(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】電子回路
(51)【国際特許分類】
G06F 1/04 20060101AFI20220405BHJP
H03K 5/15 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G06F1/04 302
H03K5/15 M
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020072575
(22)【出願日】2020-04-14
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】10 2019 109 869.6
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599158797
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Am Campeon 1-15, 85579 Neubiberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウード エルスホルツ
(72)【発明者】
【氏名】レックス コー
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-076610(JP,A)
【文献】特開平09-212479(JP,A)
【文献】特開平05-080873(JP,A)
【文献】特開昭61-199320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/04
H03K 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チップ上に形成された電子回路であって、前記電子回路は、
少なくとも3つのクロックドメインと、
前記少なくとも3つのクロックドメインの各々1つに対応付けられた少なくとも3つのクロック発生器と、
基準クロック発生器と、
を含み、
各クロック発生器は、
カウンタ値を記憶し、
前記基準クロック発生器から
直接基準クロックを受信し、
前記基準クロックに従ってカウンタ値を変更し、
前記カウンタ値に基づいて少なくとも1つのクロック信号を生成する、
ように構成されており、
さらに前記電子回路は、
隣接する2つのクロックドメインの前記クロック発生器毎にカウンタ値を受信し、受信したカウンタ値を比較するように構成された少なくとも2つの比較器と、
前記比較の結果に基づいてエラー処理を開始するように構成されたエラー処理回路と、
を含む、
電子回路。
【請求項2】
前記比較器は、前記比較の結果を表す比較信号を前記エラー処理回路に伝送するように構成されている、
請求項1記載の電子回路。
【請求項3】
前記比較信号は、前記比較器が比較に基づいてエラーを検出したか否かを示す、
請求項2記載の電子回路。
【請求項4】
前記比較器による前記受信したカウンタ値の比較は、比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たすか否かを検査することを含む、
請求項1記載の電子回路。
【請求項5】
前記予め定められた基準は、前記比較されたカウンタ値が一致するか否か、または前記比較されたカウンタ値が予め定められたオフセットまで一致するか否かである、
請求項4記載の電子回路。
【請求項6】
前記予め定められた基準は、前記比較されたカウンタ値が基準クロックに従って適正に変更されたか否かである、
請求項4記載の電子回路。
【請求項7】
前記比較器は、前記比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合、エラーメッセージを前記エラー処理回路に出力するように構成されている、
請求項4記載の電子回路。
【請求項8】
エラー処理回路は、前記比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合、エラー処理を開始するように構成されている、
請求項1記載の電子回路。
【請求項9】
各比較器は、前記比較の結果を表す比較信号を前記エラー処理回路に伝送するように構成されている、
請求項1記載の電子回路。
【請求項10】
前記エラー処理回路は、前記少なくとも2つの比較器から複数の比較信号を収集するように構成され、前記比較信号に基づいてエラー処理を開始するように構成された中央ユニットである、
請求項1記載の電子回路。
【請求項11】
前記エラー処理回路は、前記比較信号のいずれか1つによって、比較信号を送信した比較器がエラーを検出したことが示される場合、エラー処理を開始するように構成されている、
請求項10記載の電子回路。
【請求項12】
前記比較器は、カウンタ値が比較されるように構成された複数のクロック発生器がともに配置されている2つのクロックドメインの境界に配置されている、
請求項1記載の電子回路。
【請求項13】
前記クロック発生器は、基準クロック信号に従って前記カウンタ値を周期的に増分するように構成されるか、または前記基準クロック信号に従って前記カウンタ値を周期的に減分するように構成されている、
請求項1記載の電子回路。
【請求項14】
前記電子回路は、前記クロック発生器によって生成された前記クロック信号に従って動作する論理コンポーネントおよびメモリコンポーネントの少なくとも1つを含む、
請求項1記載の電子回路。
【請求項15】
前記クロック発生器は、異なる周波数の複数のクロック信号を生成するように構成されている、
請求項1記載の電子回路。
【請求項16】
クロック信号を監視するための方法であって、
前記方法は、チップ上に形成された電子回路の少なくとも3つのクロックドメインのうちの隣接する2つのクロックドメインのクロック発生器毎に各カウンタ値を受信するステップを含み、各クロック発生器は、各カウンタ値を記憶し、前記電子回路の基準クロック発生器から
直接基準クロックを受信し、前記基準クロックに従って前記カウンタ値を変更し、前記カウンタ値に基づいて少なくとも1つのクロック信号を生成し、
前記方法は、
受信したカウンタ値を比較するステップと、
前記比較の結果に基づいてエラー処理を開始するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
前記エラー処理を開始するステップは、アラームをトリガするステップを含む、
請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路に関する。
【背景技術】
【0002】
システムオンチップ(SoC)などの複雑な電子回路は、複数のクロックドメイン、すなわち複数の回路部品を有し得る。この場合、各部品にはそれぞれ固有のクロック信号が供給されている。デジタル方式の論理コンポーネントの情報転送は、同じクロックドメインにある論理コンポーネント間、または異なるクロックドメイン領域間で発生する可能性がある。同期通信を保証するためには、クロックドメイン間の位相関係を一定に保つ必要がある。しかしながら、例えば、電離放射線がクロックドメイン内の敏感なクロック発生コンポーネントに当たると、このことが、このクロックドメインと他のクロックドメインとの間の位相関係の歩調を乱す可能性がある。これが発生した場合、このドメインと他のドメインとの間の同期通信は保証されず、これは完全なシステム障害につながる可能性がある。それゆえ、適切な対策を開始するためにそのような状況を検出するアプローチが望まれる。
【0003】
様々な実施形態によれば、電子回路が提供されており、この電子回路は、複数のクロック発生器を含み、ここで、各クロック発生器は、カウンタ値を記憶し、基準クロックを受信し、基準クロックに従ってカウンタ値を変更し、カウンタ値に基づいて少なくとも1つのクロック信号を生成するように構成されている。さらに、この電子回路は、複数のクロック発生器の少なくとも2つの各々毎にカウンタ値を受信し、受信したカウンタ値を比較するように構成された比較器と、比較の結果に基づいてエラー処理を開始するように構成されたエラー処理回路とを含む。
【0004】
複数の図面において、同様の参照符号は、一般に、異なる図面を通して同じ部品を指す。これらの図面は必ずしも縮尺通りではなく、代わりに一般に本発明の原理を説明することに重点が置かれている。以下の説明では、様々な態様を、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】チップ内の複数のクロックドメインの生成と使用、ならびに複数のドメイン間の同期通信に関する潜在的な安全上の問題を示した図
【
図3】複数のクロックドメインと中央位相比較器とを有するチップを示した図
【
図4】複数のクロックドメインとローカル比較器とを有するチップを示した図
【
図5】ローカル比較器を有するローカルクロック発生器を示した図
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明は、本発明を実施し得る本開示の特定の詳細および態様を例証として示す添付図面を参照している。本発明の権利範囲から逸脱することなく、他の態様を使用することができ、構造的、論理的、および電気的な変更を加えることも可能である。本開示のいくつかの態様は、新規の態様を形成するために本開示の1つ以上の他の態様と組み合わせることができるため、本開示の様々な態様は、必ずしも相互排他的ではない。
【0007】
図1には、チップ100内の複数のクロックドメイン101~106の生成と使用、ならびに複数のドメイン間の同期通信に関する潜在的な安全上の問題が示されている。
【0008】
チップ100は、基準周波数発生器107を含む。各クロックドメイン101~106は、それぞれの対応するローカルクロック発生器108を有する。基準周波数発生器107は、各ローカルクロック発生器108に基準周波数信号(または基準クロック信号)を供給し、各ローカルクロック発生器108は、その対応するクロックドメイン101~106に対する1つ以上のローカルクロック信号109を生成する。例えば、各クロックドメイン101~106は、1つ以上のローカルクロック信号の1つに従って動作する論理ゲート、メモリセル、バッファ、インバータなどの論理コンポーネントを含む。
【0009】
ローカルクロック発生器によるローカルクロック信号の生成は、
図2で説明される。
【0010】
【0011】
ローカルクロック発生器200は、(例えば基準周波数発生器107によって提供される基準周波数信号に対応する)基準クロック信号(もしくはマスタクロック信号)を受信するカウンタ201を含む。
【0012】
カウンタ201は、カウンタ値をカウンタ値レジスタ202に記憶し、論理コンポーネント203(例えばマスタクロックのクロックサイクル毎に1を加算する加算器)を用いて基準クロック信号に従ってカウンタ値を増分する。例えば、論理コンポーネント203は、カウンタ値を読み取り、増分されたカウンタ値をカウンタ値レジスタ202に記憶することによって、基準クロック信号のパルス毎に、例えば立ち上がりエッジ毎にカウンタ値を1だけ増分する。オーバーフローを回避するために、論理コンポーネント203は、これを周期的に行うことができ、例えば、最大カウンタ値nが増分によって超過した場合には、カウンタ値をゼロに減分することができる(つまり、ゼロまたは別の初期値で改めて開始される)。カウンタは、(減数方向にカウントする)減分カウンタであってもよい。さらに、カウンタは、基準クロックを分割するように構成されてもよく、すなわち、例えば基準クロック信号の1つおきのクロックサイクルでカウンタ値を変更するだけでもよい。
【0013】
現在のカウンタ値に依存して、クロック発生器200は、生成されるように構成されたローカルクロック信号204を所定のレベルで出力する。この例では、クロック発生器200は、16個のローカルクロック信号を生成して出力するように構成されている。クロック発生器200は、ルックアップテーブル205に従ってローカルクロック信号204のレベルを設定する。このテーブルは、各カウンタ値(この例では0~n)をn+1個の16ビット数の1つにマッピングする。この場合、16ビット数のビットの値は、そのビットに対応するローカルクロック信号204のレベルを特定する。例えば、右端ビットに対応するクロック信号は、カウンタ値の変更毎にそのレベルを変更し、したがって、ローカルクロック信号204の中で最高の周波数を有する。
【0014】
ローカルクロック発生器108の1つが故障し、エラーを有するローカルクロック信号109、(例えばパルスが欠落している、余分なパルスを有している、または適正でない(すなわち例えば数ピコ秒だけクロック信号の周期よりも(さらに)短い時間の)位相を有している)ローカルクロック信号109を生成すると、エラーが発生する場合がある。
図1に示されている例では、第5のクロックドメイン105のクロック信号109の第3のクロック信号は、位相が外れている。これは、例えば、電離放射線111が第5のクロックドメイン105のローカルクロック発生器108に当たり、このローカルクロック発生器の誤機能を引き起こすために起こり得る。例えば、電離放射線111は、レジスタ202に当たり、このレジスタ202内のカウンタ値のビットを反転させ、それによって、カウンタ値が変更され、さらに
図1に示されているように、クロック信号のパルスが早期に到来する。エラーは、局所的電源ノイズ、結合効果などによっても引き起こされ得る。
【0015】
図1に示されている1つのクロックドメインのローカルクロック信号のエラーは、電子回路100の完全な故障につながりかねない(最悪のケース)。なぜなら、クロックドメイン101~106間の適正な通信(ローカルクロック信号109に基づく同期通信)がもはや不可能になる可能性があるからである。
【0016】
そのような問題を回避する1つの可能性は、クロックドメイン毎の位相情報を収集し、この位相情報を中央の場所で(すなわち、チップ上の中央ユニットを用いて)比較することである。これは
図3に示されている。
【0017】
図3は、複数のクロックドメイン301~306と中央位相比較器310とを有するチップ300を示す。
【0018】
図1のチップ100と同様に、チップ300は、基準周波数発生器307を含み、各クロックドメイン301~306は、基準周波数発生器307によって基準周波数信号が供給されるそれぞれの対応するローカルクロック発生器308を有する。各ローカルクロック発生器308は、その対応するクロックドメイン301~306に関して1つ以上のローカルクロック信号309を生成する。クロックドメインは、上述のように、(例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)技術の電界効果トランジスタなどの半導体素子を用いて実現される)論理コンポーネントまたはメモリコンポーネントを含み得る。
【0019】
中央位相比較器310は、ローカルクロック信号309の位相情報を収集し、クロック信号309の位相を比較してクロックドメイン301~306間の位相差を検査する。ローカルクロック信号の位相が所定の基準を満たさない(例えば差分が大きすぎる)場合、中央位相比較器310は、エラー処理手順を開始し得る(例えばアラーム信号の出力)。エラー(すなわち所定の基準の違反)では、クロック信号の2つが異なることは、ほぼパルスのエッジの位置が(所定の閾値超えにより)異なることを意味し得る点に留意すべきである。ただし、一方のクロック信号内に存在しないパルスは他方にも存在しない、すなわち、エッジはほぼクロック信号の周期よりも短いことによって異なる。このタイプのエラーは、クロック信号のスキューとも称される。他のタイプのエラーは、第1のクロック信号内にはパルスが存在するが、第2のクロック信号内には、第1のクロック信号内の余分なパルスもしくは第2のクロック信号内のパルスの欠落により存在しないことである。閾値を超えるスキューにのみ反応する比較器は、そのようなエラーには反応できない。なぜなら(両方のクロック信号内に存在する)パルスのエッジが完全に一致する可能性があるからである。
【0020】
図3の態様では、位相情報を中央の場所に同期送信する必要がある。伝送距離に1つ以上のクロック周期が必要なケースでは、このことは、データレジスタを用いてデータをパイプライン化することで実現可能である。大量のデータが存在する場合、データレジスタおよび信号線路の数が多くなる可能性がある。中央の場所への位相情報の転送には、複数のクロックドメインの交差が含まれる可能性がある。次いで、データレジスタは、複数のクロックドメインに事前に配置する必要がある。しかしながら、データのパイプライン化は、フェーズ情報の生成とその比較との間の遅延を増加させる。したがって、それらはエラー発生とエラー認識との間の遅延を比較的大きくする可能性がある。さらに、クロックドメイン間の位相関係が適正でない場合には、複数のクロックドメインにわたるデータの転送は、潜在的に問題がある。
【0021】
それゆえ、様々な実施形態によれば、隣接するドメイン間のみの位相情報の局所的比較に基づいたアプローチが提供される。
【0022】
図4は、複数のクロックドメイン401~406とローカル比較器410とを有するチップ400を示している。
【0023】
図1のチップ100と同様に、チップ400は、基準周波数発生器407を含み、各クロックドメイン401~406は、基準周波数発生器407によって基準周波数信号が供給されるそれぞれの対応するローカルクロック発生器408を有する。各ローカルクロック発生器408は、その対応するクロックドメイン401~406に関して1つ以上のローカルクロック信号409を生成する。
【0024】
図3とは対照的に、チップ400は、隣接するクロックドメイン401~406の各対に対するローカル比較器410を含む。
【0025】
ローカル比較器410は、自身が属する隣接するクロックドメイン401~406の位相情報を比較し、エラーを発見した場合、エラー情報を用いてエラーを中央エラー収集ユニット411に報告する。位相情報は、ローカルクロック信号409のパルスが発生する時間を定める情報を意味するものと理解されたい。様々な実施形態によれば、以下で説明するように、これはローカルクロック発生器408のカウンタ201のカウンタ値であり得る。カウンタ値は複数のローカルクロック信号409を生成するために使用され得るので、したがって、複数のローカルクロック信号409の適性度は、異なるドメイン間の単一値(カウンタ値)の比較によって監視することができる。
【0026】
中央エラー収集ユニット411は、安全管理ユニットとして作用し、ローカル比較器410の1つ(以上)からのエラーの報告に応じてエラー処理を開始することができる。例えば、中央エラー収集ユニット411は、安全状態に入るために、チップの1つ以上のコンポーネントを無効化するために、またはチップ400の誤機能を示す信号を他のコンポーネント(車両の中央制御ユニットなど)に出力するためにチップ400を制御することができる。
【0027】
様々な実施形態によれば、位相情報のローカル比較は、隣接するドメイン間でのみ実行されている。例えば、様々な実施形態によれば、
図3で説明されているような中央比較器は存在しない。したがって、位相情報はローカルデータであり(すなわちローカル処理されている)、チップ全体にわたって、例えば中央の場所に送信する必要はない。したがって、データ比較の遅延は、
図3に示されているように中央比較を用いたアプローチに比べて低減される。特に、
図4のアプローチを用いれば、チップにわたり(潜在的に問題のあるクロックドメインにわたり)データをパイプライン化する必要はない。
【0028】
様々な実施形態によれば、グローバル収集のためのローカル比較器410から中央エラー収集ユニット411へのエラー情報の伝送は非同期である。例えば、各ローカル比較器は、ローカルクロックの動作に依存しないデータメッセージであるエラーメッセージを用いてエラーを表示する。
【0029】
さらに、
図4のアプローチは、
図3のアプローチよりも少ない数の信号線路で実現することができる。エラー情報伝送のためのエラーメッセージは、単一信号線路上のパルスもしくはフラグのように簡素なものであってもよい。したがって、
図3および
図4の例において、
図4のアプローチでは、グローバル収集のために5つのエラーデータ線路のみがエラー情報の伝送のために使用されてもよい。一方、
図3のアプローチでは、mビットの位相情報を伝送するために6×mの線路が使用されている。
【0030】
様々な実施形態によれば、対のみでの保護が存在する。これは、各クロックドメインがローカル比較器410を(複数またはすべてのクロックドメインではなく)隣接する1つのクロックドメインとのみ共有することを意味する。このケースでは、6つのクロックドメイン(したがって3つのクロックドメイン対)を伴う
図4の例において、中央収集(すなわち中央監視)のためのエラー情報の送信に対して3つのエラー線路で十分である。
【0031】
例えば、リング構造による比較スキームが使用されてもよい。このことは、1つのカウンタ値が入力され、1つのカウンタ値が出力される
図5の説明図に対応する。例えば、第4のクロックドメイン404は、そのカウンタ値を(それぞれの比較器を用いて)第1のクロックドメインのカウンタ値と比較し、第1のクロックドメイン401は、そのカウンタ値を第2のクロックドメイン402のカウンタ値と比較し、以下同様である。したがって、各クロックドメインは比較のために2つの隣接するドメインを有する(ただし、その自身のカウンタ値を1つの隣接するドメインに提供するだけである)。
【0032】
したがって、例えば、第4のクロックドメイン404について、第4のクロックドメイン404と第6のクロックドメイン406との間、および第4のクロックドメイン404と第1のクロックドメイン401との間の比較が存在する。この手法によるカウンタ値の比較が存在しかつ第4のクロックドメイン404で(のみ)エラーが発生している場合、中央エラー収集ユニットは、第1のクロックドメイン401、第4のクロックドメイン404、および第6のクロックドメインからエラーメッセージを受信すべきであり、それゆえ、中央エラー収集ユニットは、エラーが第1のクロックドメイン401および第6のクロックドメイン406ではなく第4のクロックドメイン404にあることを決定することができる。なぜなら第1のクロックドメイン401および第6のクロックドメイン406以外の隣接ドメインはエラーメッセージを送信しないからである。
【0033】
様々な実施形態によれば、隣接するクロックドメイン間でローカル比較器410が比較する位相情報は、ローカルクロック発生器408のカウンタ値レジスタ202によって記憶されたカウンタ値である。そして、ローカル比較器410が検出して報告するエラーは、例えば、隣接するクロックドメイン401~406のローカル比較器410のカウンタ値が異なることであり、あるいはカウンタ値の間のオフセットが設定または許可されているケースでは隣接するクロックドメイン401~406のローカル比較器410のカウンタ値の間の差分(オフセット)が意図したものではないことである(例えばその予め定められた値から変わっている)。
【0034】
このアプローチは、特に、誤ったカウンタ値に起因して発生する欠落パルスの検出を可能にさせる。例えば、カウンタが1,2,3,4の代わりに1,2,2,4をカウントすることを想定すれば、これは、電離放射線がカウンタレジスタにおける電圧レベルを一時的に低下させ、それによって、3番目の数字が3ではなく2として解釈されることに起因して起こる(例えば最下位ビットは1ではなく0として読み出される)。ローカルクロック信号は値1および3においてパルスを有するはずであることを仮定するならば、この例ではパルスが欠落するであろう。このケースでは、隣接するクロックドメイン間のクロックエッジ間にスキューが存在するか否かを決定する比較器で、(既存の)パルスの位相が隣接するクロックドメイン間で全く同じになる可能性があるため、エラーが現れないことがある。
【0035】
図5は、ローカル比較器503を有するローカルクロック発生器500を示している。
【0036】
ローカルクロック発生器500は、クロックドメイン401~406用のローカルクロック発生器408の1つと、隣接するクロックドメイン401~406の1つに対するローカル比較器410とを実現するために使用され得る。
【0037】
ローカル比較器503は、
図5の例のように必ずしもローカルクロック発生器408の1つに組み込まれる必要はない。また、それはローカルクロック発生器に対して外部に、例えばクロックドメインの境界に設けてもよい。さらに、ローカルクロック発生器408も、その内部に組み込まれたローカル比較器410なしで設けてもよい。
【0038】
図2の例と同様に、ローカルクロック発生器500は、カウンタ501を含み、1つ以上のローカルクロック信号502をカウンタ値に基づいて、例えば
図2に関連して説明したようなルックアップテーブルを用いて生成し、あるいは他の機構によって生成する。
【0039】
カウンタ501に記憶されたカウンタ値は、ローカル比較器503に供給される。さらに、隣接するクロックドメインのローカルクロック発生器408に接続された第1のカウンタ値信号線路504は、隣接するクロックドメインのローカルクロック発生器のカウンタ値をローカル比較器503に供給する。同様に、第2のカウンタ値信号線路505は、カウンタ501のカウンタ値を(例えば他の隣接するクロックドメインとのクロック比較のために他の隣接するクロックドメインのローカルクロック発生器に組み込まれている)他のローカル比較器に供給することができる。
【0040】
ローカル比較器503は、カウンタ501のカウンタ値を隣接するクロックドメインのローカルクロック発生器のカウンタ値と比較し、比較の結果に基づいてエラー信号を出力するように構成されている。例えば、ローカル比較器503は、カウンタ501のカウンタ値が隣接するクロックドメインのローカルクロック発生器のカウンタ値と一致しない場合、例えば互いに異なるか、または予め定められたオフセットを上回るかもしくは下回るように異なる場合(一般には互いに対して予め定められた基準を満たさない場合)には、エラーを表示するエラーメッセージを出力する。なお、比較された2つのカウンタ値が「一致」するか否か、すなわち比較が肯定結果を有しているか否かの決定は、スケーリングなどの計算を含む可能性があることを述べておく。なぜなら、カウンタ値は、(例えばカウンタ値の間に存在し得ることを想定している)オフセットなどを考慮して、互いに対して異なる手法でスケーリングされる可能性があるからである。
【0041】
以上要約すると、様々な実施形態により、電子回路は、
図6に示されているように提供される。
【0042】
【0043】
電子回路600は、複数のクロック発生器601を含む。ここで、各クロック発生器601は、カウンタ値を記憶し、基準クロックを受信し、該基準クロックに従ってカウンタ値を変更し、カウンタ値に基づいて少なくとも1つのクロック信号を生成するように構成されている。
【0044】
電子回路600は、さらに、複数のクロック発生器601の少なくとも2つの各々毎にカウンタ値を受信し、受信したカウンタ値を比較するように構成された比較器602と、比較の結果に基づいてエラー処理を開始するように構成されたエラー処理回路603とを含む。
【0045】
様々な実施形態によれば、換言すれば、1つ以上の生成されたクロック信号の適性度は、カウンタ値の比較によって局所的に監視されており、この適性度に基づいて、(例えば隣接する)クロックドメイン間でクロック信号が生成される。そのカウンタ値が比較されるローカルクロック発生器は、必ずしも隣接するクロックドメインのものを比較する必要性はないが、電子回路を介して長距離にわたってカウンタ値を伝送する必要性を回避するために当該電子回路上で互いに近接して配置されたクロックドメインに属しているローカルクロック発生器のカウンタ値を比較することが望ましい場合がある。エラー処理回路は、複数の比較器の比較の結果を受信するように構成された中央エラー処理回路であってもよい。エラー処理回路は、いずれかの比較の結果がエラーを示す場合に、エラー処理(例えばアラーム信号の出力)を開始するように構成されてもよい。したがって、これらの比較器およびエラー処理回路は、マルチドメインクロック同期検査器を実現することができる。
【0046】
電子回路600は、例えば(コンピュータ)チップによって実現されてもよい。それは、例えば、車両の電子制御ユニット(ECU)のような制御装置用のマイクロコントローラのような制御機能を有する電子回路であってもよい。
【0047】
以下では、様々な実施例を説明する。
【0048】
実施例1は、
図6に示されているような電子回路である。
【0049】
実施例2は、実施例1による電子回路であり、ここで、比較器は、比較の結果を表す比較信号をエラー処理回路に伝送するように構成されている。
【0050】
実施例3は、実施例2による電子回路であり、ここで、比較信号は、比較器が比較に基づいてエラーを検出したか否かを示す。
【0051】
実施例4は、実施例1~3のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、比較器による受信したカウンタ値の比較は、比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たすか否かを検査することを含む。
【0052】
実施例5は、実施例4による電子回路であり、ここで、予め定められた基準は、比較されたカウンタ値が一致するか否か、または比較されたカウンタ値が予め定められたオフセットまで一致するか否かである。
【0053】
実施例6は、実施例4による電子回路であり、ここで、予め定められた基準は、比較されたカウンタ値が基準クロックに従って適正に変更されたか否かである。
【0054】
実施例7は、実施例4~6のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、比較器は、比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合、エラーメッセージをエラー処理回路に出力するように構成されている。
【0055】
実施例8は、実施例1~7のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、エラー処理回路は、比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合、エラー処理を開始するように構成されている。
【0056】
実施例9は、複数の比較器を含む実施例1~8のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、各比較器は、複数のクロック発生器の各クロック発生器対の各クロック発生器からカウンタ値を受信し、受信したカウンタ値を比較するように構成されている。
【0057】
実施例10は、実施例9による電子回路であり、ここで、複数の比較器の各比較器は、比較の結果を表す比較信号をエラー処理回路に伝送するように構成されている。
【0058】
実施例11は、実施例1~10のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、エラー処理回路は、複数の比較器から複数の比較信号を収集するように構成され、これらの比較信号に基づいてエラー処理を開始するように構成された中央ユニットである。
【0059】
実施例12は実施例11による電子回路であり、ここで、エラー処理回路は、比較信号のいずれか1つによって、比較信号を送信した比較器がエラーを検出したことが示される場合、エラー処理を開始するように構成されている。
【0060】
実施例13は、実施例1~12のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、電子回路は、複数のクロックドメインを含み、各クロック発生器は、クロックドメインの各々1つに対応付けられている。
【0061】
実施例14は、実施例13による電子回路であり、ここで、比較器は、カウンタ値が比較されるように構成された複数のクロック発生器がともに配置されている2つのクロックドメインの境界に配置されている。
【0062】
実施例15は、実施例1~14のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、クロック発生器は、基準クロック信号に従ってカウンタ値を周期的に増分するように構成されるか、または基準クロック信号に従ってカウンタ値を周期的に減分するように構成されている。
【0063】
実施例16は、実施例1~15のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、電子回路は、クロック発生器によって生成されたクロック信号に従って動作する論理コンポーネントおよびメモリコンポーネントの少なくとも1つを含む。
【0064】
実施例17は、実施例1~16のいずれか1つによる電子回路であり、ここで、クロック発生器は、異なる周波数の複数のクロック信号を生成するように構成されている。
【0065】
実施例18は、クロック信号を監視するための方法であって、該方法は、少なくとも2つのクロック発生器の各々毎に各カウンタ値を受信するステップを含み、ここで、各クロック発生器は、各カウンタ値を記憶し、基準クロックを受信し、基準クロックに従ってカウンタ値を変更し、カウンタ値に基づいて少なくとも1つのクロック信号を生成し、さらに当該方法は、受信したカウンタ値を比較するステップと、比較の結果に基づいてエラー処理を開始するステップとを含む。
【0066】
実施例19は、実施例18の方法であり、ここで、エラー処理を開始するステップは、アラームをトリガするステップを含む。
【0067】
実施例20は、実施例18による方法であり、比較の結果を表す比較信号をエラー処理回路に伝送するステップを含む。
【0068】
実施例21は、実施例20による方法であり、ここで、比較信号は、比較に基づいてエラーが検出されたか否かを示す。
【0069】
実施例22は、実施例18~21のいずれか1つによる方法であり、受信したカウンタ値の比較は、比較したカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たすか否かを検査するステップを含む。
【0070】
実施例23は、実施例22による方法であり、予め定められた基準は、比較されたカウンタ値が一致するか否か、または比較されたカウンタ値が予め定められたオフセットまで一致するか否かである。
【0071】
実施例24は、実施例22による方法であり、予め定められた基準は、比較されたカウンタ値が基準クロックに従って適正に変更されたか否かである。
【0072】
実施例25は、実施例22~24のいずれか1つによる方法であり、比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合、エラーメッセージを出力するステップを含む。
【0073】
実施例26は、実施例18~25のいずれか1つによる方法であり、エラー処理回路は、比較されたカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合、エラー処理を開始するように構成されている。
【0074】
実施例27は、実施例18~26のいずれか1つによる方法であり、複数のクロック発生器の各クロック発生器対の各クロック発生器からカウンタ値を受信し、受信したカウンタ値を比較するステップを含む。
【0075】
実施例28は、実施例27による方法であり、各比較について、エラー処理回路への比較の結果を表す比較信号を含む。
【0076】
実施例29は、実施例18~28のいずれか1つによる方法であり、複数の比較器からの複数の比較信号を集中的に収集し、比較信号に基づいてエラー処理を開始するステップを含む。
【0077】
実施例30は、実施例29による方法であり、ここで、比較信号のいずれか1つによって、比較信号を送信した比較器がエラーを検出したことが示される場合、エラー処理を開始するステップを含む。
【0078】
実施例31は、実施例18~30のいずれか1つによる方法であり、ここで、各クロック発生器は、複数のクロックドメインの各々1つに対応付けられている。
【0079】
実施例32は、実施例31による方法であり、カウンタ値が比較される複数のクロック発生器がそれとともに配置されている2つのクロックドメインの境界で受信し受信されたカウンタ値を比較するステップを含む。
【0080】
実施例33は、実施例18~32のいずれか1つによる方法であり、基準クロック信号に従ってカウンタ値を周期的に増分するステップまたは基準クロック信号に従ってカウンタ値を周期的に減分するステップを含む。
【0081】
実施例34は、実施例18~33のいずれか1つによる方法であり、クロック発生器によって生成されたクロック信号に従って論理コンポーネントおよびメモリコンポーネントの少なくとも1つを動作させるステップを含む。
【0082】
実施例35は、実施例18~34のいずれか1つによる方法であり、異なる周波数の複数のクロック信号を生成するステップを含む。
【0083】
さらなる実施例によれば、電子回路が提供されており、この電子回路は、複数のクロックドメインを含み、各クロックドメインは、複数のクロック制御されたデータ処理コンポーネントと、クロックドメイン毎のクロック発生器とを含み、ここで、各クロックドメインのクロック発生器は、カウンタ値に基づいて、複数のクロック制御されたデータ処理コンポーネントのための少なくとも1つのクロック信号を生成するように構成されている。さらに、この電子回路は、複数のクロックドメインの少なくとも2つの各々毎にカウンタ値を受信し、複数のクロック発生器の少なくとも2つの各々毎にカウンタ値を受信し、受信したカウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たすか否かを検査し、カウンタ値が互いに関して予め定められた基準を満たさない場合にエラーを報告するように構成された比較器を含む。
【0084】
本明細書では特定の実施形態を図示し説明してきたが、当該分野の当業者であるならば、本発明の権利範囲から逸脱することなく、これらの図示および説明してきた特定の実施形態の代わりに、様々な代替的実施形態および/または同等の実施形態を使用できることは明らかであろう。この出願は、本明細書で論じられる特定の実施形態のあらゆる応用形態または変形形態を網羅することを意図している。それゆえ、本発明は、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【符号の説明】
【0085】
100 チップ
101-106 クロックドメイン
107 基準周波数発生器
108 ローカルクロック発生器
109 ローカルクロック信号
200 ローカルクロック発生器
201 カウンタ
202 カウンタ値記憶レジスタ
203 論理コンポーネント
204 ローカルクロック信号
205 ルックアップテーブル
300 チップ
301~306 クロックドメイン
307 基準周波数発生器
308 ローカルクロック発生器
309 ローカルクロック信号
310 中央位相比較器
400 チップ
401~406 クロックドメイン
407 基準周波数発生器
408 ローカルクロック発生器
409 ローカルクロック信号
410 ローカル比較器
411 中央エラー収集ユニット
500 ローカルクロック発生器
501 カウンタ
502 ローカルクロック信号
503 ローカル比較器
504,505 カウンタ値信号線路
600 電子回路
601 クロック発生器
602 比較器