(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】レール転倒防止装置
(51)【国際特許分類】
E01B 29/44 20060101AFI20220406BHJP
E01B 13/00 20060101ALI20220406BHJP
E01B 29/16 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
E01B29/44
E01B13/00
E01B29/16
(21)【出願番号】P 2018037028
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2021-01-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年1月1日発行の日本鉄道施設協会誌
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391030125
【氏名又は名称】保線機器整備株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】堀 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】安藤 洋次郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】畠山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】櫻場 充
(72)【発明者】
【氏名】細川 誠二
(72)【発明者】
【氏名】今井 国博
【審査官】三笠 雄司
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録実用新案第20-0422773(KR,Y1)
【文献】特開平08-302604(JP,A)
【文献】実開平06-067502(JP,U)
【文献】実開平03-012903(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レールの転倒を防止するレール転倒防止装置であって、
レールとマクラギとを固定するレール締結装置に設けられているレール締結器固定用ボルトによって固定される主ボルト孔が形成されている一方、前記主ボルト孔のレール長手方向両側それぞれにレールの長手方向に対し垂直方向に延びる雌ネジ孔を有するナット部が設けられたベース部と、
一端に前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部が形成されている一方、他端にレールに接触するローラーが回転可能に設けられ、前記雄ネジ部と前記ローラーとの間にボルト頭部が設けられたレール押圧部とを備えることを特徴とするレール転倒防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレール転倒防止装置において、
前記レール押圧部は、レール長手方向に複数並んで設けられていることを特徴とするレール転倒防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載のレール転倒防止装置において、
さらに、
前記複数のレール押圧部それぞれのボルト頭部にロック部を嵌めて各レール押圧部を回転させ、各レール押圧部の雄ネジ部を前記ベース部における主ボルト孔両側のナット部の雌ネジ孔に螺合させて当該ベース部に対し各レール押圧部を進退可能であると共に、前記ベース部の複数のナット部に螺合した状態の前記複数のレール押圧部それぞれのボルト頭部に嵌まるように前記ベース部の複数のナット部に螺合した状態の前記複数のレール押圧部に応じて前記ロック部が複数設けられたロックプレートを備えることを特徴とするレール転倒防止装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のレール転倒防止装置において、
前記複数のレール押圧部は、前記レール締結器固定用ボルトの左右両側にそれぞれ設けられた一対のレール押圧部であり、その一対のレール押圧部それぞれのローラーによって2点でレールを押圧することを特徴とするレール転倒防止装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか一の請求項に記載のレール転倒防止装置において、
前記ベース部には、さらに、
前記主ボルト孔よりも転倒防止対象のレールとは離れた位置に補助ボルト孔が形成されており、その補助ボルト孔には、転倒防止対象のレールとは近接した他のレールの底部上面またはタイプレートの上面に下端部を押し当てる補助ボルトが螺合して設けられていることを特徴とするレール転倒防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レールの締結を外したり、レール緊張器などでレールを引っ張る際等にレールが小返りする(レールがこじれて倒れる)等のレールの転倒を防止するレール転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レールの設定替え作業時等にレールが小返りする等のレールの転倒を防止するレール転倒防止装置として、各種のレール転倒防止装置が提案されている(例えば、特許文献1~6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-302604号公報
【文献】特開平11-269803号公報
【文献】特開2009-264008号公報
【文献】特開2010-203212号公報
【文献】特開2015-025328号公報
【文献】特開2015-83738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レールの分岐器等では、レールとレールが交差していたり、転倒防止対象のレールのすぐ横にガードレールやウイングレール等がある等してスペースが狭いため、上述の特許文献1~6のレール転倒防止装置では、ローラーが設けられたレール押圧部を支持する台枠ないしはベース部が大きかったり、台枠ないしはベース部を固定するボルトやナットを回すためのスペースがないこと等から取付けが困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、狭い場所でも簡単かつ確実に取付け可能なレール転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るレール転倒防止装置は、レールの転倒を防止するレール転倒防止装置であって、レールとマクラギとを固定するレール締結装置に設けられているレール締結器固定用ボルトによって固定される主ボルト孔が形成されている一方、前記主ボルト孔のレール長手方向両側それぞれにレールの長手方向に対し垂直方向に延びる雌ネジ孔を有するナット部が設けられたベース部と、一端に前記雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部が形成されている一方、他端にレールに接触するローラーが回転可能に設けられ、前記雄ネジ部と前記ローラーとの間にボルト頭部が設けられたレール押圧部とを備えることを第1の特徴とする。
また、本発明に係るレール転倒防止装置では、前記レール押圧部は、レール長手方向に複数並んで設けられていることを第2の特徴とする。
また、本発明に係るレール転倒防止装置では、さらに、前記複数のレール押圧部それぞれのボルト頭部にロック部を嵌めて各レール押圧部を回転させ、各レール押圧部の雄ネジ部を前記ベース部における主ボルト孔両側のナット部の雌ネジ孔に螺合させて当該ベース部に対し各レール押圧部を進退可能であると共に、前記ベース部の複数のナット部に螺合した状態の前記複数のレール押圧部それぞれのボルト頭部に嵌まるように前記ベース部の複数のナット部に螺合した状態の前記複数のレール押圧部に応じて前記ロック部が複数設けられたロックプレートを備えることを第3の特徴とする。
また、本発明に係るレール転倒防止装置では、前記複数のレール押圧部は、前記レール締結器固定用ボルトの左右両側にそれぞれ設けられた一対のレール押圧部であり、その一対のレール押圧部それぞれのローラーによって2点でレールを押圧することを第4の特徴とする。
また、本発明に係るレール転倒防止装置では、前記ベース部には、さらに、前記主ボルト孔よりも転倒防止対象のレールとは離れた位置に補助ボルト孔が形成されており、その補助ボルト孔には、転倒防止対象のレールとは近接した他のレールの底部上面またはタイプレートの上面に下端部を押し当てる補助ボルトが螺合して設けられていることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレール転倒防止装置は、レールとマクラギとを固定するレール締結装置に設けられているレール締結器固定用ボルトによって固定される主ボルト孔が形成されている一方、主ボルト孔のレール長手方向両側それぞれにレールの長手方向に対し垂直方向に延びる雌ネジ孔を有するナット部が設けられたベース部と、一端に雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部が形成されている一方、他端にレールに接触するローラーが回転可能に設けられ、雄ネジ部とローラーとの間にボルト頭部が設けられたレール押圧部とを備える。
そのため、本発明に係るレール転倒防止装置は、レール締結装置に設けられているレール締結器固定用ボルトがベース部の主ボルト孔に通されて固定されるので、狭い場所でも簡単かつ確実に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置を構成するベース部の正面図、平面図である。
【
図2】(a)~(c)それぞれ本実施の形態のレール転倒防止装置を構成するレール押圧部の右面図、平面図、正面図である。
【
図3】(a),(b)それぞれ実施の形態のレール転倒防止装置を構成するロックプレートの正面図、底面図である。
【
図4】ベース部にレール押圧部を装着した状態を示す斜視図である。
【
図5】ベース部にレール押圧部を装着した状態を示す平面図である。
【
図6】(a),(b)それぞれベース部にレール押圧部を装着した状態の右側面図、正面図である。
【
図7】実施の形態のレール転倒防止装置を使用してレールの転倒防止を行っている状態を示す平面図である。
【
図8】実施の形態のレール転倒防止装置を使用してレールの転倒防止を行っている状態を示す側面図である。
【
図9】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置においてロックプレートを使用してベース部を回転させている状態を示す説明図である。
【
図10】(a),(b)それぞれ本発明に係る実施の形態のレール転倒防止装置においてロックプレートを使用してベース部を回転させた後の状態と、ロックプレートを使用してベース部を固定した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るレール転倒防止装置の実施の形態について、
図1~
図10を参照しながら説明する。なお、下記に説明する実施の形態は、あくまで、本発明の一例であり、本発明は、下記に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0010】
実施形態のレール転倒防止装置1は、レールの設定替え作業時、例えば、レールの締結を取り外す時や、レール緊張器などでレールを引っ張る際等に、レールが小返りする(レールがこじれて倒れる)等のレールの転倒を防止するもので、
図1~
図6に示すように、ベース部11と、2つのレール押圧部12,12と、ロックプレート13を備える。
【0011】
<ベース部11>
ベース部11は、後述する
図7や
図8に示すようにレールRとマクラギMとを固定するレール締結装置に設けられているレール締結器固定用ボルト22およびナット23によって固定されるもので、
図1(a),(b)に示すように、ベース本体11aと、2つのナット部11b,11bとを備える。
【0012】
ベース本体11aは、
図1(a),(b)に示すように、取付け板11a1と、取付け板11a1の左右両側の側面に溶接された側板11a2,11a2とを備え、
図1(a)に示すように正面視、H字形状に形成されている。
【0013】
取付け板11a1には、
図1(a),(b)に示すように、レールRとマクラギMの間に敷設されるタイプレートTから突出するレール締結器固定用ボルト22が貫通する主ボルト孔11a11が形成されていると共に、主ボルト孔11a11よりも転倒防止対象のレールとは離れた位置、すなわち側板11a2,11a2よりも突出している部分に2つの補助ボルト孔11a12,11a12が形成されている。
【0014】
そして、2つの補助ボルト孔11a12,11a12には、
図1(a),(b)に示すように、それぞれ、雌ネジ孔が形成されたナット11a13,11a13が取り付けられており、ナット11a13,11a13を介して、転倒防止対象のレールRとは近接した他のレールRの底部やタイプレートTの上面等に下端部を押し当てる2つの補助ボルト11a14,11a14が螺合して設けられている。尚、補助ボルト孔11a12,11a12および補助ボルト11a14,11a14は、本発明に必須のものではなく省略することも可能で、また補助ボルト孔11a12および補助ボルト11a14の数も1つでも良い。
【0015】
ナット部11b,11bは、
図1(a),(b)に示すように、ベース本体11aの側板11a2,11a2の上部に溶接等して固定されており、レール押圧部12,12それぞれの雄ネジ部12a21,12a21が螺合してレール押圧部12,12がその長手方向に進退できるように雌ネジ孔11b1,11b1が設けられている。
【0016】
尚、
図1(a)に示すように、ナット部11b,11bの中心間の間隔をW1とする。また、
図1(b)に示すように、側板11a2,11a2の長さL1は、ナット部11b,11bの長さL2と同じか、わずかに小さくして、後述する転倒防止対象のレールRや転倒防止対象以外のレールR’が近接している場所でも確実にタイプレートTに固定できるようにしている。また、取付け板11a1の長さL3は、側板11a2,11a2の長さL1およびナット部11b,11bの長さL2より長くして、側板11a2,11a2よりも突出している部分に2つの補助ボルト孔11a12,11a12を設けている。
【0017】
<レール押圧部12,12>
レール押圧部12,12は、後述する
図4や
図5等に示すように、ベース部11における主ボルト孔11a11および2つの補助ボルト孔11a12,11a12よりも外側にそれぞれ設けたナット部11b,11bの雌ネジ孔11b1,11b1それぞれに螺合して設けられ、転倒防止対象のレールRをそれぞれのローラー12b3,12b3によって2点で押圧するもので、
図2(a)~(c)に示すように、それぞれ、ボルト12a,12aの頭部(以下、ボルト頭部という場合あり。)12a1,12a1にローラー支持板12b1,12b1およびローラー支持軸12b2,12b2を介してローラー12b3,12b3を設けている。
【0018】
ボルト12aの軸部(以下、ボルト軸部という場合あり。)12a2には雄ネジ部12a21が形成されているため、各レール押圧部12は、後述する
図4~
図6に示すように、ボルト軸部12a2の雄ネジ部12a21を、ベース部11の2つのナット部11bの雌ネジ孔11b1に螺合して、各レール押圧部12の長手方向に進退して、転倒防止対象のレールRとの距離を調整できるように構成されている。
【0019】
尚、
図2(c)に示すように、ボルト頭部12a1の二面幅をW2とする。
【0020】
<ロックプレート13>
ロックプレート13は、
図3(a),(b)に示すように、レール押圧部12,12それぞれのボルト頭部12a1,12a1を回転させることができるようにボルト頭部12a1の二面幅W2と同じか、あるいはボルト頭部12a1を空回りしない程度にわずかに大きい幅W3を有するロック部13a,13aを2箇所設けていると共に、その2箇所のロック部13a,13aがベース部11のナット部11b,11bに螺合した状態のレール押圧部12,12それぞれのボルト頭部12a1,12a1に嵌まるようにロック部13a,13aの中心間の間隔を、ナット部11b,11bの中心間の間隔W1と同じにして設けている。
【0021】
また、ロックプレート13には、
図3(a)に示すように、作業者が指を入れて把持できるように指挿入孔13bと、把持部13cも設けられている。
【0022】
<実施形態のレール転倒防止装置1の使用方法>
次に、以上のように構成された実施形態のレール転倒防止装置1の使用方法について説明する。
【0023】
図4は、レール転倒防止装置1を構成するベース部11にレール押圧部12,12を装着した状態を示す斜視図、
図5はその11平面図、
図6(a),(b)は、その右側面図、正面図である。
【0024】
つまり、実施形態のレール転倒防止装置1の使用する場合、例えば、
図4~
図6に示すように、予めレール転倒防止装置1を構成するベース部11の2つのナット部11b,11bにそれぞれレール押圧部12,12を装着しておく。
【0025】
図7は、実施の形態のレール転倒防止装置1を使用してレールの転倒防止を行っている状態を示す平面図、
図8は、その側面図である。
図7および
図8は、2個のレール押圧部12,12の進退量の調整も完了し、かつ、2個の補助ボルト11a14,11a14の調整も完了して、2個のレール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1にロックプレート13を嵌めた状態を示している。また、
図7および
図8は、転倒防止対象のレールRのすぐ横に他のレールやガードレール、ウイングレール等の転倒防止対象以外のレールR’が存在する分岐器等のスペースが狭い場所におけるレール転倒防止作業を示している。
【0026】
図7および
図8に示すように、実施の形態のレール転倒防止装置1は、レールRとマクラギMの間に敷設されるタイプレートTに固定して使用する。具体的には、ベース本体11aの取付け板11a1の主ボルト孔11a11に、レール締結装置に設けられているレール締結器21固定用のレール締結器固定用ボルト22を通してナット23により固定する。
【0027】
つまり、実施の形態のレール転倒防止装置1は、転倒防止対象のレールRをタイプレートTに固定している一方のレール締結器21を取り外し、取り外したレール締結器21をタイプレートTに固定していたレール締結器固定用ボルト22およびナット23によってタイプレートTに固定する。
【0028】
そのため、実施の形態のレール転倒防止装置1では、後述するように2個のレール押圧部12,12のローラー12b3,12b3をレールRの腹部側面に押し当ててレールRの転倒を防止した際、2個のレール押圧部12,12が受けた反力を2個のレール押圧部12,12間に位置するレール締結器固定用ボルト22によって受けるので、レール転倒防止装置1がレール締結器固定用ボルト22を中心に回転することを確実に防止でき、安定した状態でレールRの転倒を防止できる。また、レール押圧部12,12が受けた反力をレール転倒防止装置1のベース本体11a後端部等を他のレールR’やタイプレートT側面等に当接させることなくレール締結器固定用ボルト22で受けることができるので、他のレールRの’の位置やタイプレートTの形状等に依存せずレールRの転倒を防止することができ、レール転倒防止装置1の使用勝手を向上させることができる。
【0029】
ここで、2つのナット部11b,11bにそれぞれ螺合して装着したレール押圧部12,12の進退量を調整して、
図7および
図8に示すように、レール押圧部12,12のローラー12b3,12b3を転倒防止対象のレールRと腹部側面に押し当てる場合は、
図9(a),(b)に示すように、ロックプレート13のいずれか一方のロック部13をスパナのように使用して、レール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1を回転させる。尚、
図9および
図10では、レールRや、マクラギM、タイプレートT等のレール転倒防止装置1以外のものは、図示を省略している。
【0030】
そして、
図10(a)に示すように、各レール押圧部12,12先端のローラー12b3,12b3が水平に揃うと、ベース部11に対する各レール押圧部12,12の進退量も同じになり、かつ、ボルト頭部12a1,12a1の角度も揃うことになる。
【0031】
そのため、ベース部11のナット部11b,11bに対し進退量が揃ったレール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1に対し、ロックプレート13を
図10(a)の矢印に示すように下ろして、
図10(b)に示すようにロックプレート13のロック部13,13をレール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1に嵌める。
【0032】
これにより、レール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1は、ロックプレート13によって固定されるので、2つのレール押圧部12,12が緩むことを簡単、かつ、確実に防止できる。
【0033】
また、
図7および
図8に示すように、転倒防止対象のレールRのすぐ横に他のレールやガードレール、ウイングレール等の転倒防止対象以外のレールR’が存在しているため、必要あれば、ベース部11の取付け板11a1の2つの補助ボルト孔11a12,11a12に補助ボルト11a14,11a14を通し、補助ボルト11a14,11a14下端を転倒防止対象以外のレールR’の底部上面に当接させてレール締結器固定用ボルト22および2個の補助ボルト11a14,11a14の3点によって、ベース部11をタイプレートTに固定することもできる。尚、転倒防止対象のレールRと転倒防止対象以外のレールR’との間隔が離れており、取付け板11a1の2つの補助ボルト孔11a12,11a12の下に転倒防止対象以外のレールR’の底部が位置していない場合には、長い補助ボルト11a14,11a14を使用して、補助ボルト11a14,11a14下端をタイプレートT上面に当接させることもできる。
【0034】
以上説明したように、実施形態のレール転倒防止装置1は、レールRとマクラギMとを固定するレール締結装置に設けられているレール締結器21固定用のレール締結器固定用ボルト22およびナット23によって固定される主ボルト孔11a11が設けられている一方、主ボルト孔11a11のレール長手方向両側それぞれにレールRの長手方向に対し垂直方向に延びる雌ネジ孔11b1を有するナット部11が設けられたベース部11と、一端に雌ネジ孔11b1に螺合する雄ネジ部12a21,12a21が形成された軸部12a2,12a2を設ける一方、他端にレールに接触するローラー12b3が回転可能に設けられ、雄ネジ部12a21とローラー12b3との間にボルト頭部12a1が設けられた2個のレール押圧部12,12を備える。
【0035】
そのため、実施形態のレール転倒防止装置1によれば、転倒防止対象のレールRと転倒防止対象以外のレールR’が近接するような狭い場所でも、レール締結器21固定用のレール締結器固定用ボルト22を主ボルト孔11a11に通してナット23で締結してレール転倒防止装置1をタイプレートTに固定することができるので、狭い場所でも簡単かつ確実に取付けることができる。
【0036】
特に、従来技術のように主ボルト孔11a11の片側のナット部11に装着した1本のレール押圧部12だけで転倒防止対象のレールRから反力を受ける場合、主ボルト孔11a11に通したレール締結器固定用ボルト22を中心に回転しようとするが、実施形態のレール転倒防止装置1では、主ボルト孔11a11両側のナット部11に装着した2個のレール押圧部12,12で転倒防止対象のレールRから反力を受けるので、レール転倒防止装置1がレール締結器固定用ボルト22を中心に回転することを確実に防止して、レール転倒防止装置1をタイプレートTに取付けることができる。
【0037】
また、実施形態のレール転倒防止装置1では、ベース部11の取付け板11a1には、主ボルト孔11a11よりも転倒防止対象のレールRとは離れた位置に補助ボルト孔11a12,11a12を設けており、その補助ボルト孔11a12,11a12には、転倒防止対象のレールRとは近接した転倒防止対象以外のレールR’の底部上面やタイプレートTの上面等に下端部を押し当てる補助ボルト11a14,11a14を設けることができる。
【0038】
そのため、実施形態のレール転倒防止装置1によれば、ベース部11は、取付け板11a1の主ボルト孔11a11に通したタイプレートTのレール締結器固定用ボルト22およびナット23だけでなく、2つの補助ボルト孔11a12,11a12に通した補助ボルト11a14,11a14によって転倒防止対象以外のレールR’やタイプレートT等に固定できるので、転倒防止対象のレールRに対し転倒防止対象以外のレールR’が近接した狭い場所でもレール転倒防止装置1をタイプレートTに確実に取付けることができる。
【0039】
また、実施形態のレール転倒防止装置1では、ベース部11には、2つのナット部11b,11bが主ボルト孔11a11の両側にレールRの長手方向と平行に間隔を空けて設けられている一方、レール押圧部12,12それぞれのボルト頭部12a1,12a1にいずれか一方のロック部13a,13aを嵌めて各レール押圧部12,12を回転させ、各レール押圧部12,12の雄ネジ部12a21をベース部11のナット部11b,11bの雌ネジ孔11b1,11b1に螺合させて当該ベース部11に対し各レール押圧部12,12を進退可能であると共に、ロック部13a,13aがベース部11の複数のナット部11b,11bに螺合した状態のレール押圧部12,12それぞれのボルト頭部12a1,12a1に嵌まるように設けられたロックプレート13を設けている。
【0040】
そのため、ロックプレート13を使用すれば、レール押圧部12,12それぞれのボルト頭部12a1,12a1を回転させるスパナを用意する必要がなくなるので、作業性を向上させることができる。
【0041】
また、ロックプレート13を各レール押圧部12,12を回転させ、各レール押圧部12,12先端のローラー12b3,12b3がレールRの腹部側面に当接し、かつ、ベース部11に対する進退量も同じにした後、
図10(b)に示すようにロックプレート13のロック部13,13をレール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1に嵌めることにより、2個のレール押圧部12,12の回転がロックプレート13によって同時に固定されるので、2個のレール押圧部12,12が緩むことを簡単、かつ、確実に防止して、レール転倒防止装置1をタイプレートTに取付けることができる。
【0042】
また、レール転倒防止装置1を取り外す際には、レール転倒防止装置1のレール押圧部12,12のボルト頭部12a1,12a1に嵌めておいたロックプレート13を取外して使用することができるので、スパナを探す必要もなくなり、この点でも作業性を向上させることができる。
【0043】
尚、上記実施形態の説明では、
図4や
図5等に示すように、主ボルト孔11a11に螺合してレール転倒防止装置1を固定するレール締結器固定用ボルト22の両側にそれぞれ1個ずつの合計2個のレール押圧部12,12を設けて説明したが、本発明では、これに限らず、レール締結器固定用ボルト22の両側に2個以上のレール押圧部12を設けたり、あるいはレール締結器固定用ボルト22の片側には1個のレール押圧部12でその反対側には2個以上のレール押圧部12を設けるように構成しても良いし、さらにはレール締結器固定用ボルト22の左右いずれか一方側に1または複数のレール押圧部12を設けるようにしても勿論良い。
【符号の説明】
【0044】
1 レール転倒防止装置
11 ベース部
11a ベース本体
11a1 取付け板
11a11 主ボルト孔
11a12,11a12 補助ボルト孔
11a13,11a13 ナット
11a14,11a14 補助ボルト
11a2,11a2 側板
11b,11b ナット部
12 レール押圧部
12a ボルト
12a1 頭部
12a2 軸部
12a21 雄ネジ部
12b1,12b1 ローラー支持板
12b2,12b2 ローラー支持軸
12b3 ローラー
13 ロックプレート
13a,13a ロック部
13b 指挿入孔
13c 把持部
21 レール締結器
22 レール締結器固定用ボルト
23 ナット
R レール
M マクラギ
T タイプレート