(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-04
(45)【発行日】2022-04-12
(54)【発明の名称】線材コイルの梱包体、及び線材コイルのコンテナへの搭載方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/66 20060101AFI20220405BHJP
B65D 19/31 20060101ALI20220405BHJP
B65D 19/32 20060101ALI20220405BHJP
【FI】
B65D85/66
B65D19/31
B65D19/32 A
(21)【出願番号】P 2021560270
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025758
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2020178573
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000205535
【氏名又は名称】株式会社 商船三井
(73)【特許権者】
【識別番号】502055377
【氏名又は名称】商船三井テクノトレード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】浅井 亮吉
(72)【発明者】
【氏名】三浦 照定
(72)【発明者】
【氏名】堀賀 剛
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099192(JP,A)
【文献】特開2020-125137(JP,A)
【文献】特開2018-126771(JP,A)
【文献】特表2005-514279(JP,A)
【文献】米国特許第02849151(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/66
B65D 19/31
B65D 19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を円筒状に巻き回してバンドで結束した線材コイルを円筒の軸が水平方向を向くように横向きに保持して前記線材コイルを保護し、複数が1つのコンテナに搭載される線材コイルの梱包体であって、前記コンテナの床面に配置され、前記コンテナの扉から奥に向かう1方向に延在する複数の台座桁と、
前記1方向に直交する方向である前記コンテナの幅方向に延在して前記台座桁上に配置され、複数の前記台座桁を連結する横桁と、
前記横桁上に設けられ、前記線材コイルが、円筒の軸方向を前記コンテナの幅方向に向けて横向きで収納される凹部を備え、前記線材コイルが固縛されるブロック状のコイル保持台を備え、
前記コイル保持台は、前記コンテナの扉から奥を見た場合の正面と背面に、平面視で
波形であって、平面視で波の山の頂点間を結ぶ方向が前記コンテナの幅方向
を向く波形係合部を備え、前記波形係合部が他の前記梱包体の前記波形係合部と係合するように構成したことを特徴とする線材コイルの梱包体。
【請求項2】
前記コイル保持台は、
前記線材コイルを支持する傾斜面を有する楔形の2つのウェッジ部材を有し、楔の先端を突き合わせることで前記凹部としてのV字状の溝部を形成している請求項1に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項3】
2つの前記ウェッジ部材は、前記横桁の延在方向において、前記波形係合部の波の半波長の奇数倍の長さだけ互いにオフセットしており、かつ前記横桁の延在方向において、前記横桁及び前記台座桁の端部よりも内側に配置されている請求項2に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項4】
前記ウェッジ部材は、前記横桁上に設けられた内殻ブロックと、前記内殻ブロックを覆うように形成され、外形が楔状の外殻ブロックと、
を備え、
前記内殻ブロックと前記外殻ブロックを互いに押し付けた場合の変形量が前記外殻ブロックの方が大きい材料で構成される請求項2又は3に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項5】
前記横桁の延在方向から見て、前記内殻ブロックの上面に設けられた波形の内殻側波形部と、
前記外殻ブロックの前記上面との接触面に設けられ、前記内殻側波形部と係合する波形の外殻側波形部を備える請求項4に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項6】
前記外殻ブロックは、前記傾斜面よりも前記台座桁の端部に近い側の上面に平坦部を備え、
前記平坦部は、前記横桁の延在方向に延びるブロック溝部を備える請求項4又は5に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項7】
前記波形係合部と対向する前記内殻ブロックの垂直面に、鉛直方向に沿って設けられた蟻ホゾ又は蟻溝と、前記外殻ブロックの、前記垂直面に対向する内周面に設けられ、前記蟻ホゾ又は蟻溝と係合する蟻溝又は蟻ホゾを備える請求項4~6のいずれか一項に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項8】
前記台座桁の長手方向の端部は、
前記波形係合部よりも前記1方向で前記波形係合部から離れる向きに突出している請求項1~7のいずれか一項に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項9】
前記台座桁の前記コンテナの幅方向の位置は、前記梱包体の前記波形係合部が他の前記梱包体の前記波形係合部と係合した場合に、係合した前記波形係合部が有する台座桁と、前記コンテナの幅方向に当接する位置に設けられる請求項8に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項10】
前記台座桁の前記コンテナの幅方向の位置は、他の前記梱包体の前記台座桁と前記コンテナの幅方向に当接した状態で、当接する向きと逆向きに前記梱包体が前記コンテナの側壁と当接する位置である請求項9に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項11】
前記台座桁は、前記波形係合部よりも前記1方向に突出した部分の上面に凸部を備える請求項9又は10に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項12】
ブロック状の形状を有し、前記波形係合部と係合する治具側波形係合部を側面の1つに備え、前記治具側波形係合部が設けられた側面と対向する面が平面であり、底面に前記凸部と嵌合する凹部を備える係合治具を備える請求項11に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項13】
前記台座桁は、前記係合治具の前記治具側波形係合部が前記波形係合部と係合し、前記凸部が前記凹部と嵌合した状態で、長手方向の前記端部と前記係合治具の平面上の位置が重なっている請求項12に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項14】
前記台座桁の延在方向に沿って前記横桁の両端に固定された1対の板状の桁緩衝材を備え、
前記桁緩衝材が他の前記梱包体の前記桁緩衝材又は前記横桁と当接するように構成した請求項1~13のいずれか一項に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項15】
1対の前記桁緩衝材は、
延在方向の長さが前記台座桁の長さの半分未満であり、
前記横桁の両端で前記台座桁の延在方向の互いに反対側の一端に、平面視で点対称に配置される請求項14に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項16】
前記線材コイルの円周面の少なくとも最上面及び両端面の一部を上方から覆った状態で前記線材コイルに固縛されることで前記線材コイルを保護するシート状のロールクッションを備え、
前記線材コイルの円周面を覆う前記ロールクッションの両端が他の前記梱包体の前記ロールクッションの上面の両端と当接し、前記線材コイルの両端面の一部を覆う前記ロールクッションの部分が前記線材コイルの両端面の一部を覆う他の前記ロールクッションの部分と当接するように構成した請求項14又は15に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項17】
前記ロールクッションは、
所定の間隔で折り曲げ線としての直線状の切れ込みが設けられた蛇腹状であり、直線方向の幅は前記線材コイルの軸方向の長さよりも長く、かつ両端に複数の切り欠きが設けられている請求項16に記載の線材コイルの梱包体。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の梱包体を用いた線材コイルのコンテナへの搭載方法であって、
前記コイル保持台に前記線材コイルの円周面を横向きに搭載するコイル搭載工程と、
固縛用ベルトを前記線材コイルの円筒の孔部に通し、更に前記コイル保持台とコンテナ床面の間の隙間に固縛用ベルトを通してループ状に結束することで前記線材コイルを前記コイル保持台に固縛するコイル固縛工程と、
前記ロールクッションで前記線材コイルの円周面の少なくとも最上面及び両端面の一部を上方から覆って固縛用ベルトで前記線材コイルに固縛するロールクッション固縛工程と、
前記ロールクッション固縛工程が完了した複数の前記梱包体を、前記波形係合部が正面及び背面を向くように前記コンテナに搭載するコンテナ搭載工程を実施し、
前記コンテナ搭載工程は、前後方向に隣接する前記梱包体の波形係合部同士を係合させ、かつ前記ロールクッションも当接させる前後方向固定工程と、
幅方向に隣接する前記梱包体の、幅方向に隣接する前記梱包体同士の隙間、又は前記梱包体と前記コンテナの間の隙間に前記桁緩衝材及び前記ロールクッションを収縮させつつ他の前記梱包体を押し込んで固定する幅方向固定工程と、
を実施することを特徴とする線材コイルのコンテナへの搭載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は線材コイルの梱包体、及び当該梱包体を用いた線材コイルのコンテナへの搭載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼線等の線材を搬送する場合は、線材を円筒状に巻き取り、バンドで結束した線材コイルと呼ばれる形態でコンテナに搭載して船舶等の輸送機器に積みつけて搬送する場合がある。一方で線材コイルは、鋼板を円筒状に巻き取った鋼帯コイルと比べて剛性が低いため、荷崩が生じやすい。線材コイルは鋼線同士の滑りによる擦傷を防ぐために、バンドの結束を緩くする場合もあり、この場合は更に荷崩れを起こしやすい。船舶で線材コイルを搬送する場合は、波浪等に起因する船体動揺によってコンテナ内で荷崩れを起こす可能性もある。また自動車用のファスナーやタイヤのコードワイヤに用いる鋼線の線材コイルは、荷崩れで僅かな傷が付いても不良品として扱われる場合がある。そのため、船舶で線材コイルをコンテナで搬送する際には荷崩れを防ぐように線材コイルを梱包体で保持してコンテナに搭載する場合がある。
【0003】
特許文献1には線材コイルをコンテナに搭載する際に用いられる梱包体として、線材コイルを円筒の軸を縦向きにしてパレットに載置する梱包体を開示している。この梱包体は線材コイルの外周を囲む正8角形のリング状の当接部材がパレット上方に設けられており、当接部材から下方に延びる角パイプでパレットと当接部材が連結される。
この構造では当接部材と角パイプとパレットで線材コイルを囲んで保護することで線材コイルのコンテナ内での荷崩れを防いでいる。また当接部材の正8角形の1辺をコンテナの側面に当接させ、コンテナ側面に当接せず、コンテナ側面に対して傾斜する辺を他の梱包体の正8角形の1辺に当接させて千鳥状に配列することで、梱包体同士のコンテナ内での位置決めと移動の規制を行っている。
【0004】
しかしながらこの構造では正8角形のリング状の当接部材で線材コイルの外周を囲むため、当接部材の外形が線材コイルの円周に外接する正8角形よりも大きい必要があり、コンテナに搭載できる線材コイルの数を増やしにくい問題があった。また正8角形の当接部材を千鳥状に配列すると、配列方向において梱包体同士の間に隙間が生じるため、コンテナに搭載できる線材コイルの数を増やし難い問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、線材コイルの保護機能を損なわずに従来よりもコンテナに搭載できる線材コイルの数を増やすことができる梱包体の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するための本発明の一態様は、線材を円筒状に巻き回してバンドで結束した線材コイルを円筒の軸が水平方向を向くように横向きに保持して前記線材コイルを保護し、複数が1つのコンテナに搭載される線材コイルの梱包体であって、前記コンテナの床面に配置され、前記コンテナの扉から奥に向かう1方向に延在する複数の台座桁と、前記1方向に直交する方向である前記コンテナの幅方向に延在して前記台座桁上に配置され、複数の前記台座桁を連結する横桁と、前記横桁上に設けられ、前記線材コイルが、円筒の軸方向を前記コンテナの幅方向に向けて横向きで収納される凹部を備え、前記線材コイルが固縛されるブロック状のコイル保持台を備え、前記コイル保持台は、前記コンテナの扉から奥を見た場合の正面と背面に、平面視で波形であって、平面視で波の山の頂点間を結ぶ方向が前記コンテナの幅方向を向く波形係合部を備え、前記波形係合部が他の前記梱包体の前記波形係合部と係合するように構成したことを特徴とする。
本発明の他の態様は、上記の梱包体を用いた線材コイルのコンテナへの搭載方法であって、前記コイル保持台に前記線材コイルの円周面を横向きに搭載するコイル搭載工程と、固縛用ベルトを前記線材コイルの円筒の孔部に通し、更に前記コイル保持台とコンテナ床面の間の隙間に固縛用ベルトを通してループ状に結束することで前記線材コイルを前記コイル保持台に固縛するコイル固縛工程と、前記ロールクッションで前記線材コイルの円周面の少なくとも最上面及び両端面の一部を上方から覆って固縛用ベルトで前記線材コイルに固縛するロールクッション固縛工程と、前記ロールクッション固縛工程が完了した複数の前記梱包体を、前記波形係合部が正面及び背面を向くように前記コンテナに搭載するコンテナ搭載工程を実施し、前記コンテナ搭載工程は、前後方向に隣接する前記梱包体の波形係合部同士を係合させ、かつ前記ロールクッションも当接させる前後方向固定工程と、幅方向に隣接する前記梱包体の、幅方向に隣接する前記梱包体同士の隙間、又は前記梱包体と前記コンテナの間の隙間に前記桁緩衝材及び前記ロールクッションを収縮させつつ他の前記梱包体を押し込んで固定する幅方向固定工程と、を実施することを特徴とする。
【0008】
この構成ではコイル保持台がコイルを保持して擦傷を防ぐと共に、波形係合部が係合することで、複数の梱包体が互いにコンテナの扉から奥に向かう1方向に直列配置された状態で位置決めされ、コンテナの幅方向への移動が互いに規制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、線材コイルの保護機能を損なわずに従来よりもコンテナに搭載できる線材コイルの数を増やすことができる梱包体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る梱包体を搭載した輸送用コンテナを示す斜視図であってコンテナは破線で記載し、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図3】
図3は
図2の梱包体を別の角度から見た斜視図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図4】
図4は
図3に示す状態から線材コイルとロールクッションを取り外した状態を示す図である。
【
図6】
図6(a)は2つの梱包体の波形係合部を係合させた状態を示す上面図であり、
図6(b)は(a)において、2つのウェッジ部材を輸送用コンテナの幅方向にオフセットさせなかった場合を示す図である。
【
図7】
図7は
図3のA-A断面図であって、ロールクッションは記載を省略している。
【
図8】
図8は
図7の状態から外殻ブロックを取り外した分解図である。
【
図9】
図9は梱包体をコンテナに並列に載置する際の手順を示す図である。
【
図12】
図12はコイル状物を搭載した梱包体をコンテナに搭載する手順を示す図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図13】
図13はコイル状物を搭載した梱包体をコンテナに搭載する手順を示す図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図14】
図14はコイル状物を搭載した梱包体をコンテナに搭載する手順を示す図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図15】
図15はコイル状物を搭載した梱包体をコンテナに搭載する手順を示す図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図16】
図16はコイル状物を搭載した梱包体をコンテナに搭載する手順を示す図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図17】
図17はコイル状物を搭載した梱包体をコンテナに搭載する手順を示す図であって、線材コイルは線の描写を省略してコイル状の外形のみを記載している。
【
図18】
図18は第2の実施形態に係る梱包体を示す斜視図であって、ロールクッションは記載を省略している。
【
図19】
図19は第3の実施形態に係る梱包体を示す斜視図であって、ロールクッションは記載を省略している。
【
図20】
図20は第3の実施形態に係る梱包体を示す斜視図であって、係合治具を波形係合部に係合させた状態を示す。
【
図21】
図21は第3の実施形態に係る梱包体に線材コイルを搭載して輸送用コンテナに搭載した状態を示す上面図であって、ロールクッションは記載を省略している。
【
図22】
図22は第3の実施形態に係る梱包体に線材コイルを搭載して輸送用コンテナに搭載した状態を示す上面図であって、ロールクッションは記載を省略している。
【
図23】
図23は第3の実施形態に係る梱包体に線材コイルを搭載して輸送用コンテナに搭載した状態を示す上面図であって、ロールクッションは記載を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき本発明に好適な実施形態を詳細に説明する。
まず、
図1~
図11を参照して本発明の第1の実施形態に係る梱包体1の構成を説明する。なお、本明細書では、梱包体1が搭載される輸送用コンテナ2の奥行き方向をX方向、鉛直方向をZ方向とし、X、Z方向に直交する幅方向をY方向とする。
また、参照する図面は実施形態を説明する概略図であり、部材同士の寸法比率や形状は図示及び説明し易いように実物と異なる場合もある。
【0012】
図1に示す梱包体1は、線材を円筒状に巻き取り図示しないバンドで結束した線材コイル6を、円筒の軸が水平方向を向くように横向きに保持して外部からの衝撃等から保護する部材である。
図1に示すように梱包体1は1つの輸送用コンテナ2の内部に複数が搭載される。
図1では輸送用コンテナ2の幅方向に3列、奥行き方向に3列に梱包体1が搭載されており、3×3=9個の梱包体1が1つの輸送用コンテナ2の内部に配置されている。1つの梱包体1には1つの線材コイル6が搭載されているが、複数の線材コイル6をバンドで結束する等すれば1つの梱包体1に複数の線材コイル6を搭載してもよい。
図1に示すように梱包体1は、線材コイル6の円筒の軸方向が輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向を向くように輸送用コンテナ2の内部に配置される。輸送用コンテナ2は線材コイル6を含む輸送対象物を搭載した状態で、外力から輸送対象物を保護しつつ車両や船舶等で輸送される箱型の搬送容器を意味する。
【0013】
輸送用コンテナ2は線材コイル6を搭載した複数の梱包体1を収納できる大きさと、これらの重量や輸送中の振動や衝撃で変形しない強度を備えればよい。具体的には主に海上輸送で使用される20フィート型コンテナや40フィート型コンテナが挙げられる。
図1に示すように、輸送用コンテナ2は正方形と長方形の面を組み合わせた直方体であり、正方形の面の一つに扉12が設けられる。長方形の面のうち、下面はコンテナ床面4を構成し、コンテナ床面4に直交する長方形の面がコンテナ側壁5となり、コンテナ床面4に対向する上方の面が上壁を構成する。扉12と対向する正方形の面は奥壁10となる。なお、左右のコンテナ側壁5は図示しないコンテナ横桁で連結されており、コンテナ横桁の上にコンテナ床面4が設けられる。よって、輸送用コンテナ2に搭載された梱包体1や線材コイル6の荷重はコンテナ床面4及びコンテナ横桁が受け止める。輸送用コンテナ2は、輸送効率の観点からISOコンテナのように寸法が規格化されたコンテナが好ましいが、専用コンテナでもよい。
【0014】
図2~
図6に示すように梱包体1は台座桁15、横桁33、コイル保持台19、桁緩衝材20、及びロールクッション30を備える。
【0015】
台座桁15は梱包体1を構成する他の部材、及び梱包体1に搭載された線材コイル6の重量を受けとめて輸送用コンテナ2のコンテナ横桁に伝達する複数の支持桁である。台座桁15は梱包体1を輸送用コンテナ2の内部に引き込む場合、及び輸送用コンテナ2の内部から引き出す場合にコンテナ床面4を滑走する滑走板としても用いられる。
図2では1つの梱包体1が3つの台座桁15を備えているが、台座桁15の数は梱包体1に搭載される線材コイル6の重量に応じて適宜選択すればよい。
台座桁15は1方向としてのX方向に延在する角柱状の部材であり、輸送用コンテナ2に搭載された状態で輸送用コンテナ2の扉12から奥に向かう1方向であるX方向に延在して複数が対向配置され、コンテナ床面4に置かれる。台座桁15のX方向長さは、線材コイル6の直径よりも長いことが好ましい。このような長さとすることで、梱包体1に線材コイル6を設置した場合に、線材コイル6が台座桁15からX方向にはみ出すことがない。
【0016】
台座桁15は梱包体1を構成する他の部材、及び線材コイル6の重量で変形しない強度を有し、加工が容易な材料が好ましい。また梱包体1自体の搬送を容易とするため、なるべく軽量の材料が好ましい。更に、台座桁15は輸送用コンテナ2に搭載する際にコンテナ床面4をX方向に摺動して滑走するため、耐摩耗性も求められる。このような材料としては集成材のような木材やプラスチック擬木が挙げられる。プラスチック擬木とは、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂片を成型・加熱して木材と類似した強度と重量に調整した樹脂成型品である。
集成材とプラスチック擬木のいずれを用いるかは、求められる強度やコスト、環境負荷等を考慮して適宜設定すればよい。例えば集成材はコストの面でプラスチック擬木よりも有利である。一方でプラスチック擬木は樹脂片の材料、寸法、成型条件の調整で強度や重量を調整しやすい点で有利である。また原料の樹脂片も廃プラスチックでよいため、集成材と比べて環境負荷が小さく、仮に壊れた場合でも、壊れた材料を新たなプラスチック擬木の原料にできる点も有利である。ただし、集成材は無垢材に使えなかった木材を再利用したものであるため、無垢材と比べれば環境負荷は小さい。
【0017】
図2~
図6に示すように複数の台座桁15は横桁33で連結される。横桁33も桁状の部材であり、輸送用コンテナ2に搭載された状態で、X方向に直交する方向であるY方向、つまり輸送用コンテナ2の幅方向に延在して台座桁15上に配置される。
横桁33のY方向長さは線材コイル6の軸方向の長さ以上であることが好ましい。このような長さとすることで、梱包体1に線材コイル6を設置した場合に、線材コイル6が梱包体1からY方向にはみ出すことがない。横桁33のY方向長さの上限は輸送用コンテナ2に搭載可能な長さである。
【0018】
横桁33は台座桁15の相対移動を拘束でき、かつ線材コイル6の搭載の邪魔にならない位置にあれば、その数は適宜設定できる。
図2では6本の横桁33を図示している。
【0019】
台座桁15と横桁33の連結手段としては、ボルト等の公知の締結手段を用いればよい。また、横桁33における台座桁15との連結部を、台座桁15のY方向の幅に応じた長さの凹形状として台座桁15を凹形状の連結部に嵌め込む構造とするのが好ましい。梱包体1の組み立て時に台座桁15が取り付けられる横桁33の位置を連結部の凹形状から視覚的に作業員が容易に把握できるためである。
横桁33は1対の台座桁15を連結して、台座桁15のY方向の相対距離を拘束できる強度を備え、かつ梱包体1の搬送を容易にするため軽量であるのが好ましい。具体的には台座桁15と同じ材料でよい。
【0020】
コイル保持台19は線材コイル6と直接接触して荷重を受け止めて支持するブロック状の部材であり、横桁33上に設けられる。
【0021】
図4~
図7に示すようにコイル保持台19は凹部21及び波形係合部23を備える。
凹部21は線材コイル6を、円筒の軸方向を輸送用コンテナ2の幅方向に向けて横向きに収納する収納部である。
図7では凹部21が、輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向から見てV字形状である場合を例示している。
凹部21をV字形状に形成するため、コイル保持台19は線材コイル6を支持する傾斜面22を有する楔形の2つのウェッジ部材19a、19bを有している。この構造では
図7に示すように楔の先端を突き合わせることで傾斜面22同士が対向して凹部21としてのV字状の溝部を形成している。
【0022】
このように、コイル保持台19は楔状のウェッジ部材19a、19bを突き合わせて形成したV字状の溝部の傾斜面22に線材コイル6を接触させて搭載させている。これにより、線材コイル6が縦長の楕円状に変形しても楕円の先端がV溝に接触して下方への移動を規制されるのでコンテナ床面4に接触しない。この点についてより具体的に説明する。
【0023】
線材コイル6は線材を円筒状に巻き回してバンドで結束したコイル状物であるため、鋼板コイルと比べると輸送中の振動や衝撃で外力が加えられると線材が曲げられやすい。そのため、
図7に実線で示すように軸方向から見て外形が円形であった線材コイル6が、外力で曲げられて破線で示すように縦長の楕円形状に変形する場合がある。この場合、楕円の下端は円形だった場合と比べて低い位置に下がるため、梱包体1の形状によっては楕円の下端がコンテナ床面4に接触して擦傷する可能性がある。しかしながらコイル保持台19は楔状のウェッジ部材19a、19bを突き合わせて形成したV字状の溝部で線材コイル6を保持するため、線材コイル6の楕円の下端は溝部の最深部に当接すると、それ以上は低い位置に下がらず、コンテナ床面4に接触しない。
また、凹部21を円弧状の溝とする場合と比べて線材コイル6の荷重がコイル保持台19の一ヶ所に集中し難いので、コンテナ床面4を支えるコンテナ横桁への負担を軽減できる。
【0024】
図3~
図7ではウェッジ部材19a、19bは2組が図示されているが、ウェッジ部材19a、19bの数は線材コイル6の軸方向の長さに応じて設定する。具体的にはウェッジ部材19a、19bを横桁33に搭載した状態で、
図5に示すY方向の両端間の距離Dが線材コイル6の軸方向の長さよりも長くなるようにすると、ウェッジ部材19a、19bから線材コイル6がはみださないので好ましい。また、ウェッジ部材19a、19bは一体化してもよいが、一体化するとV字の最深部が割れやすくなるため、別部材とするのが好ましい。
【0025】
波形係合部23は梱包体1を他の梱包体1と係合させて位置決めと固定を行うための部材である。
図5に示すように波形係合部23は波形の部分である。波形係合部23はコイル保持台19において、輸送用コンテナ2の扉12から奥を見た場合の正面と背面に設けられ、平面視で輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に波向が向いている。
【0026】
図6(a)に示すように波形係合部23は、梱包体1を輸送用コンテナ2に搭載した状態で、輸送用コンテナ2の扉12から奥に向かう向きであるX方向に隣接する他の梱包体1の波形係合部23と係合するように構成されている。
波形係合部23が他の梱包体1の波形係合部23と係合した状態では、梱包体1が輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向へ移動しようとしても、他の梱包体1の波形係合部23に移動を阻止される。また他の梱包体1がY方向に移動しようとしても、その移動を梱包体1の波形係合部23が阻止する。また梱包体1を輸送用コンテナ2に搭載する際に、他の梱包体1の波形係合部23の傾斜部23aがY方向の位置決めの際のガイドになる。
【0027】
このように波形係合部23を設けることで、コイル保持台19が線材コイル6を保持して擦傷を防ぐと共に、波形係合部23が係合することで、複数の梱包体1がX方向に直列配置された状態で位置決めされ、輸送用コンテナ2の幅方向への移動が規制される。
そのため、線材コイル6の保護機能を損なわずに従来よりも輸送用コンテナ2に搭載できる線材コイル6の数を増やすことができる。
【0028】
図4~
図6では波形係合部23として台形波を例示しているが、互いに係合することができ、位置決めと移動の規制ができるのであれば波の形状は適宜設定できる。ただし、矩形波のように波向であるY方向に対して直交する部分がある波の場合、位置決めの際に直交する部分がガイドとして機能しないので、台形波、三角波、正弦波のように位置決めの際にガイドとなる傾斜部23aがなるべく長い波形が好ましい。
波の波長は長すぎると係合する面積が小さくなり移動を規制する効果が弱くなるが、短すぎると強度が低下して波形の部分が折れやすくなるため、強度を保つことができる範囲で適宜設定する。
また波の振幅は大きいほど係合による保持力が高くなるが、大きすぎると波形の部分が折れやすくなるため、強度を保つことができる範囲で適宜設定する。またウェッジ部材19aとウェッジ部材19bでは波形係合部23の波長、振幅、波の数は同じである。
【0029】
一方で、
図5に示すようにウェッジ部材19a、19bは、横桁33の延在方向であるY方向、つまり輸送用コンテナ2の幅方向において、波形係合部23の波の半波長の奇数倍の長さだけ互いにオフセットしている。
図5では波形係合部23の波の半波長の長さLだけ互いにオフセットしている。更にウェッジ部材19a、19bは、横桁33の延在方向において、横桁33及び台座桁15の端部よりも内側に配置されている。
この構成では、
図6(a)に示すように、隣接する梱包体1の波形係合部23が係合した状態で、台座桁15と横桁33が互いに輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向にオフセットせず、横桁33及び台座桁15のY方向端部が破線Eで示すように一列に並ぶ。
そのため、波形係合部23同士が係合した状態で梱包体1を直列配置できるので、輸送用コンテナ2に搭載できる線材コイル6の数を増やすことができる。
【0030】
仮にウェッジ部材19a、19bがY方向にオフセットしていない場合、
図6(b)に示すように波形係合部23が係合した状態では隣接する梱包体1の横桁33及び台座桁15のY方向端部が波の半波長の長さLだけ互いにオフセットしてしまう。この状態では隣接する梱包体1のY方向に隙間が生じるため、輸送用コンテナ2に搭載できる線材コイル6の数が減る可能性がある。
【0031】
なお、ウェッジ部材19aとウェッジ部材19bのオフセットさせる長さは波形係合部23の波の半波長の奇数倍であればよい。ただしオフセットさせた部分はウェッジ部材19a、19bが突き当らないのでV字状の溝を形成せず、線材コイル6を保持する機能を有さない。そのため、オフセットさせる長さはなるべく短いのが好ましく、波の半波長であるのが最も好ましい。
【0032】
また、ウェッジ部材19a、19bは、横桁33の延在方向である輸送用コンテナ2の幅方向において、横桁33及び台座桁15の端部よりも内側に配置されているのが好ましい。具体的にはY方向に横桁33及び台座桁15からはみ出さないのが好ましい。Y方向に横桁33及び台座桁15からはみ出すと、はみ出した部分とコンテナ床面4と横桁33及び台座桁15との間に空間ができてしまい、輸送用コンテナ2に搭載できる線材コイル6の数が減る可能性があるためである。
【0033】
ウェッジ部材19a、19bは、線材コイル6と接触する傾斜面22が線材コイル6を擦傷しない材料で構成されており、かつ線材コイル6の荷重や輸送中の振動で破損しない材料であれば適宜選択できる。
ただし、
図7に示すように、異なる複数の材料からなる二重殻構造であるのが好ましい。具体的にはウェッジ部材19a、19bは、横桁33上に設けられた内殻ブロック55と、内殻ブロック55を覆うように形成され、外形が楔状の外殻ブロック58を備えるのが好ましい。
内殻ブロック55は線材コイル6の荷重を支持してウェッジ部材19a、19bの変形を防止する部材であり、更に下部内殻ブロック57、上部内殻ブロック59、及び連結ブロック61を備える。
下部内殻ブロック57は内殻ブロック55の台座となる長板状の部材であり横桁33に固定される。
図7に示すように下部内殻ブロック57は上面に凹形状の下部側連結凹部57aを備える。
上部内殻ブロック59は下部内殻ブロック57の上面に搭載されるブロック状の部材であり、下部内殻ブロック57の上面に搭載された状態で下部側連結凹部57aの上方に位置する下面に凹形状の上部側連結凹部59aを備える。
【0034】
連結ブロック61は下部内殻ブロック57と上部内殻ブロック59を連結するブロック状の部材であり、上部側連結凹部59a及び下部側連結凹部57aに対応した外形を有する。
そのため、連結ブロック61を上部側連結凹部59aと下部側連結凹部57aに挿入することで上部内殻ブロック59と下部内殻ブロック57を連結できる。連結した状態で上部内殻ブロック59と下部内殻ブロック57がX方向へ相対移動しようとすると、上部側連結凹部59aと下部側連結凹部57aが連結ブロック61に引っかかるため、移動が規制される。
【0035】
図8に示すように上部内殻ブロック59及び下部内殻ブロック57の上面は、傾斜面22の下方に位置する部分が傾斜面22と同じ向きに下方に傾斜している。具体的には、下部内殻ブロック57のうち、傾斜面22の下方に位置する部分は、傾斜面22と同じ向きに下方に傾斜した下部側傾斜部57bを備える。上部内殻ブロック59のうち、傾斜面22の下方に位置する部分は、傾斜面22と同じ向きに下方に傾斜した上部側傾斜部59bを備える。
【0036】
この構造では、上部内殻ブロック59は上部側連結凹部59aが連結ブロック61を挿入できる形状であれば、下部内殻ブロック57と連結できる。そのため、形状・寸法・強度の異なる上部内殻ブロック59を複数用意することで、線材コイル6の寸法・重量等に応じて下部内殻ブロック57に連結するのに適切な上部内殻ブロック59を変更できる。
【0037】
更に
図7に示すように、上部内殻ブロック59及び下部内殻ブロック57の上面は、傾斜面22の下方に位置する傾斜面である上部側傾斜部59b及び下部側傾斜部57bが横桁33の延在方向であるY方向から見て上に凸の弧状である。このような形状をイチョウ型とも呼ぶ。
このように傾斜面をイチョウ型とすることで、傾斜面がアーチ構造として線材コイル6を支持する。そのため、傾斜面を直線構造とする場合と比べて線材コイル6の荷重に対する内殻ブロック55の強度が向上する。
【0038】
外殻ブロック58は線材コイル6と直接接触すると共にコイル保持台19を台座桁15に支持させる部材である。
図7に示すように外殻ブロック58は内殻ブロック55を外側から覆うように配置されており、かつ傾斜面22を備える。
外殻ブロック58は内殻ブロック55に保持されているが、嵌合しているだけであり、ボルト等で互いに締結されていない。
具体的には外殻ブロック58は
図8に示すように底面に内殻ブロック55の外形に対応した収容凹部58aが形成されており、内殻ブロック55を外殻ブロック58の収容凹部58aに挿入して嵌合することで、内殻ブロック55を外側から覆う。
【0039】
内殻ブロック55と外殻ブロック58は、材料が異なる。具体的には外殻ブロック58は内殻ブロック55よりも柔らかい材料で構成される。固い材料とは、互いに押し付けた場合に変形量が少ない方の材料をいう。逆に柔らかい材料とは、互いに押し付けた場合に変形量が多い方の材料をいう。以下の説明も同様である。
【0040】
この構成では線材コイル6が梱包体1に搭載されると、外殻ブロック58の傾斜面22が線材コイル6の荷重を受け止めることで線材コイル6を擦傷せずに内殻ブロック55と共に線材コイル6を支える。梱包体1に加えられる線材コイル6の荷重の鉛直成分はコイル保持台19、横桁33、及び台座桁15を介してコンテナ横桁に伝達される。
このように硬い内殻ブロック55で線材コイル6の荷重を支持してウェッジ部材19a、19bの変形を防止しつつ、柔らかい外殻ブロック58と線材コイル6を接触させることでコイルの擦傷を防ぐことができる。
また、外殻ブロック58の一ヶ所に荷重が集中しても内殻ブロック55が荷重を受け止めて横桁33と台座桁15に荷重を分散するので、コンテナ床面4を支えるコンテナ横桁への負担を軽減できる。
【0041】
外殻ブロック58を構成する材料としては、ビーズ法発泡ポリオレフィンが挙げられる。ビーズ法発泡ポリオレフィンとは、エチレンやプロピレン等のオレフィンを縮合してポリオレフィンとする場合にビーズ法で発泡させた材料である。ビーズ法発泡ポリオレフィンは、発泡スチロールのようにスチレンを発泡させた材料と比べて柔らかいため好ましい。ビーズ法発泡ポリオレフィンの具体例としては、ビーズ法発泡ポリエチレンやビーズ法発泡ポリプロピレンが挙げられる。
【0042】
内殻ブロック55は線材コイル6と直接接触しないので、外殻ブロック58のように線材コイル6への擦傷性を考慮する必要はなく、外殻ブロック58よりも固い材料であればよい。
ただし、内殻ブロック55が外殻ブロック58よりも固い材料であれば内殻ブロック55と外殻ブロック58を全く異なる材料で構成する必要もない。具体的には上部内殻ブロック59と外殻ブロック58をいずれもビーズ法発泡ポリオレフィンで形成し、外殻ブロック58の方が発泡倍率の高い材料としてもよい。同じ組成のビーズ法発泡ポリオレフィンの場合、発泡倍率が高い方が空隙率も高くなり、柔らかくなるためである。この場合、発泡倍率が8~15倍のビーズ法発泡ポリプロピレンで内殻ブロック55の上部内殻ブロック59を構成し、発泡倍率が18~20倍のビーズ法発泡ポリエチレンで外殻ブロック58を構成するのが好ましい。ビーズ法発泡ポリプロピレンはビーズ法発泡ポリエチレンと比べて外力に対して変形し難いためである。なお、下部内殻ブロック57は集成材やプラスチック擬木でよい。
この構成では、異なる物性の上部内殻ブロック59と外殻ブロック58を、同じポリオレフィンの製造装置とを用いて、原料と製造時の発泡条件の変更のみで製造でき、生産性の点で有利である。
なお、上部内殻ブロック59は、外殻ブロック58よりも固いのであれば、集成材やプラスチック擬木のように、ビーズ法発泡ポリオレフィンと異なる材料でもよい。ただし、集成材やプラスチック擬木は重量が重くなりやすく、安全で簡易な固縛作業には不向きである。
そこで、上部内殻ブロック59と外殻ブロック58を、発泡倍率や材質の異なるビーズ法発泡ポリオレフィンで構成することで、線材コイル6への擦傷を防ぎ、かつ安全輸送の要件を満たしつつ簡易、安全な固縛作業を実現できる。
【0043】
一方で、ウェッジ部材19a、19bを二重殻構造とすると、線材コイル6の荷重で波形係合部23の係合が外れる可能性がある。この点について説明する。
コイル保持台19は下方に傾斜した傾斜面22で線材コイル6の荷重を受け止めるため、線材コイル6の荷重により、外殻ブロック58の傾斜面22は
図7に示すH1の向きに引っ張られる。
傾斜面22がH1の向きに引っ張られると、係合した状態の波形係合部23が互いに離れる向きに移動して浮き上がり、係合が外れる可能性がある。
【0044】
そこで、コイル保持台19は、波形係合部23の浮き上がりを防止するために、
図8に示すように内殻側波形部62a、外殻側波形部62b、ブロック溝部54a、蟻ホゾ56a、及び蟻溝56bを備える。
【0045】
具体的には、
図8に示すように上部内殻ブロック59の傾斜面の上面に内殻側波形部62aが設けられている。内殻側波形部62aは横桁33の延在方向であるY方向から見て波形の部分である。
また、
図8に示すように外殻ブロック58における内殻ブロック55の傾斜面との接触面、つまり収容凹部58aの上面には、内殻側波形部62aと係合する波形の外殻側波形部62bが形成されている。
【0046】
更に
図8に示すように上部内殻ブロック59は、傾斜面22よりも台座桁15の長手方向端部に近い側の上面に平坦部35を備え、平坦部35は、横桁33の延在方向であるY方向に延びるブロック溝部54aを備える。
【0047】
また上部内殻ブロック59は、波形係合部23と対向する垂直面に、鉛直方向に沿って設けられた蟻ホゾ又は蟻溝を備える。
図8では蟻ホゾ56aを図示している。
一方で、外殻ブロック58の、上部内殻ブロック59の垂直面に対向する内周面には蟻ホゾ又は蟻溝と係合する蟻溝又は蟻ホゾを備える。
図8では蟻ホゾ56aと係合する蟻溝56bを図示している。
【0048】
この構造では、線材コイル6の荷重により、上部内殻ブロック59の傾斜面22が
図7に示すH1の向きに引っ張られた場合、以下のように波形係合部23の浮き上がりが阻止される。
まず内殻側波形部62aと外殻側波形部62bが係合することで、外殻ブロック58が内殻ブロック55に対してH1の向きに相対移動するのを防ぐ。これにより波形係合部23が引っ張られて浮き上がるのを阻止する。
次に、仮に波形係合部23が引っ張られた場合でも、
図7の矢印H3に示すようにブロック溝部54aが水平方向に拡張するように変形することで、引っ張り力が波形係合部23に伝達されるのを阻止する。これにより、波形係合部23がH1の向きに引っ張られて係合が外れるのを防ぐ。
更に、外殻ブロック58と上部内殻ブロック59が蟻ホゾ56aと蟻溝56bで係合することで、水平方向への移動を規制する。これにより波形係合部23がH1の向きに引っ張られて係合が外れるのを防ぐ。
【0049】
コイル保持台19には搭載した線材コイル6が固縛される。具体的には
図2に示すように固縛用ベルト18をコイル保持台19の下方で、かつ複数の横桁33の間の隙間に通し、更に線材コイル6の円筒の孔部に固縛用ベルト18を通して固縛することで、コイル保持台19に線材コイル6が固定される。このように輸送用コンテナ2ではなくコイル保持台19に線材コイル6を固縛することで、輸送用コンテナ2の経年劣化等で、線材コイル6を輸送用コンテナ2に固縛した場合に固縛強度を荷主側で保証するのが困難な場合でも固縛強度を荷主側で保証できる。この点について具体的に説明する。
線材コイル6を輸送用コンテナ2に固縛する場合、適切に固縛されるか否かは輸送用コンテナ2の強度にも依存する。一方で輸送用コンテナ2はISOコンテナのような規格品であっても経年劣化で強度が下がっている場合がある。輸送用コンテナ2は荷主が所有者とは限らないので、輸送用コンテナ2の強度を荷主側で保証するのが困難な場合がある。
一方で梱包体1は線材コイル6の輸送専用に用いられるものであり荷主が所有者なので、強度の保証が輸送用コンテナ2よりも容易である。
【0050】
桁緩衝材20は梱包体1を輸送用コンテナ2に搭載した際に、輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に隣接する梱包体1同士の台座桁15や横桁33の接触による衝撃を緩和する部材である。桁緩衝材20は、梱包体1同士の隙間に他の梱包体1を押し込む際に収縮することで、狭い隙間に梱包体1を押し込めるようにする部材でもある。
図3~
図5に示すように桁緩衝材20は台座桁15の延在方向に沿って横桁33の両端に固定された一対の板状の部材である。ここでは台座桁15と横桁33の周囲に巻きまわしたバンド37で台座桁15と横桁33に結束されている。
【0051】
図9(a)に示すように、2つの梱包体1a、1bの間の隙間に梱包体1cを押し込む場合、梱包体1cの桁緩衝材20を梱包体1bの桁緩衝材20に押し付けて互いに収縮させながらX方向に押し込む。これにより梱包体1bと梱包体1cが接触する際に桁緩衝材20が衝撃を吸収するため、台座桁15と横桁33が擦傷したり、接触による衝撃で線材コイル6が擦傷したりするのを防止できる。
また、梱包体1bと梱包体1cが接触する際に桁緩衝材20が押されて収縮するため、梱包体1cを押し込む隙間が、梱包体1cの幅よりも狭い場合でも、その幅の差が、桁緩衝材20が収縮可能な範囲の差であれば、梱包体1cを押し込むことができる。
また、押し込んだ後の桁緩衝材20は収縮した状態から元に戻ろうとして反発するため、梱包体1bと梱包体1cが互いにX、Y方向に移動するのを規制する機能も果たす。桁緩衝材20は押し込みの際に収縮できるように、台座桁15や横桁33に押し付けた場合に、変形量が大きい材料、つまり台座桁15や横桁33よりも柔らかい材料が好ましい。このような材料としては外殻ブロック58と同じ材料が挙げられる。
【0052】
桁緩衝材20の台座桁15と同じ方向に延在しているが、延在方向長さ、ここではX方向長さは、必ずしも台座桁15の延在方向長さと同じ長さである必要はない。つまり桁緩衝材20はY方向において両端に位置する台座桁15の側面全体を覆う必要はない。またすべての横桁33の両端を覆う必要もない。
例えば
図5に示す1対の桁緩衝材20は、延在方向であるX方向の長さが台座桁15の長さの半分未満であり、横桁33の両端で台座桁15の延在方向の互いに反対側の一端に、平面視で点対称に配置されてもよい。
図5では平面視で左上隅と右下隅に桁緩衝材20が設けられている。
この構造では、
図9(b)に示すようにY方向に隣接する梱包体1においては、桁緩衝材20は台座桁15及び横桁33のみと接触し、桁緩衝材20同士は梱包体1を押し込む途中までしか接触しない。
一方で桁緩衝材20は
図10に示すように延在方向であるX方向の長さが台座桁15の長さと同じで、台座桁15を覆ってもよい。
【0053】
桁緩衝材20の長さを台座桁15の長さの半分未満とするか、同じ長さとするかは、各々の利点を考慮して適宜設定すればよい。
例えば
図3に示すように桁緩衝材20の長さを台座桁15の長さの半分未満とする場合、Y方向に隣接する梱包体1の桁緩衝材20は台座桁15及び横桁33のみと接触し、桁緩衝材20同士は接触しない。一方で
図10に示すように桁緩衝材20の長さを台座桁15の長さを同じ長さとすると、Y方向に隣接する梱包体1の桁緩衝材20同士が接触する。そのため、押し込める隙間は1枚の桁緩衝材20の厚さだけ、台座桁15の長さの半分未満とする場合は狭くなる。そのため、狭い隙間に梱包体1を押し込みたい場合は台座桁15の長さの半分未満とする場合が有利である。
一方で桁緩衝材20の長さを台座桁15の長さを同じ長さとすると、隣接する梱包体1の台座桁15及び横桁33の間には必ず2枚の桁緩衝材20が挟み込まれるため、桁緩衝材20が衝撃を吸収する効果が優れる。
【0054】
ロールクッション30は線材コイル6の円周面の上方と、平坦な端面の上方を覆って保護すると共に、他の梱包体1のロールクッション30と当接することで互いの移動を規制して線材コイル6の移動を阻止して擦傷を防止する部材である。
図11に示すようにロールクッション30は長尺でロール状に曲げることが可能なシート状の部材である。
【0055】
ロールクッション30の長辺31aの長さは線材コイル6の円周の長さの半分程度である。よってロールクッション30はロール状に曲げた状態で線材コイル6の円周面の最上面を含む一部を上方から半分程度覆う。ロールクッション30の短辺31bの長さは線材コイル6の軸方向の長さよりも長く、線材コイル6の円周面を覆った状態で線材コイル6の軸方向の両端からはみ出した部分、
図11では破線で示した部分が直角に折り曲げられて平坦面に当接する。よってロールクッション30は線材コイル6の両端面の一部を上方から覆う。この状態で固縛用ベルト18をロールクッション30の上面から線材コイル6の円筒の孔に通して結束することで、ロールクッション30が線材コイル6に固縛される。
【0056】
この状態ではロールクッション30は、線材コイル6の円周面の少なくとも最上面及び両端面の一部を上方から覆った状態で線材コイル6に固縛用ベルト18で固縛されることで線材コイル6を保護する。
図1に示すように複数の梱包体1が輸送用コンテナ2に搭載された状態でロールクッション30は、隣接する他の梱包体1のロールクッション30と当接することで、互いの移動を規制する。具体的には、まずロールクッション30において、線材コイル6の円周面を覆う部分の長手方向端部が、輸送用コンテナ2の奥行方向であるX方向に隣接する他の梱包体1のロールクッション30の線材コイル6の円周面を覆う部分の長手方向端部と当接する。これによりX方向への線材コイル6の移動が互いに規制される。更に線材コイル6の両端面を覆う部分が、輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に隣接する他の梱包体1のロールクッション30の、線材コイル6の両端面を覆う部分と当接する。これによりY方向への線材コイル6の移動が互いに規制される。
【0057】
このように梱包体1は、線材コイル6の上半分程度をロールクッション30で覆って保護すると共に、他の梱包体1と当接することで線材コイル6の移動を規制する。下半分はコイル保持台19の凹部21に収納することで保護するともに、波形係合部23や桁緩衝材20が他の梱包体1のコイル保持台19と係合や当接することで移動を規制する。これにより、線材コイル6の全体を囲まなくても線材コイル6の保護及び移動の規制ができる。
【0058】
ロールクッション30は長尺方向にロール状に曲げることができ、曲げた状態で線材コイル6からはみ出した端部を折り曲げることができる構造であれば、適宜選択できる。例えば
図11に示すように長手方向に所定の間隔で、長手方向に直交する方向に折り曲げ線としての直線状の切れ込み30aが設けられた蛇腹状が好ましい。切れ込み30aでロールクッション30を折り曲げることで、ロールクッション30を長尺方向にロール状に曲げやすくなる。また、使用しない場合にロール状に巻き取って収納しやすくなる。
【0059】
また、
図11に示すように、ロールクッション30の切れ込み30aの直線方向の幅、つまり短辺31bの幅はコイルの軸方向の長さよりも長いが、短辺方向の両端に複数の切り欠き30bが設けられているのが好ましい。
切り欠き30bを複数設けることで、複数の切り欠き30bの間の短辺方向の端部を折り曲げやすくなり、線材コイル6の端面を保護しやすくなる。
【0060】
ロールクッション30の材料は長尺方向及び短辺方向に曲げられる程度の可撓性を有する材料で、かつ線材コイル6と当接した状態で擦傷せず、外力で容易に破損せずに線材コイル6を保護できる材料であれば、適宜選択できる。例えばコイル保持台19の外殻ブロック58と同じ材料にすればよい。
以上が梱包体1の構成の説明である。
【0061】
次に、梱包体1を用いた線材コイル6のコンテナへの搭載方法について、
図12~
図17を参照して説明する。この搭載方法では、バンニングと呼ばれるコンテナに荷物を積める工程で、コイル搭載工程、コイル固縛工程、ロールクッション固縛工程、及びコンテナ搭載工程が行われる。
【0062】
最初に、コイル搭載工程では、
図12に示すようにコイル保持台19に線材コイル6の円周面を横向きに搭載する。具体的には線材コイル6の円周面がV字状の溝部の傾斜面22に当接するように線材コイル6をコイル保持台19の上に載せる。
次に、コイル固縛工程では、
図13に示すように固縛用ベルト18を線材コイル6の円筒の孔部に通す。更にコイル保持台19とコンテナ床面4の間の隙間、ここではコイル保持台19の下方で、かつ複数の横桁33の間の隙間に固縛用ベルト18を通してループ状に結束する。これにより、線材コイル6をコイル保持台19に固縛する。
次に、ロールクッション固縛工程では、
図14に示すようにロールクッション30で線材コイル6の円周面の少なくとも最上面及び両端面の一部を上方から覆う。更に線材コイル6の軸方向にはみ出たロールクッション30の端部を折り曲げて線材コイル6の端面に当接させる。この状態で固縛用ベルト18を線材コイル6の円筒の孔部に通してロールクッション30に巻き付けて結束することで、ロールクッション30を線材コイル6に固縛する。
コイル搭載工程、コイル固縛工程、及びロールクッション固縛工程は、1つのコンテナに積み込む線材コイル6の数だけ実施する。
なお、線材コイル6は製造工場から搬入されてから、輸送用コンテナ2に搭載するまでに時間を要する場合、バンニング倉庫のような保管場所に一時保管される場合がある。この場合、一時保管の前にコイル搭載工程、コイル固縛工程、及びロールクッション固縛工程を実施して、
図2に示すような梱包体1の状態で保管場所に一時保管してもよい。このように梱包体1の状態で一時保管することで、保管時に線材コイル6が保管場所の床と接触して擦傷したり、荷崩れを起こして擦傷したりするのも防げる。また、バンニングの際には保管場所から梱包体1の状態で輸送用コンテナ2まで線材コイル6を運んで搭載できるので、バンニング作業の効率化、省力化が達成できる。
【0063】
ロールクッション固縛工程が完了した複数の梱包体1は、コンテナ搭載工程で1つの輸送用コンテナ2に搭載される。具体的な手順は以下の通りである。
まず、
図15に示すように、波形係合部23が輸送用コンテナ2の正面及び背面を向くように梱包体1を輸送用コンテナ2に搭載する。搭載する際は、まずフォークリフト等で梱包体1を持ち上げて、輸送用コンテナ2の扉側のコンテナ床面4に降す。その後押し込み用の棒のような治具をフォークリフトに取り付けて、治具で梱包体1の台座桁15や横桁33を押す等してX方向に移動させ、輸送用コンテナ2の奥側に押し込む。
【0064】
この際、まずは梱包体1同士が互いに接触しない位置に梱包体1を押し込むのが好ましい。第1の実施形態では3×3=9個の梱包体1を1つの輸送用コンテナ2に搭載するため、
図15では、まず輸送用コンテナ2の奥壁10及び左右のコンテナ側壁5に当接するように、梱包体1a、1bを押し込む。これにより、2つの梱包体1の間には1つの梱包体1を搭載するスペースが残る。ただし、2つの梱包体1が輸送用コンテナ2の幅方向に接触するように搭載してもよい。この場合は、コンテナ側壁5と1つの梱包体1の間に、残りの1つの梱包体1を搭載するスペースが残る。
【0065】
次に、
図16に示すように2つの梱包体1の間に更に1つの梱包体1cを押し込む。この際に、梱包体1cの桁緩衝材20を梱包体1bの桁緩衝材20に押し付けて互いに収縮させながらX方向に押し込む。更にこの際に、ロールクッション30のうち、線材コイル6の端面を覆う部分同士も当接するため、ロールクッション30の当接した部分も収縮させつつ梱包体1cを押し込む。押し込んだ後は、梱包体1a、1b、1cは、桁緩衝材20とロールクッション30の収縮に対する反発力によって互いの移動が規制される(幅方向固定工程)。
2つの梱包体1が接触するように搭載してから残りの梱包体1をコンテナ側壁5と梱包体1の間のスペースに押し込む場合は、押し込む梱包体1は1つの梱包体1とコンテナ側壁5に桁緩衝材20とロールクッション30を押し付けて収縮させながら押し込まれる。この場合も、梱包体1a、1b、1cは、桁緩衝材20とロールクッション30の収縮に対する反発力によって互いの移動が規制される。
【0066】
次に、
図17に示すように梱包体1a~1cよりも手前側に更に梱包体1dを搭載する。この際、前後方向、ここでは輸送用コンテナ2の奥行方向に隣接する梱包体1の波形係合部23同士を係合させ、かつロールクッション30も当接させる(前後方向固定工程)。
図17では梱包体1aの正面の波形係合部23と梱包体1dの背面の波形係合部23を係合させる。更にロールクッション30のうち、線材コイル6の円周面を覆う部分を接触させる。
この後は輸送用コンテナ2に搭載すべき梱包体1がすべて輸送用コンテナ2に搭載されるまで、幅方向固定工程と前後方向固定工程を繰り返す。
以上が梱包体1を用いた線材コイル6のコンテナへの搭載方法の説明である。
【0067】
このように第1の実施形態の梱包体1は台座桁15、横桁33、コイル保持台19を備え、コイル保持台19は、輸送用コンテナ2の扉12から奥を見た場合の正面と背面に、平面視で輸送用コンテナ2の幅方向に波向が向く波形係合部23を備える。
【0068】
この構成ではコイル保持台19が線材コイル6を保持して擦傷を防ぐ。更に、波形係合部23同士が係合することで、複数の梱包体1が互いに輸送用コンテナ2の扉12から奥に向かう1方向に直列配置された状態で位置決めされ、輸送用コンテナ2の幅方向への移動が互いに規制される。
【0069】
そのため梱包体1は、線材コイル6の保護機能を損なわずに従来よりも輸送用コンテナ2に搭載できる線材コイル6の数を増やすことができる。
【0070】
次に、第2の実施形態に係る梱包体1aの構成について、
図18を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態において、1つの梱包体に複数の線材コイル6を搭載したものである。なお、第2の実施形態において第1の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0071】
図18に示すように第2の実施形態に係る梱包体1aは、横桁33の長さが第1の実施形態の横桁33の3倍程度であり、さらに第1の実施形態と同じ寸法のウェッジ部材19a、19bをそれぞれY方向に沿って6個ずつ配置している。また台座桁15の寸法は第1の実施形態の台座桁15の寸法と同じである。よって梱包体1aは、第1の実施形態に係る梱包体1をY方向に延長した外形を有する。これにより、梱包体1aは、第1の実施形態に係る梱包体1が搭載した線材コイル6と同じ寸法の線材コイル6であれば、輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に沿って3つの線材コイル6を搭載可能に構成されている。
このように、梱包体1aは複数の線材コイル6を搭載可能に構成しても良い。
なお、梱包体1aのY方向の最大幅は輸送用コンテナ2のY方向の幅と同程度とすると、梱包体1aを輸送用コンテナ2に搭載する際にY方向の位置決めが容易になる。
第1の実施形態のように1つの梱包体1に1つの線材コイル6を搭載する構成と、第2の実施形態のように1つの梱包体1aに複数の線材コイル6を搭載する構成の何れを選択するかは、各々の利点を考慮して適宜選択すればよい。
例えば第1の実施形態のように1つの梱包体1に1つの線材コイル6を搭載する構成では、1つの線材コイル6の外周を1つの梱包体1で囲むため、線材コイル6の擦傷や変形を防止する観点では有利である。
一方で第2の実施形態のように1つの梱包体1aに複数の線材コイル6を搭載する構成では、線材コイル6を搬送するのに必要な梱包体1aの数が梱包体1を用いる場合よりも少なくなるため、搬送コストの面で有利である。
【0072】
次に、第3の実施形態に係る梱包体1bの構成について、
図19~
図22を参照して説明する。
第3の実施形態に係る梱包体1bは、第2の実施形態において、台座桁15の長手方向の端部15aを波形係合部23よりもX方向に突出させたものである。また突出した部分の上面に凸部71を設けたものである。さらに凸部71及び波形係合部23と嵌合する係合治具73を設けたものである。
なお第3の実施形態において第2の実施形態と同様の機能を果たす要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0073】
図19に示すように第3の実施形態に係る梱包体1bは、台座桁15の長手方向の端部15aが波形係合部23よりもX方向で、波形係合部23から離れる向きに突出している。なお梱包体1bには波形係合部23が梱包体1bの正面と背面にあるが、台座桁15の長手方向の端部15aは、いずれの波形係合部23からも離れる向きに突出している。
図19で図示した台座桁15の端部15aはX方向において、輸送用コンテナ2の手前側の端部であり、X方向において、輸送用コンテナ2の奥側から手前側に向けて突出している。なお図示はしていないが、輸送用コンテナ2の奥側の端部15aは、X方向において、輸送用コンテナ2の手前側から奥側に向けて波形係合部23から突出している。
台座桁15は、波形係合部23よりもX方向に突出した部分の上面に凸部71を備える。
図19では凸部71として外形が直方体の形状を例示している。凸部71は少なくとも1つあればよい。
図19ではY方向における両端の台座桁15には凸部71が設けられておらず、両端以外の3つの台座桁15にそれぞれ凸部71が設けられ、合計で3つの凸部71が設けられた構造を例示している。
【0074】
また、第3の実施形態に係る梱包体1bは、係合治具73を備える。係合治具73は波形係合部23と係合することで波形係合部23を保護するブロック状の形状の部材であり、治具側波形係合部75、平面部77、及び凹部79を備える。
図19の係合治具73はY方向に延びるブロック状の形状である。
【0075】
治具側波形係合部75は波形係合部23と係合する波形の部分であり、梱包体1bの側面の1つに設けられる。
図19では波形係合部23は輸送用コンテナ2の扉12から奥を見た場合の背面に設けられ、平面視で輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に波向が向いている。治具側波形係合部75の波形、波長、振幅等の波の寸法、形状は、波形係合部23と同じである。これにより治具側波形係合部75は波形係合部23と係合できる。ただしZ方向の高さは波形係合部23のZ方向上端より高くても低くてもよい。また治具側波形係合部75は波形係合部23を構成する全ての波と係合する必要はない。
【0076】
平面部77は治具側波形係合部75が設けられた側面と対向する面であり、
図19では輸送用コンテナ2の扉12から奥を見た場合の正面に設けられる。平面部77は平面であるため、Y-Z平面に平行な面である。
【0077】
凹部79は凸部71と嵌合する窪みであり、治具側波形係合部75の底面に設けられる。凹部79の形状及び寸法は凸部71と嵌合できる形状及び寸法であり、具体的には凹部79の外形と同じ内面形状を有し、寸法も同程度である。
図19では凸部71が立方体であるため、凹部79の内面形状も立方体である。
凹部79は凸部71と同じ数が少なくとも必要である。また凹部79には凸部71が篏合するため、凹部79同士のX方向及びY方向の相対距離等の位置関係は凸部71同士のX方向及びY方向の位置関係と同じである。具体的には、治具側波形係合部75と波形係合部23が係合した状態で、凹部79は凸部71と平面上の位置が重なる位置関係になる。
【0078】
この構造で係合治具73を
図19に示すように凹部79が凸部71の上方に位置する状態から下方に移動させ、波形係合部23と治具側波形係合部75を係合させ、凸部71を凹部79に嵌合させると、
図20に示すように係合治具73が梱包体1bに固定される。この状態では
図20に示すように波形係合部23が係合治具73で覆われる。なお、
図20に示す状態では、係合治具73が梱包体1bに固定された状態で線材コイル6を搭載してフォークリフト等で荷役可能である。
【0079】
このように波形係合部23を設けているにも関わらず、係合治具73で波形係合部23を覆う場合がある理由、及び台座桁15を波形係合部23よりもX方向に突出させる理由について説明する。
【0080】
波形係合部23は他の梱包体1bの波形係合部23と係合することで、係合した梱包体1bが互いにY方向に移動するのを規制する部材である。
一方で、
図21に示すように、輸送用コンテナ2に搭載された梱包体1bのうち、扉12及び奥壁10に接する梱包体1bは、扉12及び奥壁10に対向する波形係合部23が、他の波形係合部23と係合しない。他の波形係合部23と係合しない波形係合部23はY方向に移動するのを規制する機能を持たず、また、扉12及び奥壁10に波形係合部23が衝突して波が折れる可能性もある。
【0081】
そこで
図21に示すように扉12及び奥壁10に対向する波形係合部23を係合治具73で覆うことで、波形係合部23を扉12及び奥壁10から保護できる。具体的には、扉12及び奥壁10に対向する波形係合部23を係合治具73で覆うことで、係合治具73の平面部77が扉12及び奥壁10に対向する。平面部77はY―Z平面に平行な面なので扉12及び奥壁10の内側の面と平行に対向する。そのため、平面部77が扉12及び奥壁10に接触した場合でも波形係合部23が折れることはない。
また、
図21では輸送用コンテナ2に搭載された全ての梱包体1bが波形係合部23を備えている。しかしながら1つの輸送用コンテナ2に搭載される貨物は、常に同じ寸法の線材コイル6とは限らないので、輸送用コンテナ2に搭載された全ての架台や梱包体等の貨物を支持する構造が波形係合部23を備えるとは限らない。例えば
図22では、1つの輸送用コンテナ2内に2つの梱包体1bと、1つのコイル架台91を搭載した例を示している。コイル架台91はX方向に挟まれるように輸送用コンテナ2内に配置され、線材コイル6と寸法の異なるコイル状物81を搭載している。コイル状物81は例えば鋼板コイルである。コイル状物81を搭載するコイル架台91は梱包体1bとは異なり、波形係合部23が設けられていない。このように波形係合部23を有さないコイル架台91と波形係合部23を有する梱包体1bを1つの輸送用コンテナ2に混載する場合、コイル架台91と対向する波形係合部23はコイル架台91と係合できない。また、コイル架台91と対向する波形係合部23がコイル架台91と衝突して波が折れる可能性もある。
【0082】
そこで
図22に示すようにコイル架台91と対向する波形係合部23を係合治具73で覆うことで、波形係合部23をコイル架台91のような波形係合部23を有さない架台から保護できる。
【0083】
また、台座桁15を波形係合部23よりもX方向に突出させると、
図21に示すようにX方向に隣接する梱包体1bの波形係合部23同士を係合させた状態では、X方向に隣接する梱包体1bの台座桁15の突出部分がY方向に対向する。例えば
図21でX方向に隣接する梱包体1b―1と梱包体1b-2は、波形係合部23同士が係合しているが、梱包体1b―1の台座桁15―1と梱包体1b-2の台座桁15-2がY方向に対向して当接している。
【0084】
この状態では梱包体1b―1がY方向の1つの向きであるY1の向きに移動しようとすると、梱包体1b-1は台座桁15―1が梱包体1b-2の台座桁15-2に接触して移動を規制される。逆に梱包体1b―2がY方向の1つの向きでY1と逆向きのY2の向きに移動しようとすると、梱包体1b-2は台座桁15―2が梱包体1b-1の台座桁15-1に接触して移動を規制される。よって、波形係合部23だけでなく台座桁15も梱包体1bがY方向に移動するのを規制する。Y1の向き、Y2の向きは、台座桁15―1と台座桁15-2が互いにY方向に近づこうとする向きである。
このように台座桁15を波形係合部23よりもX方向に突出させると梱包体1bがY方向に移動するのを台座桁15でも規制できる。
【0085】
なお、台座桁15のY方向位置は、波形係合部23が他の梱包体1bの波形係合部23と係合した状態で、係合した波形係合部23を有する他の梱包体1bの台座桁15と輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に当接する位置であるのが好ましい。例えば
図21では梱包体1b-1と梱包体1b-2の波形係合部23同士が係合しているが、梱包体1b-1の台座桁15-1と梱包体1b-2の台座桁15-2がY方向に当接している。この構成では2つの梱包体1bの波形係合部23同士が係合した時点で台座桁15同士がY方向に当接するので、台座桁15がY方向に互いに近づこうとする向きに移動するのが拘束される。
【0086】
さらに、梱包体1bの台座桁15のY方向位置は、他の梱包体1bの台座桁15と輸送用コンテナ2の幅方向であるY方向に当接した状態で、当接する向きと逆向きに梱包体1bが輸送用コンテナ2の側壁と当接する位置であるのが好ましい。
例えば
図21では梱包体1b-1と梱包体1b-2の波形係合部23同士が係合しているが、梱包体1b-1は台座桁15-1が梱包体1b-2の台座桁15-2と当接する向きであるY1の向きの逆向きのY2の向きに輸送用コンテナ2の側壁5aと当接している。
一方で梱包体1b-2は、台座桁15-2が、梱包体1b-1の台座桁15-1と当接する向きであるY2の向きと逆向きであるY1の向きに輸送用コンテナ2の側壁5bと当接している。この構成では梱包体1b-1がY2の向きに移動しようとすると輸送用コンテナ2の側壁5aと当接しているので側壁5aに移動を阻止される。一方で梱包体1b-2がY1の向きに移動しようとすると、輸送用コンテナ2の側壁5bと当接しているので側壁5bに移動を阻止される。そのためY方向のいずれの向きへの移動も規制できる。
【0087】
なお、
図23に示すように、輸送用コンテナ2に同種の梱包体1cを搭載する場合であっても、係合治具73で波形係合部23を覆う場合がある。この場合は以下の2つの理由が挙げられる。
まず、第1の理由としては、台座桁15がX方向に移動する際のガイドとなるレールのように、Y方向への移動を規制しつつ、X方向へガイドする部材が輸送用コンテナ2に予め設けられている場合があるためである。この場合は波形係合部23のようにY方向への移動を規制して位置決めを行う部材を梱包体1c側が有する必要はなく、逆に波形係合部23同士を係合させると台座桁15とレールの位置が合わなくなる可能性がある。この場合でも梱包体1cを輸送用コンテナ2に搭載させる場合、係合治具73で波形係合部23を覆う必要がある。このように、係合治具73で波形係合部23を覆うことで、梱包体1cの移動をガイドする部材が輸送用コンテナ2に設けられている場合でも、当該ガイド部材によるガイドを波形係合部23が邪魔することがない。
【0088】
次に、梱包体1cの波形係合部23同士を係合させた場合に台座桁15同士を接触させたくない場合があるためである。
台座桁15の長さにもよるが、
図21に示すように、梱包体1b-1と梱包体1b-2の波形係合部23同士が係合した場合、梱包体1b-1の台座桁15-1と梱包体1b-2の台座桁15-2がY方向に当接する場合がある。この構造はY方向への梱包体1b-1と梱包体1b-2の移動を阻止する点では有用であるが、梱包体1cの移動をガイドする部材が輸送用コンテナ2に設けられている場合、台座桁15が梱包体1cのY方向への移動を規制する必要はない。また台座桁15同士をY方向に当接させると、当接した部分の下方のコンテナ床面に梱包体1cから加えられる荷重が集中するため、コンテナ床面を支持するコンテナ横桁への負担が大きくなる。そのため、経年劣化等でコンテナ横桁が老朽化した輸送用コンテナ2を使用する場合は、台座桁15同士をY方向に当接させない方が好ましい場合がある。
そこで、
図23に示すように、係合治具73で波形係合部23を覆うことで、隣接する梱包体1c同士の係合治具73が接触するので台座桁15がX方向に離間する。この状態では台座桁15同士がY方向に当接することはない。なお、台座桁15同士をY方向に当接させないようにするためには、台座桁15は、係合治具73で波形係合部23を覆った状態で係合治具73からX方向に突出しない長さである必要がある。より具体的には台座桁15は、係合治具73の治具側波形係合部75が波形係合部23と係合し、凸部71が凹部79と嵌合した状態で、台座桁15の長手方向の端部15aと係合治具73の平面上の位置が重なっていればよい。
【0089】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが本発明は実施形態に限定されない。当業者であれば本発明の技術思想の範囲内で各種変形例及び改良例に想到するのは当然のことであり、これらも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1、1a、1b、1b-1、1b-2、1c、1d :梱包体
2 :輸送用コンテナ
4 :コンテナ床面
5 :コンテナ側壁
6 :線材コイル
10 :奥壁
12 :扉
15、15-1、15-2 :台座桁
15a :端部
18 :固縛用ベルト
19 :コイル保持台
19a、19b :ウェッジ部材
20 :桁緩衝材
21 :凹部
22 :傾斜面
23 :波形係合部
23a :傾斜部
30 :ロールクッション
30a :切れ込み
30b :切り欠き
31a :長辺
31b :短辺
33 :横桁
35 :平坦部
37 :バンド
54a :ブロック溝部
55 :内殻ブロック
56a :蟻ホゾ
56b :蟻溝
57 :下部内殻ブロック
57a :下部側連結凹部
57b :下部側傾斜部
58 :外殻ブロック
58a :収容凹部
59 :上部内殻ブロック
59a :上部側連結凹部
59b :上部側傾斜部
61 :連結ブロック
62a :内殻側波形部
62b :外殻側波形部
71 :凸部
73 :係合治具
75 :治具側波形係合部
79 :凹部
91 :コイル架台
【要約】
線材コイル6を横向きに保持して複数が1つの輸送用コンテナ2に搭載される線材コイル6の梱包体1であって、コンテナ床面4に配置され、輸送用コンテナ2の扉から奥に向かう1方向に延在する複数の台座桁15と、輸送用コンテナ2の幅方向に延在して複数の台座桁15を連結する横桁33と、横桁33上に設けられ、線材コイル6が、円筒の軸方向を輸送用コンテナ2の幅方向に向けて横向きで収納される凹部21を備え、線材コイル6が固縛されるブロック状のコイル保持台19を備え、コイル保持台19は、輸送用コンテナ2の扉12から奥を見た場合の正面と背面に、平面視で輸送用コンテナ2の幅方向に波向が向く波形係合部23を備え、波形係合部23が他の梱包体1の波形係合部23と係合する。これにより、線材コイルの保護機能を損なわずに従来よりもコンテナに搭載できる線材コイルの数を増やすことができる梱包体の提供ができる。