(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】造形物とその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47F 8/00 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
A47F8/00 Z
(21)【出願番号】P 2020135080
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】599008609
【氏名又は名称】株式会社トーマネ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岩下 久起
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-049447(JP,A)
【文献】特開2008-289821(JP,A)
【文献】特開2012-050526(JP,A)
【文献】特開平03-278944(JP,A)
【文献】登録実用新案第3001951(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 8/00
A41H 5/00
A63H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の全身または一部の形状を象った等身大の造形物を製造する製造方法であって、
複数の切込みを有する和紙を雄型の表面に、水性の接着剤で貼り重ねて積層体を形成する段階と、
前記接着剤が固化した後に、前記積層体を前記雄型から離型する段階と
を含
み、
前記複数の切込みはその延在方向に一定の周期で断続的に列をなして形成され、
前記列は前記延在方向と交差する方向に繰り返し形成され、
前記交差する方向において互いに隣接する列の切込みは、前記延在方向の位置が互いにずれており、
前記造形物の表面に和紙のテクスチャを残した製造方法。
【請求項2】
前記積層体を形成する段階は、貼り重ねる前記和紙の
前記列の方向を、下地となる前記和紙の
前記列の方向と互いに交差する方向にして、当該下地となる前記和紙に貼り付ける段階を含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
複数の切り込みを有する和紙であって、前記複数の切込みはその延在方向に一定の周期で断続的に列をなして形成され、前記列は前記延在方向と交差する方向に繰り返し形成され、前記交差する方向において互いに隣接する列の切込みは前記延在方向の位置が互いにずれている、和紙を
、前記雄型の表面に水性の接着剤で貼り重ねて形成した積層体を含む部品を、硬質な紙の連結部材を介して前記積層体に結合する段階を更に含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記積層体を形成する段階は、貼り付ける前記和紙の表面から接着剤を塗布する段階を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記積層体を形成する段階は、前記積層体の最表面に、切込みの無い和紙を貼り付ける段階を更に含む請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記積層体を形成する段階は、前記造形物における一の見え掛かり面の一端から他端まで連続した前記和紙を貼り付ける段階を含む請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記積層体を形成する段階は、前記和紙の縁を手で千切ることにより貼り付ける前記和紙の縁部を形成する段階を更に含む請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記造形物は、人の衣類を着せるマネキン人形である請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記雄型は、それ自体がマネキン人形である請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記積層体は自身で形状を維持する強度を有する請求項1から9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
人体の全身または一部の形状を象った等身大の造形物であって、
複数の切込みを有する和紙を水性の接着剤で貼り重ねた積層体により形成された部材を有し、
前記複数の切込みはその延在方向に一定の周期で断続的に列をなして形成され、
前記列は前記延在方向と交差する方向に繰り返し形成され、
前記交差する方向において互いに隣接する列の切込みは、前記延在方向の位置が互いにずれており、
前記造形物の表面に和紙のテクスチャを残した造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マネキン人形等の造形物は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等で形成される(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2010-240178号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、造形物を製造する製造方法であって、周期的且つ異方的な配列で形成された切込みを複数有する和紙を雄型の表面に、水性の接着剤で貼り重ねて積層体を形成する段階と、接着剤が固化した後に、積層体を雄型から離型する段階とを含む製造方法が提供される。
【0004】
本発明の第2の態様においては、周期的且つ異方的な配列で形成された切込みを複数有する和紙を水性の接着剤で貼り重ねた積層体により形成された部材を有する造形物が提供される。
【0005】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これら特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】マネキン人形101の作製手順を示す流れ図である。
【
図5】雄型140に貼り付ける和紙130の配置を示す図である。
【
図6】貼り重ねる和紙130の向きを示す図である。
【
図8】本体110を構成する積層体150を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、造形物の一例であるマネキン人形101を全体的に示す図である。マネキン人形101は、本体110と、支持台120とを有する。マネキン人形101は、衣類、装身具の着脱可能な、陳列および展示を目的とした人体の全身または一部の形状を象った成型体である。
【0009】
本体110は、人の身体を模した形状を有する。また、本体110は、人に対して等身大の大きさを有する。本体110は、少なくとも外見上は全体が一体をなす。これにより、人が使用する衣服、靴、装身具等を本体110に着せることができる。
【0010】
図示の例では、本体110は、脚を伸ばして起立し、腕を降ろした姿勢を模している。しかしながら、用途に応じて、着座、膝立ち、中腰等の様々な姿勢とり得る。また、手、脚、首の形が様々に変化してもよい。更に、本体110が模す対象は、男性、女性、子供等さまざまな人であってよい。
【0011】
更に、本体110は、人の身体全体を模した「全身タイプ」の他、胴部のみを模した「ボディー/トルソタイプ」、頭部、腕部または脚部等の一部のみを模した「ツールタイプ」等であってもよい。また更に、全身タイプから、頭部、腕部等の一部を省略した形状としてもよい。
【0012】
支持台120は、本体110に結合され、本体110を支持すると共に、その姿勢を維持する。本体110が自立できる形状である場合は、支持台120を省いてもよいが、多くの場合、ポーズをとった本体110は自立するには不安定な形状なので、支持台120と本体110とを結合する。
【0013】
支持台120と本体110との結合は、本体110における足の踏面を板状の支持台120に固定する構造でもよいが、本体110に靴を履かせることが想定される場合は、支持台120に設けた支柱を、本体110の脚、腰、背中、首、頭部等の背面側に結合する。また、本体110と支持台120との結合を一時的に解くことができようにしてもよい。
【0014】
図2は、
図1に示したマネキン人形101の作製手順を示す流れ図である。マネキン人形101を作製する場合は、まず、本体110を形成する積層体150(
図7参照)の材料となる和紙130(
図3、4を参照)を用意する。本体110の材料となる和紙130は、後述するように、切込み132を設ける加工と、縁部134をランダムな形状にする加工とを施してもよい(ステップS01)。
【0015】
次に、ステップS01で用意した和紙130を雄型140(
図5参照)に貼り付ける(ステップS02)。最終的に得られる和紙130の積層体150は雄型140から取り外すので、雄型140に対しては、和紙130を水張りしてもよい。
【0016】
次に、雄型140に貼り付けた和紙130に、更に、接着剤を用いて他の和紙130を貼り重ねる(ステップS03)。和紙130の貼り重ねを繰り返すことにより、接着剤が固化した後に形成される積層体150の強度が向上する。
【0017】
次に、和紙130を貼り重ねる場合に使用した接着剤が固化した状態で離型して積層体150から雄型140を分離する(ステップS04)。雄型140は、形成された積層体150を一旦分割して抜き取ることにより離型される。
【0018】
離型のために分割した積層体150は、和紙130を貼り重ねる場合に使用する接着剤と同じ成分を有する接着剤で接着することにより再度一体化して、本体110となる成形体となる。こうして、作製された成形体は、薄く、軽量でありながら、本体110としての形状を維持する強度を有する。
【0019】
なお、積層体150により形成された成形体は、本体110そのものであってもよいが、本体110を複数に分割した一部として個別に作製してもよい。これにより、和紙130を貼り重ねる場合の接着剤の固化状態の管理精度が向上すると共に、離型等の作業が容易になる。本体110の一部として作製された成形体を、相互に結合して組み立てることにより本体110が完成する(ステップS05)。更に、作製された本体110を支持台120と結合して(ステップS06)
図1に示したマネキン人形101が完成する。
【0020】
図3は、
図2に示したステップS01において用意する、本体110を成形する材料として使用できる和紙130の形態を示す図である。矩形の和紙130は、多数の切込み132を全面に有する。
【0021】
和紙130に形成された切込み132は、図中に矢印Aで示すように、その延在方向に一定の周期で断続的に列をなして形成される。また、切込み132の列は、切込み132の延在方向と交差する方向にずれながら繰り返し形成される。これにより、切込み132は、和紙130全体に異方的に配置される。
【0022】
このような切込み132は、例えば、周期的且つ断続的な刃を周面上に有するローラを和紙130の上で転がすことにより形成される。こうした切込み132を有する和紙130は、高い柔軟性と引っ張り強度とを有する和紙元来の特性に加え、立体的な曲面に対する高い追従性を和紙130に与える。
【0023】
図4は、
図2に示したステップS01において用意する、和紙130の他の形状を示す図である。図示の和紙130は、
図2に示した和紙130と同様に、多数の異方的な切込み132を全面に有する。更に、和紙130は、周囲の縁部134がランダムな曲線をなす形状を有する。このような縁部134は、例えば、図中に点線Bで示す矩形の和紙130の周囲の縁を手で千切ることにより、
図4に示すような和紙130が形成できる。こうして形成されたランダムな縁部134には明確なエッジが存在しない。よって、和紙130を貼り重ねて積層体150(
図6参照)を形成した場合に、和紙130のエッジが目立たなくなる。
【0024】
上記のような用途に適した和紙130としては、例えば、楮の繊維で形成されたものを例示できる。楮で形成された和紙130は、障子紙等として広く流通しており、品質の高いものを比較的容易に入手できる。
【0025】
図5は、
図2に示したステップS02において雄型140に貼り付ける和紙130の配置を示す図である。なお、ここでは、繊維強化プラスチックで製造されたマネキン人形の頭部を雄型140の一例として使用した。
【0026】
和紙130により形成される成形体は積層体150となった状態でも数mm程度と薄いので、既存のマネキン人形を雄型140として成形しても、得られる成形体の形状は、雄型140となったマネキン人形の形状を精度よく再現する。しかしながら、雄型140として、専用のものを予め用意してもよいことはもちろんである。
【0027】
ステップS02において、和紙130は雄型140の表面に水貼りされる。ここで、既に説明した通り、和紙130は元来の特性に加えて、繰り込み134の形成による立体に対する高い追従性を有する。従って、マネキン人形101の本体110の形状に対応する雄型のひとつの見え掛かり面に対して、1枚の連続した和紙130を、当該見え掛かり面の一端から他端まで貼り着けることができる。よって、顔面等の起伏が激しい部分であっても、貼り付ける和紙130の枚数が増加することが抑制される。
【0028】
なお、
図5に示した例では、雄型140として使用した頭部の正面、一対の側面、背面、および頂面をそれぞれひとつの見え掛かり面と見做して和紙130をそれぞれ1枚ずつ配置した。これにより、本体110を作製する間の和紙130の貼り付け回数を低減し、製造に要する時間を短縮して生産性を向上できる。
【0029】
図6は、
図2に示したステップS03において貼り重ねる和紙130の向きを示す図である。
図3を参照して既に説明したように、貼り重ねる和紙130は、矢印Aで示す方向に配列された異方的な切込み132を有する。
【0030】
和紙130を貼り重ねる場合は、貼り付ける和紙130における切込み132の配列方向が、下地となる和紙130における切込み132の配列方向と交差するような向きで貼り付けることが好ましい。より好ましくは、重なる和紙130の配列方向が相互に直交するように貼り重ねる。
【0031】
これにより、貼り重ねられた和紙130により形成される積層体150の強度が方向に依らず一定となる。また、立体面に対して貼り付けたことにより開いた切込み132で成形体に生じる不陸を目立たなくして、本体110表面を滑らかに仕上げることができる。
【0032】
なお、和紙130に対して他の和紙130を貼り重ねる場合は、恒久的に固化する接着剤を使用する。接着剤は、下地となる和紙130に予め塗布してもよいが、和紙130は多くの切込み132を有するので、半乾きの下地の上に貼り重ねる和紙130を付着させた後に、和紙130の表面に接着剤を塗布してもよい。塗布は、刷毛塗りでもよい。
【0033】
接着剤としては、例えば、木工用のボンドとして市販されている酢酸ビニルの水性エマルジョンを使用してもよい。ただし、刷毛塗りへの適性、和紙130への親和性等を考慮して、市販の接着剤の粘度を調整して使用してもよい。より具体的には、例えば、木工用の接着剤として市販されている接着剤を水で希釈して粘性を低下させた状態で使用してもよい。これにより、接着剤を均一に塗布できる。また、接着剤の塊が形成されることを防止して、本体110の仕上がりを滑らかにできる。
【0034】
なお、使用する接着剤は、酢酸ビニル系のものに限られるわけではなく、他の接着剤を使用してもよい。また、漆、シュラック等の自然素材由来の接着剤を使用することにより、和紙130の使用と相まって、環境負荷の小さなマネキン人形101を作製できる。
【0035】
図7は、和紙130を貼り重ねて形成される積層体150の構造を発明する図である。最終的に成形体となる積層体150は、貼り重ねた多層の和紙130により形成される。既に説明した通り、貼り重ねる和紙130は、下地となる和紙130に対して、切込み132の配列方向が順次交差するように貼り重ねられる。
【0036】
このように、多層の和紙130を貼り重ねた積層体は、軽量でありながら高い強度を有する。貼り重ねる層数は、使用する和紙130の特性に応じて適宜調整されるべきだが、例えば、数層程度、より具体的には6層程度を積層すれば、実用的な強度が得られる。
【0037】
また、積層体150の最表面には、切込み132の無い和紙136を貼り重ねてもよい。これにより、下地となる和紙130において開いた切込み132により生じる不陸を隠蔽して、本体110表面を滑らかに仕上げることができる。
【0038】
こうして和紙130、136により形成された積層体150は、滑らかな表面を有すると共に、和紙136の自然なテクスチャを有する。よって、透明な塗料で仕上げた場合は、和紙136の独特なテクスチャを活かしたマネキンにすることができる。また、下地を隠蔽する不透明な塗料で仕上げた場合も、樹脂の成形品とは異なる柔らかい仕上がりとなる。
【0039】
図8は、本体110を形成する積層体150を示す図である。図示のように、本体110を形成する積層体150は、頭部111、胴部112、右腕部113、左腕部114、右脚部115、および左脚部116のそれぞれについて個別に作製される。これら頭部111、胴部112、右腕部113、左腕部114、右脚部115、および左脚部116を相互に結合することにより、全体として人体を模した本体110が完成する。
【0040】
なお、
図8に示した積層体150のいずれかを用いて、ボディー/トルソタイプ、ツールタイプ等として使用してもよい。また、胴部112を除く頭部111、右腕部113、左腕部114、右脚部115、および左脚部116について、異なる形態の他の積層体150を作製して、マネキン人形101の用途に応じて交換してもよい。
【0041】
図9は、本体110を形成する積層体150の結合構造を示す図である。図示の例は、胴部112に対して左腕部114を結合する場合の結合構造を示す。
【0042】
左腕部114において胴部112に突き合わせる部分は、積層体150の開口部に固定された支持板162により塞がれている。支持板162は、ベニア板または厚紙のような硬質な板で形成される。また、支持板162の中央部からは、短い円筒をなす紙管164が突き出す。紙管164は、硬質の厚紙により形成され、左腕部114の重さで変形しない程度の強度を有する。積層体150および支持板162と、支持板162および紙管164とは、それぞれ、接着剤により接着されて一体化されている。
【0043】
胴部112において左腕部114に突き合わせる部分は、積層体150の開口部に固定された支持板166により塞がれている。また、胴部112側の支持板166の中央部には、紙管164の外径と相補的な内径を有する孔である差し込み部168が設けられる。支持板162は、ベニア板または厚紙のような硬質な板で形成される。支持板162は、紙管164を介して左腕部114の重さがかかった場合に変形しない強度を有し、接着剤により接着されて、胴部112と一体化している。
【0044】
上記のような結合構造は、左腕部114側の紙管164を、胴部112側の差し込み部168に差し込むことにより、左腕部114および胴部112を結合する。ここで、紙管164は、図中に一点鎖線Cで示す水平線に対して傾きを有し、左腕部114から離れるほど重力方向について低くなる。よって、紙管164を差し込み部168に差し込むと、左腕部114の重量により、紙管164はより深く差し込み部168に入り込む。これにより、左腕部114側の支持板と、胴部112側の支持板166とが密着した状態が保たれ、胴部112と左腕部114とが一体化する。
【0045】
他の積層体150、すなわち頭部111、右腕部113、左腕部114、右脚部115、および左脚部116のそれぞれも、同様の結合構造により胴部112と一体化することができ、人の全身を模した本体110が完成する。こうして作製された本体110は、自然素材である和紙130を主材料とするので環境負荷が小さく、廃棄する場合も安全に焼却できる。更に、切込みを設けた和紙130を貼り重ねる製法により、生産性が高く、マネキン人形101の製造コストも削減できる。
【0046】
一般に等身大で製造されるマネキンのような大型の造形物は重くなりがちで、生産性が低く、取り扱いが難しかった。例えば、マネキン人形を繊維強化プラスチックで作製した場合、その重さは数kgから10kgに及び、衣類を着替えさせるにも、移動させるにも不便であった。これに対して、和紙130の積層体により形成された本体110を含むマネキン人形101は従前の仕様より1/3以上軽く、軽量なので取り扱いが楽になる。また、本体110を支持する部材に対する負荷も小さく、本体110を支持する支持台120、支持部170等の部材も、より軽量なものを使用できる。
【0047】
また、多数の切込み132を設けた和紙130は、立体的な面への追従性が非常に高いので、起伏に富んだ形状を有する積層体150に貼り重ねる場合も、細切れにせずに、皺を生じることなく貼り付けることができる。これにより、多層の積層体150を作製する場合に、紙を貼り着ける回数を大幅に減じることができる。切込み132のない紙を貼り付けて作製する場合には積層体150の完成までに1週間以上かかっていたのに対して、多数の切込みを設けた和紙130で積層体を作製した場合は、数日以下、例えば3日程度で積層体150を作製できた。これによりマネキン人形101のような大型造形物の製造コストを効果的に低減できる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0049】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0050】
101 マネキン人形、110 本体、111 頭部、112 胴部、113 右腕部、114 左腕部、115 右脚部、116 左脚部、120 支持台、130、136 和紙、132 切込み、134 縁部、140 雄型、150 積層体、162、166 支持板、164 紙管、168 差し込み部、170 支持部