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特許7053742工作物をコーティングするシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】工作物をコーティングするシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/00 20160101AFI20220405BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20220405BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220405BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20220405BHJP
   B05B 7/16 20060101ALI20220405BHJP
   B05B 13/02 20060101ALI20220405BHJP
   C23C 4/123 20160101ALI20220405BHJP
   F16D 65/12 20060101ALN20220405BHJP
【FI】
C23C4/00
B05D7/14 L
B05D7/24 302A
B05D3/00 D
B05B7/16
B05B13/02
C23C4/123
F16D65/12 Z
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020148724
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2021042470
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】19196156
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516381459
【氏名又は名称】シュトゥルム マシーネン ウント アラゲンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sturm Maschinen- & Anlagenbau GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 10, 94330 Salching, Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】カルロス マーティイン
(72)【発明者】
【氏名】ローランド バイエル
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-508655(JP,A)
【文献】特開2013-216969(JP,A)
【文献】特開平11-224894(JP,A)
【文献】特開2011-133797(JP,A)
【文献】特開2001-196283(JP,A)
【文献】特開2018-024899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/00
C25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーキ・ディスクまたはブレーキ・ドラムである工作物(5)を、前記工作物(5)の表面(6)に金属コーティングを施すように構成されたコーティング・デバイスを用いてコーティングするシステムにおいて、
同一のコーティング・モジュール(20)として構成された複数のコーティング・デバイスが、モジュール群(30)内に設けられ、配置され、
インプット測定ステーション(40)が、前記モジュール群(30)に割り当てられ、前記インプット測定ステーションによって、コーティングされるべき前記工作物(5)の前記面(6)の表面を検出することができ、
搬送装置(36)が設けられ、前記搬送装置によって前記工作物(5)を前記インプット測定ステーション(40)から前記コーティング・モジュール(20)のうちの1つに供給することができ、
アウトプット測定ステーション(50)が、前記モジュール群(30)に割り当てられ、前記アウトプット測定ステーションによって前記工作物(5)のコーティング面(6)の表面を検出することができること、
を特徴とするシステム。
【請求項2】
前記搬送装置(36)が直線コンベアを備え、個々の前記コーティング・モジュール(20)が前記直線コンベアに沿って配置されること、
を特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記直線コンベアの搬送方向で、前記インプット測定ステーション(40)が前記モジュール群(30)の上流にあり、前記アウトプット測定ステーション(50)が前記モジュール群(30)の下流にあること、
を特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
軸グリッパである少なくとも1つのハンドリング装置(32)が設けられ、前記少なくとも1つのハンドリング装置によって前記工作物(5)が前記インプット測定ステーション(40)および/または前記搬送装置(36)および/または前記アウトプット測定ステーション(50)に供給され得ること、
を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
特定の工作物(5)を特定のコーティング・モジュール(20)に供給するように前記搬送装置(36)を制御するように構成された制御装置が設けら
前記制御装置が、さらに、金属コーティングが前記工作物(5)に施されるとき、前記インプット測定ステーション(40)で検出された前記特定の工作物(5)の測定値に応じて前記特定のコーティング・モジュール(20)を制御するように構成されること、
を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
各コーティング・モジュール(20)が、輸送フレーム(22)を備え、かつ、前記モジュール群(30)内で互いに交換可能に配置されること、
を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
モジュール群(30)内の前記コーティング・モジュール(20)が、互いに並列に配置されること、
を特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
複数のモジュール群(30)の各々が、インプット測定ステーション(40)とアウトプット測定ステーション(50)とをそれぞれ備え、互いに並列に配置されること、
を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
主搬送装置(60)が、前記工作物(5)を少なくとも1つの前記モジュール群(30)に供給し、前記工作物を少なくとも1つの前記モジュール群(30)から取り出すように設けられること、
を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
後処理ステーション(64)が、1つの前記モジュール群(30)または複数の前記モジュール群(30)に割り当てられ、前記工作物(5)の前記コーティング面の材料除去処理のために構成されること、
を特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
制御装置が、前記工作物(5)が通過した前記アウトプット測定ステーション(50)によって検出された、コーティング済み前記工作物(5)の測定値に基づいて、前記後処理ステーション(64)を制御するように構成されること、
を特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
レーキ・ディスクまたはブレーキ・ドラムである工作物(5)を、コーティングする方法であって、
コーティングされるべき前記工作物(5)がインプット測定ステーション(40)に供給され、コーティングされるべき前記工作物(5)の面(6)の表面が検出され、
前記工作物(5)が、搬送装置(36)によって、前記インプット測定ステーション(40)から、モジュール群(30)内の複数の同一のコーティング・モジュール(20)のうちの1つに案内され、前記モジュール群において、金属コーティングが、コーティングされるべき前記工作物(5)の前記表面(6)に施され、
コーティング済み前記工作物(5)が、前記モジュール群(30)に割り当てられたアウトプット測定ステーション(50)に供給され、前記工作物(5)のコーティング面が検出される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、工作物の表面に金属コーティングを施すように構成されたコーティング・デバイスを用いて、工作物、特にブレーキ・ディスクまたはブレーキ・ドラムをコーティングするシステムに関する。
【0002】
さらに、本発明は、請求項12に記載の工作物をコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
工作物表面に金属コーティングを施すコーティング・デバイスを用いて工作物をコーティングするシステムおよび方法は、長く知られている。この類のコーティング・デバイスは、エンジン・ブロックのシリンダ・ボアのコーティングに用いられ、例えばプラズマ溶射法、溶射法または他の金属コーティング法が用いられる。
【0004】
本出願人のEP3048181B1は、工作物の金属コーティングのシステムおよび方法を開示しており、コーティングされるべきシリンダ・ボアを含むエンジン・ブロックは、装填ステーションと処理ステーションとの間で工作物を旋回させることができる回転テーブル上に配置される。このプロセスでは、エンジン・ブロックは、装填ステーションで受けられ、シリンダ・ボアは、測定装置を用いて測定される。次いで、エンジン・ブロックは、コーティング位置まで旋回され、プラズマ溶射により金属コーティングが円筒形ボア表面に施される。このエンジン・ブロックがコーティング位置まで旋回されると、同時に、コーティングが終わったエンジン・ブロックが装填位置へと旋回して戻される。このプロセスでは、コーティング済みエンジン・ブロックは、装填ステーションから降ろされる前に測定装置を用いて測定される。
【0005】
装填ステーションでは、エンジン・ブロックのコーティングされた表面が測定装置によって再び測定され、それによって例えばコーティングの欠陥を直接識別することができる。
【0006】
この既知の従来技術では、測定およびコーティングは、単一のデバイス内で実施可能であり、コーティング・デバイス1台当たり1台の測定装置しか必要ない。その結果、大型の比較的高価なエンジン・ブロックを、高いコーティング品質、また信頼性の高いコーティングで効率的に処理することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、比較的小さな工作物でも効率の向上を達成することができる、工作物をコーティングするシステムおよび方法を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するシステムおよび請求項12の特徴を有する方法の両方によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項で示される。
【0009】
本発明によるシステムは、同一のコーティング・モジュールとして構成された複数のコーティング・デバイスが、モジュール群内に設けられ、配置されること、インプット測定ステーションが、モジュール群に割り当てられ、インプット測定ステーションによって、コーティングされるべき工作物の面の表面を検出することができること、搬送装置が設けられ、搬送装置によって工作物をインプット測定ステーションからコーティング・モジュールのうちの1つに供給することができること、および、アウトプット測定ステーションが、モジュール群に割り当てられ、アウトプット測定ステーションによって工作物のコーティング面の表面を検出することができることを特徴とする。
【0010】
本発明の基本的な概念は、効率を高めるために、モジュール群を形成する多数の実質的に同一に構築されたコーティング・モジュールが設けられることであると考えられる。本発明によれば、測定ステーションは、単一のコーティング・モジュールに割り当てられるのではなく、むしろ、全体として、共通のインプット測定ステーションおよび共通のアウトプット測定ステーションがモジュール群に割り当てられる。これは、処理の前と後の工作物の概ね一貫性のある測定を確実にする。したがって、同等の品質を有する多数の工作物を得ることができる。保守が集中するコーティング・デバイスのうちの1つが正常に動かなくなっても、測定ステーションが使用可能なまま、他のコーティング・モジュールに迅速に取り替えることができるので、システム設計についての効率的な費用とともに向上した可用性レベルが達成される。このシステムを用いて、特に、低摩耗性および/または特に耐食性の大量生産構成要素、例えば金属制動面を備えたブレーキ・ディスクまたはブレーキ・ドラムを生産することができる。
【0011】
搬送装置は、任意の方法で構成することができ、例えば、1つまたは複数のハンドリング・ロボットを備えることができる。
【0012】
本発明の一展開によれば、個々のコーティング・モジュールが沿って配置された直線コンベアを備える搬送装置により、特にコンパクトで頑丈な構成が達成される。したがって、処理されるべき工作物は、例えば別個のハンドリング・ユニットまたは供給ユニットによって選択されたコーティング・モジュールに供給されるまで、個々のコーティング・モジュールを通り過ぎることができる。
【0013】
原理上、インプット測定ステーションおよびアウトプット測定ステーションは、組み合わせることができ、それら自体が1つまたは複数の測定装置を備えることができる。本発明の一変形形態によれば、直線コンベアの搬送方向で、インプット測定ステーションがモジュール群の上流に配置され、アウトプット測定ステーションがモジュール群の下流に配置されることが特に好ましい。このように、製造システム内で方向付けられたマテリアルフローを実現できる。ここで、製造システムは、例えば、機械加工、表面の粗面化、表面の清浄化または同様の処理手順による、工作物の前処理を含むことができる。コーティングのためのシステムの下流に他の処理ステーションを配置することができる。
【0014】
本発明の一展開によれば、ほぼ自動のワークフローの場合、少なくとも1つのハンドリング装置、具体的には多軸グリッパが設けられ、それによって工作物がインプット測定ステーションおよび/または搬送装置および/またはアウトプット測定ステーションに供給され得ることが有利である。したがって、例えば、ハンドリング装置は、インプット測定ステーションの上流に配置することができ、工作物を主搬送装置から例えばインプット測定ステーションに供給し、測定後、インプット測定ステーションから搬送装置、および個々のコーティング・モジュールへ移送する。同様に、追加のハンドリング装置は、アウトプット測定ステーションの上流に配置することができ、工作物を搬送装置から取りそれをアウトプット測定ステーションに供給し、任意選択で、工作物は、アウトプット測定ステーションでの測定後に再び主搬送装置に供給される。工作物を搬送装置、特に直線コンベアから選択のコーティング・モジュールに供給するために、追加のハンドリング装置、例えば多軸グリッパまたは単純な供給コンベアを個々のコーティング・モジュールにおいても配置することができる。工作物は、輸送パレットにクランプされ、クランプ位置で、測定され、コーティングされ、搬送されてもよい。
【0015】
本発明の他の実施形態は、特定の工作物を特定のコーティング・モジュールに供給するように搬送装置を制御するように構成された制御装置が設けられること、および、この制御装置が、さらに、インプット測定ステーションで検出された特定の工作物の測定値に基づいて金属コーティングを工作物に施すように、特定のコーティング・モジュールを制御するように構成されることを特徴とする。このプロセスでは、システムは、制御装置によって全体的に制御される。工作物の測定後、得られた測定値、具体的には表面に沿った凹凸の輪郭を示す表面構造を含む測定値が、制御装置から、コーティングの実施のために制御装置によって決定され選択された空きコーティング・モジュールに送られる。データは、システム全体の制御装置からそれぞれのコーティング・モジュールのサブ制御ユニットに送信されロードされ得る。工作物上に、インプット測定ステーションからの値に応じて所望のコーティングが実行され得る。
【0016】
コーティングの完了後、コーティング済み工作物は、最後にもう一度測定され、その測定値は、特に同じく表面の輪郭および表面の厚い堆積物を含み、制御装置に送られる。制御装置は、インプット値とアウトプット値を比較することができ、それらをそれぞれのコーティング・モジュールによるコーティングに関する値に関連付けることができる。その結果、例えば、工作物が正しくコーティングされたかどうか、または特にコーティング・モジュールでのコーティング中に欠陥または少なくとも望ましくないずれが発生したかどうかが決定され得る。それによって、コーティング処理中にコーティング・モジュール内のパラメータを変えるため、またはコーティング・モジュールの保守をタイムリーに開始するために、発生した欠陥またはずれを早い段階で識別し、特に、不合格品が出る前の適切なときに特定のコーティング・モジュールにおける寸法的なずれの傾向を識別することが可能になる。
【0017】
本発明の一変形形態によれば、各コーティング・モジュールが支持フレームを備え、モジュール群内に互いに交換可能に配置されることによって、他の改善が達成され得る。単純な場合、支持フレームは、パレット状ベース・プレートおよび/または箱状フレームから構成され得る。これら支持フレームは、フォークリフト・トラックまたは屋内クレーンを用いて、コーティング・モジュールを移動させることを可能にする。したがって、コーティング・モジュールは、例えば、効率的な方法で新しいコーティング・モジュールに取り替えることができる。生産能力の調整は、追加のコーティング・モジュールの追加または必要ないコーティング・モジュールを運び去ることにより、簡単に行うことができる。
【0018】
原理上、コーティング・モジュールは、モジュール群内に任意の所望の方法で配置することができる。本発明の一展開によれば、複数のコーティング・モジュールは、モジュール群内に互いに並列に配置されることが有利である。この並列配置は、必ずしも並列空間配置に関連するとは限らない。そうではなく、この並列配置の用語は、直列配置に対比して考えられるべきであり、個々のコーティング・モジュールは、互いに隣り合って並列配置に位置決めされ、互いに並行してコーティングを行うことができる。
【0019】
本発明の一展開によれば、複数のモジュール群の各々が、インプット測定ステーションとアウトプット測定ステーションとを備え、互いに対して並列に配置されることによって、生産能力調整の間のフレキシビリティのさらなる向上が達成される。このように、多数の工作物は、複数のコーティング・モジュールをそれぞれ備える2つ以上のモジュール群によって同時に並行してコーティングされ得る。より大きな生産能力の修正の場合、追加のモジュール群をシステム全体に対して追加または連結解除することができる。
【0020】
主搬送装置は、工作物を少なくとも1つのモジュール群に供給し、そこから工作物を取り出すように設けられることが、ここでは特に有利である。主搬送装置は、互いに対して並列配置に配置された個々のモジュール群を相互連結する。主搬送装置は、特に直線コンベア、例えば循環するコンベア・ベルトを備える搬送コンベアとすることができる。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態は、さらに、工作物のコーティング面の材料除去処理を行うように構成された後処理ステーションが、1つのモジュール群または複数のモジュール群に割り当てられることにある。材料除去処理は、特に、塗布された金属コーティングの研削、ホーニング加工、ラップ加工または研磨を含むことができる。
【0022】
本発明の他の有利な変形形態として、制御装置が、工作物が通過するアウトプット測定ステーションによって検出されたコーティング済み工作物の測定値に基づいて、後処理ステーションを制御するように構成され得る。特に、コーティングの層の高さおよび不規則性が、このプロセスにおいて制御装置によって後処理ステーションに送信され得る。後処理ステーションのサブ制御ユニットは、アウトプット測定ステーションからのこれらの測定値に基づいて効果的な後処理を提供することができる。
【0023】
上述のシステムを用いて工作物をコーティングする本発明による方法に関して、コーティングされるべき工作物がインプット測定ステーションに供給され、そこでコーティングされるべき工作物の面の表面が検出され、工作物が、搬送装置によってモジュール群内のコーティング・モジュールのうちの1つに案内され、そのモジュール群において、金属コーティングが、コーティングされるべき工作物の面に施され、コーティング済み工作物が、アウトプット測定ステーションに供給され、そこでその工作物のコーティング面が検出されることが提供される
この方法を用いて、上述のシステムは、本発明に従って動作することができる。これによって、上述の利点が実現され得る。
【0024】
コーティングは、適当なコーティング方法、特にレーザ堆積溶接、プラズマ溶射、溶射法などとすることができる。
【0025】
本発明による方法を用いて、特にブレーキ・ディスク、ブレーキ・ドラムまたは大量生産の構成要素として他のブレーキ構成要素に、耐摩耗性および/または耐食性の金属コーティングを効率的に施すことができる。この類のブレーキ構成要素によって、ブレーキ作動中の摩耗、したがって粒状物の放出を大幅に減少させることができる。
【0026】
図面に概略的に示される好ましい実施形態をもとに、以下に本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】モジュール群を備える本発明によるシステムの概略図である。
図2】工作物のコーティングの概略図である。
図3図1による複数のモジュール群を備える、本発明による他のシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、本発明によるシステム10の第1の実施形態が示されている。前記システムは、モジュール群30を形成する互いに隣り合った並列配置の4つのコーティング・モジュール20を備える。モジュール群30の上流には、インプット測定ステーション40があり、そのステーション40へ工作物(ここでは図示せず)が主搬送装置60により搬送される。本例示的な実施形態では多軸ロボットのように構成されるハンドリング装置32によって、工作物は、主搬送装置60から持ち上げられ、箱形のインプット測定ステーション40に供給される。
【0029】
インプット測定ステーション40では、工作物、特にコーティングされるべき表面が測定される。このプロセスでは、特にコーティングされるべき面の表面構造が検出され、特に表面の凹凸が検出され測定され得る。
【0030】
次いで、測定された工作物は、インプット測定ステーション40からハンドリング装置32を介して、またはインプット測定ステーション40から直接、4つのコーティング・モジュール20に沿って延びる直線搬送装置36へ移送され得る。直線コンベアとして構成された搬送装置36上には、各コーティング・モジュール20の上流に供給装置38が配置され、工作物を選択されたコーティング・モジュール20の箱形ハウジング21の入口開口24に導入する。
【0031】
コーティング・モジュール20同士は、同じまたは実質的に同じに構成され、輸送フレーム22を備える。この輸送フレーム22により、コーティング・モジュール20を屋内クレーンまたはフォークリフト・トラックを用いて動かし、再配置することができる。それによって、例えば生産能力変更の場合、追加のコーティング・モジュール20を追加もしくは除去する、または、修理もしくは保守のために、すでにあるコーティング・モジュール20を新しいコーティング・モジュール20に取り替えることが可能になる。
【0032】
図2に関連して以下により詳細に説明するように、コーティング・モジュール20では、工作物の少なくとも1つの表面に金属コーティングが施される。コーティング後、工作物は、入口開口24を通って搬送装置36へ案内されて戻される。これは、供給装置38によって行われてもよい。搬送装置36によって、コーティング済みの工作物は、共通のアウトプット測定ステーション50へと輸送され、そこで工作物のコーティング面が測定される。アウトプット測定ステーション50でのこの最終測定後、工作物は、主搬送装置60に戻され、主搬送装置60によってさらなる処理へ搬送され得る。工作物はまた、図1には示されないが、インプット測定ステーション40と同じやり方で、ハンドリング装置32によって搬送装置36からアウトプット測定ステーション50へ、さらにまた主搬送装置60へ移送されてもよい。
【0033】
指定の工作物についてのインプット測定ステーション40で決定された測定値は、中央制御装置へ送信される。測定された工作物がモジュール群30内の指定のコーティング・モジュール20へと対応する供給装置38により案内されるように、搬送装置36は、制御装置によってさらに制御される。それと同時に、工作物がインプット測定値に応じてコーティングされ得るように、制御装置によって、指定の工作物についての測定値が、選択または指定されたコーティング・モジュール20へ転送される。コーティング後、工作物は、箱形のアウトプット測定ステーション50で測定され、決定された測定値は、同様に、中央制御装置および指定の工作物についてのデータ・セットへと転送される。コーティングが正しく行われたかどうかを決定するために、制御装置において、インプット測定値およびアウトプット測定値ならびにコーティング・パラメータの比較が行われ得る。必要に応じて、コーティング中に制御装置によってコーティング・モジュール20の動作パラメータが再調整されてもよい。
【0034】
図2によれば、コーティングされるべき工作物5として、ディスク形要素、特にコーティングされるべき1つまたは2つの表面6を有するブレーキ・ディスクが用意され得る。金属コーティングは、プラズマ・コーティングまたはレーザ堆積溶接により、コーティング・ノズル26によって施され得る。コーティング・ノズル26は、キャリア27上に配置される。プラズマ溶射では、金属粒子がアークで溶融され、高速で表面6に塗布される。堆積溶接では、コーティング材料、特に金属粉末が最初に塗布されてからレーザによって局所的に溶融される。このプロセスにおいて、コーティングは、多段階で多層に行われ得る。所望の特性、特に付着力、耐摩耗性および/または耐食性に関する特性を達成するために、特に複数の層はまた、様々な層厚、様々な材料および様々な方法で塗布され得る。
【0035】
原理上は、コーティングされるべき表面6に沿ってキャリア27によって動かされるコーティング・ノズル26を用いてコーティングを行うことができる。プラズマ溶射および/またはレーザ堆積溶接の他に、他の熱金属コーティング方法を代替としてまたは互いに組み合わせて使用することもできる。
【0036】
図3には、それぞれ4つのコーティング・モジュール20からなる全部で3つのモジュール群30を備える、本発明によるシステム10の一展開が示されている。ここでは、個々のモジュール群30は、図1の実施形態に従って構成されており、インプット測定ステーション40およびアウトプット測定ステーション50は、各モジュール群30に割り当てられている。
【0037】
全部で3つのモジュール群30は、直線主搬送装置60に沿って配置され、したがって、この並列配置では、工作物は、個々のモジュール群30内および個々の処理モジュール20内で並行して処理され得る。コーティングが終わった工作物は、それぞれのアウトプット測定ステーション50を通過後、主搬送装置60へと案内されて戻され、主搬送装置60によって後処理ステーション64に送りこまれる。
【0038】
図3により示される実施形態では、後処理ステーション64は、並列に配置された全部で4つの研削デバイス66を備える。最終工程として、研削デバイス66により、工作物の少なくとも1つのコーティング面が処理され研削され得る。効率的な後処理を確実にするために、各工作物についての検出された測定値が、工作物の処理のために制御装置によって選ばれた後処理ステーション64内の指定の研削デバイス66へと転送され得る。こうして、工作物のコーティング面の検出された最終高さに応じて、例えば、それぞれの研削デバイス66内で工作物の方に向けた研削工具の前進が効率的に実行され得る。
【0039】
特に図3による実施形態から、要求される可能性のある生産能力のより大きな増加のときでも、個々のコーティング・モジュール20だけでなく、複数のコーティング・モジュール20ならびに関連のインプット測定ステーション40およびアウトプット測定ステーション50をそれぞれ備えるモジュール群30全体も、システム全体に容易に加えることができることが分かる。
図1
図2
図3