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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】インキ飛散防止カバー
(51)【国際特許分類】
   B41F 13/00 20060101AFI20220406BHJP
   B41F 9/00 20060101ALI20220406BHJP
   B41F 9/10 20060101ALI20220406BHJP
   B41F 31/02 20060101ALI20220406BHJP
   B41F 31/07 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B41F13/00 614
B41F9/00 B
B41F9/10
B41F31/02 B
B41F31/07
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019167685
(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公開番号】P2021041680
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】大宮 利信
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 誠
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 博人
【審査官】四垂 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-052642(JP,A)
【文献】特開2018-144348(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02604432(EP,A1)
【文献】特開平11-033451(JP,A)
【文献】特開2005-028706(JP,A)
【文献】特開2002-029025(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03741563(EP,A1)
【文献】特開2001-171087(JP,A)
【文献】特開2018-140589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F5/00-13/70
B41F31/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のインキカバーを有し、
版胴と圧胴とがウエブを挟持した状態で回転するとともに、前記版胴の外周面に付着した過剰なインキをドクターブレードで掻き取った後、挟持位置で、連続搬送される前記ウエブに適量のインキを転写して印刷する印刷機に付設される、インキ飛散防止カバーであって、
前記印刷機は、
前記ウエブを挟持する印刷位置と、前記印刷位置から離れた待機位置とに、前記圧胴を変位させる圧胴変位装置と、
前記印刷位置への前記圧胴の変位に連動して、前記挟持位置の両側に有る上流側狭窄空間および下流側狭窄空間のうち、前記ウエブの搬送方向の上流側に位置する前記上流側狭窄空間に変位する保護バーと、
を備え、
前記インキカバーが、前記保護バーに取り付けられた状態で前記圧胴が前記印刷位置に変位することにより、前記版胴の端部と前記圧胴の端部との隙間を通じて前記下流側狭窄空間に突出し、前記版胴の端部の上に被さるように構成されている、インキ飛散防止カバー。
【請求項2】
請求項1に記載のインキ飛散防止カバーにおいて、
前記インキカバーの一端を支持するカバーホルダを更に有し、前記カバーホルダが前記保護バーに着脱可能に取り付けられる、インキ飛散防止カバー。
【請求項3】
請求項2に記載のインキ飛散防止カバーにおいて、
前記カバーホルダが、弾性変形可能なクリップ部を有し、
前記クリップ部が前記保護バーに装着されることにより、前記カバーホルダが前記保護バーの周方向に位置決めされる、インキ飛散防止カバー。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のインキ飛散防止カバーにおいて、
前記インキカバーが前記カバーホルダに着脱可能な状態で支持されている、インキ飛散防止カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、グラビア印刷機に付設されるインキ飛散防止カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア印刷機では、回転する版胴の外周面に形成されている版面にインキを付着させ、ドクターブレードで版面から過剰なインキを掻き取った後、連続搬送されるウエブに版面を圧着させる。そうすることにより、適量のインキをウエブに転写し、印刷が行われる。
【0003】
印刷の高速化により、ドクターブレードで掻き取られたインキが、版胴等の端部で飛散し、印刷したウエブや、版胴等の端部の周辺がインキで汚れるという問題が発生するようになってきている。このようなインキ汚れを防止する工夫も提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、長方形のポリエステル製フィルムの自由端側に板状のマグネットを取り付けたインク跳ね防止部材が開示されている。そのインク跳ね防止部材は、版胴の周方向のうち、ドクターブレードから離れる側(ドクターブレードの下流側)に、自由端側が張り出すようにして、版胴の各端部と対向しているドクターブレードの刃先側に固定している。そうすることにより、ドクターブレードで掻き取った後の版胴の外周面にインクが跳ねて付着するのを防止している。
【0005】
また、特許文献2には、矩形帯形状のシートの中程に、側縁から切り込みを形成したインキ飛散防止カバーが開示されている。そのインキ飛散防止カバーは、版胴の各端部と対向しているドクターブレードの刃先部分をその切り込みに差し込み、テープで接着してドクターブレードに固定している。
【0006】
そうすることにより、インキ飛散防止カバーは、版胴の周方向のうち、ドクターブレードに近づく側(ドクターブレードの上流側)、およびドクターブレードから離れる側(ドクターブレードの下流側)の双方に張り出すように構成されている。
【0007】
開示する技術に関し、特許文献3には、保護バーと同様の目的で、グラビア印刷機に設置される安全バーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-33451号公報
【文献】特許第6183765号公報
【文献】特許第6202460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1や特許文献2では、インク跳ね防止部材やインキ飛散防止カバーがドクターブレードに取り付けられている。ドクターブレードは、版胴に適切に接触するよう、繊細な調整が要求されるうえ、摩耗によって交換が必要になる消耗品である。更に、印刷時のドクターブレードは、摩耗の偏りを抑制するために、幅方向に繰り返し揺動制御するのが一般的である。
【0010】
そのため、インク跳ね防止部材やインキ飛散防止カバーがドクターブレードに取り付けられていると、ドクターブレードの調整の邪魔になるし、ドクターブレードの交換の度に、これらも付け替えなければならないという、不具合がある。
【0011】
特に特許文献2のインキ飛散防止カバーの場合、その構造上、ドクターブレードの下側に大きな隙間が形成されるため、その隙間を通じて、版胴の端部の周辺にインキが飛散する。ドクターブレードが揺動すると、その隙間は更に大きくなる。そのため、インキ汚れ防止の観点からは、改善の余地がある。
【0012】
それに対し、本発明者は、先に、版胴の端部の周辺へのインキ汚れが効果的に防止できるインキ飛散防止カバーを提案している(特願2019-089125)。ただし、そのインキ飛散防止カバーは、特許文献1のインク跳ね防止部材とは逆に、ドクターブレードの上流側をカバーするように構成されている。
【0013】
そこで、開示する技術の主たる目的は、ドクターブレードから独立した状態で、版胴等の端部周辺のインキ汚れが防止でき、清掃作業の負担軽減が実現できるインキ飛散防止カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
開示する技術は、グラビア印刷機に付設されるインキ飛散防止カバーに関する。
【0015】
具体的には、シート状のインキカバーを有し、版胴と圧胴とがウエブを挟持した状態で回転するとともに、前記版胴の外周面に付着した過剰なインキをドクターブレードで掻き取った後、挟持位置で、連続搬送される前記ウエブに適量のインキを転写して印刷する印刷機に付設される、インキ飛散防止カバーである。
【0016】
前記印刷機は、前記ウエブを挟持する印刷位置と、前記印刷位置から離れた待機位置とに、前記圧胴を変位させる圧胴変位装置と、前記印刷位置への前記圧胴の変位に連動して、前記挟持位置の両側に有る上流側狭窄空間および下流側狭窄空間のうち、前記ウエブの搬送方向の上流側に位置する前記上流側狭窄空間に変位する保護バーと、を備えている。
【0017】
そして、前記インキカバーが、前記保護バーに取り付けられた状態で前記圧胴が前記印刷位置に変位することにより、前記版胴の端部と前記圧胴の端部との隙間を通じて前記下流側狭窄空間に突出し、前記版胴の端部の上に被さるように構成されている。
【0018】
すなわち、このインキ飛散防止カバーによれば、シート状のインキカバーが、ドクターブレードではなく、保護バーに取り付けられる。従って、ドクターブレードの調整の邪魔にならないし、ドクターブレードの交換も簡便になる。
【0019】
そして、印刷時に、その保護バーが、インキの転写が行われるウエブの挟持位置の近傍の空間(上流側狭窄空間)に配置されると、インキカバーは、版胴の端部と圧胴の端部との隙間を通じて反対側の空間(下流側狭窄空間)に突出し、版胴の端部の上に被さるように構成されている。従って、挟持位置の上流側および下流側の両側で、版胴に付着したインキが飛散しても、インキカバーによって遮られるので、印刷したウエブにインキが付着したり広範囲でインキ汚れが発生したりするのを抑制できる。その結果、清掃作業の負担が軽減できる。
【0020】
前記インキ飛散防止カバーはまた、前記インキカバーの一端を支持するカバーホルダを更に有し、前記カバーホルダが前記保護バーに着脱可能に取り付けられる、としてもよい。
【0021】
インキ飛散防止カバーはインキで汚れるため、その清掃や交換を頻度高く行う必要がある。それに対し、このインキ飛散防止カバーによれば、保護バーから着脱できるので、これら作業が容易に行える。従って、利便性に優れる。
【0022】
前記インキ飛散防止カバーはまた、前記カバーホルダが、弾性変形可能なクリップ部を有し、前記クリップ部が前記保護バーに装着されることにより、前記カバーホルダが前記保護バーの周方向に位置決めされる、としてもよい。
【0023】
この場合、インキ飛散防止カバーの着脱が更に容易になるうえ、装着するだけで適正に位置決めできるので、利便性がよりいっそう向上する。
【0024】
前記インキ飛散防止カバーはまた、前記インキカバーが前記カバーホルダに着脱可能な状態で支持されている、としてもよい。
【0025】
そうすれば、特にインキで汚れ易いインキカバーだけを交換することができる。インキカバーであれば、安価で得ることができるので、使い捨てにすれば、更に利便性が向上するし、交換も短時間で行えるので、生産性も向上する。
【発明の効果】
【0026】
開示する技術を適用したインキ飛散防止カバーによれば、版胴等の端部周辺のインキ汚れが効果的に防止できるので、清掃作業の負担軽減が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】インキ飛散防止カバーが装着される印刷機の要部を示す概略図である。印刷時の状態を下流側から見ている。
図2図1における矢印Y-Y線から見た概略断面図である。
図3A】圧胴が待機位置に位置している時の図2相当図である。
図3B図3Aにおける矢印Zの方向から見た要部の概略図である。
図4】本実施形態の保護バーとインキ飛散防止カバーとを示す概略図である。
図5】保護バーに装着したインキ飛散防止カバーと版胴および圧胴との位置関係を示す概略斜視図である。
図6】印刷時におけるインキ飛散防止カバー、版胴、圧胴との位置関係を示す概略側面図である。
図7】(a)~(c)は、インキ飛散防止カバーの変形例を示す概略図である。
図8】上流側インキ飛散防止カバー(カバー本体)を示す概略平面図である。
図9A】カバー本体のドクターブレードへの取り付け過程を説明するための図である。
図9B】カバー本体がドクターブレードに取り付けられた状態を示す概略斜視図である。
図10A】上流側飛散防止カバーが印刷機に付設されている状態を示す概略斜視図である。
図10B】印刷時における上流側飛散防止カバーの要部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、開示する技術の実施形態を図1等に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0029】
なお、以下の説明では、ウエブWが搬送される方向を「MD方向」と言い、ウエブWの幅方向を「TD方向」と言う。そして、MD方向のうち、印刷前のウエブWが位置する側を「上流側」、印刷後のウエブWが位置する側を「下流側」ともいう。
【0030】
<印刷機>
図1図2に、開示する技術を適用したインキ飛散防止カバー30に好適な印刷機1(グラビア印刷機)を例示する。インキ飛散防止カバー30については、後述する。
【0031】
印刷機1は、連続して搬送される帯状のウエブWに、連続的にインキを転写して印刷を行う。印刷機1は、大略、インキパン2、版胴4、ファニッシャロール3、圧胴5、ドクターブレード6などの部材で構成されている。
【0032】
印刷機1には、印刷の切り替え作業を容易にするために、ファニッシャロール3を変位させるFR変位装置10、圧胴5を変位させる圧胴変位装置11なども備えられている。印刷機1は、床面上に対向配置された一対のサイドフレーム1a,1aを備え、これらの間に、これら各部材や装置が設けられている。
【0033】
この印刷機1ではまた、版胴4およびファニッシャロール3の交換や、インキの入れ替え等の作業が容易に行えるように構成されている。そのため、この印刷機1には更に、版胴4およびファニッシャロール3の各々を着脱してサイドフレーム1a,1aの外に移送可能にする装置や機構、版胴4およびファニッシャロール3の着脱時にインキパン2をスライドさせる装置や機構などからなる切替ユニット1bも設けられている。本来の印刷機能に付随した切替ユニット1bは簡略化して図示し、その具体的な説明は省略する。
【0034】
(インキパン2)
インキパン2は、TD方向が長い矩形の、上面が開放されたトレイ状の容器からなる。印刷時には、インキパン2にインキが供給され、常に所定量のインキが貯留される。印刷時にはまた、滴下するインキが回収できるように、ファニッシャロール3、版胴4、および圧胴5は、インキパン2の上方に配置される。
【0035】
(ファニッシャロール3)
ファニッシャロール3は、細長い円柱状の部材からなる。ファニッシャロール3は、両端に設けられたシャフト3aを介してFR変位装置10に回転可能に支持されている。
【0036】
FR変位装置10は、サイドフレーム1a,1aの間に揺動可能に支持された一対の支持アーム10a,10aを有している。各支持アーム10aは、細長い板形状を有し、互いに対向するように配置されている。ファニッシャロール3は、これら支持アーム10a,10aの下端部に、シャフト3aを介して回転自在に架設されている。図示は省略するが、ファニッシャロール3は、各支持アーム10a,10aに着脱可能に軸支されていて、印刷機1の制御によって回転駆動される。
【0037】
ファニッシャロール3は、印刷機1の制御によって両支持アーム10a,10aが揺動することにより、下流側の斜め下方から版胴4の下部に圧接する印刷位置と、印刷位置から離れた待機位置とに変位する。図1図2に示すように、印刷時のファニッシャロール3は印刷位置に位置し、そのファニッシャロール3の下部はインキパン2に溜まるインキに浸漬された状態になる。
【0038】
(版胴4)
版胴4は、ファニッシャロール3よりも大径の細長い円柱状の部材からなる。この印刷機1で用いられる版胴4は、シャフトレスタイプであり、版胴4の各端面4dの中央には軸支孔4aが形成されている。
【0039】
図3Bに示すように、版胴4の外周面の両端部を除く部分には、印刷模様を構成する凹溝が形成された印刷面4bが設けられている。換言すれば、版胴4の各端部の端面4dの側には、印刷面4bの無い非印刷領域4cが設けられている。版胴4の各端部の角部は、面取り加工によって所定の曲率で丸められている。
【0040】
両サイドフレーム1a,1aには、各々の対向面から向かい合って突出する一対の支持軸12,12が設けられている。これら支持軸12,12に、軸支孔4aを介して、版胴4が着脱可能に軸支されている。一方の支持軸12は、印刷機1の制御によって回転駆動するように構成されている。それにより、印刷時の版胴4は、図2に矢印で示す方向(図例では時計回り)に、TD方向に延びる軸を中心に所定の速度で回転する。
【0041】
ファニッシャロール3は、版胴4から独立して回転駆動される。ファニッシャロール3の回転速度は、適量のインキを飛散させることなくインキ溜まり(版胴4とファニッシャロール3との接触部位に形成されるインキの溜まりip)に供給するため、例えば、マイナス10%~0%等、版胴4の回転数よりも所定量小さく設定されるのが一般的である。
【0042】
(圧胴5)
圧胴5は、版胴4より小径で、版胴4よりも長い細長い円柱状の部材からなる。圧胴5の外周面には、ゴム等の弾性を有する層が形成されている。圧胴5は、図3Bに示すように、圧胴5に圧接する接触部5aと、接触部5aの両端に設けられた一対の非接触部5b,5bとを有している。各非接触部5bは、接触部5aよりも僅かに小径であり、円錐状に傾斜したテーパー部5cを介して接触部5aと一体に形成されている。
【0043】
接触部5aは、印刷面4bよりも長く、その両側の端部は、各非印刷領域4cと対向するように構成されている。そして、各テーパー部5cおよび非接触部5bは、各非印刷領域4cと対向し、非接触部5bの一部は、版胴4の各端面4dから突出して各支持軸12と対向するように構成されている。
【0044】
それにより、印刷時に、圧胴5の接触部5aが版胴4の印刷面4bに圧接した時にも、版胴4の各端部(非印刷領域4c)と圧胴5の各非接触部5bとの間には、僅かな隙間(版胴端隙間HG)が存在する(図1図6参照)。
【0045】
圧胴5の両端部の各端面には、支持シャフト5dが、圧胴5と同軸に取り付けられている。そして、これら支持シャフト5d,5dを介して、圧胴変位装置11に変位可能に支持されている。
【0046】
圧胴変位装置11は、両サイドフレーム1a,1aの間に対向して配置された一対の支持体11a,11aを有しており、圧胴5は、これら支持体11a,11aに、支持シャフト5dを介して回転自在に架設されている。一対の支持体11a,11aは、印刷機1の制御によって昇降するように構成されている。
【0047】
印刷機1に搬送されるウエブWは、複数のガイドロール(不図示)により、上方から圧胴5の下側に誘導されるように構成されている。従って、圧胴5は、圧胴変位装置11の駆動により、そのウエブWを下面で受け止めた状態で昇降する。
【0048】
それにより、圧胴5は、図1図2に示すように、版胴4の上部に圧接し、版胴4とでウエブWを挟持する位置(印刷位置)と、図3A図3Bに示すように、印刷位置から上方に離れた位置(待機位置)とに変位する。なお、圧胴5の変位に連動して昇降する保護バー20が、圧胴変位装置11に併設されているが、これについては後述する。
【0049】
(ドクターブレード6)
ドクターブレード6は、帯板形状を有する刃物状の部材からなる。ドクターブレード6は、版胴4に沿って延びるように、ブレードホルダー7に支持されている。図3Bに示すように、ドクターブレード6は、版胴4よりも長く、その両端部は、版胴4の両端部よりも外方に位置している。
【0050】
印刷時のドクターブレード6は、版胴4の上流側に配置されている。すなわち、印刷時のドクターブレード6は、版胴4の外周面のうち、ファニッシャロール3との圧接部位から、圧胴5との圧接部位(挟持位置NP)に向かって回転している側の所定部位に、所定の角度で、その刃先が圧接するように位置決めされる。
【0051】
印刷時には、ウエブWの搬送に合わせて版胴4が回転駆動される。それに連動して、ファニッシャロール3および圧胴5も回転する。それにより、形成されるインキ溜まりipを介して版胴4の印刷面4bに付着された過剰なインキは、ドクターブレード6によって掻き取られる。そうして、適量になったインキが挟持位置NPに運ばれることで、連続搬送されるウエブWに、印刷面4bからインキが転写されて印刷が行われる。
【0052】
図3Bに、二点鎖線で示すように、刃先の摩耗の偏りを抑制するため、印刷時のドクターブレード6は、TD方向に、所定の幅Hで、連続して揺動するように構成されている。
【0053】
(保護バー20)
図2に矢印で示すように、印刷時には、版胴4および圧胴5は高速で回転している。そして、挟持位置NPの両側、つまりその上流側と下流側のそれぞれには、版胴4と圧胴5とによって区画されることにより、挟持位置NPに向かって窄む狭い空間(上流側狭窄空間TsUおよび下流側狭窄空間TsD)が存在している。
【0054】
版胴4および圧胴5の上流側では、印刷中に印刷状態のチェックや、ドクターブレード6の接触状態の調整などの作業が行われる場合がある。版胴4および圧胴5は、上流側では、挟持位置NPに向かって回転しているので、誤って上流側狭窄空間TsUに工具や指等が入り込むと、引き込まれてしまうおそれがある。
【0055】
そのため、そのようなことがないように、上流側狭窄空間TsUには、挟持位置NPをその上流側から覆う保護バー20が配置されるのが一般的である。通常、保護バー20は、TD方向に延びる細長い棒状の部材からなり、印刷時に、上流側狭窄空間TsUに配置される。
【0056】
図3B図4に示すように、この印刷機1の保護バー20は、版胴4および圧胴5よりも長い、細長い棒状のバー本体21と、バー本体21よりも短いカバー体22とで構成されている。バー本体21の断面形状は円形であり、カバー体22の断面形状は略L状である。カバー体22は、バー本体21の長手方向の中間部分に固定されていて、カバー体22から突出するバー本体21の両端部分は、バー変位機構23に架設されている。
【0057】
カバー体22は、図6に示すように、上流側狭窄空間TsUに位置したときに、その断面における突端側を上流側狭窄空間TsUの外方に向けた状態で、バー本体21の外側(挟持位置NPとは逆側)に固定されてバー本体21と一体化されている。
【0058】
バー変位機構23は、一対の支持体11a,11aの昇降に連動して昇降する一対の支持部材23a,23aを有しており、圧胴変位装置11に連動して動作するように構成されている。それにより、保護バー20は、印刷位置および待機位置への圧胴5の変位に連動して変位し、図1図2に示す、上流側狭窄空間TsUで挟持部位を覆う位置(保護位置)と、版胴4とともに上昇して、図3A図3Bに示す、保護位置の上方に離れた位置(非保護位置)とに変位する。
【0059】
(インキ飛散防止カバー30)
この種の印刷機1では、ドクターブレード6で掻き取られたインキが、版胴4の端部で飛散し、印刷したウエブWや、版胴4の端部の周辺がインキで汚れるという問題が発生する。
【0060】
すなわち、印刷したウエブWに飛散したインキが付着すれば、印刷不良を招くおそれがある。そして、印刷中は、版胴4等の端部に飛散したインキは放置されて乾燥するため、除去困難なインキ汚れが発生する。このインキ汚れは溶剤で溶解して拭き取らなければ除去できないため、印刷の切替作業の負担となり、切替時間短縮の障害となる。
【0061】
そこで、そのような不具合を抑制するため、この印刷機1には、インキ飛散防止カバー30が装着されている。
【0062】
図4に示すように、インキ飛散防止カバー30は、インキカバー31とカバーホルダ32とで構成されている。本実施形態のインキ飛散防止カバー30では、インキカバー31とカバーホルダ32とが個別に構成されている。
【0063】
インキカバー31は、一方が長い矩形のシート状の部材からなる。インキカバー31は、使い捨てできる安価な消耗品が好ましいため、その素材は、例えば厚紙、プラスチックシート、金属の薄板などから、仕様に応じて選択できる。
【0064】
カバーホルダ32は、金属やプラスチックの成形品からなり、インキカバー31の短辺と同等の長さを有するクリップ部321およびピンチ部322を有している。クリップ部321は、保護バー20の外形に対応した形状に形成されていて、保護バー20の外形よりも僅かに小さく形成されている。それにより、クリップ部321は、保護バー20に弾性変形した状態で取り付けられるように構成されている。
【0065】
すなわち、クリップ部321は、カバー体22の外面に密着する断面が略L形状をした第1腕部321aと、第1腕部321aの一端に、断面が略V形状となるように連なって、バー本体21の外面に密着する断面が略J形状をした第2腕部321bと、を有している。これらの弾性力に抗して第1腕部321aおよび第2腕部321bの間を拡げた状態で、保護バー20に装着することで、カバーホルダ32は、保護バー20の周方向に位置決めされ、回動不能な状態で取り付けられる。
【0066】
ピンチ部322は、第2腕部321bの先端に設けられている。ピンチ部322は、僅かな隙間を隔てて対向する一対の弾性変形可能な挟持腕322a,322aを有している。これら挟持腕322a,322aの間の隙間に、インキカバー31の短辺側の一端を差し込むことで、インキカバー31は、カバーホルダ32に着脱可能な状態で支持される。クリップ部321が保護バー20に取り付けられることで、インキカバー31が略水平となるように、ピンチ部322の向きが設定されている。
【0067】
インキ飛散防止カバー30は、1台の印刷機1に対して2つ用いられる。具体的には、図5に示すように、各インキカバー31は、圧胴5の各非接触部5bの下方に位置して、版胴4の左右の非印刷領域4cの一部と支持軸12の一部との上に被さるように、保護バー20の各端部に取り付けられる。
【0068】
そうすることにより、図6に示すように、圧胴5が印刷位置に変位した時には、インキカバー31は、版胴端隙間HGを通じて下流側狭窄空間TsDに突出し、版胴4の端部の上に、僅かな隙間を隔てて被さった状態になる。
【0069】
従って、ドクターブレード6で掻き取られたインキが、版胴4の端部で飛散しても、インキカバー31で遮ることができるので、インキ汚れの拡散を抑制できる。その結果、印刷したウエブWに付着して印刷不良を招くことや、圧胴5等の端部に付着して除去困難なインキ汚れが発生するのを抑制できる。
【0070】
ドクターブレード6とは別々に取り付けられるため、ドクターブレード6の調整の邪魔になったり、ドクターブレード6の交換の度に付け替えたりする必要もない。非保護位置に位置している保護バー20に、予め取り付けておけばよいため、着脱も容易であり、取り扱いも簡単である。
【0071】
特に、本実施形態のインキ飛散防止カバー30の場合、インキカバー31をカバーホルダ32から着脱できるので、カバーホルダ32は保護バー20に装着した状態で、インキで汚れたインキカバー31だけを取り外して使い捨てることができる。従って、利便性に優れる。
【0072】
カバーホルダ32もまた、保護バー20から着脱できるので、カバーホルダ32がインキで汚れたら、保護バー20から取り外してインキを除去し、再利用できる。しかも、カバーホルダ32は、クリップ部321の弾性を利用して着脱するので、その着脱作業は、工具も不要であり、手間も要さず短時間で簡単にできる。
【0073】
(インキ飛散防止カバー30の変形例)
上述した実施形態のインキ飛散防止カバー30は、カバーホルダ32とインキカバー31とを別々に構成したが、一体に形成してあってもよい。例えば、インキカバー31とカバーホルダ32とを、プラスチックで一体成形してもよいし、別々に形成したカバーホルダ32とインキカバー31とを、接着等して一体化させてもよい。
【0074】
この場合、インキカバー31だけを交換できない不利はあるが、インキカバー31がカバーホルダ32から抜け落ちることが無いので、インキカバー31をカバーホルダ32により安定的に支持できる利点がある。
【0075】
更に、カバーホルダ32は、弾性力を利用して保護バー20に装着するだけでなく、テープ等で保護バー20に貼り付けるようにしてもよい。例えば、図7の(a)に示すように、カバーホルダ32に、クリップ部321に代えて、接着面を有する貼着部323を設ける。
【0076】
この貼着部323をカバー体22に両面テープ等で貼り付けることにより、インキカバー31が略水平に位置決めされるように構成する。そうすれば、より簡素な構造で、安定的に保護バー20に支持できるインキ飛散防止カバー30を低コストで実現できる。
【0077】
更に、この場合、図7の(b)に示すように、カバーホルダ32とインキカバー31とを別々に構成しないで、インキカバー31を延出して所定形状に屈曲することによって、貼着部323を形成してもよい。そうすれば、よりいっそう構造を簡素化できる。従って、インキ飛散防止カバー30をより低コストで実現できる。
【0078】
また、図7の(c)に示すように、カバー体22に、インキカバー31を片持ち支持する被貼着部324を設け、被貼着部324にインキカバー31を貼り付けることで、カバー体22でインキカバー31を直接支持するようにしてもよい。図7の(c)の被貼着部324に代えて、ピンチ部322を設け、インキカバー31を着脱可能に支持してもよい。
【0079】
いずれの場合であっても、版胴4の端部で飛散するインキをインキカバー31で遮ることができるので、インキ汚れの拡散を抑制できる。
【0080】
<上流側インキ飛散防止カバー>
上述したインキ飛散防止カバー30は、版胴4の外周面のうち、ドクターブレード6よりも下流側を覆うので、ドクターブレード6よりも上流側で、下方に飛散するインキは抑制できない。
【0081】
それに対し、本発明者は、冒頭で述べたように、先に、ドクターブレード6の上流側でのインキ汚れを抑制できるインキ飛散防止カバー(上流側インキ飛散防止カバー8)を提案している。従って、上述したインキ飛散防止カバー30に、その上流側インキ飛散防止カバー8を組み合わせるのが好ましい。
【0082】
図8に、そのインキ飛散防止カバー8の主体となるカバー本体80を例示する。カバー本体80は、プラスチック、金属、紙などの可撓性を有するシート状の素材を用いて所定形状に形成されている。
【0083】
上述したインキ飛散防止カバー30と同様に、通常、1つの印刷機1に対して2つのカバー本体80,80が用いられる。これらカバー本体80,80は、版胴4の端部の各々と対向するドクターブレード6の所定部位に、線対称状(左右対称状)に取り付けて使用される。
【0084】
カバー本体80は、垂下部81、第1付着部82、第2付着部83、張出垂下部84、および切片部85を有している。これら各部は、互いに連なっており、一体に構成されている。
【0085】
垂下部81は、版胴4のサイズに合わせて形成された所定の長さを有する細長い矩形の部分からなる。具体的には、垂下部81は、版胴4の外周のうち、ドクターブレード6の上流側において、版胴4の端部から横に張り出すのに適当な幅bと、ドクターブレード6との接触部位から版胴4の下端までの円弧よりも短い長さaとを有している。例えば、垂下部81は、5~10cmの幅で15~25cmの長さに形成すればよい。
【0086】
第1付着部82は、垂下部81の長手方向の一方の端部に連なる矩形の部分からなる。第1付着部82は、垂下部81との境界線Lに沿って折り曲げられるように構成されている。第1付着部82の幅は、垂下部81と同じであり、その長さcは、少なくともドクターブレード6の横幅よりも小さい。例えば、第1付着部82は、3~8cmの長さに形成すればよい。
【0087】
第2付着部83は、第1付着部82に、その側方から切り込むことによって形成されている。具体的には、その切り込みは、第1付着部82の側縁から境界線Lと平行に延びて、第1付着部82の幅方向における略中間部位に至る第1切込部83aと、第1切込部83aの突端から略垂直に延びて、境界線Lに至る第2切込部83bとで構成されている。
【0088】
それにより、第2付着部83は、第1付着部82よりも小さい略矩形に形成されていて、境界線Lに沿って第1付着部82から独立して折り曲げられるように構成されている。例えば、第2付着部83は、第1付着部82の形状に合わせて、第1切込部83aを1~3cmの範囲、第2切込部83bを0.5~5cmの範囲で形成すればよい。
【0089】
張出垂下部84は、垂下部81の一方の側部に連なって第2付着部83よりも側方に張り出す部分であり、垂下部81に連続して一体に形成されている。例えば、張出垂下部84の張出幅dは、垂下部84と同様に、5~10cmとすればよい。
【0090】
図例のカバー本体80では、張出垂下部84の上縁部84a(境界線Lに連なる縁部)は斜めに形成されており、境界線Lが有る方の張出垂下部84の端部(基端部)は、境界線Lから離れるほど幅が大きくなっている。例えば、その基端部は、約45°の傾斜角で形成すればよい。
【0091】
切片部85は、第2付着部83との境界部分から張出垂下部84の上縁部84aに沿って台形状に張り出す部分からなる。切片部85は、第1付着部82および第2付着部83から独立して、張出垂下部84の上縁部84aに沿って折り曲げられるように構成されている。
【0092】
カバー本体80は、図9Aに矢印で示すように、第1付着部82は、境界線Lに沿って折り曲げられ、第2付着部83は、境界線Lに沿って、第1付着部82と同じ方向に折り曲げられる。切片部85は、上縁部84aに沿って、第1付着部82および第2付着部83と同じ方向に、これらよりも大きく折り曲げられる。
【0093】
そして、図9Bに示すように、カバー本体80の境界線Lの部分が、ドクターブレード6の刃先6aに当てられる。そうして、折り曲げられた第1付着部82は、ドクターブレード6の上面6b(ドクターブレード6の下流側に臨む面)に付着される。折り曲げられた第2付着部83は、ドクターブレード6の下面6c(ドクターブレード6の上流側に臨む面)に付着される。
【0094】
これらの付着の方法は、両面テープを用いてもよいし、接着剤を用いてもよい。シート状のマグネットであれば、カバー本体80を容易に脱着できるので、扱い易い。要は、第1付着部82および第2付着部83が、ドクターブレード6に安定して付着すればよい。付着部位を、図9Bに破線で例示する。
【0095】
図10Aに、カバー本体80が、ドクターブレード6の一端側において適正部位に取り付けられている状態を示す。ドクターブレード6の他端側にも、カバー本体80は線対称状に取り付けられる(便宜上、カバー本体80の設置箇所を一端側または他端側ともいう)。
【0096】
垂下部81および張出垂下部84は、ドクターブレード6の上流側に位置しており、張出垂下部84によって版胴4の端部が被覆され、かつ、垂下部81によって版胴4の端部の近傍の空間(サイドスペースSS)が被覆されている。
【0097】
版胴4の端部の角は丸められているので、版胴4の端部における外周面(非印刷領域4c)と端面4dとの境界部位に沿って延びる周縁には、その全周にわたって曲面Rが存在している(図10Bに、版胴4の外周面におけるその曲面Rと平面との境界線Kを二点鎖線で示す)。図9Bに示すように、境界線Lにおける第1付着部82と第2付着部83との境界を境界点P1で示す。また、境界線Lと張出垂下部84の上縁部84aとの境界を境界点P2で示す。
【0098】
図10Bに、印刷時の状態を例示する。図10Bの上図は、ドクターブレード6が版胴4に対して他端側に限界まで揺動した時の状態を示している。図10Bの下図は、ドクターブレード6が版胴4に対して一端側に、隙間がほとんど生じることがない、限界まで揺動した時の状態を示している。
【0099】
図10Bの上図に示すように、ドクターブレード6が版胴4に対して他端側に揺動した時には、境界線Kは、境界点P1よりも他端側に位置するように、カバー本体80はドクターブレード6に位置決めするのが好ましい。それにより、カバー本体80がドクターブレード6の刃先で切れたり位置ずれしたりしないようにできる。
【0100】
また、図10Bの下図に示すように、ドクターブレード6が版胴4に対して一端側に揺動した時には、境界線Kは、境界点P2よりも一端側に位置するように、カバー本体80はドクターブレード6に位置決めするのが好ましい。それにより、ドクターブレード6が揺動しても、版胴4の端部とカバー本体80との間に、隙間がほとんど生じなくできる。
【0101】
例示するインキ飛散防止カバー8の場合、版胴4の端面4dは、境界点P2よりも一端側に位置しなければならない。
【0102】
図10Aに示すように、垂下部81を版胴4の外周面に沿わせるために、カバー本体80の下端部には、垂下補助部86を設けるのが好ましい。垂下部81が湾曲して、版胴4の外周面に沿うようにすれば、ドクターブレード6で掻き取られたインキは、飛散し難くなり、垂下部81に沿って滴下し易くできる。従って、版胴4の端部からのインキの飛散を抑制できる。
【0103】
垂下補助部86の具体例としては、例えば、シート状の錘やマグネットが挙げられる(図10Aでは、シート状の錘を例示)。版胴4の素材が鉄等の磁性体であれば、吸引もできるマグネットを利用してもよい。垂下補助部86は、垂下部81に沿って延びる湾曲した板バネであってもよい。
【0104】
図10Bに示すように、カバー本体80は、ドクターブレード6の上下両面に確りと付着されているので、ドクターブレード6に安定して固定できる。適正な位置に設置すれば、隙間Gを無くすことができる。張出垂下部84の上縁部84aは傾斜しているため、ドクターブレード6の下側に隙間Gが形成されても三角形になる。
【0105】
図10Bの上図に示すように、ドクターブレード6が他端側に最も揺動した時には、その隙間Gはほぼ完全に無くなる。従って、ドクターブレード6によって掻き取られたインキは、張出垂下部84または垂下部81を伝って滴下する。
【0106】
図10Bの下図に示すように、ドクターブレード6が一端側に最も揺動した時でも、本実施形態の場合、隙間Gは形成されない。ドクターブレード6が、更に一端側に揺動すれば隙間Gは形成されるが、その場合でも、その隙間Gは三角形状であるため、徐々に大きくなっていき、最も一端側に揺動した時でも、矩形の隙間Gに比べると略半分の大きさである。
【0107】
すなわち、例示するインキ飛散防止カバー8では、隙間Gが形成されないし、隙間Gが形成されても僅かなので、隙間Gを通じたサイドスペースSSへのインキの飛散が効果的に防止できる。
【0108】
しかも、ドクターブレード6で掻き取られたインキは、その下面を伝ってカバー本体80にも付着して垂れ落ちるが、張出垂下部84の上縁部84aが傾斜しているため、インキが張出垂下部84の裏面側を伝って滴下し易くなっている。
【0109】
すなわち、インキは、張出垂下部84の上縁部84aに沿って伝わり易いので、インキが付着した版胴4と僅かな隙間を隔てて対向している張出垂下部84の表面ではなく、図10Bに示すように、張出垂下部84の裏面側を伝って滴下し易い。それにより、版胴4の端部でインキの付着量が大きくばらつくのも抑制できる。
【0110】
ドクターブレード6が揺動しても、切片部85が有るので、インキが張出垂下部84の裏面側を伝って、よりいっそう滴下し易くなる。
【0111】
従って、上述したインキ飛散防止カバー30に、このような上流側インキ飛散防止カバー8を組み合わせれば、版胴4の端部の周辺へのインキ汚れが、より高い精度で防止でき、清掃作業の負担軽減が大幅に実現できるようになる。
【0112】
なお、開示する技術にかかるインキ飛散防止カバーは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。例えば、上流側インキ飛散防止カバー8との組み合わせは必須ではない。単独で使用してもよい。インキカバー31の形状等、インキ飛散防止カバー30の形態は一例であり、印刷機の仕様に応じて適宜変更できる。
【符号の説明】
【0113】
1 印刷機
2 インキパン
3 ファニッシャロール
4 版胴
4b 印刷面
4c 非印刷領域
5 圧胴
5a 接触部
5b 非接触部
6 ドクターブレード
10 FR変位装置
11 圧胴変位装置
20 保護バー
21 バー本体
22 カバー体
23 バー変位機構
30 インキ飛散防止カバー
31 インキカバー
32 カバーホルダ
W ウエブ
HG 版胴端隙間
NP 挟持位置
TsU 上流側狭窄空間
TsD 下流側狭窄空間
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B