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特許7054014スイング測定装置、スイング測定方法およびスイング測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】スイング測定装置、スイング測定方法およびスイング測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
A63B69/36 541P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019529438
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2018002620
(87)【国際公開番号】W WO2019012721
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2017137035
(32)【優先日】2017-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】三枝 宏
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0018795(US,A1)
【文献】特開2017-086210(JP,A)
【文献】国際公開第2019/012721(WO,A1)
【文献】特開2015-139562(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0120124(US,A1)
【文献】米国特許第6793585(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0072797(US,A1)
【文献】米国特許第8998717(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブに取り付けられた単一の慣性センサを用いて前記ゴルフクラブのスイングの評価指標を測定するスイング測定装置であって、
前記単一の慣性センサは、該単一の慣性センサの測定点における3次元直交座標の各軸方向の加速度と、前記測定点における3次元直交座標の各軸まわりの角速度とを検出値として測定するものであり、
前記検出値の時系列データに基づいて、前記スイング中における前記ゴルフクラブの移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、
前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて、前記スイングにおけるシャフトプレーンを算出するシャフトプレーン算出部と、
前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡から算出された前記ゴルフクラブのフェースの向きに基づいて、前記シャフトプレーンに対して前記ゴルフクラブのフェース面がなす対シャフトプレーン角度を前記評価指標として算出する角度算出部と、
を備えることを特徴とするスイング測定装置。
【請求項2】
前記シャフトプレーン算出部は、バックスイング中に前記ゴルフクラブのヘッドが最も高い位置に達した点を頂点位置とし、前記スイングのアドレス位置から前記頂点位置までのいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、
ことを特徴とする請求項1記載のスイング測定装置。
【請求項3】
前記シャフトプレーン算出部は、前記バックスイング中のハーフウェイバック位置から前記頂点位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、
ことを特徴とする請求項2記載のスイング測定装置。
【請求項4】
前記シャフトプレーン算出部は、前記バックスイング中の前記アドレス位置からハーフウェイバック位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、
ことを特徴とする請求項2記載のスイング測定装置。
【請求項5】
前記移動軌跡算出部による前記スイング中における前記ゴルフクラブの移動軌跡の算出は、前記検出値の時系列データと前記ゴルフクラブの3次元形状モデルとに基づいてなされる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載のスイング測定装置。
【請求項6】
ゴルフクラブに取り付けられた単一の慣性センサを用いて前記ゴルフクラブのスイングの評価指標を測定するスイング測定方法であって、
前記単一の慣性センサは、該単一の慣性センサの測定点における3次元直交座標の各軸方向の加速度と、前記測定点における3次元直交座標の各軸まわりの角速度とを検出値として測定するものであり、
前記検出値の時系列データに基づいて、前記スイング中における前記ゴルフクラブの移動軌跡を算出する移動軌跡算出工程と、
前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて、前記スイングにおけるシャフトプレーンを算出するシャフトプレーン算出工程と、
前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡から算出された前記ゴルフクラブのフェースの向きに基づいて、前記シャフトプレーンに対して前記ゴルフクラブのフェース面がなす対シャフトプレーン角度を前記評価指標として算出する角度算出工程と、
を含んだことを特徴とするスイング測定方法。
【請求項7】
前記シャフトプレーン算出工程では、バックスイング中に前記ゴルフクラブのヘッドが最も高い位置に達した点を頂点位置とし、前記スイングのアドレス位置から前記頂点位置までのいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、
ことを特徴とする請求項記載のスイング測定方法。
【請求項8】
前記シャフトプレーン算出工程では、前記バックスイング中のハーフウェイバック位置から前記頂点位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、
ことを特徴とする請求項記載のスイング測定方法。
【請求項9】
前記シャフトプレーン算出工程では、前記バックスイング中の前記アドレス位置からハーフウェイバック位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、
ことを特徴とする請求項記載のスイング測定方法。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項記載のスイング測定方法をコンピュータに実行させることを特徴とするスイング測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサを用いてゴルフクラブのスイングの評価指標を測定するスイング測定装置、スイング測定方法およびスイング測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブのスイングの評価指標として、スイング中のフェース面向きの挙動を測定する技術が知られている。スイング中のフェース面の向きは、インパクト時のフェース面の向きの安定性を決める一つの要素となる。
スイング中のフェース面向きを計測する方法として、例えば下記特許文献1では、ゴルフクラブのグリップ部に取り付けた慣性センサを用いて、アドレスからインパクトにいたるフェース面の向きの変化をアドレス時に対するシャフト軸周りの変化量として評価する提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-73821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴルフクラブのスイングの評価指標として、スイング中のゴルフクラブ(シャフト部分)の軌跡に沿った平面(以下、本明細書において「シャフトプレーン」という)が知られている。
シャフトプレーンを評価する方法として、例えばカメラを用いて撮影した画像からシャフトプレーンの位置を算出する方法が知られているが、カメラの撮影角度による影響が大きく、精度が良くないという課題がある。
また、上述した特許文献1では、フェース面の向きに関してシャフト軸周りの相対回転量を評価しているものの、実際のシャフトプレーンを加味した評価がなされておらず、改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、シャフトプレーンを考慮したゴルフクラブのスイングの評価指標を測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明はゴルフクラブに取り付けられた単一の慣性センサを用いて前記ゴルフクラブのスイングの評価指標を測定するスイング測定装置であって、前記単一の慣性センサは、該単一の慣性センサの測定点における3次元直交座標の各軸方向の加速度と、前記測定点における3次元直交座標の各軸まわりの角速度とを検出値として測定するものであり、前記検出値の時系列データに基づいて、前記スイング中における前記ゴルフクラブの移動軌跡を算出する移動軌跡算出部と、前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて、前記スイングにおけるシャフトプレーンを算出するシャフトプレーン算出部と、前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡から算出された前記ゴルフクラブのフェースの向きに基づいて、前記シャフトプレーンに対して前記ゴルフクラブのフェース面がなす対シャフトプレーン角度を前記評価指標として算出する角度算出部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記シャフトプレーン算出部は、バックスイング中に前記ゴルフクラブのヘッドが最も高い位置に達した点を頂点位置とし、前記スイングのアドレス位置から前記頂点位置までのいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記シャフトプレーン算出部は、前記バックスイング中のハーフウェイバック位置から前記頂点位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記シャフトプレーン算出部は、前記バックスイング中の前記アドレス位置からハーフウェイバック位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記移動軌跡算出部による前記スイング中における前記ゴルフクラブの移動軌跡の算出は、前記検出値の時系列データと前記ゴルフクラブの3次元形状モデルとに基づいてなされる、ことを特徴とする。
また、本発明はゴルフクラブに取り付けられた単一の慣性センサを用いて前記ゴルフクラブのスイングの評価指標を測定するスイング測定方法であって、前記単一の慣性センサは、該単一の慣性センサの測定点における3次元直交座標の各軸方向の加速度と、前記測定点における3次元直交座標の各軸まわりの角速度とを検出値として測定するものであり、前記検出値の時系列データに基づいて、前記スイング中における前記ゴルフクラブの移動軌跡を算出する移動軌跡算出工程と、前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて、前記スイングにおけるシャフトプレーンを算出するシャフトプレーン算出工程と、前記スイング中のいずれかの区間における前記移動軌跡から算出された前記ゴルフクラブのフェースの向きに基づいて、前記シャフトプレーンに対して前記ゴルフクラブのフェース面がなす対シャフトプレーン角度を前記評価指標として算出する角度算出工程と、を含んだことを特徴とする。
また、本発明は、前記シャフトプレーン算出工程では、バックスイング中に前記ゴルフクラブのヘッドが最も高い位置に達した点を頂点位置とし、前記スイングのアドレス位置から前記頂点位置までのいずれかの区間における前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記シャフトプレーン算出工程では、前記バックスイング中のハーフウェイバック位置から前記頂点位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、ことを特徴とする。
また、本発明は、前記シャフトプレーン算出工程では、前記バックスイング中の前記アドレス位置からハーフウェイバック位置に到るまでの前記移動軌跡に基づいて前記シャフトプレーンを算出する、ことを特徴とする。
また、本発明はいずれかのスイング測定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
発明によれば、シャフトプレーンに対してゴルフクラブのフェース面がなす対シャフトプレーン角度を算出するので、各測定者のスイングタイプを把握する上で有利となる。また、各測定者のスイングタイプに合わせた評価を行う上で有利となる。
また、本発明によれば、アドレス位置から頂点位置(バックスイングにおける頂点位置)までの区間における移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出するので、測定者の頭上を越えた頂点位置からトップ位置までの移動軌跡を除外することができるので、シャフトプレーンの算出精度を向上させる上で有利となる。
また、本発明によれば、ハーフウェイバック位置から頂点位置に到るまでの移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出するので、主にバックスイング後半の移動軌跡に基づくシャフトプレーンを算出することができる。また、バックスイング時の移動軌跡データのうち半分程度のみを用いてシャフトプレーンを算出するので、装置の処理負荷を軽減する上で有利となる。
また、本発明によれば、アドレス位置からハーフウェイバック位置に到るまでの移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出するので、主にバックスイング前半の移動軌跡に基づくシャフトプレーンを算出することができる。また、バックスイング時の移動軌跡データのうち半分程度のみを用いてシャフトプレーンを算出するので、装置の処理負荷を軽減する上で有利となる。
また、本発明によれば、コンピュータを用いていずれかのスイング測定方法を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態にかかるスイング測定システム10の構成を示す説明図である。
図2】測定空間Sにおける基準座標の説明図である。
図3】慣性センサ12の外観を示す図である。
図4】慣性センサ12の構成を示すブロック図である。
図5】コンピュータ14の構成を示すブロック図である。
図6】コンピュータ14の機能的構成を示すブロック図である。
図7】ゴルフクラブ20の移動軌跡の説明図である。
図8】ゴルフクラブ20の移動軌跡の説明図である。
図9図8の移動軌跡を用いて算出したシャフトプレーンの説明図である。
図10】ゴルフクラブ20の移動軌跡の説明図である。
図11】対シャフトプレーン角度の一例を示す説明図である。
図12】スイング中の測定者Fを示す説明図である。
図13】対シャフトプレーン角度と対アドレス時角度との比較を示す表である。
図14】本実施の形態のスイング評価方法の手順を示すフローチャートである。
図15】ゴルフクラブ20の移動軌跡の説明図である。
図16】左右進入θ LR の説明図である。
図17】上下進入θ UD の説明図である。
図18】打撃時フェース角φの説明図である。
図19】打撃時ロフト角αの説明図である。
図20】打撃時ライ角βの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかるスイング測定装置、スイング測定方法およびスイング測定プログラムの好適な実施の形態を詳細に説明する。
図1は、実施の形態にかかるスイング測定システム10の構成を示す説明図である。
スイング測定システム10は、慣性センサ12と、コンピュータ14(スイング測定装置)とによって構成され、慣性センサ12の測定結果に基づいて、コンピュータ14により測定空間S内におけるゴルフクラブ20の挙動を演算し、スイングの評価指標を算出する。
ゴルフクラブ20は、大きくシャフト22、ゴルフクラブヘッド24およびグリップ26によって構成される。シャフト22の一方の端部にゴルフクラブヘッド24が設けられ、他方の端部にはグリップ26が設けられている。
測定空間Sの地面G上には、ゴルフボールBを載置するためのボール載置位置P0が予め定められており、このボール載置位置P0は地面G上に設けられたマークなどによって表示されている。あるいは、ボール載置位置P0にティーが設けられ、このティーにゴルフボールBが載置される。
また、ボール載置位置P0の前方には、ゴルフボールBを打ち出す目標としてのターゲットCが設けられている。なお、図示の制約上、図面上ではボール載置位置P0とターゲットCとが近接して描かれているが、実際にはボール載置位置P0とターゲットCとは所定の距離(ドライバーなど飛距離の出るクラブを用いる程度の距離)があるものとする。
測定者Fは、ゴルフクラブ20をスイングすることにより、ゴルフクラブヘッド24のフェース面によってボール載置位置P0に載置されたゴルフボールBをターゲットCに向けて打ち出す。
このスイング時における加速度および角速度を慣性センサ12によって測定し、コンピュータ14によって演算処理することによって、スイングの評価指標を算出する。
なお、ボール載置位置P0に載置されたゴルフボールBの中心点P1とターゲットCとを結ぶ直線が目標線Lである。
【0009】
測定空間Sには、ボール載置位置P0を中心とする基準座標が設定されている。
図2は、測定空間Sにおける基準座標の説明図である。
測定空間Sの基準座標は、ボール載置位置P0を中心として、上記目標線Lを地面Gに投影した第1軸Y1と、地面Gに垂直な第2軸Y2と、地面Gに水平かつ第1軸Y1および第2軸Y2によって形成される平面に直交する方向に延びる第3軸Y3とによって規定される。
測定空間S内の任意の位置は、第1軸Y1~第3軸Y3によって規定される基準座標を用いて特定することができる。
【0010】
図3は、慣性センサ12の外観を示す図である。
図3Aは慣性センサ12の外観斜視図、図3Bは慣性センサ12のゴルフクラブ20への取り付け状態を示す図である。
慣性センサ12は、無線通信機能を有する小型のセンサユニットである。慣性センサ12のサンプリング周波数は、たとえば500Hz~1000Hzであり、既存の磁気センサのサンプリング周波数(たとえば240Hz)と比較して数倍の時間分解能を有する。また、既存の磁気センサは有線方式であるのに対して、慣性センサ12は無線方式で測定結果をコンピュータ14に送信することができる。
慣性センサ12は、筐体122、表示部124、操作ボタン126を備える。
図3Aに示すように、慣性センサ12の筐体122は、前面1221、後面1222、上面1223、下面1224、右側面1225、左側面1226を備え、前後方向の厚さと、厚さよりも大きな寸法の左右方向の幅と、幅よりも大きな寸法の上下方向の長さを有し、矩形板状を呈している。
筐体122の前面1221は、長手方向を筐体122の上下方向に平行させたほぼ長方形を呈している。
前面1221には、表示部124および操作ボタン126が設けられている。
表示部124は、液晶モニタ等であり、慣性センサ12による測定状況(「測定中」等の表示)や測定結果などが表示される。
なお、表示部124は省略してもよく、たとえばLED等の点灯の有無や点灯色によって慣性センサの測定状況等を視認できるようにしてもよい。
操作ボタン126は、慣性センサ12による測定の開始や終了を指示する指示入力が入力される。
なお、操作ボタン126は省略してもよく、測定の開始や終了を指示する指示入力は、外部(たとえばコンピュータ14)から与えてもよい。
また、前面1221に対向する後面1222には筐体122をゴルフクラブ20に取り付けるための固定部(図示なし)が設けられている。
【0011】
慣性センサ12は、3次元直交座標における測定点の加速度および角速度をリアルタイムで測定する。
本実施の形態では、筐体122の中心点を測定点Oとし、測定点Oを原点とする慣性センサ12の測定用3次元直交座標が設定されている。具体的には、測定点Oから筐体122の下面1224方向に第1軸X1、右側面1225方向に第2軸X2、後面1222方向に第3軸X3が、それぞれ設定されている。
慣性センサ12をゴルフクラブ20に取り付ける際には、例えば第1軸X1を打撃具であるゴルフクラブ20の軸線方向、すなわちシャフト22に一致させる。また、第3軸X3をゴルフクラブ20のフェース面と平行方向に一致させる。
なお、ゴルフクラブ20のシャフト22(第1軸X方向)の地面Gからの傾きは、慣性センサ12において重力方向gを特定することによって計測することができる。
ここで、スイングの初期位置(測定開始時)において、慣性センサ12の第2軸X2が、測定空間Sの第1軸Y1(目標線Lの地面Gへの投影線)と一致するようにゴルフクラブ20を保持した状態を「ゴルフクラブ20の基準状態」という。
ゴルフクラブ20を基準状態で保持することにより、測定空間S内の基準座標と慣性センサ12の測定用3次元直交座標との間に対応関係を規定することができ、慣性センサ12で測定した方向を測定空間Sにおける相対的な位置関係で表すことができる。
また、仮にゴルフクラブ20が基準状態からずれた場合にも、測定空間S内の基準座標と慣性センサ12の測定用3次元直交座標とのずれ量がわかれば、慣性センサ12の測定結果を校正することが可能となる。
【0012】
図4は、慣性センサ12の構成を示すブロック図である。
慣性センサ12は、前記の表示部124、操作ボタン126に加えて、3次元加速度センサ128および3次元ジャイロセンサ130、処理部132、無線通信部134などを含んで構成されている。
3次元加速度センサ128は、測定点Oにおける3次元直交座標の各軸(上記X1,X2,X3)方向の加速度を測定する。
3次元ジャイロセンサ130は、測定点Oにおける3次元直交座標の各軸(上記X1,X2,X3)まわりの角速度を測定する。
無線通信部134は、3次元加速度センサ128および3次元ジャイロセンサ130の測定データをコンピュータ14に送信する。
処理部132は、慣性センサ12の起動や測定データへのタイムスタンプの付与、測定データの送信の制御等をおこなう。
本実施の形態では、処理部132は、マイクロコンピュータによって構成されている。
処理部132は、CPU132Aと、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM132B、RAM132C、インターフェース132D、表示用ドライバ132Eなどを含んで構成されている。
ROM132BはCPU132Aが実行する移動体の移動方向および移動速度を算出するための制御プログラムなどを格納し、RAM132Cはワーキングエリアを提供するものである。
インターフェース132Dは、3次元加速度センサ128および3次元ジャイロセンサ130の測定値を入力してCPU132Aに供給し、また、操作ボタン126からの操作信号を受け付けてCPU132Aに供給するものである。
表示用ドライバ132EはCPU132Aの制御に基づいて表示部124を駆動するものである。
【0013】
つぎに、コンピュータ14の構成について説明する。
図5は、コンピュータ14の構成を示すブロック図である。
コンピュータ14は、CPU1402と、不図示のインターフェース回路およびバスラインを介して接続されたROM1404、RAM1406、ハードディスク装置1408、ディスク装置1410、キーボード1412、マウス1414、ディスプレイ1416、プリンタ1418、入出力インターフェース1420、無線通信ユニット1422などを有している。
ROM1404は制御プログラムなどを格納し、RAM1406はワーキングエリアを提供するものである。
ハードディスク装置1408は、慣性センサ12の測定結果に基づいて、測定空間S内におけるゴルフクラブ20の挙動を演算し、ゴルフクラブ20の挙動に基づいてスイングの評価指標を算出する評価指標算出プログラムを格納している。また、ハードディスク装置1408は、3次元座標系において、ゴルフクラブ20を再現した3次元形状モデルを記憶している。
ディスク装置1410はCDやDVDなどの記録媒体に対してデータの記録および/または再生を行うものである。
キーボード1412およびマウス1414は、操作者による操作入力を受け付けるものである。
ディスプレイ1416はたとえば上記評価指標等のデータを表示出力するものであり、プリンタ1418はデータを印刷出力するものであり、ディスプレイ1416およびプリンタ1418によってデータを出力する。
入出力インターフェース1420は、外部機器との間でデータの授受を行うものである。
無線通信ユニット1422は、慣性センサ12との間で無線通信を用いてデータ(測定データ等)の授受を行うものである。
なお、本実施の形態では、慣性センサ12の測定結果に基づいてスイングの評価指標を算出する装置としてコンピュータ14を用いるが、たとえばスマートホンやタブレット等の小型情報処理装置によって評価指標を算出してもよい。
また、たとえば慣性センサ12に評価指標を算出する機能を搭載してもよい。この場合、算出した評価指標を慣性センサ12の表示部124に表示してもよいし、他の情報処理装置に送信して表示等の出力をおこなってもよい。
【0014】
図6は、コンピュータ14の機能的構成を示すブロック図である。
コンピュータ14は、慣性センサ12の測定結果に基づいて、測定空間S内におけるゴルフクラブ20の挙動を演算し、スイングの評価指標を算出するスイング測定装置として機能する。
コンピュータ14は、上記CPU1402が上記評価指標算出プログラムを実行することにより、移動軌跡算出部62、シャフトプレーン算出部64、角度算出部66として機能する。
【0015】
移動軌跡算出部62は、慣性センサ12の検出値を用いて、スイング中におけるゴルフクラブ20の移動軌跡を算出する。
シャフトプレーン算出部64は、スイング中のいずれかの区間における移動軌跡に基づいて、当該スイングにおけるシャフトプレーンを算出する。
角度算出部66は、シャフトプレーンに対してゴルフクラブ20のフェース面がなす対シャフトプレーン角度を評価指標として算出する。
【0016】
つぎに、上記各機能部の詳細について説明する。
上述のように、慣性センサ12は、ゴルフクラブ20に取り付けられるが、ゴルフクラブ20の形状は既知かつほぼ一定である(打撃時におけるしなり等は無視できる)ため、慣性センサ12の測定点を固定すれば、ゴルフクラブ20の任意の点と測定点との相対位置を特定することができる。
評価指標算出プログラムは、慣性センサ12の測定結果に基づいて、各時刻におけるゴルフクラブ20の各点の位置を算出し、スイング中のゴルフクラブ20の挙動をRAM1406上の仮想空間上に再現する。そして、当該スイングにおける各種の評価指標を算出する。
【0017】
本実施の形態では、評価指標算出プログラムにおいて、以下の評価指標を算出する。
(1)ゴルフクラブ20の移動軌跡を示す時系列データとしての移動軌跡データ(移動軌跡算出部62):
移動軌跡データは、図7に示すようにゴルフクラブ20のシャフト22の移動軌跡によって示される。なお、移動軌跡データの他の形態として、図15のようなゴルフクラブ20のフェース面の中心点の移動軌跡も算出可能である。
なお、図7Aは測定者Fの正面から見た移動軌跡、図7Bは目標線Lの延在方向と反対方向から見た移動軌跡である。
図7の移動軌跡データのうち、GRはグリップ位置の軌跡、FAはヘッド位置(フェース面方向)の軌跡を示す。また、一連の移動軌跡のうち、ADはアドレス位置、HBはハーフウェイバック位置、HIはバックスイング中にゴルフクラブヘッド24が最も高い位置に達した点である頂点位置、TPはゴルフクラブヘッド24の移動方向が反転するポイント(切替しポイント)であるトップ位置を示す。
【0018】
(2)スイング中のゴルフクラブ20の軌跡に沿った平面であるシャフトプレーン(シャフトプレーン算出部64):
シャフトプレーンは、スイング中のいずれかの区間におけるゴルフクラブ20の移動軌跡を用い、最小自乗法など公知の方法を用いて、これらの各ライン(移動軌跡)との距離が最小となる平面として算出する。
シャフトプレーン算出時に抽出する区間としては、例えばアドレス位置AD(図7参照)から頂点位置HI(図7参照)までのいずれかの区間とする。すなわち、この場合シャフトプレーン算出部64は、バックスイング中にゴルフクラブヘッド24が最も高い位置に達した点を頂点位置HIとし、スイングのアドレス位置ADから頂点位置HIまでのいずれかの区間における移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出する。
このように、アドレス位置ADから頂点位置HIまでの移動軌跡をシャフトプレーンの算出に用い、頂点位置HIからトップ位置TPまでの移動軌跡を除外することによって、シャフトプレーンの算出精度を向上させることができる。特に、頂点位置HIからトップ位置TPまでの区間が長い測定者においては、この区間の移動軌跡が、主なバックスイング区間(アドレス位置ADから頂点位置HI)と同一平面上に乗らない場合が多いと考えられるため、アドレス位置ADから頂点位置HIまでの移動軌跡をシャフトプレーンの算出に用いるのが妥当と考えられる。
【0019】
例えば、図7に示すスイング全体の移動軌跡から、アドレス位置ADから頂点位置HIまでの区間を抽出したのが図8である。なお、図8Aは測定者Fの正面から見た移動軌跡、図8Bは目標線Lの延在方向と反対方向から見た移動軌跡である。
そして、図8の移動軌跡から最小二乗法などを用いて算出したのが、図9に示すシャフトプレーンSPである。図9では測定者Fの目標線Lの延在方向と反対方向から見た移動軌跡(図8B)に重畳してシャフトプレーンSPを図示している。
【0020】
また、アドレス位置ADから頂点位置HIまでの区間から任意の区間を抽出してシャフトプレーンを算出してもよい。最低でもスイング中の2点の移動軌跡が取得できればシャフトプレーンを算出可能である。
例えば、バックスイング中のアドレス位置ADからハーフウェイバック位置HB(図10参照)に到るまでの移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出してもよい。この場合、主にバックスイング前半の移動軌跡に基づくシャフトプレーンを算出することができる。アドレス位置ADからハーフウェイバック位置HBに到るまでの移動軌跡を抽出したものを図20に示す。
なお、ハーフウェイバック位置HBは、一般にシャフトが地面と平行になるポイントまたは手首が腰の位置まで上がったポイントとして規定されるが、プログラムによる処理においては、前者のシャフトが地面と平行になるポイントした方が精度が高いと考えられる。
また、図示は省略するが、バックスイング中のハーフウェイバック位置HBから頂点位置HIに到るまでの移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出してもよい。この場合、主にバックスイング後半の移動軌跡に基づくシャフトプレーンを算出することができる。
このように、アドレス位置ADから頂点位置HIまでの区間から任意の区間を抽出してシャフトプレーンを算出することにより、コンピュータ14の処理負荷を軽減することができる。
【0021】
(3)シャフトプレーンに対してゴルフクラブ20のフェース面がなす対シャフトプレーン角度(角度算出部66):
対シャフトプレーン角度は、スイング中の各時刻におけるフェース面の向きと、(2)で算出したシャフトプレーンとから算出することができる。このとき、スイング中の各時刻における対シャフトプレーン角度を時系列データとして算出することもできるし、任意の時刻における対シャフトプレーン角度のみを算出(または時系列データから抽出)することもできる。
【0022】
図11Aは、対シャフトプレーン角度の一例を示す説明図である。
図11Aにおいて、符号ADはアドレス位置、FAは所定時刻におけるゴルフクラブヘッド24のフェース面向き、SPはシャフトプレーン、Vはシャフトプレーンと直交する線分である。本実施の形態では、対シャフトプレーン角度は、シャフトプレーンSPと直交する線分Vを基準(0°)として、フェース面向きFAがなす角度であり、時計回りに正の角度を取るものとする。
例えば、状態αでは線分Vとフェース面向きFAとは一致しており、対シャフトプレーン角度は0°である。状態βでは線分Vとフェース面向きFAとのなす角度、すなわち対シャフトプレーン角度は-10°である。状態γでは線分Vとフェース面向きFAとのなす角度、すなわち対シャフトプレーン角度は+10°である。
【0023】
図11Bに、比較例としてアドレス位置ADにおけるフェース面向きFAを基準としたシャフト軸周りのフェース角度の変化の結果を示している。
図11Bの状態α,β,γにおけるゴルフクラブヘッド24の位置は、それぞれ図11Aの状態α,β,γと同じ位置にあるが、従来のようにアドレス位置ADにおけるフェース面向きFAと比較すると、全てフェース角度=0°となり、図11Aに示す対シャフトプレーン角度とは異なっている。
【0024】
図12は、スイング中の測定者Fを後方(目標線Lの延在方向と反対方向)から見た図である。図12Aはゴルフクラブヘッド24がハーフウェイバック位置HBにあるタイミングであり、図12Bはゴルフクラブヘッド24がトップ位置TPにあるタイミングである。
このような同一のスイングに対して、本発明で算出する対シャフトプレーン(SP)角度と、アドレス位置ADにおけるフェース面向きFAとの比較によるフェース角度(対AD時角度)とをそれぞれ算出すると、図13の表のようになる。
すなわち、ハーフウェイバック位置HBでは、対シャフトプレーン角度は9.1°であり、対アドレス時角度は0.9°であった。また、トップ位置TPでは、対シャフトプレーン角度は33.4°であり、対アドレス時角度は2.8°であった。
対アドレス時角度ではアドレスからトップまでフェースの開きがほぼないという結果となっているが、対シャフトプレーン角度はトップにかけて大きくなっており、スイングを評価する指標として従来から用いられている対アドレス時角度とは異なる観点からスイングの評価が可能なことがわかる。
【0025】
なお、上記(1)~(3)と併せて、以下に示すような一般的なスイング測定装置で測定する各種評価指標を算出してもよい。
(4)移動軌跡データに基づくヘッドスピードデータ:
ゴルフクラブ20のフェース面の中心点410(図15)が単位時間当たりに移動する距離に基づいて、スイング中におけるヘッドスピードを算出する。
(5)左右進入角θ LR
左右進入角θ LR は、図16に示すように、ゴルフクラブ20のフェース面402の中心点410の移動軌跡Tと目標線Lとを水平面に投影したときに、水平面上において移動軌跡Tと目標線Lとがなす角度をいう。なお、図中、矢印Fはゴルフクラブヘッド24の移動方向を示す。
(6)上下進入角θ UD
上下進入角θ UD とは、図17に示すように、ゴルフクラブ20のフェース面402の中心点410の移動軌跡Tと目標線Lとを目標線Lと平行する鉛直面に投影したときに、鉛直面上において移動軌跡Tと目標線Lとがなす角度をいう。
(7)フェース面402がゴルフボールBを打撃する直前におけるゴルフクラブヘッド24の向きを示す向きデータDf:
本実施の形態では、向きデータDfは、打撃時フェース角φと、打撃時ロフト角αと、打撃時ライ角βを含む。
以下、図18図19図20を参照して説明する。
(7-1)打撃時フェース角φは、図18に示すように、ゴルフクラブ20のフェース面402がゴルフボールBを打撃する直前におけるフェース面402の中心点410を通る法線Hと目標線Lとを水平面に投影したときに、水平面上において法線Hと目標線Lとがなす角度によって示される。
(7-2)打撃時ロフト角αは、図19に示すように、ゴルフクラブ20のフェース面402がゴルフボールBを打撃する直前におけるフェース面402の中心点410を通る法線Hと該法線Hと交差する水平面(地面G)と平行な平面とがなす角度によって示される。
(7-3)打撃時ライ角βは、図20に示すように、ゴルフクラブ20のフェース面402がゴルフボールBを打撃する直前におけるシャフト22の延長線と、この延長線が交差する水平面(本例では地面G)とがなす角度によって示される。
なお、上述したスイング評価指標は一例であり、上述した評価指標のうちの一部のみを算出したり、上述した評価指標以外の評価指標を算出してもよいことは無論である。
【0026】
つぎに、図14のフローチャートを参照して本実施の形態のスイング測定方法について説明する。
まず、測定者Fはゴルフクラブ20に慣性センサ12を取り付ける(ステップS10)。慣性センサ12の取り付け位置は任意であるが、測定者Fによるスイングを妨害しない位置が好ましい。図3Bの例ではグリップ26とシャフト22の境界付近に取り付けられている。また、上述のように、慣性センサ12をゴルフクラブ20に取り付ける際には、第1軸X1を打撃具であるゴルフクラブ20の軸線方向、すなわちシャフト22に一致させる。また、第3軸X3をゴルフクラブ20のフェース面と平行方向に一致させる。
つぎに、測定者Fが慣性センサ12の取り付け位置情報を入力する(ステップS12)。取り付け位置情報とは、たとえば取り付け後の慣性センサ12の基準点(たとえば筐体122の上下左右方向の中心点)とグリップ26の端部との距離、ゴルフクラブ20の長さ、ロフト角およびライ角等である。
つづいて、測定者Fは、ゴルフクラブ20が基準状態となるようにアドレス姿勢を調整する(ステップS14)。すなわち、打撃具であるゴルフクラブ20の姿勢を基準状態に調整する調整工程をおこなう。ステップS14の調整工程では、慣性センサ12の第2軸X2が、測定空間Sの第1軸Y1(目標線Lの地面Gへの投影線)と一致するようにゴルフクラブ20を保持することにより、ゴルフクラブ20の姿勢を基準状態に調整する。
【0027】
慣性センサ12の第2軸X2が、測定空間Sの第1軸Y1(目標線Lの地面Gへの投影線)と一致するようにゴルフクラブ20を保持した。
アドレス姿勢の調整が完了すると、測定者Fは慣性センサ12の操作ボタン126をオンにして測定を開始する(ステップS16)。すなわち、操作ボタン126は、ゴルフクラブ20の姿勢の調整が完了したことを示すトリガ信号を出力する信号発生手段であり、慣性センサ12は、トリガ信号の入力を受けて加速度の測定を開始する。
測定者Fは、操作ボタン126をオンした後にスイングを開始する。慣性センサ12は、スイング中のゴルフクラブ20の加速度を測定する加速度測定工程をおこなう(ステップS18)。加速度測定工程では、慣性センサに加わる加速度の大きさおよび方向を時系列で取得する。また、取得された測定データは、無線通信を用いてコンピュータ14に送信される。
【0028】
つづいて、コンピュータ14では、スイング評価指標プログラムによって、慣性センサ12で測定された加速度の時系列データ(慣性センサ12の検出値)と、ゴルフクラブ20の3次元形状モデルとに基づいて、ゴルフクラブ20の挙動を示す挙動データを生成する(ステップS20)。このとき、スイング評価指標プログラムは、加速度の時系列データに基づいて3次元形状モデルを仮想空間上で動かすことにより、挙動データを生成する。そして、挙動データに基づいてスイングの評価指標を算出する。
具体的には、まずスイング中におけるゴルフクラブ20の移動軌跡を算出する(ステップS22:移動軌跡算出工程)。
つぎに、スイング中のいずれかの区間における移動軌跡に基づいて、当該スイングにおけるシャフトプレーンを算出する(ステップS24:シャフトプレーン算出工程)。
そして、シャフトプレーンに対してゴルフクラブ20のフェース面がなす対シャフトプレーン角度を算出する(ステップS26:角度算出工程)。
また、その他ヘッドスピードデータ等の評価指標を算出する(ステップS28)。なお、これら評価指標の算出順序は任意であり、例えばヘッドスピードデータ等の評価指標を算出してからシャフトプレーンや対シャフトプレーン角度を算出してもよい。
最後に、コンピュータ14は、算出した評価指標をディスプレイ1416等に出力して(ステップS30)、本フローチャートによる処理を終了する。
【0029】
以上説明したように、実施の形態にかかるスイング測定システム10は、シャフトプレーンに対してゴルフクラブ20のフェース面がなす対シャフトプレーン角度を算出するので、各測定者のスイングタイプを把握する上で有利となる。また、各測定者のスイングタイプに合わせた評価を行う上で有利となる。
また、スイング測定システム10は、アドレス位置ADから頂点位置HIまでの区間における移動軌跡に基づいてシャフトプレーンを算出するので、測定者の頭上を越えた頂点位置HIからトップ位置TPまでの移動軌跡を除外することができるので、シャフトプレーンの算出精度を向上させる上で有利となる。
【符号の説明】
【0030】
10……スイング測定システム、12……慣性センサ、14……コンピュータ(スイング測定装置)、20……ゴルフクラブ、22……シャフト、24……ゴルフクラブヘッド、26……グリップ、62……移動軌跡算出部、64……シャフトプレーン算出部、66……角度算出部。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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