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特許7054171線材の被膜剥離方法、線材の被膜剥離装置及び回転電機の製造装置
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  • 特許-線材の被膜剥離方法、線材の被膜剥離装置及び回転電機の製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】線材の被膜剥離方法、線材の被膜剥離装置及び回転電機の製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20220406BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20220406BHJP
   H02K 3/04 20060101ALI20220406BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220406BHJP
   B23D 5/00 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
H02G1/12 060
H02K15/04 F
H02K15/04 A
H02K3/04 J
H01F41/04 F
B23D5/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017235404
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2019103360
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000145736
【氏名又は名称】株式会社小田原エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕治
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 伸郎
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-115160(JP,A)
【文献】特開2012-257442(JP,A)
【文献】特開2017-131023(JP,A)
【文献】特開昭61-285017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/12
H02K 15/04
H02K 3/04
H01F 41/04
B23D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離方法であって、
前記線材の剥離すべき部位で切削部材を前記線材の長手方向と直交する軸線を中心に前記線材の長手方向と交差する方向に旋回移動させて前記被膜を剥離することを特徴とする線材の被膜剥離方法。
【請求項2】
前記線材が断面四角形状を有し、前記切削部材の刃先を前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動させることを特徴とする請求項1に記載の線材の被膜剥離方法。
【請求項3】
外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離方法であって、
前記線材が断面四角形状を有し、
前記線材の剥離すべき部位で、第1及び第2の切削部材をそれぞれ、前記線材の長手方向と交差する方向に旋回移動させることにより、当該第1及び第2の切削部材の刃先をそれぞれ前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動させて、前記線材の4つの平面のうちの1つの平面の前記被膜前記第1の切削部材で剥離し、前記1つの平面に対向する平面の前記被膜前記第2の切削部材で剥離し、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の剥離動作のタイミングをずらすことを特徴とする、線材の被膜剥離方法。
【請求項4】
前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の旋回移動方向が前記線材に対して逆向きであり、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材のうちいずれか一方が移動して剥離動作を行うとき、他方を前記線材の4つの平面のうち剥離される平面以外の平面の少なくとも一部を押える押え部材として用いることを特徴とする請求項3に記載の線材の被膜剥離方法。
【請求項5】
外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離装置であって、
前記線材の剥離すべき部位の少なくとも前記被膜を剥離するように配置される切削部材と、該切削部材を前記線材の長手方向と直交する軸線を中心に前記線材の長手方向と交差する方向に旋回移動させる駆動機構とを有していることを特徴とする線材の被膜剥離装置。
【請求項6】
前記線材が断面四角形状を有し、前記切削部材は、前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動する刃先を有していることを特徴とする請求項5に記載の線材の被膜剥離装置。
【請求項7】
前記切削部材が、前記線材の4つの平面のうちの1つの平面を剥離する第1の切削部材と、前記1つの平面に対向する平面を剥離する第2の切削部材とからなり、前記駆動機構は、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材を個別に旋回移動させる機構を有することを特徴とする請求項6に記載の線材の被膜剥離装置。
【請求項8】
外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離装置であって、
前記線材の剥離すべき部位の少なくとも前記被膜を剥離するように配置される第1及び第2の切削部材と、該第1及び第2の切削部材をそれぞれ前記線材の長手方向と交差する方向に個別に旋回移動させる駆動機構とを有し、
前記線材が断面四角形状を有し、前記第1及び第2の切削部材はそれぞれ、前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動する刃先を有し、
前記第1切削部材は、前記線材の4つの平面のうちの1つの平面の前記被膜を剥離するように配置され、前記第2切削部材は、前記1つの平面に対向する平面の前記被膜を剥離するように配置され、
前記駆動機構は、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の旋回移動方向を前記線材に対して逆向きにし、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の剥離動作のタイミングをずらす手段を備えることを特徴とする線材の被膜剥離装置。
【請求項9】
前記第1の切削部材と前記第2の切削部材のうちいずれか一方が移動して剥離動作を行うとき、他方が前記線材の4つの平面のうち剥離される平面以外の平面の少なくとも一部を押える押え部材として機能することを特徴とする請求項8に記載の線材の被膜剥離装置。
【請求項10】
外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材を供給する線材供給部と、該線材供給部から供給された所定長さの線材を曲げ加工する曲げ加工部と、該曲げ加工部によって曲げ加工されたコイルセグメントを回転電機のスロットに対応させて組み立てるコイル組立装置とを備え、
前記線材供給部は、前記所定長さの線材の両端部における被膜を剥離する線材の被膜剥離装置として、請求項5から9のいずれか1項に記載の線材の被膜剥離装置を有することを特徴とする回転電機の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周が絶縁性の被膜で覆われた線材の被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離方法、線材の被膜剥離装置及び回転電機の製造装置に関し、特に、電動機(モータ)や発電機等の回転電機(回転電気機械)におけるステータやロータのコイル形成に用いられるコイルセグメントを成形する場合に好適な線材の被膜剥離方法、線材の被膜剥離装置及びそれを備えた回転電機の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機におけるステータやロータのコイルとして、このステータ又はロータの周方向に沿って配列された複数のスロットに、直線状の所定長さの線材をU字形状に加工してなる複数のコイルセグメント(以下、単にセグメントともいう)をそれぞれ挿入し、その自由端側(挿入方向先端側)をツイスト加工して、溶接等により互いに電気的に接合したいわゆるセグメント型コイルが知られている。この種のコイルセグメントはヘアピンとも称され、U字形状は松葉形状とも称されている。
【0003】
このようなセグメント型コイルのU字形状のセグメントは、ドラムに巻回された線材としての平角線を引き出して長手方向の歪を矯正した後、目的のセグメント形状に対応した所定長さの両端部における絶縁性の被膜を直線状の状態で剥離し、剥離部位の中央部を切断した後にU字形状に曲げ成形される。
【0004】
絶縁性の被膜を剥離する方法としては、レーザーで剥離する方法、特許文献1に記載されているように被膜導体線の長手方向に回転軸が直交する回転砥石で両面を同時に剥離する方法等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3855247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーザーで剥離する方法では剥離装置が高価格であり、剥離装置のみならずコイルセグメント成形装置が高価になり、ひいては回転電機の製造装置の価格高騰を招来する。特許文献1に開示されている機械的な剥離方式は、レーザーで剥離する方法に比べると、価格高騰の問題を解消できる。
しかしながら、特許文献1に記載の回転砥石による剥離方法では、被膜と導体の結合力が強い場合には剥離後の導体表面に被膜が残ったり、砥粒研削によって表面が荒れたり、あるいは被膜残りを無くすために線材に対する砥石の当接圧を強くすると削り過ぎて導体の断面積が小さくなる。それらによって接続部の導電率が低下し、ひいては回転電機の出力低下を来すという問題があった。
【0007】
本発明は、このような現状に鑑みて創案されたもので、外周が絶縁性の被膜で覆われた線材の被膜を剥離する際に、被膜残りや削り過ぎを防ぎ、接続部の導電率の低下による回転電機の出力低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による線材の被膜剥離方法は、外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離方法であって、上記目的を達成するため、前記線材の剥離すべき部位で切削部材を前記線材の長手方向と直交する軸線を中心に前記線材の長手方向と交差する方向に旋回移動させて前記被膜を剥離することを特徴とする。
【0009】
前記線材が断面四角形状を有する場合、前記切削部材の刃先が前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動させるとよい。
【0010】
本発明による別の線材の被膜剥離方法は、外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離方法であって、前記線材が断面四角形状を有し、前記線材の剥離すべき部位で、第1及び第2の切削部材をそれぞれ、前記線材の長手方向と交差する方向に旋回移動させることにより、当該第1及び第2の切削部材の刃先をそれぞれ前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に旋回移動させて、前記線材の4つの平面のうちの1つの平面の前記被膜前記第1の切削部材で剥離し、前記1つの平面に対向する平面の前記被膜前記第2の切削部材で剥離し、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の剥離動作のタイミングをずらすことを特徴とする。
【0011】
前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の旋回移動方向が前記線材に対して逆向きであり、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材のうちいずれか一方が移動して剥離動作を行うとき、他方を前記線材の4つの平面のうち剥離される平面以外の平面の少なくとも一部を押える押え部材として用いるとよい。
【0012】
本発明による線材の被膜剥離装置は、外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離装置であって、上記目的を達成するため、前記線材の剥離すべき部位の少なくとも前記被膜を剥離するように配置される切削部材と、該切削部材を前記線材の長手方向と直交する軸線を中心に前記線材の長手方向と交差する方向に旋回移動させる駆動機構とを有していることを特徴とする。
【0013】
前記線材が断面四角形状を有する場合、前記切削部材は、前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動する刃先を有するとよい。
【0014】
前記切削部材が、前記線材の4つの平面のうちの1つの平面を剥離する第1の切削部材と、前記1つの平面に対向する平面を剥離する第2の切削部材とからなり、前記駆動機構は、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材を個別に旋回移動させる機構を有するとよい。
【0015】
本発明による別の線材の被膜剥離装置は、外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材の該被膜を部分的に剥離する線材の被膜剥離装置であって、前記線材の剥離すべき部位の少なくとも前記被膜を剥離するように配置される第1及び第2の切削部材と、該第1及び第2の切削部材をそれぞれ前記線材の長手方向と交差する方向に個別に旋回移動させる駆動機構とを有し、前記線材が断面四角形状を有し、前記第1及び第2の切削部材はそれぞれ、前記断面四角形状の線材の4つの平面のうちの少なくとも1つの平面に対して平行に移動する刃先を有し、前記第1切削部材は、前記線材の4つの平面のうちの1つの平面の前記被膜を剥離するように配置され、前記第2切削部材は、前記1つの平面に対向する平面の前記被膜を剥離するように配置され、記駆動機構は、前前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の旋回移動方向を前記線材に対して逆向きにし、前記第1の切削部材と前記第2の切削部材の剥離動作のタイミングをずらす手段を備えることを特徴とする。
【0016】
前記第1の切削部材と前記第2の切削部材のうちいずれか一方が移動して剥離動作を行うとき、他方が前記線材の4つの平面のうち剥離される平面以外の平面の少なくとも一部を押える押え部材として機能するとよい。
【0017】
本発明による回転電機の製造装置は、外周が絶縁性の被膜で覆われた直線状の線材を供給する線材供給部と、該線材供給部から供給された所定長さの線材を曲げ加工する曲げ加工部と、該曲げ加工部によって曲げ加工されたコイルセグメントを回転電機のスロットに対応させて組み立てるコイル組立装置とを備え、前記線材供給部は、前記所定長さの線材の両端部における被膜を剥離する線材の被膜剥離装置として上記いずれかの線材の被膜剥離装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、外周が絶縁性の被膜で覆われた線材の被膜を剥離する際に、被膜残りや削り過ぎを防ぎ、接続部の導電率の低下による回転電機の出力低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機の製造装置の一部構成を概略的に示す図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
図2図1に示した回転電機の製造装置に設けられた線材の被膜剥離装置における線材に対する第1の切削部材と第2の切削部材の配置関係と移動方向を示す斜視図である。
図3図2に示した線材に対する第1、第2の切削部材の旋回移動の変化を示す平面図で、(a)は第1の切削部材についての図、(b)は第2の切削部材についての図である。
図4図2に示した第1の切削部材と第2の切削部材とによる剥離動作を説明するための概要側面図で、(a)は第1の切削部材による剥離動作を開始する前の状態を示す図、(b)は第1の切削部材による剥離動作が完了した状態を示す図、(c)は第2の切削部材による剥離動作が完了した状態を示す図である。
図5図1における線材の被膜剥離装置の全体構成を示す概要斜視図である。
図6】同じくその線材の被膜剥離装置の全体構成を示す概要側面図である。
図7図5及び図6に示した下切削部材支持体の第1の切削部材の固定構成を示す斜視図である。
図8図5及び図6に示した上切削部材支持体の第2の切削部材の固定構成を示す下側から見た斜視図である。
図9図5及び図6に示した第1の切削部材を旋回移動させる駆動機構の構成を示す概要平面図である。
図10図5及び図6に示した第2の切削部材を旋回移動させる駆動機構の構成を示す概要平面図である。
図11】同じく第2の切削部材を旋回移動させる駆動源の支持構成を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態は、線材として断面が四角形状の平角線を用いる場合について説明するが、例えば丸形状、正方形状、五角形以上の多角形状若しくはその他の任意の断面形状の線材であっても本発明は適用可能である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る電動機や発電機等の回転電機の製造装置100は、コイルセグメント成形装置1と、コイルセグメント成形装置1で成形されたコイルセグメントを回転電機の周方向に沿って円環状に配列されたスロットに対応させてアセンブルするコイル組立装置2とを備えている。コイルセグメント成形装置1は、線材供給部3と1次曲げ部4と2次曲げ部5とを備えている。
【0022】
1次曲げ部4は、線材供給部3から供給された所定長さの直線状の線材を同一平面(本実施形態では水平平面)内で所定の形状(例えばU字形状)に曲げ加工する。2次曲げ部5は、1次曲げ部4で曲げ加工されたコイルセグメント(1次曲げ成形体)をこのコイルセグメントの軸線及び上述の平面と直角な平面(本実施形態では垂直平面)内において曲げ加工すると共に、その先端部にコイルセグメントのスロット挿入部がコアの径方向にずれるための形状(クランク形状)を付与する。
【0023】
線材供給部3は、表面が絶縁層で被覆された平角線からなる線材6が巻かれたボビン7と、ボビン7から線材6を引き出して供給方向を変える供給方向転換部8と、矯正搬送部9と、線材の被膜剥離装置としての剥離部10と、切断部11とを備えている。
矯正搬送部9は、線材6の広幅のフラットワイズ面を挟持して搬送する複数のローラ対9aと、線材6の狭幅のエッジワイズ面を挟持して搬送する複数のローラ対9bとを備え、線材6の長手方向の歪みを矯正する。
【0024】
剥離部10は、歪みが矯正された線材6の所定長さに対応する両端部における被覆絶縁層(被膜)を剥離する。切断部11は、剥離部10を通過した線材6を所定長さ位置で切断する。
後述するように、本実施形態における剥離部10は、切削部材によって剥離範囲(剥離すべき部位)を削って剥離する機械的な剥離方式を採用している。剥離部10による剥離範囲は、次の線材の片側端部の剥離部を含んでいる。従って、切断部11は剥離範囲の中央部で線材6を切断するように構成されている。
【0025】
1次曲げ部4によって曲げ加工された線材6、即ちU字形状に曲げられた1次曲げ成形体12は、1次曲げ部4と2次曲げ部5との間に配置された移送機構13によって2次曲げ部5へ移送される。移送機構13はエアシリンダによる1対のチャック部(図示無し)を備えており、この1対のチャック部は1次曲げ成形体12の両脚部(1対のスロット挿入部)が曲げによって旋回してくる範囲にチャック片が開放された状態で待機している。
【0026】
チャック部が1次曲げ成形体12の両脚部を把持すると、移送機構13は上昇して1次曲げ部4から1次曲げ成形体12を外し、2次曲げ部5へ移送する。移送機構13で移送された1次曲げ成形体12は、その両脚部の端部が保持部材14で保持される。1次曲げ成形体12を保持部材14に受け渡した移送機構13が退避して、スペース的にコイルエンド部(渡り部)側が開放された状態で、このコイルエンド部に対して2次曲げ部5による段差形状(クランク形状)の曲げを含む曲げ加工がなされる。
【0027】
コイル組立装置2は、2次曲げ部5による曲げ加工を終えた2次曲げ成形体を、周面に複数の収容溝を備えたドラムを所定量ずつ回転(インデックス回転)させながら、2次曲げ成形体を脱落しないようにベルト等の保持部材で押えながら順次配置していく。所定層数の2次曲げ成形体の配置が終ったら、ドラム上の仮構成のセグメントコイルが押し出し機構によりドラムの軸方向に押し出され、予め押し出し側に配置されたステータ又はロータのスロットに挿入される。
【0028】
なお、図1に示す構成では、線材供給部3の供給方向転換部8、矯正搬送部9、剥離部10及び切断部11と、1次曲げ部4とが図1(a)にて横方向に一列状に配置され、2次曲げ部5が1次曲げ部4に対して図1(a)にて縦方向(直角方向)に配置され、コイル組立装置2が2次曲げ部5に対して図1(a)にて横方向に配置されている。しかし、これら供給方向転換部8、矯正搬送部9、剥離部10、切断部11、1次曲げ部4、2次曲げ部5及びコイル組立装置2が、図1(a)にて横方向に一列状に配置されていても良い。即ち、コイルセグメントの成形部とコイルの組立部との配置に関しては、単一の製造装置においてコイル形成が完結する構成であれば、レイアウト上の制限はない。
【0029】
次に、線材の被膜剥離装置としての剥離部10の構成を具体的に説明するが、まず剥離部10による剥離のメカニズムを、図2及び図3を参照して説明する。
【0030】
図2において、X-X線に沿う部分拡大断面図を一点鎖線の円内に示すように、線材6は、断面が四角形状の導体15と、導体15の外周を覆う被膜16とを有し、全体としても四角形状の断面を有する平角線である。導体15の4つの角部には被膜16をそのエッジで傷付けて絶縁性を阻害しないように丸みが付けられている。ここでの導体15の材質は銅であり、被膜16の材質は絶縁性の樹脂からなるがこれらの材質に限定されない。
【0031】
図2に示す線材6の剥離すべき部位Wにおいて、一対の切削部材17、18が対向状態に配置されている。一方の切削部材である第1の切削部材17は、線材6の下側(一方側)の水平平面6aに平行な刃先17aを有しており、該水平平面6aの剥離を担う。他方の切削部材である第2の切削部材18は、線材6の上側(他方側)の水平平面6bに平行な刃先18aを有しており、該水平平面6bの剥離を担う。
第1の切削部材17が対応する線材6の下側の水平平面6aは、四角形状の4つの平面のうちの1つの平面としての幅広のフラットワイズ面であり、第2の切削部材18が対応する上側の水平平面6bは、該1つの平面に対向する平面としての幅広のフラットワイズ面である。
【0032】
第1の切削部材17及び第2の切削部材18は、それぞれ別個に回転する後述の切削部材支持体に支持されており、線材6に対して逆向きに且つ異なる剥離タイミングで旋回移動するようになっている。図2において、細い破線aは第1の切削部材17の矢印R1方向(反時計回り方向)の旋回移動における刃先17aの軌跡を示しており、細い実線bは第2の切削部材18の矢印R2方向(時計回り方向)の旋回移動における刃先18aの軌跡を示している。ここで、旋回移動とは、支点(旋回中心)を中心として一定の半径で回動する移動を意味する。
【0033】
図3(a)は、第1の切削部材17の剥離開始位置(切削開始位置)での姿勢(実線表示)と、剥離終了位置(切削終了位置)での姿勢(二点鎖線表示)を平面的に示している。同図から明らかなように、第1の切削部材17の刃先17aは、剥離開始位置では線材6の側面(エッジワイズ面)である垂直平面6cに対して非接触状態にあり、且つ、垂直平面6cに対して角度を有して斜めに位置している。このため、剥離開始時には刃先17aの全体が同時に線材6に当たらず、食い込み負荷を小さくでき、導体15に対する刃先17aの食い込み深さの変動を抑制できる。
【0034】
剥離終了位置では刃先17aが反対側の垂直平面6dを越えて離れた状態となる。第1の切削部材17は、刃先17aの図中左端を基準にすると、支点(旋回中心)Pを中心として半径rで旋回移動し、線材6の剥離すべき部位Wを完全に剥離する。この旋回移動による第1の切削部材17の姿勢の変位角度(向きの変化角度)θ1は約15°である。旋回中心Pは、線材6のフラットワイズ面の中心線6e上に位置する。
旋回中心Pが線材6の中心線6e上に位置することにより、剥離すべき部位Wを完全に剥離するための第1の切削部材17の旋回移動量を最小限にすることができる。第1の切削部材17の図中右端側には、剥離すべき部位W内で刃先17a以外の部分が線材6に当たるのを回避するために、逃げ部17bが略直角の面取りにより形成されている。
【0035】
第2の切削部材18についても同様である。即ち、図3(b)は第2の切削部材18の剥離開始位置(切削開始位置)での姿勢(実線表示)と、剥離終了位置(切削終了位置)での姿勢(二点鎖線表示)を平面的に示している。同図から明らかなように、第2の切削部材18の刃先18aは剥離開始位置では線材6の側面(エッジワイズ面)である垂直平面6dに対して非接触状態にあり、且つ、垂直平面6dに対して角度を有して斜めに位置している。このため、剥離開始時には刃先18aの全体が同時に線材6に当たらず、食い込み負荷を小さくでき、導体15に対する刃先18aの食い込み深さの変動を抑制できる。
【0036】
剥離終了位置では刃先18aが反対側の側面6cを越えて離れた状態となる。第2の切削部材18は、刃先18aの図中左端を基準にすると、支点(旋回中心)Pを中心として半径rで旋回移動し、線材6の剥離すべき部位Wを完全に剥離する。この旋回移動による第2の切削部材18の姿勢の変位角度(向きの変化角度)θ2(=θ1)は約15°である。旋回中心Pは、線材6のフラットワイズ面の中心線6e上に位置する。
旋回中心Pが線材6の中心線6e上に位置することにより、剥離すべき部位Wを完全に剥離するための第2の切削部材18の旋回移動量を最小限にすることができる。第2の切削部材18の図中右端側には、剥離すべき部位W内で刃先18a以外の部分が線材6に当たるのを回避するために、逃げ部18bが略直角の面取りにより形成されている。
【0037】
次に、図5及び図6を参照して剥離部10の構成の概要を説明する。剥離部10は、図5に示すように、ベース19と、該ベース19の中央部に分離状態に配置され、線材6を搬送する線材搬送ガイド20A、20Bと、ベース19における線材搬送ガイド20A、20Bの下側に配置され、線材6の下面剥離を担う第1の切削部材17を支持する下切削部材支持体21と、下切削部材支持体21を第1の切削部材17が旋回移動するように回転駆動する下回転駆動機構22とを有している。
【0038】
剥離部10はさらに、ベース19上に支柱23等を介して該ベース19に平行に支持固定された上部ベース24と、該上部ベース24の下方に昇降自在に設けられた昇降プレート62と、昇降プレート62を駆動する昇降駆動機構25と、線材搬送ガイド20A、20Bの上側に配置され、線材6の上面剥離を担う第2の切削部材18を支持する上切削部材支持体26と、上切削部材支持体26を第2の切削部材18が旋回移動するように回転駆動する上回転駆動機構27等を有している。
【0039】
ベース19の四隅には図6に示すように、高さ調整用のボルトネジ28が設けられており、ベース19の上面の水平位置を調整できるようになっている。
図5に示すように、線材搬送ガイド20Aは、ベース19に固定された支持台29と、線材6を摺動状態で挿通可能な挿通孔30a(図11参照)を有するガイド部材30とを有している。線材搬送ガイド20Bも同様に、ベース19に固定された支持台31と、線材6を摺動状態で挿通可能な挿通孔32aを有するガイド部材32とを有している。
【0040】
下切削部材支持体21は図6に示すように、ベース19に固定された環状の固定部33と、該固定部33にベアリング34を介して回転自在に設けられた回転支持筒35とを備えている。第1の切削部材17は図7に示すように、回転支持筒35の上面に一部が埋設状態に収容されてネジ等の手段で着脱自在に固定されている。上切削部材支持体26は図6に示すように、昇降プレート62の下面に固定された環状の固定部36と、該固定部36にベアリング37を介して回転自在に設けられた回転支持筒38とを備えている。
回転支持筒38の下面には図8に示すように、第2の切削部材18と押え部材39とが、それぞれの一部が埋設状態に収容されてネジ等の手段で着脱自在に固定されている。図7の符号CLは、切断部11による切断ラインを示している。
【0041】
図5に示すように、回転支持筒35を第1の切削部材17が旋回移動するように駆動する下回転駆動機構22は、ベース19に固定されたブラケット40と、該ブラケット40に軸ピン41を介して水平回動可能に支持された駆動源としてのエアシリンダ42と、一端部が回転支持筒35にボルトネジ等で固定されたアーム43とを有している。そして、アーム43の他端部は、エアシリンダ42のロッド先端部に軸ピン44及びジョイント63とを介して水平変位可能に連結されている。
【0042】
回転支持筒38を第2の切削部材18(図8参照)が旋回移動するように駆動する上回転駆動機構27は、昇降プレート62に固定されたL字状のブラケット45と、該ブラケット45に軸ピン46を介して水平回動可能に支持された駆動源としてのエアシリンダ47と、一端部が回転支持筒38にボルトネジ等で固定されたアーム48とを有している。そして、アーム48の他端部は、エアシリンダ47のロッド先端部に軸ピン49及びジョイント64を介して水平変位可能に連結されている。
【0043】
昇降プレート62を昇降させる昇降駆動機構25は、図6に示すように、上部ベース24の上面に固定された駆動源としてのエアシリンダ50と、昇降プレート62を支持するリニアモーションガイド(転がりによる直線運動機構)51とを有しており、エアシリンダ50のロッド50aが昇降プレート62に連結されている。ロッド50aには、昇降プレート62の上昇位置を規制するための規制部材61が固定されており、昇降プレート62の昇降(上下移動)、換言すれば線材6の上面に対する第2の切削部材18と押え部材39の接近・離間は、寸法hの範囲で行われる。図6は昇降プレート62が下降した状態、即ち線材6の剥離すべき部位の上面を第2の切削部材18で剥離可能な状態を示している。
【0044】
リニアモーションガイド51は、上部ベース24を支持する垂直プレート52に固定された2本のレール53と、該レール53上を摺動するスライダ54とを有している。
図5に示すように、昇降プレート62の支持側端部62aはT字状に形成されており、該支持側端部62aがスライダ54に固定されている。この構成により、エアシリンダ50が動作すると昇降プレート62はスムーズに上下方向に移動する。
図6に示すように、ベース19に対する垂直プレート52の取付は垂直ブラケット55により補強されており、垂直プレート52に対する上部ベース24の支持は水平ブラケット56により補強されている。
【0045】
垂直プレート52の下端側におけるベース19上には支持台57が固定されており、該支持台57には、第1の切削部材17により線材6の下面(水平平面6a)を剥離するときに、第1の切削部材17の旋回移動方向下流側に位置する線材6の垂直平面6dを押えるための押え部材58が、水平方向に延びるように片持ち状態で固定されている。
【0046】
図9は、図5及び図6に示した第1の切削部材を旋回移動させる駆動機構の構成を示す概要平面図である。第1の切削部材17及び第2の切削部材18による線材6の被膜16の剥離動作は、図9に示すように、線材搬送ガイド20Aと20Bの間、即ち線材6が露出した部位で行われる。換言すれば、線材6の長手方向の両側が線材搬送ガイド20A、20Bで支持された状態で剥離動作が行われる。下切削部材支持体21の回転支持筒35の上面には、線材搬送ガイド20A、20B及び押え部材58を収容するとともに、これらを収容した状態で回転支持筒35の回転を許容する凹部35a及び35bが形成されている。
【0047】
エアシリンダ42が動作してアーム43が実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に回動し、回転支持筒35が図中反時計回り方向(R1方向)に回転すると、図3(a)で説明したように、第1の切削部材17は実線で示す状態から旋回移動して二点鎖線で示す位置に変位する。これにより、線材6の剥離すべき部位Wの下面側が剥離される。この場合の第1の切削部材17の旋回移動における旋回中心Pは回転支持筒35の回転中心であり、且つ、線材6の長手方向と直交する幅方向中心(中心線6e)に位置する。
【0048】
図10は、図5及び図6に示した第2の切削部材を旋回移動させる駆動機構の構成を示す概要平面図である。図10に示すように、エアシリンダ47が動作してアーム48が実線で示す位置から二点鎖線で示す位置に回動し、回転支持筒38が図中時計回り方向(R2方向)に回転すると、図3(b)で説明したように、第2の切削部材18は実線で示す状態から旋回移動して二点鎖線で示す位置に変位する。これにより、線材6の剥離すべき部位Wの上面側が剥離される。この場合の第2の切削部材18の旋回移動における旋回中心Pは回転支持筒38の回転中心であり、且つ、線材6の長手方向と直交する幅方向中心(中心線6e)に位置する。
【0049】
図11は、第2の切削部材を旋回移動させる駆動源の支持構成を示す要部側面図であり、昇降プレート62とエアシリンダ47との接続構成を線材6の搬送方向上流側から見た概要側面図である。
【0050】
図9に示すように、ベース19上におけるアーム43の回動範囲には、調整ネジ59aを備えたストッパ59が配置されている。アーム43の側面にはネジ60が取り付けられており、このネジ60の頭部が調整ネジ59aに当接することにより回転支持筒35の回転位置、即ち第1の切削部材17の旋回移動の下流位置が規制される。
【0051】
ここで、図4を参照して、第1の切削部材17と第2の切削部材18による剥離動作を説明する。
図4(a)は、線材6の剥離すべき部位の下面側を第1の切削部材17で剥離する前の状態を示している。図5及び図6に示した昇降プレート62の下降によって、線材6の剥離すべき部位の上側の水平平面6bは押え部材39で押えられている。また、線材6の第1の切削部材17の旋回移動方向下流側の垂直平面6dは、押え部材58の先端部58aで押えられている。
【0052】
この状態で第1の切削部材17が矢印R1方向に旋回移動すると、図4(b)に示すように、線材6(図2参照)の下側の水平平面6aにおける被膜16と導体15の一部が削り取られる。即ち線材6の剥離すべき部位の下面が剥離される。
この場合、上側の水平平面6bは押え部材39で押えられているだけである。即ち両面同時切削方式のように対向する水平平面6bでは切削は行われていないので、水平平面6a側に対する水平平面6b側からの押圧力(抗力)は弱く、第1の切削部材17による切込み深さが所定以上に深くなることはない。従って、水平平面6aにおける被膜16の完全剥離をするための導体15の最小限の切削が可能となる。
【0053】
図4(b)に示すように、第1の切削部材17の刃先17aが、第1の切削部材17の旋回移動方向下流側に位置する線材6の垂直平面6dを超えると、第1の切削部材17の逃げ部17b(図3(a)参照)の垂直面17cが線材6の上流側の垂直平面6cに当接する。垂直平面6cに対する垂直面17cの押圧が過剰に掛からないように、図9に示したアーム43の回動がストッパ59によって規制されている。線材6の垂直平面6cに対する垂直面17cの当接圧は、ストッパ59の調整ネジ59aの回転によって調整することができる。ストッパ59によるアーム43の回動規制は、第1の切削部材17の刃先17aが押え部材58に当接するのを防止することも担っている。
【0054】
第1の切削部材17の旋回移動による水平平面6aの剥離が終了すると、図4(c)に示すように、第1の切削部材17の位置はそのままの状態で、上回転駆動機構27によって第2の切削部材18が第1の切削部材17とは逆向き(矢印R2方向)に押え部材39と共に旋回移動し、線材6(図2参照)の上側の水平平面6bにおける被膜16と導体15の一部が削り取られる。即ち線材6の剥離すべき部位の上面が剥離される。
【0055】
この場合、下側の水平平面6aは第1の切削部材17の逃げ部17bにおける水平面17dで押えられているだけである。即ち両面同時切削方式のように対向する水平平面6aでは切削は行われていないので、水平平面6b側に対する水平平面6a側からの押圧力(抗力)は弱く、第2の切削部材18による切込み深さが所定以上に深くなることはない。従って、水平平面6bにおける被膜16の完全剥離をするための導体15の最小限の切削が可能となる。
【0056】
また、第1の切削部材17の逃げ部17b(図3(a)参照)における垂直面17cは、第2の切削部材18が水平平面6bを剥離するときの第2の切削部材18の旋回移動方向下流側における線材6の垂直平面6cを押える押え部材として機能する。
このように、第1の切削部材17と第2の切削部材18のうち一方が他方の剥離時の押え部材を兼ねる構成とすれば、必要な押え部材の数を減らすことができ、簡単な構成で剥離時の線材6の位置ずれを防止することができる。第2の切削部材18による剥離動作では、第2の切削部材18の旋回移動の行き過ぎによる不具合は生じないので、アーム48の回動を制限するストッパ59に相当する部材は設けられていない。
【0057】
第2の切削部材18による剥離が終了すると、昇降プレート62が図6の寸法h分上昇し、第2の切削部材18と押え部材39とが線材6の上面から上方へ離れる。適宜のタイミングで、図5に示したエアシリンダ47が動作して、上切削部材支持体26の回転支持筒38が回転し、第2の切削部材18が剥離開始位置に設定される。また、エアシリンダ42が動作して、下切削部材支持体21の回転支持筒35が回転し、第1の切削部材17が剥離開始位置に設定されて線材6から水平方向に離れる。
【0058】
その後、線材6が図1に示した1次曲げ部4側へ向けて所定量搬送され(図9の矢印S方向)、次の剥離すべき部位が線材搬送ガイド20Aと20Bとの間に位置する。その後、昇降プレート62が下降し、図4(a)に示す状態となり、上記で説明した剥離動作が繰り返される。線材6の剥離すべき部位はその後適宜のタイミングで垂直平面6c、6dの被膜を適宜の手段で剥離された後切断部11で線材6の長手方向中央部を切断される。
【0059】
上記のように本実施形態では、第1の切削部材17と第2の切削部材18の剥離動作のタイミングを、一方の切削圧が他方に影響を及ぼさないようにずらしている。この剥離動作のタイミングの相違は、一方の切削部材による剥離動作が完了した後に、他方の切削部材の剥離動作を開始するタイミングの違いだけでなく、一方の切削部材の剥離動作が完了する前、換言すれば他方の切削部材の切削圧の影響を受けない時点で、他方の切削部材の剥離動作を開始する場合も含む意味である。
【0060】
上記実施形態では、第1の切削部材17と第2の切削部材18を線材6の長手方向と交差する方向に逆向きに旋回移動させ、且つ、剥離動作のタイミングをずらす構成としたが、本発明はこれに限定されない。単一の切削部材を旋回移動させて剥離する場合、第1の切削部材17と第2の切削部材18を同じ向きに旋回移動させ、その場合に剥離動作のタイミングをずらす場合等も含まれる。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
1 コイルセグメント成形装置
2 コイル組立装置
3 線材供給部
4 1次曲げ部
5 2次曲げ部
6 線材
6a 1つの平面としての水平平面
6b 対向する平面としての水平平面
7 ボビン
10 線材の被膜剥離装置としての剥離部
11 切断部
15 導体
16 被膜
17 第1の切削部材
18 第2の切削部材
20A,20B 線材搬送ガイド
21 下切削部材支持体
22 駆動機構としての下回転駆動機構
26 上切削部材支持体
27 駆動機構としての上回転駆動機構
39、58 押え部材
100 回転電機の製造装置
W 剥離すべき部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11