(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】引戸用の引き手
(51)【国際特許分類】
E05B 1/06 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
E05B1/06 105F
E05B1/06 105E
E05B1/06 105C
(21)【出願番号】P 2017180240
(22)【出願日】2017-09-20
【審査請求日】2020-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000113779
【氏名又は名称】マツ六株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598001397
【氏名又は名称】株式会社フロンテア
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】八木 健太
(72)【発明者】
【氏名】楠 全弘
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299690(JP,A)
【文献】特開2003-041812(JP,A)
【文献】特開2014-118701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0156411(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸における戸先側の端部に形成した木口面から表面および裏面に渡って形成される側面コの字形の切欠凹部の上面に接合する上部枠と、前記切欠凹部の下面に接合する下部枠と、前記切欠凹部の内側面に接合する前記上部枠および下部枠の基端を連結する側部枠とからなる前記切欠凹部と同幅を有する外枠と、前記外枠の開口部に架設された板状の指掛け部とからなる引戸用の引き手において、
前記指掛け部が少なくともその一部を前記開口部の開口端から所定距離だけ突出可能に架設されており、前記指掛け部が外枠に対して斜め上下方向にスライドすることにより突出可能に架設されていることを特徴とする引戸用の引き手。
【請求項2】
前記指掛け部の横幅は少なくとも一部が前記外枠の開口部の幅よりも狭く形成されていることを特徴とする請求項1記載の引戸用の引き手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指を掛けて引戸を開閉操作するための引き手、殊に、引戸の木口面に沿って取り付けられる引戸用の引き手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引戸には従来から表面並びに裏面に指を掛けて引戸を開閉操作するために指を掛ける凹部を有する引き手が備えられていたが、これらの引き手は例えば引き込み戸のように閉成時に戸袋に収容される形式の引戸や複数枚の引戸が互いに重なる場合等においては引き手の部分が戸袋や重ねられた引戸に遮られてしまうことから指が掛けられないので引き手としての機能を発揮できないという問題があり、また、開閉操作したときに指を挟んでしまうという心配もあった。
【0003】
そこで、例えば特開平11-62332号公報、特開2008-255690号公報等に簡単な構成で、戸袋や他の引戸に遮られても使用が可能で、指を挟む心配が少ない引き手が提示されている。
【0004】
これらの公報に提示されている引き手は、
図6(a)に示したように、引戸2aにおける戸先側の端部に形成した木口面21aから表面22aおよび裏面23aに渡って形成される切欠凹部3aの上面31aに接合する上部枠11aと、切欠凹部3aの下面32aに接合する下部枠12aと、前記切欠凹部3aの内側面33aに接合する前記上部枠11aと下部枠12aの基端を連結する側部枠13aとからなる前記切欠凹部3aと同幅の外枠51aにおける前面の開口端に前記引戸2aの木口面21aに沿って前記外枠51aよりも幅狭の指掛け部4aが架設されている構成であり、
図6(b)に示すように、例えば戸袋5a等に引き込まれても戸袋5aとの間に形成された隙間14aを通して指を差し込むことにより(図示せず)引き手1aの指掛け部4aを引いて引戸2aを移動させることができるものである。
【0005】
ところが、前記従来の引き手1aは、戸袋5a等に引き込まれている引戸2aを引き出すためには指掛け部4aの内側面に指を差し込む必要があるにも拘わらず指を差し込むための隙間14aが狭いことから指掛け部4aを掴みにくく、また、指を挟んでしまうという心配があった。
【0006】
そこで、近頃、特開2014-118701号公報、特開2015-200135号公報などに更に使い勝手を向上させた引き手が提示されているが、これらの引き手は例えば
図7に示すように、指掛け部4aと側枠部13aを連結する仕切り板6aを縦方向に配置した回転軸7aにおいて引戸2aの表面22aおよび裏面23a方向に揺動可能とすることにより指を差し込む空間を拡張可能として指掛けを更に容易にするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-62332号公報
【文献】特開2008-255690号公報
【文献】特開2014-118701号公報
【文献】特開2015-200135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記従来の引戸用の引き手は、前記引戸2aの木口面21aに沿って固定して配置される指掛け部4aと戸袋5aとの隙間に指を差し込むことに変わりなく、操作が困難である点は共通していた。
【0009】
本発明は、前記従来の引戸用の引き手が有する木口側から指掛け部と戸袋との隙間に指を差し込むのが困難であるという問題点を解決して閉成時に戸袋に収容される形式の引戸や複数枚の引戸が互いに重なる場合等において引戸の表面並びに裏面が戸袋や重ねられた引戸に遮られてしまう場合であってもきわめて簡単且つ確実に開操作ができる引戸用の引き手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明である引戸用の引き手は、引戸における戸先側の端部に形成した木口面から表面および裏面に渡って形成される側面コの字形の切欠凹部の上面に接合する上部枠と、前記切欠凹部の下面に接合する下部枠と、前記切欠凹部の内側面に接合する前記上部枠および下部枠の基端を連結する側部枠とからなる前記切欠凹部と同幅を有する外枠と、前記外枠の開口部に架設された板状の指掛け部とからなる引戸用の引き手において、前記指掛け部が少なくともその一部を前記開口部の開口端から所定距離だけ突出可能に架設されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、引戸を開くときに始めに指掛け部を引いて指掛け部を引戸の木口面に沿って配置される外枠の開口部から所定距離だけ突出させることで指掛け部に指を掛け易くした状態とし、次いで突出させて掴みやすくなっている指掛け部を更に引いて引戸を移動させることができるので引戸の側面が遮断された状態にあってもきわめて容易且つ確実に引き出すことができるものである。
【0012】
また、本発明において、前記指掛け部が外枠に対してスライド可能に架設されている場合には指掛け部の全体が外枠から突出するので操作し易い。
【0013】
更に、本発明において、前記指掛け部が外枠に対してスライドが斜め上下方向である場合には指掛け操作と引戸の移動操作とを確実に判別することができるので操作性に優れており、特に、斜め上方向へとスライドさせて突出させる場合には引戸の操作が終わったときに指掛け部を戻し易く、特に指掛け部が比較的重量がある材質により形成されている場合には指を離すことで指掛け部が元の開口部に自重でスライドして復帰するのできわめて便利である。
【0014】
更にまた、本発明において、前記指掛け部が外枠に対して回動可能に架設されている場合には更に簡単な構成で実施することができる。
【0015】
加えて、本発明は例えば戸袋から引戸を引き出すときに先行発明のように指掛け部の内側面に指を掛けて引戸を引き出すものと異なり、最初に指掛け部だけを少ない力で引き出すものであることから、前記指掛け部の横幅は少なくとも一部が前記外枠の開口部の幅よりも狭く形成されている場合には指掛け部における側端縁の前記狭く形成されている部分を掴むことで指掛け部を突出させ易い。殊に、本発明は例えば戸袋から引戸を引き出すときに先行発明のように指掛け部の裏面に指を掛けて引戸を突出させるものと異なり、最初に指掛け部だけを引き出すものであることから有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記従来における引戸用の引き手のように狭い空間に指を差し込んで指掛け部に指を掛けるものと異なり、引戸の木口面から突出させた指掛け部に指を掛けて引戸を引き出すことが可能であり、その突出状態で指掛け部を掴んで引戸を引き出すことから引戸が戸袋などに引き込まれている状態でも簡単且つ確実に引戸を移動させることが可能である。また、指掛け部は常時は従来の指掛け部と同様に外枠における開口部の開口端、即ち引戸の木口に沿って突出することなく配置されることから邪魔になることもなく、外観上も美麗である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明である引戸用の引き手の好ましい実施の形態を示す斜視図。
【
図3】
図1に示した実施の形態の指掛け部を引戸に取り付けた状態を示す斜視図であり、(a)は指掛け部を外枠の開口部に配置した状態、(b)は指掛け部を外枠の開口部から突出させた状態を示す。
【
図4】
図3に示した実施の形態の縦断面図を示すものであり、(a)は
図3(a)の縦断面図、(b)は
図3(b)の縦断面図を示す。
【
図5】本発明の異なる実施の形態を示す斜視図であり、(a)は指掛け部を閉じた状態、(b)は指掛け部の一部を突出させた状態を示す。
【
図6】従来例を示す斜視図であり、(a)は引戸に取り付ける前の状態、(b)は引戸に取り付けた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1乃至
図4は本発明の好ましい実施の形態を示すものであり、引き手1は前記
図6に示した従来の引き手と同様に引戸2における戸先側の端部に形成した木口面21から表面22および裏面23に渡って形成されるコの字形の切欠凹部3に嵌装される外枠4と前記外枠4の開口部41の開口端42から所定距離だけ突出可能に架設されている板状の指掛け部5を有している。
【0020】
尚、本実施の形態における前記外枠4が例えば硬質の合成樹脂や鋳造金属により形成され、特に、幅方向に2分割された外枠部材4Aと外枠部材4Bとを接合して作られている(
図2参照)。
【0021】
更に詳細に説明すると、前記外枠4は、前記従来の引き手における外枠と同様に引戸2に形成される切欠凹部3と同幅で、前記切欠凹部3の上面31に接合する上部枠43と、切欠凹部3の下面32に接合する下部枠44と、前記切欠凹部3の内側面33に接合する前記上部枠43と下部枠44の基端を連結する側部枠45と、上部枠43と下部枠42の先端を連結する先端側の側部枠46とから形成される。
【0022】
また、前記外枠4の開口部41を覆うように配置される板状の指掛け部5は長さ方向の両側縁が中央において凹んだ全体が杵状であるとともに裏面に所定の幅を有するスライド片52が指掛け片51と断面T字となるように立設されており、更に前記スライド片52には図示する長孔により形成された互いに平行な一対のスライド孔53,53が形成されている。
【0023】
殊に、本実施の形態では、前記スライド孔53,53は水平ではなく後方から前方に掛けて図示する斜め上方向に傾斜している。
【0024】
一方、前記指掛け部5が架設される外枠4は、前記各外枠部材4Aと4Bを組み合わせたときに前記開口部41に前記指掛け部5のスライド片52が挟挿される間隔を有して開口する隙間6を形成する隔壁61,62がそれぞれ形成されており、前記隙間6に前記指掛け部5に形成されているスライド片52が前後方向に向けて差し込まれる。
【0025】
また、前記隙間6を形成する隔壁61または62の少なくともいずれか一方の対向面には前記指掛け部5のスライド片52を誘導するガイド片63ならびに前記指掛け部5のスライド片52に形成されたスライド孔53,53にそれぞれ嵌挿されるスライドピン64,64、更には前記スライド片52を当接させて所定位置に保持するストッパ65のそれぞれが立設されている。
【0026】
尚、符号47は外枠4の側部枠46の端面から指掛け部5の指掛け片51を囲むように配置されたフランジである。
【0027】
以上の構成を有する本実施の形態は、通常時は
図3(a)および
図4(a)に示すように前記従来のこの種の引き手と同様に指掛け部5の指掛け片51が外枠4の開口部41における開口端42に沿って開口部41を覆う状態(引戸2の木口面21に沿った状態)に配置される。従って、指掛け部5が邪魔になることもなく外観も美麗である。
【0028】
そして、例えば戸袋や他の引戸などにより引戸の表面や裏面が遮断された場合には、指掛け部5の指掛け片51を摘んで手前に引くと、
図3(b)および
図4(b)に示すように、先ず、掴んだ指掛け片51だけが外枠4に対して前記スライド孔53,53に沿ってスライドして開口部41から斜め上方に突出した状態に移動する。殊に、本実施の形態では指掛け片51は長さ方向の側端部54,54の中央を凹部55,55とした全体が杵状に形成されているとともに前記凹部55,55に対応する位置の外枠4のフランジ47,47の一部を切欠いているので前記凹部55,55によって指掛け片51を容易に摘むことができる。
【0029】
そして、前記指掛け片51がスライドして、スライドピン64,64がスライド孔53,53の図示する下端に位置したときにスライドが停止するので、更に指掛け部5を引くことで、続けて引戸2を引き出すものである。
【0030】
このように、本実施の形態では、引戸2が戸袋等に遮られて引き手1に指が掛けにくい状況であっても、始めに指掛け部5の指掛け片51を隙間6から前方にスライドさせて外枠4の開口部41の開口端42(木口面21)から突出させて十分に指掛け部5を掴み易い状態として引戸2を引き出すことができるので、引き出しが極めて容易で確実であり、指を挟むような心配もない。
【0031】
また、本実施の形態では、始めに前記指掛け部5を斜め上方にスライドするように構成しているので、指掛け部5を引いたときには指掛け部5が引戸2を引くことがなく必ず最初にスライドして指掛け部5を掴みやすい状態にしてから引戸2を引くことになり、引き手1としての機能を確実に発揮させることができ、また、引戸2を引出した後で指掛け部5を離すことにより自重もあって、元の隙間6位置に復帰させるという利点があるが、本発明は指掛け部が所定の距離だけ突出可能に外枠4に架設されていればよく、スライド方向は問わない。
【0032】
更に、本実施の形態では、前記上部枠43と下部枠42の先端を連結する先端側の側部枠46が形成されており、この側部枠46の表面側に前記開口部41が形成されていることから、指掛け部5を引くことで引戸2を引き出した後に指掛け部5から指を離して側部枠46に指を持ち替えて従来の引戸の表面や裏面に備えた凹部からなる引き手と同様にして引戸2を閉成することが可能であり、完全に引戸2を閉成させることができるとともに指を挟むような心配もない。
【0033】
図5は本発明の異なる実施の形態を示すものであり、外枠4と指掛け部5については前記実施の形態とほぼ同様であるが、指掛け部5がスライドするものでなく、外枠5に設けた軸7により指掛け部5を回動可能に架設したものであり、構成が簡単であるとともに軸7を指掛け部5の偏位置に配置することにより手を離したときに自重で戻り易い。
【符号の説明】
【0034】
1 引き手、2 引戸、3 切欠凹部、4 外枠、5 指掛け部、6 隙間、7 軸、21 木口面、22 表面、23 裏面、31 上面、32 下面、33 内側面、41 開口部、42 開口端、43 上部枠、44 下部枠、45 側部枠、46 側部枠、47 フランジ、51 指掛け片、52 スライド片、53 スライド孔、54 側端部、55 凹部、61 隔壁、62 隔壁、63 ガイド片、64 スライドピン、65 ストッパ