(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】留置針
(51)【国際特許分類】
A61M 5/158 20060101AFI20220406BHJP
A61M 25/06 20060101ALI20220406BHJP
A61M 39/06 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A61M5/158 500H
A61M25/06 500
A61M39/06 122
(21)【出願番号】P 2017216484
(22)【出願日】2017-11-09
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 一成
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-534454(JP,A)
【文献】特開2013-070870(JP,A)
【文献】特開2015-080707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0110055(US,A1)
【文献】特表2009-511193(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0083162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
A61M 25/06
A61M 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内針が挿通可能な外針と、
前記外針の基端に設けられた筒状の外針基と、
前記内針が挿通可能であり、且つ前記内針が抜かれた後に血液が前記外針基から漏れることを防止する止血弁と、
前記外針基内の空気を通過させ、前記外針基内の血液の通過を抑制又は阻止する通気路とを備える留置針であって、
前記外針基内に基端位置から先端位置へと前進可能な内筒部材が配置され、
前記止血弁は、前記内筒部材
の内部に挿入され、前記内筒部材とともに基端位置から先端位置へと前進可能であって、
前記外針基の内周面には、小径部と、前記小径部の先端側に位置し前記小径部よりも大径の大径部とが設けられ、
前記内筒部材の外周面には、
前記内筒部材の基端から先端に向かって切り欠かれた切欠部または前記内筒部材の内周面と外周面とを連通させるように貫通した貫通孔によって流路が形成され、
前記流路は、前記外針基の基端側から供給される液体が流れ込み、且つ前記基端位置では、
前記流路の先端が前記小径部の先端と一致またはこれより基端側に配置されることで前記小径部によって前記大径部との接続が阻止され、前記先端位置では
、前記流路の先端が前記小径部の先端より先端側に配置されることで前記大径部と接続され
ることを特徴とする留置針。
【請求項2】
請求項
1に記載の留置針であって、
前記切欠部は、前記内筒部材の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれていることを特徴とする留置針。
【請求項3】
請求項1から請求項
2の何れか1項に記載の留置針であって、
前記通気路は、前記内筒部材の外周面に設けられた先端から基端に向かって延びる外周側溝部であることを特徴とする留置針。
【請求項4】
請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の留置針であって、
前記止血弁は、中央部に切込部を備えた円柱状の弾性部材からなり、
前記通気路は、前記止血弁の外周面に設けられた先端から基端まで延びる内周側溝部であることを特徴とする留置針。
【請求項5】
請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の留置針であって、
前記止血弁は、中央部に切込部を備えた円柱状の弾性部材からなり、
前記通気路は、前記止血弁の前記切込部の径方向外側に設けられ前記止血弁の先端面と基端面とを連通させる細孔であることを特徴とする留置針。
【請求項6】
請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の留置針であって、
前記内筒部材は、多孔質体からなり、
前記通気路は、前記内筒部材であることを特徴とする留置針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁を備える留置針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内針を挿通可能な外針と、外針の基端に設けられた外針基と、切込部を有する弾性部材からなる止血弁と、止血弁と外針基の内周面との間に形成され外針基の内周面と止血弁とで画成される領域内の空気を外針基の外へ逃すための通気路と、を備える留置針が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この留置針は、内針を止血弁の切込部を通し外針の中に挿通させた状態で、患者の血管に刺すと、外針及び外針基内に流れ込む血液(フラッシュバック)によって外針及び外針基内の空気が通気路から排出される。そして、外針基内に血液が流れ込むことにより外針が血管に刺し込まれたことを確認した後、内針を抜く。そして、輸液バッグに接続された輸液ラインのコネクタを外針基に接続して止血弁を開弁させて輸液や薬液などの液体を患者に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の留置針では、患者に供給される液体は止血弁の切込部を開弁させて供給されるため、外針基の内周面(特に止血弁側)にフラッシュバックの血液が残ってしまう虞があり、血液の滞留による血栓の発生、又は雑菌の繁殖、血液が残っている外針基を視認した患者などに不快感を与えるなどの問題が生じる虞がある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、外針基にフラッシュバックの血液が残り難い留置針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
内針が挿通可能な外針(例えば、実施形態の外針2。以下同一。)と、
前記外針の基端に設けられた筒状の外針基(例えば、実施形態の外針基3。以下同一。)と、
前記内針が挿通可能であり、且つ前記内針が抜かれた後に血液が前記外針基から漏れることを防止する止血弁(例えば、実施形態の止血弁4。以下同一。)と、
前記外針基内の空気を通過させ、前記外針基内の血液の通過を抑制又は阻止する通気路(例えば、実施形態の通気路5。以下同一。)とを備える留置針(例えば、実施形態の留置針1。以下同一。)であって、
前記外針基内に基端位置から先端位置へと前進可能な内筒部材(例えば、実施形態の内筒部材6。以下同一。)が配置され、
前記止血弁は前記内筒部材に設けられ、
前記外針基の内周面には、小径部(例えば、実施形態の小径部7。以下同一。)と、前記小径部の先端側に位置し前記小径部よりも大径の大径部(例えば、実施形態の大径部8。以下同一。)とが設けられ、
前記内筒部材の外周面には、前記外針基の基端側から供給される液体が流れ込み、且つ前記基端位置では前記小径部によって前記大径部との接続が阻止され、前記先端位置では前記大径部と接続される流路(例えば、実施形態の切欠部9又は貫通孔12。以下同一。)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、内筒部材が基端位置に位置するときには、内筒部材の外周面に設けられた流路は大径部と接続されておらず、止血弁によって血液が外針基からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、内筒部材を先端位置へ移動させることにより、内筒部材の外周面に設けられた流路と大径部とが接続され、液体が流路及び大径部を介して止血弁の周りから外針を通過して患者に供給される。
【0009】
したがって、従来の留置針のように弁体の切込部から液体が供給されず、止血弁の周りから液体が供給されることにより、外針基の内周面(特に止血弁側)に残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体とともに患者に戻すことができ、外針基にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。
【0010】
[2]また、本発明においては、前記流路は、前記内筒部材の基端から先端に向かって切り欠かれた切欠部(例えば、実施形態の切欠部9。以下同一。)で構成することができる。かかる構成によれば、内筒部材を先端位置へ移動させて切欠部を大径部と接続させることによって、外針基にフラッシュバックの血液が残ることを抑制することができる。
【0011】
[3]また、本発明においては、前記切欠部は、前記内筒部材の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かくこともできる。かかる構成によれば、外針基の基端から供給される輸液や薬液などの液体を内針を挿通可能な内筒部材の内側を利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0012】
[4]また、本発明においては、前記流路は、前記内筒部材の内周面と外周面とを連通させるように貫通した貫通孔(例えば、実施形態の貫通孔12。以下同一。)で構成することができる。
【0013】
かかる構成によれば、内筒部材を先端位置へ移動させて切欠部を大径部と接続させることによって、外針基にフラッシュバックの血液が残ることを抑制することができる。また、外針基の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材の内側を利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0014】
[5]また、本発明においては、前記通気路は、前記内筒部材の外周面に設けられた先端から基端に向かって延びる外周側溝部(例えば、実施形態の外周側溝部10。以下同一。)で構成することができる。
【0015】
かかる構成によれば、フラッシュバックの血液の通過を阻止し空気の通過を許容する多孔質体などの通気路を構成する部材を別途内筒部材の外周に設ける必要がなく、部品点数を抑えて、組み立てを容易とすることができる。また、通気路を溝部で構成する場合、若干の血液が溝部に侵入する虞があるが、本発明では、内筒部材の外周を通過して液体が患者に供給されるため、外周側溝部に侵入した血液も供給される液体で流すことができる。
【0016】
[6]また、本発明においては、前記止血弁は、中央部に切込部(例えば、実施形態の切込部4a。以下同一。)を備えた円柱状の弾性部材からなり、前記通気路は、前記止血弁の外周面に設けられた先端から基端まで延びる内周側溝部(例えば、実施形態の内周側溝部13。以下同一。)で構成することができる。
【0017】
かかる構成によれば、フラッシュバックの血液の通過を阻止し空気の通過を許容する多孔質体などの通気路を構成する部材を別途内筒部材の外周に設ける必要がなく、部品点数を抑えて、組み立てを容易とすることができる。
【0018】
[7]また、本発明においては、前記通気路は、前記止血弁の前記切込部の径方向外側に設けられ前記止血弁の先端面と基端面とを連通させる細孔(例えば、実施形態の細孔。以下同一。)で構成することができる。かかる構成によれば、止血弁に切込部を形成する工程において同時に細孔も形成させることができ、製造工程を簡略化して、留置針のコストを抑えることができる。
【0019】
[8]また、本発明においては、内筒部材を多孔質体で構成し、通気路を内筒部材自体で構成してもよい。かかる構成によれば、通気路を構成する部材を別途内筒部材の外周に設けたり、内筒部材や止血弁などに溝部を形成する必要もなく通気路を設けることができ、部品点数を抑え、又は、製造工程数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】第1実施形態の留置針を分解して示す説明図。
【
図3】第1実施形態の留置針において、内筒部材が先端位置へ移動した状態を示す説明図。
【
図4】第1実施形態の留置針において、内筒部材が先端位置へ移動した状態を
図3のIV-IV線で切断した断面で示す説明図。
【
図6】第2実施形態の留置針を分解して示す説明図。
【
図7】第2実施形態の留置針において、内筒部材が先端位置へ移動した状態を示す説明図。
【
図8】第2実施形態の留置針において、内筒部材が先端位置へ移動した状態を
図7のVIII-VIII線で切断した断面で示す説明図。
【
図10】第3実施形態の留置針を分解して示す説明図。
【
図11】第3実施形態の留置針において、内筒部材が先端位置へ移動した状態を示す説明図。
【
図13】第4実施形態の留置針を分解して示す説明図。
【
図14】第4実施形態の留置針において、内筒部材が先端位置へ移動した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態の留置針を
図1から
図4を参照して説明する。
【0022】
図1の斜視図及び
図2の分解図に示すように、第1実施形態の留置針1は、内針(図示省略)が挿通可能な外針2と、外針2の基端に設けられた筒状の外針基3と、内針が挿通可能であり、且つ内針が抜かれた後にフラッシュバックの血液が外針基3から漏れることを防止する止血弁4と、外針基3内の空気を外針基3の基端側から外針基3の外へ通過させ外針基3内のフラッシュバックの血液の通過を抑制又は阻止する通気路5と、を備える。
【0023】
外針基3内には、円筒状の内筒部材6が配置されている。内筒部材6は、外針基3内で外針基3の先端方向へ移動可能であり、実施形態の説明においては、先端方向へ移動する前の初期の位置を基端位置、先端方向への前進移動が完了した位置を先端位置、として定義する。
【0024】
止血弁4は、円柱状の弾性部材で形成されており、中央部に先端から基端まで切り込まれた切込部4aが設けられている。図示省略した内針はこの切込部4aを通過して外針2に挿通される。また、止血弁4は、内筒部材6内に挿入されている。
【0025】
外針基3の内周面には、内筒部材6の外径と同一(略同一を含む。少なくともフラッシュバックの血液が通過できないように設定される。)の内径に設定された小径部7と、小径部7よりも先端側に位置し小径部7よりも大径の大径部8とが設けられている。
【0026】
内筒部材6には、基端から先端に向かって切り欠かれた切欠部9が一対形成されている。切欠部9は、内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれている。なお、切欠部9は輸液や薬液などが外針基3の基端側から供給されるように内筒部材6の外周面に形成されていればよく、必ずしも切欠部9が内周面まで達している必要はない。止血弁4は切欠部9よりも先端側に位置している。
【0027】
内筒部材6が外針基3内で基端位置に位置している場合には、小径部7によって切欠部9と大径部8との接続が阻止される。逆に、
図3の斜視図及び
図4の断面図に示すように、内筒部材6が外針基3内で先端位置に位置している場合には、切欠部9と大径部8とが接続される。
【0028】
また、内筒部材6の外周面には、先端から基端に向かって延びる外周側溝部10が周方向に間隔を存して複数設けられている。この外周側溝部10は、フラッシュバックの血液の通過を抑制し、空気の通過は許容できるように設定されている。また、外周側溝部10の長さは少なくとも小径部7の基端から先端までの長さ寸法より長く形成されており、内筒部材6が基端位置に位置している状態で、外針基3の大径部8内の空気を、外周側溝部10を介して外針基3の外に放出できるように構成されていればよい。
【0029】
また、一部の外周側溝部10は、切欠部9と連通するように形成されている。これにより、外針基3内の空気が外周側溝部10及び切欠部9を通って、内筒部材6内から外に排出できるため、更に空気の排出が容易となる。また、小径部7よりも基端側に小径部7よりも拡径された拡径部(本実施形態においては雄コネクタ11を接続するためのルアーテーパ部)が存在しない場合であっても、外周側溝部10、切欠部9、内筒部材6内を通って空気を排出することができる。
【0030】
第1実施形態の留置針1によれば、内筒部材6が基端位置に位置するときには、内筒部材6の外周面に設けられた切欠部9が大径部8と接続されておらず、止血弁4によってフラッシュバックの血液が外針基3からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、外針基3に接続する雄コネクタ11などを利用して内筒部材6を押圧して先端位置へ移動させることにより、内筒部材6の外周面に設けられた切欠部9と大径部8とが接続され、液体が切欠部9及び大径部8を介して止血弁4の周りから外針2を通過して患者に供給される。
【0031】
したがって、従来の留置針のように止血弁4の切込部から液体が供給されることなく、止血弁4の周りから液体が供給されることにより、外針基3の内周面(特に止血弁4側)に残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体と共に患者に戻すことができ、外針基3にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、血液の滞留による血栓の発生または雑菌の繁殖、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。本実施形態では、切欠部9が本発明の流路に該当する。
【0032】
また、切欠部9が内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれていることにより、外針基3の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材6の内側の空間も利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0033】
また、第1実施形態においては、通気路5を、内筒部材6の外周面に設けられた外周側溝部10で構成することにより、フラッシュバックの血液の通過を阻止し空気の通過を許容する多孔質体などの通気路5を構成する部材を別途内筒部材6の外周面に設ける必要がなく、部品点数を抑えて、留置針の組立てを容易とすることができる。
【0034】
また、通気路5を溝部で構成する場合、若干の血液が溝部に進入する虞があるが、本実施形態では、内筒部材6の外周を通過して液体が患者に供給されるため、外周側溝部10に進入した血液も供給される液体で流すことができる。
【0035】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の留置針を
図5から
図8を参照して説明する。
【0036】
第2実施形態の留置針1は、第1実施形態のものと比較して、流路が貫通孔12で形成されており、全て同一に構成されている。なお、第1実施形態と同一の構成は同一の符号を付して説明を省略する。
【0037】
図5の斜視図及び
図6の分解図に示すように、第2実施形態の留置針1は、内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように貫通した貫通孔12が設けられている。第2実施形態においては、この貫通孔12が本発明の流路に相当する。
【0038】
第2実施形態の留置針1によれば、内筒部材6が基端位置に位置するときには、内筒部材6に設けられた貫通孔12が大径部8と接続されておらず、止血弁4によってフラッシュバックの血液が外針基3からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、
図7の斜視図や
図8の断面図に示すように、外針基3に接続する雄コネクタ11などを利用して内筒部材6を押圧して先端位置へ移動させることにより、内筒部材6の外周面に設けられた貫通孔12と大径部8とが接続され、液体が貫通孔12及び大径部8を介して止血弁4の周りから外針2を通過して患者に供給される。
【0039】
したがって、従来の留置針のように止血弁4の切込部から液体が供給されること無く、止血弁4の周りから液体が供給されることにより、外針基3の内周面(特に止血弁4側)残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体と共に患者に戻すことができ、外針基3にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、血液の滞留による血栓の発生または雑菌の繁殖、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。
【0040】
また、貫通孔12が内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように貫通していることにより、外針基3の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材6の内側の空間も利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0041】
また、第2実施形態においても、通気路5を、内筒部材6の外周面に設けられた外周側溝部10で構成することにより、フラッシュバックの血液の通過を阻止し空気の通過を許容する多孔質体などの通気路5を構成する部材を別途内筒部材6の外周面に設ける必要がなく、部品点数を抑えて、留置針の組立てを容易とすることができる。
【0042】
また、通気路5を溝部で構成する場合、若干の血液が溝部に進入する虞があるが、本実施形態では、内筒部材6の外周を通過して液体が患者に供給されるため、外周側溝部10に進入した血液も供給される液体で流すことができる。
【0043】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態の留置針を
図9から
図11を参照して説明する。
【0044】
第3実施形態の留置針1は、第1実施形態のものと比較して、通気路5が外周側溝部10に代えて内周側溝部13で構成されている点を除いて全て同一に構成されている。なお、第1実施形態と同一の構成は同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
図9の斜視図及び
図10の分解図に示すように、第3実施形態の留置針1の通気路5は、止血弁4の外周面に設けられた先端から基端まで延びる内周側溝部13で構成されている。なお、内周側溝部13は内筒部材6の内周面に設けてもよい。
【0046】
第3実施形態の留置針1によれば、内筒部材6が基端位置に位置するときには、内筒部材6の外周面に設けられた切欠部9が大径部8と接続されておらず、止血弁4によってフラッシュバックの血液が外針基3からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、
図11に示すように、外針基3に接続する雄コネクタ11などを利用して内筒部材6を押圧して先端位置へ移動させることにより、内筒部材6の外周面に設けられた切欠部9と大径部8とが接続され、液体が切欠部9及び大径部8を介して止血弁4の周りから外針2を通過して患者に供給される。
【0047】
したがって、従来の留置針のように止血弁4の切込部から液体が供給されることなく、止血弁4の周りから液体が供給されることにより、外針基3の内周面(特に止血弁4側)に残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体と共に患者に戻すことができ、外針基3にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、血液の滞留による血栓の発生または雑菌の繁殖、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。本実施形態では、切欠部9が本発明の流路に該当する。
【0048】
また、切欠部9が内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれていることにより、外針基3の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材6の内側の空間も利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0049】
また、本実施形態においては、通気路5を、止血弁4の外周面に設けられた内周側溝部13で構成することにより、フラッシュバックの血液の通過を阻止し空気の通過を許容する多孔質体などを別途内筒部材6の外周面などに設ける必要がなく、部品点数を抑えて、留置針の組立てを容易とすることができる。
【0050】
なお、内周側溝部13に代えて切込部4aの径方向外側に止血弁4の先端面と基端面とを連通させる細孔を設けてこの細孔を通気路として機能させてもよい。通気路を細孔で構成することにより、止血弁に切込部を形成する工程において同時に細孔も形成させることができ、製造工程を簡略化して、留置針のコストを抑えることができる。
【0051】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態の留置針を
図11から
図14を参照して説明する。
【0052】
第4実施形態の留置針1は、第1実施形態のものと比較して、流路が貫通孔12で形成されており、通気路5が外周側溝部10に代えて内周側溝部13で構成されている点を除いて全て同一に構成されている。なお、他の実施形態と同一の構成は同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図11の斜視図及び
図13の分解図に示すように、第4実施形態の留置針1は、内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように貫通した貫通孔12が設けられている。本実施形態においては、この貫通孔12が本発明の流路に相当する。また、第3実施形態の通気路5は、止血弁4の外周面に設けられた先端から基端まで延びる内周側溝部13で構成されている。なお、内周側溝部13は内筒部材6の内周面に設けてもよい。
【0054】
第4実施形態の留置針1によれば、内筒部材6が基端位置に位置するときには、内筒部材6の外周面に設けられた貫通孔12が大径部8と接続されておらず、止血弁4によってフラッシュバックの血液が外針基3からこぼれることを防止することができる。そして、輸液や薬液などの液体を患者に供給するときには、
図14に示すように、外針基3に接続する雄コネクタ11などを利用して内筒部材6を押圧して先端位置へ移動させることにより、内筒部材6の外周面に設けられた貫通孔12と大径部8とが接続され、液体が貫通孔12及び大径部8を介して止血弁4の周りから外針2を通過して患者に供給される。
【0055】
したがって、従来の留置針のように止血弁4の切込部から液体が供給されることなく、止血弁4の周りから液体が供給されることにより、外針基3の内周面(特に止血弁4側)に残り易いフラッシュバックの血液を患者に供給される液体と共に患者に戻すことができ、外針基3にフラッシュバックの血液が残ることを抑制して、血液の滞留による血栓の発生または雑菌の繁殖、患者などへ不快感を与えることを抑制することができる。
【0056】
また、貫通孔12が内筒部材6の内周面と外周面とを連通させるように切り欠かれていることにより、外針基3の基端から供給される輸液や薬液などの液体を、内針を挿通可能な内筒部材6の内側の空間も利用して患者に供給することができ、液体供給時の抵抗を軽減させることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、通気路5を、止血弁4の外周面に設けられた内周側溝部13で構成することにより、フラッシュバックの血液の通過を阻止し空気の通過を許容する多孔質体などを別途内筒部材6の外周面などに設ける必要がなく、部品点数を抑えて、留置針の組立てを容易とすることができる。
【0058】
なお、内周側溝部13に代えて切込部4aの径方向外側に止血弁4の先端面と基端面とを連通させる細孔を設けてこの細孔を通気路として機能させてもよい。
【0059】
[他の実施形態]
第1から第4の実施形態においては、通気路5として、外周側溝部10及び内周側溝部13を説明したが、本発明の通気路はこれに限らず、例えば、内筒部材6の外周面に環状の多孔質体(例えば、ポリエチレンまたはポリウレタン等のプラスチックの焼結体、通気フィルタなど)を設けて通気路としてもよく、または、内筒部材自体を多孔質体(例えば、ポリエチレンまたはポリウレタン等のプラスチックの焼結体、通気フィルタなど)で構成して、内筒部材に通気路としての機能を持たせても、本発明の「フラッシュバックの血液が外針基内に残ることを抑制する」という効果を得ることができる。
【0060】
また、上記実施形態においては、内筒部材6内に止血弁4を設けたものを説明したが、本発明の止血弁はこれに限らず、例えば、内筒部材6の先端縁に先方へ突出する突出部を形成し、この突出部の先端外周面に径方向外方へ膨らむように張り出した膨出部を形成して、この膨出部および内筒部材6の先端開口を通常時は閉塞するように覆う断面C字状の止血弁を内筒部材6の先端に設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 留置針
2 外針
3 外針基
4 止血弁
4a 切込部
5 通気路
6 内筒部材
7 小径部
8 大径部
9 切欠部(流路)
10 外周側溝部
11 雄コネクタ
12 貫通孔(流路)
13 内周側溝部