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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】魚肉カット器具
(51)【国際特許分類】
   A22C 25/20 20060101AFI20220405BHJP
   A47J 47/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A22C25/20
A47J47/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021050334
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2021-10-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518245652
【氏名又は名称】三屋 俊行
(74)【代理人】
【識別番号】100181630
【弁理士】
【氏名又は名称】原 晶子
(72)【発明者】
【氏名】三屋 俊行
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-157156(JP,A)
【文献】特開昭53-114585(JP,A)
【文献】特公昭47-029990(JP,B1)
【文献】特開2000-210892(JP,A)
【文献】実開平02-111284(JP,U)
【文献】特開2000-116315(JP,A)
【文献】特開昭61-166349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 25/00-25/22
A47J 47/28
B26D 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生鮮の又は解凍されたマグロをカットするための魚肉カット器具であって、
刃先を同一方向に向け、所定間隔ごとに並列状態で保持された複数の包丁と、
台座と、
前記台座の上方に空間を隔てて設けられる矩形状のまな板と、
前記まな板の長手方向に沿って、互いに対向して前記台座又は前記まな板の上に垂直に設けられる平面視矩形状の一対の側部固定板と、
前記一対の側部固定板の間に嵌り、前記まな板と対向して設けられる平面視矩形状の上部固定板と、を備え、
前記まな板及び前記上部固定板には、前記包丁と同数の長手方向に沿った複数の溝が、短手方向に前記包丁と同じ間隔をあけて形成されており、
前記複数の包丁は、先端が前記まな板と前記台座との間の空間に達するように、前記複数の溝にそれぞれ差し込まれており、
前記上部固定板及び前記一対の側部固定板は、魚肉をカットするときに魚肉の上面及び両側面全体と接する位置に固定される魚肉カット器具。
【請求項2】
略直方体の箱状を有する包丁保持具をさらに備え、
前記包丁保持具は、上面及び下面に前記包丁を差し込むための差込孔と、左右の側面に前記包丁を固定するための固定部材を取り付けるための取付孔とを有し、
前記包丁は、刃が刺身包丁と略同じ形状を有し、中子が略長方形状でフラットな形状を有し、
前記中子は、前記包丁保持具に前記包丁を固定するための固定孔を有し、
前記包丁は、当該包丁を前記差込孔に差し込み、前記固定部材を前記取付孔及び前記固定孔に差し込むことで前記包丁保持具に取り付けられる請求項1に記載の魚肉カット器具。
【請求項3】
前記上部固定板は、上下方向に移動可能であり、
前記側部固定板の少なくとも一方は、前記まな板の短手方向に移動可能である請求項1又は2に記載の魚肉カット器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉カット器具に関し、特に魚肉を細い角柱状にカットするための魚肉カット器具に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で、鉄火巻きに代表される、細い略正四角柱状にカットした魚肉等を芯にして巻いた巻寿司が販売されている。この巻寿司の販売数は年々増加している。この巻寿司を作るためには、具材となる魚肉等を細い略正四角柱状にカットする必要がある。細い略四角柱状にカットする器具として、イカについては、一度にイカを千切り状にカットできるカット器具が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5754790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、厚みのある柵状の魚肉に対して特許文献1のようなカット器具を用いると、魚肉を薄い板状にしかカットできず、巻寿司に適さない。そのため、柵状の魚肉は、通常職人が手作業で細い略正四角柱状にカットしている。しかしながら、手作業では時間がかかってしまい、魚肉を効率よく細い略正四角柱状にカットできないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、柵状の魚肉を効率よく細い略正四角柱状にカットできる魚肉カット器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の魚肉カット器具は、刃先を同一方向に向け、所定間隔ごとに並列状態で保持された複数の包丁と、台座と、台座の上方に空間を隔てて設けられる矩形状のまな板と、まな板の長手方向に沿って、互いに対向して台座又は前記まな板の上に垂直に設けられる平面視矩形状の一対の側部固定板と、一対の側部固定板の間に、まな板と対向して設けられる平面視矩形状の上部固定板とを備える。まな板及び上部固定板には、包丁と同数の長手方向に沿った複数の溝が、短手方向に包丁と同じ間隔をあけて形成されている。複数の包丁は、複数の溝にそれぞれ差し込まれている。
【0007】
ここで「魚肉」とは、魚類の食肉のみでなく、例えば鯨肉等の食用海洋哺乳類の食肉を含むものとする。この点は、本明細書を通じて同義である。
【0008】
好ましい実施形態の魚肉カット器具では、上部固定板は、上下方向に移動可能である。
【0009】
また、好ましい実施形態の魚肉カット器具では、側部固定板の少なくとも一方は、まな板の短手方向に移動可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の魚肉カット器具は、所定間隔ごとに並列状態で保持された複数の包丁がまな板及び上部固定板を貫通して取り付けられている。まな板の上に柵状の魚肉を置き、柵状の魚肉を一対の側部固定板及び上部固定板で固定して、まな板及び上部固定板の溝に沿って複数の包丁を移動させると、柵状の魚肉が包丁の間隔の厚みを有する板状にカットされる。このカットされた魚肉を重ねた状態で、側部固定板に接していた面がまな板及び上部固定板に接するように90°回転させて、再び複数の包丁をまな板及び上部固定板の溝に沿って移動させると、魚肉が細い略正四角柱状にカットされる。このように2回包丁を動かすのみで、柵状の魚肉を効率よく細い略正四角柱状にカットすることができる。なお、ここで「細い」とは、一般に市販されている細巻きの具材に適するサイズを言う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る魚肉カット器具の斜視図である。
図2図1の魚肉カット器具の包丁部の斜視図である。
図3図1の魚肉カット器具の包丁の正面図である。
図4図1の魚肉カット器具の包丁保持具の平面図である。
図5図1の魚肉カット器具の載置台部の分解図である。
図6図1の魚肉カット器具の正面図で、柵状の魚肉を載置した状態を示す図である。
図7図1の魚肉カット器具で魚肉を1回カットした後の魚肉の状態を示す斜視図である。
図8図1の魚肉カット器具の正面図で、1回カットした後の魚肉を載置した状態を示す図である。
図9図1の魚肉カット器具で魚肉を2回カットした後の魚肉の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本発明の魚肉カット器具は、柵取りされた生鮮な魚肉又は解凍された魚肉をカットするものである。以下では、図1を基準として、魚肉カット器具1の高さ方向を上下方向、包丁部10を後側として包丁部10が移動する方向を前後方向、上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向として説明する。また、上下方向の長さを高さ、左右方向の長さを幅、前後方向の長さを単に長さと呼ぶ。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の魚肉カット器具1は、魚肉をカットするための包丁部10と、カットする魚肉を置くための載置台部20とから構成されている。
【0014】
図1図4に示すように、包丁部10は、複数の包丁11と、複数の包丁11を所定位置で保持する包丁保持具12とを備えている。本実施形態では、包丁部10は5本の包丁11を備えており、魚肉カット器具1は1回で魚肉を6分割にカットできる。
【0015】
包丁11は、一般に市販されている刺身包丁の刃の部分と略同じ形状を有している。この包丁11は、中子11aが刃から連続するフラットな形状となっている。包丁11の中子11aには、包丁保持具12に包丁11を固定するための固定孔111が形成されている。
【0016】
包丁保持具12は、略直方体の箱状を有している。包丁保持具12の上面及び下面には、包丁11を差し込むための差込孔121が、保持する包丁11の数、すなわち本実施形態では5個形成されている。差込孔121は、包丁11の刃先11bを前方向に向けた状態で包丁11の中子11aが差し込める大きさを有している。5個の差込孔121は、カットされた魚肉が所望の高さ及び幅となる間隔で包丁11を保持できるように、左右方向に所定の間隔をあけて一列に並んで形成されている。例えば、幅1cm×高さ1cm×長さ18cmのサイズに魚肉をカットしたい場合、包丁11の間隔が1cmとなるよう、1cm間隔で差込孔121が形成されている。
【0017】
包丁保持具12の左右の側面には、包丁11を所定の位置で固定するための固定部材13を取り付けるための取付孔122が形成されている。固定部材13は、両ネジボルト131と両ネジボルト131の両端に取り付けられるナット132とからなる。ナット132は、包丁11の固定及び取り外しを容易にするため、蝶ナットが好ましい。固定孔111及び取付孔122は、両ネジボルト131が挿通できる大きさを有している。
【0018】
また、包丁保持具12には、包丁部10を動かしやすくするためのグリップ14が設けられている。本実施形態では、包丁保持具12の左右の側面に、前後方向に延びる円筒状のグリップ14が、平板状の接続部材141によって一体的に設けられている。
【0019】
複数の包丁11は、以下のようにして包丁保持具12に取り付けられる。まず、包丁11の刃先11bを前方向に向け、包丁保持具12の下側から個別に包丁11を差込孔121に差し込む。それから、固定孔111及び取付孔122に両ネジボルト131を差し込み、左右両側からナット132を包丁保持具12の左右の側面に接するまで締め付ける。これにより、複数の包丁11は、カットされた魚肉が所望の高さ及び幅となる所定間隔をあけて包丁保持具12に並列状態で保持される。
【0020】
図1及び図5に示すように、載置台部20は、台座21と、まな板22と、一対の側部固定板23と、上部固定板24と、枠体25とを備えている。台座21は、矩形板状であり、まな板22、一対の側部固定板23、上部固定板24及び枠体25を載せることができる大きさを有している。
【0021】
まな板22は、一般的なサイズで柵取りされた魚肉が十分に載せられる大きさの矩形状を有している。まな板22には、長手方向に沿った溝221が、包丁部10が備える包丁11の数、すなわち本実施形態では5本形成されている。5本の溝221は、まな板22の短手方向の一方の端部、本実施形態では右側端部から、まな板12の短手方向に包丁11と同じ間隔をあけて形成されている。溝221の長さは、柵取りされた魚肉の最長辺を溝221に沿わせて魚肉をまな板22の上に載せた際に、魚肉の最長辺の端から端までがカットできる長さとなっている。溝221の幅は、包丁11の刃先11bが差し込める幅となっている。
【0022】
まな板22と台座21との間には脚26が設けられている。脚26は、まな板22を台座21の上方に空間を隔てて固定できれば任意の形態を取り得る。本実施形態では、脚26は、長手方向長さがまな板22の長手方向長さと同じ矩形状の板材2枚で構成されている。脚26は、2枚の板材がまな板22の短手方向長さ離間して互いに対向した状態で、脚26の短手方向が上下方向を向くようにして台座21の上面に一体的に取り付けられている。まな板22は、長手方向を脚26の長手方向を合わせた状態で、脚26の上端辺に一体的に取り付けられている。
【0023】
枠体25は、矩形状の側板25Aと矩形状の天板25Bとからなる。側板25Aと天板25Bとは、互いの長辺が一体的に接続されてL字状となっている。天板25Bは、まな板22と同じ大きさを有している。側板25Aは、まな板22の長手方向と同じ長さと、一般的なサイズで柵取りされた魚肉をまな板22と天板25Bとの間に収納できる高さとを有している。この枠体25は、側板25Aがまな板22の左側の長辺に沿うようにして、側板25Aを台座21に垂直に立てて台座21に取り付けられている。
【0024】
天板25Bには、まな板22の5本の溝221と対応する位置に、長手方向に沿って、まな板22の溝221と同じ寸法の5本の溝251が形成されている。また、天板25Bには、溝251が形成されていない部分に、側部固定板23を取り付けるための側部固定板取付溝252が形成されている。側部固定板取付溝252は、最も左側の溝251付近から、天板25Bの左端部まで左右方向に延びており、天板25Bの長手方向に所定間隔をあけて複数本、本実施形態では3本形成されている。
【0025】
一対の側部固定板23は、右側部固定板23A及び左側部固定板23Bからなり、まな板22の長手方向と同じ長手方向長さの平面視矩形状を有している。本実施形態では、右側部固定板23Aは、側板25Aと同じ大きさの板材で構成されている。右側部固定板23Aは、まな板22の右側の長辺に沿うようにして台座21に垂直に設けられ、上辺が枠体25の天板25Bの右辺と一体的に接続されている。右側部固定板23Aには、上部固定板24を取り付けるための上部固定板取付溝231が形成されている。上部固定板取付溝231は、右側部固定板23Aの上端部から下端部まで上下方向に延びており、右側部固定板23Aの長手方向に所定間隔をあけて複数本、本実施形態では3本形成されている。
【0026】
左側部固定板23Bは、矩形状の板材の対向する一組の辺を同方向に90°折り曲げた断面U字状に形成されている。具体的には、左側部固定板23Bは、本体部23Baと、本体部23Baの上部及び下部を折り曲げてなる折曲部23Bbとからなる。本体部23Baは、まな板22の長さと同じ長さを有し、まな板22と天板25Bとの間の距離と同じ高さを有している。上側の折曲部23Bbには、側部固定板取付部材27が取り付けられている。側部固定板取付部材27は、ボルト271とナット272とからなる。ナット272は、着脱を容易にできる蝶ナットが好ましい。側部固定板取付部材27は、左側部固定板23Bがまな板22の上に垂直に設けられた際に側部固定板取付溝252に対応する位置に設けられている。
【0027】
左側部固定板23Bは、まな板22の最も左側の溝221の左側に、右側部固定板23Aと対向するように、まな板22の上に垂直に設けられている。具体的には、左側部固定板23Bは、まな板22の上に下側の折曲部23Bbを載置した状態で、上側の折曲部23Bbに取り付けられているボルト271を側部固定板取付溝252に差し込み、ナット272で天板25Bの上側から固定することで、側部固定板取付部材27によって枠体25に取り付けられている。この左側部固定板23Bは、側部固定板取付溝252に沿ってまな板22の短手方向に動かすことができる。
【0028】
上部固定板24は、矩形状の板材の対向する一組の辺を同方向に90°折り曲げた断面U字状に形成されており、上方から視認すると平面視矩形状を有している。具体的には、上部固定板24は、本体部24aと、本体部24aの左右部を折り曲げてなる折曲部24bとからなる。本体部24aは、まな板22の長さと同じ長さを有し、一対の側部固定板23の間に嵌る幅を有している。本体部24aには、まな板22の5本の溝221と対応する位置に、長手方向に沿って、まな板22の溝221と同じ寸法の5本の溝241が形成されている。右側の折曲部24bには、上部固定板取付部材28が取り付けられている。上部固定板取付部材28は、ボルト281とナット282とからなる。ナット282は、着脱を容易にできる蝶ナットが好ましい。上部固定板取付部材28は、上部固定板24がまな板22に対向して設けられた際に上部固定板取付溝231に対応する位置に設けられている。
【0029】
上部固定板24は、一対の側部固定板23の間に、まな板22と対向して設けられている。具体的には、上部固定板24は、右側部固定板23Aに右側の折曲部24bを接した状態で、右側の折曲部24bに取り付けられているボルト281を上部固定板取付溝231に差し込み、ナット282で右側部固定板23Aの右側から固定することで、上部固定板取付部材28によって右側部固定板23Aに取り付けられている。この上部固定板24は、上部固定板取付溝231に沿って上下方向に動かすことができる。
【0030】
魚肉カット器具1は、複数の包丁11が、枠体25の複数の溝251、上部固定板24の複数の溝241及びまな板22の複数の溝221にそれぞれ差し込まれて組み立てられる。このとき、包丁11の先端が、まな板22と台座21との間の空間に達するところまで差し込まれる。
【0031】
次に、図6図9を参照して、本実施形態の魚肉カット器具1を用いて魚肉Fを細い略正四角柱状にカットする方法について説明する。本実施形態では、5本の包丁11を備えた魚肉カット器具1で1回の操作で魚肉Fを6分割し、幅1cm×高さ1cm×長さ18cmの細い略正四角柱状に魚肉Fをカットするものとして説明する。
【0032】
まず、魚肉Fを、幅6cm×高さ6cm×長さ18cmのサイズで柵取りする。この柵状の魚肉Fを、まな板22の右端の溝221の上に置く。このとき、右側部固定板23Aに接するように魚肉Fを置く。そして、上部固定板24及び左側部固定板23Bを魚肉Fに接するところまで移動させ、魚肉Fと接する位置で上部固定板24及び左側部固定板23Bをそれぞれ上部固定板取付部材28及び側部固定板取付部材27で固定する。これにより、魚肉Fが固定される。
【0033】
この状態で、魚肉Fの後側において、包丁11を各溝251,241,221に差し込むことによって包丁部10を載置台部20に取り付ける。そして、グリップ14を握って包丁部10を前側に引くことで魚肉Fをカットする。この1回目の操作でカットされた魚肉Fの状態が図7の状態である。
【0034】
次に、一旦上部固定板24及び左側部固定板23Bを魚肉Fから離れる位置に移動させ、カットされた魚肉Fを、元の柵の塊のまま90°回転させる。具体的には、側部固定板23に接していた面がまな板22及び上部固定板24に接するように90°回転させる。このとき、右側部固定板23Aに接するように魚肉Fを置く。
【0035】
それから、上部固定板24及び左側部固定板23Bを魚肉Fに接するところまで移動させ、魚肉Fと接する位置で上部固定板24及び左側部固定板23Bをそれぞれ上部固定板取付部材28及び側部固定板取付部材27で固定する。これにより、魚肉Fが固定される。
【0036】
この状態で、魚肉Fの後側において、包丁11を各溝251,241,221に差し込むことによって包丁部10を載置台部20に取り付ける。そして、グリップ14を握って包丁部10を前側に引くことで魚肉Fをカットする。この2回目の操作でカットされた魚肉Fの状態が図9の状態である。これにより、魚肉Fは、細い略正四角柱状にカットされる。
【0037】
以上のように、本実施形態の魚肉カット器具1では、所定間隔ごとに並列状態で保持された複数の包丁11が枠体25、上部固定板24及びまな板22を貫通して取り付けられている。そして、まな板22、上部固定板24、及び一対の側部固定板23で魚肉Fを固定して、溝221,241,251に沿って複数の包丁11を移動させると、柵状の魚肉Fが包丁の間隔の厚みを有する板状にカットされる。このカットされた魚肉Fを重ねた状態で、側部固定板23に接していた面がまな板22及び上部固定板24に接するように90°回転させて、再び複数の包丁11を溝221,241,251に沿って移動させると、魚肉Fが細い略正四角柱状にカットされる。このように2回包丁11を動かすのみで、柵状の魚肉Fを効率よく細い略正四角柱状にカットすることができる。
【0038】
実際に熟練の職人がカットする場合、長さ18cm×厚み1cmに柵取りした魚肉を幅1cmとなるようにカットするには、5本カットするのに数十秒かかる。それに対し、本発明の魚肉カット器具1を使用すると、厚み1cmに柵取りされた魚肉であれば1回操作するだけで6本にカットでき、ほんの数秒で魚肉を6本カットすることができる。
【0039】
また、上部固定板24及び左側部固定板23Bを移動可能に取り付けているため、魚肉Fのサイズに合わせて位置決めすることができ、また、魚肉Fの出し入れの際にも上部固定板24及び左側部固定板23Bを移動させることで隙間ができ、容易に出し入れすることができる。
【0040】
また、魚肉カット器具1は、包丁部10、側部固定板23及び上部固定板を取り外して分解できるようになっており、一定数の魚肉をカットし終わったあとは部品を分解して除菌・殺菌して衛生面を向上することができる。また、容易に包丁11も取り外せるため、包丁11を研ぐことで切れ味のよい状態を保つことができる。
【0041】
また、本発明の魚肉カット器具1では、生鮮の魚肉又は解凍された魚肉をカットするため、冷凍された魚肉を丸鋸でカットする場合と比べて、魚肉が削り取られることが抑制され、歩留まりが良くなる。
【0042】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、上記実施形態では、左側部固定板23Bは枠体25に取り付けられているが、この構成に限られず、まな板22の上面に直接取り付けられてもよい。また、上記実施形態では、右側部固定板23Aが台座21に、左側部固定板23Bがまな板22に垂直に設けられているが、まな板22の溝221を間に挟むことができれば、一対の側部固定板23はともに台座21の上面に取り付けてもよいし、ともにまな板22の上面に取り付けてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、左側部固定板23B及び上部固定板24はともに移動可能な構成としているが、必ずしもこの構成に限られない。例えば、カットする魚肉が一定の大きさで前後方向から差し込むことでまな板22の上に載置でき、側部固定板23及び上部固定板24の移動を必要としないのであれば、左側部固定板23B及び上部固定板24は台座21又はまな板22の上に固定する構成としてもよい。また、側部固定板23又は上部固定板24の一方のみを移動可能な構成としてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、台座21は矩形板状であるが、台座21の上に、まな板22、一対の側部固定板23、上部固定板24及び枠体25が載せられれば、台座21は任意の形態を取り得る。また、載置台部20は、枠体25を必ずしも備える必要はない。
【0046】
また、上記実施形態では、固定部材13は両ネジボルト131及びナット132で構成されているが、固定部材13はこの構成に限られない。例えば、固定部材13は、長ネジとナット等、固定孔111及び取付孔122に挿通する棒状部材(ボルト、ネジ等)と、その棒状部材を包丁保持部12に留めるための留め部材(ナット等)とで構成されてもよい。その他、包丁11を所定位置で包丁保持具12に固定できれば任意のものを用いることができる。
【0047】
また、上記実施形態では、魚肉カット器具1の包丁部10が備える包丁11の数は5本としているが、包丁11の数は2本以上の任意の数とすることができる。包丁11の数を変える場合には、保持したい包丁11の数の差込孔121を有する包丁保持具としてもよいし、包丁11の数を減らす場合には同じ包丁保持具12に保持する包丁11の数を減らしてもよい。また、上記実施形態では、カットする魚肉の幅及び高さを1cmとしているが、カットする魚肉の幅及び高さは巻寿司の具材に適した任意の大きさとすることができる。カットする魚肉の高さ及び幅を変える場合には、包丁保持具12の差込孔121の間隔を、魚肉のカットしたい高さ及び幅に設定すればよい。また、包丁11の数又は包丁11を保持する差込孔121の間隔を変更する場合には、包丁11の数及び間隔に合うように、まな板22、上部固定板24及び枠体25の溝221,241,251を変えればよい。
【符号の説明】
【0048】
1 魚肉カット器具
10 包丁部
11 包丁
11b 刃先
20 載置台部
21 台座
22 まな板
221 まな板の溝
23,23A,23B 側部固定板
24 上部固定板
241 上部固定板の溝

【要約】
【課題】 柵状の魚肉を効率よく細い略正四角柱状にカットできる魚肉カット器具を提供する。
【解決手段】 本発明の魚肉カット器具1は、刃先11bを同一方向に向け、所定間隔ごとに並列状態で保持された複数の包丁11と、台座21と、台座21の上方に空間を隔てて設けられる矩形状のまな板22と、まな板22の長手方向に沿って、互いに対向して台座21又はまな板22の上に垂直に設けられる平面視矩形状の一対の側部固定板23と、一対の側部固定板23の間に、まな板22と対向して設けられる平面視矩形状の上部固定板24とを備える。まな板22及び上部固定板24には、包丁11と同数の長手方向に沿った複数の溝221,241が、短手方向に包丁11と同じ間隔をあけて形成されている。複数の包丁11は、複数の溝221,241にそれぞれ差し込まれている。
【選択図】 図1

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