IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】組織移植の方法と装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20220405BHJP
   A61B 17/322 20060101ALI20220405BHJP
   A61F 2/10 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A61B17/3205
A61B17/322
A61F2/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020213648
(22)【出願日】2020-12-23
(62)【分割の表示】P 2018160172の分割
【原出願日】2009-04-01
(65)【公開番号】P2021058646
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】61/041,587
(32)【優先日】2008-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,リチャード ロックス
(72)【発明者】
【氏名】ハンブリン,マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】マンスタイン,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】ファリネリ,ウィリアム エー.
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-187058(JP,A)
【文献】特開平7-100140(JP,A)
【文献】特表平7-507950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0156164(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0073327(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0270710(US,A1)
【文献】東ドイツ国専用特許第287651(DD,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3205
A61B 17/322
A61F 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受容者部位に移すための、提供者部位からの複数の微小移植片を得るための装置であって、ここで、該装置は、複数の中空管及び振動装置を含み、
該複数の中空管は、基部に結合され、提供者部位に、該装置の一部の1回の挿入で複数の微小移植片を得るように構成され、ここで、
中空管のそれぞれは、遠位端および近位端を含み、
中空管のそれぞれは、提供者部位への中空管の挿入を容易にするために、中空管の遠位端に設けられた少なくとも2個の点を含み、ここで、各点は、鋭角で交わる管壁の2つの部分によって形成される鋭い先端であり、
少なくとも1個の該管の内径は1mm未満であり、
上記装置は、少なくとも1つの中空管の遠位端から一定の距離で停止器具を含み、該停止器具は、皮膚の真皮/脂肪層結合部に近傍の深さまで該管を挿入できるようにし、
該振動装置は、前記複数の中空管を振動させ、生物学的組織への該管の挿入を容易にするように構成された基部に結合され、
前記中空管のそれぞれの前記点は、皮膚の真皮/脂肪層結合部まで、前記提供者部位に挿入されるような構造をし、前記中空管それぞれは回転させることなく、前記提供者部位に挿入され、前記提供者部位から引き出され前記提供者部位から前記微小移植片を取り出すような構造をし、前記構造により前記中空管それぞれが1mm未満の寸法の前記微小移植片を取り出して形成することによって、受容者部位に移すための該微小移植片の生存活性を維持する、上記装置。
【請求項2】
前記点のうちの少なくとも1つによって形成される角度が30度である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記中空管の内径が0.5mm未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記中空管の内径が0.3mm未満である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記中空管のそれぞれが、前記中空管の遠位端に設けられた少なくとも3個の点を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記中空管のそれぞれが、前記中空管の遠位端に設けられた少なくとも4個の点を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記複数の中空管が、基部に結合された少なくとも5個の中空管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記複数の中空管が、基部に結合された少なくとも10個の中空管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記複数の中空管が、基部に結合された少なくとも30個の中空管を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記中空管の近位端と連通して設けられた密閉物をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記密閉物と連通して設けられた圧力源をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記圧力源が、ポンプ、弾力性のある膜、または変形性の球のうちの少なくとも1個を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、提供者部位から、ゼロより大きくかつ70%未満の面積率を有する複数の皮膚微小移植片を得る、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置が、提供者部位から、ゼロより大きくかつ50%未満の面積率を有する複数の皮膚微小移植片を取り出す、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記振動装置は、50μm~500μmの振動の振幅、及び10Hz~10kHzの振動の周波数を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記振動装置が、振動の振幅および周波数を調整するように構成された回路を含む、請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2008年4月1日に出願された米国仮特許出願第61/041,587号(この開示内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、提供者部位の組織を使用して組織移植片を提供するための方法と装置の例に関する。
【背景技術】
【0003】
自家移植片は、ある個体のある部分(例えば、「提供者部位」)から別の部分(例えば、「受容者部位」)に移植される組織を意味する。自家移植片は、例えば欠如している皮膚や他の組織を元に戻したり、及び/又は外傷、創傷、火傷、手術、先天的異常の治癒を加速するのに使用することができる。自家移植のための組織の利用可能性は、候補の提供者部位(組織移植片のいくつかの及び/又はすべての領域を含む)の特性、提供者部位の治癒挙動、提供者部位と受容者部位との類似性、美的考慮などにより制限される。
【0004】
皮膚移植は外科的に行われる。例えば従来の自家移植法は、火傷を受けた組織の切除又は外科的除去、提供者部位(清潔にした火傷部分のカバーとして使用するために取り出される健康な皮膚の部分でもよい)の選択、及び、提供者部位から移植片が取り出される場合は、電気かみそりに似た器具を使用して採取することを含む。このような器具(例えば、採皮刀)は、皮膚移植片として使用すべき火傷を受けていない提供者部位の皮膚から組織片(これは、分層植皮片について1インチの約10/1000でもよい)を穏やかに剃るような構造をしていてもよい。次に皮膚移植片は、創傷が治癒するように、清潔にした創傷上に置かれる。提供者の皮膚組織は、2度火傷の治癒に似たプロセスで、提供者部位が自分で治癒できる深さまで取り出すことができる。
【0005】
永続的な創傷被覆に使用される2種類の従来型の自家移植片には、シート移植片と網状移植片とがある。シート移植片は、採取と呼ぶプロセスで、傷害されていない提供者の体の部位から取り出される皮膚組織片を意味する。使用される提供者の皮膚片の大きさは、傷害された面積とほぼ同じである。シート移植片は、切り出された創傷上に置かれ、ホッチキスなどで所定の場所に固定される。シート移植片で使用される提供者皮膚組織はあまり伸びず、移植片組織は採取後にわずかに縮むことがあるため、シート移植片は被覆すべき傷害された面積よりわずかに大きいものが得られる。
【0006】
シート移植片は、修復組織部位の改良された外観を与える。例えばシート移植片は、傷害された顔、首、手の大きな面積での使用に適しており、体のより目に見える部分が、治癒後傷跡があまり見えないようにできる。傷害部位が小さい場合は、シート移植片は、皮膚の火傷又は傷害面積の全体を被覆するように使用される。シート移植片を貼付後、その下に液(血腫)が蓄積するために、シート移植片の小さい面積は失われる。
【0007】
シート移植片は、全層植皮(full-thickness)でも分層植皮(split-thickness)でもよい。例えば分層植皮移植片は、火傷や皮膚潰瘍患者の創傷を被覆するのに使用することができる。従来の分層植皮片は、例えばリンゴの皮をむくのと同じ方法で、提供者部位から表皮及び上部皮膚組織のシートを採取することにより作成される。次に分層植皮片は、火傷又は潰瘍位置の上に置かれる。皮膚組織は、全体に延長した治癒時間後に、提供者部位で成長する。提供者部位から多量の全層植皮皮膚組織を取り出すことは、提供者部位の傷跡形成と治癒時間の延長を引き起こし、感染リスクが高まるため、全層植皮片より分層植皮片が好ましい。しかし、分層植皮した皮膚自家移植片のために提供者部位から取り出した皮膚組織は薄い上皮層のみしか含まず、これは、受容者部位での構造安定性と正常な外観を改善する真皮のいくつかの要素が欠如することがある。
【0008】
全層植皮皮膚片は、種々の厚さの全表皮層と真皮成分を含む組織のシートを使用して作成できる。真皮成分は全層植皮片中で保存されるため、移植処置後に、正常な皮膚のより多くの特性が維持される。分層植皮片と比較して全層植皮片は、より多くのコラーゲン含量、真皮血管網、上皮付属器官を含む。しかし全層植皮片は、血行再建術を必要とする組織がより多量であるため、生存のためにより正確な条件が必要である。
【0009】
修復(例えば、局所皮弁をしにくい顔の肉眼で見える領域、又は局所皮弁が禁忌である移植法)には全層植皮皮膚片が好ましい。このような全層植皮皮膚片は分層植皮片と比較して、正常な皮膚のより多くの特性(例えば、色、きめ、厚さ)を保持する。全層植皮片はまた、治癒中に収縮を受けにくい。これらの性質は、顔や手のように目につきやすい部分で重要となる。さらに小児の全層植皮片は、個体とともに成長し易い。しかし従来の全層植皮片の適用は、比較的小さく、汚染されていなく、充分に血管が新生された創傷に限定され、従って、分層植皮片のように多くの種類の移植処置には適さない。さらに全層植皮片のための提供者部位は、分層植皮片による皮膚縫合又は表面再構成が必要となることがある。
【0010】
網状皮膚移植片は、例えば、充分な面積の健常な提供者部位が欠如しているためにシート移植片を使用して被覆することが困難な、傷口の開いた傷の大きな面積を被覆するのに使用することができる。皮膚移植片を網目状にすることは、提供者部位からの皮膚組織がより大きな面積を被覆するように拡張されることを促進する。これはまた、皮膚移植片が創傷上に置かれた時、皮膚移植片の下からの血液や体液の流出を促進し、これは移植片喪失を防ぐことを助ける。網状移植片の拡張比(例えば、伸びていない移植片面積と伸びた移植片面積との比率)は、典型的には1:1~1:4である。例えば提供者の皮膚は、約1:1又は1:2の比率で網状でもよいが、より大きな拡張比は、移植片をよりもろくして、網状移植片の治癒とともに傷跡が発生し、及び/又は治癒時間が延長することがある。
【0011】
従来の移植片の網状化には、皮膚組織を機械に通して、組織にスリットを入れる方法があり、これは魚網又は金網塀と似た模様の拡張を促進する。伸長した移植片の網目間のスペース(これは、すき間又は裂け目と呼ぶ)が新しい上皮皮膚の増殖物で充填されると、治癒が起きる。しかし網状移植片はシート移植片より耐久性が小さく、大きな網目は、移植片が治癒後に永続的な傷跡になることがある。
【0012】
移植片が治癒し固定されるのを助けるために、移植片の領域は、各手術後少なくとも約5日間は動かさないことが好ましい。この固定化期間中、下の組織から皮膚移植片中に血管が成長し、2個の組織層が結合するのを助ける。移植片を置いた後約5日後に、しばしば運動療法プログラム、入浴、他の正常な日常活動を再開することができる。重症の二度全層植皮火傷は、迅速な治癒と傷跡が最小になるように、皮膚移植片手術が必要なことがある。火傷の大きさが大きい場合は、入院中に2回以上の移植処置が必要な場合があり、治癒のために長い固定化期間が必要になることがある。
【0013】
自家移植の代替法として、死亡したばかりの人から得られた皮膚組織(これは、例えば同種移植片(homograft又はallograft)又は死体の皮膚)が、清潔にした創傷領域の一時的被覆として使用できる。網状化していない死体の皮膚は、切り出された創傷上に置いて、ホッチキスで固定される。術後、死体の皮膚は包帯で被覆される。次に死体の同種異系移植片を使用する創傷被覆は、永続的自家移植の前に除去することができる。
【0014】
異種移植片(xenograft又はheterograft)は、多くの動物の1つ(例えばブタ)から取った皮膚を意味する。異種移植皮膚組織はまた、より永続的な自家移植片を置く前に、切り出した創傷の一時的被覆のために使用され、ヒトの皮膚組織が入手しにくいことと及び/又は高価なために、使用される。ある場合には、ヒトの死体の皮膚の使用に対する宗教的、財政的、又は文化的抵抗も、異種移植片を使用する原因となる。異種移植片又は自家移植片を使用する創傷被覆は一般に、自家移植片の採取及び配置が可能になるまで使用される一時的処理である。
【0015】
上皮付属器官は好ましくは、移植処置の後に再生することができる。例えば毛髪は、分層植皮片よりも全層植皮片からの方が成長し易いが、創傷場所でのこのような毛髪成長は好ましくない。従って全層植皮片の提供者部位は、一部は手術時の毛髪成長のパターンに基づいて、注意深く選択される。さらにいくつかの毛包は皮膚表面に対して垂直に位置しておらず、移植片組織を除去するための切開が正しくできない場合は、横に切断される。
【0016】
移植片組織中に存在する汗腺と皮脂腺は、まず移植後に変性することがある。全層植皮片は全機能性単位として移植されるため、これらの構造体は、分層植皮片より全層植皮片中の方が再生し易い。例えば汗腺再生は一部は、受容床交感神経による皮膚移植片の再神経支配に依存する。いったんこのような内殖が起きると、皮膚移植片は提供者部位の特性を保持するのではなく、受容者部位の発汗特性を取る。これに対して皮脂腺再生は、移植片の再神経支配に依存せず、提供者部位の特性を保持することができる。再生の前に、皮膚移植片組織は、これらの腺により産生される皮脂の正常な潤滑性に欠けることがあり、これはこのような移植片をより傷害を受けやすくする。
【0017】
一般に移植操作は、過度の有害作用を引き起こすことなく、提供者部位から除去される組織の量により制限される。全層植皮片は創傷部位で改良された質の組織を与えるが、提供者部位は上記したようにより大きく変形する。分層植皮片は、治癒時間と提供者部位及び受容者部位の美的及び機能的性質との妥協でもよく、網状化は傷跡は目に見えるが、より広範な移植片被覆を与える。
【0018】
提供者部位からの移植片組織の採取は一般に、提供者部位に好ましくない大規模な組織傷害を与え得る。一方、健常組織に隣接する皮膚創傷の小さい領域は充分に許容され、迅速に治癒する。小さい創傷のこのような治癒は、「部分的光熱分解」又は「部分的表面再構成」のような方法で発生し、ここで小さい傷害のパターンが皮膚組織中で形成される。これらの方法の例は、例えば米国特許第6,997,923号、及び米国特許公報第2006/0155266号に記載されている。小規模な傷害パターンは、健常組織の再増殖により迅速に治癒し、さらに傷跡が見えない皮膚の締まりのような好ましい作用を与えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
組織移植の上記方法の欠点を考えると、提供者部位への好ましくない傷害を最小にして、移植に適した組織を与えることができる方法と装置を提供することが好ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示の例は、提供者部位の迅速な治癒を伴う、移植片組織の小部分を得るための方法と装置とを提供する。例えば提供者部位から組織の小部分(例えば微小移植片)を採取することにより皮膚移植片組織を得るために、本方法の例が提供される。
【0021】
このような微小移植片は、例えば表皮と真皮組織、及び体の他の臓器から得られる組織を含む皮膚組織を含むことができる。微小移植片は、比較的小さい(例えば、約1mm未満、又は約0.5mm未満、場合により約0.3mm又はそれ以下、又は約0.2mm)少なくとも1個の寸法を有することができる。微小移植片のこのような極めて小さい寸法は、微小移植片組織のより大きな拡散性栄養供給により、採取後の提供者部位の治癒と微小移植片の生存活性との両方を促進することができる。組織部分の除去により引き起こされる提供者部位の傷害の小領域は、肉眼で見える傷跡の形成がほとんど又は全く無しで、迅速に治癒することができる。皮膚組織から得られる微小移植片は、例えば表皮及び真皮組織を含み、真皮/脂肪層境界の近傍に位置する幹細胞を含むこともできる。微小移植片はまた、他のタイプの組織(例えば、種々の内臓など)から得ることもできる。
【0022】
提供者部位から取り出される真皮組織の割合は、例えば約70%未満、又は約50%未満でもよいが、他の割合も使用できる。採取された組織部分は、円筒形、伸びたストリップ、又は少なくとも1個の寸法を有する他の形でもよい。ある実施態様において、提供者部位の組織部分は、凍結されるか又は部分的に凍結される。このような凍結は、採取した組織部分の切断、取り出し、及び/又は生存活性を促進することができる。
【0023】
中空管を含み得る微小移植片を採取するための装置の例が提供される。中空管の内径は、採取される微小移植片の直径又は幅とほぼ同じ大きさでよい。中空管の遠位端は、周りの組織からの微小移植片の分離を促進するための2つ又はそれ以上の点を有する。
【0024】
提供者部位の組織に特定の深さまで装置を挿入し、次に管を取り出すことにより、提供者部位から微小移植片を採取することができる。管に停止器具を取り付けて、管の挿入深さを制御又は制限することができる。微小移植片の採取及び/又は管からのその取り出しを容易にするために、管の近位端に弱い吸引力又は圧力をかけることができる。
【0025】
複数の微小移植片の同時採取のための複数のそのような管を含む装置の、さらなる例が提供される。複数の管への圧力及び/又は吸引力の適用を容易にするために、管の近位端と連通して密閉物及び/又は圧力源(例えばポンプなど)が提供される。提供者部位への管の挿入を容易にするために、この装置に振動装置を連結することができる。
【0026】
微小移植片例は生体適合性マトリックス中に入れて、例えば移植片を作成するか、又は受容者部位で組織に直接入れることができる。生体適合性マトリックスは、コラーゲン、ポリ乳酸、ヒアルロン酸、及び/又は採取した微小移植片組織部分を支持しその増殖を促進できる他の物質を使用して作成することができる。場合によりマトリックスは、例えば栄養物質及び/又は組織増殖を促進する他の物質を含むことができる。採取された組織部分は、光化学的組織結合のような技術を使用してマトリックスに結合させて、構造的安定性を与えることができる。次にマトリックスは受容者部位に適用され、これは組織部分の増殖と血管再生を促進して、移植片組織の連続的シートを形成する。
【0027】
微小移植片はまた、小型の形状に集めて、受容者部位に直接適用される移植片組織を作成することができる。微小移植片はまた、組織に受容者部位(例えば、傷跡の組織)で、例えば本明細書に記載の中空管を使用して挿入することもできる。
【0028】
本開示のこれら及び他の目的、特徴、及び利点は、本開示の実施態様の詳細な説明を、添付の特許請求の範囲とともに読むことにより明らかになるであろう。
【0029】
本開示のさらなる目的、特徴、及び利点は、本開示の実施態様、結果、及び/又は特徴を示す添付の図面とともに、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】提供者部位から微小移植片組織の円筒形部分が採取された後の、提供者部位を示す模式図である。
図1B】治癒した後の、図1Aに示す提供者部位の模式図である。
図1C図1Aに示す提供者部位から取り出した微小移植片の模式図である。
【0031】
図2A】採取した微小移植片組織部分を生体適合性マトリックス中に入れることにより調製された移植片の断面図である。
図2B】創傷上に置かれて再増殖がある程度起きた後の、図2Aに示す移植片の断面図である。
【0032】
図3A】別の提供者部位から伸長した組織ストリップが採取された後の、別の提供者部位の模式図である。
図3B】治癒が起きた後の、図3Aに示す提供者部位の模式図である。
図3C図3Aに示す提供者部位から取り出した組織ストリップの模式図である。
【0033】
図4A】移植片を形成するために小型の形状で提供される複数の円筒形微小移植片組織部分の平面模式図である。
図4B図4Aに示す微小移植片組織部分の側面図である。
【0034】
図5A】本開示の第1の実施態様の微小移植片組織を採取するために使用できる装置の模式図である。
図5B】本開示の第2の実施態様の微小移植片組織を採取するために使用できる装置の模式図である。
【0035】
図6A】微小移植片を採取するために提供者部位に挿入された図5Aに示す装置の模式図である。
図6B】採取した微小移植片を含む図5Aに示す装置の模式図である。
図6C】装置から取り出された採取した微小移植片を示す、図5Aに示す装置の模式図である。
【0036】
図7】本開示の第3の実施態様の微小移植片組織を採取するために使用できる装置の模式図である。
【0037】
図8A】2個の点を含む装置の遠位端の画像である。
図8B図7Aに示す装置の遠位端の画像である。
【0038】
図9図7~8Bに示す装置を使用して得られる微小移植片の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
記載した実施態様の同様の特徴、要素、成分、又は部分を示すために、特に明記しない場合は、図面を通して同じ参照番号と文字が使用される。さらに、図面を参照して本開示が詳述される時、これは、実施態様と関連して行われ、図面に記載した特定の実施態様に限定されるものではない。
【0040】
本開示の実施態様は、自家移植片を与えるための方法と装置、特に受容者部位での組織特性を改良しながら、提供者部位のより迅速な治癒を促進することができる方法と装置を提供する。本開示の実施態様は、自家移植片を提供するのに使用できる複数の小規模組織部分(例えば微小移植片)を含むことができる。このような微小移植片は、迅速に治癒でき、受容者部位で好ましい性質を有する皮膚組織を生成できる移植片組織を提供しながら、提供者部位への大きな永続的な傷害を避けることができる。
【0041】
本開示の実施態様において、図1Aに示すように、少なくとも1個の小さい寸法を有する組織部分(例えば微小移植片)が提供者部位100から採取されることを特徴とする、自家移植片を作成する方法が提供される。図1Aに示す穴110は、組織部分(例えば微小移植片)が取り出された提供者部位100の領域を示す。これらの穴110はほぼ丸い断面形でもよく、他の形を使用してもよい。
【0042】
採取した組織の治癒が起きた後の、提供者部位100を図1Bに示す。取り出した組織により提供者部位に作成された傷害100の小さな領域は迅速に治癒することができ、及び/又は肉眼で見える傷跡が無い。例えば図1Bに示す治癒した提供者部位100の残存部分は、通常の視界条件下では肉眼により容易に見ることはできない。
【0043】
例えば穴110を作成するために、提供者部位100から組織部分を採取するか又は取り出すことにより形成される微小移植片120を、図1Cに示す。微小移植片120は、ほぼ円筒形の伸びた形を有することができる。微小移植片120は、提供者部位100からの表皮組織130と真皮組織140との両方を含むことができる。例えば微小移植片120は約3mmの長さでもよく、これは皮膚層(例えば表皮層と真皮層)の典型的な総深さに一致する。提供者部位100の特定の皮膚又は組織の特性に基づいて、異なる長さが使用できる。一般に、採取した微小移植片200が主に表皮組織130と真皮組織140とを含むことができるように、多量の皮下組織の採取は避けることが好ましい。微小移植片120の下部分150はまた、提供者部位100の真皮層の下部分(例えば、真皮/脂肪層境界の近く)中に存在し得る幹細胞を含むことができる。
【0044】
採取中に生成される穴110の幅又は直径(これは、採取した微小移植片120部分の直径にほぼ一致する)は、約1mm未満又は約0.5mm未満でもよい。ある実施態様において、直径又は幅は約0.3mm未満、又は約0.2mmである。穴110の大きさは、例えば迅速に及び/又は傷跡無しで治癒できる提供者部位100中の小さい傷害領域を生成し、かつ充分量の移植片組織を形成するのに充分大きい組織部分を生成する作用に基づいて、選択することができる。
【0045】
例えば生きた組織は、約0.1mmの距離にわたる拡散移動を介して栄養物質が供給される。従って約0.3mm未満、例えば0.2mmである少なくとも1個の寸法を有する微小移植片120は、移植片で使用されると、改良された生存活性と、生き残り、増殖する可能性とを示す。このような微小移植片120は、受容者部位内に置かれた時、組織の血管再生の前に、栄養物質(例えば酸素を含む)を良好に受け取ることができる。大きな微小移植片120はまた、栄養物質のそのような拡散移動から利益を得て、移植片組織のはるかに大きな部分(例えば、従来の全層植皮、分層植皮、又は網状移植片)より生き延びやすい。
【0046】
採取により提供者部位100から取り出された表面組織部分(これは、穴100により占有される提供者部位100の部分的表面積に一致する)は、約70%未満でも、さらに好ましくは約50%未満でもよい。取り出された組織部分は、採取した微小移植片120を与えて、そこから適切な大きさの移植片を形成するのに充分に大きく、しかし残りの非傷害組織からの増殖に基づいて提供者部位100での迅速な治癒を促進するのに充分に小さい。組織の他の部分は、例えば両側100の具体的な特徴、必要な移植片の大きさ、及び利用可能な提供者部位組織の総量などの要因に依存して、提供者部位100から取り出される。
【0047】
本開示のさらなる実施態様において、移植片200は、図2Aに示すように、複数の微小移植片120を生体適合性マトリックス210中に包埋又は挿入することにより提供することができる。微小移植片120を含有するマトリックス210は、栄養物質に曝露されて、採取した微小移植片120の増殖を促進し、例えば増殖が起きた後の移植片200中の組織の連続的又はほぼ連続的な層を形成する。マトリックス210と微小移植片120とを含む移植片200は、図2Bに示すように直接受容者220(例えば、清潔にした創傷領域)上に置かれる。微小移植片120はまた、本明細書に記載の幹細胞を含むことができ、これはまた、受容者部位220に移植された時、微小移植片120の治癒と組み込みとを促進することができる。受容者部位220は、採取した微小移植片120に栄養物質を供給し及び/又は血管再生を促進し、これはさらに、マトリックス210を介するその増殖を増強して、これらを分離している空間を最終的に充填する。例えば図2Bは、周りのマトリックス210中に増殖し始めた後の、微小移植片120を示す。
【0048】
ある実施態様において微小移植片120は、提供者部位100から取り出されたものと同じ間隔(例えば、同様の面積密度)でマトリックス210中に置かれる。この配置は、微小移植片120が増殖し、これらの間の空間を新しい組織で充填した後の、提供者部位100の全体の採取面積とほぼ同じ大きさでもよい量の移植片組織を生成することができる。マトリックス210中の微小移植片120の平均間隔はまた大きくして、採取した提供者部位100の全面積より大きい移植片組織を形成することができる。具体的な移植片200中の微小移植片120の具体的な間隔は、例えば提供者部位100の大きさと傷害の割合、皮膚移植片200により被覆される受容者部位220の大きさ、微小移植片120が再増殖して連続的組織層を形成するのに必要な時間、移植された受容者部位の所望の外観などの要因に基づいて選択することができる。例えば微小移植片120は、特定の移植片中で遠く離され、これはまた、より長い治癒時間と必要としかつ治癒した移植片200中のある程度の肉眼で見える傷跡又はきめの可能性のあるより大きな移植片面積を与える。
【0049】
さらなる実施態様において、図3Cに示すような組織部分320は、伸びた細長いストリップ様の形で採取される。1つ又はそれ以上の組織ストリップ320は、表皮組織130ならびに真皮組織140の両方を含むことができ、これは図1Cに示した微小移植片120と同様でもよい。例えば組織ストリップ320の高さは、約3mm、又は提供者部位100で真皮層の局所的深さと一致する別の高さでもよい。例えば提供者部位と受容者部位、移植により修復される創傷などに基づいて組織ストリップ320を採取する時、より大きい及び/又はより小さい深さも選択することができる。
【0050】
このような組織ストリップ320の採取は、図3Aに示すように、提供者領域100中に長く細い溝310を残す。溝310の幅(従って、採取した組織ストリップ320の幅)は、約1mm未満、又は約0.5mm未満でもよい。ある実施態様においてこのような組織ストリップの幅は、約0.3mm未満、又は約0.2mmである。本明細書に記載のように、そのような小さい寸法は移植片組織への栄養物質の拡散移動を促進し、採取した組織の生存活性を改良する。皮膚表面からの溝310の深さは、採取したストリップ320の高さに一致する。
【0051】
組織ストリップ320を作成するために取り出される提供者部位310の表面積の割合は、約70%未満、又は約50%、又はそれ以下でもよい。採取した細長い組織ストリップ320に関連するパラメータの選択を支配する要因(例えば、提供者部位から取り出された幅及び面積割合)は、円筒形微小移植片120について上記したものと同様でもよい。採取したストリップ320の長さは、例えば、薄い組織ストリップ320の切断、取り出し、及び取り扱いのし易さ、提供者部位100の大きさなどの要因に基づいて、選択することができる。提供者部位に作成された細長い溝310はまた、図3Bに示すように、小さい横方向の寸法と、局所的組織増殖を支持することができる隣接する健常組織の存在とのために、肉眼で見える傷跡がほとんど又は全く無しで迅速に治癒することができる。
【0052】
採取されたストリップ320は、図2Aに示したマトリックス210と同様の生体適合性マトリックス中に入れることができる。組織ストリップ320は、例えばこれらが取り出された提供者部位の溝310の構成に対応して、ほぼ平行の構成で並べることができる。あるいはストリップ320間の間隔は、所望のように提供者部位100中の溝310の間隔に対して増加させるか又は減少させて、それぞれ、より総面積の大きい移植片組織又はより密に充填された移植片組織を提供することができる。寸法が長いことは、そこから生成した移植片の血管再生を促進し治癒を改善する、採取した皮膚組織中の構造を保存することができるために、このような採取した組織ストリップ320は、いくつかの移植法で使用することができる。
【0053】
採取した組織部分は、他の形(タイル模様又はフラクタル様の形)で提供者部位から取り出すことができる。一般にそれぞれの取り出された組織片(及び、提供者部位中の例えばそれぞれの対応する穴又は空隙)は、約1mm未満、又は0.5mm未満の少なくとも1個の寸法を有することができる。ある実施態様においてこの小さい寸法は、約0.3mm未満、又は約0.2mm未満でもよい。
【0054】
さらなる実施態様において採取された組織部分は、高密度の構成で受容者部位に置かれる。例えば図4Aは、高密度の構成で集められた複数の実質的に円筒形の微小移植片120の模式平面図であり、ここで微小移植片120の隣接部分は、少なくとも部分的に互いに接触している。図4Bは、図4Aに示した微小移植片120の模式側面図である。この高密度構成例は、採取された提供者部位100の全面積より小さい移植片を与えるが、これは、離れて位置する採取された組織部分120、320を使用して形成される移植片より、治癒が早く、肉眼で見える傷跡を形成する可能性が小さい。採取組織の同様の高密度構成は、例えば図3Cなどに示す組織320の細長いストリップを使用して作成することができる。
【0055】
生体適合性マトリックス210は、採取した微小移植片200への機械的安定性及び/又は支持を与え、及び/又は組織再増殖を促進するように、構成された1つ又はそれ以上の物質を使用して作成される。マトリックス210を作成するのに使用できる物質の例には、ポリ乳酸(PLA)、コラーゲン、又はヒアルロン酸(例えば、ヒアルラノン)がある。組織再増殖をさらに促進するために、栄養物質又は他の添加剤もマトリックス210に提供される。組織採取後、及び組織の治癒をさらに促進するために移植片組織を置いた後に、提供者部位及び/又は受容者部位を照射するのに、赤色光又は近赤外線を使用することもできる。
【0056】
ある実施態様において、マトリックス210中の微小移植片120及び/又は組織ストリップ320の機械的安定性を改良するために、光化学組織結合のような方法を使用することができる。例えば、光化学組織結合技術は、米国特許第7,073,510号に記載されている。この技術は、組織への光増感剤の適用、次に組織の密封を行うための電磁エネルギーによる照射を含む。例えば、微小移植片120及び/又は組織ストリップ320を含むマトリックス210にローズベンガルのような光増感剤が適用され、次にマトリックスは緑色の光に約2分間曝露される。光化学組織結合は重合反応を触媒して、マトリックス210への微小移植片120及び/又は組織ストリップ320のより強い結合を容易にする(ここで、マトリックス210は、例えばヒアルロン酸又はコラーゲンのようなタンパク質を含むことができる)。
【0057】
本開示のさらなる実施態様において、図5Aに示すような装置500が提供され、これは、本明細書に記載の提供者部位100からの微小移植片120の採取を容易にする。装置500は、金属又は他の構造的に剛性の物質から形成できる中空管510を含むことができる。例えば管510は、ステンレス鋼、生検針、又は同様の構造物を使用して作成することができる。管510は、提供者部位組織100中の管510の通過を容易にするために、滑沢剤又は低摩擦性材料(例えば、テフロン(登録商標))を用いて被覆することができる。
【0058】
管510の内径は、本明細書に記載の提供者部位100から取り出される微小移植片120の特定の直径にほぼ一致するように選択される。例えば18又は20ゲージの生検針(例えば、それぞれ内径が0.838mmと0.564mmを有する)などを使用して、管が作成される。より大きなゲージ(及び小さな内径)を有する生検管も使用することができる。採取した微小移植片120の幅又は直径は、採取するのに使用される装置500の内径より少し小さくてよい。
【0059】
管510の遠位端は、複数の点520を作成するように成形される。例えば管510の長軸に対してある角度で管510の相対する側面を摩砕することにより、図5Aに示す2個の点又は延長部520を作成することができる。図5Bに示すさらなる実施態様において、その遠位端に設けられた3個の点又は延長部520を有する管510を含む装置550が提供される。この構成は、例えばその長軸に対してある角度で管510の3個の部分を摩砕することにより作成され、ここで3個の部分は、管510の周囲の周りで約120度の間隔で離れている。さらに別の実施態様において、その遠位端に設けられた4個以上の点又は延長部520を有する管(例えば、4、5、6、7、又は8個の点520を有する管510)を含む、微小移植片を採取するための装置を提供することができる。
【0060】
点又は延長部520は、提供者部位100での組織への、装置500、550の挿入を容易にすることができる。例えば管510の遠位端の部分を摩砕することにより作成される点又は延長部520はまた、その側面に剃ってはす縁を有することができ、これは、提供者部位組織への装置500、550の挿入をさらに容易にすることができる。
【0061】
装置500はまた、管510の外表面に設けられた留め輪又は停止器具540を含むことができる。停止器具540は、チップ520の端から特定の距離で管510に結合されるか、又は例えば管510の長軸に剃って停止器具540を動かすことにより、ある長さの範囲にわたって、この距離を調整可能である。
【0062】
図6Aは、停止器具540が提供者部位100の表面に接触するまで、装置500を組織中に提供者部位100で挿入した後の装置500を例示する。組織600の一部は、管510の下部内に存在してもよい。管510が提供者部位組織100に入る時に、この組織部分600の側面は切断し、管510及び/又は点520の遠位端により、周りの組織から切り離すことができる。このような組織600は管510内に留まることができ、例えば図6Bに示すように提供者部位100から管510が取り出されると、提供者部位100から分離されて微小移植片120を形成することができる。こうして形成された微小移植片120は、表皮組織130と真皮組織140との両方を含むことができる。
【0063】
微小移植片120は、例えば図6Cに示すように、例えば管510の近位端で開口部620を介して圧力をかけることにより、装置から取り出される。このような圧力は、例えば開口部内に吹き込み、そこに固定された弾力性のある球を押しつぶし、小ポンプのような高圧源からの弁を開くことにより、加えられる。あるいは微小移植片120は、装置500を提供者部位100の複数の位置に挿入することにより採取することができる。管510内の各微小移植片120は、次にその上の微小移植片を開口部620方向に押す。管520がいったん組織で充填されると、提供者部位100への装置500の各追加の挿入は、管510内の一番上の微小移植片120の、近傍の開口部620の外への押出しを促進する。
【0064】
装置500は、採取した微小移植片120のほぼ所望の長さに対応する深さまで、提供者部位組織100中に挿入することができる。このような距離は、装置500上の停止器具540の適切な配置又は調整により、決定及び/又は制御することができる。例えば装置500は、図6Aに示すように、点又は延長部520が真皮/脂肪層結合部610に又はその近傍まで延長するように、構成するか又は構造にできる。例えば微小移植片120は、その軸周りで管510を回転させることなく提供者部位から装置500を取り出すことにより、提供者部位100から取り出すことができる。これに対して従来の生検針などは、周りの組織からの組織試料の取り出しを容易にするために、長軸周りの回転を必要とする。装置500上の点又は延長部520は、提供者部位100での周りの組織からの微小移植片120の除去を容易にすることができる。
【0065】
ある実施態様において提供者部位の組織の一部又はすべては、微小移植片120を採取する前に凍結、又は部分的に凍結することができる。そのような凍結は、微小移植片120の切断、取り出し、及び/又は生存活性を促進することができる。提供者部位組織100は、例えば、低温噴霧を適用するか、又は提供者部位100の表面を適切な時間低温物に接触させることにより冷却することができる。装置500はまた、微小移植片120の採取前に冷却することができる。このような冷却及び/又は凍結は、微小移植片120が例えば採取されるか及び/又はマトリックス210中に置かれる時、微小移植片120の機械的安定性を上昇させることができる。
【0066】
微小移植片120は、種々の方法を使用してマトリックス210中に入れることができる。例えば個々の微小移植片120は、例えばピンセットなどを使用してマトリックス210の特定の位置に挿入することができる。図6Bに示すように、採取した微小移植片120を含む装置500は、マトリックス210の位置に挿入することもでき、近傍の開口部620に圧力を加えて、微小移植片120をマトリックス210中に押し込むことができる。次に装置500はマトリックス210から取り出し、操作を繰り返して複数の微小移植片120をマトリックス210に入れることができる。微小移植片120が装置500中にさらに押し込まれるのを防ぐために、装置500をマトリックス210に挿入している間、近傍の開口部620を被覆することができる。例えば管510の上部を、液体(例えば水又は食塩水)を満たして、微小移植片120が組合せ510中まで上がっていくのを防ぐ非圧縮性容量を与えることができる。このような液体はまた、近傍の開口部620で圧力を加えることにより、装置500からの微小移植片120の取り出しを促進することができる。
【0067】
本明細書に記載の微小移植片120を採取し移植する方法は、例えば受容者部位でほぼすべての組織に直接微小移植片120を与えるのに使用することができる。例えば微小移植片120は、メラニン細胞を含む提供者部位100から採取して、充分なメラニン細胞が無い受容者部位で直接組織に挿入することができる。このような方法は、皮膚組織を再着色するために、例えば白斑又は同様の症状を治療するために、使用することができる。受容者部位の組織はまた、微小移植片120の挿入前に、本明細書に記載のように凍結又は部分的に凍結することができる。
【0068】
微小移植片120はまた、健常な提供者部位から採取し、傷跡組織中に直接入れて、傷跡中の健常な組織の増殖を促進することができる。
【0069】
場合により組織部分は、これらの組織部分の取り出しにより形成される受容者部位で穴に微小移植片を入れる前に、受容者部位から取り出すことができる。穴は、挿入を容易にするために、そこに挿入される微小移植片120の大きさとほぼ同じか又はわずかに大きい。穴は、組織を取り出すか又は例えば切除レーザーを使用して切除することにより、本明細書に記載の1つ又はそれ以上の管510を使用して受容者部位に形成することができる。
【0070】
本開示のさらなる実施態様において、図7に示すように装置700を提供することができる。装置700は、例えば基部710に機械的に結合した複数の管510を含むことができる。管510は、種々の構成、例えば線状アレイ、又は基部710に沿う種々の2次元パターンの1つで提供することができる。装置700に提供される管510の数は、例えば6個以上の管510、約10個以上の管、約30個以上の管510でもよい。
【0071】
密閉物720は、管510の近傍開口部620と連通して設けられる。密閉物720はまた、圧力源730と連通して設けられる。例えば圧力源730は、ポンプ又は変形性の球などを含むことができる。膜が変形した時、密閉物720内に高圧が与えられるように、圧力源730は、例えば密閉物720と連通して弾力性のある膜を含むことができる。このような構成は、本明細書に記載の管510中で採取できる微小移植片120の取り出し及び/又は挿入のために、近傍開口部620に圧力をかけることを促進することができる。
【0072】
場合により装置700中に振動装置740が設置される。微小移植片120を採取又は設置するための組織又はマトリックス物質への管510の挿入を容易にするように、振動装置740は基部710及び/又は管510に機械的に結合される。振動装置740は、約50~500μm又は約100~200μmの範囲の振幅を有することができる。誘導される振動の周波数は、約10Hz~約10kHzの範囲、又は約500Hz~約2kHzの範囲、又は約1kHzでもよい。管510の大きさ、平均間隔、及び材料、装置700中の管510の数、及び/又は処理される組織に基づいて、具体的な振動パラメータが選択される。振動装置740は、振幅及び/又は周波数を調整するように構成された回路を含むことができる。
【0073】
装置700は、複数の管510中で、同時に複数の微小移植片120を同時に得るために使用することができる。装置700を使用してこのような微小移植片120を得て取り出す方法は、図6A~6Cに示す装置500を使用して1個の微小移植片120を得るための本明細書に記載の方法と同様である。
【0074】
振動はまた、管510が提供者部位100中に完全に挿入された後に、管510の遠位端の近くの組織を切り離すことを助ける。これは、提供者部位100からの管510内の組織部分の分離及び/又は取り出しを容易にする。これらの組織部分はまた、管510が提供者部位100から取り出される時、管510内の摩擦により保持される。
【0075】
さらなる実施態様において提供者部位組織は、低温噴霧を適用するか、又は例えば組織表面を低温物に接触させるような対流性又は伝導性技術を使用して、管510の挿入前に冷却することができる。提供者部位100の冷却は、管510が提供者部位組織100に挿入される時の、疼痛感を緩和することができ、また組織100をより強固にし、管510による組織部分(例えば微小移植片120)のより正確な分離を促進する。
【0076】
装置700中の管510の位置と間隔は、得られる微小移植片120の特性、提供者部位100への傷害パターン、及び/又は本明細書で上記した他の要因に基づいて、決定することができる。装置700中に設けられる管510の数は、種々の要因に基づいて選択することができる。例えば、提供者部位100からより多くの微小移植片120が同時に採取できるようにするために、より多くの管510が好ましい。このような構成は、より効率的な採取プロセスを促進する。提供者部位組織100中に同時に挿入するには、より少ない数の管510の方が容易である。さらに非常に多数の管510を有する装置500は、製造及び/又は維持が困難である。
【0077】
採取した組織部分は、管510から生体適合性マトリックス材料210中に直接入れることができる。管510とそこに含まれる組織部分は、組織部分の取り出しの前に冷却することができる。これは、管510内の組織部分を硬化させ、操作と位置決めを容易にする。
【0078】
さらなる実施態様において、複数の実質的に平行の刃を含む装置が提供される。例えば隣接する刃の間で細い長方形の開口部を与えるように、隣接する刃のいくつかの末端は連結されるか又は封鎖される。このような装置は、例えば図3Cに示すような組織ストリップ320を形成するために使用することができる。この装置の間隔、長さ、及び他の特徴は、例えば装置500、700について本明細書に記載のもの類似の要因に基づいて選択される。
【0079】
本開示のさらなる実施態様において、本明細書に記載の方法と装置は、皮膚組織以外の他の組織(例えば、肝臓、心臓などの内臓)に適用することができる。すなわち、提供者部位にほとんど傷害を与えることなく、その迅速な治癒を促進しながら、受容者部位に入れるのに適した移植片組織を作成しながら、種々の組織について移植片を作成することができる。
【実施例
【0080】
2個の点を含む装置の遠位端の画像を図8Aに示す。この装置は、例えば図5Aに示した装置500と同様である。この装置のさらに回転した画像を図8Bに示す。この装置は、外径が約1mmで内径が約0.5mmを有する管を使用して作成した。点又は延長部は、管の軸に対して適切な角度で管の遠位端の2個の相対する側面を摩砕することにより作成した。使用した角度は約30度であるが、他の角度を使用することもできる。試験管のはす縁は、点又は延長部の側面に沿って見える。これらの点の形は、本明細書に詳述したように、提供者部位の組織への装置の挿入、及び/又は提供者部位からの微小移植片組織部分の分離を促進することができる。例えば、このような微小移植片は、軸に沿って管を回転することなく、提供者部位組織から装置を挿入し引き出すことにより、提供者部位から分離し取り出すことができる。
【0081】
図9は、図8A~8Bに示す装置を使用して、エクスビボの皮膚組織の提供者部位から得られる複数の微小移植片の画像である。微小移植片は、細長く、実質的に同様の形であるが、形の詳細はわずかに異なる。これらの微小移植片の上部は表皮組織を含み、これらの微小移植片の下部は提供者部位から取り出され真皮組織を含む。これらの微小移植片の幅は、これらを採取するのに使用した図8A~8Bに示す管の内径よりわずかに小さい。
【0082】
図9の微小移植片は、管が取り出した組織で満たされるまで、提供者部位中に装置を複数回挿入することにより、装置から取り出された。提供者部位組織への装置の以後の各挿入は、管の近位端から最も上の微小移植片を押出し、ここで、これは個々に分析のために回収された。このような微小移植片はまた、微小移植片を含む管の近位端に圧力をかけて、本明細書に記載のように管の遠位端から押し出すことにより取り出すこともできる。
【0083】
上記は、本開示の原理を例示する。本明細書の教示から当業者には、説明した実施態様の種々の修飾と改変が明らかであろう。本明細書中に明示されていないが、本開示の原理を利用する無数の技術を考案することが可能であり、これらが本開示の精神と範囲内であることを、当業者は理解するであろう。本明細書に引用したすべての特許と刊行物とは、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9