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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】車両の電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20220406BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220406BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20220406BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
H02J1/00 308J
H02J7/00 303C
B60R16/04 X
B60R16/02 645C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019039627
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020145812
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】工藤 嘉大
(72)【発明者】
【氏名】岩田 泰高
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-11435(JP,A)
【文献】特開2004-83002(JP,A)
【文献】特開2016-10261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00
H02J 7/00
B60R 16/04
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電池を有する携帯端末と、
車両に搭載された車載電池と、
前記車両の車室内に配置され、前記車載電池から供給された電力を出力して前記携帯端末を充電可能な電力出力部と、
前記車両に備えられ、前記携帯端末と無線通信を行う通信部と、
前記車載電池と前記電力出力部とを接続する第1の電力供給線に介装され、前記携帯端末から前記通信部を介して作動制御されて前記第1の電力供給線を開閉する電源開閉部と、
前記車載電池から前記電源開閉部をバイパスして前記電力出力部に接続された第2の電力供給線と、
手動操作により前記第2の電力供給線を開閉する開閉部と、
を備えたことを特徴とする車両の電源システム。
【請求項2】
前記電源開閉部は、前記第1の電力供給線とともに、前記車載電池から前記車両の車載機器への電力供給線を開閉することを特徴とする請求項1に記載の車両の電源システム。
【請求項3】
前記開閉部は、常開型のモーメンタリスイッチであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両の電源システム。
【請求項4】
前記開閉部は、閉操作開始または閉操作終了から所定時間経過後に自動的に開作動することを特徴とする請求項1または2に記載の車両の電源システム。
【請求項5】
前記電力出力部は、USBポートであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の電源システム。
【請求項6】
前記電力出力部は、前記携帯端末を充電する非接触充電器である請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯機器により車両の電源を制御可能な車両の電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のキーの代わりに携帯端末を使用した携帯端末キーが提案されている。このような携帯端末キーは、例えばスマートフォンを使用しており、ブルートゥース(登録商標)等の無線通信を使用して車両と通信し、車両のドアロック装置や車両電源のオンオフを遠隔操作することが可能となる。
一方、車室内に例えばUSB(Universal Serial Bus)ポートのような電力を出力可能な接続端子を備えた車両が多い。例えば特許文献1には、携帯端末と車載機器との間で通信接続を可能にするUSBポート(USB接続端子)を備えた車両が開示されている。更に、USBポートは車載電池から電力が供給される電源端子を備えており、USBポートに接続した携帯端末やその他の電気機器に電力を供給することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-134591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような車両に備えられたUSBポートは、例えば駐車時に電気機器を接続したまま放置された場合に電力を供給し続けないように、車両電源オンあるいはアクセサリー電源オン(以下、総称して車両電源オンとする)時にのみ電力を出力可能になっていることが一般的である。
ここで、車両の電源をオンオフ操作する携帯端末において内蔵する充電池の充電率が低下してしまうと、当該携帯端末により車両の電源をオンにすることができず、例え車内に乗り込めたとしてもUSBポートによる携帯端末の充電も不能であり、結果、車両の電源をオンにすることができないといった問題点がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、充電率が低下した携帯端末であっても、車載電池により充電を可能とし、当該携帯端末によって車両の電源操作を可能にする車両の電源システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両の電源システムは、充電池を有する携帯端末と、車両に搭載された車載電池と、前記車両の室内に配置され、前記車載電池から供給された電力を出力して前記携帯端末を充電可能な電力出力部と、前記車両に備えられ、前記携帯端末と無線通信を行う通信部と、前記車載電池と前記電力出力部とを接続する第1の電力供給線に介装され、前記携帯端末から前記通信部を介して作動制御されて前記第1の電力供給線を開閉する電源開閉部と、前記車載電池から前記電源開閉部をバイパスして前記電力出力部に接続された第2の電力供給線と、手動操作により前記第2の電力供給線を開閉する開閉部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、本発明の車両の電源システムにおいては、携帯端末によって通信部を介して電源開閉部を作動制御することで、車載電池から第1の電力供給線を介して電力出力部に電力を供給することができる。一方、携帯端末の充電池の充電率が低下して通信部と無線通信できなくなった場合には、開閉部を閉操作することで車載電池から第2の電力供給線を介して電力出力部に電力が供給され、電力出力部によって携帯端末を充電することが可能となる。
【0008】
好ましくは、前記電源開閉部は、前記第1の電力供給線とともに、前記車載電池から前記車両の車載機器への電力供給線を開閉するとよい。
これにより、携帯端末によって通信部を介して電源開閉部を作動制御することで、車載電池から車載機器に電力を供給することができる。そして、車載機器の作動制御が可能な携帯端末の充電池の充電率が低下しても、開閉部を閉操作することで車載電池から第2の電力供給線を介して電力出力部に電力が供給されて、電力出力部によって携帯端末を充電することができ、充電した当該携帯端末によって車載機器の作動制御が可能となる。
【0009】
好ましくは、前記開閉部は、常開型のモーメンタリスイッチであるとよい。
これにより、開閉部の操作を終了することで開状態になるので、車載電池から第2の電力供給線を介する電力出力部への電力供給が規制される。したがって、電力出力部から携帯端末あるいはその他の電気機器に電力が供給され続けることを防止して、車載電池の電力消費を抑制することができる。
【0010】
好ましくは、前記開閉部は、閉操作開始または閉操作終了から所定時間経過後に自動的に開作動するとよい。
これにより、電力出力部によって携帯端末あるいはその他の電気機器に電力が供給可能な状態で、開閉部を閉操作して放置してしまったとしても、所定時間経過後に開閉部が自動的に開作動するので、車載電池から電力出力部により携帯端末あるいはその他の電気機器に電力が供給され続けることを防止して、車載電池の電力消費を抑制することができる。
【0011】
好ましくは、前記電力出力部は、USBポートであるとよい。
これにより、携帯端末の充電池の充電率が低下して通信部と無線通信できなくなった場合には、開閉部を閉操作することで車載電池から第2の電力供給線を介してUSBポートに電力を供給することが可能となる。したがって、USBポートにUSBケーブルを介して携帯端末を接続することで、携帯端末を充電することが可能となる。
【0012】
好ましくは、前記電力出力部は、前記携帯端末の充電池を充電する非接触充電器であるとよい。
これにより、携帯端末の充電池の充電率が低下して通信部と無線通信できなくなった場合には、開閉部を閉操作することで車載電池から第2の電力供給線を介して非接触充電器に電力を供給することが可能となる。したがって、非接触充電器に携帯端末を設置することで、携帯端末を充電することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両の電源システムは、携帯端末の充電池の充電率が低下して通信部と無線通信できなくなった場合には、開閉部を閉操作することで車載電池から第2の電力供給線を介して電力出力部に電力を供給して、携帯端末を充電することが可能となる。したがって、この電力出力部によって携帯端末を通信部と無線通信可能になるまで充電することで、当該携帯端末によって電源開閉部を作動制御することが可能となり、以降は電源開閉部を閉操作して携帯端末の充電を継続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の車両の電源システムの構成図である。
図2】本実施形態の車両の電源システムにおける通常充電時での携帯端末の充電電流経路の説明図である。
図3】本実施形態の車両の電源システムにおける非常充電時での携帯端末の充電電流経路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した車両の電源システムの一実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態の車両の電源システムの構成図である。図2は、本実施形態の車両の電源システムにおける通常充電時での携帯端末の充電電流経路の説明図である。図3は、本実施形態の車両の電源システムにおける非常充電時での携帯端末の充電電流経路の説明図である。なお、図2、3において、2点鎖線の矢印が充電電流の経路を示している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の電源システム1は、車両2に搭載された車載バッテリ3(車載電池)、電源スイッチ4(電源開閉部)、車載通信機5(通信部)、USBポート6(電力出力部)と、スマートフォン等の携帯端末10と、を備えている。
電源スイッチ4は、車載機器7への電力供給をON/OFFする。
車載通信機5は、携帯端末10とブルートゥース等の無線通信を行う機能を備えている。車載通信機5は、携帯端末10から操作指示情報を受信して電源スイッチ4や車両2のドアロック装置8に作動制御信号を出力し、電源スイッチ4のON/OFF及びドアロック装置8の施解錠の作動制御を行う。
【0017】
携帯端末10は、あらかじめ登録した車両2の車載通信機5との間のみ通信可能であり、車載通信機5を介して、登録した車両2の電源スイッチ4のON/OFF及びドアロック装置8の施解錠の操作が可能となっている。
USBポート6は、車両2の車室内に備えられている。USBポート6は、車両2に搭載したナビゲーションシステムやカーステレオ等の車載機器7と図示しない信号ケーブルにより接続され、車載機器7の操作情報や作動情報等の各種情報を相互通信可能である。また、USBポート6には、電力供給を供給する電源端子6aが備えられている。
【0018】
車載バッテリ3からの電力供給線15(第1の電力供給線)は、電源スイッチ4を介して車載機器7及びUSBポート6の電源端子6aに接続されている。なお、この電力供給線15は、所謂アクセサリー用電源(ACC)である。即ち、電源スイッチ4がONになることで、車載バッテリ3から電力供給線15を介して車載機器7及びUSBポート6に電力が供給される。一方、電源スイッチ4がOFFになることで、車載バッテリ3から電力供給線15を介する車載機器7及びUSBポート6への電力供給が停止される。
【0019】
本実施形態の電源システム1は、更に、電源スイッチ4をバイパスして車載バッテリ3とUSBポート6の電源端子6aとを接続する非常用電力供給線16(第2の電力供給線)を備えている。なお、この非常用電力供給線16は、所謂バッテリ電源(B+)である。
また、非常用電力供給線16には、手動開閉スイッチ17(開閉部)が介装されている。手動開閉スイッチ17は、車両2の車室内に、例えばUSBポート6の近傍に配置されており、非常用電力供給線16を開閉するモーメンタリスイッチである。手動開閉スイッチ17は、非操作時には非常用電力供給線16を切断する開状態となっており、手動操作により非常用電力供給線16を接続する閉状態となる常開型のスイッチである。
【0020】
また、電力供給線15は、電源スイッチ4の通過後に分岐して、USBポート6の電源端子6aと車載機器7とに接続されるが、この分岐部とUSBポート6との間の電力供給線15には、USBポート6から分岐部側への電流の流れを遮断するダイオード18が備えられている。
以上のような構成により、携帯端末10が車載通信機5と通信可能である充電状態では、携帯端末10によって電源スイッチ4を作動制御して、車両電源のON/OFF操作を行うことができる。したがって、携帯端末10によって電源スイッチ4をON操作して車載機器7及びUSBポート6に電力を供給することができる。更に、携帯端末10によって車両2のドアロック装置8を作動制御することができる。
【0021】
また、図2に示すように、USBポート6と携帯端末10とをUSBケーブル20によって接続して、携帯端末10によって電源スイッチ4をON操作すれば、車載バッテリ3から電力供給線15、USBポート6、USBケーブル20を介して携帯端末10に電力を供給して、携帯端末10の充電池10aを充電することができる。
即ち、携帯端末10が車載通信機5と通信可能である充電状態において携帯端末10を充電させる通常充電時には、USBポート6に接続した携帯端末10を、電力供給線15を介して車載バッテリ3から電力を供給して、携帯端末10を充電させることができる。
【0022】
一方、携帯端末10の充電池10aの充電率が低下して、携帯端末10と車載通信機5とが通信不能である場合には、携帯端末10によって電源スイッチ4のON/OFF操作が不能となる。
したがって、非常用電力供給線16のない従来の車両においては、電源スイッチ4がOFF状態である場合には携帯端末10によって電源スイッチ4をON作動させることができないので、USBポート6に携帯端末10を接続しても充電することができない。
【0023】
これに対し、本実施形態では、電源スイッチ4を介さずに車載バッテリ3とUSBポート6とを接続する非常用電力供給線16を有し、非常用電力供給線16に手動開閉スイッチ17を備えたので、図3に示すようにUSBポート6と携帯端末10とをUSBケーブル20によって接続して、手動開閉スイッチ17をON操作することで携帯端末10を充電することができる。このように、携帯端末10の充電池10aの充電率が低下して、携帯端末10と車載通信機5とが通信不能である場合に携帯端末10を充電させる非常充電時には、USBポート6に接続した携帯端末10を、非常用電力供給線16を介して車載バッテリ3から電力を供給して、携帯端末10を充電させることができる。
【0024】
そして、手動開閉スイッチ17を適宜の時間ON操作して携帯端末10を充電し、携帯端末10と車載通信機5とが通信可能な充電状態に回復した場合には、図2に示す通常充電時のように、携帯端末10によって電源スイッチ4のON操作をすることで、車載バッテリ3から電力供給線15を介してUSBポート6に電力が供給される。これにより、以降は手動開閉スイッチ17のON操作をしなくても携帯端末10を充電させることができる。このように、携帯端末10がわずかの時間でも車載通信機5と通信可能であれば、電源スイッチ4のON操作をして携帯端末10を充電させることができるので、電源スイッチ4のON操作時間を比較的短時間に抑えることができる。
【0025】
なお、手動開閉スイッチ17は、モーメンタリ型のスイッチであるので、USBポート6に携帯端末10やその他の電気機器を接続した状態で放置してしまったとしても、非常用電力供給線16は遮断され、車載バッテリ3の電力消費を抑制することができる。
なお、携帯端末10はドアロック装置8の作動制御が可能であるので、ドアロックをした状態で車外にいる乗員が所有する携帯端末10の充電率が低下してしまった場合には、携帯端末10によってドアロック装置8の作動制御が不能であり、乗員が車両2の車室内に乗り込んでUSBポート6に携帯端末10を接続することができない。この場合、少なくともドアロック装置8を解錠することができる例えば小型のスペアキーを所有していれば、このスペアキーによってドアロック装置8を解錠して、携帯端末10を車内のUSBポート6に接続して携帯端末10を充電することが可能となり、携帯端末10を使用することが可能となる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施形態に限定するものではない。
例えば、上記実施形態における手動開閉スイッチ17は、ON操作しているときのみ閉作動するモーメンタリ型のスイッチであるが、オルタネート型の開閉スイッチにしてもよい。但し、オルタネート型の開閉スイッチにした場合には、ON操作を開始してからあるいはON操作を終了してから所定時間経過すると自動的にOFFになるタイマ機能を有するスイッチにすることが望ましい。この所定時間は、携帯端末10をUSBポート6に接続して充電池10aを完全放電状態から充電した際に、携帯端末により車両2の電源をONにすることができるような充電状態になる時間に設定すればよい。
【0027】
これにより、USBポート6に携帯端末10あるいはその他の電気機器が接続された状態で、手動開閉スイッチ17をON操作して放置してしまったとしても、ON操作から所定時間経過後に手動開閉スイッチ17が自動的にOFFとなる(開作動する)ので、車載バッテリ3からUSBポート6に接続された電気機器等に電力が供給され続けることを防止して、車載バッテリ3の電力消費を抑えることができる。
【0028】
また、上記実施形態では、USBポート6と携帯端末10とをUSBケーブル20を使用して接続して携帯端末10を充電可能としているが、USBポート6の代わりに、専用の充電端子や非接触充電器にしてもよい。
携帯端末10については、スマートフォン以外でも、車両2の電源ON/OFFを制御可能であり、充電を要する携帯端末であればよい。
【0029】
また、上記実施形態の車両2では、車載バッテリ3からUSBポート6に電力を出力する構成になっているが、例えば電気自動車のように車載バッテリ3以外の車載電池からUSBポート6に電力を出力するような車両であってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 電源システム
2 車両
3 車載バッテリ(車載電池)
4 電源スイッチ(電源開閉部)
5 車載通信機(通信部)
6 USBポート(電力出力部)
7 車載機器
8 ドアロック装置
10 携帯端末
15 電力供給線(第1の電力供給線)
16 非常用電力供給線(第2の電力供給線)
17 手動開閉スイッチ(開閉部)
図1
図2
図3