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特許7053963泡保持性を有する飲料および飲料における泡保持性を改善する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】泡保持性を有する飲料および飲料における泡保持性を改善する方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20220405BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20220405BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20220405BHJP
   A23L 2/54 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 S
A23L2/00 U
A23L2/60
A23L2/54
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021539258
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030303
(87)【国際公開番号】W WO2021029338
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2019148020
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100176094
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 満
(72)【発明者】
【氏名】三井 亮輝
(72)【発明者】
【氏名】浦井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】横尾 芳明
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩二
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/020517(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/020516(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/090020(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0289890(US,A1)
【文献】特表2018-501235(JP,A)
【文献】国際公開第2018/102648(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/171000(WO,A1)
【文献】Wilmer H. Perera et al.,Rebaudiosides T and U, minor C-19 xylopyranosyl and arabinopyranosyl steviol glycoside derivatives from Stevia rebaudiana (Bertoni) Bertoni,Phytochemistry,2017年,Vol.135,p.106-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レバウディオサイドD、および
下記式(1):
【化1】
(式中、
が、Xyl(1-2)Glc1-を表し、かつ、RがGlc(1-2)[Glc(1-3)]Glc1-を表し、
Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す)
で示される化合物またはその塩もしくは水和物、
を含み、
レバウディオサイドDおよび式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の合計含有量が30~600ppmであり、
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が、前記合計含有量に対して質量基準で0.5~95%である、飲料。
【請求項2】
レバウディオサイドDの含有量が10~300ppmである、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が1~400ppmである、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
前記合計含有量が150~400ppmである、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が、前記合計含有量に対して質量基準で0.5~25%である、請求項1~4のいずれかに記載の飲料。
【請求項6】
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が、前記合計含有量に対して質量基準で25%~95%である、請求項1~4のいずれかに記載の飲料。
【請求項7】
式(1)の化合物が下記式(3):
【化2】
で表される化合物である、請求項1~6のいずれかに記載の飲料。
【請求項8】
レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドG、レバウディオサイドI、レバウディオサイドJ、レバウディオサイドK、レバウディオサイドM、レバウディオサイドN、レバウディオサイドO、レバウディオサイドQ、レバウディオサイドR、ズルコサイドA、ルブソシド、ステビオールモノシド、ステビオールビオシドおよびステビオシドからなる群から選択される一種以上のステビオール配糖体をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の飲料。
【請求項9】
発泡性飲料である、請求項1~8のいずれかに記載の飲料。
【請求項10】
ショ糖換算のBrixが1~13である、請求項1~9のいずれかに記載の飲料。
【請求項11】
アルコール含有量が0.05v/v%未満である、請求項1~10のいずれかに記載の飲料。
【請求項12】
レバウディオサイドD、および
下記式(1):
【化3】
(式中、
が、Xyl(1-2)Glc1-を表し、かつ、RがGlc(1-2)[Glc(1-3)]Glc1-を表し、
Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す)
で示される化合物またはその塩もしくは水和物を飲料に添加することを特徴とする、飲料の泡保持改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡保持性を有する飲料および飲料における泡保持性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
泡保持性を有する飲料は、幅広い層の消費者に好んで飲用されている。現在市販されている泡保持性を有する飲料は多種多様であるが、その多くは炭酸飲料であり、容器を開栓した際又はコップ等の容器に注いだ際の泡立ちにより飲用者を視覚的に楽しませたり、飲用者にのど越しの爽快感を与えたりする等の特性を有している。
【0003】
近年では、炭酸飲料に限らず、コーヒー飲料などの様々な飲料においても容器に注いだ際に生じる気泡(フォーム)が保持される飲料が求められており、これまでに種々の起泡性飲料や飲料用の泡品質改良剤などが報告されている。特許文献1では、所定量のサポニンとゲル化温度が50℃以下である増粘剤とを含有する気泡性飲料が報告されている。特許文献2では、米糠タンパク質の分解物を含有する飲料用泡品質改良剤やそれを含有する飲料が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-13216号公報
【文献】特開2017-216931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような状況から、現在、泡保持性を有する新規な飲料や泡保持性を改善する方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、飲料にレバウディオサイドD(以下、「Reb.D」とも称する)および特定の構造を有するステビオール配糖体を所定量含有させることで、予想外にも飲料の泡保持性を改善することができることを知得した。本発明は、上記知見に基づくものである。
【0007】
本発明には以下の態様の発明が含まれる。
[1]
レバウディオサイドD、および
下記式(1):
【化1】
(式中、
が、Xyl(1-2)Glc1-を表し、かつ、RがGlc(1-2)[Glc(1-3)]Glc1-を表し、
Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す)
で示される化合物またはその塩もしくは水和物、
を含み、
レバウディオサイドDおよび式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の合計含有量が30~600ppmであり、
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が、前記合計含有量に対して質量基準で0.5~95%である、飲料。
[2]
レバウディオサイドDの含有量が10~300ppmである、[1]に記載の飲料。[3]
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が1~400ppmである、[1]または[2]に記載の飲料。
[4]
前記合計含有量が150~400ppmである、[1]~[3]のいずれかに記載の飲料。
[5]
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が、前記合計含有量に対して質量基準で0.5~25%である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[6]
式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量が、前記合計含有量に対して質量基準で25%~95%である、[1]~[4]のいずれかに記載の飲料。
[7]
式(1)の化合物が下記式(3):
【化2】
で表される化合物である、[1]~[6]のいずれかに記載の飲料。
[8]
レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドE、レバウディオサイドF、レバウディオサイドG、レバウディオサイドI、レバウディオサイドJ、レバウディオサイドK、レバウディオサイドM、レバウディオサイドN、レバウディオサイドO、レバウディオサイドQ、レバウディオサイドR、ズルコサイドA、ルブソシド、ステビオールモノシド、ステビオールビオシドおよびステビオシドからなる群から選択される一種以上のステビオール配糖体をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の飲料。
[9]
発泡性飲料である、[1]~[8]のいずれかに記載の飲料。
[10]
ショ糖換算のBrixが1~13である、[1]~[9]のいずれかに記載の飲料。[11]
アルコール含有量が0.05v/v%未満である、[1]~[10]のいずれかに記載の飲料。
[12]
レバウディオサイドD、および
下記式(1):
【化3】
(式中、
が、Xyl(1-2)Glc1-を表し、かつ、RがGlc(1-2)[Glc(1-3)]Glc1-を表し、
Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す)
で示される化合物またはその塩もしくは水和物を飲料に添加することを特徴とする、飲料の泡保持改善方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、泡保持性を有する飲料および飲料における泡保持性を改善する方法を提供することができる。本発明の一態様の飲料は、Reb.Dのみを甘味料として含む飲料よりも長い泡保持時間をもたらすことができる。また、本発明の他の態様の飲料は、Reb.Dのみを甘味料として含む飲料よりも甘味後引きを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は泡保持試験に用いた器具の概略図である。図1(b)は、泡保持試験において泡が消失したタイミングを判定する基準を示した写真である。
図2】種々の配糖体A割合における泡保持時間と泡立ち量を示すグラフである。図2(a)はReb.D精製品に対する配糖体Aの割合が0.0%および25.0~100.0%の泡保持時間を示し、図2(b)はReb.D精製品に対する配糖体Aの割合が0.0~20.0%の泡保持時間を示す。
図3】発泡性飲料(炭酸飲料)における、泡保持効果を示すグラフである。
図4】種々の配糖体A割合における甘味後引き評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。また、本明細書は、2019年8月9日に出願された本願優先権主張の基礎となる日本国特許出願(特願2019-148020号)の明細書および図面に記載の内容を包含する。
【0011】
本明細書において、「レバウディオサイド」、「Reb」および「Reb.」は同じ意味を表すものであり、いずれも「rebaudioside」を意味するものである。同様に、本明細書において、「ズルコシド」は「dulcoside」を意味するものである。
【0012】
本明細書において「ppm」とは、特に明記しない限り、「質量ppm」を意味する。また、通常飲料の比重は1であるため、「質量ppm」は「mg/L」と同視し得る。また、本明細書において「室温」とは「約25℃」を意味する。本明細書において、「約」との文言は、主体が「約」に続く数値の±10%、の範囲に存在することを意味する。
【0013】
1. 泡保持性を有する飲料
上記のとおり、本発明者らは、飲料にReb.Dおよび特定の構造を有するステビオール配糖体(以下、「配糖体A」とも称する)を所定量含有させることで予想外にも泡保持性を有する飲料を得た。配糖体Aは下記式(1):
【化4】
(式中、
が、Xyl(1-2)Glc1-を表し、かつ、RがGlc(1-2)[Glc(1-3)]Glc1-を表し、
Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す)
で示される化合物またはその塩もしくは水和物である。なお、糖鎖中のグルコース分子とキシロース分子は、それぞれグルコピラノシルとキシロピラノシルとも称される。
【0014】
したがって、本発明の一態様の飲料は、Reb.Dおよび配糖体Aを含み、レバウディオサイドDおよび配糖体Aの合計含有量が30~600ppmであり、配糖体Aの含有量が、合計含有量に対して質量基準で0.5~95%である飲料である。
【0015】
[レバウディオサイドD(Reb.D)]
本発明の飲料に含まれるレバウディオサイドDは、ジテルペン骨格に5つの糖が付加された構造を有し、具体的には下記の化学式で示される。
【化5】
【0016】
Reb.Dは、非常に高い甘味を有し(砂糖の約300倍程度)、一般的に広く流通しているReb.Aよりも後味等の面で優れる。本発明の飲料に用いるReb.Dは、特に限定されないが、植物由来物、化学合成物、または生合成物であってもよい。例えば、Reb.Dを多く含む植物体から単離、精製してもよいが、化学合成や生合成によって得てもよい。また、本発明の飲料に用いるReb.Dは100%純粋なものでなくてもよく、他のステビオール配糖体との混合物であってもよい。本発明の一態様において、Reb.Dはステビア抽出物を精製したものであり、Reb.D以外のステビオール配糖体もその精製物中に含有されていてもよい。あるいは、Reb.DはReb.Mを分解することで得たものであってもよい。または市販のReb.D精製品を用いてもよい。
【0017】
[配糖体A]
本発明の飲料に含まれる配糖体Aは、上記のとおり、式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物である。配糖体Aは、その化学式からわかるように、ステビオールの第13位に3分子のグルコースを含む糖鎖を有し、第19位に1分子のグルコースと1分子のキシロースを有するステビオール配糖体である。式(1)中、Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す。本明細書において、Glcはα-グルコースまたはβ-グルコースであってよく、Xylはα-キシロースまたはβ-キシロースであってよい。あるいは本明細書において、Glcはα-グルコースおよびβ-グルコースであってよく、Xylはα-キシロースおよびβ-キシロースであってよい。そして、「Glc1-」はグルコースの1位の炭素原子がステビオールとグリコシド結合していることを示し、「Glc(1-3)-Glc1-」は「Glc1-」で示されるグルコースの3位の炭素原子に更なるグルコースの1位の炭素原子がグリコシド結合していることを示す。また、「Xyl(1-2)-Glc1-」は「Glc1-」で示されるグルコースの2位の炭素原子にキシロースの1位の炭素原子がグリコシド結合していることを示す。
【0018】
配糖体Aとしては例えば、式(2)、式(2)’、式(3)および式(3)’で示される構造を有する配糖体が含まれる。
【化6】
式(2)で示される配糖体Aは、ステビオールの19位のカルボキシル基にグルコースがβグルコシド結合しており、そのグルコースにキシロースがβ1-2結合しており、式(2)’で示される配糖体Aは、ステビオールの19位のカルボキシル基にグルコースがβグルコシド結合しており、そのグルコースにキシロースがα1-2結合している。式(3)と式(3)’は、それぞれ式(2)と式(2)’の配糖体Aの立体配座をさらに特定した構造を示す。
【0019】
配糖体Aには上記のようにα体やβ体等の異性体も包含される。したがって、本発明の配糖体はα体のみ、β体のみ、またはα体とβ体の混合物のいずれであってもよい。本発明の配糖体は、β体の割合が、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが特に好ましい。なお、α体とβ体は高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography:HPLC)、超高性能液体クロマトグラフィー (Ultra (High)Performance Liquid chromatography:UPLC) 等の公知の方法を用いることにより、単離・精製することができる。
【0020】
配糖体Aは、式(1)で示される化合物だけではなく、その誘導体、塩、若しくは水和物であってもよい。本明細書において、「誘導体」とは、化合物中の小部分の構造上の変化があってできる化合物をいい、例えば、ヒドロキシ基の一部が他の置換基に置換されているような化合物を意味する。したがって、式(1)で示される化合物の誘導体としては、該化合物に含まれるヒドロキシ基の一部が、水素、ハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、シアノ基などから選択される置換基で置換された化合物を含む。本明細書において、「式(1)の化合物の塩」とは式(1)の化合物の生理学的に許容可能な塩、例えばナトリウム塩、を意味する。また、本明細書について「式(1)の化合物の水和物」とは、式(1)の化合物に水分子が付加された化合物を意味する。
【0021】
本発明の飲料に用いる配糖体Aは、特に限定されないが、植物由来物、化学合成物、または生合成物であってもよい。例えば、配糖体Aを含む植物体から単離、精製してもよいが、化学合成や生合成によって得てもよい。化学合成を行う場合は、例えば、下記のスキーム1にしたがって、一般的に入手可能な公知のステビオール配糖体から式(3)の化合物を合成することができる。
【化7】
スキーム1に示したように、式(3)の化合物の合成では、中間体と2糖ヘミアセタール体を、光延反応で縮合することで、式(3)の化合物の骨格を得ることができる。中間体の合成では、既知の天然物であるレバウディオサイドAのステビオール19位のエステル結合をアルカリ加水分解後、糖鎖のヒドロキシ基をアセチル(Ac)基で保護することで中間体を得られる。2糖ヘミアセタール体の合成では、適切に保護されたグルコースアクセプターとキシロースドナーの縮合反応によって、2糖骨格を作り、還元末端1位の保護基を脱保護することで、2糖ヘミアセタール体を得られる。得られた中間体と2糖ヘミアセタール体を、光延反応で縮合することにより、高収率且つ完全なβ選択性で反応が進行し得る。最後に2糖ヘミアセタール体と上記中間体との反応生成物から保護基を脱保護することで、式(3)の化合物を得ることができる。それぞれの工程について以下に説明する。
【0022】
(1)中間体の合成
中間体の合成は、国際公開第2018/181515号に記載の方法で行うことができる。
【0023】
(2)2糖ヘミアセタール体の合成
2糖ヘミアセタール体は、例えば、下記のスキーム2にしたがって合成することができる。
【化8】
スキーム2に示したように、2糖ヘミアセタール体の合成では、グルコースアクセプターに1.1当量のキシロースドナーを加え、モレキュラーシーブス4Åと共にジクロロメタンに溶解させ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体を-20℃で加え、-20℃にて1時間攪拌する。反応終了をTLC(酢酸エチル/ヘキサン=1/1、Rf値=0.2)にて確認後、トリエチルアミンで中和(pH 8)し、モレキュラーシーブス4Åを濾別し、減圧濃縮して得られたシラップをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、溶出液(酢酸エチル/ヘキサン=1/1)にて化合物1を得ることができる。得られた化合物の構造は、任意の核磁気共鳴装置(NMR)、例えば「AVANCE III HD 400 spectrometer」、Bruker社製、を用いて1H-NMRと13C-NMRとを測定することで確認することができる。
【0024】
化合物1を酢酸と水に溶解させ、塩化パラジウムを室温で加え、アルゴン雰囲気下、室温にて18時間攪拌する。反応終了をTLC(クロロホルム/酢酸エチル=2/1、Rf値=0.2)にて確認後、塩化パラジウムを濾別し、減圧濃縮して得られたシラップをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、溶出液(クロロホルム/酢酸エチル=2/1)にて2糖ヘミアセタール体を得ることができる。
【0025】
(3)式(3)の化合物の合成
【化9】
スキーム3に示したように、化合物2の合成では、2糖ヘミアセタール体(1.1当量)と中間体(1.0当量)を1,4-ジオキサンに溶解させ、トリブチルホスフィン、1,1’-アゾビス(N,N’-ジメチルホルムアミド)(TMAD)を室温で加え、60℃にて1時間攪拌する。反応終了をTLC(トルエン/酢酸エチル=3/2、Rf値=0.2)にて確認後、酢酸エチルで希釈し、有機層を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを濾別し、減圧濃縮して得られたシラップをシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、溶出液(トルエン/酢酸エチル=3/2)にて化合物2を得ることができる。
【0026】
化合物2を溶媒(メタノール:THF=1:1)に溶解させ、ナトリウムメトキサイドを4℃で加え、室温にて1時間攪拌する。反応終了をTLC(クロロホルム/メタノール/水=5/4/0.1、Rf値=0.1)にて確認後、Amberlite120B(H)を加え中和し、減圧濃縮して得られるシラップをゲルろ過カラム(GEHealthcare、SephadexLH-20、エタノール)に供することで式(3)の化合物が得られる。
【0027】
配糖体Aは、砂糖(ショ糖)よりも高い甘味を有し、飲食品等に少量含まれるだけで甘みに影響を与えることができる。本発明の一態様において、配糖体A、たとえば、式(3)の化合物は、砂糖よりも高い甘味度を有し、甘味と苦味の後引きが少なく、苦味は砂糖を含めた他の成分に比べ少ない。
【0028】
[飲料]
本発明の飲料は、炭酸飲料のような発泡性飲料に限定されず、例えば、コーヒー飲料、茶飲料、スポーツドリンク、フレーバーウォーターまたは果汁飲料などであってもよい。本発明の一態様において、本発明の飲料は発泡性飲料である。本明細書において、「発泡性飲料」とは、飲料中から気泡(バブル)が発生する飲料である。本明細書において、飲料中に発生する気泡を「バブル」と称し、飲料の液面上に形成される気泡を「フォーム」と称することがある。また、本明細書において「泡保持性を有する」とは、フォームが発生して維持されることを意味し、「泡保持性の改善」とは、フォームがより長い時間維持されるように改善することを意味する。
【0029】
発泡性飲料の例としては、炭酸飲料が挙げられる。炭酸飲料は炭酸ガスを含む飲料であり、そのような炭酸ガスとしては、飲料に別途注入する炭酸ガスや、原料の一部が発酵することによって発生する炭酸ガスなどが含まれる。炭酸飲料としては、特に限定されないが、清涼飲料水、非アルコール飲料、アルコール飲料等が挙げられる。具体的には、スパークリング飲料、コーラ、ダイエットコーラ、ジンジャーエール、サイダー、果汁フレーバー炭酸飲料及び果汁風味が付与された炭酸水等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明の一態様による飲料はReb.Dおよび配糖体Aを含む。本明細書において、Reb.Dおよび配糖体Aを含むとは、Reb.Dと配糖体Aとが混合物として飲料に添加されている場合に限定されず、Reb.Dと配糖体Aが別々に飲料に添加された場合も包含する。すなわち、飲料にReb.Dおよび配糖体Aを含ませる場合の例として、ステビア植物から抽出した甘味物質であってReb.Dと配糖体Aの両方が含まれている甘味物質を飲料に添加する場合や、Reb.Dと配糖体Aそれぞれの精製物を混合した甘味組成物を飲料に添加する場合や、該精製物を別々に飲料に添加する場合が挙げられる。
【0031】
本発明の飲料中のReb.Dと配糖体Aの合計含有量は、30~600ppmである。合計含有量がこの範囲であることで、本発明の飲料の泡保持性が改善される。本発明の他の態様において、飲料中のReb.Dと配糖体Aの合計含有量は、40~600ppm、50~600ppm、70~600ppm、80~600ppm、90~600ppm、100~600ppm、110~590ppm、120~580ppm、130~570ppm、140~560ppm、150~550ppm、160~540ppm、170~530ppm、180~520ppm、190~510ppm、200~500ppm、210~490ppm、220~480ppm、230~470ppm、240~460ppm、250~450ppm、260~440ppm、270~430ppm、280~420ppm、290~410ppm、300~400ppm、300~350ppm、300~600ppm、310~590ppm、320~580ppm、330~570ppm、340~560ppm、350~550ppm、360~540ppm、370~530ppm、380~520ppm、390~510ppm、400~500ppm、380~520ppm、115~500ppm、120~470ppm、150~450ppm、180~420ppm、200~400ppm、220~380ppm、250~350ppm、250~500ppm、280~480ppmまたは300~450ppmであってもよく、好ましくは150~400ppm、より好ましくは170~300ppmである。Reb.Dと配糖体Aはスクロース(ショ糖)に近い自然な甘みを有し、上記範囲内であれば、泡保持効果をもたらしつつ、飲料に好ましい甘味を付与することができる。本発明の一態様において、Reb.Dのみを甘味料として含む飲料よりも長い泡保持時間をもたらすことができる。飲料中のReb.Dと配糖体Aの合計含有量は原料の添加量から算出してもよく、液体クロマトグラフィー等の公知の分析方法を用いて測定してもよい。
【0032】
本発明の一態様による飲料中のReb.Dの含有量は、10~300ppmである。本発明の他の態様において、飲料中のReb.Dの含有量は、20~300ppm、30~300ppm、40~300ppm、50~300ppm、60~290ppm、70~280ppm、80~270ppm、90~260ppm、100~250ppm、110~240ppm、120~230ppm、130~220ppm、140~210ppm、150~200ppm、50~250ppm、100~250ppm、100~300ppm、150~300ppmまたは200~300ppmであってもよく、好ましくは、20~250ppmである。Reb.Dはスクロース(ショ糖)に近い自然な甘みを有し、上記範囲内であれば、泡保持効果をもたらしつつ、飲料に好ましい甘味を付与することができる。飲料中のReb.Dの含有量は原料の添加量から算出してもよく、液体クロマトグラフィー等の公知の分析方法を用いて測定してもよい。
【0033】
本発明の一態様による飲料中の配糖体A(式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物)の含有量は、1~400ppmである。本発明の他の態様において、飲料中の配糖体Aの含有量は、2~400ppm、5~400ppm、10~400ppm、15~400ppm、20~400ppm、40~400ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~50ppm、5~200ppm、5~150ppm、5~100ppm、5~50ppm、10~200ppm、10~150ppm、10~100ppm、10~50ppm、50~400ppm、100~400ppm、150~400ppm、200~400ppm、250~400ppm、300~400ppm、50~350ppm、100~350ppm、150~350ppm、200~350ppm、250~350ppm、300~350ppm、50~300ppm、100~300ppm、150~300ppm、200~300ppm、250~300ppm、50~250ppm、100~250ppm、150~250ppm、または200~250ppmであってもよい。配糖体Aはスクロース(ショ糖)に近い自然な甘みを有するため、上記範囲内であれば、泡保持効果をもたらしつつ、飲料に好ましい甘味を付与することができる。また、本発明の他の態様において、甘味後引き改善の観点からは、配糖体Aの含有量が1~100ppmの範囲であることが好ましく、泡保持性改善の観点からは配糖体Aの含有量が50~400ppmの範囲であることが好ましい。飲料中の配糖体Aの含有量は原料の添加量から算出してもよく、液体クロマトグラフィー等の公知の分析方法を用いて測定してもよい。
【0034】
本発明において、式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量は、飲料中のレバウディオサイドDおよび式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の合計含有量に対して質量基準で0.5~95%である。すなわち、配糖体Aの割合がこの範囲であることで、本発明の飲料の泡保持性が改善される。本発明の他の態様において、配糖体Aの割合は、1.0~95%、1.5~95%、2.0~95%、2.5~95%、3.0~95%、3.5~95%、4.0~95%、4.5~95%、5.0~95%、0.5~90%、1.0~90%、1.5~90%、2.0~90%、2.5~90%、3.0~90%、3.5~90%、4.0~90%、4.5~90%、5.0~90%、0.5~80%、1.0~80%、1.5~80%、2.0~80%、2.5~80%、3.0~80%、3.5~80%、4.0~80%、4.5~80%、5.0~80%、0.5~70%、1.0~70%、1.5~70%、2.0~70%、2.5~70%、3.0~70%、3.5~70%、4.0~70%、4.5~70%、5.0~70%、0.5~60%、1.0~60%、1.5~60%、2.0~60%、2.5~60%、3.0~60%、3.5~60%、4.0~60%、4.5~60%、5.0~60%、0.5~50%、1.0~50%、1.5~50%、2.0~50%、2.5~50%、3.0~50%、3.5~50%、4.0~50%、4.5~50%、5.0~50%、0.5~40%、1.0~40%、1.5~40%、2.0~40%、2.5~40%、3.0~40%、3.5~40%、4.0~40%、4.5~40%、5.0~40%、0.5~30%、1.0~30%、1.5~30%、2.0~30%、2.5~30%、3.0~30%、3.5~30%、4.0~30%、4.5~30%、5.0~30%、0.5~25%、1.0~25%、1.5~25%、2.0~25%、2.5~25%、3.0~25%、3.5~25%、4.0~25%、4.5~25%、5.0~25%、20~95%、25~95%、30~95%、35~95%、40~95%、45~95%、50~95%、55~95%、60~95%、65~95%、70~95%、75~95%、80~95%、85~95%、25~90%、25~85%、25~80%、25~75%、25~70%、25~65%、25~60%、25~55%、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%または40~60%であってもよい。また、本発明の他の態様において、甘味後引き改善の観点からは、配糖体Aの割合が0.5 ~25%の範囲であることが好ましく、泡保持性改善の観点からは配糖体Aの割合が25%~95%の範囲であることが好ましい。Reb.Dは広く一般に使用されているReb.Aよりも甘味後引きが少ないが、依然としてショ糖に対しては甘味後引きが感じられる。本発明の一態様の飲料は、そのようなReb.Dのみを甘味料として含む飲料よりも甘味後引きを低減させることができる。
【0035】
本発明の飲料のpHは特に限定されないが、2.5~6.0であってもよい。pHが2.5以上であれば飲料としては酸味が強すぎず、pHが6.0以下であればスッキリとした後味も維持される。本発明の他の態様の飲料のpHは、2.5~4.0である。pHをこの範囲とすることで、保存時の微生物等の発生を抑え、かつ、スッキリとした味わいを提供することができる。また本発明の他の態様において、飲料のpHは、3.0~4.5、2.6~3.9、2.7~3.8、2.8~3.7、2.9~3.6または3.0~3.5であってもよい。なお、pHが4.0を超える飲料の場合は、無菌環境下での充填・密封工程を実施することなどによって、保存時の微生物変敗を抑えることができる。
【0036】
本発明の一態様による飲料は、Reb.DおよびM以外の他のステビオール配糖体を含んでいてもよい。他のステビオール配糖体は特に限定されないが、本発明の一態様において、本発明の飲料はレバウディオサイドA(Reb.A)、レバウディオサイドB(Reb.B)、レバウディオサイドC(Reb.C)、レバウディオサイドE(Reb.E)、レバウディオサイドF(Reb.F)、レバウディオサイドG(Reb.G)、レバウディオサイドI(Reb.I)、レバウディオサイドJ(Reb.J)、レバウディオサイドK(Reb.K)、レバウディオサイドN(Reb.N)、レバウディオサイドO(Reb.O)、レバウディオサイドQ(Reb.Q)、レバウディオサイドR(Reb.R)、ズルコサイドA、ルブソシド、ステビオールモノシド、ステビオールビオシドおよびステビオシドからなる群から選択される一種以上のステビオール配糖体をさらに含む。
【0037】
本発明の一態様において、Reb.Aの含有量は、0~100ppm、1~100ppm、1~60ppm、1~50ppm、1~40ppm、1~30ppm、1~20ppm、1~10ppmまたは1~5ppmである。
【0038】
本発明の一態様において、Reb.Bの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppm、1~30ppmまたは1~10ppmである。
【0039】
本発明の一態様において、Reb.Cの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppm、1~30ppmまたは1~10ppmである。
【0040】
本発明の一態様において、Reb.Eの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0041】
本発明の一態様において、Reb.Fの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0042】
本発明の一態様において、Reb.Gの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0043】
本発明の一態様において、Reb.Iの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0044】
本発明の一態様において、Reb.Jの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0045】
本発明の一態様において、Reb.Kの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0046】
本発明の一態様において、Reb.Mの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0047】
本発明の一態様において、Reb.Nの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0048】
本発明の一態様において、Reb.Oの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0049】
本発明の一態様において、Reb.Qの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0050】
本発明の一態様において、Reb.Rの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0051】
本発明の一態様において、ズルコサイドAの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0052】
本発明の一態様において、ルブソシドの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0053】
本発明の一態様において、ステビオールモノシドの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0054】
本発明の一態様において、ステビオールビオシドの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0055】
本発明の一態様において、ステビオシドの含有量は、0~300ppm、1~300ppm、1~200ppm、1~150ppm、1~100ppm、1~80ppm、1~50ppmまたは1~30ppmである。
【0056】
本発明の他の態様において、本発明の飲料は、ステビオール配糖体以外の甘味料を含んでいてもよい。そのような甘味料としては特に限定されないが、例えば、スクロース、果糖ぶどう糖液糖、エリスリトール、モグロシドV、コーンシロップ、アスパルテーム(L-フェニルアラニン化合物とも称される)、スクラロース、アセスルファムカリウム、サッカリンおよびキシリトールからなる群から選択される一種以上の甘味料をさらに含んでいてもよい。中でもすっきりさ、飲みやすさ、自然な味わい、適度なコク味の付与の観点から、天然甘味料を用いることが好ましく、特に、果糖ぶどう糖液糖、スクロース、コーンシロップが好適に用いられる。これら甘味成分は一種類のみ用いてもよく、また複数種類を用いてもよい。これらの甘味料は、飲料中にショ糖換算のBrixで5.0以下、4.5以下、4.0以下、3.5以下、3.0以下、2.5以下、2.0以下、1.5以下、1.0以下または0.5以下に相当する量で含まれていてもよく、下限値は0.1以上であってもよい。
【0057】
本発明の飲料が発泡性飲料である場合のガス圧は特に限定されないが、2.2kgf/cm~5.0kgf/cmであってもよい。本発明の他の態様において、発泡性飲料のガス圧は、2.2kgf/cm~4.5kgf/cm、2.2kgf/cm~4.0kgf/cm、2.2kgf/cm~3.5kgf/cm、2.2kgf/cm~3.3kgf/cm、2.2kgf/cm~3.2kgf/cm、2.3kgf/cm~4.0kgf/cm、2.3kgf/cm~3.5kgf/cm、2.3kgf/cm~3.2kgf/cm、3.0kgf/cm~4.0kgf/cm、3.0kgf/cm~3.5kgf/cmである。発泡性飲料におけるガスの含量は、ガス圧で規定することができる。本明細書において「ガス圧」とは、特に記載がなければ、容器内の発泡性飲料の液温を20℃にし、その後一度ヘッドスペースのエアを大気開放(スニフト)した後の飲料における炭酸ガスのガス圧をいう。したがって、本発明の飲料は、容器詰めとすることができる。容器は、いずれの形態・材質の容器を使用することができ、例えば、ガラスビン、缶、樽、又はペットボトル等の容器であってもよい。ガス圧の測定は、液温20℃にした飲料をガス内圧計に固定し、一度ガス内圧計活栓を開いて大気開放することでヘッドスペース内の炭酸ガスを抜いた後、再度活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達した時の値を読み取ることにより行うことができる。本明細書においては、特に記載がなければ、当該方法を用いて発泡性飲料のガス圧を測定する。
【0058】
本発明の飲料のショ糖換算のBrixは特に限定されないが、好ましくは1~15、より好ましくは3~14、さらに好ましくは5~13、特に好ましくは7~11である。ここで、Brixは、ショ糖(スクロース)に対するステビオール配糖体等の各甘味料の甘味度と、各甘味料の含有量から計算することができる。ショ糖に対して、Reb.A、Reb.DおよびReb.Mはいずれも約300倍程度の甘味を有する。従って、Brix1に相当するステビオール配糖体の量は、Reb.A、Reb.DおよびReb.Mについておよそ33.3ppm程度と計算することができる。同様にして、他のステビオール配糖体や、ステビオール配糖体以外の甘味料についてもBrixを算出することができる。例えば、ショ糖に対してアセスルファムカリウムは約200倍、スクラロースは約600倍、アスパルテームは約180倍の甘味を有する。なお、ショ糖の甘味1に対する各種甘味料の甘味の相対比は、公知の砂糖甘味換算表(例えば、ビバレッジジャパン社「飲料用語辞典」資料11頁)等から求めることができる。ただし、甘味の値が数値範囲で記載されているものや、文献によって値が異なる甘味料については、ショ糖の甘味1に対する甘味の相対比を官能試験によって定める。そのような官能試験としては、例えば、Brix3.0から5.0まで0.5刻となるよう砂糖を純水に添加したサンプルを調製し、その中から所定濃度の甘味料の水溶液と同等の甘味強度を持つ砂糖添加サンプルを選択する方法が挙げられる。
【0059】
本発明の飲料は、アルコールを含有してもよい。アルコール飲料とは、アルコールを含有する飲料のことであるが、ここでいうアルコールとは、特に断らない限り、エチルアルコール(エタノール)を意味する。本発明に係るアルコール飲料は、アルコールを含有していれば特に種類は問わない。ビール、発泡酒、チューハイやカクテルのようなアルコール含有量が0.05~40v/v%、1.0~10v/v%、2.0~9.0v/v%または3.0~8.0v/v%の飲料であってもよく、ノンアルコールビール、チューハイテイスト飲料や清涼飲料水のようなアルコール含有量が0.05v/v%未満の飲料であってもよい。本発明の飲料はアルコール含有量が0.05v/v%未満であることが好ましく、さらに0.00v/v%であることが好ましい。なお本明細書において、アルコール含有量は体積/体積基準の百分率(v/v%)で示されるものとする。また、飲料のアルコール含有量は、公知のいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、振動式密度計によって測定することができる。
【0060】
本発明の飲料の風味(フレーバー)は特に限定されず、種々の風味に調整することができる。例えば、本発明の飲料は、オレンジ風味、レモン風味、ライム風味、グレープ風味、ジンジャーエール風味、カシス風味、緑茶風味、ウーロン茶風味、紅茶風味、コーヒー風味またはコーラ風味の飲料であってもよい。本発明の飲料の風味は、果汁、酸味料、香料、植物の抽出物、乳製品、その他のフレーバー等、食品添加物として認可されている成分、又は認可されていなくても古くから食経験があり、一般的に安全であると認識されている成分を添加することで調整することができる。本発明の一態様において、本発明の飲料はビールテイスト飲料ではない。
【0061】
本発明の飲料はさらに、カラメル、桂皮アルデヒド(シンナムアルデヒド)、リン酸、バニラおよびカフェインからなる群から選択される一種以上を含んでいてもよい。これらの成分を含むことで泡保持性をさらに改善し得る。ここで、カフェインは、食品添加物として使用できる精製品(カフェイン含量98.5%以上の精製品)や、食品として使用できる粗精製品(カフェイン含量50~98.5%)の他、カフェインを含有する植物(茶葉、コーラの実、コーヒー豆、ガラナ等)の抽出物又はその濃縮物の形態であってもよい。本発明の一態様において、飲料のカフェインの含量は、1~200ppmとすることができる。カフェインの定量はいずれの方法を用いて行ってもよいが、例えば、飲料をメンブランフィルター(ADVANTEC製 酢酸セルロース膜0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に試料を供すことにより行うことができる。
【0062】
別の態様として、本発明の飲料は桂皮アルデヒド(シンナムアルデヒド)を含有することができる。ここで、シンナムアルデヒド(cinnamaldehyde、CCH=CH-CHO、分子量132.16)は、シナモンの香り成分として知られる芳香族アルデヒドの一種であり、香料製剤として入手可能である。本発明の一態様において、飲料は、シンナムアルデヒドを特定範囲の量で含有することができる。例えば、本発明の飲料中のシンナムアルデヒドの含量は、0.5~50ppm、好ましくは0.5~32ppm、1.0~20ppmにすることができる。シンナムアルデヒドの定量は、例えば、ガスクロマトグラフィー、質量分析計等を用いる方法により定量することができる。
【0063】
更に別の態様として、本発明の飲料はカラメル(またはカラメル色素)を含有することができる。ここで、カラメルとしては、食用に適する公知のカラメル色素を使用することができる。例えば、砂糖又はブドウ糖に代表される食用炭水化物を熱処理して得られた物、酸もしくはアルカリを加えて食用炭水化物を熱処理したものなどを用いることができる。また、果汁や野菜汁に含まれる糖分をカラメル化して使用することもでき、この場合、加熱処理、酸やアルカリによる処理などによって糖分をカラメル化することができる。本発明の飲料は、カラメル色素を特定範囲の含量で含有することができる。
【0064】
本発明の他の態様において、本発明の飲料はカラメル(またはカラメル色素)を実質的に含まない。カラメルを実質的に含まないことで、飲料への着色を抑えることができる。本明細書において、「実質的にカラメルを含まない」とは飲料の色に影響しない程度の少量のカラメルを不純物として含む場合を包含する。
【0065】
本発明の飲料は、泡が安定化している。例えば、本発明の飲料を容器に注いだ際に発生する泡が、一般的な飲料よりも長い間維持される。飲料の泡保持性は次のように評価することができる。
(1)水にReb.Dと配糖体Aとを所定の量添加して水溶液を調製し、その水溶液(150mL)をガラス瓶に入れて栓をする。
(2)水溶液を入れたガラス瓶を冷蔵庫内(4℃)にて3時間以上静置する。
(3)冷蔵庫からガラス瓶を取出し、開栓した後、図1(a)に示すようにガラス瓶の開口部側にメスシリンダーを覆い被せる。密閉されない限りにおいて、ガラス瓶とメスシリンダーは養生テープなどで固定してもよい。
(4)ガラス瓶とメスシリンダーを(3)の状態を維持しながら、2秒程度かけてメスシリンダーが下側に向くように静かに回転させる。
(5)ガラス瓶に入っている水溶液の全てが、メスシリンダー側に移動した時点を泡保持時間の計測開始時間として測定を開始する。
(6)水溶液上の泡が、所定の状態になるまでの時間を泡保持時間として計測する。ここで、「所定の状態」は測定に用いる器具のサイズ等に基づいて適宜定めることができ、例えば、図1(b)に示すようにメスシリンダーの内壁周辺に3列程度の泡になった状態を「所定の状態」としてもよい。
【0066】
本発明の飲料の泡保持時間は、上記の方法で測定した場合に、20秒以上であることが好ましい。本発明の一態様において、飲料の泡保持時間は、20秒~3000秒であり、好ましくは、100~3000秒であり、より好ましくは500~3000秒である。
【0067】
本発明の飲料は、加熱殺菌をされ、容器に詰められた状態の容器詰飲料として調製してもよい。容器としては、特に限定されず、例えば、PETボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶などを挙げることができる。加熱殺菌を行う場合、その種類は特に限定されず、例えばUHT殺菌及びレトルト殺菌等の通常の手法を用いて行うことができる。加熱殺菌工程の温度は特に限定されないが、例えば65~130℃、好ましくは85~120℃で、10~40分である。ただし、上記の条件と同等の殺菌価が得られれば適当な温度で数秒、例えば5~30秒での殺菌でも問題はない。
【0068】
本発明の飲料のエネルギー(総エネルギー量)は、特に限定されないが、0~50Kcal/100ml、0~45Kcal/100ml、0~40Kcal/100ml、0~35Kcal/100ml、0~30Kcal/100ml、0~24Kcal/100ml、0~22Kcal/100ml、0~20Kcal/100ml、0~15Kcal/100ml、0~10Kcal/100ml、0~5Kcal/100ml、0.1~50Kcal/100ml、0.1~45Kcal/100ml、0.1~40Kcal/100ml、0.1~35Kcal/100ml、0.1~30Kcal/100ml、0.1~24Kcal/100ml、0.1~22Kcal/100ml、0.1~20Kcal/100ml、0.1~15Kcal/100ml、0.1~10Kcal/100ml、0.1~5Kcal/100ml、1~50Kcal/100ml、1~45Kcal/100ml、1~40Kcal/100ml、1~35Kcal/100ml、1~30Kcal/100ml、1~24Kcal/100ml、1~22Kcal/100ml、1~20Kcal/100ml、1~15Kcal/100ml、1~10Kcal/100ml、1~5Kcal/100ml、5~50Kcal/100ml、5~45Kcal/100ml、5~40Kcal/100ml、5~35Kcal/100ml、5~30Kcal/100ml、5~24Kcal/100ml、5~20Kcal/100ml、5~15Kcal/100ml、5~10Kcal/100ml、10~50Kcal/100ml、10~45Kcal/100ml、10~40Kcal/100ml、10~35Kcal/100ml、10~30Kcal/100ml、10~24Kcal/100ml、10~20Kcal/100ml、10~15Kcal/100ml、15~50Kcal/100ml、15~45Kcal/100ml、15~40Kcal/100ml、15~35Kcal/100ml、15~30Kcal/100ml、15~24Kcal/100ml、15~20Kcal/100ml、20~50Kcal/100ml、20~45Kcal/100ml、20~40Kcal/100ml、20~35Kcal/100ml、20~30Kcal/100ml、20~24Kcal/100ml、24~50Kcal/100ml、24~45Kcal/100ml、24~40Kcal/100ml、24~35Kcal/100ml、24~30Kcal/100mlとなり得る。
【0069】
本発明の飲料の製造方法は特に限定されず、通常の飲料の製造方法によって製造することができる。例えば、本発明の飲料に含まれる成分を濃縮したシロップを調製し、発泡性または非発泡性の飲料水を添加して所定の濃度に調整してもよく、非発泡性の飲料水を添加した後に炭酸ガスを供給して発泡性飲料を調製してもよい。あるいは、上記のようなシロップを調製せずに、飲料に直接所定の成分を添加することで本発明の飲料を調製してもよい。
【0070】
2.飲料における泡保持を改善させる方法
本発明は、第2の態様として、飲料における泡保持を改善させる方法を提供する。本発明の飲料における泡保持を改善する方法は、レバウディオサイドD、および
下記式(1):
【化10】
(式中、
が、Xyl(1-2)Glc1-を表し、かつ、RがGlc(1-2)[Glc(1-3)]Glc1-を表し、
Glcはグルコースを表し、Xylはキシロースを表す)
で示される化合物またはその塩もしくは水和物を飲料に添加することを含む。本明細書において、「レバウディオサイドD、および式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物を飲料に添加すること」とは、飲料にReb.Dおよび配糖体Aを含有させることであり、所定量の甘味物質を含有させる方法は特に限定されない。したがって、Reb.Dおよび配糖体Aは飲料の製造時に原料として予め配合していてもよく、飲料を製造後に別途添加してもよく、配合した原料から分解等によって発生してもよい。
【0071】
本発明の泡保持を改善させる方法は、上記工程以外に他の工程を含んでいてもよい。本発明の一態様において、飲料におけるレバウディオサイドDおよび式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の合計含有量を30~600ppmとし、かつ、式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の含有量を合計含有量に対して質量基準で0.5~95%とする工程を含んでいてもよい。
【0072】
本発明の他の態様における泡保持を改善させる方法は、Reb.Dと配糖体Aの合計含有量が、40~600ppm、50~600ppm、70~600ppm、80~600ppm、90~600ppm、100~600ppm、110~590ppm、120~580ppm、130~570ppm、140~560ppm、150~550ppm、160~540ppm、170~530ppm、180~520ppm、190~510ppm、200~500ppm、210~490ppm、220~480ppm、230~470ppm、240~460ppm、250~450ppm、260~440ppm、270~430ppm、280~420ppm、290~410ppm、300~400ppm、300~350ppm、300~600ppm、310~590ppm、320~580ppm、330~570ppm、340~560ppm、350~550ppm、360~540ppm、370~530ppm、380~520ppm、390~510ppm、400~500ppm、380~520ppm、115~500ppm、120~470ppm、150~450ppm、180~420ppm、200~400ppm、220~380ppm、250~350ppm、250~500ppm、280~480ppmまたは300~450ppmであってもよく、好ましくは150~400ppm、より好ましくは170~300ppmである飲料を調製する工程を含んでいてもよい。
【0073】
また、「1.泡保持性を有する飲料」と同様に、本発明の泡保持を改善させる方法に用いる飲料は、Reb.Dおよび配糖体A以外のステビオール配糖体や、ステビオール配糖体以外の甘味料を含んでいてもよい。Reb.Dおよび配糖体Aの各含有量および比率、飲料のフレーバー、ガス圧、pH等も、「1.泡保持性を有する飲料」と同様であってもよい。
【0074】
3.飲料の泡保持性を改善するためのReb.Dおよび式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物の組合せの使用
本発明は、第3の態様として、泡保持性を改善するためのReb.Dおよび式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物(配糖体A)の組合せの使用を提供する。本発明者らは、驚くべきことにステビオール配糖体の一種であるReb.Dおよび配糖体Aの組合せに飲料の泡保持性を改善させる効果を知得し、本発明に想到するに至った。
【0075】
本発明の飲料の泡保持性を改善するためのReb.Dおよび配糖体Aの組合せの使用において、Reb.Dおよび配糖体Aの組合せは飲料に対して、合計で30~600ppm、40~600ppm、50~600ppm、70~600ppm、80~600ppm、90~600ppm、100~600ppm、110~590ppm、120~580ppm、130~570ppm、140~560ppm、150~550ppm、160~540ppm、170~530ppm、180~520ppm、190~510ppm、200~500ppm、210~490ppm、220~480ppm、230~470ppm、240~460ppm、250~450ppm、260~440ppm、270~430ppm、280~420ppm、290~410ppm、300~400ppm、300~350ppm、300~600ppm、310~590ppm、320~580ppm、330~570ppm、340~560ppm、350~550ppm、360~540ppm、370~530ppm、380~520ppm、390~510ppm、400~500ppm、380~520ppm、115~500ppm、120~470ppm、150~450ppm、180~420ppm、200~400ppm、220~380ppm、250~350ppm、250~500ppm、280~480ppmまたは300~450ppmであってもよく、好ましくは150~400ppm、より好ましくは170~300ppmの量で用いられ得る。
【0076】
Reb.Dおよび配糖体Aの各含有量および比率、飲料のフレーバー、ガス圧、pH等は、「1.泡保持性を有する飲料」と同様であってもよい。
【0077】
本発明の飲料の泡保持性を改善するためのReb.Dおよび配糖体Aならびにこれらの組合せからなる群から選択される甘味物質の使用により改善される泡保持時間は、「1.泡保持性を有する飲料」に記載の方法で測定した場合に、20秒以上であることが好ましい。
【0078】
4.泡保持性改善剤
本発明は、第4の態様として、泡保持性改善剤を提供する。本明細書において、「泡保持性改善剤」とは、飲料に添加された場合に、その飲料の泡保持性を改善する物質のことをいう。本発明の泡保持性改善剤は、好ましくは、飲料に添加された際に、泡保持性改善剤自体の味を消費者が認識することなく、その飲料自体の泡保持性を改善することができる。
【0079】
本発明の泡保持性改善剤は、Reb.Dおよび式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物の組合せを含む。また、「1.泡保持性を有する飲料」と同様に、本発明の泡保持性改善剤は、本発明の効果を妨げない限りにおいて、Reb.Dおよび式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物以外のステビオール配糖体や、ステビオール配糖体以外の甘味料を含んでいてもよい。
【0080】
本発明の泡保持性改善剤に含まれるReb.Dおよび式(1)で示される化合物またはその塩もしくは水和物の量は特に限定されないが、泡保持性改善剤の全重量に対して、30~100重量%、40~99重量%、50~98重量%、60~97重量%、70~96重量%または80~95重量%であってもよい。本発明の泡保持性改善剤は実質的にReb.Dおよび配糖体Aのみからなっていてもよい。本明細書において、「実質的にReb.Dおよび配糖体Aのみからなる」とはReb.Dおよび配糖体Aの調製(ステビア抽出物の精製や生合成など)過程において不可避的に含まれる他のステビオール配糖体等の不純物は包含されていてもよいことを意味する。例えば、泡保持性改善剤の全重量に対して、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、1.0重量%以下または0.5重量%以下のReb.Dおよび配糖体A以外のステビオール配糖体や他の不純物を含んでいてもよい。
【0081】
本発明の一態様における泡保持性改善剤中の式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物(配糖体A)の含有量は、飲料中のレバウディオサイドDおよび式(1)の化合物またはその塩もしくは水和物の合計含有量に対して質量基準で0.5~95%であってもよい。本発明の他の態様において、配糖体Aの割合は、1.0~95%、1.5~95%、2.0~95%、2.5~95%、3.0~95%、3.5~95%、4.0~95%、4.5~95%、5.0~95%、0.5~90%、1.0~90%、1.5~90%、2.0~90%、2.5~90%、3.0~90%、3.5~90%、4.0~90%、4.5~90%、5.0~90%、0.5~80%、1.0~80%、1.5~80%、2.0~80%、2.5~80%、3.0~80%、3.5~80%、4.0~80%、4.5~80%、5.0~80%、0.5~70%、1.0~70%、1.5~70%、2.0~70%、2.5~70%、3.0~70%、3.5~70%、4.0~70%、4.5~70%、5.0~70%、0.5~60%、1.0~60%、1.5~60%、2.0~60%、2.5~60%、3.0~60%、3.5~60%、4.0~60%、4.5~60%、5.0~60%、0.5~50%、1.0~50%、1.5~50%、2.0~50%、2.5~50%、3.0~50%、3.5~50%、4.0~50%、4.5~50%、5.0~50%、0.5~40%、1.0~40%、1.5~40%、2.0~40%、2.5~40%、3.0~40%、3.5~40%、4.0~40%、4.5~40%、5.0~40%、0.5~30%、1.0~30%、1.5~30%、2.0~30%、2.5~30%、3.0~30%、3.5~30%、4.0~30%、4.5~30%、5.0~30%、0.5~25%、1.0~25%、1.5~25%、2.0~25%、2.5~25%、3.0~25%、3.5~25%、4.0~25%、4.5~25%、5.0~25%、20~95%、25~95%、30~95%、35~95%、40~95%、45~95%、50~95%、55~95%、60~95%、65~95%、70~95%、75~95%、80~95%、85~95%、25~90%、25~85%、25~80%、25~75%、25~70%、25~65%、25~60%、25~55%、25~50%、25~45%、25~40%、25~35%、40~60%であってもよい。
【0082】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によっては制限されない。
【実施例
【0083】
[実施例A]種々のReb.D:配糖体A比率における泡保持性の評価
本発明の飲料の泡保持性を評価するために、配糖体AとReb.Dとの比率を変えて表1に記載の例1~例13の水溶液を調製した。原料は下記のものを使用した。表1におけるReb.D精製品と配糖体Aの含有量は、それぞれ添加量から計算した。以下の表についても同様である。
(原料)
・水(溶媒):イオン交換水
・Reb.D精製品:純度93%のReb.D精製品
・配糖体A:本明細書のスキーム1に記載の方法で調製した式(3)の化合物。
【0084】
例1~例13の水溶液の泡保持性の評価には下記の器具を用い、下記工程(1)~(6)にしたがって評価した。

(使用器具)
・300mLメスシリンダー(IWAKI製)高さ:33.5cm 直径:45mm
・180mLガラス瓶容器(日本山村硝子株式会社製 PS-W180)開口部直径約20mm
(評価工程)
(1)水にReb.D精製品と配糖体Aとを所定の量添加して水溶液を調製し、その水溶液(150mL)をガラス瓶に入れて栓をする。
(2)水溶液を入れたガラス瓶を冷蔵庫内(4℃)にて3時間以上静置する。
(3)冷蔵庫からガラス瓶を取出し、開栓した後、図1(a)に示すようにガラス瓶の開口部側にメスシリンダーを覆い被せる。メスシリンダー底部とガラス瓶開口部までの距離は約28cmである。
(4)ガラス瓶とメスシリンダーを(3)の状態を維持しながら、2秒程度かけてメスシリンダーが下側に向くように静かに回転させる。
(5)ガラス瓶に入っている水溶液の全てが、メスシリンダー側に移動した時点を泡保持時間の計測開始時間として測定を開始する。
(6)水溶液上の泡が、図1(b)に示すようにメスシリンダーの内壁周辺に3列程度の泡になるまでの時間を泡保持時間として計測する。
【0085】
得られた結果を表1および図2(a)および(b)に示す。泡保持時間はN=2~5の平均値である。図2(a)はReb.D精製品に対する配糖体Aの割合が高い例(25%以上)の対比を示し、図2(b)はReb.D精製品に対する配糖体Aの割合が低い例(20%以下)の対比を示す。これらの結果から、Reb.D精製品に対する配糖体Aの割合が0.5%以上の場合に泡保持時間が延びることがわかる。
【0086】
【表1】
【0087】
[実施例B]種々の合計含有量における泡保持性の評価
Reb.Dと配糖体Aの合計含有量の違いによる泡保持性を評価するために、実施例Aと同様の方法で表2に記載の例14~例18の水溶液を調製した。原料は実施例Aと同じものを用い、評価方法も実施例Aと同じ方法を用いた。結果を表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2の結果から、Reb.Dと配糖体Aの合計含有量が25ppmを超えた場合に泡保持時間が改善されることがわかる。
【0090】
[実施例C]炭酸飲料における泡保持性の評価
炭酸飲料についても泡保持性を評価した。泡保持性を評価する際に、300mLメスシリンダーの代わりに500mLメスシリンダー((SIBATA製)高さ:36cm 直径:55mm)を用い、イオン交換水の代わりに炭酸水(5kgf/cm)を用いたこと、および、水溶液の調製を瓶内で行ったこと以外は、実施例Aと同じ方法で評価を行った。結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
【0092】
表3に示すとおり、炭酸飲料においてもReb.Dと配糖体Aとの組合せによって泡保持性が改善されることがわかった。
【0093】
[実施例D]配糖体Aの甘味後引きへの影響の検討
配糖体Aの甘味後引きへの影響を調べるために、配糖体AとReb.D精製品との割合を変えた表5に記載のサンプル(例21~26)を用意した。事前に配糖体Aの濃度依存性を確認したところ、配糖体Aは濃度によって甘味度が変わることがわかったため、各濃度において表4に記載の甘味度の値を用いて例21~26のサンプルの甘さを揃えた。一方、Reb.Dは下記の実験濃度範囲においては、濃度と甘味相当量が比例関係であることが分かっているため(J. Agric. Food Chem. 2012, 60, 6782-6793)、本実施例ではReb.D精製品の甘味度は318に設定した。なお、サンプル調製時に各サンプルのショ糖換算Brixが同程度であることを甘味料の官能に関して訓練を受けた者(1名)が確認した。
【表4】
【0094】
得られた各水溶液の官能評価を、甘味料の官能に関して訓練を受けた者(8名)がパネラーとなって、下記の手順で行った。

1)室温にて保管したサンプルをカップに注ぐ。
2)配糖体Aの割合が0.0%のサンプル(すなわち、Reb.D精製品のみのもの)を甘味後引きの3点の基準として設定する。
3)各サンプルを10mlずつ口に含み、評価を実施する。評価後はサンプルを吐き出す。サンプル内容は伏せた状態(ブラインド)で実施して官能評価を行い、官能評価開始前と官能評価サンプル間では十分口を漱ぐ(4回以上)。各のサンプルの評価は下記の基準で行う。

1点:甘味後引きが長い
2点:甘味後引きがやや長い
3点:甘味後引きが変わらない
4点:甘味後引きがやや短い
5点:甘味後引きが短い

得られた結果の平均値を表5と図4に示す。

【表5】
【0095】
上記の結果から、配糖体Aの含有量がReb.Dと配糖体Aの合計含有量に対して20%以下の場合に特に強い甘味後引き改善効果が見られた。
図1
図2
図3
図4