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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】雪庇予防装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20220406BHJP
   E01F 7/02 20060101ALI20220406BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
E04D13/00 A
E01F7/02
E04H9/16 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018134840
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020012289
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2020-03-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)開催日 平成30年2月14日 (2)展示会名、開催場所 住宅建築資材展示即売会2018 アクセスサッポロ(北海道札幌市白石区流通センター4丁目3番55号) (3)公開者 高橋良弘 (4)公開された発明の内容 高橋良弘が、住宅建築資材展示即売会2018にて、高橋良弘及び佐野淳子が発明した雪庇予防装置を、『雪庇除去装置「スノーウイングRS」』として公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】505193357
【氏名又は名称】有限会社高橋アルミ工業
(73)【特許権者】
【識別番号】599087486
【氏名又は名称】三和メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良弘
(72)【発明者】
【氏名】佐野 淳子
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-138550(JP,A)
【文献】特開昭63-197778(JP,A)
【文献】特開2006-037576(JP,A)
【文献】特開2004-353352(JP,A)
【文献】特開2013-068043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E01F 7/02
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋上に設置された高欄に固定される、雪庇予防装置であって、
前記高欄の長手方向に沿って間隔を置いて設置される複数の支柱と、
前記複数の支柱間に設置され前記屋上の内側から前記建物外に向かって下方に傾斜するように位置決めされる整流羽根部材と、
を備え、
前記支柱には、前記長手方向に張り出すブラケットが設けられ、
前記整流羽根部材は、上部板と、前記長手方向と交差する短手方向両端にて前記上部板と接続され当該上部板より下方に設けられる下部板を備え、
前記下部板には、前記上部板と離間され前記ブラケットと締結される締結部が設けられ
前記ブラケットには、前記短手方向に所定の角度にて位置決めされたブラケット側合わせ面が形成され、
前記下部板の前記締結部には、前記ブラケット側合わせ面と対向する羽根側合わせ面が形成され、
前記ブラケットには、前記ブラケット側合わせ面を有する平板形状の位置合わせ板材が設けられ、
前記締結部には、前記位置合わせ板材に嵌合され底面を前記羽根側合わせ面とする角溝形状の凹状部が形成される、
雪庇予防装置。
【請求項2】
請求項に記載の雪庇予防装置であって、
前記締結部は、前記整流羽根部材の前記長手方向の全長に亘って形成され、
前記締結部には、前記長手方向の全長に亘って、締結部材が挿入されるスリットが形成され、
前記上部板の、前記スリットの上方部分は、その前記短手方向両側部分よりも、前記長手方向の全長に亘って肉厚である、
雪庇予防装置。
【請求項3】
屋外に立設される構造物の上端に固定される、雪庇予防装置であって、
前記構造物の長手方向に沿って間隔を置いて設置される複数の支柱と、
前記複数の支柱間に設置される整流羽根部材と、
を備え、
前記支柱には、前記長手方向に張り出すブラケットが設けられ、
前記整流羽根部材は、上部板と、前記長手方向と交差する短手方向両端にて前記上部板と接続され当該上部板より下方に設けられる下部板を備え、
前記下部板には、前記上部板と離間され前記ブラケットと締結される締結部が設けられ、
前記締結部は、前記整流羽根部材の前記長手方向の全長に亘って形成され、
前記締結部には、前記長手方向の全長に亘って、締結部材が挿入されるスリットが形成され、
前記上部板の、前記スリットの上方部分は、その前記短手方向両側部分よりも、前記長手方向の全長に亘って肉厚である、
雪庇予防装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪庇予防装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多雪地域の建物では、屋根(軒先)から雪が庇状に張り出す雪庇(せっぴ)が形成される。屋外に立設された構造物、例えば図11に例示されるような屋根の外縁に設けられたパラペット100や、道路脇に設けられた防音壁の近傍に、雪の吹き溜まり102が発生する。その吹き溜まり102が構造物(図11ではパラペット100)の高さを越えると、図12に例示されるように、吹き溜まりの成長と共に風下側へ積雪面が庇状に張り出して雪庇104となる。
【0003】
雪庇は放置すると成長し、ある程度成長すると自重により崩落する。崩落した雪庇によって、落下点にある車両等の家財が破損する場合があり、雪庇の形成の予防や小規模段階での雪庇の除去が望まれる。そこで例えば特許文献1では、図13に例示されるように、防音壁106の上端部に、気流を道路側(図13では図面奥側)に誘導する整流羽根部材(羽根型板)108A,108Bを設けている。図13にて図面手前側の風上から整流羽根部材108A,108Bに気流が入り込むと、整流羽根部材108A,108Bによって気流が整流され、道路側に斜め下方に吹き付けるような気流が形成される。この斜め下方に吹き付ける気流が、防音壁106の上端から道路側に張り出す雪庇を叩き落とし、小規模段階で雪庇が除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-183393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、構造物の上端に整流羽根部材108A,108Bを設置するに当たり、図13のように、構造物(防音壁106)上に支柱110が設置され、当該支柱110に整流羽根部材108A,108Bが固定される。このとき、支柱110に整流羽根部材108A,108Bを締結させるためのボルト等の締結部材112の末端(例えばボルト頭部)が、整流羽根部材108A,108Bの上面から突出する場合がある。
【0006】
整流羽根部材108A,108Bの上面に積もった雪は、その上面形状に沿って滑り落ち整流羽根部材108A,108Bから取り除かれるが、その上面の、締結部材112の末端が突出した部分については、当該末端部が引っ掛かりとなって、雪の滑落が停滞し、積雪が進行するおそれがある。特に、整流羽根部材108A,108Bの間隙の積雪が進行すると、整流機能が低下するおそれがある。そこで本発明は、従来よりも整流羽根部材の上面における積雪の進行を抑制可能な、雪庇防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、屋外に立設される構造物の上端に固定される、雪庇予防装置に関する。当該雪庇予防装置は、構造物の長手方向に沿って間隔を置いて設置される複数の支柱と、複数の支柱間に設置される整流羽根部材と、を備える。支柱には、長手方向に張り出すブラケットが設けられる。整流羽根部材は、上部板と、長手方向と交差する短手方向両端にて上部板と接続され当該上部板より下方に設けられる下部板を備える。下部板には、上部板と離間されブラケットと締結される締結部が設けられる。
【0008】
上記発明によれば、整流羽根部材を上部板と下部板の二枚構造とし、下部板と支柱のブラケットとを締結させるようにしたため、上部板の上面から締結部の末端が突出することが免れる。
【0009】
また上記発明において、ブラケットには、短手方向に所定の角度にて位置決めされたブラケット側合わせ面が形成されてよい。この場合、下部板の締結部には、ブラケット側合わせ面と対向する羽根側合わせ面が形成される。
【0010】
上記発明によれば、ブラケット側合わせ面と羽根側合わせ面とを重ね合わせるのみにて、整流羽根部材の支柱に対する設置角度を確定可能となる。
【0011】
また上記発明において、ブラケットには、ブラケット側合わせ面を有する位置合わせ板材が設けられてよい。この場合、締結部には、位置合わせ板材に嵌合され底面を羽根側合わせ面とする凹状部が形成される。
【0012】
上記発明によれば、位置合わせ板材に凹状部を嵌め込むのみにて、支柱に対する整流羽根部材の位置決めが可能になる。
【0013】
また上記発明において、締結部は、整流羽根部材の長手方向の全長に亘って形成されてよい。この場合、締結部には、長手方向の全長に亘って、締結部材が挿入されるスリットが形成されてよい。また、上部板の、スリットの上方部分は、その短手方向両側部分よりも、長手方向の全長に亘って肉厚であってよい。
【0014】
上記発明によれば、スリットが形成されることにより生じる、整流羽根部材の剛性の低下が、上部板を肉厚にすることで抑制される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来よりも整流羽根部材の上面における積雪の進行を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る雪庇予防装置を例示する斜視図である。
図2】本実施形態に係る雪庇予防装置を例示する側面図である。
図3図1から整流羽根部材を除去した状態を例示する斜視図である。
図4図2から整流羽根部材を除去した状態を例示する側面図である。
図5】整流羽根部材を例示する斜視図である。
図6】整流羽根部材を例示する側面図である。
図7】本実施形態に係る雪庇予防装置の組み立て例を説明する斜視図である。
図8】本実施形態に係る雪庇予防装置の組み立て例を説明する側面図である。
図9】本実施形態に係る雪庇予防装置による気流の整流例を説明する側面図である。
図10】本実施形態の別例に係る整流羽根部材を例示する側面図である。
図11】雪庇の形成過程(1/2)について説明する図である。
図12】雪庇の形成過程(2/2)について説明する図である。
図13】従来技術に係る雪庇予防装置を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に、本実施形態に係る雪庇予防装置10の斜視図が例示され、図2に、その側面図(X軸視)が例示される。なお、図1図10において、鉛直方向をZ軸、パラペット50の長手方向をX軸、当該長手方向と直交する(交差する)短手方向をY軸とする。
【0018】
雪庇予防装置10は、支柱20及び整流羽根部材30を備える。雪庇予防装置10は、屋外に立設される構造物の上端に固定される。当該構造物は、例えば図1に例示されるようなパラペット50であってもよいし、道路脇に立設される防音壁であってもよい。要するに屋外に立設され、その上端から雪庇が張り出されるおそれのある構造物に、本実施形態に係る雪庇予防装置10が設置可能となっている。
【0019】
図1に例示されるパラペット50は、建物の屋根(屋上)の外縁部に立設された手すり(高欄)であり、例えば屋上利用者の落下防止等の目的で設置される。例えばパラペット50は屋上の外縁部の全周に亘って設置される。
【0020】
パラペット50の上端には笠木52が設置される。笠木52は、パラペット50の腐食を防ぐ目的と、装飾的な目的のために、パラペット50の上端に設置される。
【0021】
パラペット50が延設される長手方向(X軸方向)に沿って、複数の支柱20が間隔を置いて設置される。この設置間隔は、整流羽根部材30の長手方向の寸法に応じて定められる。例えば支柱20の設置間隔は、1000mm以上3000mm以下であってよい。
【0022】
図3には、図1図2から整流羽根部材30を取り去ったときの斜視図が例示され、図4には同側面図(X軸視)が例示される。例えば支柱20は正面視(Y軸視)で逆T字型であって、底板21及び鉛直板22を備える。
【0023】
底板21は、例えば笠木52を介してパラペット50に固定される。例えば底板21及び笠木52を貫通し、さらにパラペット50の内部までアンカーボルト24が鉛直に打ち込まれる。
【0024】
鉛直板22は例えば底板21の幅方向(X軸方向)中央から立設される。図2を参照して、鉛直板22の上端縁22Aは、整流羽根部材30の形状に沿ったものであってよく、屋根の内側から外側(Y軸方向正方向)に向かって低くなるような曲線形状であってよい。
【0025】
図3図4に戻り、鉛直板22の厚さ方向(X軸方向)に対向する両側面22B,22Cには、ブラケット23が設けられる。ブラケット23は板状の部材であって、支柱側固定板23A及び羽根側固定板23Bを備える。例えば支柱側固定板23Aに対して羽根側固定板23Bは90°に屈曲される。つまりブラケット23の羽根側固定板23Bは、支柱20から長手方向(X軸方向)に張り出す。後述するように、羽根側固定板23Bは、整流羽根部材30との位置合わせを行う位置合わせ板材として機能する。
【0026】
図3図4に例示されるように、ブラケット23は、支柱20に対して傾斜するようにして固定される。具体的には、羽根側固定板23Bのブラケット側合わせ面23B1が、支柱20の底板21の底面21Aに対して、または短手方向軸(Y軸)に対して、所定の設置角度αとなるように、位置決め(角度決め)された状態で、ブラケット23の支柱側固定板23Aが、支柱20の鉛直板22に、ボルト・ナット締結等により固定される。
【0027】
設置角度αは、例えば10°以上30°以下であってよい。またより好適には、設置角度αは20°であってよい。このように、ブラケット23を設置角度αにて支柱20に取り付けることにより、後述するように、整流羽根部材30の支柱20に対する角度決めを容易に行うことができる。
【0028】
図5には、本実施形態に係る整流羽根部材30の斜視図が例示され、図6にはその側面図(X軸視)が例示される。整流羽根部材30は、複数の支柱20,20間に設置される。整流羽根部材30は、その長手方向の寸法が、例えば1000mm以上3000mm以下となるように形成される。また長手方向と交差する(直交する)短手方向の寸法は、例えば150mm以上200mm以下となるように形成される。なお、図1図10では、図示の都合上、上記のような寸法比(長手方向寸法:短手方向寸法)とは異なる寸法比にて整流羽根部材30が図示される。
【0029】
整流羽根部材30は、例えばアルミ材を押し出し成形することで形成される。つまり、図6に例示される側面視形状が、長手方向の全長に亘って形成される。また整流羽根部材30は、例えば太陽光の蓄熱を促進するために、黒色に着色される。例えば整流羽根部材30は、黒色電解着色される。
【0030】
整流羽根部材30は、上部板31及び下部板32を備える二重構造となっている。上部板31は整流羽根部材30の上面31Aを構成する。図6を参照して、上面31Aはその側面視(X軸視)が曲線形状であって、積雪を滑落させ易い形状となっている。支柱20に固定される際には、上面31Aは、屋根内側から外側(図6のY軸正方向)に向かって徐々に下がるようにして曲線的に傾斜される。
【0031】
例えば上面31Aは、最も内側(建物側)は鉛直に立設された鉛直面31A1である。さらに鉛直面31A1の下端に、曲率半径R1の第一曲面31A2が接続される。曲率半径R1は、例えば10mmであってよい。
【0032】
第一曲面31A2の下端に、略直線状の傾斜となる第一スロープ面31A3が接続される。さらに第一スロープ面31A3の下端に、曲率半径R2の第二曲面31A4が接続される。曲率半径R2は、例えば90mmであってよい。
【0033】
第二曲面31A4の下端に、略直線状の傾斜となる第二スロープ面31A5が接続される。さらに第二スロープ面31A5の下端に、曲率半径R3の第三曲面31A6が接続される。曲率半径R3は、例えば30mmであってよい。
【0034】
第一スロープ面31A3の、支柱20の底板21の底面21A(図4参照)に対する角度βは、例えば設置角度αと同一であってよい。例えば角度βは、10°以上30°以下であってよい。またより好適には、角度βは20°であってよい。
【0035】
第二スロープ面31A5の、支柱20の底板21の底面21Aに対する角度γは、30°以上50°以下であってよく、好適には40°であってよい。つまり、上面31Aは、屋根の内側から外側に向かうに連れて勾配が急峻になるように形成されている。
【0036】
整流羽根部材30の上面31Aを、上記のような側面視曲線構造とすることで、上面31A上の積雪は、上面31Aを滑って屋根の外側に速やかに排出される。また、第三曲面31A6の末端、つまり、整流羽根部材30の末端を鉛直方向に向けることで、上面31Aを流れる雪や水の上面31Aからの切離(水切れ、雪切れ)が促進される。
【0037】
また、上部板31の、短手方向(Y軸方向)中央部であって、下部板32の凹状部32Cの上方には、その短手方向両側部分よりも肉厚な肉厚部35が形成される。肉厚部35は、凹状部32Cにスリット33が形成されることによる強度低下を補うためのものであり、スリット33が整流羽根部材30の長手方向(X軸方向)全長に亘って形成される場合には、肉厚部35も整流羽根部材30の長手方向全長に亘って形成される。
【0038】
肉厚部35の厚さは、例えば上部板31の、肉厚部35の短手方向両側部分の肉厚と、下部板32の肉厚の和であってよい。例えば上部板31の、肉厚部35の短手方向両側部分の肉厚と、下部板32の肉厚はいずれも2.5mmであってよく、肉厚部35の肉厚は5.0mmであってよい。
【0039】
下部板32は、上部板31の下方に設けられる。具体的には、下部板32は、その短手方向(Y軸方向)の両端部32A,32Bが上部板31と接続される。さらに両端部32A,32Bを除いて下部板32は上部板31に対して鉛直方向に離間される。つまり整流羽根部材30は中空構造を備える。
【0040】
整流羽根部材30を中空構造とすることで、太陽光による熱が当該中空部に蓄熱される。これにより、整流羽根部材30の積雪の融雪が促進される。
【0041】
下部板32は、側面視(X軸視)で、その短手方向(Y軸方向)に沿って基本的に曲線形状であって、短手方向中央部には凹状部32Cが形成される。凹状部32Cはブラケット23と締結される締結部であって、上部板31とは離間されるとともに、ブラケット23側の位置合わせ板材である羽根側固定板23Bに嵌合される(嵌め込まれる)。凹状部32Cは例えば整流羽根部材30の長手方向全長に亘って形成される。
【0042】
凹状部32Cの底面は羽根側合わせ面32C1となっており、整流羽根部材30をブラケット23に固定させる際に、当該ブラケット23のブラケット側合わせ面23B1と対向する。
【0043】
後述するように、羽根側合わせ面32C1とブラケット側合わせ面23B1とを面合わせすることで、支柱20に対する整流羽根部材30の設置角度を確定させることができる。加えて、凹状部32Cにブラケット23の羽根側固定板23Bを嵌合させることで、整流羽根部材30の支柱20に対する位置合わせを行うことができる。
【0044】
凹状部32Cの羽根側合わせ面32C1には、スリット33が形成される。スリット33は整流羽根部材30の長手方向全長に亘って形成される。スリット33には、ブラケット23と整流羽根部材30とを締結するボルト60(図2参照)が挿入される。スリット33は、例えば整流羽根部材30の短手方向(Y軸方向)に沿って二本形成される。
【0045】
図6を参照して、凹状部32Cと上部板31とを接続するために、上部板31の肉厚部35と下部板32の凹状部32Cとの間には両者を繋ぐ接続板34が設けられる。接続板34は例えば肉厚部35及び凹状部32Cに対して垂直に延設される。
【0046】
また、隣り合う接続板34の離間距離W2は、スリット33の溝幅W1よりも大きく(広く)なるように形成される。このような構造により、接続板34の下端からスリット33側に延設される鉤部32C2が形成される。後述するように、この鉤部32C2が、ボルト60(図2参照)の頭部60Aの引っ掛かりとなる。
【0047】
なお、スリット33の溝幅W1は、当該スリット33に挿入されるボルト60の軸部60Bの直径D1(図8参照)を超過するように形成される。ボルト60は例えばJIS B0209-2で定められるM8のボルトが用いられる。例えばM8ボルトの許容最大有効径(7.348mm)よりも1mm程度広くなるように、スリット33の溝幅W1が定められる。
【0048】
また、図8を参照して、凹状部32Cの短手方向(Y軸方向)の幅W3とブラケット23の羽根側固定板23Bの短手方向の幅W4とは、W3>W4の関係を保ちつつ、その寸法差が、スリット33の溝幅W1とボルト60の軸部60Bの直径D1との寸法差よりも小さくなるように、凹状部32C及び羽根側固定板23Bが形成される。例えば、JIS B0209-2にて定められるM8ボルトの許容最大有効径とスリット33の溝幅W1との差よりも、凹状部32Cの幅W3と羽根側固定板23Bの幅W4との差が小さくなるように、凹状部32C及び羽根側固定板23Bが形成される。
【0049】
ボルト60として汎用品を用いる場合、軸部60Bの直径のばらつきが生じるため、これを見越してスリット33の溝幅W1を設定する必要がある。これに対して、ブラケット23及び整流羽根部材30を専用品として形成し、寸法差を相対的に小さく取ることで、ボルト60及びスリット33を用いた位置合わせよりも精度の高い位置合わせが可能となる。
【0050】
図7図8には、本実施形態に係る雪庇予防装置10の組立工程が例示される。図7には組立工程の斜視図が例示され、図8には同側面図(X軸視)が例示される。
【0051】
アンカーボルト24を介して、パラペット50及び笠木52上に支柱20が固定される。さらに整流羽根部材30の(締結部である)凹状部32Cに形成されたスリット33内部に、ボルト60の頭部60Aが挿入される。
【0052】
整流羽根部材30の鉤部32C2にボルト60の頭部60Aが引っ掛けられた状態で、整流羽根部材30の凹状部32Cがブラケット23の羽根側固定板23Bに嵌め込まれる。この過程でボルト60の軸部60Bが羽根側固定板23Bのねじ孔23B2に挿入される。
【0053】
さらに図2を参照して、ねじ孔23B2から下方に突出したボルト60の軸部60B末端に、ナット62が螺入される。ナット62を締め込むことで、整流羽根部材30がブラケット23に固定される。
【0054】
このように本実施形態に係る雪庇予防装置10では、整流羽根部材30を上部板31と下部板32の二重構造(二段構造)とし、下部板32の、上部板31とは離間した箇所に、締結部である凹状部32Cを設けることで、上部板31の上面31Aにボルト60の末端が突出することが避けられる。
【0055】
図9に例示されるように、上下二段の整流羽根部材30,30が支柱20に固定されることにより、屋根からの内側から外側に吹き付ける気流が整流羽根部材30,30にて整流され、外方かつ下方に吹き付ける気流が形成される。したがって、吹き溜まり55がパラペット50を乗り越えて雪庇として張り出そうとした際に、上下二段の整流羽根部材30,30による気流によって当該雪庇が叩き落される形となり、比較的小規模のうちに雪庇を除去可能となる。
【0056】
なお、本実施形態に係る雪庇予防装置10は、整流羽根部材30を上下二段構造としていたが、この形態に限らない。例えば積雪の多い地方等に対応するために、整流羽根部材30を上下三段構造としてもよい。また三段より多い多段構造としてもよい。
【0057】
また図1図9では、整流羽根部材30の長手方向(X軸方向)両端が開放されていたが、例えば図10に例示されるように、整流羽根部材30の長手方向両端を閉じた構造としてもよい。整流羽根部材30の両端が開放された場合、虫等が飛来して中空構造の内部に巣を作る等、整流羽根部材30の蓄熱効果に影響を与えるおそれがあるが、両端を閉じることで、虫等の内部侵入を防止できる。
【0058】
また上述した実施形態では、パラペット50上に雪庇予防装置10を設置する例を示したが、この形態に限らない。要するに屋外に立設され、雪庇が形成されるおそれのある構造物に対して、本実施形態に係る雪庇予防装置10が適用可能である。
【0059】
例えば、高速道路や自動車専用道路等の両側に設けられる防音壁の上端に、その長手方向に沿って間隔を置いて複数の支柱20が設置される。さらに支柱20,20間に整流羽根部材30が設置される。整流羽根部材30の向きは、例えば民地側よりも道路側に上面31Aが低くなるような角度で設置される。
【符号の説明】
【0060】
10 雪庇予防装置、20 支柱、21 支柱の底板、21A 底板の底面、22 支柱の鉛直板、22A 鉛直板の上端縁、22B,22C 鉛直板の側面、23 ブラケット、23A ブラケットの支柱側固定板、23B ブラケットの羽根側固定板、23B1 羽根側固定板のブラケット側合わせ面、23B2 ねじ孔、24 アンカーボルト、30 整流羽根部材、31 整流羽根部材の上部板、31A 上部板の上面、32 整流羽根部材の下部板、32C 下部板の凹状部、32C1 凹状部の羽根側合わせ面、32C2 鉤部、33 スリット、34 接続板、35 肉厚部、50 パラペット、52 笠木、60 ボルト、62 ナット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図13