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特許7054109高耐粉状化性の裏込めグラウトとその裏込めグラウト材
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  • 特許-高耐粉状化性の裏込めグラウトとその裏込めグラウト材 図1
  • 特許-高耐粉状化性の裏込めグラウトとその裏込めグラウト材 図2
  • 特許-高耐粉状化性の裏込めグラウトとその裏込めグラウト材 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】高耐粉状化性の裏込めグラウトとその裏込めグラウト材
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220406BHJP
   C04B 16/06 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 24/24 20060101ALI20220406BHJP
   E01C 7/14 20060101ALI20220406BHJP
   C04B 111/70 20060101ALN20220406BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B16/06 B
C04B16/06 A
C04B16/06 E
C04B24/24 A
E01C7/14
C04B111:70
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018069253
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019011233
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2017128096
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112196
【氏名又は名称】株式会社ピーエス三菱
(74)【代理人】
【識別番号】100088719
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 博史
(72)【発明者】
【氏名】齊藤恵二
(72)【発明者】
【氏名】木元大輔
(72)【発明者】
【氏名】徳永健二
(72)【発明者】
【氏名】伊豆 太
(72)【発明者】
【氏名】諸橋 克敏
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 美子
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-144103(JP,A)
【文献】特開2007-063103(JP,A)
【文献】特開2008-050213(JP,A)
【文献】特開2008-274580(JP,A)
【文献】特開平05-270880(JP,A)
【文献】特開2009-173466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00-28/36
E01C 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースグラウト材、速硬材、短繊維、減水剤、および凝結調整剤を含み、該ベースグラウト材はセメントからなり、あるいはセメントと共にセメントの0.01~0.25質量%の水中不分離剤を含み、あるいはセメントおよび上記水中不分離剤と共にセメントの0.01質量%の消泡剤を含み、該ベースグラウト材に対して、速硬材の含有量が1~6質量%、減水剤の含有量が0.05~1.0質量%、凝結調整剤の含有量が0.0~3.0質量%であり、短繊維の含有量が裏込めグラウトの体積に対して0.01~0.5体積%になる量であって、水グラウト材比(W/B)35~65%で練り混ぜた裏込めグラウトにおいて、JA漏斗試験の流下時間が26秒以下であって、ブリーディングが発生せず、水和硬化後の材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であることを特徴とする裏込めグラウト材。
【請求項2】
短繊維が繊維径12~40μmおよび繊維長2~6mmのポリアミド繊維またはポリビニルアルコール繊維である請求項1に記載する裏込めグラウト材。
【請求項3】
ベースグラウト材に対し再乳化粉末樹脂を0.5~8.0質量%含む請求項1または請求項2に記載する裏込めグラウト材。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載する裏込めグラウト材の水和硬化体からなり、材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であることを特徴とする裏込めグラウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート舗装版下の隙間に導入される裏込めグラウトについて、繰返し荷重による粉状化に対する抵抗性を高めた裏込めグラウトとその裏込めグラウト材に関する。なお、本発明において、水を加えない粉体のものを裏込めグラウト材と云い、水を加えて練り混ぜ硬化するまでの液体状態のものを含め、水和硬化した状態のものを裏込めグラウトと云う。
【背景技術】
【0002】
プレキャストRC舗装版やプレキャストPC舗装版などのコンクリート舗装版の施工において、通常、舗装版を設置するには水平工法のレベル調整を行うために舗装版と路盤上面との間にスペーサー等が設置され、路盤上面と舗装版下面の間に約1mm~30mm程度の隙間が形成される。この隙間には裏込めグラウトが注入され、コンクリート舗装版の自重や交通の走行により発生する荷重を均一に路盤に伝達する構造が形成される。
【0003】
また、軟弱地盤上に構築されるコンクリート舗装版は、コンクリート舗装版の自重や経年の荷重により地盤が圧密されるため、コンクリート版が僅かに沈下することが知られている。沈下した舗装表面の高さを元に戻すために、コンクリート舗装版を持ち上げて不陸調整し、その下面と路盤との間にできた空隙に裏込めグラウトが注入されることもある。
【0004】
このようなコンクリート舗装工事において、空港エプロン等の施設の舗装では、工事に時間的制約を受けるために急速施工を要求され、それに対応できるように裏込めグラウトにも速硬性が要求される。一方で、新設のコンテナヤードや港湾施設等の舗装工事では、急速施工は不要であるため裏込めグラウトに速硬性は求められないが、(イ)交通荷重による繰返し疲労よる粉状化に対する抵抗性を有し、(ロ)ブリーディングによる体積変化が小さく、(ハ)流動性に優れ、コンクリート舗装版下へ自然注入によって均一に注入でき、(ニ)低コストであることなど、裏込めグラウト本来の性能が求められる。
【0005】
この要求に適う裏込めグラウト材として、特開平8-290951号公報(特許文献1)には、セメント、カルシウムアルミネート、石膏、およびアルミナドロスを主成分とした裏込めグラウト材が記載されている。この裏込めグラウト材は、カルシウムアルミネートおよび石膏によって初期強度の発現を早め、アルミナドロスによって長期強度の抑制と容積減少の低減を図っている。
【0006】
しかし、特許文献1の裏込めグラウト材は、速硬性を有するものの、繰返し疲労荷重による粉状化に対する抵抗性は十分ではなかった。そこで、特開2011-144103号公報(特許文献2)に記載されているように、疲労耐久性を高めた裏込めグラウト材が開発されている。この裏込めグラウト材は、セメントおよび速硬材を主成分にし、無機または有機の短繊維を配合したものであり、速硬材を配合して初期強度の発現を早めると共に短繊維を配合して繰返し疲労荷重による粉状化に対する抵抗性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-290951号公報
【文献】特開2011-144103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の裏込めグラウト材は、短繊維を配合して耐粉状化性を高めているが、一方で速硬性を得るために多量の速硬材が配合されている。具体的には、セメントに対して25質量%~40質量%に及ぶ多量の速硬材が配合されている。しかし、本発明の検討過程において、速硬材の量が多いと、繰返し荷重に対する耐粉状化性が低下する傾向のあることが見出された。他方、速硬材の量が少なく硬化までの時間が長すぎると、材料分離を生じやすくなり、短繊維がグラウト上面に偏って十分な疲労耐久性が得られない。
【0009】
本発明は上記知見に基づいて、速硬材を含有する裏込めグラウト材における上記課題を解決したものであり、速硬材の含有量を最適範囲にして適度な流動性とゲル化までの時間を確保した裏込めグラウト材と、水和硬化後は十分な初期強度および長期強度を有すると共に、繰返し荷重に対する耐粉状化性を高めた裏込めグラウトを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕ベースグラウト材、速硬材、短繊維、減水剤、および凝結調整剤を含み、該ベースグラウト材はセメントからなり、あるいはセメントと共にセメントの0.01~0.25質量%の水中不分離剤を含み、あるいはセメントおよび上記水中不分離剤と共にセメントの0.01質量%の消泡剤を含み、該ベースグラウト材に対して、速硬材の含有量が1~6質量%、減水剤の含有量が0.05~1.0質量%、凝結調整剤の含有量が0.0~3.0質量%であり、短繊維の含有量が裏込めグラウトの体積に対して0.01~0.5体積%になる量であって、水グラウト材比(W/B)35~65%で練り混ぜた裏込めグラウトにおいて、JA漏斗試験の流下時間が26秒以下であって、ブリーディングが発生せず、水和硬化後の材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であることを特徴とする裏込めグラウト材。
〔2〕短繊維が繊維径12~40μmおよび繊維長2~6mmのポリアミド繊維またはポリビニルアルコール繊維である上記[1]に記載する裏込めグラウト材。
〔3〕ベースグラウト材に対し再乳化粉末樹脂を0.5~8.0質量%含む上記[1]または上記[2]に記載する裏込めグラウト材。
〔4〕上記[1]から上記[3]の何れかに記載する裏込めグラウト材の水和硬化体からなり、材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であることを特徴とする裏込めグラウト。
【0011】
本発明の裏込めグラウト材は、水グラウト材比(W/B)35~65%で練り混ぜた裏込めグラウトにおいて、JA漏斗試験の流下時間が26秒以下の高い流動性を保ちつつブリーディングを抑制することができる。またゲル化後は粘性が高くなって材料分離を防止するので、短繊維のグラウト上面への浮きによる偏在が少なく、少量の短繊維の混入によっても十分な疲労耐久性を得ることができ、また速硬材が適度な含有量であるので速硬材の増加による疲労耐久性の低下を招くことがない。
【0012】
本発明の裏込めグラウト材に含まれる短繊維は、繊維径12~40μmおよび繊維長2~6mmのポリアミド繊維(商品名アラミド繊維)またはポリビニルアルコール繊維(商品名ビニロン繊維)が好ましい。これらの繊維は耐久性に優れており、上記繊維径および繊維長の範囲であれば流動性を損なわずに施工することができ、かつ繊維による耐粉状化抵抗性を得ることができる。
【0013】
本発明の裏込めグラウト材の水和硬化体である裏込めグラウトは、材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であるので十分な初期強度および長期強度を有しており、ホイールトラッキング試験(WT試験)において、繰返し荷重2万回でも破壊せず、高い耐粉状化抵抗性を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の裏込めグラウト材の水和硬化体である裏込めグラウトは、大型車による交通荷重を繰返し受けても、疲労による粉状化を生じ難い。従って、新設のコンテナヤードや港湾施設等の舗装版などに好適に用いることができる。さらに、流動性が良いので、例えば、コンクリート舗装版下の空隙を効率よく埋めることができ、施工性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】WT試験の側面説明図
図2】WT試験の平面説明図
図3】WT試験後のグラウトの状況写真
【0016】
〔具体的な説明〕
本発明の裏込めグラウト材は、ベースグラウト材、速硬材、短繊維、減水剤、および凝結調整剤を含み、該ベースグラウト材はセメントからなり、あるいはセメントと共にセメントの0.01~0.25質量%の水中不分離剤を含み、あるいはセメントおよび上記水中不分離剤と共にセメントの0.01質量%の消泡剤を含み、該ベースグラウト材に対して、速硬材の含有量が1~6質量%、減水剤の含有量が0.05~1.0質量%、凝結調整剤の含有量が0.0~3.0質量%であり、短繊維の含有量が裏込めグラウトの体積に対して0.01~0.5体積%になる量であって、水グラウト材比(W/B)35~65%で練り混ぜた裏込めグラウトにおいて、JA漏斗試験の流下時間が26秒以下であって、ブリーディングが発生せず、水和硬化後の材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であることを特徴とする裏込めグラウト材である。
【0017】
本発明の裏込めグラウト材はベースグラウト材を主成分とする。該ベースグラウト材はセメントからなり、あるいはセメントと共に水中不分離剤を含み、あるいはセメントおよび水中不分離剤と共に消泡剤を含むことができる。該ベースグラウト材のセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱セメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、または白色セメントなどを使用することができる。
【0018】
ベースグラウト材はセメントと共に少量の水中不分離剤を含有することができる。水中不分離剤としては、MC(メチルセルロース)、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HEMC(ヒドロキシエチルメチルセルロース)、HMPポリマー(変性アクリルアミドモノマー)、グアーガム誘導体 (ヒドロキシプロピルグアー)が使用できる。水中不分離剤の含有量はセメントに対して0.01~0.25質量%が好ましい。さらに該ベースグラウト材はセメントおよび水中不分離剤と共にセメントの0.01質量%の消泡剤を含むことができる。
【0019】
速硬材は、C12などのカルシウムアルミネート粉砕物(ブレーン比表面積4000~6000cm/g)と無水石膏(ブレーン比表面積5000~12000cm/g)の混合物、超速硬セメント、アルミナセメントなどを用いることができる。カルシウムアルミネート粉砕物と無水石膏の混合物からなる速硬材は、カルシウムアルミネート粉砕物と無水石膏が概ね40:60~60:40質量比含まれている。市販品としては、例えば三菱マテリアル社製のコーカエーススーパー(商品名)などを用いることできる。
【0020】
速硬材の含有量は、ベースグラウト材に対して1~6質量%が好ましい。速硬材を1~6質量%含有することによって、裏込めグラウトがゲル化するまで良好な流動性を保ち、施工性を高めることができるとともに、注水から30~120分の比較的早い時間に裏込めグラウトをゲル化させることができ、ブリーディングを抑制することができる。速硬材がベースグラウト材の1質量%未満では、このように早期に裏込めグラウトをゲル化させてブリーディングを抑制するという速硬材の十分な効果が得られない。一方、速硬材がベースグラウト材の6質量%を超えて8質量%程度になると、流動性が過剰になり材料分離をきたし、短繊維がグラウトの上部に偏在するようになるので繰返し荷重に対する耐久性が低下する傾向がある。
【0021】
本発明の裏込めグラウト材は短繊維を含む。短繊維は繊維径12~40μmおよび繊維長2~6mmのポリアミド繊維(商品名アラミド繊維)またはポリビニルアルコール繊維(商品名ビニロン繊維)が好ましい。上記短繊維は耐久性に優れており、上記繊維径および繊維長の範囲であれば流動性を損なわずに施工することができ、かつ繊維による耐粉状化抵抗性を得ることができる。
【0022】
短繊維の含有量は、裏込めグラウトの体積に対して0.01~0.5体積%になる量が好ましい。短繊維の含有量が0.1体積%未満では短繊維による補強効果が不十分であり、一方、繊維径および繊維長さが上記範囲より大きく、含有量が0.5体積%を超えると、グラウトの流動性が低下してコンクリート舗装版下への注入性が低下するので好ましくない。
【0023】
本発明の裏込めグラウト材は減水剤を含む。所定量の減水剤を含むことによって、裏込めグラウトの流動性が改善され、自然流下によってコンクリート舗装版下の隙間への注入することが可能となる。減水剤の含有量はベースグラウト材の0.05~1.0質量%が好ましい。減水剤の含有量が0.05質量%未満では減水剤の効果が乏しく、1.0質量%を超えるとグラウトの流動性が過剰となって材料分離を生じ、短繊維がグラウトの上面に浮いてくることがある。減水剤としては市販品(商品名メルフラックス等)のポリカルボン酸塩系高性能減水剤などを用いることができる。
【0024】
本発明の裏込めグラウト材は凝結調整剤を含む。凝結調整剤としては、無機炭酸塩、無機硫酸塩、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸塩などを用いることができる。凝結調整剤を含有することによって、ゲル化までの適度な時間(凝結開始までの時間)を確保して施工時の良好な流動性を維持すると共に、上記時間経過後はゲル化の進行によってブリーディングの発生を抑え、またグラウトの粘性が高まることによってグラウト中の短繊維の分離が抑制されて短繊維の分散性が向上する。
【0025】
凝結調整剤の含有量はベースグラウト材の0.0~3.0質量%が好ましい。凝結調整剤の含有量が3.0質量%を超えると、凝結開始までの時間が長すぎて短繊維がグラウト表面に偏在する材料分離を生じやすくなる。
【0026】
本発明の裏込めグラウト材は、再乳化粉末樹脂を含むことができる。再乳化粉末樹脂は、裏込めグラウトの疲労耐久性やひび割れに対する抵抗性を向上させる効果がある。再乳化粉末樹脂としては、例えば、アクリル系、アクリル-ベオバ系、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)系、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)系などを用いることができる。再乳化粉末樹脂の含有量は、ベースグラウト材の0.5~8.0質量%が好ましい。再乳化粉末樹脂の含有量が8質量%を超えると、グラウトの流動性が低下し、コンクリート舗装版下への注入性が悪化するので好ましくない。
【0027】
本発明の裏込めグラウト材は、これに水を加えて混練したときに、水グラウト材比(W/B)35~65%練り混ぜたグラウトにおいて、コンクリート標準示方書(規準編)JSCE F-531-2013「PCグラウトの流動性試験方法(案)」[土木学会]に規定されるJA漏斗試験の流下時間が26秒以下の流動性を有する。流下時間が30秒程度では流動性が低く、コンクリート舗装版下の空隙への良好な注入性が確保できないので好ましくない。なお、水グラウト材比(W/B)が35%未満では所要の流動性を得ることができず、JA漏斗試験の流下時間は30秒を超える。一方、水グラウト材比(W/B)が65%を超えるとブリーディングを抑制することが難しくなる。
【0028】
本発明の裏込めグラウト材の水硬化体である裏込めグラウトは、初期強度と長期強度に優れており、かつ繰返し荷重に対して高い耐粉状化性を有しており、疲労耐久性に優れている。疲労耐久性は、水浸ホイールトラッキング試験方法(舗装調査・試験法便覧(社団法人日本道路協会編(平成19年6月)))に規定されたホイールトラッキング試験等より評価することができる。
【0029】
通常、実構造物について、車輌の通過回数が29000回/年、設計供用期間を20年と推定すると、繰り返し載荷回数が580000回となる。そこで、疲労耐久性は、裏込めグラウト下面に発生するひずみを直接測定し、また、実構造物で裏込めグラウトに発生するひずみを3次元有限要素解析により計算し。この計算値を用いて、繰り返し載荷回数が580000回となる場合での疲労耐久性を、コンクリート標準示方書 設計編(2012年制定)[土木学会]に示されるコンクリートの疲労強度式に準じて照査した。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例を示す。
表1に示す材料を使用し、表2に示す配合のベースグラウト材を調製した。このベースグラウト材に速硬材、減水剤、短繊維、凝結調整剤を加えて試験試料にした。各試験試料の調製において、グラウトの練混ぜにはラボスターラを用い、容器に所定量の練混ぜ水を入れた後に粉体を投入して800rpmで2分間練り混ぜた。
各試験試料について、表3に示す試験を行った。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
〔ホイールトラッキング試験〕
ホイールトラッキング試験(WT試験)は、水浸ホイールトラッキング試験方法(舗装調査・試験法便覧(社団法人日本道路協会編(平成19年6月)))に準拠して、往復20000回の試験を実施した。試験条件を表4に示す。試験方法の概要を図1図2に示す。図示するように、模擬路盤材(発泡スチロール)10の上面に試験体(裏込めグラウト)11を載せて拘束版12で押さえ、その上側に載荷版(ポリカーボネイト版)13を設置し、載荷版13の上側から走行ホイール14を押し当て往復運動を加え、グラウトが破損する回数を測定した。WT試験の試験条件を表4に示す。
【0035】
【表4】
【0036】
〔実施例1〕
表2に示すベースグラウト材に速硬材、減水剤、短繊維、凝結調整剤を配合し、水を加えて2分間練り混ぜて裏込めグラウトを調製した。速硬材、減水剤、短繊維、凝結調整剤の配合量を表5に示す。調製した裏込めグラウトについて、JA漏斗試験を行った。調製2時間後のブリーディング率を測定した。また、材齢7日の圧縮強度を測定し、さらに材齢7日のホイールトラッキング試験を行った。結果を表5に示した。
表5に示すように、速硬材を1~6質量%含有する試料A2~A5は、JA漏斗試験の流下時間が26秒以下であり良好な流動性を有しており、またブリーディングが発生していない(ブリーディング率が0.0%)。さらに、試料A2~A5は、材齢7日の圧縮強度が25N/mm以上であって十分な初期強度および長期強度を有しており、WT試験では試料A2は18500回程度の疲労耐久性を有し、試料A3~A5は20000回以上の疲労耐久性を有している。
一方、試料A1は、速硬材を含まず、減水剤を多く(0.3質量%)含有しているので、JA漏斗試験の流下時間が31秒であり、流動性が低く、ブリーディング率が5.4%と高い。また試料A1は材齢7日の圧縮強度が低く11.5N/mmであり、このためWT試験の破壊回数は100回であり、繰返し荷重に対する抵抗性が大幅に低い。
また、試料A6は、速硬材を8質量%含むので、JA漏斗試験の流下時間が13.7秒であり、流動性が過剰であるため材料分離を生じやすく、短繊維がグラウトの表面部に浮き上がる。また、ブリーディングが0.3%生じる。またWT試験の破壊回数は3000回であり、繰返し荷重に対する抵抗性が低い。また、試料A7は、速硬材を25質量%含むので流動性が過剰であるため材料分離を生じやすく、短繊維がグラウトの表面部に浮き上がる。このため、WT試験の破壊回数は1500回であり、繰返し荷重に対する抵抗性が低い。
【0037】
【表5】
【0038】
〔実施例2〕
表6に示す配合で、速硬材の量を3質量%にし、減水剤の量を0.15質量%と0.10質量%に変え、短繊維の種類と量を変え、凝結調整剤の量を0.40質量%にした以外は実施例1と同様にして裏込めグラウトを調製した。この裏込めグラウトについて実施例1と同様の試験を行った。結果を表6に示す。
表6に示すように、試料B1~B7は何れもJA漏斗試験の流下時間が約20秒~約25秒であり良好な流動性を有しており、ブリーディングも発生しない。また材齢7日の圧縮強度は25N/mm以上であって十分な初期強度を有しており、WT試験では2万回程度の繰り返し荷重では破壊しない。一方、試料B8は短繊維を含まないので、WT試験の破壊回数が100回であり、繰返し荷重に対する耐久性が大幅に低い。
【0039】
【表6】
【0040】
また、表7の試料C1のグラウトを用いて、より厳しい条件でのWT試験を実施した。表8にWT試験の条件を示す。ポリカーボネイト版の厚さを8mmとしてグラウトに発生するひずみが大きくなるようにした。載荷回数往復5000回、10000、15000回、20000回でのグラウトの状況を図3に示す。WT試験の結果、載荷回数往復20000回終了時においてグラウト材は健全であることを確認した。
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】
【0043】
〔実施例3〕
表7の試料C1について、ホイールトラッキング試験時にグラウト下面に発生するひずみを確認するために、グラウト下面にひずみゲージを貼り付けて荷重をかけた場合のひずみを測定した。載荷版であるポリカーボネイト版の厚さは10mm、グラウトの厚さは10mmとした。グラウトの材齢は7日で試験を実施した。載荷荷重は、33.5kg、54.9kg、70.0kgとした。荷重の設定は、試験機の重り設定によった。表9にグラウトのひずみ計測結果を示す。すべての供試体で載荷荷重が70.0kgの時にグラウトの割れを確認した。そこで、グラウトの割れが発生したときの計測ひずみ219μに対応した応力を引張応力として、グラウトの長期の疲労耐久性を照査した。なお、このグラウトの材齢7日における圧縮強度47.1N/mm、引張強度は2.6N/mm、静弾性係数は14000N/mmであった。
【0044】
【表9】
【0045】
〔実施例4〕
表7の試料C1について、プレキャストPC床版を用いたコンテナ走行路盤の3次元有限要素解析により裏込めグラウトに発生する応力とひずみを算出した。舗装構造各層の厚さは、路面側から、プレキャストPC版270mm、裏込めグラウト10mm、砕石600mm、セメント処理安定層1500mm土2000mmとした。構成部材の緒元を表10に示す。なお、PC床版形状は、2500mm×270mm×12000mmとした。載荷荷重は、8輪トランステナーを想定して、単車輪荷重362.9kNとした。解析の結果、PC版の接合目地に1輪載荷される場合にグラウトに発生するひずみが最大になり、その値は33μとなった。
【0046】
【表10】
【0047】
例えば、実構造物では車輌の通過回数が29000回/年、設計供用期間を20年と推定すると、繰り返し載荷回数が580000回となる。一定の繰返し載荷荷重を受けるコンクリートの設計強度fγdは次式[1]によって表される(コンクリート標準示方書 設計編(2012年制定)[土木学会])。
【0048】
fγd=k1f×fd×(1-σp/fd)×(1-logN/K)・・・[1]
ここに、k1f:引張および曲げ引張強度の場合=1.0
fd:コンクリートの設計強度
σp:永続作用作用における応力度、交番荷重を受ける場合は0(ゼロ)
K:普通コンクリートで継続してあるいはしばしば水で飽和される場合は10
【0049】
走行回数580000回を満足する疲労強度について検討すると、以下のとおりである。
式[1]において、fdは試験結果からグラウトが破壊するひずみ219μであり、これは圧縮強度41.7N/mmのときのひずみである。グラウトの圧縮強度の下限(25N/mmに設定)のときのひずみを圧縮強度の比による係数βを用いて算出すると、安全係数β=47.1/25.0=1.884であり、安全係数を考慮したひずみは、219μ/β=219/1.884=116μになる。従って、グラウトの疲労強度に対応するひずみは、式[1]に従い、frd=116×1×(1-(log580000)/10)=49μである。
算出したグラウトの疲労強度に対応するひずみ(49μ)と3次元有限要素解析結果(33μ)を比較すると、(49/33)>1となり、繰り返し載荷回数580000回では破壊しないと判断される。従って、上記路盤条件においては供用20年における疲労耐久性を満足すると云える。
【符号の説明】
【0050】
10-模擬路盤材(発泡スチロール)、11-試験体(裏込めグラウト)、
12-拘束板12、13-載荷版(ポリカーボネイト版)、14-走行ホイール
図1
図2
図3