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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】受光器
(51)【国際特許分類】
   G01C 5/00 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
G01C5/00 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018023087
(22)【出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2019138794
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】590003250
【氏名又は名称】株式会社マイゾックス
(73)【特許権者】
【識別番号】000128038
【氏名又は名称】株式会社エヌ・エス・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】右田 倫教
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 欣也
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特許第2983971(JP,B1)
【文献】特開平2-213559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築物の支持体に取り付けられて、当該支持体に対し、方向、または、方向に移動するレベル表示具のレベル調整を行うためのレベル表示具用レベル調整装置に取り付けられる受光器であって、
外部から水平に照射される墨出し光の感知情報を前記レベル表示具用レベル調整装置と共有するものであり、
前面と上面とを有する矩形状の受光器本体、
前記前面に取り付けられて前記墨出し光を感知する感知エリア、および
前記前面と前記上面とが交差する交差部分に設けられて、前記感知エリアで感知した前記墨出し光の感知情報を表示する表示部を有し、
前記感知エリアと前記表示部とを同一視点から視認可能に投影される仮想平面を第1仮想平面と呼び、
前記第1仮想平面と交差するという条件と、上方向に沿った方向と交差するという条件と、前記受光器に対しレベル表示具が配置される位置と反対側に位置するという条件と、の全てを満たす平面を第2仮想平面と呼ぶと、
前記表示部は、上方からのぞき込むことによる視認が可能であり、かつ、前記第2仮想平面と直交する方向から視認可能である、受光器。
【請求項2】
請求項1に記載の受光器であって、
前記交差部分は、前記前面と前記上面とが交差する交差線であり、
前記感知エリアは、当たった光量に応じた出力を出す上方側感知部および下方側感知部の2つの素子をこの順で上下に並べた構成であり、
前記表示部は、
前記上方側感知部に当たる光量が前記下方側感知部に当たる光量と比して有意に多いときに点灯される第1表示部と、
前記上方側感知部に当たる光量と前記下方側感知部に当たる光量との間に有意な差がないときに点灯される第2表示部と、
前記上方側感知部に当たる光量が前記下方側感知部に当たる光量と比して有意に少ないときに点灯される第3表示部と、
を、この順で前記交差線に沿って並べて形成した構成である、受光器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の受光器であって、
前記感知エリアは、当たった光量に応じた出力を出す上方側感知部および下方側感知部の2つの素子をこの順で上下に並べた構成であり、
前記上方側感知部に当たる光量と前記下方側感知部に当たる光量との間に有意な差がないときの前記墨出し光の感知情報を、前記レベル表示具用レベル調整装置の動作を停止させるための情報として当該レベル表示具用レベル調整装置と共有する、受光器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の受光器であって、
前記表示部は、内蔵されたLEDによって表示を行うものであり、かつ、前記上面に対し前記前面の側に傾いた状態に設けられる、受光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベル表示具用レベル調整装置に取付けられる受光器に関する。
【背景技術】
【0002】
構築物の建設の中で、例えばコンクリートを用いた建築物の建設においては、上側の面(本明細書ではこれを「天端」とする。)が水平となる基礎を形成するため、自硬性を有するモルタルのスラリー(本明細書ではこれを「レベラー」とする。)を流し込む基準としてレベル表示具を用いる。具体的には、レベル表示具は基礎の躯体においてコンクリート内に埋め込まれた状態とされる固定具に取り付けられる。また、レベル表示具は固定具に対して上下に進退可能な状態に係合されて、上下方向の位置を調整することができる。このレベル表示具の上端を基礎の天端の基準位置(本明細書ではこれを「レベル」とする。)とすることで、流し込むレベラーの上端位置を決定することができる。
【0003】
このレベル表示具のレベルの決定には、従来から広範囲に亘り水平な基準を作るため、回転レーザー装置から発せられる墨出し光が基準として用いられている。例えば、この回転レーザー装置から発せられる墨出し光を感知し、その感知した光に応じ、他の機器に対し所定の信号を送信する受光器が特許文献1に挙げられる。この特許文献1に示されるように、受光器には墨出し光を感知する受光部が設けられている。この受光部が存する面を前面とした場合、この前面には墨出し光の感知位置の表示を行う表示部が設けられている。この表示部には、墨出し光の感知位置の修正すべき方向を表示する修正表示が設けられている。上記受光器がレベル表示具用レベル調整装置に用いられる場合、実際の作業において、作業者は表示部(修正表示)を確認しつつ、レベル表示具のレベル調整を行うケースが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000―171252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の通り、受光器における表示部は前面にしか設けられていない。このため、例えば、作業者が受光器前面に存する表示部を確認するためには、横からのぞき込むように体をかがめなければならないため、作業を一旦停止して確認しなければならないといった問題や、前面をのぞき込みながら作業を行った場合、レベル表示具用レベル調整装置を所望の方向に真っすぐに進退させられているかを確認しづらいといった問題があった。すなわち、効率的な作業のためには、表示部の設けられる位置に検討の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、レベル表示具用レベル調整装置を用いての作業の効率化が可能な受光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのための手段として、本発明は、構築物の支持体に対し、進入する進入方向、または、前記進入方向と反対に離間する離間方向に移動するレベル表示具に係合することで、レベル表示具を進入方向または離間方向に進退させるレベル表示具用レベル調整装置に取り付けられて、外部から照射される墨出し光の感知情報をレベル表示具用レベル調整装置と共有する受光器であって、墨出し光を感知する感知エリアと、感知エリアで感知した墨出し光の感知情報を表示する表示部とを有し、感知エリアと表示部とを同一視点から視認可能に投影される仮想平面を第1仮想平面と呼び、第1仮想平面と交差する平面を第2仮想平面と呼ぶと、表示部は第2仮想平面と直交する方向からも視認可能である、受光器である。
【0008】
これによれば、作業者は表示部と感知エリアとを同一視点で確認できるだけではなく、別方向からも確認可能であるため、作業姿勢や作業目的に沿って柔軟に表示部を確認でき、作業の効率化を図ることができる。
【0009】
さらに、第2仮想平面を、進入方向に沿った方向と交差するものであり、かつ、受光器に対しレベル表示具が配置される位置と反対側に位置するものとすることもできる。特にレベル表示具用レベル調整装置で利用される受光器では、進入または離間する方向に沿ってレベル表示具が進退しているかを確認しながら受光器の表示部を確認したいケースが多い。このため、上記形態によれば、表示部と同時にレベル表示具の進退方向の確認を行うことができ、さらに作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の受光器によれば、レベル表示具用レベル調整装置を用いての作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の受光器が取り付けられたレベル表示具用レベル調整装置を示す斜視図である。
図2】実施形態の受光器が取り付けられたレベル表示具用レベル調整装置を示す正面図である。
図3】実施形態の受光器を示す斜視図である。
図4】実施形態の受光器と第1仮想平面及び第2仮想平面の関係を示す模式図である。
図5】実施形態の受光器が取り付けられたレベル表示具用レベル調整装置の使用状態を示す模式図である。
図6】その他の実施形態に係る表示部の態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下に、図1図5を用いて、実施形態にかかる受光器とこれを取り付けられたレベル表示具用レベル調整装置について説明する。ここで、図1及び図2に示すように、実施形態にかかる受光器1が取り付けられるレベル表示具用レベル調整装置2は、建築物を建設する際における基礎の建築現場において適用されるものを例示する。なお、以下においては、図2に示すように、基礎の建築現場にてレベル表示具用レベル調整装置2を使用している状態における上方向を「上方側」、下方向を「下方側」とする。なお、本発明における「進入方向」は下方向に、「離間方向」は上方向に相当する。
【0013】
図1または図2に示すように、本実施形態に係る受光器1が取り付けられるレベル表示具用レベル調整装置2は、ドライバー10と制御部20から構成される。ドライバー10は、カバー11と、回転軸12から構成される。カバー11は矩形筒状に形成されている。また、回転軸12は長軸状に形成されており、先端には二股形状に形成された係合部12aが形成されている。回転軸12は、矩形筒状のカバー11内に挿通され、回転可能に固定されている。
【0014】
制御部20は、接続端子20a、上昇ボタン21、降下ボタン22、電源ボタン23、オートマニュアル切替ボタン24、制御機構(図示しない)、及び、回転機構(図示しない)を有している。接続端子20aが後述する受光器1と接続することにより、制御部20は受光器1が感知した墨出し光R(図2参照)の情報を受信する。回転機構は上述のドライバー10に係る回転軸12と連結している。制御機構は受光器1で受信した墨出し光の感知情報に応じて(以下、オートモードとも称する)、又は、レベル表示具用レベル調整装置2の使用者(以下、作業者とも称する)の操作に応じて(以下、マニュアルモードとも称する)、回転機構の回転方向・回転速度を決定する。
【0015】
図1図3に示すように、本実施形態にかかる受光器1は、受光器本体30、感知エリア40及び表示部32からなる。受光器本体30は縦長の矩形状であり、さらに上下方向にそって矩形状の枠部31aが設けられている。枠部31aの底には、当たった光を感知する感知エリア40が形成されている。そして、受光器本体30の上端部には上述の制御部20の接続端子20aと接続可能な接続端子30aが設けられている。
【0016】
感知エリア40は上方側感知部40aおよび下方側感知部40bの2つの素子をこの順で上下に並べた構成である。上方側感知部40aおよび下方側感知部40bは、それぞれ、当たった光量に応じた電流量の出力を出し、この出力を換算した信号を発する。これらの信号に基づき、受光器1は、外部からの墨出し光(具体的には例えば図2に示すレーザー発振器6が発する墨出し光R)が感知エリア40に当たったか否か、および、墨出し光が感知エリア40に当たっている場合には、墨出し光が感知エリア40に仮想的に設定されたエリアである第1感知エリア41、第2感知エリア42、中央感知エリア43のいずれに当たっているかを感知する。ここで、第1感知エリア41は、上方側感知部40aに当たる光量が、下方側感知部40bに当たる光量と比して有意に多いエリアと設定される。また、第2感知エリア42は、上方側感知部40aに当たる光量が下方側感知部40bに当たる光量と比して有意に少ないエリアと設定される。また、中央感知エリア43は、上方側感知部40aに当たる光量と下方側感知部40bに当たる光量との間に有意な差がないエリアと設定される。このため、中央感知エリア43は上方側感知部40a上に位置される仮想境界線43aと、下方側感知部40b上に位置される仮想境界線43bとに挟まれたある程度のギャップを有するエリアとなる。また、感知エリア40において、第1感知エリア41は中央感知エリア43よりも上方側のエリア、第2感知エリア42は中央感知エリア43よりも下方側のエリアを第2感知エリア42となる。
【0017】
表示部32は、受光器本体30の上面と前面とが交差する線に沿って形成された第1表示部32a、第2表示部32b、第3表示部32cの三つの表示部からなる。第1表示部32a、第2表示部32b、第3表示部32cは内蔵されたLEDの点灯または消灯によって、使用者に情報を伝達するものである。
【0018】
図1図3に示すように、受光器1は、取手部50によってドライバー10に取り付けられている。取手部50は、センサー部をドライバーに固定するものである。取手部50は、取手部本体51、挟持部52、留め具53からなる。取手部本体51は背部51aと受光器1が取り付けられる底部51bから構成される略L字状の部材である(図3参照)。取手部本体51の背部には溝が設けられており、その溝に対し挟持部52が嵌め込まれ、挟持部52が取手部本体51の背部を移動可能とされている。留め具53は軸部53aと傘部53bから構成される傘状の部材である。
【0019】
取手部本体51底部と挟持部52によって、ドライバー10は挟み込まれ、留め具53の軸部53aの端に、挟持部52が押さえ込まれて固定されることによって受光器1はドライバー10に対して固定される。これにより、受光器1はドライバー10の回転軸12の係合部12aとの相対距離が常に一定に保たれることとなる。
【0020】
なお、取手具50には図1~2に示すように水準器80を取り付けて設けることもできる。水準器80は、レベル表示具71が支持体に進入または離間する方向(本実施形態では上下方向)に沿ってレベル表示具用レベル調整装置2が進退しているかを確認するための器具である。
【0021】
続いて、図2を用いてレベル表示具用レベル調整装置2の使用状態を説明する。建築物を構成する基礎の躯体の天端からは筋材70(例えば躯体の鉄筋)が突出している。筋材70には固定具72が固定されている。この固定具72には右ねじ形状の雌ネジが形成されている。そして、レベル表示具71は、その上端が蝶羽形状に形成されたいわゆる蝶ボルトとして形成されている。さらに蝶ボルト形状のレベル表示具71のボルト部分は右ねじ形状の雄ネジとなっている。レベル表示具71は固定具72の雌ネジに対し螺合される。これにより、レベル表示具71が右回転(矢印A)すると、下方側に移動(矢印B)し、レベル表示具71が左回転(矢印C)すると、上方側に移動(矢印D)することとなる。これにより、レベル表示具71の上端の位置を定めることができる。なお、筋材70は、本発明における「支持体」に相当する。
【0022】
また、建築物の建築現場には、前もってレーザー発振器6がセットされている。このレーザー発振器6は、セットされている場所の傾斜状態によらず、周囲に水平なレーザー光を投射する。このレーザー光は、レベル表示具用レベル調整装置2が水平の基準として利用する墨出し光R(図2の一点鎖線)となる。
【0023】
続いて、図1図3を用いて、本実施形態の受光器1とこれを取り付けられたレベル表示具用レベル調整装置2の動作について説明する。まず、オートモードにおいては、墨出し光Rが感知エリア40に感知されると、墨出し光Rを感知した位置の情報に基づき、作業者の操作に拠らず、制御部20が自動でその制御機構によって回転機構を動作させる。具体的には、受光器1の第1感知エリア41(図3参照)に墨出し光Rを感知した場合、制御機構は回転機構を左回転させ、回転軸12も左回転(図2の矢印C)させる。これにより、レベル表示具71は上方側に移動(矢印D)し、レベル表示具用レベル調整装置自体も上方側に移動するため、墨出し光Rの感知位置は第1感知エリア41から中央感知エリア43に向けて移動する。一方、受光器1の第2感知エリア42(図3参照)に墨出し光Rを感知した場合、制御機構は回転機構を右回転させ、回転軸12も右回転(図2の矢印C)させる。これにより、レベル表示具71は下方側に移動(矢印D)し、レベル表示具用レベル調整装置自体も下方側に移動するため、墨出し光Rの感知位置は第1感知エリア41から中央感知エリア43に向けて移動する。そして、中央感知エリア43で墨出し光Rを感知した場合、制御部20の制御機構は回転機構を停止させ、回転軸12の回転も停止させる。これにより、中央感知エリア43に墨出し光Rが感知した状態でレベル表示具用レベル調整装置はレベル表示具71の調整を完了し、レベル表示具71のレベルを一定に調整することができる。
【0024】
ここで、受光器1の感知エリア40が墨出し光Rを感知すると、表示部32は感知エリア40で感知した墨出し光Rの感知情報を表示する。具体的には、感知エリア40の第1感知エリア41に墨出し光Rを感知した場合、第1表示部32aのLEDが点灯する。第2感知エリア42に墨出し光Rを感知した場合、第3表示部32cのLEDが点灯する。中央感知エリア43に墨出し光Rを感知した場合、第2表示部32bのLEDが点灯する。
【0025】
ここで、図4に示すように、受光器1の表示部32と感知エリア40を同一視点から視認可能な方向(すなわち、表示部32と感知エリア40とを共に視界に納めることのできる視線の向かう方向)S1で投影された仮想平面を第1仮想平面Eと呼ぶ。また、この第1仮想平面Eと交差する仮想平面(本実施形態では、表示部32と水準器80とを共に視界に納めることができる視点から視認可能に投影される仮想平面)を第2仮想平面Fと呼ぶ。本実施形態において、表示部32は受光器本体30の前面及び上面の交差する線上に設けられている(図3参照)。このため、表示部32は、第2仮想平面Fと直交する方向S2からも視認可能となっている。すなわち、本実施形態では、表示部32が方向S1からだけではなく、方向S2からも視認可能となっているため、作業者がかがみ込むなどの無理な姿勢を取ることなく、通常の姿勢のままで作業を行うことができる(図5参照)。このため、作業者の負担が少なくなり、作業効率が向上する。すなわち、作業者は作業状態や目的に応じて柔軟に姿勢を変えつつ、表示部32を確認しながら作業を行えるため、作業効率は向上する。
【0026】
また、この種の受光器において、作業者は通常墨出し光Rの感知情報をビープ音やブザーなどの音声で判断するが、作業者が高齢者や聴覚障害者等である等、聴覚に不自由がある場合であっても、本実施形態を使用する場合、作業者は表示部32を、体をかがめて確認する必要がなく、通常の作業姿勢のままで確認することができ、作業効率も向上する。さらに、本実施形態では、方向S2から、表示部32だけではなく水準器80も確認可能であるため、レベル表示具用レベル調整装置2が進退すべき方向(本実施形態では上下方向)に沿って進退しているかを判断しながら作業を進めることもできる。
【0027】
また、図5に示すように、基礎の躯体がその両側面を板状のパネルで挟まれ、その基礎の躯体の筋材に取り付けられたレベル表示具71のレベルの調整を行うこともある。このような場合、パネルが邪魔になり受光器1はかがみ込んでも覗き込みにくい。本実施形態においては、かかる場合であっても上方から受光器1をのぞき込むことが可能であるため、作業者の作業効率が向上する。
【0028】
なお、上記は、オートモードでレベル表示具用レベル調整装置2を駆動させた場合であり、さらに以下に図2を用いてマニュアルモードでの使用について説明する。オートモードからマニュアルモードへの切り替えは、制御部20が有するオートマニュアル切替ボタン24を押すことで行うことができる。マニュアルモードにおいては、受光器1からの墨出し光Rの感知情報に基づいて制御部20における回転機構を制御するのではなく、表示部32に表示される墨出し光Rの感知情報に基づき、作業者がレベル表示具用レベル調整装置2の操作を行う。具体的には、感知エリア40における第1感知エリア41(図3参照)で墨出し光Rを感知した場合、上述したように表示部32における第1表示部32a(図3参照)が点灯する。この第1表示部32aの点灯を確認した作業者が、制御部20の上昇ボタン21を長押しすることにより、制御部20の回転機構は左回転し、回転軸12も左回転してレベル表示具71も左回転(矢印C)するため、レベル表示具71は上昇する(矢印D)。作業者はこれにより、墨出し光Rの感知位置を中央感知エリア43(図3参照)に近づけることができる。
【0029】
一方、第2感知エリア42(図3参照)で墨出し光Rを感知した場合、上述したように表示部32における第3表示部32c(図3参照)が点灯する。この第3表示部32cの点灯を確認した作業者が制御部20の降下ボタン22を長押しすることにより、制御部20の回転機構は左回転し、回転軸12も左回転してレベル表示具71も右回転(矢印A)するため、レベル表示具71は降下する(矢印B)。作業者はこれにより、墨出し光Rの感知位置を中央感知エリア43(図3参照)に近づけることができる。
【0030】
そして、中央感知エリア43(図3参照)で墨出し光Rを感知した場合、上述したように表示部32における第2表示部32b(図3参照)が点灯する。この第2表示部32bの点灯を確認した作業者は上昇ボタン21または降下ボタン22の長押しを辞めると、制御部の回転機構はその回転を停止し、回転軸12の回転も停止して、レベル表示具71の上下移動も終了する。すなわち、マニュアルモードにおいて、作業者は表示部32に表示される墨出し光Rの感知情報に基づいてレベル表示具71のレベル調整を行うことができる。
【0031】
特にマニュアルモードにおいては、作業者は表示部32の墨出し光Rの感知情報をもとに操作を行うため、第1仮想平面上の視点、及び、第2仮想平面と交差する方向から表示部32を視認可能な受光器1を使用する作業者の作業効率が向上する。
【0032】
(その他の実施形態)
本発明は、図1~5を用いて上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。すなわち、上述した実施形態は、建築物の基礎の建築現場で用いられるものであったが、本発明における「構築物」は建築物と構造物との両方を含む概念であり、両者に必要な箇所で本発明を適用することができる。例えば、建築物としては基礎工程に限らず、高さを一定にする必要のある工程において適用できるほか、天井からの距離を一定に保つための器具の距離の調整に適用することができる。また、本発明は、躯体壁に柱状の取り付け部材を介して内装壁を取り付けるふかし壁工法において、躯体壁から内装壁までの距離を一定に保つための器具の距離の調整に適用することもできる。また、構造物に関しては、建設される構造物の形状は問わない。例えば、舗装道路における基層の不陸を整正するための器具の距離の調整や、区画を規定する境界標の位置調整、道路の側壁の不陸の調整等にも適用することができる。
【0033】
さらに、本発明における「支持体」は上述の実施形態では「筋材」に該当するが、一定の位置に存在し、レベル表示具71の位置決めを行う基準となるのであれば、如何なるものでも構わない。例えば、基礎の躯体や、基礎そのもの、その他構築物を構築する地面なども含まれるものとする。
【0034】
また、実施形態においてレベル表示具71のボルト部分は右ねじ状としているが、左ねじ状としても構わない。さらにレベル表示具71の形状は蝶ボルト形状とする必要はなく、筋材70に対し、上下方向に進退可能であればどのような形状でも構わない。さらに、レベル表示具71はその上端を基礎の天端の基準とするものであるが、下端を基礎の天端の基準とするものであっても構わない。
【0035】
また、本実施形態の受光器1は矩形状としていたが、特に形状は問わず、例えば球形などの曲面を有する形態でも構わない。
【0036】
上記実施形態において、感知エリア40は2つの感知部から構成され、3つの感知エリアが存在するものとして形成されているが、この形態にとらわれず、種々の形態で墨出し光Rを感知することができる。例えば、感知エリアを一つの感知部としたうえで、感知位置の座標を特定できるようにしたものとすることもできる。また、感知エリアを3つの感知部で形成し、3つのいずれかに墨出し光が当たるかを判定することにより、墨出し光の感知位置を特定することができるようにすることもできる。
【0037】
上記実施形態では、表示部32は受光器1の上面と前面の交差線上に形成されるとしていたが、本発明における表示部は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、種々の位置に設けることができる。例えば、図6(a)に示すように、受光器の上面と前面との交差位置に別の面を設け、その面に表示部91を設けることもできる。
【0038】
また、図6(b)に示すように、受光器1の上面と前面の交差する位置を曲面として、その曲面に表示部92を設けることもできる。
【0039】
また、図6(c)に示すように、受光器1の上面と前面にそれぞれ表示部93a、93bを設けて、両者を協働して点灯させることによって、受光器1の墨出し光の感知情報を表示するものとすることもできる。
【0040】
また、図6(d)に示す表示部94のように、光源94aの光が受光器1の前面及び上面のいずれからも発せられるように、透明なカバー(例えば透光性樹脂カバー)等を設けたものとすることもできる。
【0041】
また、図6(e)に示す表示部95のように、光源95aから受光器1の前面及び上綿に向けて連通する孔を透光性樹脂等で埋めた光の通路を設けてもよい。
【0042】
さらに、上記実施形態における表示部32は三つの表示部(第1表示部32a、第2表示部32b、第3表示部32c)から構成されるとしたが、例えば、単一の表示部から形成してもよいし、二つ以上の複数としても構わない。また、墨出し光の感知情報に応じて表示部の点滅の仕方を変更するものとしてもよい。さらに、墨出し光の感知情報に応じて表示部が発する光の色を変更するものとしてもよい。そして、上記形態を適宜組み合わせたものを表示部としてもよい。
【0043】
また、本発明における「表示部」の形態は上記実施形態に示すような光源だけではなく、視覚で確認可能なものであれば特に形態は問わず、例えばディスプレイ等としてもよい。
【0044】
さらに、図4において、第1仮想平面Eと第2仮想平面Fとが交差して形成される二面角Gは90°であるように描かれているが、二面角Gは必ずしも90°である必要はない。具体的には、第1仮想平面と第2仮想平面の二面角Gは30~150°程度が好ましい。
【0045】
また、上記実施形態では、水準器80は取手部50に設けるとしているが、表示部32と共に視界に納めることができる視点から視界の範囲内に収まっていれば、使用の状況、使用目的に応じていずれの場所に設けても構わない。例えば、上記実施形態におけるドライバー10、あるいは受光器1に取り付けても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1 受光器
2 レベル表示具用レベル調整装置
32 表示部
40 感知エリア
70 筋材
71 レベル表示具

図1
図2
図3
図4
図5
図6