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特許7054090光波長変換要素およびその光波長変換要素を含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】光波長変換要素およびその光波長変換要素を含む物品
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20220406BHJP
   H01L 31/055 20140101ALI20220406BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
C09K11/06
H01L31/04 622
G02B5/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018096503
(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公開番号】P2019199582
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155516
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 亜子佳
(72)【発明者】
【氏名】村上 陽一
(72)【発明者】
【氏名】元岡 歩
(72)【発明者】
【氏名】新見 一樹
(72)【発明者】
【氏名】清柳 典子
(72)【発明者】
【氏名】海寳 篤志
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081829(JP,A)
【文献】特表2016-536449(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115556(WO,A1)
【文献】特開2017-082063(JP,A)
【文献】Tanya N. Singh-Rachford,Photon Upconversion based on sensitized triplet-triplet annihilation,Coordination Chemistry Reviews,2010年,254,2560-2573,DOI: 10.1016/j.ccr.2010.01.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三重項-三重項消滅過程を示す組み合わせである親水性官能基を有する有機光増感分子(A)が下記一般式(6)で表される化合物であり、親水性官能基を有する有機発光分子(B)が下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする光波長変換要素。
【化2】
(式中、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基; リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオカルボン酸、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基のいずれかの酸性基; これらの酸性基で置換されたアルキル基またはアリール基を表し、同じでも異なっていてもよく、R11~R18のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Xはチオ基(-S-)、スルフィニル基(-S(=O)-) 、スルホニル基(-S(=O)-)、-N(R19)-で表される2 価基、または-C(R20)(R21)-で表される2 価基を表し、R19~R21はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基 、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基を表す)
【化3】
(式中、Zは-C(R28)=Y-で表される2価基、-N(R30)-で表される2価基、オキシ基(-O-)、またはチオ基を表し、Y は=C(R29)-で表される3価基、またはアザ基(=N-)を表し、R22 30 はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、シアノ基、ニトロ基、;窒素含有化合物カチオン、第四級ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオンのいずれかを置換基とするアルキル基またはアルコキシ基、アリール基であるが、同じでも異なっていてもよく、R22~R27のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)
【請求項2】
請求項1に記載の光波長変換要素を用いた太陽電池。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光波長変換要素を用いた光触媒。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の光波長変換要素を用いた光触媒型水素・酸素発生装置。
【請求項5】
光をより短い波長の光に変換する光アップコンバージョンフィルターであって、請求項1に記載の光波長変換要素と、セルとを備え、前記光波長変換要素が、前記セル中に封入されていることを特徴とする光アップコンバージョンフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三重項-三重項消滅(以降はTTAと略記)を用いた光アップコンバージョンに用いられる有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)に関するものであり、これらを含む光波長変換要素およびその光波長変換要素を含む物品(太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、および光アップコンバージョンフィルター)に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化対策、クリーンエネルギー等の代替エネルギーヘの強いニーズがある中、太陽光を高効率に二次エネルギー(電力、水素等)に変換する技術開発は急務であり、高い光-二次エネルギー変換効率(光から二次エネルギーへの変換効率)を有する太陽電池、水素発生光触媒等の光-二次エネルギー変換要素(光を二次エネルギーへ変換する要素)の変換効率の向上は重要となっている。一般的な太陽電池や水素発生光触媒等の光-二次エネルギー変換要素には、太陽光に含まれる広範な波長範囲の光のうち、その光-二次エネルギー変換要素に固有の閾値波長が存在しており、ある閾値波長より短い波長成分のみを変換に利用して、閾値波長より長波長の成分は未利用となっている。そのため、太陽光に含まれる広範な波長範囲の光を有効に利用する技術の一つとして、光アップコンバージョン(すなわち、長い波長の光を吸収して、より短い波長の光を発光することにより光の波長を変換すること)が検討されている。
【0003】
一般にTTAを用いた光アップコンバージョンは、入射光を吸収して励起される光増感分子と、光増感分子からエネルギーを受け取り、発光する発光分子と、分子間のエネルギー移動のための溶媒を組み合わせて行われ、太陽光やLED等の非コヒーレント光で低強度の光源が利用可能であり、有機分子を用いるため波長帯の選択自由度も高いことからよく用いられている(非特許文献1、2)。
【0004】
TTAを用いた光アップコンバージョンの多くは、主に有機溶媒が用いられているが、有機溶媒は高い揮発性・可燃性を有しており、(1)試料が漏出したときに燃焼等の危険を伴う、(2)実用上無視できない濃度の光アップコンバージョンを妨げる溶存酸素を除去できない、等の問題もあることから、新たにイオン液体や深共晶溶媒(実用上不揮発・不燃な性質を持つ常温溶解塩)を溶媒とした光アップコンバージョン試料の開発も行われている(特許文献2、非特許文献3~5)。
【0005】
可視域~紫外域への光アップコンバージョンとしては、光増感分子にビアセチル(高揮発性の可燃液体)を用いた光アップコンバージョン試料(非特許文献6)、または化学的に安定な疎水性イオン液体に増感分子としてアクリドン誘導体を、発光分子としてナフタレン誘導体を溶媒に溶解させた実用性のある光アップコンバージョン試料(特許文献1、2)に関する報告もある。
【0006】
光アップコンバージョン試料の製造方法としては、一般的に減圧処理における溶媒留去や溶存酸素等の脱気処理を行う必要があるが、(1)光増感分子や発光分子が非イオン性又は低分子量であると溶媒と共に脱離しやすく、さらに(2)連続的な光照射下で光アップコンバージョン発光強度が経時的に低下する、等の実用上の問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/115556号
【文献】特開2017-082063号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】T.N.Singh et al.,Coord.Chem.Rev.,254(2010)2560.
【文献】S.Baluschev et.al.,Phy.Rev.Lett.,97(2006)143903.
【文献】Y.Murakami,Chem.Phy.Lett.,516(2011)56.
【文献】Y.Murakami et al.,J.Phy.,Chem.B,117(2013)5180.
【文献】Y.Murakami et al.,J.Phy.,Chem.B,118(2014)14442.
【文献】T.N.Singh et al.,J.Phys.Chem.A,113(2009)5912.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽光強度程度の弱い光にも適用可能な高い光波長変換効率を有すると共に良好な経時安定性を有し、それゆえに太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、殺菌装置、光アップコンバージョンフィルター等に好適に使用可能で、可視域~紫外域の波長の光をより短い波長の光(例えば紫外域の波長の光)に変換できる光波長変換要素、および光波長変換要素を含む物品(太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、および光アップコンバージョンフィルター)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、TTA過程を示す組み合わせである有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を、溶媒中に溶解および/または分散させてなる、目視上均質かつ透明な光波長変換要素に用いたところ、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
なお、本出願書類において、「目視上均質かつ透明」とは、目視上二層以上の層分離を起こしておらず、そして、目視で確認できる程度において、固体を有さず、均質であり、かつ濁り・曇りを有さず透明であることを意味するものとする。また、本出願書類において、「溶解および/または分散」とは、溶解および分散のいずれか一方をしているか、または溶解および分散を同時にしていることを意味するものとする。
【0012】
本発明に用いられる溶媒としては、従来より用いられているトルエンやベンゼン等の有機溶媒、オリゴマー、比較的粘度が高い高分子化合物をはじめ、低蒸気圧で流動性が比較的高く難燃性等の性質を有するイオン液体や深共晶溶媒さらには水等、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の太陽電池は、前記光波長変換要素を用いたことを特徴としている。前記構成によれば、太陽光強度程度の弱い光にも適用可能な高い光波長変換効率を有すると共に良好な経時安定性を有し、紫外~可視域の波長の光をより短い波長の光(例えば紫外域の波長の光)に変換できる光波長変換要素を用いたので、光電変換効率の高い太陽電池を実現できる。
【0014】
また、本発明の光触媒は、前記光波長変換要素を用いたことを特徴としている。前記構成によれば、太陽光強度程度の弱い光にも適用可能な高い光波長変換効率を有すると共に良好な経時安定性を有し、紫外~可視域の波長の光をより短い波長の光(例えば紫外域の波長の光)に変換できる光波長変換要素を用いたので、触媒効率の高い光触媒を実現できる。
【0015】
また、本発明の光触媒型水素・酸素発生装置は、前記光波長変換要素を用いたことを特徴としている。前記構成によれば、太陽光強度程度の弱い光にも適用可能な高い光波長変換効率を有すると共に良好な経時安定性を有し、紫外~可視域の波長の光をより短い波長の光(例えば紫外域の波長の光)に変換できる光波長変換要素を用いたので、水素・酸素発生効率の高い光触媒型水素・酸素発生装置を実現できる。
【0016】
また、本発明の光アップコンバージョンフィルターは、光をより短い波長の光に変換する光アップコンバージョンフィルターであって、前記光波長変換要素と、その密閉/保持殻となるセルとを備え、前記光波長変換要素が、前記セル中に封入されていることを特徴としている。
【0017】
前記構成によれば、太陽光強度程度の弱い光にも適用可能な高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を用いたので、光波長変換効率の高い光アップコンバージョンフィルターを実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、用いられる親水性官能基を有する有機光増感分子(A)及び親水性官能基を有する有機発光分子(B)は、実用上安定なイオン液体や深共晶溶媒さらには水等に極めて高い溶解性を示すことにより、光波長変換要素の製造時に行われる減圧下での溶存酸素の除去に伴う系外への揮発脱離を抑制し、連続的な光照射下でも所定の光アップコンバージョン発光強度を経時的に維持することが可能となる上に、太陽光強度程度の弱い光にも適用可能な高い光波長変換効率を有すると共に良好な経時安定性を有する、紫外~可視域の波長の光をより短い波長の光(例えば紫外域の波長の光)に変換できる光波長変換要素、および前記光波長変換要素を含む物品(太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、および光アップコンバージョンフィルター)を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の一例に係る太陽電池を示す断面図である。
図2】本発明の実施の一例に係る光触媒を示す断面図である。
図3】実施例3で得られた光吸収スペクトルを示す図である。
図4】実施例4で得られたイオン液体からの揮発脱離評価試験における光波長変換要素の光吸収スペクトルを示す図である。
図5】実施例5で得られた光波長変換要素のアップコンバージョン発光スペクトルを示す図である。
図6】実施例6で得られた光波長変換要素のアップコンバージョン発光スペクトルを示す図である。
図7】実施例7で得られた光波長変換要素のアップコンバージョン発光効率の有機発光分子濃度との相関関係を示す図である。
図8】実施例11で得られた水を溶媒とする光波長変換要素のアップコンバージョン発光強度の経時安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0021】
前記有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)としては、その組み合わせがTTA過程を示す(TTA過程に基づいて発光する)ものであれば、制限なく用いることができる。前記有機光増感分子(A)の吸光波長、および前記有機発光分子(B)の発光波長は、太陽光の波長範囲内から、制限なく選択することができる。例を挙げると、可視~近赤外域の光をアップコンバージョンする態様の光波長変換要素においては、前記有機光増感分子(A)として可視~近赤外域に光吸収帯を有するπ共役分子を用いることができ、前記有機発光分子(B)として可視~近赤外域に発光帯を有するπ共役分子を用いることができる。前記有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)としては、芳香族π電子共役系化合物、特に多環芳香族π電子共役系化合物など、および、例えば非特許文献7(S.Baluschev,et al.,New Journal of Physics,2008,10,p.013007-1~013007-12.)に記載されている化合物などを含め、低分子や高分子を広く用いることができる。
【0022】
前記有機光増感分子(A)としては、太陽光の波長範囲内に吸収極大波長を有するものであれば制限されなく使用できるが、通常は200~1000nmの範囲内に吸収極大波長を有するものが使用され、好ましくは500~700nmの範囲内に吸収極大波長を有するものが使用される。これにより、一般的な太陽電池や水素発生光触媒等の光-二次エネルギー変換要素では利用されない比較的長い波長の光を、一般的な光-二次エネルギー変換要素に利用される比較的短い波長の光に変換できるので、太陽光に含まれる広範な波長範囲の光を光-二次エネルギー変換要素で有効に利用することが可能となる。また、青色領域、紫色領域、および紫外線領域の波長の光を有効に利用するために、前記有機光増感分子(A)として250~499nmの範囲内に吸収極大波長を有するものを使用してもよい。
【0023】
前記有機光増感分子(A)としては、紫外領域から赤外領域までの範囲に光吸収を有するものであれば、これまでに色素と呼ばれていない分子種でも使用できる。前記有機光増感分子(A)としては、例えば、アセナフテン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルアセチレン誘導体、アクリダン誘導体、アクリジン誘導体、アクリドン誘導体、チオアクリドン誘導体、アンゲリシン誘導体、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、アザフルオレン誘導体、アズレン誘導体、ベンジル誘導体、カルバゾール誘導体、コロネン誘導体、スマネン誘導体、ビフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、フェナジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ビアセチル誘導体、ビアントラニル誘導体、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体、カロテン誘導体、クロロフィル誘導体、クリセン誘導体、シンノリン誘導体、クマリン誘導体、クルクミン誘導体、ダンシルアミド誘導体、フラボン誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレセイン誘導体、ヘリセン誘導体、インデン誘導体、ルミクロム誘導体、ルミフラビン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ペリフランテン誘導体、フェノール誘導体、フェノチアジン誘導体、フェノキサジン誘導体、フタラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、ピセン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポルフィセン誘導体、ヘミポルフィセン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、プソラレン誘導体、アンゲリシン誘導体、プリン誘導体、ピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ピリジルケトン誘導体、フェニルケトン誘導体、ピリジルケトン誘導体、チエニルケトン誘導体、フラニルケトン誘導体、キナゾリン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、レチナール誘導体、レチノール誘導体、ローダミン誘導体、リボフラビン誘導体、ルブレン誘導体、スクアリン誘導体、スチルベン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラセンキノン誘導体、ペンタセンキノン誘導体、チオホスゲン誘導体、インジゴ誘導体、チオインゾゴ誘導体、チオキサンテン誘導体、チミン誘導体、トリフェニレン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、トリアリール誘導体、トリプトファン誘導体、ウラシル誘導体、キサンテン誘導体、フェロセン誘導体、アズレン誘導体、ビアセチル誘導体、ターフェニル誘導体、ターフラン誘導体、ターチオフェン誘導体、オリゴアリール誘導体、フラーレン誘導体、共役ポリエン誘導体、含14族元素縮合多環芳香族化合物誘導体、縮合多環複素芳香族化合物誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0024】
前記有機光増感分子(A)としては、具体的には、金属ポルフィリン類(ポルフィリン類の金属錯体);金属テトラアザポルフィリン類;金属フタロシアニン類;3,5-ジメチル-ボロンジピロメテンのヨウ素誘導体;3,5-ジメチル-8-フェニルボロンジピロメテンのヨウ素誘導体等のようなボロンジピロメテン類;サレン金属錯体等のようなシッフ塩基金属錯体類;ルビジウム-ビピリジン錯体やイリジウム-フェナントロリン錯体等の金属ビピリジン錯体;金属フェナントロリン錯体;N-アルキルナフタレンジイミド等のナフタレンジイミド類;N-メチルアクリドンやN-ブチル-2-クロロアクリドン等のようなアクリドン類;2,4-ジエチルチオキサントン等のようなチオキサントン類、キサントン類、キサンテン類;アクリジンイエロー等のようなアクリジン類;クマリン6やクマリン314等のようなクマリン類;2,3-ブタンジオン等のようなビアセチル類;9,10-ジブロモアントラセンや9,9’-ビアントリル等のようなアントラセン類;ビフラン、ビチオフェン、ビス(ベンゾオキサゾリル)チオフェン等のようなオリゴアリール類;クリセンやフェナントレンあるいはその誘導体等のような縮合多環複素芳香族化合物類等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。前記金属ポルフィリン類および金属フタロシアニン類に含まれる金属原子としては、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Zn、Cu等を用いることができる。前記金属テトラアザポルフィリン類としては、後述の一般式(5)における5,10,15,20位の炭素原子及びそれに結合したRを窒素原子に置き換えた構造の金属テトラアザポルフィリン類が挙げられる。
【0025】
前記有機光増感分子(A)の例のうち、500~700nmの範囲内に吸収極大波長を有し、その構造中に金属を含む有機光増感分子(A)の例としては、下記一般式(5)
【0026】
【化1】
【0027】
(式中、Rはそれぞれ、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、Rは同じでも異なっていてもよく、互いに隣接する2つのRが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Rはそれぞれ、水素原子を含む任意の置換基を有するアリール基を表し、Rは同じでも異なっていてもよく、Mは金属原子を表す)で表される化合物が挙げられる。ここで、「水素原子を含む任意の置換基」とは、水素原子、又は水素原子を除く任意の置換基を意味する。さらに、「水素原子を含む任意の置換基」は、連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい。
【0028】
前記一般式(5)中のRの少なくとも1つは親水性官能基を必須とし、その具体例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシ基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、チオカルボン酸基、硫酸塩基、スルフェン酸塩基、スルフィン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオカルボン酸、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(5)中に含まれる、互いに隣接する2つのRが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基の例としては、Rの例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。前記5員環または6員環は、置換基を有していてもよい他のポルフィリン環と連結していてもよい。前記一般式(5)中のRの例としては、Rの例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。前記金属ポルフィリン類および金属フタロシアニン類に含まれる金属原子としては、前記一般式(5)中の金属原子Mとしては、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Zn、Cu等が挙げられる。
【0029】
前記一般式(5)で表される金属ポルフィリン類としては、例えば、メソ-テトラフェニル-テトラベンゾポルフィリンパラジウム(CAS番号:119654-64-7)等のメソ-テトラフェニル-テトラベンゾポルフィリン金属錯体、オクタエチルポルフィリンパラジウム(CAS番号:24804-00-0)等のオクタエチルポルフィリン金属錯体、非特許文献5に記載されているメソ-テトラフェニル-オクタメトキシ-テトラナフト[2,3]ポルフィリンパラジウム等のオクタエチルポルフィリン金属錯体等が挙げられる。
【0030】
前記有機光増感分子(A)は、その構造中に金属を含まない構造の有機光増感分子であることがより好ましい。これにより、光波長変換要素の製造時や廃棄時における金属による環境汚染の発生を回避できる。その構造中に(A)の例としては、具体的には、下記一般式(1)
【0031】
【化2】
【0032】
(前記式中、R~Rの少なくとも1つは親水性官能基を必須とし、それぞれ独立に水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、互いに隣接する置換基(RとRとの対、RとRとの対、RとRとの対、RとRとの対)はそれぞれ互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Rはハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数1~5のアルコキシ基を表す)で表される化合物(ボロンジピロメテン類)、C70等が挙げられる。これらの有機光増感分子(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記一般式(1)中のR~Rの少なくとも1つは親水性官能基を必須とし、その具体例としては、水素原子、脂肪族炭化水素基として、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシ基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、スルフェン酸塩基、スルフィン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオカルボン酸、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、フェノキシ基またはアリール基、もしくはヘテロアリール基またはヘテロアリールオキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(1)中に含まれる、互いに隣接する置換基(RとRとの対、RとRとの対、RとRとの対、RとRとの対)が互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基の例としては、R~Rの例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
前記一般式(1)中のRおよびRとしては、水素原子、ハロゲン原子、親水性官能基、置換基を有してもよい炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、下記式(2)
【0035】
【化3】
【0036】
で表される2-カルボキシルエテニル基、または下記式(3)
【0037】
【化4】
【0038】
で表される2-カルボキシル-2-シアノエテニル基、等が挙げられる。
【0039】
前記一般式(1)中のRおよびRは、水素原子、ハロゲン原子、親水性官能基、置換基を有してもよい炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、前記式(2)で表される2-カルボキシルエテニル基、または前記式(3)で表される2-カルボキシル-2-シアノエテニル基であることが好ましく、水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子である(ただしRおよびRの少なくとも一方が臭素原子またはヨウ素原子である)ことがより好ましく、水素原子またはヨウ素原子である(ただしRおよびRの少なくとも一方がヨウ素原子である)ことがさらに好ましい。
【0040】
前記一般式(1)中のRは、水素原子、ハロゲン原子、親水性官能基、置換基を有してもよい炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、前記式(2)で表される2-カルボキシルエテニル基、または前記式(3)で表される2-カルボキシル-2-シアノエテニル基であることが好ましく、置換基を有してもよいフェニル基であることがより好ましく、無置換またはアルキル置換さらには親水性官能基を有するフェニル基であることがさらに好ましい。
【0041】
前記一般式(1)中のRは、ハロゲン原子、親水性官能基、置換基を有してもよい炭素数1~5のアルキル基、または置換基を有してもよい炭素数1~5のアルコキシ基であるが、フッ素原子であることが好ましい。
【0042】
前記有機光増感分子(A)は、前記一般式(5)で表される金属ポルフィリン類、または前記一般式(1)で表される化合物であることが好ましく、前記一般式(1)で表される化合物であることがより好ましく、前記一般式(1)で表される化合物において前記一般式(1)中のR~Rがそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、親水性官能基、置換基を有してもよい炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいチエニル基、置換基を有してもよいチエノキシ基、前記式(2)で表される2-カルボキシルエテニル基、または前記式(3)で表される2-カルボキシル-2-シアノエテニル基である化合物であることがさらに好ましく、下記一般式(4)
【0043】
【化5】
【0044】
(前記式中、RおよびRはそれぞれ独立に親水性官能基、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基を表し、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表し、RおよびRの少なくとも一方が臭素原子またはヨウ素原子であり、Rは置換基を有してもよいフェニル基を表す)で表される化合物であることが最も好ましい。これにより、さらに高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0045】
また、250~499nmの範囲内に最長波長の吸収極大波長を有し、構造中に金属を含まない有機光増感分子(A)の例としては、下記一般式(6)
【0046】
【化6】
【0047】
(式中、R11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R11~R18のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Xはチオ基(-S-)、スルフィニル基(-S(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)-)、-N(R19)-で表される2価基、または-C(R20)(R21)-で表される2価基を表し、R19~R21はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表す)で表される化合物が挙げられる。ここで、「水素原子を含む任意の置換基」とは、水素原子、又は水素原子を除く任意の置換基を意味する。
【0048】
前記一般式(6)中のR11~R18の少なくとも1つは親水性官能基を必須とし、その具体例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシ基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、スルフェン酸塩基、スルフィン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオカルボン酸、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。R19~R21の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(6)中に含まれうるR11~R21のうち、互いに隣接する2つが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基の例としては、R11~R18の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。これらの有機光増感分子(A)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
前記一般式(6)で表される化合物において、Xがチオ基(すなわちチオキサントン類である場合)、スルフィニル基(すなわちチオキサントンオキシド類である場合)、スルホニル基(チオキサントンジオキシド類である場合)、-N(R19)-で表される2価基(アクリドン類である場合)、-C(R20)(R21)-で表される2価基(すなわちアントロン類である場合)のR11~R18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、親水性官能基、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0050】
本明細書において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本実施形態における化合物に使用できる置換基は、どのような置換基でも良い。
【0051】
このような置換基の例を以下に挙げるが、特に制限はなく、これらに限定されない。このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言っても良い)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールアゾ基またはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、ホスフォ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH))、ホスファト基(-OPO(OH))、スルファト基(-OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0052】
さらに詳しくは、前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0053】
前記アルキル基は、直鎖、分岐、または環状の置換もしくは無置換のアルキル基を含む。前記アルキル基は、脂肪族アルキル基(好ましくは炭素数1~30の置換もしくは無置換の脂肪族アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-オクチル基、エイコシル基、2-クロロエチル基、2-シアノエチル基、2-エチルヘキシル基)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3~30の置換もしくは無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4-n-ドデシルシクロヘキシル基)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5~30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5~30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り除いた一価の基であり、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン-2-イル基、ビシクロ[2,2,2]オクタン-3-イル基である)、さらに環構造が多いトリシクロアルキル基等を包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)は、このような概念のアルキル基に加えて、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。
【0054】
前記アルケニル基は、直鎖、分岐、または環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を含む。前記アルケニル基は、脂肪族アルケニル基(好ましくは炭素数2~30の置換もしくは無置換の脂肪族アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、ゲラニル基、オレイル基)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3~30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3~30のシクロアルケンの水素原子を一個取り除いた一価の基であり、例えば、2-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基等である)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り除いた一価の基であり、好ましくは、炭素数5~30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-2-エン-1-イル基、ビシクロ[2,2,2]オクト-2-エン-4-イル基等である)等を包含するものである。前記アルキニル基は、好ましくは、炭素数2~30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル基、プロパルギル基、トリメチルシリルエチニル基等である。
【0055】
前記アリール基は、好ましくは炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル基、ビフェニル基、p-トリル基、ナフチル基、m-クロロフェニル基、o-ヘキサデカノイルアミノフェニル基等である。前記複素環基は、好ましくは、5員または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、より好ましくは、炭素数3~30の5員もしくは6員の芳香族の複素環基である。前記複素環基は、例えば、2-フリル基、2-チエニル基、2-ピリミジニル基、2-ベンゾチアゾリル基等である。なお、前記複素環基は、1-メチル-2-ピリジニオ基、1-メチル-2-キノリニオ基等のようなカチオン性の複素環基でも良い。
【0056】
前記アルコキシ基は、好ましくは、炭素数1~30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t-ブトキシ基、n-オクチルオキシ基、2-メトキシエトキシ基等である。前記アリールオキシ基は、好ましくは、炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、4-t-ブチルフェノキシ基、3-ニトロフェノキシ基、2-テトラデカノイルアミノフェノキシ基等である。
【0057】
前記シリルオキシ基は、好ましくは、炭素数3~20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t-ブチルジメチルシリルオキシ基等である。前記ヘテロ環オキシ基は、好ましくは、炭素数2~30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、例えば、1-フェニルテトラゾール-5-オキシ基、2-テトラヒドロピラニルオキシ基等である。
【0058】
前記アシルオキシ基は、好ましくは、ホルミルオキシ基、炭素数2~30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、または炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p-メトキシフェニルカルボニルオキシ基等である。
【0059】
前記カルバモイルオキシ基は、好ましくは、炭素数1~30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N-ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N-ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N-ジ-n-オクチルアミノカルボニルオキシ基、N-n-オクチルカルバモイルオキシ基等である。
【0060】
前記アルキルスルホニルアミノ基またはアリールスルホニルアミノ基は、好ましくは炭素数1~30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、または炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5-トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p-メチルフェニルスルホニルアミノ基等である。
【0061】
前記アルキルチオ基は、好ましくは、炭素数1~30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ基、エチルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基等である。前記アリールチオ基は、好ましくは炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ基、p-クロロフェニルチオ基、m-メトキシフェニルチオ基等である。前記ヘテロ環チオ基は、好ましくは炭素数2~30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2-ベンゾチアゾリルチオ基、1-フェニルテトラゾール-5-イルチオ基等である。
【0062】
前記スルファモイル基は、好ましくは炭素数0~30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N-エチルスルファモイル基、N-(3-ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N-ジメチルスルファモイル基、N-アセチルスルファモイル基、N-ベンゾイルスルファモイル基、N-(N’-フェニルカルバモイル)スルファモイル基等である。
【0063】
前記アルキルスルフィニル基またはアリールスルフィニル基は、好ましくは、炭素数1~30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素数6~30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、p-メチルフェニルスルフィニル基等である。前記アルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基は、好ましくは、炭素数1~30の置換または無置換のアルキルスルホニル基または炭素数6~30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、フェニルスルホニル基、p-メチルフェニルスルホニル基等である。
【0064】
前記アシル基は、好ましくはホルミル基、炭素数2~30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7~30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、または炭素数4~30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル基、ピバロイル基、2-クロロアセチル基、ステアロイル基、ベンゾイル基、p-n-オクチルオキシフェニルカルボニル基、2―ピリジルカルボニル基、2-フリルカルボニル基等である。
【0065】
前記アリールオキシカルボニル基は、好ましくは、炭素数7~30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル基、o-クロロフェノキシカルボニル基、m-ニトロフェノキシカルボニル基、p-t-ブチルフェノキシカルボニル基等である。前記アルコキシカルボニル基は、好ましくは、炭素数2~30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクタデシルオキシカルボニル基等である。
【0066】
前記カルバモイル基は、好ましくは、炭素数1~30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジ-n-オクチルカルバモイル基、N-(メチルスルホニル)カルバモイル基等である。
【0067】
前記アリールアゾ基またはヘテロ環アゾ基は、好ましくは炭素数6~30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基または炭素数3~30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ基、p-クロロフェニルアゾ基、5-エチルチオ-1,3,4-チアジアゾール-2-イルアゾ基等である。前記イミド基は、好ましくは、N-スクシンイミド基、N-フタルイミド基等である。
【0068】
前記ホスフィノ基は、好ましくは、炭素数2~30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等である。前記ホスフィニル基は、好ましくは、炭素数2~30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等である。
【0069】
前記ホスフィニルオキシ基は、好ましくは、炭素数2~30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等である。前記ホスフィニルアミノ基は、好ましくは、炭素数2~30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等である。
【0070】
前記シリル基は、好ましくは、炭素数3~30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等である。
【0071】
前記ヒドラジノ基は、好ましくは炭素数0~30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ基等である。前記ウレイド基は、好ましくは炭素数0~30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N-ジメチルウレイド基等である。
【0072】
また、これらの置換基は、2つの置換基が共同して環を形成したものも含む。前記環は、芳香族または非芳香族の炭化水素環または複素環である。これらの環は、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。前記環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環等が挙げられる。
【0073】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り除き、さらに上記の置換基で置換されていても良い。そのような置換基の例としては、上記の、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基等が挙げられる。
【0074】
前記有機発光分子(B)としては、前記有機光増感分子(A)と共に使用することでTTA過程により光アップコンバージョンされた光を発することのできる有機化合物であれば、特に限定されることなく使用することができる。前記有機発光分子(B)としては、例えば、アセナフテン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラセン誘導体、ジフェニルアセチレン誘導体、アクリダン誘導体、アクリジン誘導体、アクリドン誘導体、チオアクリドン誘導体、アンゲリシン誘導体、アントラセン誘導体、アントラキノン誘導体、アザフルオレン誘導体、アズレン誘導体、ベンジル誘導体、カルバゾール誘導体、コロネン誘導体、スマネン誘導体、ビフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、ペリレン誘導体、フェナントレン誘導体、フェナントロリン誘導体、フェナジン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ピレン誘導体、ベンゾキノン誘導体、ビアセチル誘導体、ビアントラニル誘導体、フラーレン誘導体、グラフェン誘導体、カロテン誘導体、クロロフィル誘導体、クリセン誘導体、シンノリン誘導体、クマリン誘導体、クルクミン誘導体、ダンシルアミド誘導体、フラボン誘導体、フルオレノン誘導体、フルオレセイン誘導体、ヘリセン誘導体、インデン誘導体、ルミクロム誘導体、ルミフラビン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ペリフランテン誘導体、フェノール誘導体、フェノチアジン誘導体、フェノキサジン誘導体、フタラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、ピセン誘導体、ポルフィリン誘導体、ポルフィセン誘導体、ヘミポルフィセン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、プソラレン誘導体、アンゲリシン誘導体、プリン誘導体、ピレン誘導体、ピロメテン誘導体、ピリジルケトン誘導体、フェニルケトン誘導体、ピリジルケトン誘導体、チエニルケトン誘導体、フラニルケトン誘導体、キナゾリン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、レチナール誘導体、レチノール誘導体、ローダミン誘導体、リボフラビン誘導体、ルブレン誘導体、スクアリン誘導体、スチルベン誘導体、テトラセン誘導体、ペンタセン誘導体、アントラキノン誘導体、テトラセンキノン誘導体、ペンタセンキノン誘導体、チオホスゲン誘導体、インジゴ誘導体、チオインゾゴ誘導体、チオキサンテン誘導体、チミン誘導体、トリフェニレン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、トリアリール誘導体、トリプトファン誘導体、ウラシル誘導体、キサンテン誘導体、フェロセン誘導体、アズレン誘導体、ビアセチル誘導体、ターフェニル誘導体、ターフラン誘導体、ターチオフェン誘導体、オリゴアリール誘導体、フラーレン誘導体、共役ポリエン誘導体、含14族元素縮合多環芳香族化合物誘導体、縮合多環複素芳香族化合物誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0075】
前記有機発光分子(B)としては、具体的には、例えば、9,10-ジフェニルアントラセン(CAS番号:1499-10-1)およびその誘導体、9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン(CAS番号:10075-85-1)およびその誘導体(例えば1-クロロ-9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン)、ペリレン(CAS番号:198-55-0)およびその誘導体(例えばペリレンジイミド)、ピレンおよびその誘導体、ルブレンおよびその誘導体、ナフタレンおよびその誘導体(例えば、1-ドデシルナフタレン、ナフタレンジイミド、パーフルオロナフタレン、1-シアノナフタレン、1-メトキシナフタレン、2-シアノナフタレン、2-メトキシナフタレン、1-メチルナフタレン、アセナフテン)、9,10-ビス(フェニルエチニル)ナフタセン、4,4’-ビス(5-テトラアセニル)-1,1’-ビフェニレン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ビフェニルおよびその誘導体、ビフラン、ビチオフェン、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(ボロンジピロメテン)等が挙げられるが、これらに限定されない。前記有機発光分子(B)としては、ペリレンやピレンやナフタレンおよびその誘導体のような縮合多環芳香族化合物、特に芳香族π電子共役系化合物等が好ましい。これらの有機発光分子(B)は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0076】
前記有機発光分子(B)の好ましい化合物の例としては、下記一般式(7)
【0077】
【化7】
【0078】
(式中、Zは-C(R28)=Y-で表される2価基、-N(R30)-で表される2価基、オキシ基(-O-)、またはチオ基を表し、Yは=C(R29)-で表される3価基、またはアザ基(=N-)を表し、R22~R30はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R22~R30のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が挙げられる。前記一般式(7)で表される化合物において、R22~R29がそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、前記一般式(2)のR30が、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0079】
前記一般式(7)で表される化合物のうち、Zが-C(R28)=Y-で表される2価基である場合、すなわち、下記一般式(8)
【0080】
【化8】
【0081】
(式中、Yは=C(R29)-で表される3価基、またはアザ基を表し、R22~R29はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R22~R29のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が好ましい。
【0082】
前記一般式(8)で表される化合物のうち、Yが=C(R29)-で表される3価基である場合、すなわち、下記一般式(9)
【0083】
【化9】
【0084】
(式中、R22~R29はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R22~R29のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が好ましい。さらに、前記一般式(9)で表される化合物において、R22~R29がそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、またはヘテロアリール基であることが好ましい。
【0085】
前記有機発光分子(B)の好ましい化合物の他の例としては、下記一般式(10)
【0086】
【化10】
【0087】
(式中、R31~R36はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R31~R36のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、Qは-N(R37)-で表される2価基、オキシ基、またはチオ基を表し、Rは-N(R38)-で表される2価基、オキシ基、またはチオ基を表す)で表される化合物が挙げられる。
【0088】
前記有機発光分子(B)の好ましい化合物の他の例としては、下記一般式(11)
【0089】
【化11】
【0090】
(式中、R43~R52はそれぞれ独立に、水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基を表し、同じでも異なっていてもよく、R43~R52のうち互いに隣接する2つが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、R43とR52とが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよく、R47とR48とが互いに連結して水素原子を含む任意の置換基を有する5員環または6員環を形成してもよい)で表される化合物が挙げられる。
【0091】
ここで、「水素原子、親水性官能基を含む任意の置換基」とは、水素原子、又は水素原子を除く親水性官能基を含む任意の置換基を意味する。
【0092】
前記一般式(7)~(11)中のR22~R27、R31~R36、およびR43~R52の、それぞれの分子構造中の置換基の少なくとも1つは親水性官能基を必須とし、その具体例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基(水酸基)、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、カルボン酸塩、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アルキルチオカルボニル基、アルコキシ基、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、スルフェン酸塩基、スルフィン酸塩基、スルホン酸塩基、シアノ基、アミノ基(アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、およびアルキルアリールアミノ基を含む)、アシルアミノ基(アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルバモイル基、およびウレイド基が含まれる)、アミジノ基、イミノ基、スルフヒドリル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、スルホンアミド基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、アジド基、複素環、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。R30、R37およびR38の例としては、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1~12のアルキル基)、アルケニル基、アルキニル基、複素環基、アルキルアリール基、またはアリール基、もしくはヘテロアリール基が挙げられるが、これらに限定されない。前記一般式(8)~(11)中に含まれるR22~R38およびR43~R52のうち、互いに隣接する2つが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する置換基、R43とR52とが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する水素原子を含む任意の置換基、並びにR47とR48とが互いに連結して形成された5員環または6員環が有する水素原子を含む任意の置換基の例としては、R22~R27、R31~R36、およびR43~R52の例として挙げた置換基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
なお、本願発明の効果を妨げない範囲で、親水性官応基を有さない有機光増感分子(A)または親水性官応基を有さない有機発色分子(B)を本発明において用いてもよい。
【0094】
有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)は、前記例の中から自由に選択し、任意の組み合わせで使用することができるが、TTA過程により光アップコンバージョンされた光を発するためには、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)の最低三重項励起状態のエネルギー準位が近いことが三重項-三重項エネルギー移動の効率の観点から好ましい。そのため、次式
【0095】
【数1】
【0096】
(式中、ET,Dyeは有機光増感分子(A)の最低三重項励起状態のエネルギー準位であり、ET,Emiは有機発光分子(B)の最低三重項励起状態のエネルギー準位である。)で表されるΔEが、有機光増感分子(A)と有機発光分子(B)との任意の組み合わせについて、好ましくは-0.5eV以上2.0eV以下であり、より好ましくは-0.3eV以上1.0eV以下であり、さらに好ましくは-0.2eV以上0.5eV以下であり、特に好ましくは-0.1eV以上0.3eV以下である。1eVとは、電子1個を1Vの電位差で加速したときに電子が得るエネルギーである。
【0097】
本実施形態の光波長変換要素中における有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)の含有量は、特に制限はないが、光波長変換要素を100質量部とした場合、それぞれ、通常は0.000001~10質量部であり、好ましくは0.00001~5質量部であり、より好ましくは0.0001~1質量部である。
【0098】
本発明に用いられる有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)は、原理的に、これらの有機分子同士がエネルギーをやりとりするために拡散運動・相互衝突することが必要であることから、溶媒中で撹拌混合して溶解および/または分散させて目視上均質かつ透明な溶液および/または分散体を生成させてもよいが、無溶媒下これらの有機分子同士を撹拌混合して溶解および/または分散させて目視上均質かつ透明な溶液および/または分散体を生成させてもよい。
【0099】
本発明の光波長変換要素に用いられる溶媒としては、例えば、従来より用いられている、非特許文献2や非特許文献8(W.Wu,et.al.,J.Org.Chem.,76,7056,2011.)に開示されたトルエンやベンゼン等の揮発性有機溶媒;非特許文献9(T.Miteva,et.al.,New Journal of Physics,10,103002-1~103002-10,2008.)に開示されたスチレンのオリゴマー(スチレン3量体および4量体の混合物)等の揮発性媒体;特許文献3(第4518313号公報)に開示のポリフルオレンやオリゴフルオレンおよびこれらのコポリマー;非特許文献10(A.Monguzzi,et.al.,J.Phys.Chem.A,113,1171,2009.)、非特許文献11(Tanya N.Singh-Rachford,et.al.,J.Am.Chem.Soc.,131,12007,2009.)、特許文献4(特表2008-506798号公報)に開示された酢酸セルロース(分子量:約100,000)ポリマーや柔軟性のあるゴム状ポリマー等の高分子化合物、等が挙げられる。
【0100】
さらには、本発明の光波長変換要素における、アップコンバージョン光強度の向上、媒体の可燃性、媒体の揮発性等の従来の課題を解決するために、特許文献1や特許文献5(国際公開2012/050137号)及び特許文献6(特開2015-132813号公報)に開示された、安全性を考慮した実用性に優れた溶媒としてイオン液体;特許文献2に開示された深共晶溶媒;または水、等を用いてもよい。
【0101】
前記イオン液体は、カチオンとアニオンとからなる常温溶融塩(常温(25℃)で溶融状態(液体状態)にある塩)である。一般的に、イオン液体として、カチオンとアニオンとの組み合わせによって少なくとも1,000,000種類以上の化合物が存在することが知られている。前記イオン液体は、前記TTA過程を示す組み合わせである有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)の媒体として作用し、その内部で有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)の拡散運動を許容するものである。
【0102】
本発明の光波長変換要素においては、TTA過程を示す組み合わせである有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を、イオン液体中に溶解および/または分散させて目視上均質かつ透明にする必要があるため、前記イオン液体としては、前記有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)とカチオン-π相互作用を有し、かつ非水混和性であるものが好ましい。本明細書において、イオン液体が「非水混和性」とは、25℃において、50質量%以下の水がイオン液体に目視上均質かつ透明に混和する場合がある(例えば5質量%以下の水がイオン液体に目視上均質かつ透明に混和する場合がある)が、50質量%超の水がイオン液体に目視上均質かつ透明に混和しないことを意味する。
【0103】
前記イオン液体を構成するカチオンの具体例としては、例えば、窒素含有化合物カチオン、第四級ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等が挙げられる。前記窒素含有化合物カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン等の複素環式芳香族アミンカチオン;ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、チアゾリウムカチオン、モルフォリニウムカチオン等の複素環式脂肪族アミンカチオン;第四級アンモニウムカチオン;芳香族アミンカチオン;脂肪族アミンカチオン;脂環式アミンカチオン等が挙げられる。前記イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム等の1-アルキル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ペンチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘプチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-オクチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム等の1-アルキル-2,3-ジメチルイミダゾリウム;1-シアノメチル-3-メチルイミダゾリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。前記ピリジニウムカチオンとしては、例えば、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、N-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウム、N-ヘキシル-4-ジメチルアミノピリジニウム等が挙げられる。前記ピペリジニウムカチオンとしては、例えば、1-(メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウム等が挙げられる。前記ピロリジニウムカチオンとしては、例えば、1-(2-メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウム、N-(メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウム等が挙げられる。前記モルフォリニウムカチオンとしては、例えば、N-(メトキシエチル)-N-メチルモルフォリウム等が挙げられる。前記第四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチル-2-メトキシエチルアンモニウム等が挙げられる。前記第四級ホスホニウムカチオンとしては、例えば、テトラアルキルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。前記スルホニウムカチオンとしては、例えば、トリアルキルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム等が挙げられる。前記イオン液体中には、これらカチオンの1種が存在していてもよく2種以上が存在していてもよい。
【0104】
前記イオン液体を構成するアニオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン([N(SOCF)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオン([C(SOCF)、ヘキサフルオロホスフェートアニオン([PF)、トリス(ペンタフルオロエチル)、トリフルオロホスフェートアニオン([(CPF)等のフッ素含有化合物アニオン;[BR61626364(このアニオン構造式および以下のアニオン構造式中において、R61、R62、R63、およびR64はそれぞれ独立して、-(CHCH(ここでnは1~9の整数を表す)で表される基、すなわち炭素数1~9の直鎖アルキル基、または、アリール基を表す)で表されるホウ素含有化合物アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン([N(FSO])等が挙げられる。前記イオン液体中には、これらアニオンの1種が存在していてもよく2種以上が存在していてもよい。
【0105】
一般的に、イオン液体は、イオン液体を構成するアニオンの種類によっては水と上限なく混和するが、イオン液体を構成するアニオンの種類によってはイオン液体が水とある程度以上混和しないか、またはごく微量しか混和しない。本発明においては、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)のイオン液体中への溶解・分散安定性を考慮すると、イオン液体のアニオンが、イオン液体に非水混和性を与えるようなアニオンであることが好ましい。
【0106】
前記イオン液体としては、前記アニオンの具体例と前記カチオンの具体例とを組み合わせたものを用いることができる。前記イオン液体としては、より具体的には、例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:174899-82-2、例えば製造元がIonic Liquids Technologies GmbHの市販品を入手可能)、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:169051-76-7、例えば製造元がIonic Liquids Technologies GmbHの市販品や製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:174899-83-3、例えば製造元がIonic Liquids Technologies GmbHの市販品や製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(CAS番号:169051-77-8、例えば製造元がCovalent Associates Inc.の市販品を入手可能)、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:464927-84-2、例えば製造元が日清紡績株式会社で販売元が関東化学株式会社の市販品(製品番号:11468-55)を入手可能)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:382150-50-7、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:178631-04-4、例えば製造元が日清紡績株式会社で販売元が関東化学株式会社の市販品(製品番号:49514-85)を入手可能)、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:174899-90-2、例えば販売元が関東化学株式会社の市販品(製品番号:49515-52)を入手可能)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:350493-08-2、例えば製造元がIonic Liquids Technologies GmbHの市販品や製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、エチルジメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:258273-77-7、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(CAS番号:377739-43-0、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(CAS番号:713512-19-7、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:223437-11-4、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(CAS番号:851856-47-8、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:375395-33-8、例えば製造元がMerck KGaAの市販品を入手可能)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム[BR61626364、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム[BR61626364、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム[BR61626364、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム[BR61626364、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム[BR61626364、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム[BR61626364、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム[BR61626364、1-ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-シアノメチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-ヘキシル-4-ジメチルアミノピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N,N-ジメチル-2-メトキシエチルアンモニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N-(3-ヒドロキシプロピル)ピリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、N-(メトキシエチル)-N-メチルモルフォリウムトリス(ぺンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-(2-メトキシエチル)-1-メチル-ピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-(メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-(メトキシエチル)-1-メチルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-(メトキシエチル)-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-(メトキシエチル)-N-メチルモルフォリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらイオン液体は、1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0107】
本発明においては、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)のイオン液体中への溶解・分散の安定性を考慮すると、これらイオン液体のうち、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)との間に「カチオン-π相互作用」を有するカチオンと、イオン液体に非水混和性を与えるアニオンとの組み合わせが好ましく、イオン液体としても非水混和性のものが好ましい。
【0108】
前記イオン液体としては、上に挙げた具体例のうちで、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、エチルジメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、およびメチルトリ-n-オクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドが特に好ましい。
【0109】
前記イオン液体の26℃における粘度は、通常は10mPa・s以上であり、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは70mPa・s以上である。これにより、より高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0110】
また、本発明の光波長変換要素に含まれるイオン液体は、より高い光波長変換効率及びより良好な経時安定性を有する光波長変換要素を実現するために、例えば特許文献6(特開2015-132813号公報)を参考に、イオン液体の体積の9倍量の超純水で洗浄し、洗浄後の水のpHが5より大きくなるものを用いてもよい。イオン液体をその9倍の体積の超純水で洗浄したときにおける、洗浄後の水のpHの測定方法としては、イオン液体に対してその9倍の体積(体積比でその9倍量)の超純水を入れて撹拌した後に、水層を分離し、水層のpHを測定する方法を用いる。
【0111】
一般に、市販のイオン液体は、イオン液体をその9倍の体積の超純水で洗浄したときに洗浄後の水のpHが5以下の酸性を示すことが多いことから、その9倍の体積の超純水で洗浄することで市販のイオン液体から不純物を除去、洗浄後の水のpHが5より大きくなるようなイオン液体を得ることができる。
【0112】
前記イオン液体からの不純物除去方法としては、例えば、(1)イオン液体を活性炭で処理する方法、(2)イオン液体を水で洗浄する方法、(3)イオン液体を有機溶媒で洗浄する方法(例えば特開2012-144441号公報参照)、(4)イオン液体を溶媒に溶解させて溶液を得た後、前記溶液の温度を下げて前記イオン液体を溶液中から結晶させ、結晶した前記イオン液体を濾過により溶液から分離する方法(再結晶法;例えば特開2010-184902号公報参照)、(5)イオン液体を溶媒に溶解させて溶液を得た後、アルミナ等の充填剤を充填したカラムに前記溶液を通す方法(カラム法;例えば特開2005-314332号公報)、(6)イオン液体を金属水素化物で処理する方法(特開2005-89313号公報参照)等が挙げられる。これらの方法を複数組み合わせて使用してもよい。前記(2)の方法としては、例えば、イオン液体に水(好ましくは超純水)を加えて撹拌した後で水層を除去する洗浄処理を洗浄後の水のpHが5より大きくなるまで繰り返し、次いで、減圧下で加熱することにより水を留去する(乾燥する)方法を用いることができる。
【0113】
本発明の光波長変換要素は、通常公知の技術を用いて有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)をイオン液体中に溶解および/または分散させて溶液または分散液を得る方法によって製造することができる。前記方法において、必要に応じて、通常公知の技術を用いてその他の添加剤をイオン液体中で有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)に混合して、溶液または分散液を得てもよい。また、前記方法において、必要に応じて、超音波分散機、ビーズミル、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ロールミル、マイクロ波分散機等の公知の分散機を単独または組み合わせて使用し、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を微粉砕、微分散して、溶液または分散液を得てもよい。
【0114】
また、本発明の光波長変換要素を製造する他の方法として、例えば、まず、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を揮発性有機溶媒中に溶解および/または分散させ、次に、得られた溶液および/または分散体をイオン液体と撹拌混合して目視上均質かつ透明な溶液および/または分散体を生成させ、さらにその溶液および/または分散体から減圧下でこの揮発性有機溶媒を痕跡量以下まで除去する方法を用いることもできる。この方法は、均質かつ透明に混和した状態の光波長変換要素を得られやすく、安定性や光波長変換効率の高い光波長変換要素を得ることができるので、本発明の光波長変換要素を得る方法としてより好ましい。
【0115】
前記方法に用いる揮発性有機溶媒は、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解および/または分散させることができ、かつイオン液体と均質かつ透明に混和でき、さらに減圧下で痕跡量程度まで除去できるような揮発性を有する有機溶媒であれば、特に制限はない。ここで、「痕跡量」とは、光吸収スペクトルの測定に基づいてイオン液体中に混在する揮発性有機溶媒をノイズレベル以下でしか検出できない量とする。前記揮発性有機溶媒は、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解させることができる揮発性有機溶媒であることが好ましい。前記揮発性有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系溶媒等を用いることができる。有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解させることができる揮発性有機溶媒を使用する場合、その揮発性有機溶媒は有機光増感分子および有機発光分子の溶解性に合わせて適宜選択できる。
【0116】
また、本発明の光波長変換要素には、前記の深共晶溶媒も用いることが出来る。ここで「深共晶溶媒」とは、塩と水素結合ドナーとの混合物であって、共晶により融点が大きく降下している混合物を意味するものとする。ここで注意すべき点は、「深共晶溶媒」は、「イオン液体」とは全く別物であるということである。(両者は、まれに、学術誌・学会出版物等においても誤って混同されるときがあるため、両者が物質分類上別物であることをここに述べる。)すなわち、「イオン液体(ionic liquid)」は、「大野弘幸監修、『イオン液体II―驚異的な進歩と多彩な近未来―』、株式会社シーエムシー出版、2006年3月30日、p.4~7」及び「R. D. Rogers and K.R. Seddon, "Ionic Liquids-solvents of the Future?" Science,302, 5646(2003)792.」に記載されているように、「イオンのみからなる液体」、「100%イオンからなる液体の電解質」、「完全にイオンから成るもの」等と定義されている物質である。すなわち、「深共晶溶媒」は水素結合ドナーを含む点において「イオンのみから成るものでない」ので、物質上の定義において、「イオン液体」ではない。この点を裏付けるものとして、例えば、非特許文献1のp.7109右列第11行目には、「(1)DES(深共晶溶媒の略称)は完全にイオン種からなるものではないこと、(2)DESは非イオン種からも得ることができることから、DESはIL(イオン液体の頭文字略称)とみなすことはできない。」と記載されている。
【0117】
深共晶溶媒は、低揮発性及び難着火性は保持しつつ、イオン液体と比較してコストが飛躍的に低い(組成原料から判断し2~3桁は低コストと考えられる)媒体である。そのため、本発明の光波長変換要素は、特許文献1におけるイオン液体を用いた光波長変換要素における、応用に際する大量使用に伴い生じるコストの問題点・課題を効果的に解決することができる。また、イオン液体は、一般に、生分解性が無いのに対し、深共晶溶媒は、一般に、生分解性を有する低環境負荷な原料で構成されることから、廃棄時の環境負荷の低い光波長変換要素を実現できる進歩点・利点が存在している。
【0118】
深共晶溶媒としては、塩と水素結合ドナーとの混合物であって共晶により融点が大きく降下している混合物であればよく、常温(25℃)で液体のものであっても常温(25℃)で固体のものであってもよいが、常温(25℃)で固体の塩と常温(25℃)で固体又は液体の水素結合ドナーとの混合物であって常温(25℃)で液体の混合物が好ましい。前記深共晶溶媒を構成する塩としては、ハロゲン塩を用いることができ、前記ハロゲン塩としては非金属ハロゲン塩が好ましい。前記深共晶溶媒を構成する塩が非金属ハロゲン塩である場合、前記深共晶溶媒が、金属を含まないものとなるので、環境に優しく、普通の応用上、使用し易い。前記深共晶溶媒としては、前記深共晶溶媒は、常温(25℃)で固体の非金属ハロゲン塩と、常温(25℃)で固体又は液体の水素結合ドナーとの混合物であって、常温(25℃)で液体の混合物であることが特に好ましい。さらに、本発明の光波長変換要素に用いる深共晶溶媒は、光学的透明性の高い、常温(25℃)で液体の混合物であることが好ましい。
【0119】
前記金属ハロゲン塩としては、例えば塩化亜鉛が挙げられる。前記非金属ハロゲン塩としては、特に限定されないが、例えば、第4級アンモニウムハライド、第4級ホスホニウムハライド、第3級アンモニウムハライド、第1級アンモニウムハライド等が挙げられる。
【0120】
前記第4級アンモニウムハライドとしては、特に限定されないが、例えば、塩化コリン、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化テトラオクチルアンモニウム、アセチルコリンクロリド、クロロコリンクロリド、臭化テトラエチルアンモニウム、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチルベンゼンメタンアミニウムクロリド、フルオロコリンブロミド、臭化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0121】
前記第4級ホスホニウムハライドとしては、例えば、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド等が挙げられる。前記第3級アンモニウムハライドとしては、例えば、2-(ジエチルアミノ)エタノール塩酸塩が挙げられる。前記第1級アンモニウムハライドとしては、例えば、エチルアミン塩酸塩が挙げられる。
【0122】
前記水素結合ドナーとしては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、グリセリン、乳酸、酒石酸、ブドウ糖、ショ糖、キシロース、アスコルビン酸、クエン酸、尿素、チオ尿素、1-メチル尿素、1,3-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、アセトアミド、ベンズアミド、2,2,2-トリフルオロアセトアミド、イミダゾール、アジピン酸、安息香酸、マロン酸、シュウ酸、フェニル酢酸、3-フェニルプロピオン酸、コハク酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸、レブリン酸、イタコン酸、キシリトール、D-ソルビトール、D-イソソルビド、4-ヒドロキシ安息香酸、コーヒー酸、p-クマル酸、trans-ケイ皮酸、スベリン酸、没食子酸、レゾルシノール、ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、トリエチレングリコール;蟻酸、酢酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テチラコサン酸、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、トリアコンタン酸、等の脂肪酸、等が挙げられる。
【0123】
前記深共晶溶媒の含有量は、光波長変換要素100質量部に対して、通常10質量部以上であり、好ましくは30質量部以上である。
【0124】
本発明の光波長変換要素は、通常公知の技術を用いて有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を深共晶溶媒中に溶解および/または分散させて溶液または分散液を得る方法によって製造することができる。前記方法において、必要に応じて、通常公知の技術を用いてその他の添加剤を深共晶溶媒中で有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)に混合して、溶液または分散液を得てもよい。また、前記方法において、必要に応じて、超音波分散機、ビーズミル、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ロールミル、マイクロ波分散機等の公知の分散機を単独または組み合わせて使用し、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を微粉砕、微分散して、溶液または分散液を得てもよい。
【0125】
また、本発明の光波長変換要素を製造する他の方法として、例えば、まず、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を揮発性有機溶媒中に溶解および/または分散させ、次に、得られた溶液および/または分散体を深共晶溶媒と撹拌混合して目視上均質かつ透明な溶液および/または分散体を生成させ、さらにその溶液および/または分散体から減圧下でこの揮発性有機溶媒を痕跡量以下まで除去する方法を用いることもできる。この方法は、均質かつ透明に混和した状態の光波長変換要素を得られやすく、安定性や光波長変換効率の高い光波長変換要素を得ることができるので、本発明の光波長変換要素を得る方法としてより好ましい。
【0126】
前記方法に用いる揮発性有機溶媒は、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解および/または分散させることができ、かつ深共晶溶媒と均質かつ透明に混和でき、さらに減圧下で痕跡量程度まで除去できるような揮発性を有する有機溶媒であれば、特に制限はない。ここで、「痕跡量」とは、光吸収スペクトルの測定に基づいて深共晶溶媒中に混在する揮発性有機溶媒をノイズレベル以下でしか検出できない量とする。前記揮発性有機溶媒は、有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解させることができる揮発性有機溶媒であることが好ましい。前記揮発性有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系溶媒等を用いることができる。有機光増感分子(A)および有機発光分子(B)を溶解させることができる揮発性有機溶媒を使用する場合、その揮発性有機溶媒は有機光増感分子および有機発光分子の溶解性に合わせて適宜選択できる。
【0127】
前記撹拌混合の手段としては、超音波、バブリング、撹拌機、液送ポンプ、粉砕機、ビーズミル、ホモジナイザー、湿式ジェットミル、マイクロ波等の公知の技術または装置を用いることができる。これらの手段は、1種を使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0128】
なお、上記の実用上高い安全性を有するイオン液体や深共晶溶媒、さらには水等に対するより高い溶解性を考慮すると、前記式(1)~式(6)で表される有機光増感分子(A)、および前記式(7)~式(11)で表される有機発光分子(B)としては、両者のいずれか一つの置換基が親水性官能基であることが好ましく、当該の親水性官能基としては例えば、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、スルフェン酸塩基、スルフィン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオカルボン酸、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基、等の酸性基;これらの酸性基で置換されたアルキル基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)またはアリール基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。);ヘテロ原子含有環状炭化水素カチオン、スルホン酸塩基等を置換基とするアルキル基またはアルコキシ基、アリール基、等が挙げられる。
【0129】
さらに、前記の式(1)~式(6)におけるR~R21のいずれか1つは、リン酸塩基、ホスホン酸塩基、ホスフィン酸塩基、チオカルボン酸塩基、硫酸塩基、スルフェン酸塩基、スルフィン酸塩基、スルホン酸塩基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオカルボン酸、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基、等の酸性基、または、これらの酸性基で置換されたアルキル基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)、アルコキシ基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)またはアリール基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)である親水性官能基であることが好ましく、硫酸基、スルフェン酸基、スルフィン酸基、スルホン酸基がより好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。
【0130】
また、前記の式(7)~式(11)におけるR22~R52のいずれか1つは、ヘテロ原子含有環状炭化水素カチオン(ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子等が挙げられ、窒素原子が好ましく、具体例としてはイミダゾール、イミダゾリン、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、モルホリン、チアジン等、またはこれらの置換基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)等を有する誘導体が挙げられる。)、スルホン酸基(化学式「-SOM」で表され、Mは水素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム等が挙げられるが、カリウムが好ましい。)等を置換基とするアルキル基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)、アルコキシ基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)またはアリール基(例えば、前記一般式(6)中のR11~R18の例示のものが挙げられる。)、から選ばれる親水性官能基であることが好ましく、窒素含有化合物カチオン、スルホン酸基等を置換基とするアルコキシ基であることがより好ましく、置換または無置換のイミダゾール基またはスルホン酸カリウム塩基を置換基とするアルコキシ基であることがより好ましい。
【0131】
なお、有機発光分子(B)が置換または無置換のイミダゾール基を有する場合、対アニオンと共に塩を構成するのが好ましく、例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲンイオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン([N(SOCF)、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオン([C(SOCF)、ヘキサフルオロホスフェートアニオン([PF)、トリス(ペンタフルオロエチル)、トリフルオロホスフェートアニオン([(CPF)等のフッ素含有化合物アニオン;[BR61626364(このアニオン構造式において、R61、R62、R63、およびR64はそれぞれ独立して、-(CHCH(ここでnは1~9の整数を表す)で表される基、すなわち炭素数1~9の直鎖アルキル基、または、アリール基を表す)で表されるホウ素含有化合物アニオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン([N(FSO])等が挙げられ、塩素等のハロゲンイオンやビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドアニオン([N(SOCF)がより好ましい。
【0132】
さらに、本発明の光波長変換要素において、必要に応じて、有機光増感分子(A)、有機発光分子(B)、イオン液体や深共晶溶媒等の溶媒以外の成分として、取り扱い時の利便性等を改善するために、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0133】
本発明の光波長変換要素は、その水分量が、1質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましく、0.001質量%以下であることが最も好ましい。これにより、より高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0134】
また、本発明の光波長変換要素は、その酸素濃度が、100質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることがより好ましく、1質量ppm以下であることがさらに好ましく、0.1質量ppm以下であることが最も好ましい。これにより、より高い光波長変換効率を有する光波長変換要素を実現できる。
【0135】
本発明の光波長変換要素は、目視上均質かつ透明な溶液および/または分散体であり、さらに安定性も良好である。本発明の光波長変換要素は、太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、光アップコンバージョンフィルター等に用いることができる。
【0136】
本発明の太陽電池は、本発明の光波長変換要素を用いたものである。
【0137】
本発明の太陽電池の一例を、図1に基づいて説明する。本発明の一例に係る太陽電池は、図1に示すように、光電変換層(太陽電池層)1と、光電変換層1における光入射側の面上に配設された短冊状の受光面電極7と、光電変換層1における光入射側の面の裏面上に積層された透明背面電極2と、透明背面電極2における光入射側の面の裏面上に積層された透明絶縁膜3と、透明絶縁膜3における光入射側の面の裏面上に積層された、本発明の光波長変換要素を用いたアップコンバージョン層4と、アップコンバージョン層4における光入射側の面の裏面上に積層された光反射膜5とを備えている。
【0138】
光電変換層1としては、特に限定されるものではなく、色素増感太陽電池や有機薄膜太陽電池等の有機系光電変換層、化合物半導体系光電変換層、シリコン系光電変換層等を用いることができる。
【0139】
受光面電極7および光反射膜5は、Ag、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ni、Cu等の金属で形成することができる。透明背面電極2は、ITO(酸化インジウムスズ)、SnO、ZnO等の透明導電体で形成することができる。透明絶縁膜3は、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、およびポリエーテルニトリル等の樹脂で形成することができる。
【0140】
アップコンバージョン層4は、後述する本発明の光アップコンバージョンフィルターと同様に、セルと、セル中に封入された光波長変換要素とで形成されていてもよく、光波長変換要素のみで形成されていてもよい。アップコンバージョン層4が光波長変換要素のみで形成されている場合、透明絶縁膜3、アップコンバージョン層4、および光反射膜5をそれらの周縁で封止樹脂等の封止部材により封止すればよい。
【0141】
図1の構成では、特に有機光増感分子(A)が500~700nmの範囲内に吸収極大波長を有する場合等に、太陽からの入射光6を、アップコンバージョン層4がアップコンバートする(より短い波長の光に変換する)ことにより、光電変換層1が発電に使用できる波長範囲の光の強度を高めて、太陽電池の発電効率をさらに高めることができる。
【0142】
なお、図1の構成では、アップコンバージョン層4を透明絶縁膜3と光反射膜5との間に配置していたが、アップコンバージョン層4の配置位置を、受光面電極7における光入射側等のような他の配置位置に変更してもよい。その場合には、アップコンバージョン層4と受光面電極7との間に透明絶縁膜を設けてもよい。
【0143】
また、図1の太陽電池において、受光面電極7を、光電変換層1における光入射側の面の全体に形成された透明電極に置き換えてもよい。また、図1の太陽電池において、透明絶縁膜3を省略してもよい。ただし、アップコンバージョン層4が光波長変換要素のみで形成されている場合には、光波長変換要素と透明背面電極2との接触を避けるために透明絶縁膜3を光波長変換要素と透明背面電極2との間に配置することが好ましい。また、図1の太陽電池において、アップコンバージョン層4の配置位置を受光面電極7における光入射側に変更し、かつ透明絶縁膜3を省略した場合には、透明背面電極2を光反射電極に置き換えて光反射膜5を省略してもよい。
【0144】
本発明の光触媒は、本発明の光波長変換要素を用いたものである。例えば、図1の太陽電池における受光面電極7、光電変換層1、透明背面電極2、および透明絶縁膜3に代えて、光触媒層を配置することにより、光触媒を実現することができる。
【0145】
本発明の一例に係る光触媒は、図2に示すように、光触媒が添加された水10(光触媒層)が収容され、光触媒が添加された水10以外の空間にガス9が充填されたガラスチャンネル8と、ガラスチャンネル8の側面上および底面上に形成されたアップコンバージョン層4と、アップコンバージョン層4の外側の面上に形成された光反射膜5と、光反射膜5を支持するために光反射膜5の外側の面上に形成された機械的支持体11とを備えている。
【0146】
また、図2の構成では、特に有機光増感分子(A)が500~700nmの範囲内に吸収極大波長を有する場合等に、太陽からの入射光6を、アップコンバージョン層4がアップコンバートする(より短い波長の光に変換する)ことにより、水10に添加された光触媒が触媒反応に使用できる波長範囲の光の強度を高めて、光触媒の変換効率をさらに高めることができる。
【0147】
本発明の光触媒型水素・酸素発生装置は、本発明の光波長変換要素を用いたものである。例えば、図1の太陽電池における受光面電極7、光電変換層1、透明背面電極2、および透明絶縁膜3に代えて、光触媒層を配置することにより、光触媒型水素・酸素発生装置を実現することができる。
【0148】
また、本発明の光アップコンバージョンフィルターは、光をより短い波長の光に変換する光アップコンバージョンフィルターであって、前記光波長変換要素と、セルとを備え、前記光波長変換要素が前記セル中に封入されている。
【0149】
前記セルとしては、光を透過しうるセルであれば特に限定されるものではないが、例えば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等からなる2枚のガラス板を重ね合わせてそれらの周縁部を融着接合した構成のセルを用いることができる。
【0150】
前記光波長変換要素は、その酸素濃度が、100質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることが好ましく、10質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることがより好ましく、1質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることがさらに好ましく、0.1質量ppm以下の状態で前記セル中に封入されていることが最も好ましい。
【0151】
前記光アップコンバージョンフィルターは、例えば、光波長変換要素をセル中に注入し、必要に応じてその酸素濃度が100質量ppm以下となるまで脱酸素処理を行った後、セルを封止する方法によって得ることができる。前記脱酸素処理の方法としては、例えば、ロータリーポンプやターボ分子ポンプ等の真空ポンプを用いて光波長変換要素を減圧処理する方法、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを光波長変換要素中にバブリングさせる方法、光波長変換要素を凍結させた後で真空ポンプを用いて減圧処理(真空脱気)する方法(凍結真空脱気法)等が挙げられる。
【0152】
前記光アップコンバージョンフィルターは、前記太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置のアップコンバージョン層4として利用することができる。
【0153】
なお、本発明の光波長変換要素を用いた太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、光アップコンバージョンフィルター等の物品においては、光波長変換要素の酸素濃度を低減するために酸素ゲッターを共存させてもよい。また、本発明の光波長変換要素を用いた太陽電池、光触媒、光触媒型水素・酸素発生装置、光アップコンバージョンフィルター等の物品においては、光波長変換要素の酸素濃度を低減するために水吸収材料を共存させてもよい。
【実施例
【0154】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例中「部」は質量部、溶液の説明における「%」は質量%である。また、イオン液体の作製例1及び2、本発明化合物の水に対する溶解度の測定で用いられた超純水は、超純水製造装置(製造元:Merck KGaA、型番:Direct-Q(登録商標)UV3)で製造した。
【0155】
[合成例1]
〔有機光増感分子(A)のN-メチルアクリドン-3-スルホン酸(以下、UC-D01と称する)の合成〕
非特許文献12(Analytica Chemica Acta,512(2004)347.)に記載の合成方法に従って作製した。
【0156】
【化12】
すなわち、200ccの還流管付フラスコに無水エタノール50部と水酸化カリウム13部を加え、室温下で撹拌して均一の混合液とした後、上記の化合物(1-1)である9(10H)-アクリドン(東京化成工業品、CAS番号578-95-0)3.1部を加えて加熱し、2時間還流し、加熱したままエタノールを蒸発留去した。得られた蒸発残留物にN,N-ジメチルホルムアミド(以降、DMFと略記する。)50部を添加し、そのまま還流温度下で2時間反応した。ヨードメタン(東京化成工業品、CAS番号74-88-4)3.5部を徐々に加え、10分間撹拌した後、そのままDMF溶液を水41部に注ぎ入れながら冷却し、析出した黄緑色固体を濾別、冷水10部を用いて濾過物を洗浄した。得られた生成物をエタノールで再結晶し、70℃下オーブン乾燥後、黄色針状結晶の上記の化合物(1-2)である10-メチルアクリドン3.2部(収率73%、融点201~203℃)を得た。
【0157】
【化13】
25ccビーカー中に、上記の化合物(1-2)である、10-メチルアクリドン1.1部、98%硫酸10部を加えた後、温度を100℃に昇温し、そのまま3分間攪拌した。冷却後、溶液を氷水中に浸漬し、水酸化ナトリウム水溶液(濃度2.5モル/L)を加えて固体を析出させ、濾過分取した。得られた固形分をさらに石油で再結晶により精製した。次いで、固体を80℃でオーブン乾燥し、上記の化合物(1-3)である10-メチル-3-スルホン酸アクリドン(UC-D01)1部(収率63%)を得た。
【0158】
[合成例2]
〔有機発光分子(B)の3-(ナフチル-2-イルオキシ)プロパン-スルホン酸カリウム(UC-E01)の合成〕
200ccの還流管付フラスコ中に、2-ナフトール(東京化成工業品、CAS番号135-19-3)7部に、炭酸カリウム8.5部、プロパンスルトン(東京化成工業品、CAS番号1121-3-5)7.5部及びイソプロパノール100部を混合し、還流温度下で1時間撹拌した。得られた反応液に水70部を添加、70℃で加熱撹拌して析出固体を完溶させた。室温まで冷却後、析出した固形分を濾過分取した。得られた固形分を水で十分に洗浄後、80℃でオーブン乾燥し、化合物UC-E01(7.9部、収率53%)を得た。
【0159】
[合成例3]
〔有機発光分子(B)の1,2-ジメチル-3-(ナフタレン-2-イルメチル)-1H-イミダゾール-3-イウムクロライド([ImNaph][Cl]、以下よりUC-E02と称する)の合成〕
300cc還流管付フラスコ中に1,2-ジメチルイミダゾール(東京化成工業品、CAS番号1739-84-0)3.8部、2-(ブロモメチル)ナフタレン(東京化成工業品、CAS番号939-26-4)8.8部及びアセトニトリル200部を混合し、還流温度下で7時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、エバポレーターで有機溶媒を減圧留去することで白色固体を得た。得られた固体に水100部とダイヤイオンSA10A(三菱化学品)100部を加え、室温で5時間撹拌した。得られた混合液からダイヤイオンSA10Aを濾別し、エバポレーターにて水を減圧留去することにより、化合物UC-E02(5.6部、収率88%)を得た。
【0160】
〔イオン液体の作製例1〕
非水混和性のイオン液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:174899-82-2;以下[Cmim][NTf]と称する)の市販品(製造元:Ionic Liquids Technologies GmbH)の市販品1mlを内容量約8mlのガラスバイアル瓶にとり、活性炭30mgを加え、真空乾燥オーブン(製造元:ヤマト科学株式会社、型番:ADP200)中で120℃にて3時間真空乾燥した。真空乾燥オーブンからガラスバイアル瓶を取り出した後、遠心分離を行い、活性炭を殆ど含まない上澄み部分を取得した。取得した上澄み部分を、孔径約0.2μmの使い捨てシリンジフィルター(製造元:Merck KGaA、型番:IC Millex(登録商標)-LG)に通して残存する活性炭を除去し、内容量約20mlのガラスバイアル瓶内に注いだ。ガラスバイアル瓶の内容物にその9倍の体積の超純水を加え、汎用のマグネチックスターラーおよび撹拌子を用いて5分間撹拌し数分間静置した後に水層を除去する、という洗浄操作を、3回繰り返した。3回目の洗浄操作で除去された水層のpH(洗浄後の水のpH)を測定したところ、水層のpHは6.4となった。
【0161】
最後に、ガラスバイアル瓶内に残った水層をガラス製パスツールピペット(製造元:Fisher Scientific Inc.、製品番号:5-5351-01)で可能な限り取り除いた。ガラスバイアル瓶の内容物(イオン液体層)を強制対流乾燥オーブン(販売元:アドバンテック東洋株式会社、製造元:東洋製作所、型番:DRM320DB)にて70℃で一晩乾燥した後、さらに真空乾燥オーブン(先の真空乾燥に使用したものと同じ)にて120℃で3時間真空乾燥し、イオン液体#1が得られた。
【0162】
〔イオン液体の作製例2〕
また、前記のイオン液体の作製例1で用いたイオン液体#1の市販品に代えて、すべて非水混和性のイオン液体である、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(CAS番号:377739-43-0;以下[Cmim][FAP]と称する)の市販品(製造元:Merck KGaA)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(CAS番号:223437-11-4;以下[Cmpyr][NTf]と称する)の市販品(製造元:Merck KGaA)、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチル(CAS番号:350493-08-2;以下[Cdmim][NTf]と称する)の市販品(製造元:Ionic Liquids Technologies GmbH)、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(CAS番号:851856-47-8;以下[Cmpyr][FAP]と称する)の市販品(製造元:Merck KGaA)、をそれぞれ用いる以外は、イオン液体の作製例1と同様の処理を行うことにより、イオン液体#2、イオン液体#3、イオン液体#4、イオン液体#5を得た。
【0163】
前記で得られたイオン液体#1~#5のそれぞれの一部に対して、その9倍の体積の超純水を加え、汎用のマグネチックスターラーおよび撹拌子を用いて5分間撹拌し数分間静置した後、水層を取得し、水層のpH(洗浄後の水のpH)を測定したところ、何れの場合にも水層のpHは5より大きかった。
【0164】
(イオン液体の粘度の測定)
本実施例で使用する、イオン液体の作製例1及び2で作製したイオン液体である、イオン液体#1、イオン液体#2、イオン液体#3、イオン液体#4、イオン液体#5の粘度を、コーン/プレート型粘度計(製造元:Brookfield Engineering Laboratories,Inc.、型番:R/S Plus)を用いて22℃で測定した。その結果、イオン液体#1の粘度は36.6mPa・s、イオン液体#2の粘度は65.8mPa・s、イオン液体#3の粘度は89.5mPa・s、イオン液体#4の粘度は120mPa・s、イオン液体#5の粘度は256mPa・sであった。
【0165】
〔実施例1〕(有機増感分子UC-D01のイオン液体#-3の溶解液の作製)
室温下で、内容積約8mlのガラスバイアル瓶内に、前記の非水混和性のイオン液体#-3を400μl入れ、次に有機光増感分子(A)としてのUC-D01をトルエン中に濃度4×10-3Mで溶解させたストック溶液を約20μl加えたところ、目視で不均質な混合液体が得られた。この混合液体に対し、特許文献1に記載した方法と同様に、ガラス製パスツールピペット(製造元:Fisher Scientific Inc.、製品番号:5-5351-01)を用いて「吸い・吐き」を繰り返し行うことにより、目視で均質かつ透明な一層の混合液を得た。そしてその直後、そのガラスバイアル瓶に蓋をして、その混合液を超音波バスソニケーター(製造元:Branson Ultrasonics Corp.、型番:Model3510)にて約7分間撹拌および均質化処理を行った。続いて、ガラスバイアル瓶の蓋を除き、ガラスバイアル瓶を真空容器内に入れ、室温下でスクロールポンプ(製造元:エドワーズ株式会社、型番:XDS35i、設計到達圧力:1Pa以下)を用いて約1時間真空引きを行った。その結果、揮発分であるトルエンは痕跡量以下まで除去され、目視上均質かつ透明な一層の溶液および/または分散体(液体)を増感分子濃度5.0×10-4Mで溶解液を作製した。
【0166】
〔実施例2〕(有機発光分子UC-E02のイオン液体#-3の溶解液の作製)
室温下で、内容積約8mlのガラスバイアル瓶内に、前記の非水混和性のイオン液体#-3を400μl入れ、次に有機発光分子(B)としてのUC-E02をトルエン中に濃度4×10-3Mで溶解させたストック溶液を約20μl加えたところ、目視で不均質な混合液体が得られた。この混合液体に対し、特許文献1に記載した方法と同様に、ガラス製パスツールピペット(製造元:Fisher Scientific Inc.、製品番号:5-5351-01)を用いて「吸い・吐き」を繰り返し行うことにより、目視で均質かつ透明な一層の混合液を得た。そしてその直後、そのガラスバイアル瓶に蓋をして、その混合液を超音波バスソニケーター(製造元:Branson Ultrasonics Corp.、型番:Model3510)にて約7分間撹拌および均質化処理を行った。続いて、ガラスバイアル瓶の蓋を除き、ガラスバイアル瓶を真空容器内に入れ、室温下でスクロールポンプ(製造元:エドワーズ株式会社、型番:XDS35i、設計到達圧力:1Pa以下)を用いて約1時間真空引きを行った。その結果、揮発分であるトルエンは痕跡量以下まで除去され、目視上均質かつ透明な一層の溶液および/または分散体(液体)を発光分子濃度5.0×10-4Mで溶解液を作製した。
【0167】
〔比較例1〕
前記の実施例1で用いた有機光増感分子(A)を10-メチル-9-アクリドン(東京化成工業品、CAS番号:719-54-0、以下UC-D02と称す)に変更する以外は、実施例1と同じ手順で比較用の光波長変換要素としての目視上均質かつ透明な液体を増感分子濃度5.0×10-4Mで作製した。
【0168】
〔比較例2〕
前記の実施例2で用いた有機発光分子(B)を2,6-ジ-t-ブチルナフタレン(東京化成工業品、CAS番号:3905-64-4、以下UC-E03と称す)に変更する以外は、実施例1と同じ手順で比較用の光波長変換要素としての目視上均質かつ透明な液体を光増感分子濃度5.0×10-4Mで作製した。
【0169】
〔実施例3〕(吸光度スペクトルの評価)
前記の実施例1及び比較例1の其々の液体の一部を、窒素ガスで満たされたグローブボックス中で、内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ約25mmの片端閉じ正方形石英管内にその全長の3/4程度、注入し、石英管の開口端を鉛ハンダで封止して、当該石英管に密閉された2つの評価用試料を得た。
【0170】
これらの評価用試料を専用の試料ホルダーに固定し、紫外可視近赤外分光光度計(製造元:島津製作所、型番:UV-3600、以下の実施例でも同様)により光吸収スペクトル(光路長=1mm)を測定した結果を図3に示す。その結果、有機光増感分子(A)としてのUC-D02由来の最大吸収極大波長が401nmであるのに対して、本発明に用いられるUC-D01も同じで変化がなく、驚くべくことに同等の光吸収特性を有することを見出した。
【0171】
〔実施例4〕(イオン液体からの溶質分子の揮発脱離に関する評価試験)
前記の実施例1及び比較例1、実施例2及び比較例2で得られた4つの試料のガラスバイアル瓶を真空容器内に入れ、ターボ分子ポンプ(製造元:ファイファー・バキューム、製品番号:HiCube80・DN40)を用いて室温下48時間真空(~10-4)排気し、排気前と排気後の光吸収スペクトルを前記の実施例3と同じ条件で測定して吸光度の変化を比較した。測定した結果を図4に示す。その結果、従来より用いられた化合物、図4中の(a)及び(b)の吸光度は真空排気後に減少した。一方、本発明の光波長変換素子に用いられる化合物、図4中の(c)及び(d)の吸光度は真空排気前後で良好に一致しており、イオン液体からの脱離が極めて抑制されることが判明した。
【0172】
〔実施例5〕(光波長変換要素の作製-1)
洗浄済みのガラス製のバイアル瓶(内容量15mL)内に、有機光増感分子(A)としてのUC-D01のメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10-3M、試料中の最終濃度:1.2×10-4M)48μLと、有機発光分子(B)としてのUC-E02のメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10-3M、試料中の最終濃度:5.0×10-3M)1000μLとをそれぞれ分取した。
【0173】
次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプにより10分間真空引きした。これにより、トルエンが揮発し、バイアル瓶の内壁面に有機光増感分子UC-D01及び有機発光分子UC-E02の微粉末が析出した。その後、そのバイアル瓶を大気中に取り出した。
【0174】
次いで、そのバイアル瓶内にイオン液体#5を400μL分取した。そのバイアル瓶をホットスターラーに載せ、約10分間、撹拌子で撹拌しながら80℃で加熱した。有機光増感分子UC-D01及び有機発光分子UC-E02の微粉末がイオン液体#5に溶解して透明な液体となっていることを目視で確認した。そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプ(先に使用したものと同じ)により2時間真空引き(脱酸素)することにより、光波長変換要素を得た。
【0175】
光波長変換要素が入ったバイアル瓶をアルゴン雰囲気のグルーブボックスの内部に移し、アルゴン雰囲気中で、光波長変換要素を石英管(内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ25mmの正方形断面形状の片端閉じ管)に注入し、開口部をハンダで封止することにより、光波長変換要素の測定用試料を得た。測定用試料をグローボックスから取り出し、光吸収スペクトル及びアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。
【0176】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料に対して、励起光として、ダイオードレーザーから出射させた連続波レーザー光(波長:405nm、出力パワー:1.2W/cm(6mW)、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射した。そして、測定用試料からの発光を、入射励起光に対する直角方向に配置された集光レンズにより平行光とした後、その平行光をもう一枚のレンズによって分光器の入口スリットに再集光し、分光器の背後に設置された電子冷却シリコンCCD(Charge Coupled Device)検出器によって発光(アップコンバージョン発光)のスペクトルを測定した。このようにして測定されたアップコンバージョン発光スペクトルに対し、分光器内に搭載された回折格子の回折効率波長依存性、および電子冷却シリコンCCD検出器の検出感度波長依存性によるスペクトル形状の歪みを補正した。測定された補正済みの測定用試料のアップコンバージョン(図中の縦軸ラベルでは「UC」と略記する)発光スペクトルを図5に示す。
【0177】
測定の結果、可視域波長405nmの入射光から紫外域波長320~370nmのアップコンバージョン発光スペクトルが確認された事から、イオン液体からの溶質(有機光増感分子及び有機発光分子)の脱離が抑制された光波長変換素子が得られた事が判明した。
【0178】
〔実施例6〕(光波長変換要素の作製-2)
イオン液体の作製例2で得られたイオン液体であるイオン液体#5に代えて、イオン液体の作製例1で作製したイオン液#1、及びイオン液体の作製例2で得られたイオン液体#2、イオン液体#3、イオン液体#4、をそれぞれ用いる以外は、実施例4と同じ手順でさらに4種類の光波長変換要素を作製した。
【0179】
(光波長変換要素のアップコンバージョン発光強度の測定)
上記の5種類の光波長変換要素を用いて、実施例4と同じ手順でアップコンバージョン発光評価用試料を作製し、続いて同じ条件でアップコンバージョン発光強度を測定した。
【0180】
図6に各試料のアップコンバージョン量子効率Φucと各種イオン液体の粘度ηとの関係を示す。UC量子効率Φucは非特許文献13(J.N.Demas et al.,J.Phys.Chem.75(1971)8.)に記載の式(14)を用いて導出し、最大値が1となるように補正した。作製された5種類のアップコンバージョン発光評価用試料のアップコンバージョン効率へのイオン液体の粘度の影響を検討した。
【0181】
なお、これら5種類のアップコンバージョン発光評価用試料のアップコンバージョン発光強度の測定は、同じ光学測定条件の下で行い、かつ、本実施例における測定はすべて、22±1℃の環境温度で行った。そのため、これら5種類のアップコンバージョン発光評価用試料の間では、アップコンバージョン発光強度の測定結果に関して定量的な相互比較が可能となっている。
【0182】
図6のグラフに、イオン液体であるイオン液体#1、イオン液体#2、イオン液体#3、イオン液体#4、イオン液体#5の22℃における粘度を横軸に、全てのアップコンバージョン発光評価用試料のアップコンバージョン発光強度を縦軸に示す。図6中では、各アップコンバージョン発光評価用試料のプロットをその作製に使用したイオン液体の種類で示している。
【0183】
図6の結果から、光波長変換要素に使用されているイオン液体の粘度が高くなるにしたがって、光波長変換要素のアップコンバージョン発光強度(これはアップコンバージョン量子効率に比例する)は非特許文献5では可視域波長の光のアップコンバージョン発光に関する報告に同じ傾向で、紫外域波長の光のアップコンバージョン発光でも上昇することが判明した。特に、イオン液体#3[Cmpyr][FAP]において最も高いアップコンバージョン量子効率を見出した。
【0184】
〔実施例7〕(光波長変換要素の作製-3)
洗浄済みのガラス製のバイアル瓶(内容量15mL)内に、有機光増感分子(A)としてのUC-D01のメタノール溶液(本溶液中の濃度1.0×10-3M、試料中の最終濃度:1.2×10-4M)48μLと、有機発光分子(B)としてのUC-E02のメタノール溶液(本溶液中の濃度2.0×10-3M)の適当量を段階的に分取し、有機発光分子(B)の試料中の最終濃度を5.0×10-3M~2.5×10-2Mまで5段階に分取した。
【0185】
次いで、そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプにより10分間真空引きした。これにより、トルエンが揮発し、バイアル瓶の内壁面に有機光増感分子UC-D01及び有機発光分子UC-E02の微粉末が析出した。その後、そのバイアル瓶を大気中に取り出した。
【0186】
次いで、そのバイアル瓶内にイオン液体#3を400μL分取した。そのバイアル瓶をホットスターラーに載せ、約10分間、撹拌子で撹拌しながら80℃で加熱した。有機光増感分子UC-D01及び有機発光分子UC-E02の微粉末がイオン液体#3に溶解して透明な液体となっていることを目視で確認した。そのバイアル瓶を真空容器内に入れ、スクロールポンプ(先に使用したものと同じ)により2時間真空引き(脱酸素)することにより、5種類の光波長変換要素を得た。
【0187】
これら5種類の光波長変換要素が入ったバイアル瓶をアルゴン雰囲気のグルーブボックスの内部に移し、アルゴン雰囲気中で、光波長変換要素を石英管(内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ25mmの正方形断面形状の片端閉じ管)に注入し、開口部をハンダで封止することにより、光波長変換要素の測定用試料を得た。測定用試料をグローボックスから取り出し、光吸収スペクトル及びアップコンバージョン発光スペクトルの測定を行った。
【0188】
測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料に対して、励起光として、ダイオードレーザーから出射させた連続波レーザー光(波長:405nm、出力パワー:1.2W/cm(6mW)、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射した。そして、測定用試料からの発光を、入射励起光に対する直角方向に配置された集光レンズにより平行光とした後、その平行光をもう一枚のレンズによって分光器の入口スリットに再集光し、分光器の背後に設置された電子冷却シリコンCCD(Charge Coupled Device)検出器によって発光(アップコンバージョン発光)のスペクトルを測定した。このようにして測定されたアップコンバージョン発光スペクトルに対し、分光器内に搭載された回折格子の回折効率波長依存性、および電子冷却シリコンCCD検出器の検出感度波長依存性によるスペクトル形状の歪みを補正した。測定された補正済みの測定用試料のアップコンバージョン(図中では「UC」と略記する)発光スペクトルを図7に示す。
【0189】
測定の結果、図7からも明らかな通り、アップコンバージョン量子効率Φucは有機発光分子(B)の濃度に対して極大値を示す特性を有することから、光波長変換素子に含まれる有機発光分子(B)の最適な含有量を選択することにより、実用性により優れた光波長変換素子を容易に作製することができることが判明した。
【0190】
〔実施例8〕(有機光増感分子(A)及び有機発光分子(B)の超純水への溶解度試験)
上記の実施例1に用いられた本発明の有機光増感分子UC-D01、比較例1に用いられた比較化合物UC-D02、及び本発明の有機発光分子UC-E01、UC-E02、比較化合物として2,6-ビス(ナフタレン-2-イルメトキシ)ナフタレン(以下、UC-E04と称する)の水に対する溶解性を確認した。得られた水に対する溶解度[M]の測定値は下表1の通りである。
【0191】
【表1】
【0192】
〔実施例9〕(光耐性評価用の有機増感分子UC-D01の調製-1)
不活性なアルゴンガスで満たされたグローブボックス中で、室温下、内容積約8mlのガラスバイアル瓶内に、超純水(pH6.0)を3.5ml入れ、ガラス製パスツールピペット(製造元:Fisher ScientificInc.、製品番号:5-5351-01)を通して30分間アルゴンガスを吹き込みバブリングして超純水の液性をpH8.6に調製した。次に有機光増感分子(A)としてのUC-D01を得られた水中に濃度5×10-3Mで溶解させ、さらに1時間アルゴンガスを吹き込みながらバブリングを行い、目視で均質かつ透明な一層の混合液を得た。そしてその直後、内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ約25mmの片端閉じ正方形石英管内にその全長の3/4程度、注入し、石英管の開口端を鉛ハンダで封止して、当該石英管に密閉されたアップコンバージョン発光評価用試料を得た。
【0193】
〔実施例10〕(光耐性評価用の有機増感分子UC-D01の調製-2)
前記の実施例8と同じ操作により液性をpH8.6に調製した超純水3.5mlにNaOHを加え、液性をpH10.7に調製した。次に有機光増感分子(A)としてのUC-D01を得られた水中に濃度5×10-3Mで溶解させ、さらに1時間アルゴンガスを吹き込みながらバブリングを行い、目視で均質かつ透明な一層の混合液を得た。そしてその直後、内寸1mm×1mm、外寸2mm×2mm、長さ約25mmの片端閉じ正方形石英管内にその全長の3/4程度、注入し、石英管の開口端を鉛ハンダで封止して、当該石英管に密閉されたアップコンバージョン発光評価用試料を得た。
【0194】
〔比較例3〕(光耐性評価用の有機増感分子UC-D01の調製-3)
前記の実施例8の超純水をイオン液体の作製例2で得られたイオン液体#3に変更する以外は、実施例8と同じ手順により濃度5×10-3Mの有機光増感分子UC-D01のアップコンバージョン発光評価用試料を得た。
【0195】
〔実施例11〕(超純水中とイオン液体中での有機増感分子UC-D01の光耐性評価)
前記の実施例8および9、比較例3の3つの測定用試料のアップコンバージョン発光スペクトルは、以下のようにして測定した。すなわち、測定用試料に対して、励起光として、ダイオードレーザーから出射させた連続波レーザー光(波長:405nm、出力パワー:0.4W/cm(2mW)、スポット径:0.8mm)を測定用試料に照射した。そして、測定用試料からの発光を、入射励起光に対する直角方向に配置された集光レンズにより平行光とした後、その平行光をもう一枚のレンズによって分光器の入口スリットに再集光し、分光器の背後に設置された電子冷却シリコンCCD(Charge Coupled Device)検出器によって発光(アップコンバージョン発光)のスペクトルを測定した。このようにして測定されたアップコンバージョン発光スペクトルに対し、分光器内に搭載された回折格子の回折効率波長依存性、および電子冷却シリコンCCD検出器の検出感度波長依存性によるスペクトル形状の歪みを補正した。測定された補正済みの測定用試料のアップコンバージョン(図中では「UC」と略記する)発光スペクトルを図8に示す。
【0196】
測定の結果、図8からも明らかな通り、本発明に用いられる親水性置換基を有する有機光増感分子(A)のアップコンバージョン発光強度は、超純水等を溶媒としても経時的にも安定しており、実用性に優れた光波長変換素子を容易に作製することができる可能性が認められる。
【符号の説明】
【0197】
1 太陽電池層
2 透明背面電極
3 透明絶縁膜
4 アップコンバージョン層
5 光反射膜
7 受光面電極
8 ガラスチャネル
9 ガス
10 光触媒が添加された水
11 機械的支持体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8