(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】プレス成形品のネッキング判定方法、プレス成形品のネッキング判定装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/30 20060101AFI20220405BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G01B11/24 Z
(21)【出願番号】P 2020559816
(86)(22)【出願日】2019-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043448
(87)【国際公開番号】W WO2020116075
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】P 2018227714
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000178804
【氏名又は名称】ユニプレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 實
(72)【発明者】
【氏名】望月 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】川村 風人
(72)【発明者】
【氏名】明元 英樹
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-96808(JP,A)
【文献】特開2001-255275(JP,A)
【文献】特開昭49-1280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
B30B 15/10-15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形品の予め定められた部位の第1位置を含む2次元表面形状を示す第1波形を取得する段階と、
前記第1波形の変化量を導出する段階と、
前記第1波形の変化量に基づいて、ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階と
を備えるプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項2】
前記判定する段階は、前記変化量が予め定められた変化パターンを満たす場合、ネッキングが前記予め定められた部位に発生していると判定する、請求項1に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項3】
前記判定する段階は、前記第1波形の単位距離当たりの差分が、前記予め定められた変化パターンを満たすか否かに基づいて、前記ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含む、請求項2に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項4】
前記判定する段階は、前記第1波形の1階微分波形の単位距離当たりの差分が、予め定められた変化パターンを満たすか否かに基づいて、前記ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含む、請求項2に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項5】
前記導出する段階は、前記第1波形を微分処理することで前記変化量を導出する段階を含む、請求項1または2に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項6】
前記導出する段階は、前記第1波形を2階微分することで第1波形の2階微分波形を前記変化量として導出する段階を含み、
前記判定する段階は、前記第1波形の2階微分波形に基づいて、ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含む、請求項5に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項7】
前記判定する段階は、前記第1波形の2階微分波形上の極大点と極小点とに基づいて、前記ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含む、請求項6に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項8】
前記判定する段階は、前記第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差に基づいて、前記ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含む、請求項7に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項9】
前記取得する段階は、前記プレス成形品の予め定められた部位にレーザ光を照射して、前記予め定められた部位からの反射光を受光するレーザ変位計で計測された前記予め定められた部位の前記第1位置を含む2次元表面形状を示す前記第1波形を取得する段階を含む、請求項1から8の何れか1つに記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項10】
前記レーザ変位計は、前記予め定められた部位の長手方向とは異なる短手方向に延びるラインレーザ光を前記長手方向に沿って走査し、
前記取得する段階は、前記レーザ変位計で計測された前記予め定められた部位の長手方向に沿って前記第1位置とは異なる第2位置を含む2次元表面形状を示す第2波形を取得する段階を含み、
前記導出する段階は、前記第2波形を2階微分することで第2波形の2階微分波形を導出する段階を含み、
前記判定する段階は、前記第1波形の2階微分波形及び前記第2波形の2階微分波形に基づいて、前記ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含む、請求項9に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項11】
前記判定する段階は、前記第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差、及び前記第2波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上である場合、前記予め定められた部位に前記ネッキングが発生していると判定する段階を含む、請求項10に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項12】
前記取得する段階は、白色光源を利用する白色干渉計または光コム干渉を利用する光コム距離計の計測結果から前記第1波形を取得する段階を含む、請求項1から8の何れか一項に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項13】
前記判定する段階は、前記第1波形の2階微分波形がネッキングの発生が高いことを示す予め定められた波形パターンを満たすか否かに基づいて、ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を含み、
前記予め定められた波形パターンは、実際にネッキングの発生した波形パターンを機械学習することで、順次更新される、請求項1から12の何れか一項に記載のプレス成形品のネッキング判定方法。
【請求項14】
プレス成形品の予め定められた部位の第1位置を含む2次元表面形状を示す第1波形を取得する取得部と、
前記第1波形の変化量を導出する導出部と、
前記第1波形の変化量に基づいて、ネッキングが前記予め定められた部位に発生しているか否かを判定する判定部と
を備えるプレス成形品のネッキング判定装置。
【請求項15】
請求項1から13の何れか1つに記載のプレス成形品のネッキング判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形品のネッキング判定方法、及びネッキング判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レーザ超音波深傷装置により被検査体の表面に依存するプレス不良の存在する位置を特定し、パルス式赤外線検査装置により取得されたプレス不良の赤外線撮影画像を解析することで、プレス不良のサイズを特定することが開示されている。特許文献2には、対向配置された2基のレーザ変位計で計測された測定物までの距離と、2基のレーザ変位計の距離との差分に基づいて測定物の厚さを測定することが記載されている。
【0003】
特許文献1 特開2006-170684号公報
【0004】
特許文献2 特開2010-44027号公報
【解決しようとする課題】
【0005】
自動車骨格部品などに利用されるプレス成形品には、局所的な伸び変形により板厚が局所的に減少するなどのネッキングが発生することがある。このようなネッキングの有無を特許文献1のように画像により判別することが困難な場合がある。また、特許文献2のように、複数のレーザ変位計を利用する場合、設置スペースを確保することが困難な場合がある。
【一般的開示】
【0006】
本発明の一態様に係るプレス成形品のネッキング判定方法は、プレス成形品の予め定められた部位の第1位置を含む2次元表面形状を示す第1波形を取得する段階を備えてよい。プレス成形品のネッキング判定方法は、第1波形の変化量を導出する段階を備えてよい。プレス成形品のネッキング判定方法は、第1波形の変化量に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定する段階を備えてよい。
【0007】
判定する段階は、変化量が予め定められた変化パターンを満たす場合、ネッキングが予め定められた部位に発生していると判定してよい。判定する段階は、第1波形の単位距離当たりの差分が、予め定められた変化パターンを満たすか否かに基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。判定する段階は、第1波形の1階微分波形の単位距離当たりの差分が、予め定められた変化パターンを満たすか否かに基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。
【0008】
導出する段階は、第1波形を微分処理することで前記変化量を導出してよい。
【0009】
導出する段階は、第1波形を2階微分することで第1波形の2階微分波形を変化量として導出してよい。判定する段階は、第1波形の2階微分波形に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。
【0010】
判定する段階は、第1波形の2階微分波形上の極大点と極小点とに基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。
【0011】
判定する段階は、第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。
【0012】
取得する段階は、プレス成形品の予め定められた部位にレーザ光を照射して、予め定められた部位からの反射光を受光するレーザ変位計で計測された予め定められた部位の第1位置を含む2次元表面形状を示す第1波形を取得してよい。
【0013】
レーザ変位計は、予め定められた部位の長手方向とは異なる短手方向に延びるラインレーザ光を長手方向に沿って走査してよい。取得する段階は、レーザ変位計で計測された予め定められた部位の長手方向に沿って第1位置とは異なる第2位置を含む2次元表面形状を示す第2波形を取得してよい。導出する段階は、第2波形を2階微分することで第2波形の2階微分波形を導出してよい。判定する段階は、第1波形の2階微分波形及び第2波形の2階微分波形に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。
【0014】
判定する段階は、第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差、及び第2波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上である場合、予め定められた部位にネッキングが発生していると判定する段階を含んでよい。取得する段階は、白色光源を利用する白色干渉計の計測結果から第1波形を取得する段階を含んでよい。判定する段階は、第1波形の2階微分波形がネッキングの発生が高いことを示す予め定められた波形パターンを満たすか否かに基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定してよい。予め定められた波形パターンは、実際にネッキングの発生した波形パターンを機械学習することで、順次更新されてよい。
【0015】
本発明の一態様に係るプレス成形品のネッキング判定装置は、プレス成形品の予め定められた部位の第1位置を含む2次元表面形状を示す第1波形を取得する取得部を備えてよい。プレス成形品のネッキング判定装置は、第1波形の変化量を導出する導出部を備えてよい。プレス成形品のネッキング判定装置は、第1波形の変化量に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定する判定部を備えてよい。
【0016】
本発明の一態様に係るプログラムは、上記プレス成形品のネッキング判定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであってよい。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】プレス成形品の検査システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】プレス成形品のネッキング検査の対象となる部位を測定する手法を説明するための一例を示す図である。
【
図3】一実施形態に係るネッキング判定装置の機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4A】ネッキング検査の対象となる部位の任意の位置において計測した波形、計測した波形を1階微分した1階微分波形、及び2階微分した2階微分波形の一例を示す図である。
【
図4B】ネッキング検査の対象となる部位の任意の位置において計測した波形、計測した波形を1階微分した1階微分波形、及び2階微分した2階微分波形の一例を示す図である。
【
図5】プレス成形品のネッキング判定するための手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0020】
本発明の様々な実施形態は、フローチャート及びブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置の「部」を表わしてよい。特定の段階及び「部」が、プログラマブル回路、及び/またはプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/またはアナログハードウェア回路を含んでよい。集積回路(IC)及び/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。再構成可能なハードウェア回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含んでよい。
【0021】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0022】
コンピュータ可読命令は、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコードまたはオブジェクトコードの何れかを含んでよい。ソースコードまたはオブジェクトコードは、従来の手続型プログラミング言語を含む。従来の手続型プログラミング言語は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語でよい。コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。プロセッサまたはプログラマブル回路は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0023】
図1は、プレス成形品800の検査システム1の概略的な構成を示す図である。検査システム1は、制御装置100、トラッキング撮像部200、ネッキング測定部300、外観撮像部400、整列処理部500、ベルトコンベア700、良品用容器900及び不良品用容器902を備える。制御装置100は、ネッキング判定装置の一例である。
【0024】
トラッキング撮像部200、ネッキング測定部300、外観撮像部400、整列処理部500、及びベルトコンベア700は、ネットワーク600を介して制御装置100に接続されてよい。ベルトコンベア700は、プレス加工が施されたプレス成形品800をトラッキング撮像部200、ネッキング測定部300、外観撮像部400、及び整列処理部500による処理が行われる位置に搬送する。プレス成形品800は、硬鋼、軟鋼、アルミニウム、チタンまたは銅などの金属材料からなる板材を、プレス成形装置によりプレス成形することで製造される。プレス成形品800は、例えば、自動車骨格部品などである。
【0025】
検査システム1は、トラッキング撮像部200により撮像されたプレス成形品800の画像に基づいて、プレス成形品800の予め定められた部位の位置情報を特定する工程を実行する。制御装置100は、特定したネッキング検査の対象となる部位の位置情報をネッキング測定部300に提供する。ベルトコンベア700は、ネッキング測定部300による処理が行われる位置にプレス成形品800を搬送する。
【0026】
次に、検査システム1は、ネッキング測定部300を用いて、プレス成形品800の予め定められた部位にネッキングが発生しているか否かを判定する工程を実行する。ネッキング測定部300は、パラレルリンク部310及び変位計測部320を有する。パラレルリンク部310は、リンク機構を有する。リンク機構は、3対のリンクにより構成されてよい。各対のリンクは、互いに並列に配置されてよい。
【0027】
変位計測部320は、リンク機構に連結されたレーザ変位計を有する。レーザ変位計は、2次元レーザ変位計でよい。ネッキング測定部300は、制御装置100から提供された位置情報に基づいて、3対のリンクを動作させ、ネッキング検査の対象となる部位の計測位置にレーザ変位計を位置合わせする。レーザ変位計は、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位を厚み方向でみた片側のみに配置されてよい。レーザ変位計は、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位にレーザ光を照射し、その部位からの反射光を受光する。レーザ変位計は、その反射光からネッキング検査の対象となる部位の計測位置を含む2次元表面形状を測定する。
【0028】
制御装置100は、レーザ変位計により計測されたネッキング検査の対象となる部位の計測位置を含む2次元表面形状を示す波形を取得する。制御装置100は、取得した波形に基づいて、局所的な伸び変形により板厚が局所的に減少したり、局所的に亀裂が発生したりするネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定する。ベルトコンベア700は、外観撮像部400による処理が行われる位置にプレス成形品800を搬送する。
【0029】
次に、検査システム1は、外観撮像部400により撮像されたプレス成形品800の画像に基づいて、プレス成形品800の傷、凹み、歪み、亀裂、汚れなどの不良個所の有無を判定する工程を実行する。制御装置100は、外観撮像部400により送信されたプレス成形品800の画像を受信する。制御装置100は、受信したプレス成形品800の画像に基づいて、例えば、傷や、凹み、歪み、亀裂、汚れなどの不良個所がプレス成形品800に存在するか否かを判定してよい。制御装置100は、判定結果に基づいて、整列処理部500に、プレス成形品800を良品用容器900または不良品用容器902へ移動させる旨の指示情報を整列処理部500に送信する。ベルトコンベア700は、整列処理部500により処理が行われる位置にプレス成形品800を搬送する。
【0030】
最後に、検査システム1は、整列処理部500を用いてプレス成形品800を良品用容器900及び不良品用容器902に振り分ける工程を実行する。整列処理部500は、パラレルリンク部510及びグリッパー部520を有する。パラレルリンク部510は、リンク機構を有し、リンク機構は、3対のリンクにより構成されてよい。各対のリンクは、互いに並列に配置されてよい。グリッパー部520は、マグネット吸着によってプレス成形品800を保持するグリッパーを有する。整列処理部500は、制御装置100から受信した指示情報に従って、不良個所が存在しない、すなわち良品と判定されたプレス成形品800を良品用容器900に収容する。一方、整列処理部500は、不良個所が存在する、すなわち不良品と判定されたプレス成形品800を不良品用容器902に収容する。
【0031】
図2は、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位を測定する手法を説明するための一例を示す図である。ネッキング検査の対象となる部位は、予め定められた部位である。
図2に示すネッキング検査の対象となる部位810は、一例として、プレス成形品800の端部において絞り加工が施された箇所である。
図2では、絞り加工が施された箇所を含む2本の点線の内側の領域をネッキング検査の対象となる範囲として示す。一実施形態において、プレス成形品800の端部において絞り加工が施された部位の絞り方向に面上で垂直な方向を長手方向812として定義する。
【0032】
ネッキング検査の対象となる部位は、プレス成形品の金型の形状に基づいて定められてよい。ネッキング検査の対象となる部位は、プレス加工において成形される部品の形状の変化を、破断予測などを演算するシミュレーション装置を用いてシミュレーションすることにより、局所的な伸び変形により板厚が局所的に減少したり、局所的に亀裂が発生したりするネッキングが生じやすい部位であると判定された部位であってよい。ネッキング検査の対象となる部位は、プレス成形の対象となる部品に類似するプレス成形品において、ネッキングが生じやすい部位であると作業者が特定した部位であってよい。
【0033】
レーザ変位計324は、帯状のラインレーザ光325を部位810に照射し、反射光326を受光する。ネッキングは、例えば、絞り加工された部位810の長手方向812に沿って発生する可能性がある。レーザ変位計324は、長手方向812に沿って移動して、順次、ラインレーザ光325を部位810に照射して、部位810内の複数の箇所の2次元表面形状を計測してよい。レーザ変位計324は、帯状のラインレーザ光325の幅方向327が部位810の長手方向812と異なる方向になるように、ラインレーザ光325を部位810に照射する。レーザ変位計324は、帯状のラインレーザ光325の幅方向327が部位810の長手方向812に対して交差するように、ラインレーザ光325を部位810に照射してよい。レーザ変位計324は、帯状のラインレーザ光325の幅方向が部位810の長手方向812に対して垂直になるように、ラインレーザ光325を部位810に照射してよい。部位810が曲線状に延びる場合には、レーザ変位計324は、帯状のラインレーザ光325の幅方向327の直線が部位810の長手方向812の曲線と交わる点の接線に対して、帯状のラインレーザ光325の幅方向327の直線が垂直になるように、ラインレーザ光325を部位810に照射してよい。なお、本実施形態では、レーザ変位計324を、プレス成形品800の部位810まで移動させて、ラインレーザ光325を部位810に照射する例について説明する。しかし、プレス成形品800を移動することで、予め定められた位置に設置されたレーザ変位計324のラインレーザ光325を部位810に照射してもよい。また、レーザ変位計324及びプレス成形品800を互いに移動させることで、レーザ変位計324のラインレーザ光325を部位810に照射してもよい。
【0034】
パラレルリンク部310は、制御装置100から提供された位置情報に基づいて、3対のリンクを動作させ、ネッキング検査の対象となる部位の長手方向の端部に変位計測部320のレーザ変位計324を位置合わせする。レーザ変位計324は、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位を厚み方向でみた片側のみに配置されてよい。レーザ変位計324は、ネッキング検査の対象となる部位の長手方向とは異なる短手方向に延びるラインレーザ光を長手方向に沿って照射する。パラレルリンク部310は、レーザ変位計324を長手方向に沿って移動させる。レーザ変位計324で計測された波形は、ネッキング検査の対象となる部位の任意の位置における短手方向の2次元表面形状を示す。
【0035】
図3は、一実施形態に係るネッキング判定装置の機能ブロックの一例を示す図である。制御装置100は、主制御部110、ネッキング検査部120、トラッキング部130、及び外観検査部140を備える。ネッキング検査部120は、変位取得部122、導出部124、及びネッキング判定部126を有する。外観検査部140は、画像取得部142及び外観判定部144を有する。主制御部110は、バスを介して、ネッキング検査部120、トラッキング部130、及び外観検査部140に接続されてよい。一実施形態において、制御装置100は、ネッキング判定装置またはコンピュータの一例である。ネッキング検査部120及び変位取得部122はそれぞれ、検査部及び取得部の一例である。主制御部110、ネッキング検査部120、トラッキング部130、及び外観検査部140のそれぞれは、別々のコンピュータで構成されてもよい。
【0036】
主制御部110は、ネットワーク600を介して、トラッキング撮像部200、パラレルリンク部310、変位計測部320、外観撮像部400、パラレルリンク部510、及びグリッパー部520に接続されてよい。パラレルリンク部310は、制御部312及びリンク部314を有する。変位計測部320は、制御部322及びレーザ変位計324を有する。パラレルリンク部510は、制御部512及びリンク部514を有する。グリッパー部520は、制御部522及びハンド部524を有する。ハンド部524は、マグネット吸着によってプレス成形品800を保持するグリッパーであってよい。
【0037】
トラッキング撮像部200は、ベルトコンベア700の予め定められたトラッキング領域を予め定められた間隔で撮像する。トラッキング領域の幅は、ベルトコンベア700のベルトの幅(搬送方向に直交する方向)と同等でよい。トラッキング領域の長さ(搬送方向)は、撮像間隔、及びベルトコンベア700のベルトの移動速度に基づいて、ベルトコンベア700上を搬送される全てのプレス成形品800が撮像できるように、適宜設定されてよい。
【0038】
トラッキング撮像部200は、撮像用の照明により照らされたプレス成形品800を撮像してよい。トラッキング撮像部200は、撮像用の照明によりプレス成形品800を照らすことで、プレス成形品800の表面に影のない画像を撮像できる。トラッキング撮像部200により撮像されたプレス成形品800の画像は、主制御部110を介してトラッキング部130に送信される。トラッキング部130は、トラッキング撮像部200がプレス成形品800を撮像したときのプレス成形品800の位置を特定する。トラッキング部130は、トラッキング領域内の予め定められた位置に対するプレス成形品800の相対的な位置を検出する。例えば、トラッキング部130は、画像をエッジ処理することによりプレス成形品800の輪郭を抽出し、抽出された輪郭に基づいて、トラッキング領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800の各軸(x軸、y軸、及びz軸)の座標値、及び各軸の回転方向の座標値をプレス成形品800の位置を示す座標情報として特定する。トラッキング部130は、プレス成形品800の位置を示す座標情報と、ベルトコンベア700の移動量を計測するエンコーダによるトラッキング撮像部200の撮影時の計測値とを主制御部110を介してパラレルリンク部310に送信する。
【0039】
パラレルリンク部310の制御部312は、座標情報及び計測値と、ベルトコンベア700によるプレス成形品800の移動量とに基づいて、変位計測部320が計測する計測領域でのプレス成形品800の位置を示す座標情報を特定する。制御部312は、計測領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800の各軸の座標値、及び各軸の回転方向の座標値を座標情報として特定してよい。
【0040】
さらに、制御部312は、計測領域内のプレス成形品800の座標情報と、プレス成形品800の基準点に対するネッキング検査の対象となる部位の相対的な位置を示す予め定められた位置情報とに基づいて、計測領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位の各軸の座標値、及び各軸の回転方向の座標値を、ネッキング検査の対象となる部位の座標情報として特定する。制御部312は、計測領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位の座標情報に基づいて、リンク部314を動作させ、ネッキング検査の対象となる部位の計測位置にレーザ変位計324を位置合わせしてよい。
【0041】
レーザ変位計324は、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位を厚み方向でみた片側のみに配置されてよい。制御部322は、レーザ変位計324に、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位の計測位置にレーザ光を照射させる。制御部312は、リンク部314を動作させて、レーザ変位計324をネッキング検査の対象となる部位の長手方向に移動させる。レーザ変位計324は、ネッキング検査の対象となる部位の長手方向とは異なる短手方向に延びるラインレーザ光を長手方向に沿って走査してよい。レーザ変位計324は、ネッキング検査の対象となる部位の複数の計測位置からの反射光を受光する。制御部322は、レーザ変位計324で計測された複数の計測位置を含む2次元表面波形を示す複数の波形データを主制御部110に送信する。
【0042】
主制御部110は受信した波形データをネッキング検査部120に送信する。ネッキング検査部120の変位取得部122は、複数の計測位置を含む2次元表面形状を示す複数の波形を取得する。導出部124は、取得した複数の波形のそれぞれを2階微分することで各波形の2階微分波形を導出する。ネッキング判定部126は、各波形の2階微分波形に基づいて、局所的な伸び変形により板厚が局所的に減少したり、局所的に亀裂が発生したりするネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定する。
【0043】
ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形がネッキングの発生が高いことを示す予め定められたネッキング発生条件を満たすか否かに基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形がネッキングの発生が高いことを示す予め定められた波形パターンを満たすか否かに基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。予め定められた波形パターンは、実際にネッキングの発生した波形パターンを機械学習することで、順次更新されてよい。ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形の振幅がネッキングの発生が高いことを示す予め定められた振幅以上か否かに基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形上の極大点と極小点とに基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差に基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。ネッキング判定部126は、2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差が予め定められた閾値以上である場合、その2階微分波形が予め定められたネッキング発生条件を満たすと判定してよい。ネッキング判定部126は、複数の波形のうち第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差、及び複数の波形のうち第2波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上である場合、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していると判定してよい。ネッキング判定部126は、複数の計測位置の複数の2階微分波形のうち、予め定められた数以上の2階微分波形が連続的に予め定められたネッキング発生条件を満たす場合に、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していると判定してよい。
【0044】
外観撮像部400は、プレス成形品800を撮像し、撮像したプレス成形品800の画像データを主制御部110へ送信する。主制御部110は、受信した画像データを外観検査部140の画像取得部142へ送信する。外観判定部144は、受信したプレス成形品800の画像データに基づいて、例えば、傷や、凹み、歪み、汚れなどの不良個所がプレス成形品800に存在するか否かを判定してよい。外観判定部144は、予め定められた良品のプレス成形品800の画像と、受信したプレス成形品800の画像とのマッチングを行い、互いの画像内のプレス成形品の類似度が予め定められた閾値以下である場合、画像内のプレス成形品800に不良個所があると判定してよい。外観判定部144は、予め定められた不良個所の形状及び色(例えば、白及び黒)のパターンと、受信したプレス成形品800の画像とのマッチングを行うことより、画像内のプレス成形品800に不良個所があるか否かを判定してよい。外観判定部144は、判定結果を主制御部110に送信する。主制御部110は、判定結果に基づいて、整列処理部500に、プレス成形品800を良品用容器900または不良品用容器902へ移動させる旨の指示情報を整列処理部500に送信する。
【0045】
整列処理部500の制御部512は、主制御部110から受信した指示情報に従って、リンク部514を動作させて、ハンド部524をプレス成形品800に接触させる。グリッパー部520の制御部522は、ハンド部524を動作させて、プレス成形品800を吸着させる。制御部512は、リンク部514を動作させて、不良個所が存在しない、すなわち良品と判定されたプレス成形品800を良品用容器900に収容する。制御部512は、リンク部514を動作させて、不良個所が存在する、すなわち不良品と判定されたプレス成形品800を不良品用容器902に収容する。
【0046】
図4Aは、ネッキング検査の対象となる部位の任意の位置において計測した波形、計測した波形を1階微分した1階微分波形、及び2階微分した2階微分波形の一例を示す図である。
図4Aに示す測定データのグラフは、ネッキング検査の対象となる部位の任意の位置の断面形状、すなわち2次元表面形状を表す。レーザ変位計324をネッキング検査の対象となる部位の長手方向に移動させることで、ネッキング検査の対象となる部位の連続的な位置における2次元表面形状が次々と得られる。
【0047】
ネッキング判定部126は、取得した波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差が予め定められた閾値以上である場合、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していると判定してよい。
図4Aに示す2階微分したグラフには、0点を交差する変曲点が存在しない。したがって、
図4Aに示す2階微分したグラフには、波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差が予め定められた閾値以上であることを示す波形は存在しない。この場合、ネッキング判定部126は、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していないと判定してよい。
【0048】
図4Bは、ネッキング検査の対象となる部位の任意の位置において計測した波形、計測した波形を1階微分した1階微分波形、及び2階微分した2階微分波形の一例を示す図である。
図4Bに示す2階微分したグラフにおいて、0点と交差する前後で一度大きく下がった後に大きく上がる変曲点がネッキング部1000で囲われる範囲に存在する。ネッキング部1000で囲われる範囲に存在する波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差が予め定められた閾値以上を表している場合、ネッキング判定部126は、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していると判定してよい。
【0049】
ネッキング検査の手法として他の手法が挙げられる。この手法では、まず、測定したデータの波形を拡大する。次に、波形のカーブしている箇所の曲率半径を算出する。そして、算出した曲率半径が閾値より大きいか否かを判定することで、ネッキングが発生しているか否かを判定する。この手法によれば、プレス加工の対象となる部品の形状に応じて曲率半径の閾値を定めなければならない。プレス加工の対象となる部品の形状ごとに、その都度、曲率半径の閾値を定めなければならず、手間がかかる。一実施形態におけるネッキングを判定する手法によれば、2階微分を行って変曲率をグラフ化することで、局所的な変化、すなわち、ネッキングを見つけることができる。一実施形態におけるネッキングを判定する手法によれば、2基のレーザ変位計324を用いなくても、ネッキング検査の対象となる部位の2次元表面形状からネッキングの有無を判定することができる。
【0050】
図5は、プレス成形品800のネッキングを判定するための手順の一例を示すフローチャートである。トラッキング部130は、トラッキング処理によりプレス成形品800の位置を特定する(S100)。トラッキング部130は、トラッキング撮像部200により撮像されたプレス成形品800の画像を解析して、プレス成形品800の位置を特定してよい。トラッキング部130は、画像認識処理により、トラッキング領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800の各軸の座標値、及び各軸の回転方向の座標値を示す座標情報を、プレス成形品800の位置として特定してよい。
【0051】
パラレルリンク部310の制御部312は、ネッキング検査の対象となる部位を特定する(S102)。制御部312は、プレス成形品800の座標情報、及びトラッキング撮像部200のトラッキング領域から変位計測部320の計測領域までのプレス成形品800の移動量に基づいて、計測領域でのプレス成形品800の位置を示す座標情報を特定してよい。制御部312は、計測領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800の各軸の座標値、及び各軸の回転方向の座標値を座標情報として特定してよい。さらに、制御部312は、計測領域内のプレス成形品800の座標情報と、プレス成形品800の基準点に対するネッキング検査の対象となる部位の相対的な位置を示す予め定められた位置情報とに基づいて、計測領域内の予め定められた位置を基準とした、プレス成形品800のネッキング検査の対象となる部位の各軸の座標値、及び各軸の回転方向の座標値を、ネッキング検査の対象となる部位の座標情報として特定してよい。
【0052】
変位取得部122が、レーザ変位計324で計測されたネッキング検査の対象となる部位内の複数の位置のそれぞれを含む2次元表面形状を示す複数の波形を取得する(S104)。導出部124は、複数の波形のそれぞれを2階微分することで複数の波形の2階微分波形を導出する(S106)。
【0053】
ネッキング判定部126は、複数の2階微分波形のそれぞれがネッキング発生条件を満たすか否かを判定する(S108)。ネッキング判定部126は、各波形の2階微分波形に基づいて、局所的な伸び変形により板厚が局所的に減少したり、局所的に亀裂が発生したりするネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形上の極大点と極小点とに基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。ネッキング判定部126は、取得した各波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差に基づいて、ネッキングがネッキング検査の対象となる部位に発生しているか否かを判定してよい。
【0054】
ネッキング判定部126は、複数の波形のうち第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差、及び複数の波形のうち第2波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上である場合、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していると判定してよい(S110)。ネッキング判定部126は、複数の2階微分波形のうち、予め定められた数以上の連続する2階微分波形が、互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上となるネッキング発生条件を満たす場合に、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していると判定してよい。ネッキング判定部126は、複数の波形のうち第1波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差、及び複数の波形のうち第2波形の2階微分波形上の互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上でない場合、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していないと判定してよい(S112)。ネッキング判定部126は、複数の2階微分波形のうち、予め定められた数以上の連続する2階微分波形が、互いに隣接し、かつ間にゼロ点を含む極大点と極小点との差がそれぞれ予め定められた閾値以上となるネッキング発生条件を満たさない場合に、ネッキング検査の対象となる部位にネッキングが発生していないと判定してよい。
【0055】
外観検査部140は、カメラで撮像されたプレス成形品800の外観検査を行う(S114)。画像取得部142は、外観撮像部400により撮像されたプレス成形品800の画像を取得してよい。外観判定部144は、画像取得部142で取得したプレス成形品800の画像データに基づいて、例えば、傷や、凹み、歪み、汚れなどの不良個所がプレス成形品800に存在するか否かを判定してよい。
【0056】
主制御部110は、ネッキング発生条件及び外観検査の条件の両方の条件を満たすか否か判定してよい(S116)。プレス成形品800にネッキングが発生しておらず、かつ、不良個所が存在していない場合、主制御部110は、プレス成形品800を良品と判定する(S118)。プレス成形品800にネッキングが発生している、または、不良個所が存在している場合、主制御部110は、プレス成形品800を不良品と判定する(S120)。主制御部110は、判定結果に従って、整列処理部500にプレス成形品800を良品用容器900または不良品用容器902へ移動させ、良品を梱包し、処理を終了する。
【0057】
一実施形態におけるネッキングを判定する手法によれば、ネッキングが発生しているか否かをプレス成形品の片側から検査することができるので、ネッキング検査用の設備をコンパクトにでき、かつ、設備のコストを低減できる。2基のレーザ変位計324を用いなくても、ネッキング検査の対象となる部位の2次元表面形状からネッキングの有無を判定することができ、レーザ変位計324の設置スペースが確保しやすくなる。
【0058】
一実施形態におけるネッキングを判定する手法によれば、2次元表面形状の曲率半径に基づいてネッキングを判定する手法のように、検査対象のプレス成形品の形状ごとに判定基準のパラメータを調整する必要がない。したがって、プレス成形品のネッキングの判定の負担を低減できる。
【0059】
なお、上記の実施形態では、変位取得部122が、レーザ変位計324で計測されたネッキング検査の対象となる部位の2次元表面形状を示す波形を取得する例について説明した。しかし、変位取得部122は、ネッキング検査の対象となる部位の2次元表面形状を示す波形を取得できるのであれば、レーザ変位計以外の計測器からの計測結果から2次元表面形状を示す波形を取得してよい。変位取得部122は、白色光源を利用する白色干渉計または光コム干渉を利用する光コム距離計の計測結果から2次元表面形状を示す波形を取得してもよい。
【0060】
また、ネッキング判定部126は、2階微分波形が予め定められたネッキング発生条件を満たすか否かに基づいて、プレス成形品800のネッキングを判定する例について説明した。しかし、ネッキング判定部126は、2次元表面形状を示す波形の変化量に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定できればよい。ネッキング判定部126は、2次元表面形状を示す波形の単位距離当たりの変化量に基づいて、ネッキングが予め定められた部位に発生しているか否かを判定できればよい。ネッキング判定部126は、例えば、2次元表面形状を示す波形の単位距離当たりの差分、または2次元表面形状を示す波形の1階微分波形の単位距離当たりの差分が、予め定められた変化パターンを満たすか否かに基づいて、プレス成形品800のネッキングを判定してもよい。例えば、亀裂によるネッキングが生じている場合、2次元表面形状を示す波形の1階微分波形でも、振幅が大きくなる。したがって、ネッキング判定部126は、2次元表面形状を示す波形の1階微分波形に基づいて、亀裂によるネッキングの有無を容易に判定できる。
【0061】
図6は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ1200の一例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーションまたは当該装置の1または複数の「部」として機能させることができる。または、当該プログラムは、コンピュータ1200に当該オペレーションまたは当該1または複数の「部」を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつかまたは全てに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。
【0062】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、及びRAM1214を含み、それらはホストコントローラ1210によって相互に接続されている。コンピュータ1200はまた、通信インタフェース1222、入力/出力ユニットを含み、それらは入力/出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続されている。コンピュータ1200はまた、ROM1230を含む。CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0063】
通信インタフェース1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブが、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納してよい。ROM1230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/またはコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。プログラムが、CR-ROM、USBメモリまたはICカードのようなコンピュータ可読記録媒体またはネットワークを介して提供される。プログラムは、コンピュータ可読記録媒体の例でもあるRAM1214、またはROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーションまたは処理を実現することによって構成されてよい。
【0064】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、またはUSBメモリのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0065】
また、CPU1212は、USBメモリ等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0066】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0067】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上またはコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ1200に提供する。
【0068】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0069】
1 検査システム
100 制御装置
110 主制御部
120 ネッキング検査部
122 変位取得部
124 導出部
126 ネッキング判定部
130 トラッキング部
140 外観検査部
142 画像取得部
144 外観判定部
200 トラッキング撮像部
300 ネッキング測定部
310 パラレルリンク部
312 制御部
314 リンク部
320 変位計測部
322 制御部
324 レーザ変位計
325 ラインレーザ光
400 外観撮像部
500 整列処理部
510 パラレルリンク部
512 制御部
514 リンク部
520 グリッパー部
522 制御部
524 ハンド部
600 ネットワーク
700 ベルトコンベア
800 プレス成形品
810 部位
900 良品用容器
902 不良品用容器
1000 ネッキング部
1200 コンピュータ
1210 ホストコントローラ
1212 CPU
1214 RAM
1220 入力/出力コントローラ
1222 通信インタフェース
1230 ROM