜められている。オペレーターは、そのタンクに洗剤(1リットル当たり1cc)を溶かす。洗濯機は、洗剤が溶けた温水を循環させながら、ジェット噴射によりデニム製品を洗浄する。この工程は、約10~15分、例えば約12分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0076】
ステップS635にて、脱水工程が行なわれる。この脱水工程の内容は、ステップS620において行なわれる脱水工程の内容と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0077】
ステップS640にて、すすぎ工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、洗濯機のタンクに水(約40℃、約150リットル)を溜める。洗濯機は、その水を循環させながら、ジェット噴射によりデニム製品を洗浄する。この工程は、約5~10分、例えば約9分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0078】
ステップS645にて、脱水工程が行なわれる。この脱水工程の内容は、ステップS620において行なわれる脱水工程の内容と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0079】
ステップS650にて、汚染除去工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品をオゾン機(例えば、Jeanologia社製G2)に投入する。オゾン機は、オゾンガスでデニム製品を洗浄し、汚染除去を行なう。この時、水は使用されない。オゾンガスの濃度は、約21%である。この工程は、約10~15分、例えば約11分行なわれる。
【0080】
ステップS655にて、仕上げ工程が行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品を洗濯機(例えば、トネロ社製 G1-325)に投入する。洗濯機のタンクには温水(約40℃、約150リットル)が溜められている。オペレーターは、そのタンクに機能向上剤(1リットル当たり3g)を溶かす。機能向上剤は、加工を要するデニム製品に用いられ、例えば、堅牢度向上剤を含む。堅牢度向上剤は、耐光堅牢度向上剤、摩擦堅牢度向上剤等を含み得る。耐光堅牢度向上剤は、通称「やけ防止剤」とも呼ばれ、デニム製品が長時間光にさらされることで藍色が脱色する現象を防ぐ薬品である。摩擦堅牢度向上剤は、デニム製品をこする工程において耐摩耗性を向上させるために使用される。洗濯機は、機能向上剤が溶けた温水を循環させながら、ジェット噴射によりデニム製品を洗浄する。この工程は、約5~10分、例えば約7分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0081】
ステップS660にて、脱水工程が行なわれる。この脱水工程の内容は、ステップS620において行なわれる脱水工程の内容と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0082】
ステップS665にて、乾燥工程が約40~70分、行なわれる。より具体的には、オペレーターは、デニム製品を乾燥機(例えば、DFS-120)にいれて、約50分間、80℃でデニム製品を乾燥させ、その後、約10分間、40℃での乾燥を行なう。
【0083】
図7を参照して、ある実施の形態に従う2つの加工方法を説明する。
図7は、ある実施の形態に従う加工方法E,Fの工程を表わす図である。
【0084】
ある局面に従う加工方法Eは、つけ込み工程と、糊抜き工程と、第1すすぎ工程と、第2すすぎ工程と、BIO洗浄工程と、第3すすぎ工程と、失活工程と、第4すすぎ工程と、脱色工程と、第5すすぎ工程と、中和工程と、第6すすぎ工程と、洗浄工程と、第7すすぎ工程と、第8すすぎ工程と、第9すすぎ工程と、仕上げ工程と、脱水工程と、乾燥工程とを含む。
【0085】
つけ込み工程では、作業者は、デニム製品を洗濯機(例えば、トネロ社製 G1-325)に投入する。洗濯機には、約60℃の温水(約1,800リットル)が溜まっている。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0086】
糊抜き工程では、洗濯機は、浸漬した製品を糊抜き剤の入った60℃の温水で洗浄する。このとき、約1,800リットルの水が使用される。糊抜き剤は、1リットル当たり1ccの糊抜き剤が使用される。この工程は、約10分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0087】
第1すすぎ工程では、洗濯機は、温水(約40℃、約1,800リットル)を使用して、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0088】
第2すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0089】
BIO工程では、オペレーターは、洗濯機に、酵素が含まれた温水(約60℃、約1,800リットル)を注入して、洗濯機と温水とを攪拌することにより、デニム製品を洗浄する。温水1リットル当たり1gの酵素が温水に含まれている。この工程は、約30分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0090】
第3すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0091】
失活工程では、オペレーターは、洗濯機に、ソーダ灰が含まれた温水(約40℃、約1,800リットル)を注入する。洗濯機は、デニム製品を洗浄して、酵素を失活させる。温水1リットル当たり1gのソーダ灰が温水に含まれている。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0092】
第4すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0093】
脱色工程では、オペレーターは、洗濯機に、漂白剤が含まれた温水(約60℃、約1,800リットル)を注入する。洗濯機は、デニム製品を洗浄して、脱色する。温水1リットル当たり10ccの漂白剤が温水に含まれている。この工程は、約10分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0094】
第5すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0095】
中和工程では、オペレーターは、洗濯機に、中和剤が含まれた温水(約50℃、約1,800リットル)を注入する。洗濯機は、デニム製品を洗浄して、漂白剤を中和する。温水1リットル当たり2ccの中和剤が温水に含まれている。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0096】
第6すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0097】
洗浄工程では、オペレーターは、洗濯機に、潜在が含まれた温水(約60℃、約1,800リットル)を注入する。洗濯機は、デニム製品を洗浄する。温水1リットル当たり1ccの洗剤が温水に含まれている。この工程は、約10分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0098】
第7すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0099】
第8すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0100】
第9すすぎ工程では、洗濯機は、第1すすぎ工程の条件と同様の条件で、デニム製品を洗浄する。この工程は、約5分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0101】
仕上げ工程では、オペレーターは、洗濯機に、機能向上剤が含まれた温水(約40℃、約1,800リットル)を注入する。洗濯機は、その温水を攪拌することにより、デニム製品を洗浄する。温水1リットル当たり3gの機能向上剤が温水に含まれている。この工程は、約10分行なわれる。その後、洗濯機は排水する。
【0102】
脱水工程では、洗濯機は、デニム製品を回転させることで、遠心分離により脱水を行う。
【0103】
乾燥工程では、オペレーターは、デニム製品を乾燥機(DFS-120)にいれて、約80℃で約50分間乾燥させた後、約40℃で約10分間の乾燥を行なう。
【0104】
上記のような加工方法Eによれば、約30,600リットルの水が使用されることになる。
【0105】
[加工方法F]
加工方法Fは、
図6に示される各工程を含む。加工方法Fも、
図1(B)に示される水循環システムを用いる。加工方法Fによれば、水が使用される工程は、BIO洗浄工程(150リットル)、洗浄工程(150リットル)、すすぎ工程(150リットル)、および仕上げ工程(150リットル)である。その結果、約600リットルの水が使用されることになる。糊抜き工程、脱色工程および汚染除去工程は、オゾンを使用する処理で実現されるので、水の使用量が少なくなる。その結果、加工方法Fによれば、加工方法Eに比べて、水の使用量を98.0%(=(30,600-600)/30,600)削減することができる。
【0106】
また、加工方法Fにおける薬剤の使用量は、加工方法Eにおける使用量よりも90%以上少なくなる。さらに、加工方法Fによれば、水(温水)の使用量が少なくなるため、温度調整に必要な熱量を削減できる。
【0107】
図8を参照して、ある実施の形態に従って水を再利用するためのシステム800について説明する。
図8は、デニム製品の加工のために使用されるシステム800の概要を表わす図である。
【0108】
システム800は、排水処理設備810と、UF(ultrafiltration)ろ過ポンプ820と、エアブロアー822と、UF逆洗ポンプ824と、RO(Reverse Osmosis)供給ポンプ826と、RO高圧ポンプ828と、UF膜ろ過ユニット830と、ろ過水タンク832と、保安フィルター834と、RO膜ユニット835と、供給ポンプ840とを備える。
【0109】
排水処理設備810から供給される水は、UFろ過ポンプ820に送られる。ある局面において、一日に500トンの水が、UFろ過ポンプ820に送られる。UFろ過ポンプ820は、水をUF膜ろ過ユニット830に供給する。エアブロアー822は、UF膜ろ過ユニット830に対して、空気を供給する。
【0110】
UF膜ろ過ユニット830によってろ過された水は、UF逆洗ポンプ824に送られ、ろ過されなかった水は、不純物を含んでいるとして、処理排水とされる。ある局面において、処理排水の量は約3トンであり、排水処理設備810から供給される水の約6%に相当する。
【0111】
UF逆洗ポンプ824は、その水をろ過水タンク832に送出する。ろ過水タンク832は、ろ過水を貯蔵する。
【0112】
RO供給ポンプ826は、ろ過水タンク832の水を保安フィルター834に送出する。保安フィルター834は、例えば、MF(Microfiltration)膜を含む。保安フィルター834を透過した水は、RO高圧ポンプ828によってRO膜ユニット835に送られる。RO膜ユニット835を透過した水は、リユース水となり、RO膜ユニット835を透過しなかった不純物は、処理排水とされる。処理排水の量は、約7トンであり、排水処理設備810から供給される水の約14%に相当する。したがって、システム800から生じる処理排水は、約10トンとなる。
【0113】
開示された技術的特徴は、以下のように要約され得る。
【0114】
[加工方法1] ある実施の形態に従う、デニムの加工方法は、デニムをオゾン処理装置(例えば、Jeanologia社 G2)に投入する工程と、オゾンを用いてデニムの糊抜きを行なう工程と、糊抜き後のデニムを洗濯機110に投入する工程と、洗濯機110内で水を循環させて、ジェット噴射によって当該水をデニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第1すすぎ工程と、新たな水を洗濯機110内で循環させて、ジェット噴射によって当該新たな水をデニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する第2すすぎ工程と、水と堅牢度向上剤(EX-5)とを混ぜ合わせる工程と、混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを洗濯機内で循環させて、ジェット噴射によって当該混ぜ合わされた水と堅牢度向上剤とを洗浄されたデニムに繰り返し吹きかける仕上げ工程とを含む。
【0115】
[加工方法2]ある局面において、当該加工方法は、上記の加工方法に対して、第1すすぎ工程の後に、酵素が含まれた水を洗濯機110内で循環させて、ジェット噴射によって当該酵素が含まれた水をデニムに拭きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出するバイオウォッシュ工程をさらに含む。
【0116】
[加工方法3]ある局面において、当該加工方法は、上記の加工方法に対して、染料が含まれる水を洗濯機110内で循環させて、ジェット噴射によって当該染料が含まれる水をデニムに吹きかけて当該デニムを染色する染色工程をさらに含む。
【0117】
[加工方法4]ある局面において、当該加工方法は、上記の加工方法に対して、第2すすぎ工程の後に、オゾンを用いて漂白する工程をさらに含む。
【0118】
[加工方法5]ある局面において、当該加工方法は、上記の加工方法に対して、仕上げ工程の後に、オゾン処理装置において、オゾンを用いて汚染除去を行なう工程をさらに含む。
【0119】
[加工方法6]他の実施の形態に従う、デニムの加工方法は、デニムをオゾン処理装置に投入する工程と、オゾン(濃度約48%)を用いてデニムの糊抜き(約11分)を行なう工程と、糊抜き後のデニムを洗濯機に投入する工程と、洗濯機内に酵素(1g/水1リットル)と水(約150リットル、50℃)とを注入し、当該酵素が溶けた水を循環させながらジェット噴射によって(約38分)デニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出する工程と、デニム製品を脱水する工程と、デニム製品をオゾン処理装置に投入し、オゾン(約33%)を用いてデニム製品を(約13分)洗浄する脱色工程と、デニム製品を洗濯機に投入し、洗濯機に洗剤(1cc/水1リットル)と水(約150リットル、60℃)とを注入し、洗剤が溶けた水を循環させながら、ジェット噴射によって当該水をデニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し(約12分)、洗浄後の水を排出する工程と、洗濯機内で新たな水(約150リットル、40℃)を循環させながら(約9分)、ジェット噴射によって当該新たな水をデニムに繰り返し吹きかけて当該デニムを洗浄し、洗浄後の水を排出するすすぎ工程と、デニム製品をオゾン処理装置に投入し、オゾン(約21%)を用いてデニム製品を(約11分)洗浄する汚染除去工程と、洗濯機に新たな水と機能向上剤(例えば、堅牢度向上剤、3g/水1リットル)とを注入し、堅牢度向上剤が溶けた水(約150リットル、40℃)を循環させながら、ジェット噴射によって堅牢度向上剤が溶けた水をデニム製品に繰り返し(約7分)吹きかける仕上げ工程とを含む。
【0120】
[加工方法7]ある局面において、糊抜きを行う工程で使用されるオゾンの濃度(約48%)は、脱色工程で使用されるオゾンの濃度(約33%)よりも高い。脱色工程で使用されるオゾンの濃度は、汚染除去工程で使用されるオゾンの濃度(約21%)よりも高い。
【0121】
[加工方法8]他の実施の形態に従うと、上記のいずれかの加工方法により製造されたデニム製品(例えば、ジーンズ)が提供される。
【0122】
<実施の形態のまとめ>
以上のようにして、ある実施の形態に従う水循環ジェット噴射システムによれば、BIO洗浄、洗浄、すすぎ、仕上げ(機能性向上)の各工程で使用される水量は、従来の2%以下になるので、98%以上の水量が削減される。
【0123】
また、それにともない、各工程でそれぞれ使用される薬剤の総使用量は、従来の使用量に比べて、90%以上少なくなる。
【0124】
ある実施の形態において、水循環ジェット噴射システムは、ドライオゾンと併用することで、洗濯槽の温度調整に必要な熱量を削減することができる。また、デニム製品の加工工程のうち、糊抜き工程、漂白工程、中和工程、汚染除去工程をオゾン処理に置き換えることにより、水の使用量を削減できる。
【0125】
さらに、排水を再利用するシステム800を併用することで、水の使用量の80%を再利用可能となり、使用量はさらに1/5となる。
【0126】
その結果、ある局面において、100本のジーンズを加工するための従来の方法による水の使用量が、30,600リットルであったところ、本実施の形態に従う水循環ジェット噴射システムによれば、以下の通り、120リットルとなる。
600リットル×0.2(再利用による正味必要量)=120リットル
120/30,600×100=0.39(%)
すなわち、水循環ジェット噴射システムによる水の使用量は、従来の加工方法による水の使用量の僅か0.39%となり、使用量を、99.61%削減できることになる。このようにして、環境への負荷を抑制しつつ、デニム製品を加工することができる。
【0127】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本開示は、デニムの加工に適用可能である。
【符号の説明】
【0129】
100,110 洗濯機、101,111 洗濯槽、112 ホース、210 ノズル。