IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

7054081セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材
<>
  • -セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材 図1
  • -セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材 図2
  • -セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材 図3
  • -セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】セメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220406BHJP
   C04B 28/14 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 28/06 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 28/34 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 28/08 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 18/22 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 14/38 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 18/24 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 18/20 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B28/14
C04B28/06
C04B28/34
C04B28/08
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B14/10 B
C04B18/10 Z
C04B24/26 A
C04B18/22
C04B14/38 A
C04B14/10 Z
C04B18/24 Z
C04B18/20
C04B24/22 B
C04B24/26 E
C04B14/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017215031
(22)【出願日】2017-11-07
(65)【公開番号】P2019085305
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】517389665
【氏名又は名称】株式会社SERIC JAPAN
(73)【特許権者】
【識別番号】515326321
【氏名又は名称】株式会社CORE技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】517389702
【氏名又は名称】株式会社チャーチル・マテリアルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】安 台浩
(72)【発明者】
【氏名】小椋 紀彦
【審査官】武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-014453(JP,A)
【文献】特開2014-152073(JP,A)
【文献】特開2015-134697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/02
C04B 28/14
C04B 28/06
C04B 28/34
C04B 28/08
C04B 18/08
C04B 18/14
C04B 14/10
C04B 18/10
C04B 24/26
C04B 18/22
C04B 14/38
C04B 18/24
C04B 18/20
C04B 24/22
C04B 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントバインダと、混和材と、自己治癒材と、油類吸着材とで構成され、
前記混和材は、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、メタカオリン、及びペーパースラッジ灰のうちいずれかひとつで構成、あるいは2つ以上の混合混和材で構成されるとともに、
前記自己治癒材は、膨張材、膨潤材及び炭酸基で構成され、
前記油類吸着材はゴム粉末、及びカーボンナノチューブの少なくとも一方で構成され、
前記セメントバインダに対して、前記混和材が10~30質量%、前記自己治癒材が1~10質量%、前記油類吸着材が1~10質量%の配合比率で配合された
セメント組成物。
【請求項2】
前記セメントバインダは、
ポルトランドセメント、MDFセメント、DSPセメント、カルシウムアルミネートセメント、しっくい、シリケートセメント、石膏セメント、リン酸セメント、高アルミナセメント、超微粒セメント、スラグセメント、及びマグネシウムオキシ塩化セメントのうちいずれかひとつで構成、あるいは2つ以上の混合バインダで構成された
請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記混合混和材が、二種の前記混和材を混合して構成されるとともに、
前記混合混和材構成する前記混和材のそれぞれが前記セメントバインダに対して、5~15質量%の配合比率で配合された
請求項1または2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のセメント組成物、界面活性剤、減水剤、及び水で構成され、
前記界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、
前記セメント組成物に対して、前記界面活性剤と前記減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、水が15~45質量%の配合比率で配合された
セメントペースト。
【請求項5】
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のセメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材及び水で構成され、
前記界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、
前記混合細骨材は、密度1.3~2.7g/cm、粒径5.0mm以下、粗粒率2.0~3.6である軽量細骨材とスラグ系細骨材、珪砂系細骨材との混合物あり、
前記セメント組成物に対して、前記界面活性剤と前記減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、前記混合細骨材が50~100質量%の配合比率で配合され、
前記水が、前記セメント組成物、前記界面活性剤、前記減水剤、及び前記混合細骨材の混合体に対して、15~45質量%の配合比率で配合された
セメントモルタル。
【請求項6】
請求項1乃至3のうちいずれかに記載のセメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材、混合粗骨材及び水で構成され、
前記界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、
前記混合細骨材は、密度1.3~2.7g/cm、粒径5.0mm以下、粗粒率2.0~3.6である軽量細骨材とスラグ系細骨材、珪砂系細骨材との混合物あり、
前記混合粗骨材は、粒子サイズ5~40mmであるスラグ系粗骨材と珪砂系粗骨材の混合物であり、
前記セメント組成物に対して、前記界面活性剤と前記減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、前記混合細骨材が50~100質量%の配合比率で配合され、
前記混合粗骨材が、前記セメント組成物、前記界面活性剤、前記減水剤、及び前記混合細骨材の混合体に対して、90~160質量%の配合比率で配合され
前記水が、前記セメント組成物、前記界面活性剤、前記減水剤、前記混合細骨材、及び前記混合粗骨材の混合物に対して、15~45質量%の配合比率で配合された
コンクリート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己治癒性を有するセメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築や土木構造物など、様々なコンクリート構造のインフラ施設では、耐久性に優れたコンクリート材が開発され使用されている。なお、ここでいうコンクリート材としては、生コンクリートが硬化したコンクリート材のみならず、セメントペーストやセメントモルタルが硬化したものも含まれる。
【0003】
しかし、実際には使用年数の増加や環境条件によって、老朽化による性能低下が進んでいる。具体的には、コンクリート材に発生するひび割れによって、外部の有害な外気や水分、化学成分が内部に浸透し、コンクリート材の性能低下を引き起こしている。
【0004】
最近では、コンクリート材の老朽化対策と継続的な性能維持のための技術として国内外で自己治癒性を有するコンクリート材の技術が研究され、適用されている。これまでの自己治癒性を有するコンクリート材は膨張材、膨潤材、炭酸基によって構成された混和材を利用する方法である。
【0005】
具体的な自己治癒のメカニズムは、ひび割れが発生したコンクリート材に水が浸透すると膨張材と膨潤材が水と反応して膨張作用及び膨潤作用を奏し、ひび割れが復元され、浸透された二酸化炭素(CO)により炭酸基が炭酸化反応により、復元されたひび割れ箇所に緻密で長期的に安定した自己治癒材料が析出し、ひび割れを閉塞することができる。
【0006】
つまり、膨潤材はひび割れを通じてコンクリート材内部に浸透した水分と反応して膨張するため、ひび割れに膨潤性の反応物の粘着が誘導され、膨張材は、浸透した水分と反応して膨張性の水和物を生成する。そのため、ひび割れが復元され、ひび割れの復元過程で二酸化炭素(CO)が供給されて炭酸基によって炭酸化反応物が生成されるため、治癒速度の向上と析出部の硬さの向上を図ることができる。
しかし、このようなコンクリート材の自己治癒性は、油類の影響を受ける環境下において、その性能を発揮することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-241306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上述の問題に鑑み、油類の影響を受ける環境下においても、自己治癒性を発揮することができるセメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述のような目的を達成するための本発明の特徴は、セメントバインダと、混和材と、自己治癒材と、油類吸着材とで構成され、前記混和材は、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、メタカオリン、及びペーパースラッジ灰のうちいずれかひとつで構成、あるいは2つ以上の混合混和材で構成されるとともに、前記自己治癒材は、膨張材、膨潤材及び炭酸基で構成され、前記油類吸着材はゴム粉末、及びカーボンナノチューブの少なくとも一方で構成され、前記セメントバインダに対して、前記混和材が10~30質量%、前記自己治癒材が1~10質量%、前記油類吸着材が1~10質量%の配合比率で配合されたセメント組成物であることを特徴とする。
【0010】
この発明により、油類の影響を受ける環境下においても、自己治癒性を発揮できるセメント組成物を構成することができる。
詳述すると、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、メタカオリン、及びペーパースラッジ灰のうちいずれかひとつで構成された前記混和材、あるいは2つ以上の混合混和材で構成された前記混和材と、膨張材、膨潤材及び炭酸基で構成された前記自己治癒材と、前記油類吸着材が備えられているため、油類の影響を受ける環境下においても前記油類吸着材が油類を吸着し、油類に影響されることなく、ひび割れが発生したコンクリート材に水が浸透すると膨張材と膨潤材が水と反応して膨張作用及び膨潤作用を奏し、ひび割れが復元される。そして、浸透された二酸化炭素(CO)により炭酸基が炭酸化反応により、復元されたひび割れ箇所に緻密で長期的に安定した自己治癒材料が析出し、ひび割れを閉塞することができる。
【0011】
このように、油類の影響を受ける環境下においても前記油類吸着材が油類を吸着するため、油類の影響を受けることなく、膨潤材はひび割れを通じてコンクリート材内部に浸透した水分と反応して膨張し、ひび割れに膨潤性の反応物が粘着される。また、膨張材も、油類の影響を受けることなく、浸透した水分と反応して膨張性の水和物を生成するため、ひび割れを復元し、ひび割れの復元過程における二酸化炭素(CO)の供給によって炭酸基による炭酸化反応物が生成されるため、治癒速度の向上と析出部の硬度を向上することができる。
【0012】
なお、フライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、メタカオリン、及びペーパースラッジ灰のうちいずれかひとつで構成される前記混和材、あるいは2つ以上の混和材で構成された混合混和材をセメントバインダ100質量%に対して10~30質量比で配合するが、混和材が10質量%未満であると、上述の効果を十分得ることができず、30質量%を超えて配合すると、逆に水和反応が十分に得られず硬化作用に不具合を生じるとともに、初期強度及び長期強度が低下するおそれがある。
【0013】
また、前記油類吸着材をセメントバインダ100質量%に対して1~10質量比で配合するが、前記油類吸着材が1質量%未満であると、油類の吸着効果を十分得ることができず、10質量%を超えて配合すると、逆に、水和反応が十分に得られず硬化作用に不具合を生じるとともに、初期強度及び長期強度が低下することとなる。
【0014】
さらにまた、産業副産物であるフライアッシュ、高炉スラグ、ベントナイト、メタカオリン、及びペーパースラッジ灰のうちいずれかひとつで構成される前記混和材、あるいは2つ以上の混和材で構成された混合混和材を活用することにより、環境にやさしく高付加価値化に貢献することができる。
【0015】
この発明の態様として、前記セメントバインダは、ポルトランドセメント、MDFセメント、DSPセメント、カルシウムアルミネートセメント、しっくい、シリケートセメント、石膏セメント、リン酸セメント、高アルミナセメント、超微粒セメント、スラグセメント、及びマグネシウムオキシ塩化セメントのうちいずれかひとつで構成、あるいは2つ以上の混合バインダで構成されてもよい。
【0016】
またこの発明の態様として、前記混合混和材が、二種の前記混和材を混合して構成されるとともに、前記混合混和材を構成する前記混和材のそれぞれが前記セメントバインダに対して、5~15質量%の配合比率で配合されてもよい。
【0017】
またこの発明は、上述のセメント組成物、界面活性剤、減水剤、及び水で構成され、前記界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、前記セメント組成物に対して、前記界面活性剤と前記減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、水が15~45質量%の配合比率で配合されたセメントペーストであることを特徴とする。
この発明により、上述したように、油類の影響を受ける環境下においても、自己治癒性を発揮できるセメントペーストを構成することができる。
【0018】
またこの発明は、上述のセメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材及び水で構成され、前記界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、前記混合細骨材は、密度1.3~2.7g/cm、粒径5.0mm以下、粗粒率2.0~3.6である軽量細骨材とスラグ系細骨材、珪砂系細骨材との混合物あり、前記セメント組成物に対して、前記界面活性剤と前記減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、前記混合細骨材が50~100質量%の配合比率で配合され、前記水が、前記セメント組成物、前記界面活性剤、前記減水剤、及び前記混合細骨材の混合体に対して、15~45質量%の配合比率で配合されたセメントモルタルであることを特徴とする。
この発明により、上述したように、油類の影響を受ける環境下においても、自己治癒性を発揮できるセメントモルタルを構成することができる。
【0019】
またこの発明は、上述のセメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材、混合粗骨材及び水で構成され、前記界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、前記混合細骨材は、密度1.3~2.7g/cm、粒径5.0mm以下、粗粒率2.0~3.6である軽量細骨材とスラグ系細骨材、珪砂系細骨材との混合物あり、前記混合粗骨材は、粒子サイズ5~40mmであるスラグ系粗骨材と珪砂系粗骨材の混合物であり、前記セメント組成物に対して、前記界面活性剤と前記減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、前記混合細骨材が50~100質量%の配合比率で配合され、前記混合粗骨材が、前記セメント組成物、前記界面活性剤、前記減水剤、及び前記混合細骨材の混合体に対して、90~160質量%の配合比率で配合され前記水が、前記セメント組成物、前記界面活性剤、前記減水剤、前記混合細骨材、及び前記混合粗骨材の混合物に対して、15~45質量%の配合比率で配合されたコンクリート材であることを特徴とする。
この発明により、上述したように、油類の影響を受ける環境下においても、自己治癒性を発揮できるコンクリート材を構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明により、油類の影響を受ける環境下においても、自己治癒性を発揮することができるセメント組成物、セメントペースト、セメントモルタル及びコンクリート材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の無機系セメント組成物のSEM写真を測定した状況写真。
図2】油吸着実験の実験状況の写真。
図3】油吸着実験の実験状況の写真。
図4】油類吸着性を有する無機系セメント組成物、セメントペースト、モルタル及びコンクリート材のメカニズムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態である油類吸着性を有する無機系セメント組成物、セメントペースト、モルタルやコンクリート材を以下図面とともに説明する。
なお、図1は、無機系セメント組成物のSEM写真を測定した状況を示しており、図2及び図3は、油吸着実験の実験状況を示しており、図4は、油類吸着性を有する無機系セメント組成物、セメントペースト、モルタル及びコンクリート材のメカニズムの概略図を示している。
【0023】
まず、本発明に係る油類吸着性を有する無機系セメント組成物は、セメントバインダと、混和材と、自己治癒材と、油類吸着材とで構成している。混和材は、産業副産物であるフライアッシュ、高炉スラグ、メタカオリン、ペーパースラッジ灰のいずれかを単独で使用する、あるいは2つを配合した混合混和材で構成している。なお、セメントバインダ100質量%に対して、混和材を10~30質量%、自己治癒材を1~10質量%、油類吸着材を1~10質量%の配合比率で配合して製造する。
【0024】
なお、前記混和材は、潜在水硬性、長期強度発現性と耐久性の向上、硫酸塩抵抗性、アルカリ骨材反応抑制のために密度2.1~2.3g/cm、ブレイン値(Blaine value)4,000cm/g以上であるフライアッシュ、密度2.7~2.9g/cm、ブレイン値4,000cm/g以上である高炉スラグ、密度2.2~2.6g/cm、ブレイン値10,000cm/g以上であるメタカオリン、密度2.2~2.9g/cm、ブレイン値7,000cm/g以上であるペーパースラッジ灰からなる群から選ばれた1種以上を1~30質量%を配合している。
【0025】
なお、1質量%未満の配合比率で配合したときは、強度と耐薬品性、耐久性の向上に影響を与えず、30質量%を超える配合比率で配合したときは水和反応の低下に強度低下や結露、流動性低下などが生じるおそれがある。
【0026】
続いて、自己治癒組成物は、自己治癒性を発揮するために膨張性と膨潤性、緻密性を持つ化合物と炭酸基を有する化合物をセメントバインダ100質量%に対して1~10質量%の配合比率で配合されるが、1質量%未満の配合比率で配合すると、その効果は微々たるものであるが、10質量%を超える配合比率で配合した場合は、強度、凝結性、及び流動性に影響がある。
【0027】
また、油類吸着材は、エチレンプロピレンジエンモノマ、ゴム粉末、カーボンナノチューブ、粘土、コーヒー材、もみ殻、おがくず、ポリウレタン粉末、セルロースからなる群から選ばれた1種以上を使用して、1~10質量%を配合することができるが、1質量%未満の配合比率で配合するときは、その効果は微々たるものであるが、10質量%の配合比率で配合したときは、強度、凝結性、及び流動性、及び耐久性の低下に影響を与える。
【0028】
ここでは、セメントバインダはポルトランドセメント(Portland cement)、MDFセメント、DSPセメント、カルシウムアルミネートセメント(calcium aluminate cement)、しっくい(plaster)、シリケートセメント(silicate cement)、石膏セメント(gypsum cement)、リン酸セメント(phosphate cement)、高アルミナセメント(high alumina cement)、超微粒セメント(micro fine cement)、スラグセメント(slag cement)、マグネシウムオキシ塩化セメント(magnesium oxychloride cement)の選択されたいずれかひとつとして、単独で使用したり、2つ以上を配合して使用する。なお、セメントバインダはブレイン値3,000~5,000cm/gであることが好ましい。
【0029】
このように構成した無機系セメント組成物で構成する、油類吸着性を有するセメントペーストは、上述の油類吸着性を有する無機系セメント組成物、界面活性剤、減水剤、及び水で構成される。界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、無機系セメント組成物に対して、界面活性剤と減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、水が15~45質量%の配合比率で配合されている。
【0030】
なお、界面活性剤、及び減水剤がそれぞれ0.1質量%未満で配合されると界面活性効果及び減水効果を得ることができず、2質量%を超えると強度低下、凝結時間遅延を引き起こすこととなる。また、水の配合比率が15質量%未満の場合、産業副産物の高い水分吸収率によって充填することができず、45質量%を超えると、圧縮強度が3分の1以上に低下することとなる。
【0031】
また、上述の構成の無機系セメント組成物で構成する、油類吸着性を有するセメントモルタルは、上述の油類吸着性を有する無機系セメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材及び水で構成される。界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、混合細骨材は、密度1.3~2.7g/cm、粒径5.0mm以下、粗粒率2.0~3.6である軽量細骨材とスラグ系細骨材、珪砂系細骨材との混合物である。
【0032】
無機系セメント組成物に対して、界面活性剤と減水剤とがそれぞれ0.1~2質量%、混合細骨材が50~100質量%の配合比率で配合され、無機系セメント組成物、界面活性剤、減水剤、及び混合細骨材の混合体に対して、水が15~45質量%の配合比率で配合している。
【0033】
また、上述の構成の無機系セメント組成物で構成する、油類吸着性を有するコンクリート材は、上述の油類吸着性を有する無機系セメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材、混合粗骨材及び水で構成される。
【0034】
界面活性剤はナフタレン系またはポリカルボン酸系であるとともに、混合細骨材は、密度1.3~2.7g/cm、粒径5.0mm以下、粗粒率2.0~3.6である軽量細骨材とスラグ系細骨材、珪砂系細骨材との混合物である。
【0035】
混合粗骨材は、粒子サイズ5~40mmであるスラグ系粗骨材と珪砂系粗骨材の混合物である。無機系セメント組成物に対して、界面活性剤と減水剤とはそれぞれ0.1~2質量%、混合細骨材が50~100質量%の配合比率で配合される。混合粗骨材は、無機系セメント組成物、界面活性剤、減水剤、及び混合細骨材の混合体に対して、90~160質量%の配合比率で配合され、無機系セメント組成物、界面活性剤、減水剤、混合細骨材、及び混合粗骨材の混合物に対して、15~45質量%の配合比率で水が配合されている。
【0036】
本発明に適用される油類吸着性を確認するための行った実験について説明する。なお、本実験では、油類吸着材料別の油の凝集性を測定した。
本実験例では、油類の吸着性を測定するための材料としてセメント、ゴム粉末、カーボンナノチューブ、ベントナイト、ボトムアッシュ、スラグ微粉末、スラグ粗骨材を使用した。下記表1は、油吸着実験における配合比を示している。
【0037】
【表1】
【0038】
なお、Oilはオイルであり、RPはゴム粉末、Cはセメント、CNTはカーボンナノチューブ、BNはベントナイト、BAはボトムアッシュ、GSSはスラグ微粉末、GSAはスラグ粗骨材を示している。用意された30gのオイルに無機系油類吸着材料を30g改良して油の凝集力と吸着性を確認した。
【0039】
無機系セメント組成物のSEM写真である図1から無機系セメント組成物の多孔質の状況を確認することができる。これにより、空隙の間に油類を吸着して油吸着性を発揮できることを確認することができる。また、油吸着実験を実施した状況を示す図2及び図3から、セメントは油類凝集性と吸着性がないことが確認でき、その他の無機系材料はすべて油吸着性を確認することができた。特に、ゴム粉末とCNTについては、高い油類吸着性を有することが確認できた。
【0040】
油類吸着性を有する無機系セメント組成物、セメントペースト、モルタル及びコンクリート材のメカニズムを表す図4に示すように、油類吸着性を有する無機系セメント組成物、セメントペースト、モルタル及びコンクリート材にひび割れが発生した部位に油類が浸透すると、油類が吸着されて水和生成物の間に空隙を緻密に作成し、耐久性を増進させ、ひび割れが発生した表面は、自己治癒が進み、表面のひび割れを修復して水和生成物のひび割れを制御する。
【0041】
上述の本発明の油類吸着性を有する無機系セメント組成物、セメントペースト、モルタルやコンクリート材によれば、油類の環境での保守及びメンテナンスのコストの削減効果があり、産業副産物の積極的な活用によってCOの低減効果と高付加価値化に寄与することができる。
【0042】
本発明は、多様に変形することがあり、いくつかの形態をとることができ、上記発明の詳細な説明では、それに伴う特別な実施形態にのみ記述した。しかし、本発明は、詳細な説明に記載されている特殊な形式に限定されるものではないことを理解する必要があり、むしろ、添付された特許請求の範囲によって定義される本発明の精神と範囲内にあるすべての変形物と均等物と代替物を含むものと理解なければならない。
【0043】
この発明のセメント組成物は、実施形態の無機系セメント組成物に対応するが、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
図1
図2
図3
図4