(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】オフザシェルフがん免疫療法のためのプラットフォームとしてのCD1D拘束性NKT細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20220405BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220405BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220405BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20220405BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20220405BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220405BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220405BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220405BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N5/10 ZNA
C12N15/09 110
C12N15/113 Z
C12N15/09 100
C12N15/85 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17 Z
A61K45/00
(21)【出願番号】P 2020507526
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 US2018046306
(87)【国際公開番号】W WO2019033023
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-03-23
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メテリツァ,レオニード,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジンリン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ビン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/079673(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/069282(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/049459(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/172372(WO,A1)
【文献】The Journal of Clinical Investigation (2016) Vol.126, No.6, pp.2341-2355
【文献】Genome Biology (2014) Vol.15, No.494, pp.1-15
【文献】The Journal of Immunology (2004) Vol.172, pp.6115-6122
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
C12N 15/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたヒトナチュラルキラーT(NKT)細胞又は複数のそのNKT細胞であって、
前記細胞は1つ以上の主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子を標的とする1つ以上の作用物質を含み、前記細胞は前記1つ以上のMHC遺伝子の発現が減少しているか又は全く検出できないものであり、前記発現の減少は前記1つ以上の作用物質を含まないNKT細胞と比較したものであり、前記1つ以上のMHC遺伝子は、
(a)内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)、
(b)内在性MHCクラスII関連不変鎖(Ii)、又は
(c)
内在性B2M及びIiの両方
を含む、
前記細胞。
【請求項2】
B2M遺伝子又はIi遺伝子を標的とする合成DNA又はRNAを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記合成DNA又はRNAが、B2M遺伝子又はIi遺伝子の3'末端を標的とする、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
前記合成RNAが、shRNA又はCRISPRガイドRNAである、請求項2又は3に記載の細胞。
【請求項5】
組換えにより改変された1つ以上の受容体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項6】
前記受容体が、キメラ抗原受容体、キメラサイトカイン受容体、又はT細胞受容体である、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
1つ以上のサイトカインを組換えにより発現する、請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項8】
前記サイトカインが、IL-15、IL-7、IL-12、IL-18、IL-21、IL-27、IL-33、又はその組合せである、請求項7に記載の細胞。
【請求項9】
前記単離されたヒトNKT細胞が、B2M及び/又はIiに加えて
別の内在性遺伝子
を標的とする1つ以上の作用物質を含み、
前記細胞は前記別の内在性遺伝子の発現が減少しているか又は全く検出できないものであり、前記発現の減少は前記別の内在性遺伝子を標的とする前記1つ以上の作用物質を含まないNKT細胞と比較したものである、請求項1~8のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
対象に対して自家である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
対象に対して同種である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞を生成する方法であって、
単離されたヒトNKT細胞を:
(a)
前記細胞にお
ける内在性B2M
、
(b)
前記細胞にお
ける内在性Ii
、又は
(c)
前記細胞における内在性B2M及びIiの両方
の発現を減少させる1つ以上の作用物質に曝露する工程を含む、
前記方法。
【請求項13】
前記作用物質が、DNAベクター、モルホリノ、siRNA、S-DNA、TALEN、ZFN、shRNA、又はCRISPRガイドRNAである、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記NKT細胞が、組換えにより改変された受容体及び/又は1つ以上のサイトカインを発現するように操作されている、請求項
12又は
13に記載の方法。
【請求項15】
対象に
おけるがん又は前悪性症状の処置のための、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の細胞を
含む医薬組成物。
【請求項16】
前記がんが、神経芽細胞腫、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮体がん、黒色腫、膀胱がん、肺がん、膵臓がん、大腸がん、前立腺がん、リンパ系の造血器腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、間葉系起源の腫瘍、線維肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、膠芽細胞腫、皮膚の良性腫瘍、腎臓がん、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮細胞癌腫、肝細胞癌腫、濾胞樹状細胞癌腫、腸のがん、筋浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮癌腫、脾臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、胃がん、肝臓がん、骨がん、脳がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、唾液腺がん、子宮のがん、精巣のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、脊髄形成異常、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌系がん、骨髄異形成症候群、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド、食道胃、卵管がん、腹膜がん、漿液性乳頭状ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質腫瘍(GIST)、又はリーフラウメニ症候群及びフォンヒッペルリンドウ症候群(VHL)から選択される遺伝性がん症候群であり、又は前記前悪性症状が、骨髄異形成症候群(MDS)である、請求項
15に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
前記対象が、がんを有し、かつ追加のがん療法を提供される、請求項
15又は
16に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
前記追加のがん療法が、手術、放射線、化学療法、免疫療法、陽子線療法、ホルモン療法、又はその組合せである、請求項
17に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月11日に出願の欧州特許出願第17185992.9号に対する優先権を主張し、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、少なくとも細胞生物学、分子生物学、免疫学、及び医学の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
腫瘍特異的自家T細胞によるがん免疫療法。腫瘍特異的T細胞を単離し、拡大した後にまた患者へ注入して戻す(養子移入)戦略は、がん処置の有望な様式である。そのような処置は黒色腫の一部の患者において成功しており、その患者は、黒色腫特異的自家T細胞の注入後に完全かつ持続的な腫瘍退縮が可能である(1)。しかし、他の免疫原性の低い悪性腫瘍の処置としては、T細胞療法は、強力なT細胞応答を誘発できる分子的に定義された腫瘍抗原の不足、及び担腫瘍宿主からこれらT細胞を単離する困難性により制限がある。
【0004】
CARリダイレクト(redirected)自家T細胞によるがん免疫療法。抗原特異性をリダイレクトするためのキメラ抗原受容体(CAR)によるT細胞の遺伝的修飾は、既存の抗腫瘍性T細胞免疫に頼らない養子療法のためのエフェクター細胞を生成する戦略の1つである。最近の臨床試験は、CD19抗原にリダイレクトされたT細胞が、B細胞白血病及びリンパ腫の患者において持続的で完全な奏効を誘導できることを実証している(2-7)。しかし、リンパ腫患者から得られるT細胞は、疾患及び化学療法の効果のため増殖能が減少している。製品製造の間のT細胞拡大の減少は、新たに診断された小児リンパ腫患者のうちの25%及び処置された小児リンパ腫患者のうちわずか12.5%しか自家CD19 CAR T細胞で注入され得なかったことを意味する(8)。リンパ腫患者と同様に、T細胞数及び機能における異常は、がんの多くの型の患者に共通する(9-12)。この制限を解消する1つの方法は、がん患者へ注入するために腫瘍特異的CARで修飾され、ex vivoで拡大された、健康な個体から得られるT細胞を使用することである。しかし、同種幹細胞移植に適したごく一部の患者以外、HLA不適合なT細胞は、移植片対宿主病(GvHD)を引き起こし得る、及び/又は患者の免疫系によって拒絶され得るので、使用することができない。
【0005】
GvHDを回避するためのT細胞におけるTCRの遺伝的欠失。適合しない健康なドナーからGvHD不能CAR T細胞を生成する1つの手法は、Qasimらによって実証されており、T細胞において遺伝子編集を使用してCARを導入し、同時にTCRを破壊した(13)。その研究においてTCR遺伝子は、オフターゲット遺伝子改変を導入する転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)技術を使用してT細胞ゲノムから欠失された(13)。
【0006】
ナチュラルキラーT細胞(NKT)は、抗腫瘍性エフェクター機能を有し、天然にGvHDを回避する。NKTは、不変TCRα鎖Vα24-Jα18の発現及び単形性HLAクラスI様分子CD1dにより提示される糖脂質に対する反応性によって特徴付けられる自然リンパ球の進化的に保存されているサブセットである(14-17)。NKTは、数多くの抗腫瘍特性を有し、その数は、がんのいくつかの型において良好な予後と相関することが報告されている(18)。Heczey A.ら及びGian T.らは、NKTが末梢血から単離され、CARで形質導入され、養子細胞療法適用のために臨床スケールに拡大され得ることを実証した(19、20)。いくつかの研究は、ドナー由来NKTがGvHDを媒介せず、更にGvHDを抑制する場合があることを示した(21、22)。したがって、同種の健康なドナー由来CAR NKTを使用して、GvHDの危険性なしにがん患者を処置することができ、T細胞とは対照的に、追加の遺伝子操作が必要ない。
【0007】
宿主免疫系による同種治療細胞の排除。全ての正常な有核細胞は、HLAクラスIを発現しており、したがってHLA不適合なドナーから養子移入された治療細胞は、宿主免疫系によって排除されることになる。T及びNKT細胞は、活性化されるとHLAクラスIIを一過性に発現することもでき、HLAクラスII不適合は、宿主CD4 T細胞によるドナー細胞排除を起動する。そのような拒絶を遅延させる一般的な手法は、免疫抑制性宿主調整を使用して、宿主免疫系が回復する前にエフェクター細胞が抗腫瘍活性を媒介することができる治療窓を可能にすることである。しかしながら、そのような手法は患者に有毒であり、治療エフェクター細胞の残留性が不十分なため、完全な腫瘍制御をできない可能性がある。
【0008】
細胞表面上でのHLAクラスI分子の発現は、β2ミクログロブリン(B2M)に依存する。細胞表面において発現されるにはHLAクラスI分子は、B2Mを必要とすることがよく確立されている(23)。それゆえ、ドナー由来エフェクター細胞においてB2Mを標的とすることにより、HLAクラスI発現が破壊され、宿主CD8 T細胞によるそれらの認識が防止され得る。しかし、HLAクラスI分子は、NK細胞に対する阻害性リガンドとしての機能も果たし、B2M発現の喪失は、ドナー細胞を宿主NK細胞による死滅に対して感受性にすると予想される(24)。宿主NK細胞の細胞毒性を起動させることなく宿主CD8 T細胞の活性化を防止するのに十分であり得る特定のレベルのB2M/HLAクラスI発現が、ドナー細胞において達成され得るかどうかは知られていない。NKTにおいてB2M発現のそのような範囲を見出すことにより、HLA適合しない健康なドナー由来の治療NKT又はCAR NKTに対するがん患者の寛容を延長できるようになり、GvHDの危険性なしに抗腫瘍活性を存続させ得ることになる。
【0009】
細胞表面におけるHLAクラスII分子の発現は、HLA-DR抗原関連不変鎖(Ii、CD74とも呼ばれる)に依存する。不変鎖は、ERからのMHCクラスIIのエキスポートを促進し、適切な抗原の搭載及びMHCクラスII/抗原複合体の表面発現に必要である。T細胞は、活性化、例えば抗原認識によりその細胞表面でMHCクラスIIを一過性に発現することが公知である。本開示は、NKT細胞が、TCR刺激後に細胞表面におけるMHCクラスII発現も上方調節するという知見を記載する(
図3A)。したがって、本発明者らは、Ii発現を標的とすることによるMHCクラスIIの下方調節によって宿主CD4 T細胞によるNKT細胞拒絶を減弱することを目指した。更に、NKTにおけるB2M及びIiの組合せ標的化が、HLA適合しない健康なドナー由来の治療NKT又はCAR NKTに対するがん患者の寛容を更に延長し、GvHDの危険性なしにそれらの抗腫瘍活性を最大化し得るかどうか特徴付けた。
【発明の概要】
【0010】
本開示の実施形態は、宿主によって寛容されるように、例えば望ましくない宿主免疫応答を回避するように操作された細胞(例えばドナー由来の細胞);免疫療法を含む、その細胞の使用の方法も本開示に包含される。特定の実施形態において、細胞は免疫療法における使用のためのものであり、すぐに(オフザシェルフに)使用されると考えてもよい。特定の実施形態において、細胞は養子療法に適している。特定の実施形態において、細胞は対象においてGvHDを回避する。細胞は、1つ以上の宿主において使用されてもよく、同じ複数の改変された細胞由来の細胞を1つ以上の宿主に使用することを含み得る。特定の場合において、対象に提供される細胞は、宿主免疫細胞を回避する能力を達成し、一部の場合においては細胞破壊のための腫瘍特異性をも提供するための1つの操作を付されている。一部の場合において、本開示は、がんを含む、オフザシェルフ免疫療法のための、健康なドナーに由来する腫瘍特異的でかつ広く寛容されるNKT細胞をワンヒット生成することを包含する。特定の場合において、本開示に包含される細胞は、同種NK細胞による死滅を起動しないことを含み、同種CD8 T細胞又はCD4 T細胞の活性化を防止することができる。そのような場合において、細胞は、改変されてHLAクラスI分子を殆ど又は全く発現しないNKT細胞であり、これら細胞は、驚くべきことに、宿主NK細胞による死滅に対して抵抗性のままである。本明細書ではNKT細胞は、例えばiNKT、UTNKT、又はナチュラルキラーT細胞を含み得る。一部の場合において、ドナー細胞は、がんの対象を含めて、HLA適合しない対象の免疫療法のために使用することができる。特定の場合において、RNA干渉が、B2M特異的shRNAで使用され、同種NK細胞による死滅を起動することなく同種CD8 T細胞の活性化を防止し得るB2M及びHLAクラスI発現の範囲が、NKT細胞に見いだされ得る。特定の場合において、RNA干渉が、Ii特異的shRNAで使用され、NKT細胞において、同種CD4 T細胞の活性化を防止し得る、Ii及びHLAクラスII発現の下方調節が見い出され得る。一部の特定の場合において、B2M特異的shRNA、Ii特異的shRNA、又は両方、及び腫瘍特異的CARを改変して単一のレトロウイルス構築物内で発現させ、それによりHLA適合しないがん患者の免疫療法のための腫瘍特異的であり、かつ広く寛容される健康なドナー由来NKT細胞をワンヒット生成することができる。特定の実施形態において、細胞は誘導多能性幹細胞に由来しない。特定の態様において、細胞は、NK細胞による排除に抵抗性である。
【0011】
本開示の一実施形態において、内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)及び/若しくはMHCクラスII関連不変鎖(Ii)、又は両方の発現が減少した、単離されたNKT細胞若しくは複数のその細胞が存在する。細胞は、人為的操作によりB2M及び/又はIiの発現が減少しており、天然に存在しないか又は天然の細胞と類似していない。発現の減少は、細胞におけるノックアウト又はノックダウンと更に定義されてもよい。特定の実施形態において、細胞(単数又は複数)は、B2M遺伝子及び/又はIi遺伝子を標的とする1つ以上の作用物質、例えばB2M遺伝子又はIi遺伝子、例えばB2M又はIi遺伝子の3'末端を標的とする1つ以上の合成DNA若しくはRNAを含む。特定の場合において、合成RNAは、shRNA又はCRISPRガイドRNAである。
【0012】
本開示の特定の実施形態において、内在性B2M及び/又はIiの発現が減少した細胞(単数若しくは複数)は、1つ以上の改変された受容体、例えばキメラ抗原受容体又はT細胞受容体を含む。一部の場合において、NKT細胞(単数又は複数)は、1つ以上のサイトカイン及び/又は1つ以上のサイトカイン受容体、例えばIL-15、IL-15Ra、IL-7、IL-12、IL-18、IL-21、IL-27、IL-33、若しくはその組合せを組換えにより発現する。一部の場合において、NKT細胞(単数又は複数)は、第2の内在性遺伝子の発現が減少している。特定の場合において、細胞(単数又は複数)は、対象に対して自家又は同種である。
【0013】
一実施形態において、細胞(単数又は複数)において内在性B2M及び/若しくはMHCクラスII関連不変鎖(Ii)の発現を減少させる1つ以上の作用物質にNKT細胞を曝露することによって本明細書に包含されるNKT細胞(単数若しくは複数)を生成する方法が存在する。作用物質は、限定されるものではないが、DNAベクター、モルホリノ、アンチセンスRNA、アンチゴマー(antigomer)RNA、siRNA、S-DNA、TALEN、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、又はCRISPRガイドRNAを含む、どんな種類のものであってもよい。前記DNAベクターは、1つ以上の標的遺伝子の発現を不活性化する又は減少させる作用物質をコードする。一部の場合において、NKT細胞は、内在性B2Mの発現を減少させる操作以外に1つ以上の実体を発現するように操作されており、例えば1つ以上の改変された受容体及び/又は1つ以上のサイトカインを有するように操作されている。一部の場合において、NKT細胞以外の細胞が、利用される。
【0014】
一部の実施形態において、対象における医学的症状、例えばがんの処置における使用のための本明細書に包含される細胞(単数又は複数)が存在する。一部の場合において、がんは、脳、肺、乳、前立腺、膵臓、皮膚、腎臓、肝臓、精巣、卵巣、胆嚢、脾臓、子宮内膜、頸部、食道、甲状腺、下垂体、胃、結腸、肛門、血液、骨、膀胱、胆管、頭頸部、口腔、唾液腺、小腸及び/若しくは尿道、又は前悪性症状、例えば骨髄異形成症候群(MDS)のものである。
【0015】
特定の実施形態において、対象における医学的症状、好ましくはがん若しくは前悪性症状の処置に使用する本明細書に包含される同種細胞(単数又は複数)を含む組成物がある。
【0016】
一部の実施形態において、対象に有効量の本明細書に包含される1つ以上の細胞を提供することによって対象における医学的症状を処置する方法がある。医学的症状は、がんであってもよく、或いはがんでなくてもよい。一部の場合において、細胞は対象に対して同種であるが、他の場合において、それらは対象に対して自家である。特定の実施形態において、それらはNKT細胞である。
【0017】
前述では、後に続く本発明の詳細な説明をよりよく理解できるように本発明の特徴及び技術的優位性をある程度広く概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する本発明の追加の特徴及び優位性が以下で記述される。開示される概念及び特定の実施形態が、本発明の同じ目的を実施するために修飾又は他の構造を設計する基礎として容易に利用され得ることは、当業者に認識され得る。そのような同等の構築物が、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことも、当業者に理解され得る。付随する図面と関連して考えた場合、本発明に特徴的であると考えられる新規の特徴は、その構成と実施の方法の両方について、更なる目的及び優位性と共に以下の説明からよりよく理解されることになる。しかし、図の各々は、例示と説明のためだけに提供されるものであり、本発明の限界を規定することを意図しないことは明白に理解されるべきである。
本発明はまた、以下に関する。
[項目1]
(a)内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)、
(b)内在性MHCクラスII関連不変鎖(Ii)、又は
(c)両方
の発現が減少している又は全く検出できない、単離されたヒトNKT細胞又は複数のその細胞。
[項目2]
B2M遺伝子又はIi遺伝子を標的とする合成DNA又はRNAを含む、項目1に記載の細胞。
[項目3]
前記合成DNA又はRNAが、B2M遺伝子又はIi遺伝子の3'末端を標的とする、項目2に記載の細胞。
[項目4]
前記合成RNAが、shRNA又はCRISPRガイドRNAである、項目2又は3に記載の細胞。
[項目5]
組換えにより改変された1つ以上の受容体を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の細胞。
[項目6]
前記受容体が、キメラ抗原受容体、キメラサイトカイン受容体、又はT細胞受容体である、項目5に記載の細胞。
[項目7]
1つ以上のサイトカインを組換えにより発現する、項目1~6のいずれか一項に記載の細胞。
[項目8]
前記サイトカインが、IL-15、IL-7、IL-12、IL-18、IL-21、IL-27、IL-33、又はその組合せである、項目7に記載の細胞。
[項目9]
B2M及び/又はIiに加えて更に別の内在性遺伝子の発現が減少している、項目1~8のいずれか一項に記載の細胞。
[項目10]
CD62L陽性及び/又はCD4陽性及び/又はPD1陰性/低(low)細胞であるNKT細胞である、項目1~9のいずれか一項に記載の細胞。
[項目11]
対象に対して自家である、項目1~10のいずれか一項に記載の細胞。
[項目12]
対象に対して同種である、項目1~10のいずれか一項に記載の細胞。
[項目13]
NKT細胞を:
(a)細胞において内在性B2Mの発現を減少させる1つ以上の作用物質、
(b)細胞において内在性Iiの発現を減少させる1つ以上の作用物質、又は
(c)両方
に曝露する工程を含む、項目1~12のいずれか一項に記載の細胞を生成する方法。
[項目14]
前記作用物質が、DNAベクター、モルホリノ、siRNA、S-DNA、TALEN、ZFN、shRNA、又はCRISPRガイドRNAである、項目13に記載の方法。
[項目15]
前記NKT細胞が、組換えにより改変された受容体及び/又は1つ以上のサイトカインを発現するように操作されている、項目13又は14に記載の方法。
[項目16]
対象に、治療的量の項目1~12のいずれか一項に記載の細胞を提供する工程を含む、それを必要とする対象において1つ以上の医学的症状を処置する方法。
[項目17]
前記医学的症状が、がん又は前悪性症状である、項目16に記載の方法。
[項目18]
前記がんが、神経芽細胞腫、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮体がん、黒色腫、膀胱がん、肺がん、膵臓がん、大腸がん、前立腺がん、リンパ系の造血器腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、間葉系起源の腫瘍、線維肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、膠芽細胞腫、皮膚の良性腫瘍、腎臓がん、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮細胞癌腫、肝細胞癌腫、濾胞樹状細胞癌腫、腸のがん、筋浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮癌腫、脾臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、胃がん、肝臓がん、骨がん、脳がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、唾液腺がん、子宮のがん、精巣のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、脊髄形成異常、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌系がん、骨髄異形成症候群、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド、食道胃、卵管がん、腹膜がん、漿液性乳頭状ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質腫瘍(GIST)、又はリーフラウメニ症候群及びフォンヒッペルリンドウ症候群(VHL)から選択される遺伝性がん症候群であり、又は前記前悪性症状が、骨髄異形成症候群(MDS)である、項目17に記載の方法。
[項目19]
前記対象が、がんを有し、かつ追加のがん療法を提供される、項目17又は18に記載の方法。
[項目20]
前記追加のがん療法が、手術、放射線、化学療法、免疫療法、陽子線療法、ホルモン療法、又はその組合せである、項目19に記載の方法。
【0018】
本発明のより完全な理解のために、付随する図面と併せて以下の説明をここで参照されたい:
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】NKT細胞が、同種PBMCの存在下で増殖しないことを示す図である。カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)標識NKT細胞を、刺激細胞として照射を受けた同種PBMCと比5:1で共培養した。単独又はαGalCerでパルスした自家PBMCは、それぞれ陰性又は陽性対照としての機能を果たした。NKT細胞増殖を、6日目にフローサイトメトリーによって測定したCFSE希釈物によって評価した。結果は、4回の実験の代表的なものである。
【
図2】β2ミクログロブリン(B2M)発現のCRISPR/Cas9ノックアウト及びshRNAノックダウンを示す図である。(
図2A)Cas9のみ(緑色)又はCas9/hB2M-sgRNA(赤色)のエレクトロポレーション96時間後のNKT細胞におけるB2M発現(左)及びHLA ABC発現(右)の代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。(
図2B)Cas9のみ(緑色)又はCas9/hB2M-sgRNA(赤色)によるエレクトロポレーション後に抗APCマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を使用してB2M陽性細胞を枯渇させることにより更に精製した後のNKT細胞におけるB2M及びHLA ABC発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。(
図2C)NKT細胞においてB2M(上)及びHLA ABC(下)発現の下方調節を引き起こすレンチウイルス媒介性B2M shRNAの代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。結果は、試験したドナー5名の代表的なものである。
【
図3】Ii (CD74)標的化shRNAを使用したHLAクラスII発現のノックダウンを示す図である。(
図3A)Pacific Blueコンジュゲート抗HLA DP-DQ-DR mAbを使用する、静止NKT細胞(刺激後15日目)及び活性化NKT細胞(刺激後2日目)におけるHLA DP-DQ-DR発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。(
図3B)形質導入したNKT細胞の表面上でHLA DP-DQ-DRの下方調節を引き起こすレンチウイルス媒介性Ii shRNAの代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。結果は、試験したドナー5名の代表的なものである。
【
図4】同種混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてCRISPR及びshRNAによるB2M標的化が、CD4+及びCD8+ T細胞のNKT細胞刺激を減少させるのに等しく有効であることを示す図である。(
図4A)CFSE標識T細胞を、WT、B2M
null(CRISPR)、B2M
low(shRNA)、又はIi
low(shRNA)NKTと比5:1で共培養した。CD8+及びCD4+ T細胞の増殖を、刺激後5日目にCFSE希釈物による測定で評価した。(
図4B)結果は、試験した3名のドナーの代表的なものである。WT NKTとの比較、*P <0.05、**p<0.01。
【
図5】B2M
null/low NKTが、アロNK細胞細胞毒性の影響を最小限しか受けないことを示す図である。(
図5A)健康なドナー由来WT、B2M
null (CRISPR)、又はB2M
low (shRNA) NKT細胞をカルセインAMで標識し、無関係な健康なドナーに由来する同種NK細胞とエフェクター対標的比10:1、5:1、及び1:1で4時間インキュベートした。阻害性HLAクラスIリガンドを天然に欠いているNK感受性K562細胞を、陽性対照として使用した。(
図5B)特異的溶解の平均パーセンテージの定量化を示す図である。データは、平均±SDを表す。N=3、対照WT細胞との比較、*P <0.05、**p<0.01。
【
図6A】CAR及びshRNAを発現するレトロウイルスベクターの生成を示す図である。(
図6A)CAR/shRNA構築物の模式図である: U6プロモーター及びshRNAを、CARの下流に反対方向(1)又は同一方向(2)で配置する。更にU6プロモーター及びshRNAを、EF1プロモーター駆動性CARの上流に同一方向(3)又は反対方向(4)で配置する。(
図6B)NKT細胞におけるCAR及びB2M発現のフローサイトメトリー分析を示す図である。結果は、試験したドナー5名の代表的なものである。
【
図7】IL15と共に若しくはIL15なしでCD28又は41BB 共刺激ドメインのいずれかを発現するCD19 CAR構築物の生成を示す図である。8つの構築物を、2つのドメイン構造に基づいて生成した。第1の群(構築物39及び84)は、IgG
4ヒンジ、IgG
1 CH3スペーサー、CD28 TM、及び、CD28若しくは4-1BB 共刺激ドメインのいずれかをコードし、全てがIL15を伴う若しくは伴わない。第2の群(構築物28及び41)は、CD28若しくは4-1BB共刺激ドメインのいずれかと共にCD8αヒンジ及びTMをコードし、全てがIL15を伴う若しくは伴わない。構築物28及び41は、それぞれCD28又は41BB共刺激ドメインのいずれかを含有する断片をFMC63 scFvとそれぞれ連結することによって生成された。2A及びIL15配列は、Gibsonアッセンブリ法(New England Biosciences)を使用して全ての構築物に付加された。LTR =長い末端反復、scFv =一本鎖可変断片、TM=膜貫通、2A =馬鼻炎Aウイルス(Equine rhinitis A virus)由来2A配列。
【
図8A】CD19 CAR NKTを注射したマウスにおけるホタルルシフェラーゼ(Ffluc)標識ダウディリンパ腫細胞の連続生物発光イメージングを示す図である。NSGマウスに、Ffluc+ダウディリンパ腫細胞2×10
5個を静脈内注射し、3日後に表示した構築物で形質導入した又は構築物なし(非形質導入、NT)のNKT 5×10
6個を静脈内注射した。イメージングの直前に、腹腔内注射によってマウスに30mg/mLルシフェリン100μLを与え、生物発光チャネル下で5分間撮像した。生物発光計数スケール150~5000である。
【
図9】
図8においてCD19 CAR NKTで処置したダウディリンパ腫マウスの生存曲線を示す図である。生存確率を、カプランマイアー法(群当たり8匹のマウス)によって分析し、比較をログランク(マンテルコックス)検定を使用して算出した。39対39.15 p = 0.0033、28対28.15 p = 0.0003、39.15対28.15 p = 0.0011、84対84.15 p = 0.0039、41対41.15 p = 0.1410。
【
図10】B2M及びIi shRNAと共に、又はB2M及びIi shRNAなしでCD19 CARを発現するレトロウイルスベクターの生成を示す図である。構築物28.15を、
図7に記載の通り生成した。shRNA含有構築物の場合、個々のU6プロモーター(Sigma-Aldrich)に連結したB2M及びIi shRNA配列を、Gibsonアセンブリによって反対の転写方向でCARの下流に個別に又は同時に28.15に連結した。LTR =長い末端反復、scFv =一本鎖可変断片、TM=膜貫通、2A =馬鼻炎Aウイルス(Equine rhinitis A virus)由来2A配列。
【
図11】B2M及びIi発現のshRNAノックダウンを示す図である。(
図11A)CD19 CAR発現の代表的なフローサイトメトリー分析を示す図である。抗原刺激の4日後にNKTを表示した構築物で形質導入し、Alexa 647コンジュゲート抗FMC63 mAbで染色した。非形質導入(NT) NKTは、対照としての機能を果たした。表示した構築物で形質導入したNKT細胞又はNT NKTにおけるB2M (
図11B)、HLA ABC (
図11C)、Ii (
図11D)、及びHLA DP-DQ-DR (
図11E)発現の代表的なフローサイトメトリー分析である。細胞を、抗FMC63 mAb、及び1) FITCコンジュゲート抗HLA ABC抗体とPEコンジュゲート抗B2M抗体又は2) FITCコンジュゲート抗HLA DP-DQ-DR抗体とPEコンジュゲート抗Ii抗体で染色した。サンプルを、CAR陽性細胞でゲートした。結果は、試験したドナー3~5名の代表的なものである。(
図11F)CAR-shRNA NKT対CAR NKTにおける表示した遺伝子ノックダウンの定量化を示す図である。
【
図12】B2M/Ii shRNAが、CAR
UTNKT細胞のCAR指向性in vitro細胞毒性に影響を与えないことを示す図である。表示したCD19 CAR-shRNA構築物で形質導入したNKT又は非形質導入(NT)を、指定したエフェクター対標的比でルシフェラーゼ陽性ダウディ(CD19陽性)標的細胞と6時間共培養した。NKT細胞毒性を、共培養後の標的細胞生物発光の関数として決定した。
【
図13】適合しないCD8
+及びCD4
+ T細胞が、同種MLRアッセイにおいてCAR
UTNKT細胞に対する同種反応性の減弱を示すことを示す図である。(
図13A)同種MLRアッセイにおけるT細胞の予想される結果の概略を示す図である。親NKTに対するMHCクラスI及びMHCクラスIIの同種CD8
+又はCD4
+ T細胞認識は、それぞれT細胞増殖をもたらす。
UTNKTにおけるB2MノックダウンによるMHCクラスI又はIiノックダウンによるMHCクラスIIの下方調節は、同種T細胞増殖に相対的な低下をもたらす。(
図13B)CFSE標識CD8
+又は(
図13C)CD4
+ T細胞を、表示した構築物を発現するCAR
UTNKT細胞若しくは非形質導入(NT) NKT細胞と比1:5(T:NKT)で共培養した。CFSE希釈物によって測定したT細胞増殖を刺激5日後に評価した。結果は、試験したドナー3名の代表的なものである。
【
図14】
UTNKT細胞が、親NKTより同種T細胞細胞毒性の影響を受けにくいことを示す図である。(
図14A)T細胞細胞毒性アッセイにおけるNKT及び
UTNKT細胞の予想される結果の概略を示す図である。同種T細胞は、親NKT上のMHC分子を異種と認識し、これらのNKT細胞の死をもたらすことになる。
UTNKT上のMHC分子の下方調節により、これらの細胞は、親NKTよりT細胞細胞毒性を逃れることができるようになる。(
図14B)同種T細胞を、CAR
UTNKT又は非形質導入(NT) NKTと比1:1で4日間インキュベートした。NKT細胞計数を、計数ビーズ(Invitrogen)を使用してフローサイトメトリーによって決定した。NT NKTとの比較、* p < 0.05、** p < 0.01。
【
図15】
UTNKT細胞が、NK細胞細胞毒性の影響を最小限しか受けないことを示す図である。(
図15A)NK細胞細胞毒性アッセイの予想される結果の概略を示す図である。NK細胞は、MHCクラスIを発現する親NKTを死滅させないが、MHC Iを欠いている標的細胞を通常死滅させる。
UTNKTは、十分なMHC Iを発現して、NK細胞による死滅を逃れることになる。(
図15B)健康なドナー由来のNK細胞を、比5:1でカルセインAM標識
UTNKTと4時間共培養した。標的細胞溶解を、フローサイトメトリーで決定された保持カルセインAM蛍光の関数として示す、平均±SD、N=3、 ** p < 0.01。NS:有意でない。
【
図16A】CAR.CD19
UTNKTを注射したマウスにおけるFfluc標識ダウディリンパ腫細胞の連続生物発光イメージングを示す図である。(
図16A)NSGマウスに、Ffluc+ダウディリンパ腫細胞2×10
5個を静脈内注射し、3日後に表示した構築物で形質導入した又は構築物なし(非形質導入、NT)のCAR.CD19
UTNKT 5×10
6個を静脈内注射した。イメージングの直前に、マウスに腹腔内注射によって30mg/mLルシフェリン100μLを与え、生物発光チャネル下で5分間撮像した。(
図16B)生物発光計数スケール150~5000である。
【
図17】
図16においてCAR.CD19
UTNKTで処置したダウディリンパ腫マウスの生存曲線を示す図である。生存確率を、カプランマイアー法(群当たり10匹のマウス)によって分析し、比較をログランク(マンテルコックス)検定を使用して算出した。**** p < 0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、「a」又は「an」は、1以上を意味してもよい。本出願の特許請求の範囲では、単語「含む(comprising)」と組み合わせて使用される場合、単語「a」又は「an」は、1又は1より多くを意味してもよい。本明細書では「別の」は、少なくとも2番目又はさらに別のものを意味してもよい。特定の実施形態において、本発明の態様は、例えば、本発明の1つ以上の配列「から本質的になる」又は「からなる」ことができる。本発明の一部の実施形態は、本発明の1つ以上の要素、方法工程、及び/又は方法からなってもよく若しくは本質的になってもよい。本明細書に記載されるいかなる方法又は組成物も、本明細書に記載される他のいかなる方法又は組成物に対しても実行され得ると考えられる。本出願の範囲は、明細書に記載されている工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図しない。
【0021】
本明細書では用語「治療上有効量」又は「有効量」とは、疾患を処置するために対象又は患者に投与される場合に、疾患の少なくとも1つの症候を改善することを含めて、疾患に対してそのような処置を果たすのに充分である量を指す。
【0022】
内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)及び/又は内在性MHCクラスII関連不変鎖(Ii)の発現を減少させたNKT細胞とは、無修飾NKT細胞と比較した場合に、内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)及び/又は内在性MHCクラスII関連不変鎖(Ii)発現のレベルが、減少している細胞のことを指す。一実施形態において、内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)及び/又は内在性MHCクラスII関連不変鎖(Ii)発現のレベルは、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、より好ましくは100%減少する。
【0023】
用語「下方調節する」、「下方調節」等は、1つ以上の遺伝子の遺伝子発現の低下、減少、排除、及び/又は阻害のことを指す。したがって、本用語は、用語「ノックダウン」と「ノックアウト」の両方を包含する。
【0024】
本明細書では、用語「ノックダウン」とは、1つ以上の遺伝子の遺伝子発現の低下又は排除のことを指す。
【0025】
本明細書では用語「ノックアウト」とは、1つ以上の遺伝子の遺伝子発現の除去のことを指す。
【0026】
本明細書では、用語「内在性」とは、細胞の内部由来の又は内部で産生されるあらゆる材料のことを指し、一方で用語「外来性」とは、細胞の外部から導入される又は産生されるあらゆる材料のことを指す。
【0027】
本明細書では、用語「組換えにより改変された受容体」とは、遺伝的組換えの標準的な技術を使用して人為的操作によって生成される細胞表面受容体のことを指す。
【0028】
I.本開示により修飾されたNKTは、アロNK細胞細胞毒性に抵抗性である
本開示は、NKT細胞が、高度に機能的な細胞の表現型を保ちつつ健康なドナーから単離され、ex vivoで多数に拡大され、治療適用、例えば養子がん免疫療法のためのNKT細胞に基づく同種治療産物を産生する基礎を提供することができることを実証する。
【0029】
全てのヒトにおいて同一である単形性CD1dによるNKT TCR拘束のため、本開示は、NKT細胞が無関係のドナー由来のPBMCに反応しないことを実験的に実証する。これらの結果は、従来のT細胞とは異なり、無関係のレシピエントへ移入した場合に同種NKTが、GvHDを媒介し得ないことを示す。
【0030】
他の任意の細胞のように、NKTは、HLAクラスI分子を発現し、HLA不適合なレシピエントの免疫系、主にHLAクラスI拘束性CD8 T細胞による排除の対象である。本分野における既存の知見は、HLAクラスI発現が、B2M発現を標的とすることによって排除又は減少され得ることを教示している。しかしながら、HLAクラスI分子は、NK細胞に対する阻害性リガンドとしての機能を果たし、それ故、B2M発現の標的化によって、NK細胞に媒介される死滅が起動されると予想されることも公知である。したがって、本分野における現状の最先端技術では、NKT又はがん免疫療法に使用される他の任意の型のエフェクターリンパ球におけるB2Mの排除若しくは下方調節が、細胞をアロNK細胞細胞毒性に供し得ることを示唆する。本開示において、B2M発現の完全な排除、例えばCRISPR媒介性遺伝子欠失によるもの、又はB2M発現の段階的な下方調節、例えばshRNA媒介性RNA干渉によるもののいずれも、同種CD8及びCD4 T細胞によるNKT細胞刺激を減少させるのに等しく有効であることが初めて実証された。
【0031】
予想外なことに、本明細書に示されるように、大部分のNKTは、CRISPR媒介性B2Mノックアウト後、なお更にshRNA媒介性B2Mノックダウン後に、アロNK細胞細胞毒性に対して抵抗性のままであった。CRISPR媒介性B2M遺伝子ノックアウトと比較して、NKTにおけるshRNA媒介性B2M遺伝子ノックダウンは、T細胞同種反応性を減少させるのに等しく有効であるが、NKTをアロNK細胞細胞毒性の影響をより受けにくくすることを考えると、一部の実施形態において、同種環境での養子細胞療法適用のために、NKT及びおそらく他のエフェクターリンパ球(例えばT、NK、γ/δ T、MAIT、ILC等)においてB2M発現を標的とするためにshRNAが利用される。更にCRISPR及び類似のゲノム編集方法(例えば、TALEN、ZFN)とは対照的に、shRNAは、標的細胞に恒久的な遺伝子変化を引き起こさないので、少なくとも一部の例において臨床的により安全な選択肢を提供する。
【0032】
最後に、B2M特異的shRNA及び腫瘍特異的CARを改変して単一のレトロウイルス構築物内で発現させ、それによりHLA適合しないがん患者の免疫療法のために腫瘍特異的でありかつ広く寛容される健康なドナー由来NKT細胞をワンヒット生成することができることが、本明細書において初めて実証される。
【0033】
II.本開示の細胞
特定の実施形態において、本開示の細胞は、抗腫瘍エフェクター機能を有する及び/又は移植片対宿主疾患を回避することができる細胞である。特定の実施形態において細胞は、NKT細胞であるが、他の実施形態において細胞は、T、NK、γ/δ T、MAIT又はILCである。少なくとも一部の場合において、細胞は誘導多能性幹細胞に由来しない。特定の実施形態において、細胞は、HLAクラスI及び/若しくはクラスII分子並びに/又は1つ以上のHLAクラスII分子の発現が減少している或いは発現がない。特定の実施形態において、細胞は、特定の宿主T細胞、例えば宿主CD8 T細胞及び/又は宿主CD4 T細胞によって認識されることが不可能である。特定の実施形態において、例えば、HLAクラスI分子の発現が、細胞において減少する又は排除されるように細胞を操作して、B2Mの発現を減少させる又は排除する。更に又は別法として、例えば、HLAクラスII分子の発現が、細胞において減少する又は排除されるように細胞を操作して、Iiの発現を減少させる又は排除する。特定の実施形態において、本開示の細胞は、宿主NK細胞が、本開示に包含される細胞を死滅させることができないように設計される。一部の実施形態において、本開示の細胞は、宿主刺激細胞、例えば宿主PBMCとアロ反応性ではなく、同種宿主に養子移入された場合にGvHDを媒介する能力を欠いている。特定の実施形態において、細胞は、NK細胞による排除に抵抗性である。
【0034】
特定の実施形態において、本開示は、B2Mの発現を減少させた細胞に関する。B2Mの発現を減少させた細胞は、当技術分野において標準的な手段によって検出できない、又は、検出できるが内在性発現を減少させるために人為的に操作されていない細胞と比較して発現のレベルが減少しているB2M発現を有し得る。細胞は、発現においてB2Mノックアウト又はノックダウンを有すると規定することもできるて。そうすることにおいて、特定の実施形態において、細胞はHLAクラスI陰性である。一部の実施形態において、本開示は、Iiの発現を減少させた細胞に関する。Iiの発現を減少させた細胞には、当技術分野において標準的な手段によって検出できない、又は、検出できるが内在性発現を減少させるために人為的に操作されていない細胞と比較して発現のレベルが減少しているIi発現を有し得る。細胞は、発現においてIiノックアウト又はノックダウンを有すると規定することもできる。そうすることにおいて、特定の実施形態において、細胞はHLAクラスII陰性である。
【0035】
別の場合において、B2M又はIiの発現のレベルにおける部分的若しくは完全な減少の代わりに、細胞を改変してそれぞれの非機能的バージョンを発現させてもよい。例えば、細胞を操作して、完全長の非機能的断片である、又は完全長であるが標準的な機能性の欠陥をもたらす1つ以上の突然変異(点突然変異、反転、欠失等)を有するB2M及び/若しくはIiを発現させてもよい。B2M変異体の例は、MHC1アルファ1アルファ2ドメイン相互作用欠損を有するものである(Hillら、2003年)。
【0036】
特定の実施形態において、(a)内在性ベータ2ミクログロブリン(B2M)、(b)内在性MHCクラスII関連不変鎖(Ii)、又は(c)両方の発現が減少している又は全く検出できない1つ以上の単離されたヒトNKT細胞であって、誘導多能性幹細胞に由来しないものであり、かつ養子療法に適している細胞(複数のその細胞を含む)が存在する。特定の実施形態において、そのような特徴は、細胞がNK細胞による排除に対して抵抗性になる直接的又は間接的な理由である。
【0037】
一部の場合において、細胞は健康なドナーを含めたドナーから単離され、細胞は、1つ以上の特定の形質について選択される。例えば、細胞は、1つ以上の特定のマーカー、例えば表面マーカーの発現について選択されてもよい。特定の実施形態において、例えば、そのようなマーカーは、特定の有益な機能、例えば、マーカーを欠く細胞と比較して、養子移入後にin vivoで拡大し、持続し、及び/又は腫瘍細胞死滅の反復ラウンド後の消耗に抵抗する細胞の能力の増大に関連し得る。特定の実施形態において、細胞は、CD62L、CD4及びその組合せからなる群から選択されるバイオマーカーを発現し、並びに/又はPD1、LAG3、TIM3、TIGIT等の発現を欠く若しくは発現が低いように選択される。
【0038】
特定の実施形態において、B2M及び/又はIiの発現を減少させた細胞に加えて、細胞を改変して、1つ以上の他の非天然の実体、例えば1つ以上の受容体を発現させてもよい。受容体は、任意の型のものでもよく、1つの細胞は、B2M及び/又はIiの発現を減少させることに加えて1つより多い受容体を有してもよい。特定の場合において、受容体は、組換えにより改変された受容体である。例えば、受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)、キメラサイトカイン受容体、T細胞受容体、等でもよい。細胞が、1つ以上のCARを発現するように修飾されている場合、単一のCARは、1つ以上の腫瘍抗原を含めて、1つ以上の抗原を標的とし得る。受容体によって標的にされる腫瘍抗原には、例えば5T4、8H9、αvβ6インテグリン、BCMA、B7-H3、B7-H6、CAIX、CA9、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD44、CD44v6、CD44v7/8、CD70、CD123、CD138、CD171、CEA、CSPG4、EGFR、ErbB2(HER2)を含めたEGFRファミリー、EGFRvIII、EGP2、EGP40、ERBB3、ERBB4、ErbB3/4、EPCAM、EphA2、EpCAM、FAP、FBP、胎児性AchR、FRα、GD2、GD3、グリピカン-3(GPC3)、HLA-A1+MAGE1、HLA-A1+NY-ESO-1、IL-11Rα、IL-13Rα2、ラムダ、ルイス-Y、カッパ、KDR、MCSP、メソテリン、Muc1、Muc16、NCAM、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、PRAME、PSC1、PSCA、PSMA、ROR1、SP17、サバイビン、TAG72、TEM、癌胎児性抗原、HMW-MAA、又はVEGFR2が含まれ得る。CARは、第1世代(CD3ゼータ鎖を含む)、第2世代(CD3ゼータ鎖及び1つの細胞内シグナル伝達共刺激エンドドメインを含む)、第3世代(CD3ゼータ鎖及び2つ以上の細胞内シグナル伝達共刺激エンドドメインを含む)、第4世代(組換え免疫修飾因子を誘導性に放出する)、等でもよい。特定の実施形態において、CARは、CD28、OX40、4-1BB、ICOS、CD40、CD30、CD27又はその組合せからなる群から選択される共刺激エンドドメインを含む。更に又は別法として、細胞は、1つ以上の組換えT細胞受容体(TCR)を発現してもよい。一部の実施形態において、例えばWO2016170320A1に記述されているように、そのようなTCRを修飾して、高レベルの細胞表面抑制を達成してもよい。一部の実施形態において、例えばWO2006000830A2に記述されているように、そのようなTCRは、細胞外定常ドメイン残基の間に組換え鎖間ジスルフィド結合を含む。特定の実施形態において、組換えTCR発現細胞を更に改変して、組換え免疫修飾因子を誘導性に放出させてもよい。例示的な組換え免疫修飾因子は、例えばTNFアルファ及び/又はPD-L1を標的にし得る抗体、その断片(例えば、scFvなど)、若しくは抗体誘導体である。
【0039】
一部の実施形態において、細胞を操作して、細胞の抗腫瘍活性、拡大、及び/又は成長に有益になり得る1つ以上の遺伝子産物を組換えにより発現させる。そのような遺伝子産物には、1つ以上のサイトカイン(少なくともIL-15、IL-7、IL-12、IL-18、IL-21、IL-27、IL-33、抗体断片若しくは誘導体、例えばscFv若しくは二重特異的(例えば、がん抗原及び/又はチェックポイント阻害剤を標的とする)、又はその組合せを含む)、及び/又は生存促進性サイトカイン受容体、例えばIL-7Ra若しくはIL-15Raが含まれる。また、1つ以上の特定の遺伝子産物を発現するように選択されるNKT細胞は、遺伝子産物を組換えにより発現するように修飾されてもよく又は修飾されなくてもよい。一部の実施形態において、細胞を操作して、細胞内の阻害性受容体(例えば、PD1、LAG3、TIM3、TIGIT、TGFbR1、IL-10R、等)を標的とする1つ以上の遺伝子産物の発現を下方調節する。
【0040】
細胞を操作して、B2M及び/又はIiの発現を減少させるのに加えて、細胞を操作して実体を発現させる場合、その実体は、ベクターによって細胞に導入されてもよく又は導入されなくてもよい。一部の場合において、B2M及び/又はIiの発現を減少させるための作用物質並びに作用物質以外の実体(例えば改変した受容体)が、同じベクター上で細胞に導入される。但し、他の場合において、それらは異なるベクター上にある。一部の場合において、細胞を操作して追加の実体を発現させる前に、細胞を操作してB2M及び/又はIiの発現を減少させてもよい。但し、一部の場合において、細胞を操作して追加の実体を発現させた後に細胞を操作してB2M及び/又はIiの発現を減少させる。それらが同じベクター上にある場合、B2M及び/又はIi並びに追加の実体の発現を減少させる作用物質は、同じ発現構築物上にあり、同じ若しくは異なる遺伝子調節配列によって調節されてもよく、又は異なる遺伝子調節配列を有する異なる発現構築物であってもよい。単一のベクターが使用される場合、B2Mの発現を減少させるための作用物質は、追加の実体に照らして5'から3'方向で5'若しくは3'又はその逆にあってもよい。
【0041】
細胞が、NKT細胞でないリンパ球サブセットである場合、shRNAによるB2M下方調節のレベルが、がん免疫療法に使用され得るアロNK細胞死滅を起動することなく同種性を減少させるのに十分かどうか評価することができ、T細胞(TCRの欠失も有し得る)、γ/δT細胞、MAIT細胞、NK細胞及びILCが例である。非NKT細胞が利用される場合、非NKT細胞は、NKT細胞に必要でない操作を経る必要があり得る。
【0042】
一部の実施形態において、細胞においてMHCクラスII関連不変鎖(Ii)を作用物質(例えばshRNA又は他の標準的な方法)で標的化して下方調節し、それにより細胞においてHLAクラスII発現の下方調節をもたらし、CD4 T細胞に媒介される同種反応性を更に減少させる。そのような場合、細胞を操作して、別の実体、例えば改変された受容体及び/又は1つ以上のサイトカイン、等を組換えにより発現させてもよい。特定の実施形態において、細胞は、Ii shRNAと共にCARをコードするウイルス(例えば、レトロウイルス)構築物を含む。但し、特定の場合において、CAR及びIi shRNAは、別々の構築物又はベクター上にある。一部の場合において、細胞は、Ii発現が下方調節されているが、B2Mの発現を下方調節するために操作されない。
【0043】
一部の実施形態において、減少したレベルのB2M及び/若しくはIiを安定して発現する、又はB2M及び/若しくはIiの発現が安定して不活性化されているNKT細胞株が、提供される。
【0044】
特定の実施形態において、細胞は、B2MとIiの両方の下方調節を有する構築物(例えば、レトロウイルス構築物)を発現する。そのような細胞において、CAR及び/又は他の遺伝子産物の発現が、同様にあってもよい。特定の実施形態において、細胞は、CARを発現し、B2MとIiの両方の下方調節を有する(例えば、B2MとIi両方のshRNAを有する)。他の特定の実施形態において、細胞は、組換えTCRを発現し、B2MとIiの両方の下方調節を有する(例えば、B2MとIi両方のshRNAを有する)。
【0045】
一部の実施形態において、細胞は、複雑なCAR、例えばCAR構築物及び加えて1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-15、IL-7、IL-12、IL-18、IL-21、IL-27、IL-33、その組合せ等)及び/又はサイトカイン受容体(IL-15、IL-7、IL-12、IL-18、IL-21、IL-27、IL-33、その組合せに対する受容体)を発現する。好ましいその実施形態において、細胞は、B2M、Ii、又は両方のshRNA(又はB2M、Ii又は両方を標的とするshRNA以外の1つ以上の他の作用物質)を更に発現する。
【0046】
一部の実施形態において、細胞は、組換えにより改変された1つ以上の受容体、B2M及び/又はIi shRNA、並びに別の遺伝子を標的とする第2のshRNAを発現する。特定の実施形態において、細胞は、CAR、B2M及び/又はIi shRNAを発現し、別のshRNAは、細胞内の阻害性受容体(例えば、PD1、LAG3、TIM3、TIGIT、TGFbR1、IL-10R等)をコードしている遺伝子を標的とする。
【0047】
特定の実施形態において、細胞は、誘導可能な自殺遺伝子(例えばカスパーゼ9又はチミジンキナーゼなど)を含む。
【0048】
別の態様において、ベクターは、免疫療法のための腫瘍特異的であり、かつアロNK細胞抵抗性のNKT細胞のワンヒット生成のために提供される。本開示の細胞を操作するために使用されるベクターは、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターを含めた任意の種類のものでもよい。非ウイルスベクターには、プラスミドが含まれ、ウイルスベクターには、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルス、等が含まれる。そのようなベクターは、B2M及び/又はIiの発現を減少させる作用物質と一緒に、上で定義した改変された1つ以上の受容体をコードする。そのような作用物質は、shRNA、CRISPRシステム、例えばCRISPRガイドRNA、モルホリノ、siRNA、アンチセンスRNA、アンチゴマーRNA、S-DNA、ZFN及びTALENからなる群から選択され得る。
【0049】
特定の実施形態は、NKTにおいてCAR及びshRNAを同時にコードするウイルス構築物(例えばレトロウイルス又はレンチウイルス)を含む。
【0050】
B2M及び/又はIiを下方調節するように修飾されている同種細胞は、商業的に得られてもよい。同種細胞は、ドナーから入手され、直ちに加工されてB2M及び/若しくはIiを下方調節されてもよく、又は同種細胞は、新鮮な若しくは凍結状態を含めて、リポジトリから入手されてもよい。
【0051】
III.細胞を産生する方法
特定の実施形態において、B2M、Ii、又は両方の下方調節を有する細胞を含めて、本開示に包含される細胞を生成する方法がある。そのような細胞は、1つ以上の型の改変された受容体も発現してもよい。
【0052】
一部の場合において、細胞を産生する方法は、操作しようとする細胞を入手する工程を含むが、他の場合において、入手工程は本方法に含まれない。ドナー細胞は、例えばがんでない対象を含めた、健康な対象から入手されてもよい。細胞は、組換え操作してB2M及び/若しくはIiを下方調節する前に拡大されてもよく又はされなくてもよい。一部の方法において、細胞は、マーカーを発現する又は発現を欠くように選択されてもよく、例えばここで、そのような選択は、細胞の拡大の増強を可能にする。例えば、細胞を産生する方法の部分は、CD62Lの発現、CD4の発現、及び/又はPD1発現の減少若しくは不在について選択する工程を含み得る。
【0053】
細胞は、B2M、Ii、又は両方の発現の下方調節をもたらす1つ以上の任意の作用物質を使用して産生されてもよい。そのような作用物質は、任意の種類のものでもよいが、特定の実施形態において、作用物質は、shRNA、CRISPRシステム、例えばCRISPRガイドRNA、モルホリノ、siRNA、アンチセンスRNA、アンチゴマーRNA、S-DNA、TALEN、ZFN等である。B2Mを標的とする核酸を設計するためのB2Mポリヌクレオチド配列の一例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM_004048にある。Ii(CD74)を標的とする核酸を設計するためのIiポリヌクレオチドの一例は、GenBank(登録商標)アクセッション番号NC_000005にある。本開示の細胞を生成するために使用される任意のshRNAは、5'末端若しくは3'末端又はその間の領域、例えばエクソン1若しくはエクソン2、などを含めた標的核酸の任意の領域を標的としてもよい。
【0054】
特定の実施形態において、本開示の細胞は、B2M及び/又はIiを下方調節する作用物質以外の実体を発現するように操作され、その実体は、改変された受容体(特に上で定義した)、サイトカイン又は別の遺伝子産物でもよい。特定の実施形態において、実体は、キメラ抗原受容体(CAR)である。一部の場合において、細胞にB2M及び/又はIiを下方調節させる工程は、細胞が他の実体を発現できるようにする工程と同時であるが、別の場合において、これらは、異なる工程である。特定の実施形態において、細胞が、B2M及び/又はIiを下方調節し、CAR(例えば)を発現するように同時に改変される場合、B2M及び/又はIiを下方調節させる作用物質並びにCARが、同じベクター上で発現されるためである。しかしながら、他の場合において、B2M及び/又はIiを下方調節する作用物質並びにCARは、異なるベクターから発現される。
【0055】
本開示の方法は、ドナー細胞(又は拡大したその後代)に導入しようとするベクターを生成する工程を含んでもよく又は含まなくてもよい。組換えベクターの産生は当技術分野で周知であり、ウイルス又は非ウイルスベクターを含めた様々なベクターを使用してもよい。単一のベクターが、B2M及び/又はIiを下方調節する作用物質と改変された受容体、例えばCAR(例えば)の両方を包含する場合、当業者であれば、ベクターの設計に細胞のサイズ制約(例えば)が考慮されると認識する。
【0056】
操作しようとする細胞がT細胞である場合、細胞の内在性T細胞受容体は、例えば当技術分野において日常的な方法を使用して、下方調節又はノックアウトされてもよい。
【0057】
IV.細胞を使用する方法
本開示の実施形態は、対象における医学的症状、例えばがん又は前悪性症状の処置における使用のための本開示に包含される細胞(単数又は複数)を含む。細胞は、神経芽細胞腫、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮体がん、黒色腫、膀胱がん、肺がん、膵臓がん、大腸がん、前立腺がん、リンパ系の造血器腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、間葉系起源の腫瘍、線維肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、膠芽細胞腫、皮膚の良性腫瘍、腎臓がん、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮細胞癌腫、肝細胞癌腫、濾胞樹状細胞癌腫、腸のがん、筋浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮癌腫、脾臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、胃がん、肝臓がん、骨がん、脳がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、唾液腺がん、子宮のがん、精巣のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、脊髄形成異常、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌系がん、骨髄異形成症候群、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド、食道胃、卵管がん、腹膜がん、漿液性乳頭状ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質腫瘍(GIST)、又はリーフラウメニ症候群及びフォンヒッペルリンドウ症候群(VHL)から選択される遺伝性がん症候群を含めた任意の型のがんに使用されてもよい。特定の実施形態において、前悪性症状は、骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0058】
本開示の特定の実施形態において、本開示に包含される細胞で疾患を処置する方法がある。疾患は、任意の種類のものでもよいが、特定の実施形態において、疾患はがんである。以下を含めた任意の型のがん、神経芽細胞腫、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん、子宮体がん、黒色腫、膀胱がん、肺がん、膵臓がん、大腸がん、前立腺がん、リンパ系の造血腫瘍、白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病、甲状腺がん、甲状腺濾胞がん、骨髄異形成症候群(MDS)、間葉系起源の腫瘍、線維肉腫、横紋筋肉腫、黒色腫、ブドウ膜黒色腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、膠芽細胞腫、皮膚の良性腫瘍、腎臓がん、未分化大細胞リンパ腫、食道扁平上皮細胞癌腫、肝細胞癌腫、濾胞樹状細胞癌腫、腸のがん、筋浸潤性がん、精嚢腫瘍、表皮癌腫、脾臓がん、膀胱がん、頭頸部がん、胃がん、肝臓がん、骨がん、脳がん、網膜のがん、胆道がん、小腸がん、唾液腺がん、子宮のがん、精巣のがん、結合組織のがん、前立腺肥大、脊髄形成異常、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、鼻咽頭、神経内分泌系がん、骨髄異形成症候群、中皮腫、血管肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド、食道胃、卵管がん、腹膜がん、漿液性乳頭状ミュラー管がん、悪性腹水、消化管間質腫瘍(GIST)、又はリーフラウメニ症候群及びフォンヒッペルリンドウ症候群(VHL)から選択される遺伝性がん症候群が、処置され得る。特定の実施形態において、疾患は、骨髄異形成症候群(MDS)である。
【0059】
B2M、Ii、又は両方の発現を減少させた本開示の細胞の有効な量が、細胞による療法を必要とする対象に提供される。疾患の少なくとも1つの症候が改善される限り、量は任意の量のものでもよい。特定の実施形態において、細胞は、少なくとも約1×106~約1×109個細胞、更により望ましくは、約1×107~約1×109個細胞の範囲で提供されるが、任意の適切な量は、より多く、例えば、1×109個より多い細胞、又はより少ない、例えば、1×107個未満の細胞のいずれでも使用され得る。特定の実施形態において、細胞の1つ以上の用量が対象に提供され、その後の用量は、分、時間、日、週、月又は年のオーダーで分割されてもよい。一部の場合において、細胞の別々の送達は、異なる量の細胞を有する。例えば、細胞の初期用量は、1つ以上のその後の用量より多くても又は少なくてもよい。
【0060】
処置される個体は、成人、青年、小児、乳児又は動物でもよい。個体は、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、等を含めた哺乳動物でもよい。個体は、任意の性別、人種、遺伝的背景、等のものでもよい。個体は、がんの個人及び/若しくは家族歴があってもよく又はなくてもよい。B2M及び/又はIiの発現を下方調節するために操作される細胞は、家族の構成員から入手されてもよく又はされなくてもよい。個体ががんを有する場合、がんは、任意の段階又はグレードのものでもよく、がんは、原発性、転移性、再発性、感受性、難治性、等であってもよい。
【0061】
一部の場合において、本開示の免疫療法に加えて、1つ以上の治療、例えば手術、放射線、ホルモン療法、別の同一でない免疫療法、化学療法又はその組合せが対象に提供されてもよい。
【0062】
一部の場合において、細胞は、例えば、がんの個人及び/又は家族歴を持つ対象を含めた対象におけるがんの防止に利用される。
【0063】
例えば、細胞は、注射を含めた任意の適切な方式で対象に送達され得る。細胞が、注入又は注射によって対象に投与されることが、特に想定される。適切な組成物の投与は、異なる方法、例えば、静脈内、皮下、腹膜内、筋肉内、局所、非経口、経皮、管内、動脈内、くも膜下腔内又は真皮内投与によって果たされてもよい。細胞は、がんへの直接注射によって提供されてもよい。細胞の投与は、全身的でも局所的でもよい。
【0064】
細胞は、がんに関連する低酸素環境に標的化されてもよく又はされなくてもよい。そのような場合において、細胞において発現構築物からの発現を果たす任意の調節エレメントは、低酸素環境で有効であってもよい。
【0065】
一部の実施形態において、個体の医学的症状、例えばがん又は前悪性症状の処置における使用のための本明細書に記載の同種NKTを含む組成物が、提供される。そのような組成物は、HLAが適合するか否かに関わらず任意の個体に投与することができるオフザシェルフ産物である。そのような組成物は、即時の利用可能性、安全性及び治療能力に関して患者のための有意な利点を有する。本明細書に記載の細胞に加えて、前記組成物は、限定されるものではないが、懸濁化剤、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤及び溶質を含み得る。
【0066】
V.キット
本明細書に記載の細胞組成物並びに/又は細胞組成物を産生及び/若しくは使用する試薬のいずれも、キットに含まれ得る。非限定的な例において、細胞又は細胞を操作する試薬が、キットに含まれ得る。特定の実施形態において、B2M及び/若しくはIiの発現を減少させた細胞又はB2M及び/若しくはIiの発現を減少させたNKT細胞を含む細胞の集団が、キットに含まれてもよい。そのようなキットは、細胞を操作するための試薬を1つ以上有してもよく又は有さなくてもよい。そのような試薬には、例えば小分子、タンパク質、核酸、抗体、緩衝液、プライマー、ヌクレオチド、塩、及び/又はその組合せが含まれる。B2M及び/若しくはIiの発現を直接若しくは間接的に減少させる能力がある核酸(DNA又はRNA)又は他の作用物質、例えばshRNA若しくはCRISPRガイドRNAが、キットに含まれてもよい。1つ以上のサイトカインをコードする核酸又はサイトカイン自体が、キットに含まれてもよい。タンパク質、例えばサイトカイン又はアゴニストモノクローナル抗体を含めた抗体が、キットに含まれてもよい。抗体を含む基質又は裸の基質自体が、キットに含まれてもよい。抗原提示細胞活性を含む細胞又はそれを生成する試薬が、キットに含まれてもよい。改変された受容体、例えばキメラ抗原受容体若しくはキメラサイトカイン受容体、又は改変されたT細胞受容体をコードするヌクレオチドが、それを生成するための1つ以上の試薬を含めて、キットに含まれてもよい。
【0067】
特定の態様において、キットは、本開示の細胞療法、また特定の医学的症状に対する別の療法、例えばがん療法を含む。一部の場合において、例えば、キットは、細胞療法実施形態に加えて第2のがん療法、例えば化学療法、ホルモン療法、及び/又は免疫療法も含む。キットは、対象の特定のがんに合わせて調整されてもよく、その対象のためにそれぞれ第2のがん療法を含んでもよい。
【0068】
キットは、適切に分注された本開示の組成物を含んでもよい。キットの成分は、水性媒体又は凍結乾燥形態のいずれかにパッケージングされてもよい。キットの容器手段は、少なくとも1つのガラス瓶、試験管、フラスコ、瓶、注射器又は他の容器手段を一般に含むことになり、成分はその中へ入れられ、好ましくは適切に分注され得る。1つよりも多い成分がキットに存在する場合、キットは、追加の成分を別々に入れることができる第2、第3又は他の追加の容器を一般に更に含有し得る。しかし、成分の様々な組合せが、ガラス瓶に含まれてもよい。本開示のキットは、商用販売のために組成物を含有する手段及び厳重に閉じられた他の任意の試薬容器も一般に含むことになる。そのような容器には、注射又は所望のガラス瓶が保持される吹き込み成形プラスチック容器が含まれ得る。
【実施例】
【0069】
以下の例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の例に開示される技術が、本発明者によって発見された技術が本発明の実施においてよく機能することを表し、したがってその実施に好ましい様式を構成すると考えることができることが、当業者によって認識され得る。しかしながら、当業者であれば、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態に多くの変更が加えられ、同様の又は類似の結果を尚も得ることができることを認識し得る。
【0070】
[実施例1]
オフザシェルフがん免疫療法のための、健康なドナー由来の腫瘍特異的でありかつ広く寛容されるNKT細胞の生成
高度に機能的なNKTを有する候補を選択する健康なドナーのスクリーニング。
ヒトPBMCにおけるNKT細胞頻度は、0.01%未満~1%超で変動するので、IRB認可のプロトコールにしたがって健康と期待されるドナーから単離したPBMC中のNKT細胞頻度を最初に分析した。次に、研究室で開発したプロトコールを使用して12日間の培養でNKTを拡大し、その拡大率及び機能的能力に関連する鍵となる表面マーカー:CD62L、CD4及びPD1の発現を定量化した。12名の健康なドナーを特徴付けた。少なくとも3名のドナー(#6、7、8)のNKT細胞拡大能力は非常に高く、CD62Lをよく保持し、PD1発現が低い(表1)。
【0071】
【0072】
アロ反応性NKT細胞の試験
NKTは、単形性CD1dに拘束性であるので、NKTは同種細胞に反応しないと予想される。この仮定を検証するために、刺激細胞として照射を受けたPBMC及び応答細胞として無関係のドナー由来のNKTを使用して一方向アロMLR培養を行った。自家PBMCは、陰性対照としての機能を果たし、NKT細胞リガンドaGalCerでパルスした自家PBMCを、陽性対照として使用した。応答細胞の増殖を、CFSE希釈物を評価することによって分析した。NKT細胞を、軟膜から新たに単離し、2回洗浄し、PBS中に1×10
7個細胞/mLで再懸濁し、2.5μMカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、CellTrace(商標)CFSE Cell Proliferationキット、ThermoFisher Scientific)と5分間インキュベートした。標識細胞を遠沈して、10
6個細胞/mLで培養培地中に再懸濁し、照射を受けたPBMCの存在下で培養した。6日目に細胞増殖を、フローサイトメトリーを使用するCFSE希釈物の測定によって調べた。
図1は、NKTが、その特異的リガンドであるaGalCerに対する応答においてのみ増殖でき、自家又は3名の適合しないドナー由来の同種PBMCに対して増殖できなかったことを示す。これらの結果は、NKT細胞がアロ反応性でないことを示す。
【0073】
NKTにおけるB2M発現の標的化
NKTにおいて完全なB2M遺伝子ノックアウトを達成するために、CRISPR/Cas9技術を使用した(25)。B2Mに対する単一ガイド(sg)RNA配列を、CRISPRscanアルゴリズム(http://www.crisprscan.org)を使用して同定した。sgRNA(10μg)を、Cas9タンパク質10μg(PNA Bio)と室温で10~15分間インキュベートし、3×10
6個NKT細胞に電気穿孔した。NKT細胞用として最適化した電気穿孔法条件は、Neonトランスフェクションシステム(ThermoFisher Scientific)を使用して1600V、10ms及びパルス3回であった。本実験のためのsgRNA配列は、GGCCACGGAGCGAGACATCT(配列番号1)であった。
図2Aは、B2M発現が、88%のNKT細胞において失われたことを示す。更にB2M陰性細胞を富化するために、APCコンジュゲート抗B2M mAb及び抗APCマイクロビーズを使用するMACS選別によってB2M陽性細胞を枯渇させることによる陰性選択を使用した。得られた陰性画分は、>95% B2M-、及びHLAクラスI(ABC)陰性NKT細胞を含んだ(
図2B)。
【0074】
次に、5つのB2M標的化ショートヘアピン(sh)RNA構築物を試験して、異なるレベルのB2M遺伝子下方調節(ノックダウン)を達成した。B2M特異的shRNA発現を、Sigma Mission(登録商標) shRNAサービス(Sigma)のレンチウイルス発現系を使用して達成した。
【0075】
【0076】
ウイルス上清を、パッケージングベクターと共にHEK-293T細胞を同時トランスフェクトすることによって作製した。これらshRNAウイルス粒子を、8μg/mL臭化ヘキサジメトリン(ポリブレン、H9268、Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)でNKT細胞に形質導入した。B2Mノックダウンを、FACSによって確認した。
図2Cに示す通り試験した最も有効な構築物(配列番号2)で60%~90%の様々な程度にB2Mをノックダウンできた。このshRNAは、ヒトB2Mコード配列のエクソン2を標的とする。
【0077】
NKTにおけるIi発現の標的化
T細胞が、活性化するとHLAクラスII発現を上方調節することは公知であるが、ヒトNKTにおけるHLAクラスII発現の状況は、我々の知る限りでは調査されていなかった。この問いに答えるために、静止NKT細胞に対して、及び、次いでαガラクトシルセラミドによる細胞の活性化2日後に、HLAクラスII発現のフローサイトメトリー分析を行った。
図3Aは、T細胞のように、NKTが刺激の非存在下でHLAクラスIIを発現せず、抗原刺激後にこれら分子の表面発現を容易に上方調節することを実証する。次に、活性化したNKTにおけるHLAクラスII発現を、Ii特異的shRNAを使用して効果的に下方調節できることを示した(
図3B)。
【0078】
5つのIi標的化ショートヘアピン(sh)RNA構築物を試験して、異なるレベルのIi遺伝子下方調節(ノックダウン)を達成した。Ii特異的shRNA発現を、Sigma Mission(登録商標) shRNAサービス(Sigma)のレンチウイルス発現系を使用して達成した。
【0079】
例として、以下の5つのIi shRNA配列を試験した:
【0080】
ウイルス上清を、パッケージングベクターと共にHEK-293T細胞を同時トランスフェクトすることによって作製した。これらshRNAウイルス粒子を、8μg/mL臭化ヘキサジメトリン(ポリブレン、H9268、Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)でNKT細胞に形質導入した。Iiノックダウンを、FACSによって確認した。試験した最も有効な構築物(配列番号7)で51.2%~75.6%の様々な程度にIiをノックダウンできた。このshRNAは、ヒトIiコード配列におけるCDSを標的とする。
【0081】
B2M
null、B2M
low及びIi
low NKTの同種性の試験。
NKTにおいてアロ反応性応答を刺激する能力に対するCRISPR媒介性B2Mノックアウト及びshRNA媒介性B2Mノックダウンの効果を決定するために、刺激細胞として照射を受けたNKT並びに応答細胞として無関係なドナー由来の磁気的に選別したCD8及びCD4 T細胞を使用して一方向アロMLRアッセイを行った。同種NKT非存在下のT細胞を、陰性対照として使用した。野生型(WT) B2Mを有する同種NKTを、陽性対照として使用した。実験条件において、WT NKTは、刺激細胞としてCRISPR誘導性B2M
null又はshRNA(配列番号2)誘導性B2M
low NKTと置き換えられた。Ii shRNA(配列番号7)を使用してIi
low NKTを生成した。応答細胞の増殖を、培養5日目にフローサイトメトリーによってCFSE希釈物を評価することによって分析した。CD8及びCD4マーカーに対して細胞を染色して、それぞれのT細胞サブセットの増殖を定量化した。
図4A及び
図4Bは、WT B2Mと比較して、B2M
null NKTが、CD8 T細胞増殖を74.1%~38.5%(P<0.01)減少させたことを実証する。予想された通り、B2M及びHLAクラスI発現は、HLAクラスII分子に拘束性であるCD4 T細胞の増殖に有意に影響を及ぼさなかった。したがって、Ii
low NKTは、CD4 T細胞増殖を68.1%~31.6%(P<0.01)減少させたが、CD8 T細胞の増殖には影響を及ぼさなかった。
【0082】
驚くべきことに、NKTにおけるB2M/HLA-ABC発現のshRNA媒介性の減少は、B2M/HLA-ABC発現のCRISPR媒介性の完全な喪失によって達成された減少のように、アロ反応性CD8 T細胞応答の有効な抑制を同程度に達成した。これらの結果は、同種T細胞によって寛容され得る、NKTにおけるB2M/HLA-ABC発現の範囲があることを初めて実証する。この知見は、養子細胞療法適用のために、無関係なドナー由来のNKT及びおそらく他のエフェクター細胞において、B2Mを段階的に下方調節するための、CRISPR又は他のゲノム編集方法ではなくより安全なshRNA技術の使用を正当化するため、直接の実用的な意義がある。
【0083】
アロNK細胞に対するB2M
null及びB2M
lowの感受性の試験。
HLAクラスI分子は、NK細胞に対する主要な阻害性リガンドとしての機能を果たし、B2M発現の喪失は、ドナー細胞を宿主NK細胞による死滅に対して感受性にすると予想される(24)。しかし、宿主NK細胞の細胞毒性を起動させることなく宿主CD8 T細胞の活性化を防止するのに十分であり得る特定のレベルのB2M/HLAクラスIが、ドナー細胞、特にNKT細胞において達成され得るかどうかは知られていない。したがって、陰性対照として野生型(WT) NKT細胞及び陽性対照として阻害性HLAクラスIリガンドを天然に欠いているNK感受性K562細胞を使用して、同種NK細胞による死滅に対するB2M
null及びB2M
low NKTの感受性を試験した。標的細胞であるNKT又はK562細胞を、生存性色素カルセインAMで標識し、その後無関係なドナーから陰性磁気選別によって得られたエフェクター細胞である同種NK細胞と4時間共培養した。自家NK細胞を、陰性対照として使用した。NK細胞の細胞毒性活性を、フローサイトメトリーによって測定される標的細胞におけるカルセインAM蛍光の喪失によって定量化した。
図5は、K562細胞とは異なり、NKTが、B2M発現の完全な喪失後でもNK細胞細胞毒性に対して概ね抵抗性のままであったことを実証する。実際、B2M
null NKTの21.3%のみが、エフェクター対標的比10:1でアロNK細胞によって死滅したが、K562細胞のほぼ100%が、同じ条件下で死滅した。B2M
low NKTの18.8%のみが、エフェクター対標的比10:1でアロNK細胞によって死滅したので、B2M
low NKTは、B2M
null細胞よりさらに抵抗性であった。したがって、予想とは反対に、結果は、NKTの約80%が、B2M発現の完全な遺伝子喪失後でもアロNK細胞細胞毒性に対して抵抗性のままであることを初めて実証する。更に、NKTにおけるB2M発現のshRNA媒介性下方調節は、CRISPR媒介性B2Mノックアウトと比較して、NKTをアロNK細胞細胞毒性に対してより一層抵抗性にする。
【0084】
CAR構築物とB2M shRNA及び/又はIi shRNAとの両方をコードするレトロウイルスベクターの設計
CAR及びshRNAが、同じレトロウイルスベクター内で効果的に発現され得るかどうか試験するために、
図6Aに示すように、GD2特異的CAR並びにB2M shRNA(配列番号2)及び/又はIi shRNA(配列番号7)をコードするレトロウイルスベクターを構築した。レトロウイルスベクターの中へshRNAをクローニングするために、転写開始部位としての機能を果たすようにセンスshRNA配列の前にGを1つ、転写停止部位としての機能を果たすようにアンチセンスshRNA配列の後にTを5つ付加した。得られたshRNA配列は、以下の通りである:
【0085】
B2M shRNAを、U6プロモーターの制御下に配置し、U6-shRNAを、順向き又は逆向きの方向でsphI部位にライゲートし、CAR発現を、内在性レトロウイルスのLTR又はEF1プロモーターによって駆動した(
図6A)。CAR.GD2/B2M shRNAによるNKT細胞形質導入により、有効なCAR発現が得られた。4つ全ての構築物が、NKTにおいてCAR発現及びB2M下方調節を同時に達成し、構築物#1が最も効果的であった(
図6B)。
【0086】
本開示の特定の実施形態の意義
1)NKT細胞は、高度に機能的な細胞の表現型を保ちながら健康なドナーから単離され、ex vivoで多数に拡大することができる。これらドナー由来のNKTは、養子がん免疫療法のための治療産物の供給源として使用することができる。
2) NKT細胞は、無関係なドナー由来のPBMCに応答して増殖せず、このことは、NKT TCRがHLA分子を認識できないことと整合する。
3) CRISPR及びshRNAによるB2M標的化は、CD8 T細胞のNKT細胞刺激を減少させるのに等しく有効である。
4) shRNAによるIi標的化は、CD4 T細胞のNKT細胞刺激を減少させるのに有効である。
5)大部分のNKTは、CRISPR媒介性B2Mノックアウト後、なお更にshRNA媒介性B2Mノックダウン後に、アロNK細胞細胞毒性に対して抵抗性のままである。
6) NKTにおいてCAR並びにB2M shRNA及び/又はIi shRNAの有効な発現が単一のレトロウイルスベクター内で達成され、このことは、CARリダイレクトされ、広く寛容される同種NKT細胞産物をがん免疫療法のために生成する手段を提供した。
【0087】
[実施例2]
オフザシェルフがん免疫療法のための、健康なドナー由来の腫瘍特異的であり、かつ広く寛容される、NKT細胞以外の細胞の生成
特定の実施形態において、NKT細胞以外の細胞を操作して、内在性B2M及び/又はIiの発現を減少させる。そのような細胞は、NKT細胞以外の任意の免疫細胞、例えばT細胞、γ/δ T細胞、粘膜関連不変T(MAIT)細胞、NK細胞、自然リンパ球系細胞(ILC)又はその混合物であり得る。一部の実施形態において、NKT細胞の混合物及びNKT細胞以外の1つ以上の免疫細胞が、本開示に包含される組成物及び方法に利用される。
【0088】
当技術分野において標準的な手段、例えば、核酸、例えばshRNA若しくはCRISPRガイドRNAを含めたB2M遺伝子の発現を標的にするための1つ以上の作用物質を使用することによって非NKT細胞を操作して、内在性B2M及び/又はIiの発現を減少させてもよい。他の手段には、少なくともモルホリノ、siRNA、S-DNA、TALEN、ZFN、等が含まれる。
【0089】
特定の実施形態において、本開示の組成物及び方法に使用される非NKT細胞を、細胞の操作の前並びに/又は後に拡大して、内在性B2M及び/若しくはIiの発現を減少させる。例えば、拡大のための当技術分野において通常の方法は公知であり、特定の培地及び1つ以上の特定の作用物質、例えば1つ以上のサイトカインが含まれ得る。
【0090】
特定の実施形態において、本開示の組成物又は方法における使用のための1つ以上の型の非NKT細胞は、効果的に使用され得るNKT細胞に必要とされる操作以外の操作を必要とする場合がある。例えば、T細胞を修飾して、拒絶に対するレシピエント組織への損傷を防止してもよい。特定の場合において、T細胞を操作して、T細胞受容体の成分を欠失させる。
【0091】
[実施例3]
MHCクラスII関連不変鎖(Ii)を標的とすることによる、オフザシェルフがん免疫療法のための、健康なドナーからの腫瘍特異的でありかつ寛容なNKT及び他の細胞の生成
一部の実施形態において、B2Mの発現の減少に向けられた細胞及び細胞を使用する方法の代替物及び/又は細胞は、細胞のMHCクラスII関連不変鎖(Ii)の発現が減少している。そのような細胞を、内在性B2Mの発現を減少させた細胞の代わりに使用してもよい。一部の場合において、当該細胞はB2MとIi両方の発現が減少しており、一部の場合において、別々に内在性B2Mの発現が減少しており、又は内在性Iiの発現が減少している細胞の混合物を使用する。当該細胞の内在性B2M及び内在性Iiの発現が減少している場合、同じ型の作用物質を使用して各々の発現の減少を標的としてもよい。例えば、一部の場合において、B2MとIiの両方をshRNAによって標的化してその発現を減少させ、又は他の場合において、B2MとIiの両方をCRISPRガイドRNAによって標的化してその発現を減少させる。例えば一部の場合において、異なる作用物質、例えばB2Mを標的とするためのshRNA、及びIiを標的とするためのCRISPRガイドRNAが、B2M及びIiを標的とする。
【0092】
例えば特定の実施形態において、Iiの発現の減少を含む細胞は、細胞にとって非天然である別の実体、例えばサイトカイン又はCARの発現も含んでもよい。そのような追加の実体は、Iiの発現を標的とする作用物質と同じ構築物から発現されてもよく又はされなくてもよい。同じ細胞においてIi発現が標的化されなおかつ別の実体が細胞における発現に提供される場合、それらは、任意の適切な配置、例えば一方が他方に対して5'又は3'である配置で同じ構築物中に構成されてもよく、それらは同じ調節エレメントによって調節されてもよく又はされなくてもよい。
【0093】
細胞は、NKTでもよく又はNKT細胞でない、例えばT細胞、γ/δ T細胞、MAIT細胞、NK細胞、ILC若しくはそれらの混合物でもよく、T細胞は、TCRを欠くように改変されてもよい。
【0094】
[実施例4]
MHCクラスII関連不変鎖(Ii)又はB2Mを標的とすることによる、オフザシェルフがん免疫療法のための、キメラ抗原受容体を発現する腫瘍特異的でありかつ寛容なNKTの生成
IL15を含む若しくは含まずにCD28又は41BB共刺激ドメインのいずれかを発現するCD19 CAR構築物を生成した(
図6)。構築物を、2つのドメイン構造:(1)IgG
4ヒンジ、IgG
1 CH3スペーサー、CD28 TM、及びCD28又は4-1BB共刺激ドメインのいずれかをコードし、全てがIL15を有する若しくは有しない第1の群(構築物39及び84)、及び(2)CD28又は4-1BB共刺激ドメインと共にCD8αヒンジ及びTMをコードし、全てがIL15を有する若しくは有しない第2の群(構築物28及び41)、に基づいて生成した(
図6A)。代替の又は追加の共刺激ドメインが、そのような構築物に利用されてもよい。それぞれのフローサイトメトリー分析を、
図6Bに示す。CD19 CAR構築物の例を、
図7に例示する。
【0095】
図8に示すように、Ffluc+ダウディリンパ腫細胞2×10
5個を静脈内注射し、その後示した構築物で形質導入した又は構築物なし(非形質導入、NT)のNKT 5×10
6個を静脈内注射したNSGマウスを、連続的にイメージングを行った。イメージングの直前に、マウスに腹腔内注射によって30mg/mLルシフェリン100μLを与え、それらを生物発光チャネル下で5分間イメージングを行った。例えば、イメージングを3~25週間にわたって行った。
図9は、それらのマウスの生存曲線を示す。
【0096】
図10は、B2M及びIi shRNAを有する及び有しないCD19 CARを発現するレトロウイルスベクターの例を例示する。shRNAを含む構築物の場合、B2M及びIi shRNA配列を、個々のU6プロモーターに連結し、反対の転写方向でCARの下流に個別に又は同時に28.15にライゲートした。
【0097】
図11は、それぞれの構築物によるB2M及びIi発現のshRNAノックダウンを示す。
図11Aにおいて、CD19 CAR発現の代表的なフローサイトメトリー分析が、NKTの形質導入及びAlexa 647コンジュゲート抗FMC63 mAbによる染色後に提供される。表示した構築物で形質導入したNKT細胞における(
図11B)B2M、(
図11C)HLA ABC、(
図11D)Ii、及び(
図11E)HLA DP-DQ-DR発現の代表的なフローサイトメトリー分析が、提供される。細胞を、抗FMC63 mAb、及び1) FITCコンジュゲート抗HLA ABC抗体と共にPEコンジュゲート抗B2M抗体、又は2)FITCコンジュゲート抗HLA DP-DQ-DR抗体と共にPEコンジュゲート抗Ii抗体で染色した。
図11Fは、CAR-shRNA NKT対CAR NKTにおける表示した遺伝子ノックダウンの定量化を示す。
【0098】
図12は、B2M/Ii shRNAが、CAR
UTNKT細胞のCAR指向性in vitro細胞毒性に影響を与えないことを示す。表示したCD19 CAR-shRNA構築物で形質導入したNKT又は非形質導入(NT)を、指定したエフェクター対標的比でルシフェラーゼ陽性ダウディ(CD19陽性)標的細胞と共培養した。NKT細胞毒性を、共培養後の標的細胞生物発光の関数として決定した。
【0099】
CAR
UTNKT細胞に対する同種反応性のレベルを
図13において決定し、その場合、適合しないCD8
+及びCD4
+ T細胞は、同種混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてCAR
UTNKT細胞に対する同種反応性の減弱を示した。
図13Aにおいて、同種MLRアッセイにおけるT細胞の予想される結果の概略が例示される。特定の実施形態において、親NKT上のMHCクラスI及びMHCクラスIIそれぞれの同種CD8
+又はCD4
+ T細胞認識は、T細胞増殖をもたらし得た。加えて、
UTNKTにおけるB2MノックダウンによるMHCクラスI又はIiノックダウンによるMHCクラスIIの下方調節は、同種T細胞増殖に相対的な低下をもたらし得た。CFSE標識CD8
+(
図13B)又はCD4
+ T細胞(
図13C)を、表示した構築物を発現するCAR
UTNKT細胞と共培養し、CFSE希釈物によって測定したT細胞増殖を、刺激5日後に評価した。
【0100】
UTNKT細胞は、親NKTより同種T細胞細胞毒性の影響を受けにくかった。
図14Aは、T細胞細胞毒性アッセイにおけるNKT及び
UTNKT細胞の予測される結果の概略を提供する。同種T細胞は、親NKT上のMHC分子を異種と認識し、これらNKT細胞の死をもたらし得た。
UTNKT上のMHC分子の下方調節により、これらの細胞は、親NKTより一層T細胞細胞毒性を逃れ得た。
図14Bにおいて、同種T細胞を、CAR
UTNKT又は非形質導入(NT)NKTと比1:1で4日間インキュベーションした後にNKT細胞計数をフローサイトメトリーによって決定した。
【0101】
図15に示すように、
UTNKT細胞は、NK細胞細胞毒性の影響を最小限しか受けない。
図15Aは、NK細胞細胞毒性アッセイの予測される結果を例示する。示した通り、NK細胞は、MHCクラスIを発現する親NKTを死滅させないが、MHC Iを欠いている標的細胞を通常死滅させる。特定の実施形態において、
UTNKTは、十分なMHC Iを発現して、NK細胞による死滅を逃れる。
図15Bは、健康なドナー由来のNK細胞を、比5:1でカルセインAM標識
UTNKTと共培養した後の標的細胞溶解を実証する。
【0102】
CAR.CD19
UTNKTを注射したマウスにおけるFfluc標識ダウディリンパ腫細胞の連続生物発光イメージングを、
図16に例示する。NSGマウスに、Ffluc+ダウディリンパ腫細胞2×10
5個を静脈内注射し、その後表示した構築物で形質導入した又は構築物なし(非形質導入、NT)のCAR.CD19
UTNKT 5×10
6個を静脈内注射した。対応する生存曲線を、
図17にマウスについて提供する。
【0103】
参考文献
本明細書において言及された全ての特許及び刊行物は、本発明が関係する技術分野の当業者のレベルを示すものである。本明細書における全ての特許及び刊行物は、各々の刊行物が参照によりその全体が組み込まれることが特定して個別に示されたのと同程度に、参照により組み込まれるものとする。
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【0104】
本発明及びその利点について詳細に記述してきたが、様々な変更、置換及び改変が、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本明細書においてなされ得ることが理解されるべきである。更に、本出願の範囲は、本明細書に記述されている工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法及び工程の特定の実施形態に限定されることを意図しない。当業者が、本発明の開示から容易に認識するように、本明細書に記述される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行する又は実質的に同じ結果を達成する現在存在している若しくは後に開発される工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法若しくは工程は、本発明にしたがって利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのような工程、機械、製造、物質の組成物、手段、方法又は工程をその範囲に包含することが意図される。
【配列表】