(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】マイクロ流体の細胞培養のためのマイクロインキュベーションシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/04 20060101AFI20220405BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12M1/04
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2020136439
(22)【出願日】2020-08-12
(62)【分割の表示】P 2019087910の分割
【原出願日】2012-12-03
【審査請求日】2020-09-11
(32)【優先日】2011-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504115013
【氏名又は名称】イー・エム・デイー・ミリポア・コーポレイシヨン
(73)【特許権者】
【識別番号】514138189
【氏名又は名称】フィリップ・ジェイ・リー
【氏名又は名称原語表記】LEE,Philip,J.
【住所又は居所原語表記】1106 Bay St.,Alameda,CA 94501 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】514138190
【氏名又は名称】テリー・ガイジ
【氏名又は名称原語表記】GAIGE,Terry
【住所又は居所原語表記】2544 Barrington Court,Hayward,CA 94545 U.S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】514138204
【氏名又は名称】ウェイ・シュアン・ホー
【住所又は居所原語表記】1034 Gull Avenue,Foster City,CA 94404 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ジェイ・リー
(72)【発明者】
【氏名】テリー・ガイジ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ・シュアン・ホー
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-508589(JP,A)
【文献】国際公開第2010/141921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気マニホールドを培養プレートにシールするための自動化処理装置において、
空気的リニアアクチュエータシリンダー;
2個の位置センサ;
前記空気マニホールドを上方からの眺めをブロックすることなく、前記空気マニホールドを横から把持するための2個のアーム;及び
前記培養プレートを把持するためのプレートキャリッジ及びプレート把持部
を備え、
前記装置は、シリンダーの動きにより前記プレートキャリッジを前記空気マニホールドの下の位置へ水平に移動させるように構成され、及び
前記装置は、前記シリンダーの動きにより前記マニホールドを前記プレート上に下降させるように構成される装置。
【請求項2】
前記シリンダーが前記アームに取り付けられ、前記シリンダーが水平方向及び垂直方向への動きを与える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記空気マニホールドと前記培養プレートとの間
のシールが、必要な初期の下方への力を機械的に加えながら、前記空気マニホールドを通って前記培養プレートの格子エリアまで真空を適用することにより達成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記培養プレートの上方のエリアが、前記空気マニホールドの配置前にクリアであり、自動化液体ハンドラによるアクセスを可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記培養プレートの上方のエリアが、前記空気マニホールドの操作中にクリアであり、操作中の培養エリアの観察を可能にする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
知的ソフトウェアベースの制御及びエラー処理を可能にするための1個以上の真空及び圧力センサならびにプレート存在及びキャリッジ位置センサをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の実施形態において、制御された環境にて細胞または他の生物材料を培養するためのアッセイ、システムおよび/またはデバイスに関し、および一般にマイクロ流体システムを用いる関連した技術分野に適用することができる。具体的な実施形態として、種々の標準的な自動操作システムとともに、および能動的または受動的な媒体のロードまたはかん流とともに、および培養、観察および細胞成長、浸潤、運動性、走化性または他の特性の分析のためのハイスループットのマルチアッセイ自動化システムを提供するために用いることができる形態を含む。より具体的には、本発明は、具体的な実施形態において、マイクロ流体の培養プレートのための熱制御システム、および培養プレートのための他の自動化システムに関する。
【0002】
関連する出願に対するクロスレファレンス
本願は、2011年12月3日出願の仮出願61/566,651の優先権の利益を求めるものであり、全ての目的のために言及することにより本願に組み込まれる。
本願は、以下の仮出願のそれぞれを言及することにより組み込む:
61/367,371、2010年7月23日出願
61/297,278、2010年1月21日出願
61/471,103 2011年4月1日出願
本願は、以下の一つ以上の出願において検討された材料に関し、全ての目的のためにそれぞれを言及することによりここに組み込まれる:仮出願61/037,297(2008年3月17日出願);仮出願61/018,882(2008年1月3日出願);PCT/US06/26364(2006年7月6日出願)の国内移行であり、仮出願60/773,467(2006年2月14日出願)および仮出願60/697,449(2005年7月7日出願)からの優先権を主張する米国特許出願11/994,997号明細書(2008年8月11日出願);米国仮出願60/900,651(2007年2月8日出願)からの優先権を主張する米国特許出願12/019,857(2008年1月25日出願);米国仮出願60/756,399(2006年1月4日出願)からの優先権を主張する米国特許出願11/648207(2006年12月29日出願);および米国特許出願12/348907(2009年1月5日)。
【0003】
著作権への言及
37CFR1.71(e)に準じて、出願人は、本願開示の部分が、著作権保護の対象である材料(限定されないが、例えばダイアグラム、デバイスの写真または著作権保護のための、または裁判所において利用され得る提出物のいかなる他の側面)を含むことに言及する。この著作権保持者は、特許商標庁のファイルまたは記録において現れるような、特許書類または特許開示のいかなる者によるファクシミリ再生に対して異存はないが、他のいかなるものの著作権は留保する。
【背景技術】
【0004】
作業、公開、販売、または本願とともに提出される書類を含む提出物でいかなる場所での活動も、このような作業が先行技術を構成することを自認するものと理解されるべきではない。ここでの作業、公開またはいかなる活動への言及も、そのような活動、作業または公開が存在し、または特定の裁判所において知られたことを自認するものでもない。
【0005】
マイクロ流体の細胞培養は、薬物スクリーニング、組織培養、毒性スクリーニングおよび生物学的研究における適用のための重要な技術であり、改善した生物学上機能、より高品質の細胞ベースのデータ、低減された試薬消費、およびより低コストを実現することができる。高品質の分子および細胞サンプル調製は、種々の臨床上、研究上、および他の適用のために重要である。インビボ特性を厳密に表現するインビトロサンプルは、潜在的に、広範囲の分子および細胞適用に利益をもたらすことができる。細胞または他の生物学的あるいは化学的に活性な材料(例えば、種々の生体分子で皮覆されたビーズなど)の操作、特性評価、培養および視覚化は、薬物送達、病気の診断および分析、および他の治療的および試験的な作業の分野において、ますます価値あるものになってきた。
【0006】
マイクロ流体システム、デバイス、方法および製造に関連する多くの側面が、上記で言及され、および関連した特許出願において検討されている。特に、これらの出願から本願クレームに読まれるような制限はないが、これらの組み入れた書類は、具体的な実施形態に関連する有用な背景材料を提供する。
【0007】
マイクロ流体システムを用いた細胞培養に関して種々のストラテジーおよび関連する活動を検討する他の公開および/または特許文献が、以下の米国特許出願および非特許文献を含み、これらは全ての引用に沿って全ての目的のために言及することによりここに組み込まれる。これらの言及のリストは、これらが先行技術を構成することを指摘するものではない。
【0008】
サイトプレックス社(Cytoplex, Inc.)6,653,124、「細胞培養、細胞監視および薬物標的検証のためのアレイベースの微環境」
セロミクス社(Cellomics, Inc.)6,548,263、「細胞ベースのスクリーニングのための微細化された細胞アレイ方法および装置」
【0009】
フルイディグム社(Fluidigm, Inc.)公開特許公報20040229349(2004年11月18日)、「マイクロ流体の粒子分析システム」
【0010】
少なくとも一名の本願発明者を含む、上記で挙げたような先行する作業および特許出願が、マイクロ流体の細胞培養に関連する種々の形態、方法、およびシステムを検討しており、その作業およびこれら公開は言及することによりここに組み込まれる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、改善されたマイクロ流体の細胞培養デバイスおよびシステム、特に制御された温度およびガスパラメータの下での細胞の培養および/または分析および/または観察のためのシステムに関連する種々の構成要素、システム、および方法を包含する。一つの側面において、本発明は、いくつかの実施形態において、より便利で目立たない加熱およびガス制御装置を提供し、および自動操作を提供する、従前に提案された培養システムよりも利点のある新規のマイクロ流体の細胞培養デバイス、システムおよび方法を包含する。もう一つの側面において、本発明は、種々の複数の細胞培養ユニットシステムにおける複数のマイクロ流体の細胞培養ユニットを用いた加熱およびガス制御装置を、例えば種々の標準ウェルプレートフォーマット(例えば96穴SBS培養プレート、または6、12、24、96、384、1536サンプルウェルを有するプレートを含む他のプレートフォーマット、ならびに開放底面の標準ウェルプレート、ならびに細胞培養および/または観察のための特定のエリアを有するプレートなど)を含むマイクロタイターウェルプレート構造物に集積するための新規の構造物および方法を包含する。
【0012】
ガスおよび/または温度制御装置を有する離脱可能なマルチチェンバープレートマニホールド
具体的な実施形態および実施例において、設計特性としては、プレート自身に対するチューブやコネクタの撤廃を可能にし、かつ、ガスシールを用いてプレート上に適合した離脱可能なマニホールドにおいて大部分または全てにて含まれる温度制御装置および監視装置を提供することにより、細胞を容易に観察する可能性を保持し、かつ、培養プレートから容易に離脱可能である培養プラットホームにて温度および/またはガス制御をしながら長期の細胞培養を保持する可能性を提供する、便利なフォーマットでの細胞培養デバイスを提供することが挙げられる。本発明のシステムは、培養プレート上の種々の細胞培養ユニット、例えば細胞浸潤を測定するための細胞培養ユニット、ゲル培養媒体を有する培養ユニット、およびここで述べまたは組み込んだ関連出願にて記載されたような他の種々の培養ユニットを含む、上記で言及した特許出願で記載されたものとともに用いることができる。
【0013】
生細胞は一般に、栄養およびガス交換、温度調節、およびストレスからの保護を含む物理的環境について注意深い制御が必要とされる。高度なマイクロスケールの細胞培養方法、例えば上記で言及した特許出願で記載されたような方法は、構造的な制御(マイクロ加工)およびかん流制御(マイクロ流体)を可能にする。
【0014】
マイクロ流体の細胞培養チェンバーとコンタクトをとるマイクロインキュベーション、およびマイクロインキュベータチェンバー/ウェル
具体的な実施形態によれば、本発明は、マイクロインキュベーションとしてときどきここで言及されるこの分野の更なるエリアに向けられ、マイクロスケールの細胞培養システムにおける使用のための温度およびガス雰囲気の制御装置を、観察装備に対して目立たず、およびさらには具体的な実施形態にて培養プレートから容易に着脱される方法で提供する。
【0015】
具体的な実施形態によれば、本発明は、動的、連続的な温度およびガス調節を直接マイクロ流体チェンバーに行うための、伝統的な細胞培養インキュベータ概念の微細化を提供する。実行例において、これは、マイクロ流体の細胞培養チェンバー(1μl)とコンタクトをとる、5mL容量のマイクロインキュベータチェンバーの創造を通じて可能である。マイクロインキュベータの温度およびガス含有量は、(伝導および拡散により)直ちに細胞培養チェンバーに移動する。具体的な実施形態において、マイクロインキュベータは、ここで記載されたような新規のマニホールド設計により保持される。本発明の具体的な実施形態によるマニホールドは、種々のシステムおよびソフトウェアにより制御することができる。
【0016】
生細胞の経時的な顕微鏡検査のためのシステム
多くの製品および方法が、生細胞の経時的な顕微鏡検査を可能にしている。通常知られる以下の三つのアプローチが一般的に理解されている:(1)完全な顕微鏡エンクロージャ、(2)顕微鏡用インキュベータ、および(3)かん流チェンバー。
【0017】
完全な顕微鏡エンクロージャは、熱生成または熱感知構成要素、例えばカメラおよび照明源などの顕微鏡概念の全体を取り囲む。このエンクロージャ内のエアは、サンプルの所望の温度およびガス環境にて、循環され、および保持される。この方法の利点は、顕微鏡全体の温度制御が、室温変動による焦点流れを大幅に低減させることにあるが、多くの欠点としては、高価で、かつ、カスタマイズされた構築物、顕微鏡へのアクセスの障害、およびエネルギーおよびガスの高い消費が挙げられる。湿気に曝すことおよび繰り返される温度変化も、顕微鏡に損傷を与え得る。
【0018】
顕微鏡用インキュベータは、一つ以上のペトリ皿、スライドまたは他の培養プラットホームを収納するための小さな容量のみを取り囲む。これらは、局所的な温度調節を提供し、限定的なガス環境制御を可能にする。それらは便利であるが、顕微鏡用インキュベータが疑似的なエンクロージャ機構であるため、顕微鏡エンクロージャと同等の制御レベルを提供しない。とはいえ、小さいサイズでかつ顕微鏡に適応させたものではある。例えば、顕微鏡用インキュベータにおける均一な温度制御は、ステージ自体のヒートシンクによる限定的なものであり、さらに光学的明瞭性のための光路の提供のためのカットアウトが均一性を低減させる。さらに、顕微鏡用インキュベータの複雑な設計が、インキュベータを高価なものとしている。
【0019】
かん流チェンバーは、一般に、チェンバーの壁を介して直接の、または注入口流路の直上流のいずれかの加熱要素を備えた流動液体容量を取り囲むアセンブリからなる。制御要素の設計は、熱/質量移動により安定した状態で条件を維持することが困難になり得るため、注意深く検討される必要がある。現在、流動チェンバーは、典型的な用途に適合させるのに無数の困難性があるため、生細胞イメージングにおいては、頻繁に用いられていない。
【0020】
これに対して、本発明は、温度、流量、およびガス制御装置を、マイクロ流体プレートへシールするマニホールドの使用によりマイクロ流体培養プレートに直接的に集積する。いくつかの側面で似たマニホールドがマイクロ流体プレート上でかん流を制御することは、上記で言及した出願のいくつかで検討されているが、従前の設計にはここで述べた特徴の全てを組み込まれているわけではない。なぜならば、このような組み込みは、マニホールドや培養プレートが小さいという性質から困難であったからである。本発明のマニホールド設計としては、マニホールドの操作により創造される新規の温度またはガス「マイクロインキュベータ」の区画が挙げられる。これらの区画は、生細胞イメージングの要求に対して適切な集積のための新規、かつ、臨界的な利点を提供することを実証してきた。
【0021】
本発明は、顕微鏡のステージ上で、外部環境のチェンバー、例えばエンクロージャや顕微鏡用ヒータの使用をすることなく、直接細胞培養を可能にする。本発明の具体的な実施形態による「マイクロインキュベータ」概念は、正確な制御、長期の細胞培養、およびこの文脈において他の設計では利用できていなかった条件の動的な変更の容易さを提供する。
【0022】
ここで詳細に検討した多くの実施例が標準またはカスタムウェルプレートと連結して使用されるよう設計されるが、具体的な実施形態によれば、ここで述べた種々の形態のマイクロ流体構造物および培養ユニットおよびシステムおよび方法が、いかなるウェルプレート、例えばウェルプレートに連結して用いられるように構成されていない種々の集積ラボオンチップシステム、または種々の他のマイクロ流体デバイスあるいはシステムにも独立して配置することができる。
【0023】
明確性の目的として、この議論は、具体的な実施例に関して、デバイス、方法、および概念に言及する。しかしながら、本発明およびその側面は、種々のタイプのデバイスやシステムへの適用性を有する。したがって、本発明は、添付のクレームおよび等価物にて規定される場合を除き、限定されることがないことを意図している。
【0024】
さらに、ここで述べられたようなシステムおよび方法が、種々の異なる構成要素および異なる機能をモジュール様式にて包含することができることは当業界においてよく知られている。本発明の異なる実施形態として、要素や機能の異なった混合を挙げることができ、および種々の機能を種々の要素の部分としてまとめてもよい。明確性の目的として、本発明は、多くの異なった革新的な構成要素、および革新的な構成要素および公知の構成要素の革新的な組合せを含むシステムに関して述べられる。本発明を、本願明細書における具体的実施態様にリストされた全ての革新的な構成要素の組合せに限定すると理解されるような推論はあってはならない。ここで特に述べられない限りは、ここで記載されたいかなる組合せは、これらの要素のサブセットの各々のサブコンビネーション、およびここで記載された他の要素または当業者に理解されるものである要素と組み合わせたこれら要素のセブセットのいかなるサブコンビネーションを包含すると理解されるべきである。
【0025】
以下の図面および詳細な説明では、本発明が、複数の構成要素のデバイスまたはシステムの重要で独立した実施形態に関して記載されているものもある。これは、本発明の種々の新規な側面を制限するものと理解されるべきではなく、ここで提供された教示内容を以て、他の多くの状況に適用され得るものである。以下の図面および詳細な説明では、本発明が、構造物の寸法、液体の圧力または容量、温度、電気的値、持続時間などに関する特定のパラメータを含む多くの特定の具体的な形態に関して記載されているものもある。添付のクレームにて述べられない限り、これらパラメータは具体例として提供されたものであり、本発明を限定するものではなく、異なった寸法の他のデバイスやシステムを包含する。より明快な説明を提供する目的として、本発明の具体的な実施形態によるシステムの構築またはデバイスの製造のために意図された、特定の公知の製造ステップ、細胞取扱いステップ、試薬、化学的または機械的プロセス、および他の公知の構成要素が具体例として与えられる。ここで特に言及しない限り、種々の公知の置換をここで記載されたプロセスに行うことが可能であることは、当業者により理解されるであろう。
【0026】
この提出物における全ての言及、公開、特許、および特許出願は、全ての目的のために全てにおいて言及することにより本願に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、ウェルプレートおよび顕微鏡ビューアを備えたマイクロインキュベータシステムにて実施されている状態を示す、本発明の具体的な実施形態による実施例のマイクロインキュベータマニホールドの側面図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の具体的な実施形態によるヒートコントローラを備えたマニホールドの上方から平面視した一例を示す。
【
図3】
図3は、本発明の具体的な実施形態による、ウェルプレートにシールされ、かつ、顕微鏡ビューアに搭載されるヒートコントローラを備えたマニホールドの上面図の一例を示す。
【
図4】
図4は、96穴の標準SBSプレート上に配置された四つの培養ユニットを備えた培養プレートの一例を示す。この実施例は、六つの注入口ウェル(A1-D6にラベルされる)、大きな楕円窓の下に位置する四つのマイクロ流体培養エリア、および二つの排出口(7-8)を備える、四つの培養ユニット(A-Dにラベルされた列に対応)を示す。これは、単なる具体例に過ぎず、種々のウェルおよび構成要素の置換および設計を、異なる実行例ごとに変えられる。
【
図5A】
図5Aは、本発明の具体的な実施形態による、様々の視野からのヒートコントローラを備えるマニホールドの実行例の概略図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の具体的な実施形態による、様々の視野からのヒートコントローラを備えるマニホールドの実行例の概略図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の具体的な実施形態による、様々の視野からのヒートコントローラを備えるマニホールドの実行例の概略図である。
【
図5D】
図5Dは、本発明の具体的な実施形態による、様々の視野からのヒートコントローラを備えるマニホールドの実行例の概略図である。
【
図6A】
図6(A)は、本発明の具体的な実施形態による熱交換モジュールの下部を示す。この下部は、マニホールドの空気部分に取り付けられる。
【
図6B】
図6(B)は、本発明の具体的な実施形態による熱交換モジュールの上部を示す。
【
図7】
図7は、培養プレートにシールされ、かつ、環境制御ボリュームにインラインで接続するガスを示す、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドの空気部分の概略側面図である。
【
図8】
図8は、ポジティブシールが全ウェルの周囲のキャビティを真空にすることにより創造された、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドがマイクロ流体プレートにどのように接続するのかを示す概略である。図中、加熱ユニットは示されていない。
【
図9】
図9は、従前のマニホールド設計に従い、追加のガスラインおよび加熱した対物レンズを備えたマニホールドを示す。
【
図10A】
図10Aは、従前の設計による空気マニホールドの実施例の概略の上面図を示す。本実施例において、右側への八つのチューブラインが圧縮エア用であり、それぞれがマイクロ流体アレイの細胞注入口ウェルに圧力を付与するよう構成されている。そして、図中、一番左側のラインが真空用であり、マニホールド周囲の外部真空リングに接続する。この基本的なマニホールド設計は、加熱されたマニホールドを得るために、ここでの教示内容を用いて改変される。
【
図10B】
図10Bは、従前の設計による空気マニホールドの実施例の概略の側面図を示す。本実施例において、右側への八つのチューブラインが圧縮エア用であり、それぞれがマイクロ流体アレイの細胞注入口ウェルに圧力を付与するよう構成されている。そして、図中、一番左側のラインが真空用であり、マニホールド周囲の外部真空リングに接続する。この基本的なマニホールド設計は、加熱されたマニホールドを得るために、ここでの教示内容を用いて改変される。
【
図10C】
図10Cは、従前の設計による空気マニホールドの実施例の概略の平面図を示す。本実施例において、右側への八つのチューブラインが圧縮エア用であり、それぞれがマイクロ流体アレイの細胞注入口ウェルに圧力を付与するよう構成されている。そして、図中、一番左側のラインが真空用であり、マニホールド周囲の外部真空リングに接続する。この基本的なマニホールド設計は、加熱されたマニホールドを得るために、ここでの教示内容を用いて改変される。
【
図11】
図11は、本発明の具体的な実施形態による、マイクロ流体のかん流システム(ONIX(商品名))、マイクロインキュベータコントローラおよびマニホールド(MIC)の実施例を示す。
【
図12】
図12は、本発明の具体的な実施形態による、マイクロ流体のかん流システム(ONIX(商品名))、マイクロインキュベータコントローラおよびマニホールド(MIC)ならびにコンピュータ制御システムの実施例を示す。
【
図13】
図13は、本発明の具体的な実施形態によるマイクロインキュベータシステムを用いて培養されたNIH-3T3マウス繊維芽細胞を示す(0時間(左)、15時間後(右)、細胞成長と生存能力を示す)。温度およびCO
2を制御していない場合、細胞は2時間以内に速やかに死亡した。
【
図14A】
図14は、本発明の具体的な実施形態による、青色染料で満たした培養ユニットの実施例を用いたプレートおよび培養ユニット設計の変形の一つを、上方からの撮像イメージとともに示す。
【
図14B】
図14は、本発明の具体的な実施形態による、青色染料で満たした培養ユニットの実施例を用いたプレートおよび培養ユニット設計の変形の一つを、上方からの撮像イメージとともに示す。
【
図15】
図15は、ONIXマイクロ流体かん流システムの集積を、オープンソースの顕微鏡アプリケーションとともに示すスクリーンショットである。
【
図16】
図16は、細胞分析のために顕微鏡システムを用いて集積されたマイクロインキュベーションシステムを示す。具体的な実施形態におけるマニホールドの寸法は、光学顕微鏡と干渉しない透明な光路とともに標準ウェルプレートステージ上に乗るようにするものである。これは、マイクロインキュベータにて培養された細胞の経時的イメージングを可能にする。
【
図17】
図17は、本発明の種々の側面が具体化される、論理デバイスの代表的な実施例のブロック図である。
【
図18A】
図18Aは、本発明の具体的な実施形態による、自動ピストン駆動システムを示すブロック図である。
【
図18B】
図18Bは、本発明の具体的な実施形態による、自動ピストン駆動システムを示すブロック図である。
【
図19】
図19(表1)は、本発明の具体的な実施形態により、病気、疾患、または見積可能なまたはどの薬物または他の治療を試験することができるのかの状態の一例を示す。
【
図20A】
図20Aは、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドのための電子制御回路の実行例の概略を示す。
【
図20B】
図20Bは、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドのための電子制御回路の実行例の概略を示す。
【
図20C】
図20Cは、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドのための電子制御回路の実行例の概略を示す。
【
図20D】
図20Dは、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドのための電子制御回路の実行例の概略を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
1.概略
定義
「粒子」は、生物学上の細胞、例えば哺乳類またはバクテリア細胞、ウイルス粒子、またはリポソームのまたは本発明に従ったアッセイの対象とすることができる他の粒子に言及する。このような粒子は、約50~100nmの間で最小寸法を有し、20ミクロン以上の大きさであってもよい。本発明に従った細胞アッセイを記載するために用いられるときは、「粒子」および「細胞」の用語は、区別しないで用い得る。
【0029】
「マイクロチャネル」または「チャネル」または「フローチャネル」は、一般に、本発明の具体的な実施形態によるシステムおよびデバイスの種々の構成要素を流体的に接続するミクロンスケールの流路に言及する。マイクロチャネルは、典型的には、矩形形状、例えば正方形など、または丸みを持った横断面形状を有し、好ましい実施形態における横方向または深さ方向の寸法が、それぞれ10および500ミクロンの間、および10および500ミクロンの間である。マイクロチャネル中を流れる流体は、マイクロ流体の振る舞いを呈することができる。本発明のマイクロウェルアレイデバイス内のマイクロチャネルに言及するために用いられるときは、「マイクロチャネル」および「チャネル」の用語は、区別しないで用いられる。「フローチャネル」は、一般に、媒体、試薬または他の流体やゲルの通路のために、および実施形態のいくつかでは細胞のために設計された流路を意味する。「培養チャネル」または「細胞培養チャネル」は、一般に、細胞が流れて通過し、かつ、細胞培養の間には留まるように設計された(ただし、いくつかの実施形態においては、細胞は培養チャネルの特定の培養エリアに位置してもよい)細胞培養構造物の部分を意味する。「エアチャネル」は、一般に、ガス、例えばエア、酸素リッチな混合物などを、フローチャネルや培養エリアに近接して通過するように用いるために、およそミクロンスケールの流路を意味する。「かん流チャネル」は、媒体を培養エリアにかん流させることを可能にする、フローチャネルおよび他のかん流通路または構造物を示すためにときどき用いられる。
【0030】
「かん流バリア」は、一般にフローチャネルを細胞培養エリアまたはチェンバーから分ける、ソリッド構造物およびかん流通路の組合せに言及する。かん流通路は、一般に、マイクロチャネル高さおよび/または幅より小さく(例えば、5~50%のオーダーで、または約10%のオーダーで)、かつ、細胞、他の培養種目、およびいくつかの実施形態においてはゲルをフローチャネルへ移動しないよう維持する一方で、一般にフローチャネルの中の流体の流れよりも非常に高い流動抵抗を有するいくつかの流体の流れを許容するよう設計される。実施形態のある実施例において、かん流バリアは、4ミクロン高であり、さもなければマイクロチャネルの長さのほとんどを占めるかん流通路を有する。他の実施形態においては、かん流バリアは、マイクロ流体チャネルとおよそ同じ高さであるが、約4ミクロン幅の、多くのかん流通路を有する。
【0031】
「マイクロ流体デバイス」は、ミクロンスケールのマイクロチャネルにより接続される種々のステーションまたはウェル(ここでは流体がチャネルを通じて流れの中でマイクロ流体の振る舞いを示す)を有するデバイスに言及する。
【0032】
「マイクロウェルアレイ」は、基板上に形成された二つ以上のマイクロウェルのアレイに言及する。
【0033】
「デバイス」は、当技術にて広く用いられる用語であり、広範囲の意味を包含する。例えば、最も基本的で、かつ、詳細ではないレベルでは、「デバイス」は、単純に、チャネル、チェンバーおよびポートなどの特徴部分を有する基板を意味してもよい。詳細の度合いを引き上げたレベルでは、「デバイス」は、上記の特徴部分、または協同してまたは独立に操作するマイクロ流体の特徴部分を有する他の層を取り囲む基板をさらに含んでもよい。最も詳細なレベルでは、「デバイス」は、基板の外部世界とマイクロ流体特徴部分との間の相互作用を容易にする物体と結合した、十分に機能的な基板を含んでもよい。このような物体は、後述するように、ホルダ、エンクロージャ、ハウジング、または似た用語として種々に称される。ここで用いられるように、「デバイス」は、これらの実施形態のいずれも、または文脈が示し得る、いずれの詳細レベルにも言及する。
【0034】
マイクロ流体システムは、生物学的な実験を行うための強力なツールを提供する。近年、エラストマーベースのマイクロ流体技術が、その光学的な透明性、ガス透過性および単純な製造方法により、特に需要を獲得してきている。本発明は、種々の培養およびアッセイアプリケーションのために用いられる集積マイクロ流体技術、および培養プレートの加熱制御および種々の自動化操作を提供するためのシステムを取り込む。具体的な実施形態の利点としては、標準サイズのマイクロタイタープレートフォーマット、チューブフリーのプレート、およびガス再循環および加熱制御を提供するための簡単で効果的なマニホールドとプレートとの組合せが挙げられる。
【0035】
本発明の更なる実施形態によれば、前述してきたが、新規な細胞ローディングシステムは空気マニホールドおよび空気圧を用いて、細胞をマイクロ培養エリアに配置する。この細胞ローディングシステムの追加により、標準タイタープレートを操作するために存在する他の自動化装備を用いて、マイクロ流体細胞培養および分析を十分に自動化することができる。本発明において、加熱およびガス循環の要素をマニホールドに組み込み、マイクロインキュベータシステムを提供する。
【0036】
更なる実施形態において、重力駆動の流動培養形態は、注入口および排出口間での媒体位置の差、ならびに所望の流動速度をnL/min単位で達成するための流動抵抗の技術を利用し、インキュベータ等の環境下で大きな外部ポンプやチューブを用いることなく、長期間(例えば4日まで)の培養媒体を「受動的に」流すために用いて、温度を制御することができ、そして上述のように、観察している間、熱制御マニホールドを細胞培養の制御のために用いることができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、カスタム空気流動コントローラを、マニホールドのガスおよび電気的コネクタに取り付け、これにより細胞を培養領域にロードし、異なった暴露溶液間を切り替え、かつ、培養領域の温度を制御することができる。デジタルソフトウェアのインタフェースを、使用者に対して、経時的イメージングの複合的作用に細胞を曝している時間にわたって、温度およびガス暴露を所望するように維持または変動させながら、特定の入力(パルス、傾斜など)をプログラムすることを可能にするために用いることができる。
【0038】
2.マイクロ流体培養システムおよびアレイ
上記で言及した出願は、種々の異なった細胞培養形態および製造技術について記載していた。細胞培養エリアの操作および材料の部分は、本考察に対する背景として有用である。そこでのいくつかの実施例において、一つ以上のマイクロ培養エリアは、格子状の流体の通路(または拡散注入口または導管、ここでは格子は高い流動抵抗のかん流通路が交差する複数の点を有する)を介して媒体または試薬チャネルと接続している。一つの検討された実施例において、格子の中の通路は、1~4μm高さ、25~50μm長さ、および5~10μm深さであり、この格子は媒体または試薬チャネルと培養エリアとの間でより均一な拡散を可能し、およびより容易な製造およびより均一な拡散を可能にする。さらに、先行する出願は、マイクロチェンバーおよびかん流/拡散通路または格子の間での高い流動抵抗比(例えば、約10:1、20:1~30:1の範囲の比)が細胞培養のための多くの利点、例えば(1)細胞のサイズ排除;(2)マイクロチェンバー内の細胞の配置;(3)細胞成長のための均一な流動環境の促進;(4)マイクロチェンバーまたは培養エリアのアレイを構成する能力;(4)製造の容易さ;(5)広大なバルブのネットワークなしでの試薬の操作を提供することが記載されていた。具体例は、本発明の具体的な実施形態によれば格子様のかん流バリアを培養エリアよりも一層短くできるか、あるいは近い高さかまたは同じ高さとすることができるか、およびさらに培養デバイスの種々の形態が説明されていることを説明していた。
【0039】
3.熱制御装置を有する空気マニホールド
上記で記載したように、多くの培養システムにおける一つの困難性は、細胞過程を観察しながら、培養エリアにおける加熱および温度をどのようにして制御するのかである。従前の解決法は、例えば顕微鏡ビューアからウェルプレートに適用する加熱源によるもの(例えば
図11を参照)、または制御下の環境に全システムを含ませることによるものであった。
【0040】
本発明は、全てまたはほとんど全ての熱および温度制御装置を典型的な離脱可能なマニホールド内に配置する、または取り付けることにより改善された培養システムを提供する。好ましい実施形態においては、マニホールドは観察装備と干渉しないように操作可能になるよう構成される。本発明は、具体的な実施例の説明への言及により、より容易に理解することができるが、これらの実施例は説明のためのものであって、限定することは意図しない。
図1は、ウェルプレートおよび顕微鏡ビューアを備えたマイクロインキュベータシステムにて実施されている状態を示す、本発明の具体的な実施形態による実施例のマイクロインキュベータマニホールドの側面図を示す。
図2は、本発明の具体的な実施形態によるヒートコントローラを備えたマニホールドの上方から平面視した一例を示す。
図3は、本発明の具体的な実施形態による、ウェルプレートにシールされ、かつ、顕微鏡ビューアに搭載されるヒートコントローラを備えたマニホールドの上面図の一例を示す。
図4は、96穴の標準SBSプレート上に配置された四つの培養ユニットを備えた培養プレートの一例を示す。この実施例は、六つの注入口ウェル(A1-D6にラベルされる)、大きな楕円窓の下に位置する四つのマイクロ流体培養エリア、および二つの排出口(7-8)を備える、四つの培養ユニット(A-Dにラベルされた列に対応)を示す。
【0041】
したがって、具体的な実施形態によれば、マイクロインキュベータのマニホールドは種々のマイクロ流体プレートと接続することができ、細胞ローディング、かん流、温度およびガス環境制御装置の一つ以上を提供する。対流熱交換器は、ペルチエ式熱電デバイスを用いて、熱をガス混合物に追加したり、除去したりする。細胞は、温かいガス混合物から伝えられる熱を通じて温かく保持され、所望のガス濃縮物が、細胞の周囲の媒体に、マイクロ流体プレート上のガス透過性膜を通じて拡散する。
【0042】
図1からわかるように、具体的な実施形態によるマニホールドが培養プレートを覆うように配置した場合、シールされたガスチェンバーが熱交換器から、マニホールドの下方、および培養マイクロ流体の上方のエリアへと形成される。マイクロ流体上方のエリアに導入されるガスは、熱交換器内でファンまたは他のガス循環手段により循環され、マニホールドを用いて培養エリア上方のガス環境および温度の両方の制御を提供する。
【0043】
本発明の具体的な実施形態によるこの設計は、小さいスペースでの効果的な加熱を提供し、ガス組成も制御しつつ、細胞自身に制御された温度を伝えるという課題を解決する。本発明の具体的な実施形態によれば、マイクロインキュベータマニホールドは、ガス組成を制御するためのガス入力口と再循環ファンとを含む。
【0044】
図1に示した実行例において、制御および加圧されたガスがガスライン5を通じてマニホールドに入る。本実施例では便宜上、マニホールドの空気部分を二つの部分、上部要素10aおよび底部要素10bに示す。この底部要素は、多くのウェル22を有するプレート20にしっかりと適合させるためのガスケットを有する。このマニホールドの空気操作およびウェルプレートへの適合は、ここで言及した特許出願に記載されたとおりである。マニホールドは、内部熱交換フィン42および透明カバープレート44(例えばガラス、アクリルなど)を有する、熱交換モジュール40も含む。マニホールドがプレート10を覆うように配置した場合、培養エリア上方の開放領域が加熱要素と接続し、ガス循環領域30を形成する。本文中、デバイスを示すために、顕微鏡および照明要素102および104が、一般に操作中に用いられるように示される。ウェルプレートは、上述したように、標準またはカスタムウェルプレートのいずれも使用することができる。マニホールド40の異なる形態が異なったウェルプレート設計に適応させるように構成されることは、ここで提供される教示内容から理解されるであろう。
【0045】
マニホールドにおける再循環
本実施例の設計において、ガスおよび加熱制御装置および要素が完全にマニホールドの中に収められ、およびマニホールドは異なって構成されるマイクロウェルプレート、例えば熱源を受けるように特に決まった修正を加えることなく、マイクロウェルプレートをいくつでも結合することができる。
【0046】
具体的な実施形態によれば、二つのファンが熱交換要素において用いられ、一つはガスエリアのシールガスを循環させるため、およびもう一つは熱交換器と相互作用するためである。
【0047】
図5A-Dは、本発明の具体的な実施形態による、様々の視野からのヒートコントローラを備えるマニホールドの実行例の概略図である。マニホールドの空気部分は、前述した設計と同様に動作する。熱交換モジュールは、より詳細に後述する。
【0048】
マニホールド熱交換モジュール
一つの具体的な実施形態における熱交換モジュールは、チェンバー内の温度を、所望の温度でのエアの循環により制御する。実施形態のある実施例において、温度制御は熱電ペルチエモジュールにより提供され、それは電流を温度傾斜に変換することでよく知られたデバイスであり、かつ、加熱または冷却のいずれかを行う温度コントローラとして用いることもできる。他の加熱源が本発明のマニホールドにて用いることができるが、ペルチエモジュールは、熱交換モジュールおよびマニホールドにすっかり取り込むことができるため、本発明の好ましい機構である。
【0049】
実行例において熱交換モジュールは、三つの主な外部部品を有する:(1)金属の上面エンクロージャ;(2)プラスチックの底面エンクロージャ;および(3)エアをプレートの細胞培養チェンバーに流し、循環しないようにするためのだ円の切り口を有するマニホールド。
【0050】
プラスチックの底面エンクロージャ
図6(A)は、本発明の具体的な実施形態による熱交換モジュールの下部を示す。この下部は、マニホールドの空気部分に取り付けられる。(B)は、本発明の具体的な実施形態による熱交換モジュールの上部を示す。具体的な実施形態において、底部のプラスチックのエンクロージャは、マニホールドの上部(または、例えばねじ、接着剤またはその他の手段により)に取り付けられる。このエンクロージャの底面は、二つの2mm深さの流路の切り欠きがある。これらの流路は、イメージング用チェンバーの上方で一つに結合する。結合するとき、流路の深さは3mmまで上がる。流路の外れの周囲には、流路と周囲との間でのエアの交換を防ぐOリングが存在する。流路のサイズは、所望の流量が細胞培養チェンバーに循環するように十分な幅でなければならない。これは、プレート細胞培養領域および(温度プローブの位置での)熱交換モジュールの温度を低減させる。
【0051】
流路の上には、垂直な突出部を配置する。それは三つのチェンバーを含む。一つの流路上には、ヒートシンクを、もう一つの上にはファンを配置する。三番目のチェンバーは、もう一つのチェンバーと金属の上面エンクロージャにて接続して、ペルチエモジュール、小型の温度プローブ、リレー、マイクロインキュベータコントローラとの接続部分および二つのサーマルカットオフ(一つはそれぞれのヒートシンク用)の配線と接続するPCBボードのための空間を作り出す。温度プローブは、電子チェンバーからファン上のねじ穴を通ってその流路の上部に送られ、エア循環を通じた温度の測定を行う。
【0052】
プラスチックエンクロージャは、1枚の2mmガラスのためのフレームを形成する上部からの切り欠きを有する。加熱の邪魔をすることなく顕微鏡イメージングを行うための光学的条件を創り出すために、このガラスを細胞培養チェンバーの直上に配置する。
【0053】
金属の上面エンクロージャ
金属の上面エンクロージャ(
図6B)は、ペルチエモジュールの他の側面のためのヒートシンクとして作用することを可能にするフィン形状の突出部を有する。加えて、このエンクロージャは、任意に冷却プロセスを加速させるための第二のファンチェンバーならびにプラスチック底面エンクロージャの電子チェンバーと接続するサーマルカットオフのための空間を含む。
【0054】
ファンがエンクロージャの中に配置され、サーマルカットオフがより小さなチェンバーに取り付けられた後、熱グリースが、金属の上面エンクロージャに取り付けるために、ペルチエモジュールの上面に適用される。具体的な実施例においては、プラスチックエンクロージャの底面が、例えばねじや接着剤を用いて、前記上面エンクロージャにしっかりと留められる。
【0055】
細胞培養領域における温度を上げる必要があるときは、ペルチエモジュールは、ヒートシンク上部を冷却することによりヒートシンクの底部を加熱する。下部のファンは、底部のヒートシンクを横切ってその下の流路へホットエアを吹き込む。より冷たいエアがファンに向かって循環して戻りながら、熱せられたエアは細胞培養チェンバーに入る。細胞培養領域における温度を下げる必要があるときは、ペルチエモジュールは、ヒートシンク上部の温度を上げる(室温まで)ことにより、底部のヒートシンクを冷却する。
【0056】
図7は、培養プレートにシールされ、かつ、環境制御ボリュームにインラインで接続するガスを示す、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドの空気部分の概略側面図である。
【0057】
図8は、ポジティブシールが全ウェルの周囲のキャビティを真空にすることにより創り出された、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドがマイクロ流体プレートにどのように接続するのかを示す概略である。図中、加熱ユニットは示されていない。
【0058】
4.従前の空気マニホールド
重力または受動的なローディングがいくつかのマイクロ流体細胞培養デバイスについて効果的で、かつ、いくつかの実施形態にて望まれる一方で、従来より専用の空気マニホールドが上記で言及した出願に記載されていた。これがプレートに結合し、空気圧が、細胞ローディングのため、および浸潤アッセイの間の培養のための細胞注入口エリアに適用される。
図10A-Cは、従前の設計による空気マニホールドの実施例の概略の上面図、側面図、および平面図を示す。本実施例において、右側への八つのチューブラインが圧縮エア用であり、それぞれがマイクロ流体アレイの細胞注入口ウェルに圧力を付与するよう構成されている。そして、図中、一番左側のラインが真空用であり、マニホールド周囲の外部真空リングに接続する。マニホールドは、標準のウェルプレートの上部に配置する。ゴム製のガスケットを、穴をマニホールド(不図示)とマッチングさせながら、プレートとマニホールドとの間に置く。真空ラインは、プレートとマニホールドとを一緒に保持しながら、ウェルの間のキャビティに中に真空を創り出す。圧力をウェルに適用して、液体をマイクロ流体チャネル(不図示)に送り込む。1psiの典型的な圧力が用いられ;したがって、真空の強さは、密閉したシールを維持させるのに十分である。ある実施例において、圧力コントローラに九つのチューブラインがあり;このうち八つのラインが圧力空気用であり、残りの一つが真空用(一番左)である。特定の具体的な実施形態において、各カラムは一つの圧力ラインに接続する。上記の細胞イメージング領域の上のカラムは省略される。
【0059】
加圧を伴う細胞ローディングは、凝集細胞(固形腫瘍、肝臓、筋肉など)の培養物を作成するに際して特に効果的であることが見出されてきた。加圧を伴う細胞ローディングは、効果的にロードされるための延長された培養領域を有する構造をとることができる。細胞ローディングのための加圧マニホールドおよびかん流操作のための受動流れの使用により、本発明は、他の設計にて用いられるような追加の注入口ウェルおよび/またはバルブの要求なしで、適正にシンプルな二つの注入口設計を用いることができる。
【0060】
このマニホールドが、細胞ローディングおよびいくつかのかん流タスクに効果的である一方で、このマニホールドは、培養エリアにわたってのガスの再循環も熱制御装置も事実上提供しなかった。図に示したように、加熱装置は、必要であれば細胞プレートの反対側から、例えば顕微鏡ビューアの近辺から提供される。
【0061】
プレートマニホールドは、任意に、特定のガス環境(例えば5%CO2)を用いて、細胞をマイクロ流体デバイスの中で浸すために使用される、追加の「ガスライン」をも含んでいた。他の実施例としては、酸素および窒素制御装置を含み、いかなるガス混合物を細胞に送ることができる。ガスは、マニホールドを通ってシールされたウェルへ、細胞培養エリアの上方を流れ、および、上述のように、マイクロ流体デバイスにおける穴はガスを特定のマイクロ流体エア流路に流れることを可能にする。ガス透過デバイス層(PDMS)は、ガスを予め細胞に曝しておいた培養媒体に拡散させることを可能にする。ガスを連続してマイクロ流体プレートを通して流すことにより、安定したガス環境が維持される。これは、ガス環境を制御してマイクロ流体プレートをインキュベータに配置するための任意の手段を提供する。
【0062】
図12は、本発明の具体的な実施形態による、マイクロ流体のかん流システム(ONIX(商品名))、マイクロインキュベータコントローラおよびマニホールド(MIC)ならびにコンピュータ制御システムの実施例を示す。
【0063】
ほんの一つの実施例として、
図14は、本発明の具体的な実施形態による、青色染料で満たした培養ユニットの実施例を用いたプレートおよび培養ユニット設計の変形の一つを、上方からの撮像イメージとともに示す。しかしながら、いかなる培養プレートの形態におけるいかなる培養ユニットも、正しく寸法がとられた、本発明の具体的な実施形態によるマニホールドとともに使用することができる。これは、上記で言及した出願において開示されたように開放上部ユニット、浸潤ユニット、肝臓模倣薬ユニット、ゲルユニット、などを含む。
【0064】
細胞アッセイおよび/または観察
細胞アッセイは、標準的な光学ベースの試薬キット(例えば、蛍光、吸収、発光など)を用いて、マイクロ流体細胞培養について直接行うことが可能である。例えば、生細胞による基質の蛍光分子への変換を利用する細胞生死判別アッセイは、実演されてきた(Promega社のCellTiter Blue試薬)。試薬は、フロー注入口容器へ投入され、ある期間(例えば21時間)にわたって細胞に重力かん流を通じて曝される。試薬または他の流体のより速い導入のために、新しい流体をフロー注入口に追加し、続いて細胞注入口容器の吸引を行うことができる。
【0065】
データは、マイクロ流体プレートの中の細胞/流体について、例えばプレートを標準蛍光プレートリーダ(例えば、Biotek Instruments Synergy 2 model)に配置して、直接収集することができる。いくつかの反応において、基質は、排出媒体に拡散させることができ、従って、細胞注入口容器にて容易に検出することができる。細胞イメージングアッセイのために、プレートを走査型顕微鏡またはハイコンテントシステムに配置することができる。例えば、自動化Olympus IX71反転顕微鏡ステーションを、培養された肝細胞の生死判別を捉えるために、20Xの対物レンズと一緒に用いることができる。
【0066】
ウェルを繰り返し充填/吸引を行うことにより、細胞は、最小の努力(例えば、操作中容易に交換することができない、大きな流体容器の大規模な無菌調製物を必要とする標準的「バイオリアクタ」と比較)で、長期間保持することができる。
【0067】
実施例の細胞培養
細胞を、温度およびガス雰囲気を制御するために、マイクロインキュベーションシステムを用いて培養した。一つの具体例において、ヒトのガン細胞(HT-1080、MCF-7、MDA-MB-231)を37℃および5%CO
2で培養して、24時間にわたり細胞分裂を監視した。さらなる細胞タイプ、例えば酵母、バクテリア、一次細胞、神経細胞などは、マイクロインキュベーションシステムを用いて培養に成功してきた。実施例として、
図13は、本発明の具体的な実施形態によるマイクロインキュベータシステムを用いて培養されたNIH-3T3マウス繊維芽細胞を示す(0時間(左)、15時間後(右)、細胞成長と生存能力を示す)。温度およびCO
2を制御していない場合、細胞は2時間以内に速やかに死亡した。
【0068】
集積システム
細胞のデータまたは他のデータの収集および分析のため、ならびに本発明のデータベースの編集、保管、およびアクセスのための集積システムとしては、典型的には、配列サーチおよび/または分析のための命令セットを含むソフトウェア、および任意に一以上のハイスループットのサンプルコントロールソフトウェア、イメージ分析ソフトウェア、収集データ解釈ソフトウェア、デジタルコンピュータと操作可能に連結し、溶液を源から目的地(例えば検出デバイス)へ送るためのロボット制御電機子、対象データをデジタルコンピュータに打ち込むための、または分析操作またはハイスループットサンプルの移送をロボット制御電機子により制御するための入力デバイス(例えばコンピュータキーボード)が挙げられる。任意に、集積システムは、さらにバルブ、濃度勾配、流体マルチプレクサおよび/または上述したようにマイクロチェンバーへのインタフェースのための他のマイクロ流体構造も含む。
【0069】
標準的な操作システムを用いる、容易に利用可能なコンピュータハードウェアリソースは、本発明の集積システムにおける使用のために、PC(Intel x86またはPentium(登録商標)のチップコンパチブルなDOS(商品名)、OS2(商品名)、WINDOWS(商品名)、WINDOWS NT(商品名)、WINDOWS95(商品名)、WINDOWS98(商品名)、LINUX(登録商標)、またはマッキントッシュ、サンなどのPCも可)を採用し、ここで提供される教示に従って修正することができる。ソフトウェアテクノロジーにおける現在の技術は、ここで教示した方法の実行をコンピュータシステム上で行うことを可能にするのに十分である。したがって、具体的な実施形態においては、本発明は、ここで教示された一つ以上の方法を実行するために、一連の論理命令(ソフトウェア、ハードウェアエンコードの命令のいずれも)を含むことができる。例えば、データおよび/または統計的分析を提供するためのソフトウェアは、当業者が標準的なプログラミング言語、例えばVisual Basic、Fortran、Basic、Java(登録商標)などを用いることによって構築することができる。これらソフトウェアは、種々の統計学的プログラミング言語、ツールキット、またはライブラリを利用することもできる。
【0070】
図17は、メディア717、および/または固定メディア722を有するサーバ720に任意に接続することができるネットワークポート719から命令を読み出すことができる論理装置として理解され得る情報家電(またはデジタルデバイス)700を示す。したがって、装置700は、技術的に理解されるような、サーバまたはクライアントの論理回路に指示するためのそれらの命令を使用して、本発明の側面を具体化することができる。本発明を具体化し得る、ある典型的な論理装置は、CPU707、任意の入力デバイス709および711、ディスクドライブ715、および任意のモニタ705を含む、700にて示されたコンピュータシステムである。固定メディア717、またはポート719の向こう側の固定メディア722は、このシステムをプログラムするために用いることができ、およびディスクタイプの光学的または磁気的媒体、磁気テープ、半導体の動的または静的メモリなどを代表し得る。具体的な実施形態において、本発明は、全体または一部において、この固定メディアに記録されたソフトウェアとして具体化される。通信ポート719は、初めに、このシステムをプログラムするために用いる命令を受け取るのに用いることもでき、いかなるタイプの通信接続をも代表し得る。
【0071】
種々のプログラム方法およびアルゴリズム、例えば遺伝的アルゴリズムおよびニューラルネットワークなどは、データ収集、訂正および保管機能、ならびにここで記載された他の望まれる機能の側面を実行するために使用することができる。さらに、デジタルまたはアナログのシステム、例えばデジタルまたはアナログコンピュータシステムは、種々の他の機能、例えばディスプレイの制御、および/またはファイルの入力および出力を制御することができる。本発明の電子的分析方法を実行するためのソフトウェアも、本発明のコンピュータシステムに含まれる。
【0072】
オートシーラ自動化システム
図18は、本発明の具体的な実施形態による、自動ピストン駆動システムを示すブロック図である。更なる具体的な実施形態によれば、一般的に、主要な違いを備えたバイオ技術において使用されるプレートリーダに多少似たオートシーラは、マイクロ流体プレートの自動操作を可能とするシステム構成要素の設計である。この実行において、マニホールドおよびマイクロ流体プレートの間でのポジティブシールは、格子エリアに真空を適用することにより達成されるが、必要な初期の下方への力は機械的に適用される。マニホールドの上のエリアは、自動化液体ハンドリングシステム、例えばTecan社のEVOによるアクセスを可能にするためにきれいにする。真空および圧力センサならびにプレートの存在およびキャリッジの位置センサは、エラー処理ベースの知的ソフトウェアを可能にする。
図18Bは、どのようにして自動シールデバイスがマニホールドを受け入れ、およびマイクロ流体プレートにシールするのかを示すイメージシークエンスである。単一の空気的リニアアクチュエータ(例えばピストン)は、水平的および垂直的な動きを提供する。この単一の操作が、マニホールドおよびプレートのより正確な制御を可能にし、および空気マニホールドの操作の間、プレートを適切な位置に保持することが見出されてきた。
【0073】
他の実施形態
本発明を種々の具体的な実施形態について説明してきたが、本発明がこれら実施形態に限定されるのを意図していない。本発明の精神の範囲内の修正は、当業者にとってすぐに理解される。
ここで記載された実施例および実施形態は、説明のためのものであること、および種々の修正または変更は、それらを考慮して、当業者にここでの教示により示唆され得ること、本出願の精神および範囲内、およびクレームの範囲で含まれることは、理解される。
【0074】
ここで言及し、またはこの提出物とともに提出された、全ての公開物、特許、特許出願、ならびに情報開示義務の部分として提出されたいかなる引用物は、全体として、言及することにより組み込まれる。