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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】ストッパー
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/88 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
B65G47/88 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017227231
(22)【出願日】2017-11-27
(65)【公開番号】P2019094204
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】三好 俊輔
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-079681(JP,U)
【文献】実開昭58-078827(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0151819(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/82,47/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被搬送体を停止させるストッパーであって、
前記被搬送体が当接する当接部材と、
前記当接部材の前記被搬送体が当接する当接面とは反対側の裏面に接触して配置され且つ当該当接部材とは反対方向に当該当接部材から離れて移動可能に設けられた可動部材と、
を具備する
ことを特徴とするストッパー。
【請求項2】
請求項1に記載のストッパーにおいて、
前記当接部材と離間した位置に固定部材が設けられ、前記当接部材と前記固定部材とは複数のバーで連結されており、前記可動部材は、前記当接部材と前記固定部材との間に設けられ、前記複数のバーに案内されて前記当接部材と前記固定部材との間を移動可能である
ことを特徴とするストッパー。
【請求項3】
請求項2に記載のストッパーにおいて、
前記可動部材は、前記複数のバーがそれぞれ貫通可能な複数の貫通孔を具備し、これら複数の貫通孔に前記複数のバーがそれぞれ貫通した状態で保持されている
ことを特徴とするストッパー。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のストッパーにおいて、
前記当接部材及び前記可動部材は、矩形の板部材であり、前記複数のバーは前記板部材の四隅に設けられている
ことを特徴とするストッパー。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のストッパーにおいて、
前記当接部材と前記可動部材とは平面全体で接触している
ことを特徴とするストッパー。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のストッパーにおいて、
前記当接部材から離間した前記可動部材を前記当接部材との接触位置まで戻す移動装置を具備する
ことを特徴とするストッパー。
【請求項7】
請求項6に記載のストッパーにおいて、
前記移動装置がエアシリンダーである
ことを特徴とするストッパー。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のストッパーにおいて、
前記当接部材と前記可動部材とは磁力で接触状態を保持している
ことを特徴とするストッパー。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のストッパーにおいて、
前記可動部材の質量が前記被搬送体の質量と同等である
ことを特徴とするストッパー。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のストッパーにおいて、
前記可動部材が移動の方向に接触状態で複数設けられている
ことを特徴とするストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアなどで搬送される被搬送体を所定位置に停止させるためのストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のアウターパネルなどの被搬送体を洗浄した後、プレス成形する場合、洗浄後にコンベア上を移動する被搬送体を所定位置に停止させた後、被搬送体を吸引手段などを有するロボットアーム等より保持し、プレス成形装置に搬送する必要がある。このようにコンベアにより搬送される被搬送体を所定位置に停止させるためにストッパーが用いられる。
【0003】
このようなストッパーとしては、例えば、図4に示す構造が用いられている。このストッパー100は、図4(a)に示すように、金属製の当接部材101の裏面側にゴム部材102を接合し、ゴム部材102の当接部材101とは反対側を固定部材103に固定した構造を有する。このようなストッパー100は、被搬送体Wを当接部材101に衝突させてゴム部材102で被搬送体Wの運動エネルギーを吸収し、被搬送体Wを停止させるものである(図4(b))。しかしながら、ゴム部材102は被搬送体Wからの運動エネルギーにより収縮し(図4(b))、その後、元の形状に戻るので、被搬送体Wは反発力を受けて跳ね返ることになる(図4(c))。よって、被搬送体Wを所定位置に停止させることができず、位置ずれが生じることになり、その後、例えば、ロボットアームによる保持工程でエラーが生じるなどの問題が生じる。
【0004】
このような被搬送体Wの跳ね返りを防止する方法を開示するものがある(特許文献1参照)。この跳ね返り防止方法は、ワーク支持部材3が往路側から復路側に、復路側から往路側にそれぞれ折り返す時、ワーク支持部材3が跳ね返るのを防止する跳ね返り防止杆41を用いるものであり、前記跳ね返り防止杆41は、パイプ又は棒杆を略L字型に屈曲し、これを始端側と終端側のワーク支持部材3が通過する位置に、ワーク支持部材3の横幅より僅か幅狭い間隔をおき、且つ搬送用ベルト2の外表面と所定の間隔(ワーク支持部材が通過し得る間隔)をおいて平行に配置されたものである。
これは、ワーク支持部材の横幅に合わせて所定の間隔に設ける必要があり、正確な搬送と正確な設置が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-207960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、比較的簡便に設置でき、被搬送体を跳ね返りを抑制した状態で停止することができるストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、搬送される被搬送体を停止させるストッパーであって、前記被搬送体が当接する当接部材と、前記当接部材の前記被搬送体が当接する当接面とは反対側の裏面に接触して配置され且つ当該当接部材とは反対方向に当該当接部材から離れて移動可能に設けられた可動部材と、を具備することを特徴とするストッパーにある。
【0008】
かかる態様では、ストッパーを被搬送体を停止させたい位置に設置するだけで、被搬送体を当接部材に当接した状態で停止させることができ、跳ね返りを極めて小さく抑制できる。すなわち、被搬送体が当接部材に衝突すると、被搬送体の有する運動エネルギーは当接部材を介して可動部材に移行し、可動部材が当接部材から離れる方向に可動し、被搬送体は当接部材からの反力が極めて小さく抑制されるので、跳ね返ることがない。
【0009】
ここで、前記当接部材と離間した位置に固定部材が設けられ、前記当接部材と前記固定部材とは複数のバーで連結されており、前記可動部材は、前記当接部材と前記固定部材との間に設けられ、前記複数のバーに案内されて前記当接部材と前記固定部材との間を移動可能であることが好ましい。
これによれば、可動部材の移動が当接部材と固定部材とを連結する複数のバーにより案内され、また、固定部材により移動量が規制される。
【0010】
また、前記可動部材は、前記複数のバーがそれぞれ貫通可能な複数の貫通孔を具備し、これら複数の貫通孔に前記複数のバーがそれぞれ貫通した状態で保持されていることが好ましい。
これによれば、可動部材の移動は複数のバーにより完全に規制される。
【0011】
また、前記当接部材及び前記可動部材は、矩形の板部材であり、前記複数のバーは前記板部材の四隅に設けられていることが好ましい。
これによれば、矩形の板部材から容易に製造でき、且つ可動部材の移動も四隅のバーにより安定して規制される。
【0012】
また、前記当接部材と前記可動部材とは平面全体で接触していることが好ましい。
これによれば、当接部材が被搬送体から受けた運動エネルギーが可動部材により効率的に移行し、被搬送体への反力がよりよく低減される。
【0013】
また、前記当接部材から離間した前記可動部材を前記当接部材との接触位置まで戻す移動装置を具備することが好ましい。
これによれば、次の被搬送体の準備を容易に行うことができる。
【0014】
また、前記移動装置がエアシリンダーであることが好ましい。
これによれば、比較的容易に可動部材を元の位置に戻すことができる。
【0015】
また、前記当接部材と前記可動部材とは磁力で接触状態を保持していることが好ましい。
これによれば、当接部材と可動部材との接触状態が良好に保持され、当接部材が受けた運動エネルギーがより完全に可動部材に移行する。
【0016】
また、前記可動部材の質量が前記被搬送体の質量と同等であることが好ましい。
これによれば、被搬送体の運動エネルギーがより効率的に可動部材に移行する。
【0017】
前記可動部材が移動の方向に接触状態で複数設けられていることが好ましい。
これによれば、被搬送体の質量に応じて、可動する可動部材の数が決定され、種々の質量の被搬送体に対応することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被搬送体の停止位置へ単に設置し、被搬送体を当接部材に衝突させるだけで、被搬送体への反力を極めて小さく抑制した状態で被搬送体を停止させることができ、良好に位置決めされた位置に被搬送体を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例に係るストッパーを説明する概略断面図である。
図2】ストッパーの使用状況の一例を説明する概略図である。
図3】ストッパーの使用状況の一例を説明する概略図である。
図4】従来技術に係るストッパーを説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明の一実施例に係るストッパーの概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、ストッパー10は、当接部材11と、可動部材12と、固定部材13とを具備し、これらの部材は、ほぼ同寸法の矩形の金属板からなる。
【0021】
当接部材11と固定部材13とは、複数のバー14、本実施例では四隅に設けられた4本のバー14により連結された状態で固定されている。また、可動部材12は、複数のバー14がそれぞれ貫通する貫通孔12aを具備し、貫通孔12aにバー14を貫通した状態で、バー14に案内された状態で当接部材11と固定部材13との間を移動自在となっている。なお、当接部材11と固定部材13とをバー14で固定する場合、バー14は、少なくとも3本設ければよいが、四隅に4本設けるのが好ましい。
【0022】
このようなストッパー10は、当接部材11及び固定部材13の少なくとも一方、好ましくは固定部材13を設備側に固定して設置し、コンベアなどにより搬送される被搬送体Wを当接部材11に衝突させ、被搬送体Wを停止させるものである。
被搬送体Wが当接部材11に衝突すると、力学的エネルギー保存則により被搬送体Wが有していた運動エネルギーが可動部材12に移行し、可動部材12が得られた運動エネルギーにより固定部材13側に移動する。また、被搬送体Wの運動エネルギーが可動部材12に移行すると、当接部材11には反力が生ぜず、被搬送体Wの跳ね返りはなく、当接部材11に当接した状態で停止する。
【0023】
このように被搬送体Wを当接部材11の位置で停止させるためには、当接部材11と可動部材12とが平面全体で接触しているのが好ましい。また、被搬送体Wが有している運動エネルギーが可動部材12に移行する際に被搬送体Wの跳ね返りを抑制するためには、可動部材12の質量は被搬送体Wと同一又は被搬送体Wより小さい必要がある。また、可動部材12は複数設けて被搬送体Wと質量を合わせてもよい。なお、この場合、複数の可動部材12はそれぞれ接触状態で保持されている必要がある。
【0024】
当接部材11と可動部材12とを接触状態で保持するために磁力で接触させておいてもよい。例えば、当接部材11又は可動部材12に磁石を埋め込んだりすることにより実現できる。なお、磁力の強さは、接触状態は保持するが、可動部材12の移動を妨げない程度とする必要がある。
【0025】
図1は、基本原理を説明するための図であり、寸法関係は実際のものとは必ずしも一致しない。例えば、後述するような車両のアウターパネルを被搬送体Wとした場合、当接部材11や可動部材12の大きさはある程度大きくする必要があり、可動部材12の厚さや数を大きくして被搬送体Wの質量とのバランスを図る必要があるが、当接部材11と固定部材13との距離は数十cm以内、例えば、10cm程度でよいので、図1の縦横の寸法比は実施のものとは一致しない。
【0026】
なお、固定部材13は必要に応じて設ければよく、複数のバー14による可動部材12の移動の案内も必要に応じて設ければよい。すなわち、当接部材11とこれに接触して設けられた可動部材12とを具備すれば、ストッパー10として作動する。
【0027】
ここで、本実施例では、固定部材13の当接部材11とは反対側に、固定部材13側に移動した可動部材12を当接部材11に接触する位置まで移動させるための移動装置15が設けられている。この移動装置15は、最低限、固定部材13の平面方向に中央部に1つ設ければよいが、複数箇所に設けてもよい。また、本実施例では、移動装置15として、エアシリンダーを採用し、ピストン15aを固定部材13に設けた貫通孔13aから可動部材12側に突出可能に設けた。これにより、可動部材12が固定部材13側に移動している場合(図1(c))、移動装置15を駆動してピストン15aを駆動することにより、可動部材12を当接部材11側に移動させることができる(図1(d))。
【0028】
なお、移動装置15は、必要に応じて設ければよい。また、移動装置15は、エアシリンダーには限定されるものではなく、油圧シリンダーなどの各種動力シリンダー、その他アクチュエータなどを用いることができる。
【0029】
以上説明したストッパー10は、各種用途に適用することができる。以下、一例として、車両のアウターパネルの洗浄、プレス成形工程に適用した例を説明する。
【0030】
図2は、車両のアウターパネルの洗浄、プレス工程を説明する概略図である。アウターパネルの材料パネル31は、複数枚が積層された材料パレット21からディスクフィーダー22に投入される。ディスクフィーダー22は材料パネル31を一枚ずつ洗浄機23に投入するものである。材料パネル31は洗浄機23で洗浄された後、コンベア24で搬送され、プレス成形機25の直前の所定位置に停止させられた後、ロボットアームなどによりプレス成形機25に投入され、プレス成形される。
本実施例のストッパー10は、コンベア24で搬送される材料パネル31を所定位置で停止させるために用いられる。
【0031】
図3は、洗浄機23及びコンベア24を模式的に示したものである。図3に示すように、ストッパー10は、コンベア24の所定位置に一対固定して使用される。この場合、洗浄機23で洗浄された後、コンベア24で搬送される材料パネル31は、一対のストッパー10により所定位置で停止する。このとき、上述した作用により、被搬送体である材料パネル31は、ストッパー10に衝突して停止しても跳ね返りがないので、所定位置に位置決め停止することができ、例えば、ロボットアームでの保持の際に保持エラーの発生が防止される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、車両の開閉体構造の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 ストッパー
11 当接部材
12 可動部材
13 固定部材
14 バー
15 移動装置
15a ピストン
31 材料パネル
W 被搬送体
図1
図2
図3
図4