(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】射出成形法および自動車用の液体容器
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20220405BHJP
【FI】
B29C45/14
(21)【出願番号】P 2020511968
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2018072927
(87)【国際公開番号】W WO2019042900
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】102017119706.0
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598001467
【氏名又は名称】カウテックス テクストロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ローマン・ボフィエー
(72)【発明者】
【氏名】ハルトムート・ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・コピーク
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ゲバート
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・シュテファン・ローゼンシュトレーター
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン・シギア
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・ヒュッツェン
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-001915(JP,A)
【文献】特開平10-157738(JP,A)
【文献】特開2001-113963(JP,A)
【文献】特開2002-254938(JP,A)
【文献】特開2009-137488(JP,A)
【文献】特表2010-530825(JP,A)
【文献】特開2002-052659(JP,A)
【文献】特開平11-198665(JP,A)
【文献】特開2004-052659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00 - 45/84
B29C 33/00 - 33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の液体容器の半シェルを製造するための射出成形法であって、
-射出成形治具のキャビティ内にバリア膜を設けるステップであって、前記キャビティが前記半シェルを形付けるために設けられている、ステップと、
-前記キャビティ内にバリアスリーブを設けるステップと、
-前記キャビティ内に可塑化済み射出成形材料を射出するステップであって、
-可塑化済み射出成形材料が前記バリア膜上に噴霧される、または、
-前記バリア膜が可塑化済み射出成形材料でバック射出される、または、
-可塑化済み射出成形材料が前記バリア膜上に噴霧され、かつ前記バリア膜が可塑化済み射出成形材料でバック射出される、ステップと、
-前記バリアスリーブが可塑化済み射出成形材料でバック射出されて、または、
可塑化済み射出成形材料でオーバーモールドされて、または、
前記バリアスリーブが可塑化済み射出成形材料でバック射出され、かつ可塑化済み射出成形材料でオーバーモールドされて、前記半シェルの接続要
素を形成するステップと、
を有する、ステップと、
を含み、
前記キャビティ内にバリアスリーブを設けるステップが、
-前記接続要素を形付けるために前記バリアスリーブを凹部に挿入するステップ、または、
-前記バリアスリーブを前記射出成形治具のマンドレル上に押し付けるステップ、または、
-前記接続要素を形付けるために前記バリアスリーブを凹部に挿入するステップおよび前記バリアスリーブを前記射出成形治具のマンドレル上に押し付けるステップ
を含むことを特徴とする射出成形法。
【請求項2】
前記バリア膜および前記バリアスリーブが、
-前記バリアスリーブの貫通穴の長手方向軸線が、前記バリア膜の外面または内面に対して横断方向を向く、または、
-前記バリア膜が前記バリアスリーブに当接載置される、または、
-前記バリアスリーブの貫通穴の長手方向軸線が、前記バリア膜の外面または内面に対して横断方向を向き、かつ前記バリア膜が前記バリアスリーブに当接載置される
ような態様で、設けられることを特徴とする、請求項1に記載の射出成形法。
【請求項3】
前記バリア膜および前記バリアスリーブが、
-前記バリア膜の貫通穴が、少なくともいくつかの部分で、前記バリアスリーブの貫通穴と面一になるように配置される、または、
-前記バリア膜の貫通穴と前記バリアスリーブの貫通穴とが少なくともいくつかの部分で同軸に配置される、または、
-前記バリア膜の貫通穴が、少なくともいくつかの部分で、前記バリアスリーブの貫通穴と面一になるように配置され、かつ前記バリア膜の貫通穴と前記バリアスリーブの貫通穴とが少なくともいくつかの部分で同軸に配置される
ような態様で、設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の射出成形法。
【請求項4】
前記バリア膜および前記バリアスリーブが、前記バリアスリーブが前記バリア膜の貫通穴の中に少なくとも部分的に置かれるような態様で、設けられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形法。
【請求項5】
-前記バリアスリーブと前記バリア膜とが一体的に接続されている、または、
-前記射出成形材料が
-前記バリアスリーブ、あるいは、
-前記バリア膜、あるいは、
-前記バリアスリーブおよび前記バリア膜へ一体的に接続されている、または、
-前記バリアスリーブと前記バリア膜とが一体的に接続され、かつ前記射出成形材料が
-前記バリアスリーブ、あるいは、
-前記バリア膜、あるいは、
-前記バリアスリーブおよび前記バリア膜へ一体的に接続されている
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の射出成形法。
【請求項6】
-液体を保持するための貯蔵容積部を画成する、相互接続された2つの半シェルを有し、
-前記半シェルの少なくとも一方が、拡散バリアとしてバリア膜を有し、ホースまたはパイプを接続するための接続要
素を有し、
-少なくとも1つのバリアスリーブが、前記接続要素の領域において拡散バリアを形成する前記接続要素と関係付けられており、
-前記バリア膜には穴が開けられており、
-前記バリアスリーブが、少なくともいくつかの部分で前記バリア膜の貫通穴内に置かれる、
自動車用の液体容器。
【請求項7】
前記バリアスリーブの貫通穴の長手方向軸線が、前記バリア膜の外面または内面に対して横断方向を向くことを特徴とする、請求項6に記載の液体容器。
【請求項8】
-前記バリア膜の貫通穴が、少なくともいくつかの部分で、前記バリアスリーブの貫通穴と面一になるように配置される、または、
-前記バリア膜の貫通穴と前記バリアスリーブの貫通穴とが少なくともいくつかの部分で同軸に配置される、または、
-前記バリア膜の貫通穴が、少なくともいくつかの部分で、前記バリアスリーブの貫通穴と面一になるように配置され、かつ前記バリア膜の貫通穴と前記バリアスリーブの貫通穴とが少なくともいくつかの部分で同軸に配置される
ことを特徴とする、請求項6または7に記載の液体容器。
【請求項9】
-前記バリア膜、または、
前記バリアスリーブ、または、
前記バリア膜および前記バリアスリーブが単層である、あるいは、
-前記バリア膜、または、
前記バリアスリーブ、または、
前記バリア膜および前記バリアスリーブが多層であることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項10】
前記接続要素の貫通穴が湾曲形状を有し、または曲管を有し、前記接続要素が特に、45°曲げの接続部、60°曲げの接続部、または90°曲げの接続部を形成することを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項11】
前記バリア膜と前記バリアスリーブとが、少なくともいくつかの部分で重なるように配置され、
-前記バリアスリーブ、または、
前記バリア膜、または、
前記バリアスリーブおよび前記バリア膜が、特に、少なくともいくつかの部分でフランジまたは漏斗形状を有することを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項12】
-前記バリア膜と前記バリアスリーブとが互いに一体的に接続されている、または、
-前記バリアスリーブ、もしくは、
前記バリア膜、もしくは、
前記バリアスリーブおよび前記バリア膜が、同様な態様で前記半シェルの射出成形材料に接続されている、または、
-前記バリア膜と前記バリアスリーブとが互いに一体的に接続され、かつ
前記バリアスリーブ、もしくは、
前記バリア膜、もしくは、
前記バリアスリーブおよび前記バリア膜が、同様な態様で前記半シェルの射出成形材料に接続されている、
ことを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載の液体容器。
【請求項13】
-前記バリア膜、または、
前記バリアスリーブ、または、
前記バリア膜および前記バリアスリーブの壁厚が、100μm以上1000μm以下の範囲であることを特徴とする、請求項6から12のいずれか一項に記載の液体容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の液体容器の半シェルを製造するための射出成形法および自動車用の液体容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車では、多くの作動流体を搬送しており、作動流体のそれぞれは自動車用の液体容器に収められている。例えば、プラスチックの燃料タンクは、内燃機関用の燃料を貯蔵するために用いられている。
【0003】
このようなプラスチックの燃料タンクは、理想的には、軽量で、耐衝撃性があり、低排出であるべきである。排出に関しては、環境への炭化水素の最大許容燃料蒸発排出に対する厳格な法規制値を守らなければならない。これには、特に、給油時の通気を含む給油中、運転時通気中、すなわちタンク系の温度が上昇したときの燃料のガス抜きなどのすべての運転状態において、燃料の漏れを避けることが必要になり、また、炭化水素がタンク壁を通過して拡散することを最小限にすることが必要になる。
【0004】
容器の壁を通過する拡散を少なく保つために、燃料容器は、しばしば、拡散バリア層、接着促進層、およびカバー層を含む多層壁構造を有する。バリア層は通常、その両側が2つの接着層と隣接し、接着層はそれぞれ、カバー層によって覆われている。この結果、例えば、EVOH製のバリア層、LDPE製の2つの接着促進層、およびHDPE製の2つのカバー層の5層の壁構造となる。
【0005】
射出成型法を用いてバリア層を有するこのような液体容器を生産する場合、給油口、ブレーザパイプなどの射出成形済接続要素の近くでバリア層が破れる。バリア層を破くことによって、このような接続要素の近くに透過経路が形成され、この透過経路に沿って、炭化水素運転時に拡散する排出が増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この背景に対して、本発明は、上記の不利な点を有さない、または、少なくともそれらをより小さくする、特に、拡散に関連する排出を低減することができる自動車用の液体容器の半シェルを製造するための射出成形法および自動車用の液体容器を提供するという技術的課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題は、請求項1による方法、および請求項7による液体容器によって解決される。本発明のさらなる実施形態は、従属請求項および以下の説明に従う。
【0008】
第1の態様によれば、本発明は、自動車用の液体容器の半シェルを製造するための射出成形法に関し、この方法は、
-射出成形治具のキャビティ内にバリア膜を設けるステップであって、キャビティは半シェルを成形するために設けられている、ステップと、
-キャビティ内にバリアスリーブを設けるステップと、
-キャビティ内に可塑化済み射出成形材料を射出するステップであって、
-バリア膜上には可塑化済み射出成形材料が噴霧される、かつ/または、バリア膜には可塑化済み射出成形材料がバック射出されるステップと、
-バリアスリーブには可塑化済み射出成形材料がバック射出されて、かつ/または、可塑化済み射出成形材料がオーバーモールドされて、半シェルの接続要素、特に接続片を形成するステップと、を有する、
ステップと、
を含む。
【0009】
接続要素の領域にバリアスリーブを組み込むことによって、拡散に関連する排出を低減することができる。
【0010】
接続要素はアダプタとすることができる。アダプタは、ホースまたはパイプを接続するように設計することができる。アダプタは、ホースを固定するための保持要素として、周囲に面取部またはウェブを有することができる。アダプタは、ホースを保持するためにクリスマスツリー状の周囲輪郭を有することができる。アダプタは、ホースを保持するために円状突出部を有することができる。これに替えて、またはこれに加えて、電線の通路として意図された少なくとも1つの接続要素を設けることができる。
【0011】
別の実施形態によれば、本射出成形法は、キャビティ内にバリアスリーブを設けることを特徴とし、本方法は、接続要素を形作るためにバリアスリーブを凹部に挿入するステップ、および/または、バリアスリーブを射出成形治具のマンドレル上に押すステップを含む。
【0012】
したがって、バリアスリーブは、射出成形治具内に形状嵌め態様で保持することができ、射出成形治具の金型半体には、バリアスリーブを保持するためにマンドレルまたは凹部を設けることができる。このようにして、バリアスリーブは、射出成形治具内において確実で正確に配置することができる。バリアスリーブは、吸引または静電気によって射出成形治具内に保持することができる。
【0013】
別の実施形態によれば、本射出成形法は、バリアスリーブの貫通穴の長手方向軸線が、バリア膜の外面または内面に対して横断方向を向く、および/または、バリア膜がバリアスリーブに接触載置するような態様で、バリア膜およびバリアスリーブを設けることを特徴とする。
【0014】
特に、バリアスリーブの貫通穴の長手方向軸線は、バリア膜の外面または内面に対して垂直方向の向きにすることができる。
【0015】
バリア膜がバリアスリーブに対して面一になる、または重なる、特に隙間のないような態様で、バリア膜はバリアスリーブに接触載置することができる。したがって、バリアスリーブは、接続要素の近くでバリア膜の遮蔽効果を補完する。
【0016】
別の実施形態によれば、本射出成形法は、バリア膜の貫通穴が、少なくともいくつかの部分で、バリアスリーブの貫通穴と面一になる、および/または、バリア膜の貫通穴とバリアスリーブの貫通穴が同軸になるように配置されるような態様で、バリア膜およびバリアスリーブが設けられることを特徴とする。
【0017】
例えば、バリア膜は、1以上の箇所で穴が開けられる、すなわち、1以上の貫通穴を有して設けることができる。それぞれの接続要素の拡散に関連する排出を低減するために、接続要素のバリアスリーブをバリア膜の各貫通穴と関係付けることができる。
【0018】
別の実施形態によれば、本射出成形法は、バリアスリーブがバリア膜の貫通穴の中に少なくとも部分的に置かれるような態様で、バリア膜およびバリアスリーブを設けることを特徴とする。バリアスリーブは、バリア膜によって部分的な長さの領域の周囲を完全に囲まれることができる。バリア膜は、バリアスリーブの外側面に接触して、特に、隙間なく、支えることができる。
【0019】
本射出成形法の別の実施形態によれば、バリアスリーブとバリア膜とは一体的に接続される。例えば、可塑化済み射出成形材料の射出から生じる圧力および温度上昇の結果として、本射出成形法のときに一体的な接続が生じることができる。あるいは、可塑化済み射出成形材料をキャビティ内に射出する前に、バリアスリーブをバリア膜に一体的に接続することができる。
【0020】
バリアスリーブとバリア膜とは、重畳領域の少なくともいくつかの部分で互いに一体的に接続することができる。特に、バリアスリーブとバリア膜とは、少なくともいくつかの部分で、互いに溶接することができる、または互いに接着することができる。これによって、バリア膜とバリアスリーブとの間の継目領域において遮蔽効果を改善することができる。
【0021】
これに替えて、またはこれに加えて、射出成形材料は、バリアスリーブおよび/またはバリア膜に一体的に接続することができる。
【0022】
バリアスリーブとバリア膜とは、互いに一体的に接続することができ、射出成形材料に一体的に接続することもできる。可塑化済み射出成形材料を射出成形治具内に導入し、それに関連して圧力がかかって熱が導入されることによって、これらの接続は、実質的に同時に確立することができる。
【0023】
バリアスリーブは、射出成形治具内に導入される前に、バリア膜に接続、特に、接着または溶接することができる。
【0024】
第2の態様によれば、本発明は自動車用の液体容器に関し、本液体容器は、液体を保持するための貯蔵容積部を画成する、相互接続された2つの半シェルを有し、半シェルの少なくとも一方は、拡散バリアとしてバリア膜、およびホースまたはパイプを接続するための接続要素、特に接続片を有し、および、少なくとも1つのバリアスリーブは、接続要素の領域において拡散バリアを形成する接続要素と関係付けられる。
【0025】
接続要素の領域においてバリアスリーブを組み込むことによって拡散に関連する排出を低減することができる。バリアスリーブは、半シェルの容器壁の一体部分とすることができ、特に、半シェルの支持材料に一体的に接続することができる。
【0026】
バリアスリーブおよび/またはバリア膜は、同様な態様で半シェルの材料に接続することができる。例えば、バリアスリーブおよび/またはバリア膜は、バリア層を囲むHDPE製のカバー層を有することができ、カバー層は、HDPE製の半シェルの支持材料に一体的に接続される。
【0027】
壁厚および材料に応じて、バリアスリーブは、可撓性または柔軟性を有することができ、あるいは堅い構造体を有することができる。
【0028】
バリアスリーブは、射出成形金型の凹部内に挿入するために、または、射出成形金型のマンドレル上に押すために設けられたインレーとすることができる。
【0029】
特に、少なくとも1つの半シェルは、上記のような本発明による方法を用いて生成することができる。
【0030】
接続要素はアダプタとすることができる。アダプタは、ホースまたはパイプを接続するように設計することができる。アダプタは、ホースを留めるための保持要素として、周囲面取部またはウェブを有することができる。アダプタは、ホースを保持するためにクリスマスツリー状の周囲輪郭を有することができる。アダプタは、ホースまたはパイプを保持するために円状膨出部を有することができる。これに替えて、またはこれに加えて、電線の通路として意図された少なくとも1つの接続要素を設けることができる。
【0031】
本液体容器の別の実施形態によれば、スリーブの貫通穴の長手方向軸線は、バリア膜の外面または内面に対して横断方向を向く。
【0032】
特に、バリアスリーブの貫通穴の長手方向軸線は、バリア膜の外面または内面に対して垂直方向の向きにすることができる。
【0033】
バリア膜がバリアスリーブに対して面一になる、特に隙間のないような態様で、バリア膜はバリアスリーブに接触載置することができる。したがって、バリアスリーブは、接続要素の領域においてバリア膜の遮蔽効果を補完する。
【0034】
本液体容器の別の実施形態によれば、バリア膜の貫通穴は、少なくともいくつかの部分で、バリアスリーブの貫通穴と面一になるように配置される。これに替えて、またはこれに加えて、バリア膜の貫通穴とバリアスリーブの貫通穴とは同軸に配置することができる。これに替えて、またはこれに加えて、バリアスリーブは、少なくともいくつかの部分でバリア膜の貫通穴内に置かれる。
【0035】
バリアスリーブは、バリア膜によって部分的な長さの領域の周囲を完全に囲むことができる。バリア膜は、バリアスリーブの外側面に当たって、特に、隙間なく、支えることができる。
【0036】
バリアスリーブとバリア膜とは、少なくともいくつかの部分で互いに一体的に接続することができる。特に、バリアスリーブとバリア膜とは、少なくともいくつかの部分で、互いに溶接することができる、または互いに接着することができる。これによって、バリア膜とバリアスリーブとの間の継目領域において遮蔽効果を改善することができる。
【0037】
本液体容器の別の実施形態によれば、バリア膜および/またはバリアスリーブは単層である、すなわち、単一の層よりなる。これに替えて、またはこれに加えて、バリア膜および/またはバリアスリーブは多層とすることができる。これに替えて、またはこれに加えて、バリア膜は穴あきとすることができる。
【0038】
バリア膜および/またはバリアスリーブは、例えば、EVOH(ethylene vinyl alcohol copolymer:エチレンビニルアルコールコポリマ)製のバリア層、LDPE(low-density polyethylene:低密度ポリエチレン)製の2つの接着促進層、およびHDPE(high-density polyethylene:高密度ポリエチレン)製の2つのカバー層を有することができる。
【0039】
射出成形材料は、単層または多層の支持層を形成することができ、それは、エラストマ、熱可塑性エラストマ、HDPE(高密度ポリエチレン)、繊維強化ポリアミド、PA(polyamide:ポリアミド)、部分芳香族ポリアミド、耐衝撃性ポリアミドのうちの1以上を有することができる、またはそれらから構成することができる。
【0040】
単層または多層バリア層は、EVOH(エチレンビニルアルコールコポリマ)、LDPE(低密度ポリエチレン)、PEEK(polyether ether ketone:ポリエーテルエーテルケトン)、PA(ポリアミド)、部分芳香族ポリアミド、HDPE(高密度ポリエチレン)、フルオロポリマのうちの1以上を有することができる、またはそれらから構成することができる。例えば、バリア層は、EVOH層が中央にあり、PAカバー層が両側を覆う、または両側に隣接する、PAとEVOHの3層構造とすることができる。HDPE、LDPE、およびEVOH製の、例えば、6層壁構造、または5層構造もまた可能であり、その場合には、EVOH製の中央の層が、両側を1以上のLDPE層によって覆われ、次いで、HDPE層によって覆われる。
【0041】
例えば、バリア膜は、1以上の箇所で穴を開けられて、すなわち、1以上の貫通穴を有して設けることができる。それぞれの接続要素の拡散に関連する排出の低減を達成するために、接続要素のバリアスリーブをバリア膜の各貫通穴と関係付けることができる。
【0042】
本液体容器の別の実施形態によれば、接続要素の貫通穴は湾曲形状を有し、または曲管を有し、接続要素は特に、曲げ45°の接続部、曲げ60°の接続部、または曲げ90°の接続部を形成する。バリアスリーブは、確実に遮蔽効果を与えるために、接続部の形状に適合させることができる。0°から90°の間の傾きを有する接続部を形成することができ、急変化または曲がりを形成しないで自由曲面として徐々に曲がるような傾斜が可能である。
【0043】
本液体容器の別の実施形態によれば、バリア膜とバリアスリーブとは、少なくともいくつかの部分で重なるように配置され、バリアスリーブおよび/またはバリア膜は、特に、少なくともいくつかの部分でフランジまたは漏斗形状を有する。この重なりによって、バリア膜とバリアスリーブとの間の移行部または継目において拡散によって引き起こされる排出を低減することができる。
【0044】
本液体容器の別の実施形態によれば、バリア膜とバリアスリーブとは互いに一体的に接続される。
【0045】
バリアスリーブとバリア膜は、互いに一体的に接続することができ、特に、例えば、重畳領域で、互いに溶接することができる、または接着することができる。
【0046】
これに替えて、またはこれに加えて、バリアスリーブおよび/またはバリア膜は、半シェルの射出成形材料に一体的に接続することができる。特に、射出成形材料は、バリア膜および/またはバリアスリーブが一体的に接続される構造化支持材料とすることができる。したがって、バリアスリーブおよび/またはバリア膜は、破壊のない態様では取り外せないように、液体容器に確実に組み込むことができる。
【0047】
バリア膜および/またはバリアスリーブの壁厚は、100μmから1000μmの範囲とすることができる。
【0048】
本液体容器の半シェルは、隣接する縁に沿って、一体的に互いに接続することができる、特に、互いに溶接することができる。両方の半シェルは、少なくとも1つのバリアスリーブを有するバリア膜を有する。両方の半シェルはバリア膜を有するが、一方の半シェルだけが1以上の接続要素を有し、それらはそれぞれ関連するバリアスリーブを有するが、他方の半シェルは接続要素を有しない。
【0049】
ホース材料を押し出すことによって、バリアスリーブを1以上の層に生成することができる。この結果、周囲が、例えば、強度および遮蔽効果に関して均質な構成部品の特性を有する継ぎ目なし壁となる。多層構造を達成するためには、原料として折り重ねた管状の膜を利用することができる。
【0050】
バリアスリーブは、スリーブの形態に曲げられ、当接する縁に沿って長手方向に溶接された、単層または多層のテープまたは板材から作ることができる。この場合、スリーブは長手方向の継目を有する。
【0051】
透過経路の長さL1に対する接続要素の透過経路の領域の幅または壁厚b1の比は、0.5以下である(b1/L1<0.5)。
【0052】
以下に、例示的な実施形態を示した図を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】従来技術による液体容器の接続要素の断面図である。
【
図2】従来技術による液体容器の接続要素の別の断面図である。
【
図3】本発明による液体容器の接続要素の断面図である。
【
図5】射出成形前のバリアスリーブおよびバリア膜の図である。
【
図6】射出成形後の
図5のバリアスリーブおよびバリア膜の図である。
【
図7】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図8】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図9】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図10】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図11】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図12】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図13】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図14】本発明による液体容器の接続要素のさらなる代替の断面形状の図である。
【
図15】本発明による射出成形法の作業の流れの図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1および
図2はそれぞれ、従来技術による液体容器3の接続要素1の断面を示す。液体容器3の壁5の一部分のみが示されている。液体容器3の壁5は、バリア層7および支持層9を有する。接続要素1は、バリア層7のうち支持層9から離れる方を向く側面に配置される(
図1による変形例)、または、接続要素1は、支持層9の上に置かれ、かつ、バリア層は、内側にある(
図2による変形例)。ホース11は接続要素1に押し付けられ、例えば、液体容器3の通気部の一部である。
【0055】
燃料が液体容器3に蓄えられている場合、透過経路13に沿う、拡散に関連する燃料排出が増加する。支持層9またはノズル1のプラスチックは、これらの経路に沿って、バリア層7によって周囲Uから閉じ込められていないので、燃料は透過経路13を通して拡散して出ることができる。結果として、バリア層7によって抑えられない炭化水素の拡散は、例えば、支持層9および/または接続要素1のプラスチックを通過して透過経路13に沿って生じる。液体容器3に設けられた接続要素1の数が多いほど、環境Uへの拡散に関連する炭化水素の排出または漏れに起因する燃料の漏れは多くなる。
【0056】
図3は、本発明による液体容器4(
図4)の接続要素2の断面を示す。本例では、液体容器4は自動車用の燃料容器4である。
【0057】
液体容器4は相互接続された2つの半シェル6、8を有する。半シェル6、8は、液体12を受け入れるための貯槽容積部10を画定する。ここで、液体12は、自動車の内燃機関用の燃料12である。半シェル6、8はそれぞれ、拡散バリアとして多層バリア膜14、16を有する。
【0058】
本例では、半シェル6は3つの接続要素2を有する。半シェル6、8に設けられた接続要素の配置、数、幾何形状は、代替の例示的な実施形態に従って変えることができることは容易に理解されよう。例えば、
図4に示した配置に替えて、またはそれに加えて、例えば、
図6から
図14に示すようにさらなる接続要素を半シェル6、8に設けることができる。
【0059】
本例では、接続要素2は、
図3に例示的に示すように、ホース18を接続するために設定された接続片2である。
【0060】
図3で分かるように、多層バリアスリーブ20は接続要素2と関係付けられる。ここで、バリアスリーブ20は、接続要素2の領域の拡散バリアを形成する。透過経路22によって示されるように、拡散に関連する燃料排出をバリアスリーブ20によって完全には防ぐことができないことは事実である。しかしながら、本例では、バリアスリーブ20を使用することによって、透過経路22に沿う透過可能な断面積が、
図1および
図2による従来技術と比べて減少し、拡散経路も従来技術と比べて長い。これによって、拡散に関連する燃料排出を実質的に減少させることができる。
【0061】
バリアスリーブ20は長手方向軸線Lを有し、これに沿って貫通穴24が延在し、貫通穴24は、バリア膜14の外面26および内面28に対して横断方向、本例では垂直方向に向けられる。バリアスリーブ20は、バリア膜14の貫通穴30の中に置かれ、貫通穴30も長手方向軸線Lに沿って延在し、したがって、バリアスリーブ20と同軸に配置される。
【0062】
本例では、バリア膜14およびバリアスリーブ20は多層構造を有する。バリア膜14は、カバー層34によって両側を囲まれたバリア層32を有する。バリアスリーブ20は、カバー層38によって両側を囲まれたバリア膜36を有する。
【0063】
バリア膜14とバリアスリーブ20は、互いに一体的に接続される、本例では、互いに溶接される。本例では、バリアスリーブ20およびバリア膜14はまた、半シェル6の構造化支持層41の射出成形材料40に一体的に接続される。射出成形材料40は熱可塑性物質、本例では、HDPEである。カバー層34、36もまたHDPEであり、同じタイプの溶接が可能である。
【0064】
本例では、バリア膜14の壁厚d1は約700μmである。本例では、バリアスリーブ20の壁厚d2は約500μmである。
【0065】
代替の実施形態によれば、バリアスリーブ20および/またはバリア膜14は、単一の層よりなることを意味する単層として具現化することができる。この場合、単層は、バリア層を支持材料40に一体的に接続するために使用され、貯蔵されている燃料12、特に炭化水素に対する拡散バリアの機能も有する。
【0066】
透過経路の長さL1に対する接続要素2の透過経路22の領域の幅b1または壁厚b1の比は、本例では、0.5より小さい(b1/L1<0.5)。
【0067】
図4から分かるように、液体容器4の2つの半シェル6、8は領域42において一緒になるように溶接される。
【0068】
図5は、支持材料40を射出またはバック射出する前の多層バリアスリーブ44および多層バリア膜46を示す。バリアスリーブ44とバリア膜46は領域48において重なるように配置される。本例では、バリアスリーブ44は円形のカラー50を有する。
【0069】
射出成形材料40を射出金型(図示せず)に射出することによって、
図6で分かるように、圧力および温度を入力した結果として、バリアスリーブ44とバリア層46とは重なるように互いに溶接される。さらに、バリアスリーブ44とバリア層46はまた、支持材料40に一体的に接続または溶接される。
【0070】
したがって、このようにして形成された接続要素52は内側バリアスリーブ44を有し、バリア膜46もまた、内側に、すなわち、貯蔵される燃料の方を向くように、配置される。
【0071】
図7は、内側バリアスリーブ56を有する接続要素54の別の変形例を示す。しかしながら、
図6の例と比較すると、本例では、1つのバリア膜58は、液体容器の半シェルの外側に配置される、すなわち、貯蔵される燃料から離れる方を向く半シェルの側に配置される。
【0072】
したがって、バリア膜58は、内側60の領域において支持材料40に一体的に接続され、一方、接続要素54は、側60から離れる方を向く側62に局所的に射出成形される。
図6の例と同様に、
図7による例はカラーまたはフランジ64を有し、その近くで、バリア膜58とバリアスリーブ56とは、重なって互いに一体的に接続されるように配置される。
【0073】
図8は接続要素65の別の代替を示し、ここでは、バリアスリーブ66、およびバリア膜68もそれぞれ外側に配置される、すなわち、液体容器の貯蔵容積部から離れる方を向く液体容器の半シェルの外側の領域に配置される。
【0074】
本例では、バリアスリーブ66は、支持材料40を射出成形する前に、接続要素65に生じる輪郭にすでに適合されており、射出成形前にフランジ70も有しており、初めに可塑化済み支持材料40の射出成形のプロセスの結果として、バリアスリーブ66は、フランジ70の近くでバリア膜68に一体的に接続される。バリアスリーブ66および/またはバリア膜68は、単層または多層として具現化することができる。
【0075】
図9は接続要素72の別の変形例を示し、ここでは、フランジ74はバリア膜76に設けられている。したがって、バリア膜76は、バック射出前にすでに支持材料40の穴が開けられ、射出成形プロセス前に射出成形治具内に設けられたスリーブ78と重畳部を形成するようにフランジ74を有する。
【0076】
図10から
図14を参照して以下で詳述するように、接続されるホース、パイプ、またはケーブルに応じて、接続要素は様々なタイプの輪郭を有することができる。
図10から
図14の1点鎖線の左側には、バリア層およびバリアスリーブが外側に配置された変形例が示され、一点鎖線の右側には、接続要素の輪郭の変形例が示されており、ここでは、バリア膜およびバリアスリーブは内側にある。
【0077】
図10は、クリスマスツリー状輪郭を有する接続要素80を示す。左側に例示的に示すように、バリアスリーブ82およびバリア膜84は、外側に配置することができる。本例では、バリアスリーブは、射出成形前に、すでにクリスマスツリー状輪郭にされている。しかしながら、代替の例示的な実施形態によれば、射出成形プロセスのみによってクリスマスツリー状輪郭に形成された、ほぼ円筒状のバリアスリーブを提供することができる。あるいは、バリアスリーブ86およびバリア膜88は、図の右側に示すように、内側に配置することができる。
【0078】
図11は接続要素90の別の変形例を示し、図の左側を見て、バリアスリーブ92は外側にあり、バリア膜94は外側にある。図の右側にも接続要素90も示されており、バリアスリーブ96は内側にあり、バリア膜98は内側にある。
【0079】
図12によれば、接続要素100は、外側バリア膜106と一緒になってバリアスリーブ104が外側を囲む膨出部102を有する。あるいは、接続要素100は、内側バリアスリーブ108と内側バリア膜110とを組み合わせて使用することができる。
【0080】
図13は、バリアスリーブ114とバリア膜116とを有する45°曲接続部として具現化された接続要素112を示す。
【0081】
図14は、バリアスリーブとバリア膜122とを有する90°曲接続部として具現化された接続要素118を示す。
【0082】
容易に理解されるように、上述した変形例のすべてにおいて、単層または多層のバリアスリーブ、および単層または多層のバリア膜を使用することができる。
【0083】
本発明による射出成形法の作業の流れは、
図15を参照して例として説明される。以下の方法ステップは、すなわち、
A 半シェルの成形のために設けられた射出成形治具のキャビティ内にバリア膜を設けるステップ、
B キャビティ内にバリアスリーブを設けるステップ、及び、
C キャビティ内に可塑化済み射出成形材料を射出するステップであって、
- 可塑化済み射出成形材料がバリア膜上に噴霧される、および/または、バリア膜が可塑化済み射出成形材料でバック射出されるステップと、
- バリアスリーブが可塑化済み射出成形材料でバック射出されて、および/または、可塑化済み射出成形材料でオーバーモールドされて、半シェルの接続要素、特に接続片を形成するステップと、
を有するステップ
は、本発明による、自動車用の液体容器の半シェルを製造するための射出成形法において行われる。
【符号の説明】
【0084】
1 接続要素
2 接続要素
3 液体容器
4 液体容器
5 壁
6 半シェル
7 バリア層
8 半シェル
9 支持層
10 貯蔵容積部
11 ホース
12 燃料
13 透過経路
14 バリア膜
16 バリア膜
18 ホース
20 バリアスリーブ
22 透過経路
24 貫通穴
26 外面
28 内面
30 貫通穴
32 バリア層
34 カバー層
36 バリア層
38 カバー層
40 射出成形材料、支持材料
41 支持層
42 領域
44 バリアスリーブ
46 バリア膜
48 領域
50 カラー
52 接続要素
54 接続要素
56 バリアスリーブ
58 バリア膜
60 側
62 側
64 フランジ
65 接続要素
66 バリアスリーブ
68 バリア膜
70 フランジ
72 接続要素
74 フランジ
76 バリア膜
78 スリーブ
80 接続要素
82 バリアスリーブ
84 バリア膜
86 バリアスリーブ
88 バリア膜
90 接続要素
92 バリアスリーブ
94 バリア膜
96 バリアスリーブ
98 バリア膜
100 接続要素
102 膨出部
104 バリアスリーブ
106 バリア膜
108 バリアスリーブ
110 バリア膜
112 接続要素
114 バリアスリーブ
116 バリア膜
118 接続要素
120 バリアスリーブ
122 バリア膜
A 方法ステップ
B 方法ステップ
C 方法ステップ
L 長手方向軸線
L1 長さ
U 環境
b1 壁厚
d1 壁厚
d2 壁厚