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特許7053953自動車両のための加圧流体貯蔵タンク用内側シェル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】自動車両のための加圧流体貯蔵タンク用内側シェル
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/03 20060101AFI20220405BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220405BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20220405BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20220405BHJP
   B29C 49/20 20060101ALI20220405BHJP
   F17C 1/16 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B60K15/03 B
B29C45/14
B29C45/16
B29C49/04
B29C49/20
F17C1/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021518893
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019082764
(87)【国際公開番号】W WO2020109398
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】1872197
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521525527
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・ニュー・エナジーズ・フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー・ヴェール
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・クリエル
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・デ・カイザー
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0119881(US,A1)
【文献】国際公開第2015/197357(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/197457(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/079971(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0096993(US,A1)
【文献】国際公開第2009/128818(WO,A1)
【文献】米国特許第03843010(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03
B29C 45/14
B29C 45/16
B29C 49/04
B29C 49/20
F17C 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両のための加圧流体貯蔵タンク(1)用内側シェル(3)であって、
- 第1のポリマー材料で作製された少なくとも1つの層を有する中空体(7)と、
- 前記中空体(7)に設けられて前記中空体(7)の開口部(17)を画定するネック部(9)であって、そのネック部(9)と連結部品(5、10)の間に用意される気密シール(19)によって気密が確保されるようにネック部(9)に付加される前記連結部品(5、10)を受けるように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されたネック部(9)と
を備え、
前記複合材料が前記第1のポリマー材料の変形抵抗より大きな変形抵抗を有しており、
前記ネック部(9)が、前記第1のポリマー材料のポリマー鎖と前記第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって前記中空体(7)と結合されることを特徴とする内側シェル(3)。
【請求項2】
前記強化繊維が、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、天然繊維、金属繊維、合金繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維からなるグループから選択される、請求項1に記載の内側シェル(3)。
【請求項3】
前記強化繊維の少なくとも一部が織物補強材(22)を形成する、請求項1または2に記載の内側シェル(3)。
【請求項4】
前記第1のポリマー材料が熱可塑性であり
前記第2のポリマー材料が熱可塑性である、請求項1から3のいずれか一項に記載の内側シェル(3)。
【請求項5】
前記第1のポリマー材料と前記第2のポリマー材料が同系のポリマーに属する、請求項1から4のいずれか一項に記載の内側シェル(3)。
【請求項6】
前記第2のポリマー材料が前記第1のポリマー材料と同一である、請求項1から5のいずれか一項に記載の内側シェル(3)。
【請求項7】
前記中空体(7)が複数の層を有しており、少なくとも1つの層は前記第1のポリマー材料で作製される、請求項1から6のいずれか一項に記載の内側シェル(3)。
【請求項8】
開口部(17)を具備する中空体(7)を設けるステップと、
前記中空体(7)の前記開口部(17)を画定するように構成されたネック部(9)を設けるステップと、
前記ネック部(9)および前記中空体(7)を溶着により組み立てるステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)の製造法。
【請求項9】
中空体(7)の開口部(17)を画定するように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されるネック部(9)を金型(23)内に設けるステップと、
前記金型(23)内に第1のポリマー材料を射出成形または回転成形することによる中空体(7)の成形ステップであって、
前記射出成形または前記回転成形の際に、前記第1のポリマー材料が前記ネック部(9)の前記複合材料の一部を取り囲み、前記第2のポリマー材料は前記第1のポリマー材料と接触して少なくとも部分的に溶融し、射出後に前記ネック部(9)が前記第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、前記第1のポリマー材料のポリマー鎖と前記第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって前記ネック部(9)が前記中空体(7)に結合される、ステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)の製造法。
【請求項10】
第1の射出ノズル(29)から第1のポリマー材料を射出して金型(23)内に中空体(7)を成形するステップと、
それと同時に、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料を第2の射出ノズル(37)から射出して、前記中空体(7)の開口部(17)を画定するネック部(9)を金型内に共成形し、成形後に前記第1のポリマー材料のポリマー鎖と前記第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって前記ネック部(9)が前記中空体(7)に結合されるステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)の製造法。
【請求項11】
- 強化繊維を、中空体(7)の開口部(17)を画定するように構成されたネック部(9)となるものとして構成された金型(23)内のゾーンに配置するステップと、
射出、回転成形または押出しブロー成形によって、前記金型(23)内に第1のポリマー材料で中空体(7)およびネック部(9)を成形するステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)の製造法。
【請求項12】
中空体(7)の開口部(17)を画定するように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されるネック部(9)を金型(23)内に設けるステップと、
押出しブロー成形によって前記金型(23)内に第1のポリマー材料で中空体(7)を成形するステップであって、
前記押出しブロー成形の際に、前記第1のポリマー材料は前記ネック部(9)の前記複合材料の一部を取り囲み、前記第2のポリマー材料は前記第1のポリマー材料と接触して少なくとも部分的に溶融し、前記ネック部(9)は押出しブロー成形後に前記第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、前記第1のポリマー材料のポリマー鎖と前記第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって前記ネック部(9)が前記中空体(7)に結合される、ステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)の製造法。
【請求項13】
中空体(7)の開口部(17)を画定するように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されるネック部(9)を金型(23)内に設けるステップと、
前記第1のポリマー材料の融点を上回る温度に加熱した金型を用いて第1のポリマー材料の回転成形によって中空体(7)を成形するステップであって、
前記回転成形の際に、前記第1のポリマー材料が前記ネック部(9)の前記複合材料の一部を取り囲み、さらに前記金型を通して加熱されることで少なくとも部分的に溶融し、前記第2のポリマー材料は前記第1のポリマー材料および/または前記金型と接触して少なくとも部分的に溶融し、前記ネック部(9)は前記回転成形後に前記第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、前記ネック部(9)は前記第1のポリマー材料のポリマー鎖と前記第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって前記中空体(7)に結合される、ステップと
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)の製造法。
【請求項14】
自動車両のための加圧流体の貯蔵タンク(1)であって、
請求項1から7のいずれか一項に記載の内側シェル(3)と、
前記内側シェル(3)の前記ネック部(9)の外側で前記ネック部(9)に付加されたベース部(5)と、
前記ネック部(9)と前記ベース部(5)の間に設けられた気密シール(19)と、
前記内側シェル(3)および前記ベース部(5)の周りに付加された補強外側シェルと
を備えるタンク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車両のための、加圧流体貯蔵タンクの分野に関する。より詳細には、本発明は、自動車両のための加圧流体貯蔵タンク用内側シェルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の技術では、シールによってベース部との気密性を確保するネック部を備えた内側シェル(ライナーとも呼ばれる)を含めた加圧流体貯蔵タンクがすでに知られている。しかし、問題は、ネック部がシールの作用を受けて変形し、漏洩を生じるところにある。
【0003】
気密性を担保するための解決法の1つは、より強靭な材料を用いることであるが、内側シェルが厚みを増せば、より重く、またはより高価なものとなるという欠点がある。もう1つの解決法は、金属製インサートなどのインサートをネック部に用意するというものであるが、そうしたインサートもやはり重く、製造工程を複雑化させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「Plastics and Composites Welding Handbook」、ISBN 1-56990-313-1、23頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、比較的軽量でありながらも漏洩を生じることのない内側シェルを提案することをとりわけ目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、本発明は、自動車両のための加圧流体貯蔵タンク用内側シェルであって、
- 第1のポリマー材料で作製された少なくとも1つの層を有する中空体と、
- 中空体に設けられて中空体の開口部を画定するネック部であって、そのネック部と連結部品の間に用意される気密シールによって気密が確保されるようにネック部に付加される連結部品を受けるように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されたネック部とを備え、
- 複合材料は第1のポリマー材料の変形抵抗より大きな変形抵抗を有しており、
ネック部は、第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって中空体と結合されることを特徴とする内側シェルを対象とする。
【0007】
それにより、より高い変形抵抗が必要とされるネック部のゾーンは、複合材料で作製されたネック部を使用することで、シンプルに、経済的に、かつ内側シェルの重さが著しく増えることのないように作製される。
【0008】
また、ポリマー鎖の間で分子的に絡合したポリマー材料を中空体およびネック部に使用することで、ネック部を内側シェルの中空体に対して極めて強靭に組み立てることができる。
【0009】
変形抵抗もさらに高いものとなるため、漏洩リスクも一段と抑えられる。とりわけ、保守作業で、バルブや気密シールなど、ネック部と接触する要素を交換する際の内側シェルの変形は小さくなり、それによって、新しいバルブやシールなどと共に再利用できる可能性が高まる。
【0010】
第1のポリマー材料と第2のポリマー材料の「ポリマー鎖の分子的な絡合」とは、自己融着現象を引き起こすように2つのポリマー材料が溶融状態で共に圧縮され、圧縮されたその2つのポリマー材料の溶融温度がISO 3146:2000規格に従って測定されることを意味する。こうした自己融着は、ポリマー界面を通しての分子間拡散と分子鎖の絡合によって強固な結合が形成される現象をいう。表面エネルギー(または、似通った、もしくは似通ったものでない2つの材料の間の二次的化学結合)が着目される接着とは異なり、自己融着で着目されるのは、分子鎖の絡合であり、似通った材料、すなわち化学的に相溶な材料のポリマー鎖の二次結合である。理想的条件のもとでは、拡散が完全になると、2つのポリマー材料の間の境界は2つのポリマー材料のそれぞれの本体と見分けがつかなくなる。たとえば、2つの熱可塑性ポリマー材料の場合、熱可塑性ポリマー=熱可塑性ポリマーの接触が境界で得られた後、プロセスが完了して適正な溶着(soudure)が形成されるためには分子間拡散と絡合が必要である。この自己融着現象については、たとえば文献「Plastics and Composites Welding Handbook」、ISBN 1-56990-313-1、23頁に記載されている。2つのポリマー材料の溶融状態は、2つのポリマー材料の摩擦、振動、回転、照射などによって、または2つのポリマー材料を接触もしくは非接触で加熱する要素によって得ることができる。
【0011】
したがって、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料は化学的に相溶であることがわかる。第1のポリマー材料が第2のポリマー材料と「化学的に相溶」であるとは、ポリマー材料が、追加的な物質を添加する必要なく、互いに溶着されることができる化学種をそれぞれ含んでいることを意味する。換言すれば、化学的に相溶なポリマー材料同士は、溶融によって互いに緊密に結合することができ、とりわけポリマー鎖の分子的な絡合を果たすことができる。2つのポリマー材料の溶着(soudage)は、2つのポリマー材料が接触し、それによってその接触部位で自己融着現象が起こることであると理解される。自己融着現象は接触部位に熱が加えられることによって発生する。熱の作用のもとでの2つの材料の溶着操作は熱溶着と呼ばれる。以下では、「溶着」は「熱溶着」と同義であるものとして用いる。
【0012】
溶着は、2つのポリマー材料の摩擦、振動、回転、照射によって、または2つのポリマー材料を接触もしくは非接触で加熱する要素によって行うことができる。溶着法のいくつかの例としては、加熱プレート溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー放射溶着、赤外放射溶着、電磁誘導溶着、抵抗インプラント溶着、窒素などの高温ガスによる溶着、回転溶接などがある。赤外放射溶着と振動溶着の組合せなど、これらの技法の2つ以上を組み合わせることも可能である。
【0013】
「変形抵抗」にはクリープ抵抗および/または弾性引張強さ(弾性限度および/または弾性圧縮強さとも呼ばれる)が含まれるものと理解する。すなわち、第2のポリマー材料は好ましくは第1の材料のクリープ抵抗を上回るクリープ抵抗を有し、また第1の材料の弾性引張強さを上回る弾性引張強さを有する。弾性引張強さ、すなわち弾性限度は、ある材料がその弾性領域内で耐えることのできる最大応力である。弾性限度を超える応力が加わると、材料は永久変形を生じる。材料の弾性限度は、ISO527:2012規格に従い、材料の供試体を周囲温度(23℃)で、たとえば毎分50mmの伸び速度で引張伸び試験にかけることによって測定することができる。ポリアミドのような吸湿性材料の場合、引張試験は、供試体の相対湿度が50%になるようにあらかじめ調整した後に行われる。この調整時間は供試体の厚さによって異なる。供試体の形状はISO 527規格によって定められている。好ましくは、ISO 527のタイプ1 Bまたは1 Aの供試体を使用する。好ましくは、これらの供試体は射出成形によって調製される。クリープ抵抗は、応力にさらされた材料の長期的な変形を規定する。クリープ抵抗は一般に2日以上、好ましくは少なくとも500時間にわたって50℃の気温で観察される。クリープ抵抗はISO 899-1:2017規格に従って測定される。試験時に加える応力は、内側シェルにおいて、特に気密シールと接するネック部のゾーンにおいて想定される最大応力に応じて選ぶ。材料の変形を時間を追って記録する。好ましくは、ISO 527のタイプ1 Bまたは1 Aの供試体を使用する。
【0014】
第2のポリマー材料は第1のポリマー材料と同じポリマー材料であることも、それとは異なるポリマー材料であって、たとえば単独で第1のポリマー材料よりも高い変形抵抗を有するポリマー材料であることもできる。
【0015】
強化繊維を充填したポリマー材料の場合、強化繊維とポリマー材料が絡合されることで一体をなす材料が形成されるようにする。
【0016】
内側シェルにはその他、単独で、または組み合わせて採り入れることのできる以下のような任意選択の特徴がある。
【0017】
- 強化繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、天然繊維、金属繊維、合金繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維からなるグループから選択される。これらの繊維は複合材料の変形抵抗を高めることができる。
【0018】
- 強化繊維の少なくとも一部は織物補強材を形成する。それにより、内側シェルの製造を単純化することができる。
【0019】
- 第1のポリマー材料は熱可塑性、好ましくは半結晶性であり、第2のポリマー材料は熱可塑性、好ましくは半結晶性である。それにより、内側シェルの製造を単純化することができる。
【0020】
- 第1のポリマー材料と第2のポリマー材料は同系のポリマーに属しており、好ましくは、ポリアミド(PA)系、ポリフタルアミド(PPA)系、ポリオレフィン系、ポリケトン(PK)系、ポリアセタール系からなるグループから選択されるポリマー系に属する。好ましくは、上掲の系のコポリマーおよびホモポリマーを用いる。そうすることで、特に第1のポリマー材料と第2のポリマー材料の間の化学的相溶性から、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合は一段と増進する。
【0021】
- 第2のポリマー材料は、たとえばPA6である第1のポリマー材料と同一である。その場合、化学的相溶性は最適となり、ポリマー鎖の分子的な絡合についても同様である。
【0022】
- 中空体は複数の層を有しており、少なくとも1つの層は第1のポリマー材料で作製される。そのため、内側シェルの健全性を保ったまま、中空体には別の層を使用することが可能となり、それによって相次ぐ充填と放出および/または内側シェル内に収められる加圧流体の化学作用に対する内側シェルの抵抗力を高めることなどができる。好ましくは、別の層の1つはEVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)からなり、この層は有利には2つの接着剤層の間に挟まれる。好ましくは、接着剤層は、無水マレイン酸のような官能基でグラフト化された低密度ポリエチレンを主体とする。
【0023】
本発明はまた、上述のタイプの内側シェルの製造法であって、
- 開口部を具備する中空体を設けるステップと、
- 中空体の開口部を画定するように構成されたネック部を設けるステップと、
- ネック部および中空体を溶着により組み立てるステップと
を含む製造法も対象とする。
【0024】
本発明はまた、上述のタイプの内側シェルの製造法であって、
- 中空体の開口部を画定するように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されるネック部を金型内に設けるステップと、
- 金型内に第1のポリマー材料を射出成形または回転成形することによる中空体の成形ステップであって、
その射出成形または回転成形の際に、第1のポリマー材料がネック部の複合材料の一部を取り囲み、第2のポリマー材料は第1のポリマー材料と接触して少なくとも部分的に溶融し、射出後にネック部が第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によってネック部が中空体に結合される、ステップと
を含む製造法も対象とする。
好ましくは、ポリマー鎖の分子的な絡合を促進するため、ネック部は金型内で予熱されるか、または金型に入れる前に予熱される。
【0025】
本発明はさらに、上述のタイプの内側シェルの製造法であって、
- 第1の射出ノズルから第1のポリマー材料を射出して金型内に中空体を成形するステップと、
- それと同時に、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料を第2の射出ノズルから射出して、中空体の開口部を画定するネック部を金型内に共成形し、成形後に第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によってネック部が中空体に結合されるステップと
を含む製造法も対象とする。
【0026】
本発明はそのほか、上述のタイプの内側シェルの製造法であって、
- シランなどの相溶化剤による表面処理を施したものであることが好ましい強化繊維を、中空体の開口部を画定するように構成されたネック部となるものとして構成された金型内のゾーンに配置するステップと、
- 射出、回転成形または押出しブロー成形によって、好ましくは押出しブロー成形によって、金型内に第1のポリマー材料で中空体およびネック部を成形するステップと
を含む製造法も対象とする。
【0027】
本発明はまた、上述のタイプの内側シェルの製造法であって、
- 中空体の開口部を画定するように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されるネック部を金型内に設けるステップと、
- 押出しブロー成形によって金型内に第1のポリマー材料で中空体を成形するステップであって、
その押出しブロー成形の際に、第1のポリマー材料がネック部の複合材料の一部を取り囲み、第2のポリマー材料は第1のポリマー材料と接触して少なくとも部分的に溶融し、ネック部は押出しブロー成形後に第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によってネック部が中空体に結合される、ステップと
を含む製造法も対象とする。
好ましくは、ポリマー鎖の分子的な絡合を促進するため、ネック部は金型内で予熱されるか、または金型に入れる前に予熱される。
【0028】
本発明はまた、上述のタイプの内側シェルの製造法であって、
- 中空体の開口部を画定するように構成され、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製されるネック部を金型内に設けるステップと、
- 第1のポリマー材料の融点を上回る温度に加熱した金型を用いて第1のポリマー材料の回転成形によって中空体を成形するステップであって、
その回転成形の際に、第1のポリマー材料がネック部の複合材料の一部を取り囲み、さらに金型を通して加熱されることで少なくとも部分的に溶融し、第2のポリマー材料は第1のポリマー材料および/または金型と接触して少なくとも部分的に溶融し、ネック部は回転成形後に第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、ネック部は第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって中空体に結合される、ステップと
を含む製造法も対象とする。
好ましくは、ポリマー鎖の分子的な絡合を促進するため、ネック部は金型内で予熱されるか、または金型に入れる前に予熱される。
【0029】
最後に、本発明は、自動車両のための加圧流体、好ましくは水素の貯蔵タンクであって、
- 上述のタイプの内側シェルと、
- 内側シェルのネック部の外側でネック部に付加されたベース部と、
- ネック部とベース部の間に、好ましくは放射状に、設けられた気密シールと、
- 内側シェルおよびベース部の周りに付加された補強外側シェルと
を備えるタンクを対象とする。
【0030】
本発明については、添付の図面を参照しながら、あくまでも例として以下に示す説明を読むことによってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施形態による内側シェルを備えるタンクの長手方向の概略部分断面図である。
図2図1のものと同様の内側シェルの第1の実施形態による製造を可能にする金型の概略部分断面図である。
図3図1のものと同様の内側シェルの第2の実施形態による製造について示した概略部分断面図である。
図4図1のものと同様の内側シェルの第3の実施形態による製造を可能にする金型の概略部分断面図である。
図5図1のものと同様の内側シェルの第4の実施形態による製造を可能にする金型の概略部分断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態による内側シェルを備えるタンクの長手方向の概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1に示すように、自動車両用などの加圧流体の貯蔵タンク1は、内側シェル3と、ベース部5を形成する連結部品とを備える。タンクのベース部5は、タンクの充填または放出のためのタンクの接続手段を受けるためなどに使用される。好ましくは、ベース部5は金属であり、たとえばステンレス鋼製である。タンク1は、特に流体の圧力に耐えるなどの目的で内側シェル3およびベース部5の周りに付加された補強外側シェル(図示せず)をさらに備えることもできる。タンク1は、好ましくは、加圧状態の水素、たとえば満杯で350バール以上、好ましくは満杯で700バール以上の圧力で加圧された水素の貯蔵のために供される。700バールの圧力は一般車両用として典型的なものであり、大型トラックやバスの用途には350バールの圧力が典型的である。
【0033】
内側シェル3は中空体7とネック部9を備える。ベース部5は内側シェル3のネック部9の外側でネック部9に付加される。
【0034】
中空体7は、少なくとも1つの端部が半球形部位13を有する円筒11(円筒11は図1にその一部分だけが示されている)などからなる。円筒11と反対側の半球形部位13の端部は、ここでは開口部17を具備するなどした円板15形をなす。この例では、開口部17は円筒および対応する半球形部位13の軸Aとほぼ同軸の向きを有している。
【0035】
ある具体的な例では、円筒11の2つの端部は半球形部位13、円板15および開口部17を有する。
【0036】
ネック部9は中空体7に設けられて中空体7の開口部17を画定する。ネック部9はベース部5を受けるように構成される。ベース部5は、ネック部9とベース部5の間に用意される気密シール19によって気密性を確保しつつネック部9に付加される。図1に示す実施形態では、ネック部9は内側シェル3の外へと向かい、その外周にベース部5を受ける。
【0037】
図1に示す例では、ベース部5はネック部9にねじ止めして付加される。そのため、ネック部9の外周の少なくとも一部分はねじ山付きで用意され、それに対応するねじ山を介してそこにベース部5がねじ止めされる。
【0038】
ベース部5とネック部9の間には気密シール19が、好ましくは放射状に、配置される。図1に示す例では、気密シール19は環状であり、ベース部5の環状スペース21内に放射状に配置されている。
【0039】
中空体7は、第1のポリマー材料で作製された少なくとも1つの層を有する。
【0040】
たとえば、中空体7は1つだけの層を有する。
【0041】
別法として、中空体7は複数の層を有し、少なくとも1つの層は第1のポリマー材料で作製される。たとえば、加圧流体に対するバリア形成層、とりわけEVOH製の層を使用することができる。バリア形成層の役割は、加圧流体が中空体7の厚さを通り抜けて内側シェル3の外に拡散するのを防ぐことにある。このバリア形成層は、たとえば2つの接着剤層の間に挟まれる。これら接着剤層はバリア形成層とポリマー材料(特にポリエチレン製)の層との接着を行う。中空体7の内側層および外側層は、たとえば、ポリエチレン、特に高密度ポリエチレンのようなポリマー製である。そのため、中空体7は、押出し、特に共押出し、型込め、ブロー成形、すなわち「ブローモールディング」、より詳細には、押出しブロー成形、ブローフィルム押出し、すなわち「フィルムブロー押出し」、圧延、熱成形、回転成形、射出成形、射出ブロー成形によって作製することができる。
【0042】
ネック部9は、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製される。この複合材料は第1のポリマー材料の変形抵抗よりも高い変形抵抗を有する。
【0043】
ネック部9では、強化繊維はたとえば第2のポリマー材料内に分散される。したがって、局所的な変形はより少ない。
【0044】
そのため、ネック部9は、第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって中空体7と結合される。
【0045】
第1のポリマー材料は、たとえば熱可塑性、特に半結晶性である。
【0046】
第2のポリマー材料は、たとえば熱可塑性、特に半結晶性である。
【0047】
たとえば、第1のポリマー材料と第2のポリマー材料は同系のポリマーに属しており、好ましくは、ポリアミド(PA)系、ポリフタルアミド(PPA)系、ポリオレフィン系、ポリケトン(PK)系、ポリアセタール系からなるグループから選択されるポリマー系に属する。
【0048】
ポリエチレン(PE)など、一部のポリマー材料では、短鎖分枝分布指数が変形抵抗、特にクリープに影響する。そのため、短鎖分枝分布指数が大きくなるのにつれて変形抵抗、特にクリープ抵抗が改善する。
【0049】
ある具体的な例では、第1のポリマー材料は第2のポリマー材料と同一である。その場合、中空体7は強化繊維が充填されない第1のポリマー材料で作製される一方、ネック部9は強化繊維が充填された同じポリマー材料からなる複合材料で作製される。
【0050】
強化繊維22は、鉱物繊維、有機繊維、天然繊維または合成繊維であり、好ましくは、ガラス繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、天然繊維、金属繊維、合金繊維、セラミック繊維、玄武岩繊維からなるグループから選択される。合成繊維のグループには、とりわけアラミドおよびポリエステルが含まれる。天然繊維のグループには、とりわけ麻およびサイザル麻が含まれる。強化繊維は、ガラス、炭素、ポリマーを主体とするものであることができる。ポリマー主体である場合、たとえばアラミドのような芳香族ポリアミドであることができる。ガラス繊維は、好ましくはEガラス繊維、Sガラス繊維またはそれ以外のタイプのガラス繊維である。強化繊維は、好ましくは熱可塑性材料と相溶性を有し、一般にはポリオレフィンと、とりわけHDPR(高密度ポリエチレン)と相溶性を有することが好ましい。たとえば、強化繊維は、シランや、無水マレイン酸基を持つ化合物などの相溶化剤で表面処理される。
【0051】
強化繊維の直径はたとえば0.1μmから1mm、好ましくは5μmから50μm、より好ましくは3μmから30μmである。
【0052】
強化繊維は短繊維、長繊維、または連続的な繊維のいずれであってもよい。短繊維は一般に1μmから10μmの長さである。長繊維は一般に1mmから11mmの長さを有する。連続的な繊維は少なくとも数センチメートルの長さを有する。
【0053】
短繊維または長繊維である強化繊維の場合、複合材料における強化繊維の含有量は一般に10%から60%(重量比)である。10重量%未満では、変形抵抗のような機械的特性の向上は顕著なものとならない。60重量%を超えると、材料は、製造用として、特に射出成形用として利用することは難しくなる。
【0054】
UHMPEの頭字語でも知られる超高分子量ポリエチレンと、強化繊維とからなる複合材料を使用することができる。たとえば、強化繊維がガラス繊維であるRTP社の複合材料RTP 799 X 138861 Dがある。この複合材料は、そのモル質量が非常に高いにもかかわらず、射出成形と特に親和性が高い。
【0055】
長繊維の場合は、ガラス繊維または炭素繊維を使用することができる。
【0056】
連続的な強化繊維の場合、複合材料における強化繊維の含有量は一般に30%から70%(体積比)である。連続的な繊維はたとえばポリマー材料によってあらかじめ含浸され、そのことから「プリプレグ」と呼ばれる。プリプレグは、織物であっても、織物でないもの、すなわちランダムに分散したものであっても、または一方向のものであってもよい。
【0057】
織物である連続的な繊維の場合、たとえばLanxess社の材料であるDynalite(登録商標)111 RG600(3)/47%がある。この「プリプレグ」には、高密度ポリエチレンが含浸された連続的なガラス繊維が体積比で47%含まれる。
【0058】
一方向の連続的な繊維としてはたとえば一方向のリボン状をなすものがあり、それにはたとえばCelanese社のCelstran(登録商標)CFR-TP HDPE-GF70-01がある。その場合、繊維含有量はたとえば70重量%または45体積%である。
【0059】
以下に示す例は、射出成形によって作製される内側シェルに関するものである。
【実施例1】
【0060】
第1のポリマー:PA6。23℃での弾性引張強さはおよそ45MPaから48MPaである。たとえば、宇部興産(株)によってUBE NYLON(登録商標)1218IUの名称で商品化されているポリマー。
複合材料:短ガラス繊維が充填されたPA6。たとえば、
- ガラス繊維を10重量%含むA. Schulman社の複合材料 ACCUTECH(登録商標)NY0730G10L1。弾性引張強さは約102MPa。
- ガラス繊維を20重量%含むA. Schulman社の複合材料 ACCUTECH(登録商標)NY0730G20L。弾性引張強さは約120MPa。
- ガラス繊維を30重量%含むA. Schulman社の複合材料 ACCUTECH(登録商標)NY0730G30L。弾性引張強さは約144MPa。
【実施例2】
【0061】
第1のポリマー:HDPEまたは高密度ポリエチレン。弾性引張強さはおよそ22MPaである。たとえば、Lyondellbasell社によってLupolen(登録商標)GX5038の名称で商品化されているポリマー。
複合材料:短ガラス繊維が充填されたHDPEまたは高密度ポリエチレン。たとえば、
- ガラス繊維を10重量%含むSumika社の複合材料THERMOFIL(登録商標)10F0V2 X066。弾性引張強さは約30MPa。
【0062】
複合材料中の強化繊維の向きは、気密シール19によって加えられる応力の方向の変形抵抗などの機械的特性を最適化するために適合させることができる。
【0063】
たとえば、強化繊維は織物である。その場合、強化繊維は織物補強材22をなす。
【0064】
本発明のすべての実施形態に共通する要素は、図1に示す実施形態の番号と同一の番号で示す。
【0065】
以下では、内側シェル3の製造法のいくつかの例について説明する。
【0066】
図2に示す内側シェル3の製造法の例では、固定側型板25と可動側型板27によって構成されるなどした金型23を用意する。
【0067】
固定側型板25は、中空体7およびネック部9を画定する凹部、ならびに少なくとも1つの第1の射出ノズル29を備える。射出ノズル29は、たとえば中空体7を画定するゾーンのレベルで凹部に開口するように軸方向に設けられるなどする。
【0068】
図2に示す方法では、ネック部9は金型23内、特に固定側型板25に設けられる。そのため、ネック部9は、第2のポリマー材料と呼ぶポリマー材料と強化繊維とからなる複合材料であらかじめ作製される。
【0069】
次いで、第1のポリマー材料と呼ぶポリマー材料が射出ノズル29を通して射出されて中空体7が形成され、中空体7とネック部9の間の結合が第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって果たされる。
【0070】
射出の間、(溶融状態の)第1のポリマー材料はネック部9の内側面(図2の符号70参照)を取り囲み、第2のポリマーは第1のポリマー材料と接触して少なくとも部分的に溶融する。そこで、第1のポリマー材料は、第2のポリマー材料の融点より少なくとも10℃高い温度で金型23内に射出される。射出後は、ネック部9は第1のポリマー材料によってオーバーモールドされ、ネック部9は第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって中空体7と結合される。そうすることで、第1のポリマー材料で作製された層を含む中空体7と、中空体7に設けられて中空体7の開口部17を画定するネック部9とを備える内側シェル3が形成される。
【0071】
この例では、第2のポリマー材料は第1のポリマー材料と同一であることも、第1のポリマー材料とは異なるものであることもできる。
【0072】
図3に示す製造法の別の例では、開口部17を備える中空体7をあらかじめ製造して用意する。中空体7は第1のポリマー材料で作製される。ネック部9もあらかじめ製造して用意する。ネック部9は、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料で作製される。
【0073】
図3に示す内側シェル3の製造法の例では、ネック部9と中空体7は溶着によって組み立てられる。たとえば、溶着はネック部9と中空体7の間の環状接触ゾーン31のレベルで行われる。それにより、溶着後、ネック部9は、第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって中空体7と結合される。そうすることで、第1のポリマー材料で作製された層を含む中空体7と、中空体7に設けられて中空体7の開口部17を画定するネック部9とを備える内側シェル3が形成される。
【0074】
第2のポリマー材料がポリフタルアミドである場合は、たとえば高温ガス溶着を用いることができる。ガスは窒素のような不活性ガスであることが好ましく、そうすることでポリマー材料の酸化を防ぐことができる
【0075】
この例では、第2のポリマー材料は第1のポリマー材料と同一であることも、第1のポリマー材料とは異なるものであることもできる。
【0076】
図4に示す製造法の別の例は、金型23内にネック部9を設ける代わりに、中空体7の開口部17を画定するように構成されたネック部9となるものとして構成された金型23のゾーンに連続的な強化繊維を配置するところが、図2に示す例と異なる。そのため、強化繊維は、たとえば可動側型板27の心軸35の周りに配置される。図4に示す例では、この強化繊維は織物補強材22の形に織られている。
【0077】
次いで、第1のポリマー材料を射出ノズル29を通して金型23の中に射出して、中空体7およびネック部9が成形によって形成される。したがって、その場合、中空体7を構成するポリマー材料はネック部9のポリマー材料と同一である。その場合、中空体7は強化繊維が充填されない第1のポリマー材料で作製される一方、ネック部9は強化繊維(たとえば織物補強材22の形に織られたもの)が充填された同一のポリマー材料からなる複合材料で作製される。また、中空体7とネック部9の間の結合はポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって果たされる。すると、第1のポリマー材料で作製された層を含む中空体7と、中空体7に設けられて中空体7の開口部17を画定するネック部9とを備える内側シェル3が形成される。
【0078】
図5に示す製造法の最後の例は、金型23内にネック部9を設ける代わりに、中空体7の開口部17を画定するように構成されたネック部9となるものとして構成されたゾーンに開口する少なくとも1つの第2の射出ノズル37を金型23が備えるところが、図2に示す例と異なる。
【0079】
この方法では、第1のポリマー材料が射出ノズル29を通して金型23内に射出されて中空体7が形成され、同時に、強化繊維が充填された第2のポリマー材料からなる複合材料が射出ノズル37を通して金型23内に射出されてネック部9が形成される。金型23は、中空体7とネック部9の間の結合ゾーンには、第2のポリマー材料のための射出キャビティを画定する可動要素(図示せず)を有する。第1のポリマー材料および第2のポリマー材料が射出されると、第2のポリマー材料が第1のポリマー材料と接触するように可動要素が引き抜かれる。それにより、中空体7とネック部9の間の結合が所定の場所で起こる。別法として、第2のポリマー材料を第1のポリマー材料の射出の数秒前または数秒後に、たとえば1秒後に射出することもできる。この例では、第2のポリマー材料は第1のポリマー材料と同一であることも、第1のポリマー材料とは異なるものであることもできる。
【0080】
すると、射出後は、ネック部9は、第1のポリマー材料のポリマー鎖と第2のポリマー材料のポリマー鎖の分子的な絡合によって中空体7と結合される。そして、第1のポリマー材料で作製された層を含む中空体7と、中空体7に設けられて中空体7の開口部17を画定するネック部9とを備える内側シェル3が形成される。
【0081】
図6は、本発明の第2の実施形態による内側シェルを備えるタンクを示している。この変形実施形態では、連結部品はバルブ10を形成し、ネック部9はそのバルブ10を受けるように構成される。バルブ10は、タンクの充填または放出のためのタンクの接続手段などの役を果たす。バルブ10は、内側シェル3のネック部9の内側でネック部9に付加される。バルブ10は、ネック部9とバルブ10の間に設けられる気密シール24によって気密性が確保されるようにネック部9に付加される。この実施形態では、ネック部9は内側シェル3の外部に向かい、その内周にバルブ10を受ける。
【0082】
図6に示す例では、バルブ10は、ベース部5にバルブ10をねじ止めすることによってネック部9に付加される。そのため、ベース部5の内周の少なくとも一部分はねじ山付きで用意され、それに対応するねじ山を介してそこにバルブ10がねじ止めされる。
【0083】
バルブ10とネック部9の間には気密シール24が、好ましくは放射状に、配置される。図6に示す例では、気密シール24は環状であり、バルブ10の環状スペース26内に放射状に配置されている。
【0084】
変形実施形態(図示せず)では、連結部品は密栓を形成する。密栓は円筒11の端部の閉鎖手段などの役を果たす。
【0085】
本発明は説明した実施形態だけに限定されるものではなく、当業者にはそれ以外の実施形態が明らかとなろう。
【0086】
図1に示す発明は、内側シェル3の外側に向かうネック部9であって、その外周にベース部5を受けるネック部9が示されているが、当業者には、そのようなネック部9は内側シェル3の内部に向かうようにして、その内周(図示せず)にベース部5を受けるようにできることは容易に理解されよう。別の内側シェル3の製造法は、図5に示す製造方と類似したものであるが、第2のポリマー材料が金型23内で、ネック部9のゾーンのその場で重合するところがそれとは異なる。たとえば、カプロラクタムからのポリアミドの現場(in situ)重合を行うことができよう。この方法は一般に「樹脂移転成形」または英語の「resin transfer molding」による略号でRTMと呼ばれている。カプロラクタムはPA6を構成するモノマーで、重合前はPA6よりも粘性が低いという利点があり、織物補強材を低めの圧力で含浸させることができる。
【0087】
そのためには、第2の射出ノズル37を通した射出に先立って複数の化合物を混合しておく。それらの化合物は90℃から110℃の温度であらかじめ溶融させておくことが好ましい。重合反応は典型的には2~3分間続く。
【0088】
第1の実施例では、第1の材料は、カプロラクタム、活性化剤、添加剤および強化繊維からなる。第2の実施例では、第1の材料は、カプロラクタム、活性化剤および添加剤からなる。この第2の実施例では、中空体7の開口部17を画定するように構成されたネック部9となるものとして構成された金型23内のゾーンに強化繊維を配置する。そこで、強化繊維は、たとえば可動側型板27の心軸35の周りに配置される。この強化繊維はたとえば織物補強材22の形で織られている。この2つの実施例では、第2の材料はカプロラクタムと触媒の化合物からなる。金型の温度は、重合反応を最適化しつつ、重合後の内側シェルの型抜きが容易になるように、150℃であることが好ましい。
【0089】
この2つの材料は別々に貯蔵しておき、射出ノズル37の上流側で混合して前述の混合物を形成することができる。
【0090】
この方法では、第1のポリマー材料が射出ノズル29を通して金型23内に射出されて中空体7が形成され、同時に、中空体7の開口部17を画定するように構成されたネック部9となるものとして構成されたゾーンに前述の混合物が射出ノズル37を通して射出される。射出後、混合物はその場で重合してネック部9を形成する。別法として、前述の混合物は、第1のポリマー材料の射出前に、たとえば1分前に射出して、第2の材料の重合反応が第1のポリマー材料との接触前に始まるようにすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 タンク
3 内側シェル
5 ベース部
7 中空体
9 ネック部
11 円筒
13 半球形部位
19 気密シール
21 環状スペース
22 強化繊維、織物補強材
23 金型
25 固定側型板
27 可動側型板
29 射出ノズル
31 環状接触ゾーン
35 心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6