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特許7053810非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙、非燃焼加熱型喫煙物品及び電気加熱型喫煙システム
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  • 特許-非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙、非燃焼加熱型喫煙物品及び電気加熱型喫煙システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙、非燃焼加熱型喫煙物品及び電気加熱型喫煙システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/40 20200101AFI20220405BHJP
   A24F 47/00 20200101ALI20220405BHJP
   A24D 1/02 20060101ALI20220405BHJP
   A24D 1/20 20200101ALI20220405BHJP
【FI】
A24F40/40
A24F47/00
A24D1/02
A24D1/20
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020516983
(86)(22)【出願日】2018-05-01
(86)【国際出願番号】 JP2018017407
(87)【国際公開番号】W WO2019211890
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-07-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 徳子
(72)【発明者】
【氏名】相澤 亮太
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-068374(JP,A)
【文献】米国特許第05154192(US,A)
【文献】国際公開第2017/203438(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/044447(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/229850(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/026311(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/40
A24F 47/00
A24D 1/02
A24D 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非燃焼加熱型喫煙物品の外周面となる面に、感熱材料が添加された部分を有する非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙であり、
加熱前の巻紙において感熱材料が添加されている部分と、前記巻紙を200℃で5分間加熱した後の感熱材料が添加されている部分の色差ΔEが15以上であり、
前記感熱材料が添加されている部分の面積の、巻紙の全面積における割合は、40~50%であり、
前記感熱材料が透明である、巻紙。
【請求項2】
前記感熱材料が、有機酸又はその塩、単糖、二糖、多糖およびアミノ酸から選択される1種以上である、請求項1に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
【請求項3】
前記有機酸又はその塩が、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸マグネシウム、乳酸、乳酸カルシウムから選ばれる1種以上である、請求項2に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
【請求項4】
前記単糖がフラクトース、ガラクトース、及びグルコースから選ばれる1種以上であり、前記二糖がマルトース、ラクトース、及びスクロースから選ばれる1種以上であり、前記多糖が、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、及びデンプンから選ばれる1種以上であり、前記アミノ酸が、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アラニン、アスパラギン及びアルギニンから選ばれる1種以上である、請求項2に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
【請求項5】
前記感熱材料が無色である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
【請求項6】
前記巻紙において、感熱材料を添加した部分における感熱材料の含有量が、0.007mg/cm以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
【請求項7】
前記感熱材料が添加されている部分が、150~250℃に加熱される部分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
【請求項8】
たばこ刻みとエアロゾル生成基材とを含む充填物が、該充填物を巻装する第一の巻紙で巻装されてなるたばこロッド部と、該たばこロッド部とは反対側の端部を構成するマウスピース部とを有し、前記たばこロッド部と前記マウスピース部は、前記充填物を巻装する巻紙と同じ又は別の第二の巻紙を用いて連結されている非燃焼加熱型喫煙物品であって、第1の巻紙と第2の巻紙の少なくとも一方が、請求項1~のいずれか一項に記載の巻紙である、非燃焼加熱型喫煙物品。
【請求項9】
ヒーター部材と、該ヒーター部材からの熱を伝熱する伝熱部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該伝熱部材に接触するように嵌合される、請求項に記載の非燃焼加熱型喫煙物品と、から構成される、電気加熱型喫煙システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙、非燃焼加熱型喫煙物品及び電気加熱型喫煙システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たばこ刻みを含むたばこロッドの周囲から加熱を行い、揮発成分を使用者にデリバリーするタイプの非燃焼加熱型喫煙物品が知られている。非燃焼加熱型喫煙物品では、巻紙で巻装されたたばこロッドが加熱されるが、従来のシガレットとは異なり、使用後(加熱後)もたばこロッドは燃焼せずに残る。
従来のシガレットでは、たばこ刻みを巻装するための巻紙としては、ロゴなどが付されている場合はあるものの、白色(無色)の紙を用いることが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非燃焼加熱型喫煙物品において、たばこ刻みを巻装する巻紙として従来のシガレットで用いられてきた巻紙を用いると、使用時の加熱によって、使用者にとって不快な変色が生じる場合があることが分かった。
そこで本発明では、加熱によって発生し得る見た目に関する不快感が生じない、非燃焼加熱型喫煙物品用巻紙を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、本発明者は、加熱後に、加熱前に比べて一定以上の色差ΔEを有する部分を有する巻紙を使用することでその不快な変色を目立たなくすることに着目した。
パルプを主材料とする紙は、一定以上の温度で加熱されれば焦げて茶系に変色するが、原因がパルプや紙の構成成分の熱分解による物理的なものであることから、そういった変色を簡単に防ぐことはできない。しかしながら、焦げによる変色が生じたとしても、その変色が不快な色として認識されないようにするために、予め特定の感熱材料を巻紙に添加しておき、加熱前と加熱後で一定以上の色差が生じるようにすることで、逆に不快な変色を目立たなくすることができることを見出した。
本発明の課題は、電気加熱型デバイスにより加熱される非燃焼加熱型喫煙物品に特有のものであり、従来の喫煙物品(シガレット等)では生じなかった課題である。
【0005】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 非燃焼加熱型喫煙物品の外周面となる面に、感熱材料が添加された部分を有する非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙であり、
加熱前の巻紙において感熱材料が添加されている部分と、前記巻紙を200℃で5分間加熱した後の感熱材料が添加されている部分の色差ΔEが15以上である、巻紙。
[2] 前記感熱材料が、有機酸又はその塩、単糖、二糖、多糖およびアミノ酸から選択される1種以上である、[1]に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[3] 前記有機酸又はその塩が、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸マグネシウム、乳酸、乳酸カルシウムから選ばれる1種以上である、[2]に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[4] 前記単糖がフラクトース、ガラクトース、及びグルコースから選ばれる1種以上であり、前記二糖がマルトース、ラクトース、及びスクロースから選ばれる1種以上であり、前記多糖が、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、及びデンプンから選ばれる1種以上であり、前記アミノ酸が、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アラニン、アスパラギン及びアルギニンから選ばれる1種以上である、[2]に記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[5] 前記感熱材料が無色である、[1]~「4」のいずれかに記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[6] 前記巻紙において、感熱材料を添加した部分における感熱材料の含有量が、0.007mg/cm以上である、[1]~「5」のいずれかに記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[7] 前記感熱材料が添加されている部分が、150~250℃に加熱される部分を含む、[1]~「6」のいずれかに記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[8] 前記感熱材料が添加されている部分の面積の、巻紙の全面積に対する割合が1~50%である、[1]~[7]のいずれかに記載の非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙。
[9] たばこ刻みとエアロゾル生成基材とを含む充填物が、該充填物を巻装する第一の巻紙で巻装されてなるたばこロッド部と、該たばこロッド部とは反対側の端部を構成するマウスピース部とを有し、前記たばこロッド部と前記マウスピース部は、前記充填物を巻装する巻紙と同じ又は別の第二の巻紙を用いて連結されている非燃焼加熱型喫煙物品であって、第1の巻紙と第2の巻紙の少なくとも一方が、[1]~[8]のいずれか一項に記載の巻紙である、非燃焼加熱型喫煙物品。
[10] ヒーター部材と、該ヒーター部材からの熱を伝熱する伝熱部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該伝熱部材に接触するように嵌合される、[9]に記載の非燃焼加熱型喫煙物品と、から構成される、電気加熱型喫煙システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、加熱によって発生し得る見た目に関する不快感が生じない、非燃焼加熱型喫煙物品用巻紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】非燃焼加熱型喫煙物品の一態様を示す概略図である。
図2】電気加熱型喫煙システムの一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0009】
<非燃焼加熱型喫煙物品用巻紙>
本明細書において、「非燃焼加熱型喫煙物品用巻紙」とは、後述する非燃焼加熱型喫煙物品に用いられる巻紙である。以下、単に本発明の実施形態にかかる巻紙ともいう。本発明の実施形態にかかる巻紙の用途について、「非燃焼加熱型喫煙物品用」とは、たばこ刻みを含む充填物を巻装してたばこロッドを作製するためのロッド用巻紙として用いたり、たばこロッドに隣接する部材(例えばマウスピース部を構成する部材)を連結するために、それらの外周面を巻装するために用いられるチップペーパーとして用いることを挙げることができる。
【0010】
本発明の実施形態にかかる巻紙は、非燃焼加熱型喫煙物品の外周面となる面に、感熱材料が添加された部分を有する非燃焼加熱型喫煙物品用の巻紙であり、
加熱前の巻紙において感熱材料が添加されている部分と、前記巻紙を200℃で5分間加熱した後の感熱材料が添加されている部分の色差ΔEが15以上である。加熱前後でこのような色差が生じることで、非燃焼加熱型喫煙物品の通常の使用時に生じ得る不快な変色を目立たなくすることができる。
本発明の実施形態にかかる巻紙において、前記感熱材料が添加されているのは、非燃焼加熱型喫煙物品の外周面となる面である。言い換えると、例えば、本発明の実施形態にかかる巻紙をロッド用巻紙として用いる場合には、後述するたばこ充填物に接しない面に感熱材料が添加される。また、本発明の実施形態にかかる巻紙をチップペーパーとして用いる場合には、たばこロッドに隣接する部材(例えばマウスピース部の部材)に接しない面に感熱材料が添加される。
【0011】
なお、上記の感熱材料が添加されている部分は、本発明の実施形態にかかる巻紙の全面に存在してもよいし、少なくとも加熱を受ける部分(後述する電気加熱型デバイスによる加熱)に存在する態様であってもよい。
また、感熱材料が添加されている部分の面積の、巻紙の全面積における割合は、1~50%を挙げることができる。感熱材料が添加されている部分の面積の、巻紙の全面積における割合は、感熱材料が添加されている部分が例えばロゴや文字のようなものである場合には、1~10%程度であってもよく、1~5%程度であってもよい。また、巻紙において、加熱を受ける部分の多くの部分に感熱材料が添加されている態様では、巻紙の面積の40~50%に感熱材料が添加されていてもよい。
【0012】
本発明の実施形態にかかる巻紙に添加する感熱材料として、有機酸又はその塩、単糖、二糖、多糖およびアミノ酸から選択される1種以上を挙げることができる。これらの中で、複数種を組み合わせて用いる場合には、例えば、有機酸又はその塩と、単糖、二糖、及び多糖から選ばれる1種以上の糖との組み合わせ(有機酸又はその塩と単糖の組み合わせ、有機酸又はその塩と二糖の組み合わせ、有機酸又はその塩と多糖の組み合わせを含む)、単糖とアミノ酸の組み合わせ、単糖と多糖の組み合わせ等を挙げることができる。これらの感熱材料を、適宜例えば水に溶解し、感熱材料の水溶液を調製して、巻紙に添加する態様を挙げることができる。
水溶液を調製する際の感熱材料の濃度は特に制限されず、例えば0.1~50重量%、好ましくは0.2~40重量%を挙げることができる。
前記有機酸又はその塩として、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸マグネシウム、乳酸、乳酸カルシウムから選ばれる1種以上を挙げることができる。これらの有機酸またはその塩を用いることで巻紙原紙のパルプの酸化反応に必要な熱量を下げることで発色が起こると考えられる。
前記単糖は、フラクトース、ガラクトース、及びグルコースから選ばれる1種以上であることが好ましい。前記二糖は、マルトース、ラクトース、及びスクロースから選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記多糖は、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、ペクチン、及びデンプンから選ばれる1種以上であることが好ましい。
上記の単糖、二糖、多糖を用いた場合には、カラメル化反応による発色が起こると考えられる。
前記アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アラニン、アスパラギン及びアルギニンから選ばれる1種以上であることが好ましい。これらのアミノ酸は、巻紙原紙のパルプに含まれるカルボニル基と、メイラード反応により発色すると考えられる。
なお、上記の感熱材料の水溶液は外観上、透明であった。またこれらの感熱材料を巻紙原紙に添加した際に、巻紙の色の変化はなかった。つまり上記の感熱材料は、加熱前は外観上、透明である。これにより、非燃焼加熱型喫煙物品の使用前には巻紙原紙に表れていなかった色を、使用時の加熱により巻紙上で発色させることができ、感熱材料の発色に起因しない巻紙原紙に生じる変色を目立たなくすることができる。
【0013】
本発明の実施形態にかかる巻紙における、感熱材料の含有量については、感熱材料を添加した部分の含有量として、0.007mg/cm以上を挙げることができ、0.07mg/cm以上であることが好ましい。一方、感熱材料の含有量の上限値としては、感熱材料を添加した部分の含有量として、例えば7mg/cm以下を挙げることができ、別の例では6mg/cm以下を挙げることができ、さらに別の例では、5mg/cm以下を挙げることができる。このような含有量の範囲であることで、感熱材料を添加した部分の加熱前後のΔE値が15以上になることに寄与する。
【0014】
なお、本発明の実施形態にかかる巻紙において、感熱材料の添加部分の加熱前後のΔEの値は、試料とする紙の中で、感熱材料を添加した5点について測定し、その単純平均の値を採用する。測定の対象とするのは紙の感熱材料を添加した任意の部分であるが、紙にロゴなどの文字や模様が存在する場合には、そのような文字やロゴの存在しない箇所を対象とする。ΔE値は分光光度計を用いることで測定できる。
具体的には、分光光度計(X-Rite社製、品名SpectroEye)を用いる。計測は、光源D65、光源フィルタなし、視野角2°の条件下、ISO白色度92%の紙の上に試料1枚を置き、その上に分光光度計を押し当てて実施する。
【0015】
上記の感熱材料を溶解した水溶液の、巻紙原紙への添加方法としては、特に制限はなく、例えば塗布であったり、印刷を施すことなどが挙げられる。塗布の方法に特に制限はない。印刷により感熱材料を巻紙原紙に添加する場合、簡便に上記の特性を巻紙に添加することができる。
印刷の方法は特に制限はなく、例えばグラビア印刷およびオフセット印刷を挙げることができる。
印刷は原紙となる紙全面に行う態様、または原紙の表面のうち、後述する電気加熱型デバイスにより加熱を受ける部分が少なくとも印刷されている態様を挙げることができる。
巻紙の表面において、少なくとも加熱される部分(電気加熱型デバイスによる加熱を受ける部分)が、加熱前後の色差ΔEが15以上であることが好ましい。巻紙の表面の中でも、後述する電気加熱型デバイスにより加熱を受ける部分が上記の特性を有することで、加熱後の外観の印象の悪化を防ぐことができる。
【0016】
非燃焼型喫煙物品用の巻紙として、その形状は正方形又は長方形を挙げることができる。たばこ刻みを巻装するため(たばこロッドを作製するため)の巻紙として利用する場合、一辺の長さとして19~70mm程度を挙げることができ、もう一辺の長さとして15~26.5mm、もう一辺の好ましい長さとして24mmを挙げることができる。
チップペーパーのように、たばこロッドとたばこロッドに隣接するその他の部材を連結して巻装するものである場合、一辺の長さとして20~60mm、もう一辺の長さとして15~26.5mmを挙げることができる。
【0017】
本発明の実施形態にかかる巻紙原紙の坪量は、例えば通常20g/m以上であり、好ましくは35g/m以上であり、より好ましくは40g/m以上である。一方、坪量は通常65g/m以下、好ましくは50g/m以下、である。
本発明の実施形態にかかる巻紙の厚みは、特に限定されず、剛性、通気性、及び製紙時の調整の容易性の観点から、通常10μm以上であり、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、また、通常100μm以下であり、好ましくは75μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。
【0018】
本発明の実施形態にかかる巻紙原紙としては、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的に喫煙物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。
パルプの種類としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
【0019】
また、パルプとしては、例えば晒パルプと未晒パルプの混合パルプから構成されているものを用いてもよい。
混合パルプを用いる場合、晒パルプとして針葉樹であるトウヒと広葉樹であるポプラ、未晒パルプとしてマツを用意する。所望割合の晒パルプと未晒パルプをパルパーに投入し、これらパルプを離解させる。次いで、離解したパルプをリファイナへ移し、リファイナにて叩解する。別途、填料として炭酸カルシウム、製造助剤として凝集剤を用意し、これらを叩解したパルプと混合させる。なお、晒パルプと、未晒パルプとを複数のパルパーを用いてそれぞれ単独に離解し、リファイナで叩解し、ミキシングボックスにて、それぞれ叩解した晒パルプ及び未晒パルプ、填料、製造助剤を混合させてもよい。
【0020】
次に、当該混合したパルプを用いて長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等による抄紙工程の中で、地合いを整え均一化して巻紙を製造する。なお、必要に応じて、上述した湿潤紙力増強剤を添加して巻紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
晒パルプと未晒パルプを混合して用いる場合、巻紙における未晒パルプの割合は、例えば1重量%以上90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以上86重量%未満、さらに好ましくは5重量%以上60重量%以下である。
【0021】
上記のパルプの他に、本発明の実施形態にかかる巻紙原紙には填料が含まれていてもよい。填料の含有量は、本発明の実施形態にかかる巻紙の全重量に対して30重量%以上60重量%未満を挙げることができる。
填料としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができるが、喫味等から炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
このような填料を含む紙は、通常は白色系の明るい色を呈する。一方で、混合パルプから構成される巻紙は、通常、未晒パルプに起因する色を有している。
【0022】
再生たばこから構成されるシートたばこを、本発明の実施形態にかかる巻紙原紙として使用してもよい。
シートたばことして、抄造法により得られる抄造シートたばこ、スラリーを乾燥して得られるスラリーシートたばこを挙げることができる。
抄造シートたばこの一般的な製法は、天然のたばこ材料(葉、刻み、中骨、茎、根等)を、水などの抽出溶媒を用いて抽出操作を行う工程と、抽出操作により得られた抽出液と残渣を分離する工程と、残渣を抄紙して再生たばこウェブを作製する工程と、必要に応じて分画処理が行われた抽出液を再生ウェブにかけ戻す工程を含むことができる。このような製法は、湿式抄紙法として、例えば国際公開第2004/006001号に記載されている。
【0023】
スラリーシートたばこは例えば特開平11-266851号公報に記載の方法で作製できる。原料スラリーは、水中にて混合解繊した木材パルプと、たばこ粉末とバインダーを含むものである。原料スラリーは、スラリー供給機からベルトコンベアとローラの間に押し出され、ベルトコンベア上でシート状に引き伸ばされる。その後、ベルトコンベア上のシート状の原料スラリーは乾燥炉へ搬送され、乾燥炉内を通過する際に乾燥が行われて、シートたばこが形成される。
シートたばこを本発明の実施形態にかかる巻紙原紙として用いる場合は、その坪量として30~80g/mの範囲、通気度としては0~60CU(コレスタユニット)を挙げることができる。
シートたばこの別の製造方法としては、例えば特開昭61-52269号公報に記載された乾式抄紙法や、前者の乾式抄紙法により得られるシートたばこは、木材パルプの繊維と、接着剤とたばこの茎部とから構成される。
【0024】
本発明の実施形態にかかる巻紙には、従来のたばこロッド用巻紙に含まれる助燃剤が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。本発明の実施形態にかかる巻紙は、後述する非燃焼加熱型喫煙物品に用いる第一の巻紙として用いてもよく、第二の巻紙として用いてもよい。
【0025】
<非燃焼加熱型喫煙物品>
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱型喫煙物品として、例えば図1の構成を有するものを挙げることができる。
図1の非燃焼加熱型喫煙物品10は、充填物11と、充填物11を巻装する第一の巻紙12から構成されるたばこロッド部と、該たばこロッド部とは反対側の端部を構成するマウスピース部16とを有し、前記たばこロッド部と前記マウスピース部は、前記充填物を巻装する巻紙と同じ又は別の第二の巻紙13(図1ではチップペーパー)を用いて連結されている。
第一の巻紙及び第二の巻紙の少なくとも一方は、上記で説明した本発明の実施形態にかかる巻紙である。少なくとも第一の巻紙が、本発明の実施形態にかかる巻紙であることが好ましい。また、第一の巻紙12及び第二の巻紙の両方が上記で説明した本発明の実施形態にかかる巻紙であることも好ましい。
図1に示す態様では、マウスピース部16は、紙管部14及びフィルター部15とを備える。また、これらを連結するための第二の巻紙としてチップペーパー13を備える。なお、図1ではマウスピース部16は2つのセグメントから構成されているが、マウスピース部16は単一のセグメントから構成されていてもよく、3つ以上のセグメントから構成されていてもよい。また、マウスピース部を構成するセグメントは、紙管部とフィルター部の両方が含まれるように構成されていてもよいし、どちらかのみから構成されていてもよい。
【0026】
前記たばこロッドが加熱されることで生じるエアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、紙管部14を通過するのに従って、紙管内の空気と触れ合って冷却されることで液化してエアロゾルが生成する。
また、非燃焼加熱型喫煙物品10は、紙管部14と、紙管部14の周囲を覆う第二の巻紙13(チップペーパー)の一部に、外部からの空気を取り入れるための微小孔を有してもよい(図示せず)。そのような微小孔が存在することで、使用時に外部から紙管部14の内部に空気が流入し、前記たばこロッドが加熱されることで生じるエアロゾル生成基材とたばこ香味成分とを含む蒸気が、外部からの空気と接触して温度が低下することで液化し、エアロゾルの生成がより確実になる。
紙管部14は、例えば厚紙を円筒状に加工したものを挙げることができる。
フィルター部15は、例えばアセテートトウを材料として用いたものを挙げることができる。アセテートトウの単糸繊度、総繊度は特に限定されない。
図1ではフィルター部15は単一のセグメントから構成されているが、複数のセグメントから構成されていてもよい。複数のセグメントから構成されている場合、例えば上流側に中空のセグメントを配置し、下流側(使用者の吸口端側)のセグメントとして吸口断面がアセテートトウで充填されている態様を挙げることもできる。このような態様によれば、生成するエアロゾルの無用な損失を防ぐとともに、非燃焼加熱型喫煙物品の外観を良好にすることができる。
また、フィルターの製造において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料、香料保持材等)の添加を適宜設計できる。
第二の巻紙13(チップペーパー)の材料は特に制限されないが、本発明の実施形態にかかる巻紙を一部または全部に用いてもよい。第二の巻紙13は、例えば酢酸ビニル系の糊を用いて、上記のたばこロッド、紙管部14、フィルター部15の周囲を巻装した後に固定する態様を挙げることができる。
【0027】
たばこロッドは、充填物11としてたばこ刻みを含み、当該たばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。たばこロッド中の充填物の含有量の範囲は、円周22mm、長さ20mmのたばこロッドの場合、200~400mg/ロッドを挙げることができ、250~320mg/ロッドが好ましい。充填物の水分含有量は10~15重量%を挙げることができ、11~13重量%であることが好ましい。このような水分含有量であると、巻染みの発生を抑制し、たばこロッドの製造時の巻上適性を良好にする。
【0028】
充填物として用いるたばこ刻みの大きさやその調製法については特に制限はない。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。
また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに刻んだものを用いてもよい。
さらに、上記のシート加工したものについて刻まずにギャザー加工したものを充填物として用いてもよい。
【0029】
充填物は、エアロゾル煙を生成するエアロゾル生成基材を含む。当該エアロゾル生成基材の種類は、特に限定されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
充填物中のエアロゾル生成基材の含有量は、特に限定されず、十分にエアロゾルを生成させるとともに、良好な喫味の付与の観点から、通常5重量%以上であり、好ましくは10重量%以上であり、また、通常50重量%以下であり、好ましくは20重量%以下である。
【0030】
充填物は、香料を含んでいてもよい。当該香料の種類は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、アセトアニソール、アセトフェノン、アセチルピラジン、2-アセチルチアゾール、アルファルファエキストラクト、アミルアルコール、酪酸アミル、トランス-アネトール、スターアニス油、リンゴ果汁、ペルーバルサム油、ミツロウアブソリュート、ベンズアルデヒド、ベンゾインレジノイド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、2,3-ブタンジオン、2-ブタノール、酪酸ブチル、酪酸、カラメル、カルダモン油、キャロブアブソリュート、β-カロテン、ニンジンジュース、L-カルボン、β-カリオフィレン、カシア樹皮油、シダーウッド油、セロリーシード油、カモミル油、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シンナミルアルコール、ケイ皮酸シンナミル、シトロネラ油、DL-シトロネロール、クラリセージエキストラクト、ココア、コーヒー、コニャック油、コリアンダー油、クミンアルデヒド、ダバナ油、δ-デカラクトン、γ-デカラクトン、デカン酸、ディルハーブ油、3,4-ジメチル-1,2-シクロペンタンジオン、4,5-ジメチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジヒドロフラン-2-オン、3,7-ジメチル-6-オクテン酸、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、2-メチル酪酸エチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、イソ吉草酸エチル、乳酸エチル、ラウリン酸エチル、レブリン酸エチル、エチルマルトール、オクタン酸エチル、オレイン酸エチル、パルミチン酸エチル、フェニル酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ステアリン酸エチル、吉草酸エチル、エチルバニリン、エチルバニリングルコシド、2-エチル-3,(5または6)-ジメチルピラジン、5-エチル-3-ヒドロキシ-4-メチル-2(5H)-フラノン、2-エチル-3-メチルピラジン、ユーカリプトール、フェネグリークアブソリュート、ジェネアブソリュート、リンドウ根インフュージョン、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、ブドウ果汁、グアヤコール、グァバエキストラクト、γ-ヘプタラクトン、γ-ヘキサラクトン、ヘキサン酸、シス-3-ヘキセン-1-オール、酢酸ヘキシル、ヘキシルアルコール、フェニル酢酸ヘキシル、ハチミツ、4-ヒドロキシ-3-ペンテン酸ラクトン、4-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシ-1-ブテニル)-3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4-(パラ-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、4-ヒドロキシウンデカン酸ナトリウム、インモルテルアブソリュート、β-イオノン、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、フェニル酢酸イソブチル、ジャスミンアブソリュート、コーラナッツティンクチャー、ラブダナム油、レモンテルペンレス油、カンゾウエキストラクト、リナロール、酢酸リナリル、ロベージ根油、マルトール、メープルシロップ、メンソール、メントン、酢酸L-メンチル、パラメトキシベンズアルデヒド、メチル-2-ピロリルケトン、アントラニル酸メチル、フェニル酢酸メチル、サリチル酸メチル、4’-メチルアセトフェノン、メチルシクロペンテノロン、3-メチル吉草酸、ミモザアブソリュート、トウミツ、ミリスチン酸、ネロール、ネロリドール、γ-ノナラクトン、ナツメグ油、δ-オクタラクトン、オクタナール、オクタン酸、オレンジフラワー油、オレンジ油、オリス根油、パルミチン酸、ω-ペンタデカラクトン、ペパーミント油、プチグレインパラグアイ油、フェネチルアルコール、フェニル酢酸フェネチル、フェニル酢酸、ピペロナール、プラムエキストラクト、プロペニルグアエトール、酢酸プロピル、3-プロピリデンフタリド、プルーン果汁、ピルビン酸、レーズンエキストラクト、ローズ油、ラム酒、セージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スチラックスアブソリュート、マリーゴールド油、ティーディスティレート、α-テルピネオール、酢酸テルピニル、5,6,7,8-テトラヒドロキノキサリン、1,5,5,9-テトラメチル-13-オキサシクロ(8.3.0.0(4.9))トリデカン、2,3,5,6-テトラメチルピラジン、タイム油、トマトエキストラクト、2-トリデカノン、クエン酸トリエチル、4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセニル)2-ブテン-4-オン、2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1,4-ジオン、4-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエニル)2-ブテン-4-オン、2,3,5-トリメチルピラジン、γ-ウンデカラクトン、γ-バレロラクトン、バニラエキストラクト、バニリン、ベラトルアルデヒド、バイオレットリーフアブソリュートが挙げられ、特に好ましくはメンソールである。また、これらの香料は1種を単独で、又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
充填物中の香料の含有量は、特に限定されず、良好な喫味の付与の観点から、通常10000ppm以上であり、好ましくは20000ppm以上であり、より好ましくは25000ppm以上であり、また、通常50000ppm以下であり、好ましくは40000ppm以下であり、より好ましくは33000ppm以下である。
【0032】
充填物の充填密度は、特に限定されないが、非燃焼加熱型喫煙物品の性能を担保し、良好な喫味の付与の観点から、通常250mg/cm以上であり、好ましくは320mg/cm以上であり、また、通常520mg/cm以下であり、好ましくは420mg/cm以下である。
【0033】
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱型喫煙物品の製造において、上記の本発明の実施形態にかかる巻紙を使用することができる。具体的には、たばこ刻みとエアロゾル生成基材を含む充填物を成形し、その後、本発明の実施形態にかかる巻紙を用いて、成形された充填物を巻装することでたばこロッドを得ることができる。さらに、そのたばこロッドとマウスピース部を構成する部材とをチップペーパー(又は本発明の実施形態にかかる巻紙)で巻装することで、非燃焼加熱型喫煙物品を得ることができる。なお、巻装の際には公知の巻取装置を用いることができる。
非燃焼加熱型喫煙物品の製造時に、本発明の実施形態にかかる巻紙を、たばこロッドの巻紙として、及び/又はチップペーパーとして使用することで、使用後(加熱後)に外観の印象が損なわれない非燃焼加熱型喫煙物品を提供できる。
【0034】
<電気加熱型喫煙システム>
電気加熱型喫煙システムの一態様を図2に図示する。電気加熱型喫煙システム30は、電気加熱型デバイス20の内部に配置された、ヒーター24に接する伝熱部材25に、上記で説明した非燃焼加熱型喫煙物品10が接触するように嵌装されて使用される。
電気加熱型デバイス20は、例えば樹脂性の躯体23の内部に、電池ユニット21と制御ユニット22とを有する。
上記のように非燃焼加熱型喫煙物品は、充填物11と、充填物11を巻装する第一の巻紙12から構成されるたばこロッド部と、該たばこロッド部とは反対側の端部を構成するマウスピース部16とを有し、前記たばこロッド部と前記マウスピース部は、前記充填物を巻装する巻紙と同じ又は別の第二の巻紙を用いて連結されている。非燃焼加熱型喫煙物品を電気加熱型デバイスに嵌装すると、該たばこロッドの外周面と、該たばこロッドと紙管部14とを接続する第二の巻紙(チップペーパー13)から構成される外周面の一部が、電気加熱型デバイス20の内部の伝熱部材25と接触する。
電気加熱型デバイス20の内部のヒーター24は、制御ユニット22による制御により発熱する。その熱が伝熱部材25を介して非燃焼加熱型喫煙物品のたばこロッドに伝わることで、たばこロッドの充填物11に含まれるエアロゾル生成基材と香味成分とが共に揮発する。
ヒーター24による加熱により、前記たばこロッドは概ね150~250℃にまで加熱される。
上記のΔEを測定する際の、巻紙の加熱温度を200℃とし、その時間を5分間とするのは、本発明の実施形態にかかる電気加熱型喫煙システムの使用を前提として設定されたものである。
加熱により生じるエアロゾル生成基材と香味成分を含む蒸気は、前記で説明したメカニズムにより紙管部14の内部でエアロゾル化し、非燃焼型喫煙物品10のフィルター部15を通して使用者の口腔内に到達する。
【実施例
【0035】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0036】
<紙サンプルの準備>
市販のたばこロッド用の巻紙を5cm×5cm片に裁断した。
また、感熱材料として、以下の表1に示す物質を選択し、表1に示す濃度で各物質の水溶液を調製した。筆を用いて各水溶液を3cm幅で上記の裁断済みの巻紙に塗布した。
また、コントロールとして、上記の裁断済みの巻紙に対して何も塗布しなかったものを用いた。なお、市販のたばこロッド用の巻紙には、助燃剤としてクエン酸が巻紙全量に対して1.2重量%程度含まれている(表1では塗工量として記載しているが、塗工を行ったわけではない)。
さらに、市販の自己消化性のたばこロッド用の巻紙(たばこ刻みに接する面に、自己消火剤が塗布されている)を比較例1として準備した。
各試料について、家庭用アルミホイル(材質:アルミニウム箔 厚さ:11μm)に載せ、マッフル炉(品名:Muffle Furnace FO410型、ヤマト科学社製)で200℃、5分間加熱した。
【0037】
<色差測定>
加熱前後の各サンプルについて分光光度計(X-Rite社製、品名SpectroEye)を用いてΔEを計測した。計測は、光源D65、光源フィルタなし、視野角2°の条件下、ISO白色度92%の紙の上に試料1枚を置き、その上に分光光度計を押し当てて実施した。
測定は、感熱材料を塗布した部分に対して5か所を繰り返し行い、平均値を解析に使用した。
色差測定の結果を表1に示す。
【表1】
【0038】
上記の表1の結果から、感熱材料として表1に示す物質を含む水溶液を巻紙に塗布したものでは、200℃で5分間の加熱前後の色差ΔEが15以上になったのに対して、コントロールや比較例1では色差ΔEは15に満たなかった。また、色差ΔEが15以上である試料については、加熱前後の色差ΔEが15以上になる程度に変色したが、パネラーが観察を行ったところ、加熱後のものであっても不快な色だとは認識されなかった。
一方で、色差ΔEが15に満たないコントロールや比較例1については、パネラーが観察したところ、加熱前に比べると加熱後の外観がやや不快な印象を与えるものであった。
【符号の説明】
【0039】
10 非燃焼加熱型喫煙物品
11 充填物
12 第一の巻紙
13 第二の巻紙(チップペーパー)
14 紙管部
15 フィルター部
16 マウスピース部
20 電気加熱型デバイス
21 電池ユニット
22 制御ユニット
23 躯体
24 ヒーター
25 伝熱部材
30 電気加熱型喫煙システム
図1
図2