(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】ワイヤーソー掘削装置及びそれを用いたトンネルの掘削方法
(51)【国際特許分類】
E21D 9/10 20060101AFI20220405BHJP
E21C 37/00 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
E21D9/10 Z
E21C37/00 Z
(21)【出願番号】P 2021543295
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 CA2020050048
(87)【国際公開番号】W WO2020150809
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2019-0008550
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521325422
【氏名又は名称】チョイ イナン
【氏名又は名称原語表記】CHOI In Hwan
【住所又は居所原語表記】5 Buttermill Avenue Unit 4309 Concord, Ontario L4K 0J5 CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【氏名又は名称】菅野 亨
(72)【発明者】
【氏名】チョイ イナン
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062826(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104763438(CN,A)
【文献】中国実用新案第205422729(CN,U)
【文献】特開平07-269266(JP,A)
【文献】特開平04-198583(JP,A)
【文献】特開平07-243298(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170868(WO,A1)
【文献】特開平10-205272(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105822316(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0058439(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1932731(KR,B1)
【文献】米国特許第05472262(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0009638(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第109519190(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0146153(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/10
E21C 37/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削対象の岩盤全断面をワイヤーソーを用いて除去可能な大きさに1回で分割切断するために、対象面の縁線と縁の内側の格子状の切断線の交差点に選択的に穿孔された複数の進入孔に
進入アームを挿入し、挿入される進入アームの
端部に横、縦、対角線方向のうち、何れか1つの方向に装着された2つ以上の多方向プーリーに
、それぞれ異なる方向に回転しつつ、各切断区画の切断を行う横、縦、対角線方向のそれぞれのワイヤーソーを配線し、
前記配線されたワイヤーソーは、隣接する進入孔に配線された同一の方向のワイヤーソーと接続駆動し、挿入された進入アームを後ろから支持する支持フレームの支持力で
、縁線及び縁の内側の格子状の切断区画を除去可能な大きさに1回で分割切断することを特徴とするワイヤーソー掘削方法。
【請求項2】
多方向進入アームプーリーと、前記プーリーに配線された複数のワイヤーソーを駆動し、全断面を1回で分割切断するための掘削装置として、
前記多方向進入アームプーリーは、掘削対象の全断面の切断線が交差する進入孔に挿入され、
進入アームの端部に2つ以上のプーリーが、横、縦、対角線方向のうち、何れか1つの方向に装着され、
前記進入孔に挿入される進入アームプーリーは、交差する切断線の数と、切断環境に応じてプーリーの数が変更され、
各進入孔に挿入された多方向進入アームプーリーには、方向別にワイヤーソーが同一の進入孔内に配線され、
前記配線されたワイヤーソーは、隣接する進入孔に配線された同一の方向のワイヤーソーと接続駆動され、
進入孔に挿入された多方向プーリーの相互異なる方向に回転する機能により、前記進入孔内に配線された横、縦、対角線方向のワイヤーソーが狭い空間で回転するとしても、相互干渉されずに、方向別に縁線及び内側の格子状の切断線に沿って全断面を1回で切断することを特徴するワイヤーソー掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断区画に沿って切断線の変化が可能なワイヤーソー掘削装置及びそれを用いたトンネルの掘削方法に関し、掘削速度を向上させると同時に、活用可能な形の石材を採取できるワイヤーソー(Wire-saw)掘削装置及びそれを用いたトンネルの掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘進してトンネルを施工する場合、岩盤の埋め立てられた位置の場合には、発破工法を利用するか、TBM(TunnelBoring Machine)を用いてトンネルを掘削する。
【0003】
発破工法は、掘削しようとする岩石を、切開基準線をカットし、岩石発破のための穿孔を設置する。その後、爆薬を装薬して発破し、当該範囲の岩石を掘削する。発破工法の場合、安定性と所望の形で岩石を発破するために、かなりの作業と時間がかかることになる。更に、爆薬の爆発は、時として予期せぬ範囲にまで岩石を掘削することもあり、発破による粉塵の飛散・騒音などのような公害問題が発生する。
【0004】
TBMは、複数のディスクカッターを装着したカッターヘッドを回転させ、岩盤を圧砕して掘進する円形の回転式掘進機である。TBMを用いた掘削は、発破工法に比べて、施工速度が速く、安全性が向上し、公害問題が極めて低いとの長所がある。しかし、TBMは、超高価な装置で、中小規模のトンネル掘削には向いておらず、掘削で採掘した岩石が小石サイズで破砕された状態であるため、対象岩石の再活用が事実上不可能であるとの問題があった。
【0005】
このような問題を解消するために、ワイヤーソー(Wire-saw)を用いて岩石を切断して掘削する技術が、特許登録第10-1649328号(先行文献1)に開示されている。
【0006】
ワイヤーソーを用いてトンネルを掘削するためには、掘削しようとする対象面を区画し、区画化されたエリアの周囲に沿って進入孔を穿孔する。その後、進入孔のうち、隣接する2つの進入孔にワイヤーソーの設置されたアーム(arm)を挿入し、ワイヤーソー掘削装置を作動させ、区画化されたエリアの一線分を切断する。
【0007】
例えば、区画化されたエリアが四角なら、先行文献1に示されたワイヤーソー掘削装置では四角の4つの辺を4回にわたって切断し、最後に、切断された内側の端部を切断する作業を行わなければならない。トンネルを施工するためには、区画化されたエリアが複数である場合、アームの設置、切断、アームの除去による作業時間は、幾何級数的に増加してしまう。
【0008】
一方、日本特開平07-269266号(先行文献2)にも、ワイヤーソーを用いた掘削装備について開示している。
【0009】
ワイヤーソーを用いてトンネルを掘削する場合、対象面が常に一定になっているわけではなく、時には、切断区画を変える必要がある。
【0010】
しかし、先行文献2に提案されたワイヤーソー掘削装置は、4つの支持アームが相互固定部材で固定されているため、切断区画に応じて進入アームの位置と数を変更することに限界がある。先行文献2に示されたワイヤーソー掘削装置を利用する場合、時として不要な部分にも進入孔を穿孔するなど、むしろ作業効率を低下させてしまう。
【0011】
そのため、現状で利用可能な新たな方策が必要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、掘削しようとする対象面を最小限の時間で掘削することができるワイヤーソー掘削装置を用いたTN掘削方法を提供することにある。
【0013】
一方、本発明の明示されていない別の目的は、以下の詳細な説明及び効果から容易に推論できる範囲内で更に考慮されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置は、岩盤の対象面の切断区画に沿って穿孔された複数の進入孔を設置し、ワイヤーソーを用いて前記対象面を掘削する装置において、進入方向の端部に配線されたワイヤーソーとともに設置された少なくとも1つのプーリーを有する進入アームと、前記進入アームの挿入反対方向の端部に前記進入アームより小さい断面積を有する前記進入アームの間にトラッピングシール(trapping sill)が形成された挿入部と、第1方向に配置された第1フレームと第2方向に配置された第2フレームとが交差することで、前記切断区画に対応するメトリクス構造を有する支持フレームと、前記トラッピングシールによって挿入反対方向に前記進入アームが押されることを防止するために、前記進入部が挿入される進入孔と、前記進入アームに沿って無限軌道に配線されたワイヤーソーと、前記ワイヤーソーを循環動作し、前記対象面に反対方向に移動して前記ワイヤーソーで岩盤を切断するようにする駆動ローラとを含む。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置は、岩盤の対象面の切断区画に沿って穿孔された複数の進入孔を設置し、ワイヤーソーを用いて前記対象面を掘削する装置において、進入方向の端部に配線されたワイヤーソーとともに設置された少なくとも1つのプーリーを有する進入アームと、前記進入アームの挿入反対方向の端部に前記進入アームより小さい断面積を有する前記進入アームの間にトラッピングシール(trapping sill)が形成された挿入部と、第1方向に配置された第1フレームと第2方向に配置された第2フレームとが交差することで、前記切断区画に対応するメトリクス構造を有する支持フレームと、前記トラッピングシールによって挿入反対方向に前記進入アームが押されることを防止するために、前記進入部が挿入される進入孔と、前記進入アームに沿って無限軌道に配線されたワイヤーソーと、前記ワイヤーソーを循環動作し、前記対象面に反対方向に移動して前記ワイヤーソーで岩盤を切断するようにする駆動ローラとを含み、前記支持フレームに設置された進入アームの数は切断区画に応じて変更可能である。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の別の実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を用いたトンネルの掘削方法は、(a)岩盤の対象面に切断区画に沿って複数の進入孔を穿孔する穿孔ステップと、(b)前記切断区画のうち、切断線に対応するようにワイヤーソーが配線されており、前記進入アームの挿入反対方向に前記進入アームより小さい断面積を有する挿入部の形成された前記進入アームを、前記複数の進入孔に挿入する挿入ステップと、(c)第1方向に配置された第1フレームと第2方向に配置された第2フレームとが交差することで、前記切断区画に対応するメトリクス構造を有し、前記挿入部が挿入され得る挿入口の形成された支持フレームを設け、前記挿入部が前記挿入口に挿入されるように前記支持フレームを設置する支持フレームの設置ステップと、(d)前記ワイヤーソーの一部が巻かれるようにして掛かっている駆動ローラを動作させ、前記ワイヤーソーの切断する位置の岩盤を切断する切断ステップとを含むワイヤーソー掘削装置を用いたトンネルの掘削方法。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、ワイヤーソー掘削装置をマトリクス構造の支持フレームを用いて複数の区画面に対し、同時に切断作業を行うことができるため、作業効率を顕著を向上させることができる。特に、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置は、支持フレームと1つの支持アームとに複数のプーリーを設置することで、多様な形の切断区画を効率よく切断することができるようになる。
【0018】
それにより、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を用いたトンネルの掘削方法は、最小限の回数でトンネルを掘削することができるため、作業の効率化を図ることができる。
【0019】
一方、ここで、明示的に言及していない効果であるとしても、本発明の技術的特徴により期待できる以下の明細書に記載の効果及び暫定的効果は、本発明の明細書に記載されたものと同様に扱われることを言い添える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】進入アームとその端部に横、縦及び対角線方向に装着されるプーリーを示す形状である。
【
図2】複数のプーリーを有する進入アームを用いて切断区画を一度に切断できるようにワイヤーソーを構成したワイヤーソー掘削装置の進入アームとワイヤーソーを概略に示す斜視図で、説明の明確性のために駆動ローラろ支持フレームとを省略したものである。
【
図3】一実施形態に係る掘削装置の横切断を概略に示す斜視図である。
【
図4】一実施形態に係る掘削装置を概略に示す断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る掘削装置を概略に示す平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を用いたトンネル掘削方法を概略に示すフローチャートである。
【
図7】掘削しようとする対象面の切断区画を一度に切断して掘削できる切断線の形の一例を示す図である。
【
図8】切断区画の縁部分のみに進入孔を穿孔し、より効率的に穿孔できる切断区画を用いた掘削方法を説明するための参考図である。
【
図9】切断区画の縁部分のみに進入孔を穿孔し、より効率的に穿孔できる切断区画を用いた掘削方法を説明するための参考図である。
【
図10】切断区画の縁部分のみに進入孔を穿孔し、より効率的に穿孔できる切断区画を用いた掘削方法を説明するための参考図である。
【
図11】別の実施形態に係る切断区画を概略に示す図である。
【
図12】別の実施形態に係る切断区画を概略に示す図である。
【
図13】進入孔から見た進入アームプーリーと、a、b及びgプーリーが、それぞれ横、縦及び対角線方向に装着されたものを示すレイアウト図である。 添付図面は、本発明の技術思想に対する理解を促すために参考として例示されたものであることを明らかにし、それにより、本発明の権利範囲が制限されることはない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明を説明するうえで、公知となった関連機能について、この分野の技術者に自明な事項であって、本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合には、詳しい説明を省略する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を概略に示す斜視図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を概略に示す断面図であり、
図5は、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を概略に示す平面図である。
【0023】
図3ないし
図5を参照し、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置の各構成について説明する。
【0024】
本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置は、対象面1の切断区画に沿って穿孔された複数の進入孔5に設置され、ワイヤーソーを用いて対象面1を掘削する。そのために、ワイヤーソー掘削装置は、進入アーム10、支持フレーム20及び駆動ローラ30を含む。一方、切断区画は、横線、縦線、又は対角線で構成されてよい。
【0025】
本発明のワイヤーソー掘削装置を設置する前に、まず対象面1に切断区画に沿って複数の進入孔5を穿孔する。切断区画とは、岩石を掘削するために切断しなければならない切断線が集まって構成される区画の集合を意味する。即ち、切断区画の切断線に沿って岩盤を所定の深さにまで切断し、所定の深さに位置する岩盤の端の部分を切断すると、切断区画に沿って切断された石材を装置を用いて取り出すことができる。このような作業を繰り返すと、トンネルを掘削すると同時に利用可能な形の石材を得ることができる。
【0026】
切断区画のいずれか1つの切断線といずれか別の1つの切断線が交わう点には、進入孔5が形成される。進入孔5は、ジャンボドリルを利用して穿孔することができるが、それに限らない。進入孔5には、ワイヤーソー(W)の配線された進入アーム10が挿入される。進入アーム10は、進入孔5に挿入され得るように、一方向に長く形成され、断面は四角か円形であってよいが、それに限らない。即ち、進入アーム10の断面は多角形であってよい。
【0027】
対象面に対し、
図5のように、配線されたワイヤーソー(W)を循環駆動させると同時に引っ張ると、切断線に沿って岩盤が切断される。特に、本発明のワイヤーソー掘削装置は、複数の切断区画に対して、同時に切断作業を行うことができるという長所がある。
【0028】
進入アーム10の挿入方向の端部には、ワイヤーソーが嵌められ、循環駆動するようにサポートするプーリー12が設置される。プーリー12は、図面に示すように、進入アーム10の端部から伸長されるように設置されてよいが、それに限らない。例えば、プーリー12は、進入アーム10の端部の内側に、又は端部の一側に設置されることも可能である。
【0029】
図1は、進入アーム10の別の実施形態を示す図である。
図1を参照すると、進入アーム10には、レバー15によって動作される複数の固定楔(くさび)16が設置されてよい。進入アーム10を進入孔5に挿入した後、レバー15を操作すると、固定楔16が進入孔5の壁面に展開され、進入アーム10を進入孔5内に固定させてよい。なお、1つの進入アーム10に複数のプーリー12a、12c、12dが配置されることも可能である。このとき、それぞれのプーリー12a、12b、12cは、カバー13a、13b、13cを有する。このように、1つの進入アーム10に、複数のプーリー12a、12b、12cを配置することは、上述のように、本発明のワイヤーソー掘削装置を用いて、複数の切断区画に対して一度に切断作業を行うためである。
【0030】
なお、掘削しようとする岩盤の対象面1は、掘削が行われる場所ごとに異なり、その都度、切断区画も異なってくる。切断区画が変わると、進入孔5の数も変わってくる。本発明のワイヤーソー掘削装置は、このような環境変化に能動的に対応することができる。即ち、本発明のワイヤーソー掘削装置を用いると、支持フレームに設置される進入アームの数を切断区画に応じて変更が可能であるという長所がある。
【0031】
このように、複数の進入アーム10を一度に利用するために、又は、変化する環境に対応するために、本発明のワイヤーソー掘削装置は、支持フレーム20を利用する。岩質がもろいところでは、進入孔の数を減らすことで、進入孔の設置のための作業時間を削減させる。逆に、岩質が硬いところなら、進入孔の数を増やし、切断にかかる作業時間を削減させることができる。なお、トンネルの掘削過程で生産される石材の形状を調節することができるため、生産される石材の利用可能性を顕著に高めることができる。
【0032】
支持フレーム20は、第1方向に配置される第1フレーム21と、第2方向に配置される第2フレーム22とで構成される。例えば、
図3に示すように、第1フレーム21は横方向に、第2フレーム22は縦方向に置かれたフレームを意味してよい。
【0033】
支持フレーム20は、第1フレーム21と第2フレーム22とが相互交差し、切断区画に対応するマトリクス構造を有してよい。
【0034】
支持フレーム20には、切断区画の進入孔5に対応する位置に挿入口23が設置される。挿入孔23は、第1フレーム21又は第2フレーム22に設置されてよいが、それに限らない。例えば、挿入口23は、別途の挿入口部材を、第1フレーム21や第2フレーム22に組み合わせて形成することもできる。
【0035】
支持フレーム20には、拡張口24が形成されてよい。拡張口24には、ワイヤーソー(W)が支持フレーム20を損なわないように、方向を調節する転換ローラ25が設置されるか、外側に突出しており、支持フレーム20を壁面に固定させる少なくとも1つ以上の支持台26が設定されてよい。
【0036】
ワイヤーソー(W)は、進入アームを沿って無限軌道で配線される。ワイヤーソー(W)は、駆動ローラ30によって循環動作される。駆動ローラ30が回転することで、ワイヤーソー(W)が循環動作され、切断線に沿って岩盤を切断する。更に、駆動ローラ30が挿入反対方向に徐々に移動するが、駆動ローラ30の移動に応じて、ワイヤーソー(W)の張力が保持され、連続的に岩盤を切断することができる。
【0037】
一方、
図2ないし
図4に示すように、進入アーム10のうち、切断区画の全体のうち、外側に配置された進入アーム10は切断区画の外側に広がるように設置されてよい。本発明のワイヤーソー掘削装置を用いて対象面1の岩盤を掘削するようになると、新たに露出された対象面に対し、ワイヤーソー切断装置を再設置して掘削作業を引き続き進めなければならない。そのとき、進入アーム10のうち、切断区画の全体のうち、外側に配置された進入アーム10が切断区画の外側に広がるように配置されなければ、新たに露出された対象面は、既存の対象面1より面積が小さくなる。しかし
図2ないし
図4のように、進入アーム10のうち、切断区画の全体のうち、外側に配置された進入アーム10は切断区画の外側に広がるように設置すると、ワイヤーソー掘削装置を再設置するスペースを確保することができる。それにより、掘削作業の効率を顕著に増加させることができる。
【0038】
以下では、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を利用したトンネルの掘削方法について説明する。
【0039】
図6は、本発明の別の実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を利用したトンネルの掘削方法(M100)を概略に示すフローチャートである。
【0040】
図6を参照すると、本発明の別の実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を利用したトンネルの掘削方法(M100)は、掘削しようとする岩盤の対象面に切断区画に沿って複数の進入孔を穿孔する穿孔ステップ(S10)と、前記切断区画のうち、切断線に対応するようにワイヤーソーが配線されており、前記進入アームの挿入反対方向の端部に前記進入アームより小さい断面積を有する挿入部の形成された複数の進入アームを前記複数の進入孔に挿入する挿入ステップ(S20)と、第1方向に配置された第1フレームと、第2方向に配置された第2フレームとが交差するこちで、前記切断区画に対応するマトリクス構造を有し、前記挿入部が挿入され得る挿入口の形成された支持フレームを設け、前記挿入部が前記挿入口に挿入されるように前記支持フレームを設置する支持フレームの設置ステップ(S30)、及び前記ワイヤーソーの一部が巻かれるように掛かっている駆動ローラを動作させ、前記ワイヤーソーの切断する位置の岩盤を切断する切断ステップ(S40)とを含む。
【0041】
まず、穿孔ステップ(10)が行われる。穿孔ステップ(S10)は、掘削しようとする岩盤の対象面に切断区画を設定し、切断区画を構成する切断線が交差する地点にジャンボドリルを利用して進入孔を穿孔する。
【0042】
次に、切断しようとする切断線に対応するようにワイヤーソーの配線された進入アームを、複数の進入孔に挿入する挿入ステップ(S20)が行われる。そのとき、進入アームに固定楔を備えている場合、レバーを操作して進入アームを進入孔に固定させてよい。
【0043】
支持フレームの設置ステップ(S30)は、第1方向に配置された第1フレームと、第2方向に配置された第2フレームとが交差することで、切断区画に対応するマトリクス構造を有し、挿入部が挿入され得る挿入口の形成された支持フレームを設置する。一方、支持フレームの設置ステップ(S30)を行う前に、第1方向に配置された第1フレームと第2方向に配置された第2フレームとが交差することで、前記切断区画に対応するマトリクス構造を有し、前記進入アームが挿入され得るサブ支持具の形成されたサブ支持フレームを設置するサブ支持フレームの設置ステップが行われてよい。
【0044】
挿入ステップ(S20)と支持フレームの設置ステップ(S30)とは、前後が入れ替わってよい。例えば、進入アームを進入孔に挿入した後で、挿入部に挿入口が対応するように支持フレームを設置するか、支持フレームの挿入口に進入アームの挿入部を結着した後で、支持フレームと進入アームとを一緒に移動させ、進入アームを進入孔に挿入してよい。
【0045】
このように、進入孔に進入アームを挿入させると、無限軌道で配線されていたワイヤーソーは、相互隣接する進入アームとその間の岩盤により、「C」状に置かれることになる。即ち、「C」状の中央部に岩盤が位置するのである。
【0046】
次に、ワイヤーソーの一部が巻かれるように掛かっている駆動ローラを動作させ、ワイヤーソーの切断する位置の岩盤を切断する切断ステップ(S40)が行われる。そのとき、駆動ローラは、回転とともに対象面の反対方向に次第に移動するようになる。それにより、最初に「C」状に配線されていたワイヤーソーが次第に開かれて岩盤を切断する。
【0047】
一方、
図7のように、一度に全ての岩盤を切断区画に沿って切断することも可能である。
【0048】
進入孔から切断線が複数出ているものを偶進入孔といい、進入孔から前記切断線が奇数出ているものを奇進入孔といえるが、切断区画に奇進入孔が0又は2個である場合、一度に全ての岩盤を切断区画に沿って切断することができる。
【0049】
例えば、ワイヤーソーを、
図7に地点Sから配線し、矢印に沿って地点Sから地点Fまで配線すると、全ての切断線(L)に対して配線が可能である。そのとき、一部の進入孔は、ワイヤーソーが複数回通ることになるが、そのために、進入アームは複数のプーリーが端部に設置されてよい。
【0050】
図2は、複数のプーリーを有する進入アームを用いて、切断区画を一度に切断できるようにワイヤーソーを構成したワイヤーソー掘削装置を概略に示す斜視図として、説明の明確性のために、駆動ローラと支持フレームとを省略したものである。
【0051】
まず、穿孔ステップ(S10)を行う。対象面1’に複数の進入孔51b~51d、52a~52d、53a~53d、54b~54dが穿孔される。
【0052】
次に、複数の進入孔51b~51d、52a~52d、53a~53d、54b~54dに複数の進入アーム10を挿入する挿入ステップ(S20)が行われる。
【0053】
挿入ステップ(S20)で進入アーム10を進入孔51b~51d、52a~52d、53a~53d、54b~54dに挿入する前に、ワイヤーソー(W1、W2、W3)を複数の進入アーム10と駆動ローラに配線しなければならない。全てのワイヤーソーが同一の駆動ローラに配線されてよいが、本発明はそれに限られない。即ち、ワイヤーソー掘削装置が相互独立的に駆動する複数の駆動ローラを備え、複数のワイヤーソーのうちの一部が相互異なる駆動ローラに配線されることも可能である。
【0054】
一方、進入孔に幾つのワイヤーソーが挿入されるかによって、進入アーム10に設置されるプーリー12の数を異ならせてよい。例えば、進入孔51b及び54bに挿入される進入アーム10の場合には、第1ワイヤーソー(W1)、第2ワイヤーソー(W-2)、第3ワイヤーソー(W3)が全て配線されるため、3つのプーリー12が設置されている。その他の残りの進入孔には、2つのワイヤーソーのみが配線されるため、2つのプーリー12が設置される。
【0055】
もし、進入アーム10に複数のプーリー12が設置されなければ、相互交差する部分のワイヤーソーが掘削過程中に相互摩擦し、ワイヤーソーが途切れるなど、損なわれる可能性がある。しかし、本発明のワイヤーソー掘削装置は、進入孔にいくつのワイヤーソーが挿入されるかによって、進入アーム10に設置されるプーリー12の数を異ならせることで、複数のワイヤーソーを同時に駆動するとしても、相互交差する部分のワイヤーソーが掘削過程中に相互摩擦し、ワイヤーソーが途切れるなど、損なわれる問題を防止することができる。即ち、本発明のワイヤーソー掘削装置は、進入アーム10に設置されるプーリー12の数を異ならせることで、1回の掘削だけで切断区画の切断線を全て切断できるという長所がある。
【0056】
このように、ワイヤーソーの配線された進入アームを進入孔に挿入した後は、支持フレームを設置(S30)し、駆動ローラを動作させて岩盤を切断(S40)するようになる。
【0057】
一方、ワイヤーソー掘削方法において、切断区画に沿って進入孔を穿孔する過程も多くの時間がかかる。そして、対象面が常に同じ岩質ではなく、毎回異なる作業環境を直面するようになる。そのため、必要に応じて、
図8、9及び10に示すように、切断区画の縁の部分にのみ進入孔を穿孔し、より効率的に掘削することができる。このように、切断区画の縁の部分のみに進入孔を穿孔する場合、ワイヤーソー掘削装置の進入アームの種類及び位置と、ワイヤーソーの配線は、
図8で切断区画の縁の部分のみのように構成されてよい。
【0058】
一方、この場合、切断区画の内側部分のうち、相互交差する部分のワイヤーソーが掘削過程で相互摩擦することを防止するために、時差(例えば、10分)を置かなければならない。具体的に説明すると、以下の通りである。
【0059】
まず、
図8のように、第1ワイヤーに対応する第1切断線(L
1)を切断(C)する。その次、時差を置いて、
図9のように、第2ワイヤーに対応する第2切断線(L-
2)を切断(C)する。時差を置くとは、第1切断線(L
1)に沿った切断を完全に完了したことを前提にするわけではなく、先行の切断によってワイヤーソーが所定の深さに挿入され、後行の切断を行うワイヤーソーが先行の切断を行うワイヤーソーと摩擦しない程度になるように、余裕を持たせることを意味する。例えば、第1切断線(L
1)に沿って切断を開始した後、10分後に第2切断線(L-
2)に沿った切断を開始する。最後に、
図10のように、第2切断線(L-
2)の切断に時差を置き、第3切断線(L
3)に沿った切断(C)を行う。しかし、時には、同時に(L
1)と(L
2)との切断を行うことが可能である。
【0060】
図8、9及び10に示す方法によると、複数の区画面に対して同時に切断作業を行う一方で、不要な進入孔の穿孔を減らして作業時間を短縮させることができ、掘削過程でそれぞれのワイヤーソーの駆動に時差を置くことで、交差するワイヤーソーが相互摩擦して損なわれることを防止することができる。なお、
図8、9及び10に示す方法によっても、ワイヤーソー掘削装置を設置し、1回の掘削だけで切断区画の切断線を全て切断することができるという長所がある。
【0061】
本発明のワイヤーソー掘削装置を利用する更なる長所は、多様な形の切断区画に対して容易に対応が可能であるということである。ひし形の切断区画(
図11)にすることも可能である。更に、本発明のワイヤーソー掘削装置は、
図12のように、アーチ型の切断区画に対応することも可能である。
【0062】
それにより、支持フレームの外側のフレームからなる形が四角以上の多角形であってよい。なお、支持フレームのうちの一部は、曲線のものを利用することができるが、それは、例えば、切断区画がアーチ型の上部を有する場合、そこに曲線のフレーム(例えば、半円)を適用することで、より簡単にアーチ型の上部の形を形成することができる。また更に、支持フレームの外側のフレームからなる形を円形又は楕円形にすることも理論上可能である。
【0063】
ワイヤーが、
図13の形に配置されたプーリーにそれぞれの方向に回転するため、相互干渉することなく、同時に岩石を切断する特徴を有する。
【0064】
結局、本発明のワイヤーソー掘削装置を利用することで、多様な作業環境に対して能動的に対応することができるという長所がある。
【0065】
以上のように、本発明の一実施形態に係るワイヤーソー掘削装置を利用することで、掘削しようとする対象面を最小限の時間で掘削することができる。更に、トンネルを掘削する過程で利用可能な形の石材を得ることができる。
【0066】
発明の保護範囲が以上で明示的に説明した実施形態の記載と表現に制限されるわけではない。なお、本発明の属する技術分野で自明な変更や置換により、本発明が保護範囲が制限されることはないことをもう一度言い添える。