(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】紙幣繰出装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20220406BHJP
B65H 3/46 20060101ALI20220406BHJP
G07D 11/14 20190101ALI20220406BHJP
【FI】
B65H7/12
B65H3/46 F
G07D11/14
(21)【出願番号】P 2018061685
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】足立 正人
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-322729(JP,A)
【文献】特開2000-351487(JP,A)
【文献】特開平02-147533(JP,A)
【文献】特開2012-099150(JP,A)
【文献】特開昭61-263535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/46
B65H 7/12
G07D 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層または重層状態で投入される紙幣を1枚ずつ分離して紙幣繰出方向に繰り出す紙幣繰出装置であって、
前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に延在する回転軸の周りを紙幣の繰り出し時以外に回転可能に、設けられた紙幣保持ローラと、
前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に延在する回転軸の周りを紙幣の繰り出し時に回転可能であり、かつ、紙幣を1枚のみ通過可能な間隔を介して前記紙幣保持ローラに対向するように、設けられた紙幣繰出ローラと、を有し、
単層または重層状態の紙幣を、停止した前記紙幣保持ローラによって保持しつつ、最も前記紙幣繰出ローラ側にある1枚の紙幣を、回転する該紙幣繰出ローラによって前記紙幣繰出方向に繰り出すように構成され、
前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向側、かつ、該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラの各回転軸方向における
両端部よりも外側にそれぞれ設けられ、重層状態の紙幣が該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラよりも該紙幣繰出方向側に侵入したことを検出する
一方および他方の重層侵入検出センサと、
前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向側、かつ、該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラの各回転軸方向における
両端部よりも外側にそれぞれ設けられ、該紙幣繰出方向の反対方向にスライド可能
である一方および他方の紙幣返送爪と、をさらに有し、
前記
一方および前記他方の重層侵入検出センサの検出結果に基づいて、前記
一方および前記他方の紙幣返送爪が前記紙幣繰出方向の反対方向にスライドすることにより、侵入した重層状態の紙幣を返送するように構成された紙幣繰出装置。
【請求項2】
前記一方の紙幣返送爪および前記他方の紙幣返送爪は、互いに結合しており、連動する請求項
1に記載の紙幣繰出装置。
【請求項3】
前記
一方および前記他方の紙幣返送爪は、前記紙幣保持ローラの回転軸と前記紙幣繰出ローラの回転軸との間を通って該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向の反対方向側までスライド可能である請求項
1または2に記載の紙幣繰出装置。
【請求項4】
単層または重層状態で投入される紙幣を重層方向に収束した上で前記紙幣保持ローラと前記紙幣繰出ローラとの間に挿入する紙幣収束部をさらに有し、
前記紙幣収束部は、
単層または重層状態の紙幣の前記重層方向における一方の紙面を支持する固定紙面ガイドと、
単層または重層状態の紙幣の前記重層方向における他方の紙面を前記固定紙面ガイドに押圧する方向にスライド可能に設けられた可動紙面ガイドと、
前記紙幣繰出方向における前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラの直前にて前記固定紙面ガイドに対向するように設けられ、前記紙幣繰出方向に向かうにつれて該固定紙面ガイドに近付くように傾斜した先端ガイドと、
前記固定紙面ガイド側にて、前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に延在する回転軸の周りを回転可能に設けられ、前記可動紙面ガイドによって該固定紙面ガイドに押圧された単層または重層状態の紙幣を前記紙幣保持ローラと前記紙幣繰出ローラとの間に向けて搬送する紙幣挿入ローラと、を有する請求項1~
3のいずれか一項に記載の紙幣繰出装置。
【請求項5】
前記紙幣保持ローラは、前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に並列する複数の紙幣保持ローラ片を含み、
前記紙幣繰出ローラは、前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に並列する複数の紙幣繰出ローラ片を含み、
前記紙幣保持ローラ片と前記紙幣繰出ローラ片とは、前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向において交互に並列している請求項1~
4のいずれか一項に記載の紙幣繰出装置。
【請求項6】
前記
一方および前記他方の重層侵入検出センサ
の検出結果に基づいて、重層状態の紙幣が前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向側に侵入したことを検出したときに、該紙幣繰出ローラの回転を停止するように構成された請求項1~
5のいずれか一項に記載の紙幣繰出装置。
【請求項7】
前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向側に設けられ、重層状態の紙幣が該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラよりも該紙幣繰出方向側に誤搬送されたことを検出する誤搬送検出手段をさらに有し、
前記誤搬送検出手段の検出結果に基づいて、前記紙幣繰出ローラが逆回転すると共に、前記紙幣保持ローラが紙幣を前記紙幣繰出方向の反対方向に搬送するような向きに回転することにより、誤搬送された重層状態の紙幣を返送するように構成されている請求項1~
5のいずれか一項に記載の紙幣繰出装置。
【請求項8】
前記
一方および前記他方の重層侵入検出センサは、前記誤搬送検出手段としても機能する請求項
7に記載の紙幣繰出装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の紙幣繰出装置を有する電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ATM(Automated Teller Machine)、POS(Point Of Sales)端末装置、自動販売機等の金銭を取り扱う電子機器には、紙幣繰出装置が内蔵されることがある。紙幣繰出装置は、単層または重層状態で、かつ、場合によっては金種が混合した状態で投入される紙幣を1枚ずつ分離して繰り出す装置である。紙幣繰出装置から繰り出された紙幣は、ATM等の電子機器内において、真偽と金種が判別された後、金種毎に収納するなどの処理がなされる。
【0003】
一般に、この種の紙幣繰出装置は、紙幣の繰り出し時以外に回転可能な紙幣保持ローラと、紙幣保持ローラに対向するように設けられ、紙幣の繰り出し時に回転可能な紙幣繰出ローラとを有し、単層または重層状態の紙幣を、紙幣保持ローラによって保持しつつ、最も紙幣繰出ローラ側にある1枚の紙幣を紙幣繰出ローラによって分離(剥離)し、紙幣繰出方向に繰り出すように構成されている。
【0004】
特許文献1~4には、この種の紙幣繰出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-222325号公報
【文献】特開平09-198544号公報
【文献】特開昭63-241689号公報
【文献】特開昭63-075995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1~4に開示されたものをも含め、この種の紙幣繰出装置においては、繰り出すべき1枚の紙幣とこれに重層する紙幣との間の摩擦力が大きい場合に、複数枚の紙幣(重層状態の紙幣)が紙幣繰出方向に搬送されてしまう誤搬送が生ずることがある。誤搬送が起こった場合、後段の真偽判別や金種判別の構成部等において重層状態を検出し、紙幣繰出ローラと紙幣保持ローラを逆回転させ、誤搬送された紙幣を返送するようにしている。
【0007】
一方、紙幣保持ローラおよび紙幣繰出ローラの幅は、スキューと呼ばれる紙幣の斜行を防止する等の目的上、紙幣保持ローラおよび紙幣繰出ローラの幅は、紙幣の幅の50%程度に設計されることが多い。その場合、紙幣保持ローラおよび紙幣繰出ローラの幅方向の外側には、それぞれ紙幣の幅の25%程度の幅で、紙幣繰出方向ならびに返送方向のどちらにも紙幣を搬送することができない搬送不可領域が存在することになる。
【0008】
繰り出すべき1枚の紙幣の幅方向の端部寄りに四つ折り以上の紙幣が混入して重層、特に、繰り出すべき1枚の紙幣に対して大きい摩擦力を伴って重層していた場合、繰り出すべき1枚と一緒に四つ折り以上の紙幣が紙幣繰出装置の内部に誤搬送される可能性がある。仮に、この誤搬送された四つ折り以上の紙幣を、後段の真偽判別や金種判別を行う構成部等によって検出できたとしても、四つ折り以上の紙幣が上述した搬送不可領域に位置していた場合、紙幣保持ローラおよび紙幣繰出ローラの逆回転によって返送することができない。その結果、四つ折り以上の紙幣が紙幣繰出装置の内部に残留し、残留した四つ折り以上の紙幣によって誤算障害や搬送障害が発生する。このため、四つ折り以上の紙幣が混入して投入されたとしても、これを返送することができる紙幣繰出装置が望まれる。
【0009】
それ故、本発明の目的は、四つ折り以上の紙幣が混入して投入されたとしても、これを返送することができる紙幣繰出装置を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、前記紙幣繰出装置を有する、ATM等の電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、単層または重層状態で投入される紙幣を1枚ずつ分離して紙幣繰出方向に繰り出す紙幣繰出装置であって、前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に延在する回転軸の周りを紙幣の繰り出し時以外に回転可能に、設けられた紙幣保持ローラと、前記紙幣繰出方向に対して垂直な方向に延在する回転軸の周りを紙幣の繰り出し時に回転可能であり、かつ、紙幣を1枚のみ通過可能な間隔を介して前記紙幣保持ローラに対向するように、設けられた紙幣繰出ローラと、を有し、単層または重層状態の紙幣を、停止した前記紙幣保持ローラによって保持しつつ、最も前記紙幣繰出ローラ側にある1枚の紙幣を、回転する該紙幣繰出ローラによって前記紙幣繰出方向に繰り出すように構成され、前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向側、かつ、該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラの各回転軸方向における端部よりも外側に設けられ、重層状態の紙幣が該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラよりも該紙幣繰出方向側に侵入したことを検出する重層侵入検出センサと、前記紙幣保持ローラおよび前記紙幣繰出ローラよりも前記紙幣繰出方向側、かつ、該紙幣保持ローラおよび該紙幣繰出ローラの各回転軸方向における端部よりも外側に、該紙幣繰出方向の反対方向にスライド可能に設けられた紙幣返送爪と、をさらに有し、前記重層侵入検出センサの検出結果に基づいて、前記紙幣返送爪が前記紙幣繰出方向の反対方向にスライドすることにより、侵入した重層状態の紙幣を返送するように構成された紙幣繰出装置が得られる。
【0012】
本発明によればまた、前記紙幣繰出装置を有する電子機器が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による紙幣繰出装置は、四つ折り以上の紙幣が混入して投入されたとしても、これを返送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)および(b)は、本発明の実施形態による紙幣繰出装置の要部の概略的な上面図および概略的な側面図である。
【
図2】本発明の実施形態による紙幣繰出装置における紙幣保持ローラおよび紙幣繰出ローラの、紙幣繰出装置の後方から見た概略的な矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明による紙幣繰出装置の実施形態を説明する。
【0016】
図中、符号Wは本紙幣繰出装置の幅方向(左方向Wl、右方向Wrを含む)を示し、符号Hは本紙幣繰出装置の高さ方向(下方向Hl、上方向Huを含む)を示し、符号Dは本紙幣繰出装置の奥行方向(前方向Df、後ろ方向Drを含む)を示している。尚、後述する紙幣繰出方向は、後ろ方向Drと同じであるため、以下においては紙幣繰出方向Drとも表記する。また、後述する紙幣繰出方向の反対方向もしくは紙幣の返送方向は、前方向Dfと同じであるため、以下においては反対方向Dfもしくは返送方向Dfとも表記する。さらに、後述する紙幣の重層方向は、高さ方向Hと同じであるため、以下においては重層方向Hとも表記する。さらにまた、紙幣保持ローラおよび紙幣繰出ローラの各回転軸の延在方向もしくは回転軸方向は、幅方向Wと平行であるため、以下においては延在方向Wもしくは回転軸方向Wとも表記する。
【0017】
図1(a)および(b)ならびに
図2を参照すると、本発明の実施形態による紙幣繰出装置は、ATMに内蔵され、単層または重層状態で、かつ、場合によっては金種が混合した状態で投入される紙幣100を1枚ずつ分離して、紙幣繰出方向Drに繰り出す装置である。
【0018】
本紙幣繰出装置は、単層または重層状態で投入される紙幣100を重層方向に収束した上で、後述する紙幣繰出部の紙幣保持ローラと紙幣繰出ローラとの間に挿入する紙幣収束部51と、単層または重層状態で投入される紙幣100を1枚ずつ分離して紙幣繰出方向Drに繰り出す紙幣繰出部52とを有している。
【0019】
紙幣収束部51は、固定紙面ガイド31と、可動紙面ガイド32と、先端ガイド33と、紙幣挿入ローラ34とを有している。
【0020】
固定紙面ガイド31は、単層または重層状態の紙幣100の重層方向Hにおける一方の紙面を支持する。可動紙面ガイド32は、単層または重層状態の紙幣100の重層方向Hにおける他方の紙面を固定紙面ガイド31に押圧する方向(Hl)にスライド可能に設けられている。先端ガイド33は、紙幣繰出方向における紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35の直前にて固定紙面ガイド31に対向するように設けられ、紙幣繰出方向Drに向かうにつれて固定紙面ガイド31に近付くように傾斜している。紙幣挿入ローラ34は、固定紙面ガイド31側にて、紙幣繰出方向Drに対して垂直な方向(W)に延在する回転軸の周りを回転可能に設けられ、可動紙面ガイド32によって固定紙面ガイド31に押圧された単層または重層状態の紙幣100を、紙幣保持ローラ36と紙幣繰出ローラ35との間に向けて搬送する。
【0021】
紙幣繰出部52は、紙幣保持ローラ36と、紙幣繰出ローラ35と、重層侵入検出センサ37L、37Rと、紙幣返送爪38L、38Rとを有している。
【0022】
紙幣保持ローラ36は、紙幣繰出方向Drに対して垂直な方向(W)に延在する回転軸36Xの周りを紙幣の繰り出し時以外に回転可能に設けられている。紙幣繰出ローラ35は、紙幣繰出方向Drに対して垂直な方向(W)に延在する回転軸35Xの周りを紙幣の繰り出し時に回転可能に設けられている。
【0023】
図2から明らかなように、紙幣保持ローラ36は、紙幣繰出方向に対して垂直な方向に並列する6個の紙幣保持ローラ片を含んでいる。紙幣繰出ローラ35も、紙幣繰出方向に対して垂直な方向に並列する8個の紙幣繰出ローラ片を含んでいる。6個の紙幣保持ローラ片と8個の紙幣繰出ローラ片とは、紙幣繰出方向に対して垂直な方向において交互に並列しており、紙幣を1枚のみ通過可能な間隔(12箇所)を介して互いに対向するように設けられている。尚、
図2においては、説明の便宜上、紙幣の波打ち状の変形を誇張して描いている。
【0024】
そして、単層または重層状態の紙幣100を、停止した紙幣保持ローラ36によって保持しつつ、最も紙幣繰出ローラ35側にある1枚の紙幣100pを、回転する紙幣繰出ローラ35によって紙幣繰出方向Drに繰り出すように構成されている。
【0025】
重層侵入検出センサ37L、37Rは、紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Dr側、かつ、紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35の各回転軸方向(W)における両端部よりも外側に設けられ、重層状態の紙幣(本実施形態においては四つ折りの紙幣100e)が紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Dr側に侵入したことを検出する。本実施形態において、重層侵入検出センサ37L、37Rは、光学センサの一種であり、紙幣を透過する光量に応じてその紙幣が単層であるか重層であるかを検出可能に構成されている。
【0026】
紙幣返送爪38L、38Rは、紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Dr側、かつ、紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35の各回転軸方向(W)における両端部よりも外側に、紙幣繰出方向Drの反対方向Dfにスライド可能に設けられている。
【0027】
紙幣返送爪38Lは、
図1(b)に示されるように、プーリ64とプーリ65とに張架されたベルト66から成るベルトコンベアのベルト66上から突出する突起のような形態であり、プーリ62、ベルト63を介してモータ61によって駆動される。
図1(a)に示されるように、紙幣返送爪38Lには、シャフト39によって紙幣返送爪38Rが結合されており、紙幣返送爪38Lと紙幣返送爪38Rとは、連動するようになっている。
【0028】
紙幣返送爪38L、38Rは、紙幣保持ローラ36の回転軸36Xと紙幣繰出ローラ35の回転軸35Xとの間を通って紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Drの反対方向Df側までスライド可能である。
【0029】
そして、重層侵入検出センサ37L、37Rの検出結果に基づいて、紙幣返送爪38L、38Rが紙幣繰出方向Drの反対方向Dfにスライドすることにより、侵入した重層状態の紙幣(四つ折りの紙幣100e)を返送するように構成されている。
【0030】
本紙幣繰出装置は、紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Dr側に設けられ、重層状態の紙幣が紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Dr側に誤搬送されたことを検出する誤搬送検出手段として、重層検出センサ37Mをさらに有している。本実施形態において、重層検出センサ37Mは、重層侵入検出センサ37L、37Rと同様に、光学センサの一種であり、紙幣を透過する光量に応じてその紙幣が単層であるか重層であるかを検出可能に構成されている。重層検出センサ37Mは、重層侵入検出センサ37L、37Rはと一体に構成されてもよい。そして、重層検出センサ37Mの検出結果に基づいて、紙幣繰出ローラ35が逆回転すると共に、紙幣保持ローラ36が紙幣を紙幣繰出方向Drの反対方向Dfに搬送するような向きに回転することにより、誤搬送された重層状態の紙幣を返送するように構成されている。尚、重層侵入検出センサ37L、37Rは、誤搬送検出手段としても機能するようにしてもよい。
【0031】
次に、本紙幣繰出装置の動作を説明する。
【0032】
紙幣収束部51に単層または重層状態の紙幣100が投入されると、可動紙面ガイド32が固定紙面ガイド31側に移動して紙幣100を紙幣挿入ローラ34に押し付ける。
【0033】
紙幣100が紙幣挿入ローラ34に押し付けられた後、紙幣繰り出し処理が始まると、紙幣挿入ローラ34が回転し、紙幣100を紙幣繰出部52の紙幣保持ローラ36と紙幣繰出ローラ35との間に挿入する。尚、紙幣挿入ローラ34が紙幣100を搬送している間、可動紙面ガイド32は、紙幣100を一定の力で紙幣挿入ローラ34に押し付ける。
【0034】
そして、単層または重層状態の紙幣100を停止した紙幣保持ローラ36によって保持しつつ、最も紙幣繰出ローラ35側にある1枚の紙幣100pを、回転する紙幣繰出ローラ35によって紙幣繰出方向Drに繰り出す。
【0035】
この際、紙幣100の幅方向における端部に四つ折れの紙幣100eが混入していた場合、正常に繰り出された紙幣100pに連れられて四つ折れの紙幣100eも装置内部に搬送されてしまうことがある。
【0036】
その場合、重層侵入検出センサ37L、37R(図示の例では、重層侵入検出センサ37R)が、重層状態の紙幣(四つ折りの紙幣100e)が紙幣保持ローラ36および紙幣繰出ローラ35よりも紙幣繰出方向Dr側に侵入したことを検出する。
【0037】
重層侵入検出センサ37L、37Rの検出結果に基づいて、まずは、紙幣100pの繰出処理を停止し、返送処理を開始する。返却処理が開始されると、紙幣保持ローラ36と搬送モータ35が逆回転して紙幣100pを紙幣収束部51に返送する。
【0038】
これと共に、紙幣返送爪38L、38Rがモータ61によって駆動されて紙幣繰出方向Drの反対方向Dfにスライドすることにより、侵入した重層状態の紙幣(四つ折りの紙幣100e)を返送する。
【0039】
紙幣の投入口にいずれも返送された、紙幣100pを含む単層または重層状態の紙幣100と、四つ折れの紙幣100eとを受けた紙幣の投入者(顧客)は、紙幣100eの四つ折れを正した上で、重層状態の紙幣100を再度、ATMの紙幣投入口に投入する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の紙幣繰出装置によれば、四つ折れ以上の紙幣を内部に取り込まずに返送することができる。これにより、四つ折り以上の紙幣が紙幣繰出装置の内部に残留した場合に発生し得る、誤算障害や搬送障害を防止することができる。
【0041】
本発明による紙幣繰出装置は、ATMに限らず、POS端末装置、自動販売機等の紙幣を取り扱う電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
31 固定紙面ガイド
32 可動紙面ガイド
33 先端ガイド
34 紙幣挿入ローラ
35 紙幣繰出ローラ
35X 回転軸
36 紙幣保持ローラ
36X 回転軸
37L、37R 重層侵入検出センサ
37M 重層検出センサ
38L、38R 紙幣返送爪
39 シャフト
51 紙幣収束部
52 紙幣繰出部
61 モータ
62、64、65 プーリ
63、66 ベルト
100 紙幣
100e 紙幣(四つ折り状態の紙幣)
100p 紙幣(繰出中の紙幣)