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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】蛋白質含有酸性飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20220406BHJP
   A23L 2/42 20060101ALI20220406BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20220406BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/00 N
A23L2/66
A23L2/52
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018148432
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2020022388
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2020-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】518282657
【氏名又は名称】株式会社MLF
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 高之
(72)【発明者】
【氏名】林 哲之
【審査官】▲高▼岡 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-000043(JP,A)
【文献】特開2000-069907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0233053(US,A1)
【文献】特開2002-051734(JP,A)
【文献】特開2001-340069(JP,A)
【文献】特開2009-291081(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176852(WO,A1)
【文献】特開2010-004809(JP,A)
【文献】特開2005-245217(JP,A)
【文献】特開2007-068410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00-2/84
A01J 1/00-99/00
A23C 1/00-23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
WPINDEX(STN)
AGRICOLA(STN)
CAplus(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンを含む蛋白質含有酸性飲料の原料組成物にペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理により微粒化する工程とを含む、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料におけるペクチンの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法。
【請求項2】
蛋白質含有酸性飲料の原料組成物に発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料における発酵セルロースの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法。
【請求項3】
コラーゲンを含む蛋白質含有酸性飲料の原料組成物にペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理により微粒化する工程とを含む、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料におけるペクチンの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法。
【請求項4】
蛋白質含有酸性飲料の原料組成物に発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法であって、前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料における発酵セルロースの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法。
【請求項5】
コラーゲン及びペクチンを含む蛋白質含有酸性飲料の原料組成物の50~0MPaで微粒化された高圧加圧処理物であって、180日間、3~37℃の温度において凝集・沈
殿が発生しない、該蛋白質含有酸性飲料は、該蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%の濃度で、ペクチンを含有する飲料。
【請求項6】
コラーゲン及び発酵セルロースを含む蛋白質含有酸性飲料の原料組成物の200~300MPaでの高圧加圧処理物であって、180日間、3~37℃の温度において凝集・沈殿が発生しない、該蛋白質含有酸性飲料は、該蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%の濃度で、発酵セルロースを含有する飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質含有酸性飲料の製造方法に関するものであり、詳細には、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法に関する。本発明はまた、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法及び蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料にも関する。
【背景技術】
【0002】
pH4.0未満の酸性飲料を製造する場合、珪藻土やセルロースなどの濾過助剤を用いた濾過やフィルター濾過などを行い凝集や沈殿の要因となる物質を取り除くなどの方法が一般的に用いられている。しかし、これらの濾過方法を用いても凝集や沈殿の要因となる物質を完全に取り除くことができず流通後や製品保管中に凝集・沈殿が発生し、著しく外観を損ねるなど商品価値を低下するなど問題となっている。
そこで、酸性飲料において蛋白質に起因する凝集や沈殿の問題を解決するために安定化剤の添加や均質化処理など種々の技術が提案されている。
【0003】
蛋白質含有酸性飲料における凝集・沈殿の防止については、例えば、HLB13以上のショ糖脂肪酸エステルを添加することで凝集物の発生を防止する方法(特許文献1)、pH調整と配合手順を選択することで蛋白質の分離及び沈殿物の発生を防止する方法(特許文献2)、ペクチンとフィチン酸を併用することで乳蛋白の凝集・沈殿を防止する方法(特許文献3)、タマリンド種子多糖類及びグアガムから選ばれた1種又は2種以上とペクチンを併用することで蛋白質の凝固・沈殿を防止する方法(特許文献4)、水溶性大豆多糖類、HMペクチン(ハイメトキシルペクチン)、CMC-Na(カルボキシメチルセルロースナトリウム)若しくはPGA(アルギン酸プロピレングリコールエステル)を併用することで蛋白粒子が凝集、沈殿、相分離することを防止する方法(特許文献5)、水溶性ヘミセルロースとHMペクチンの配合割合で乳蛋白質の凝集・沈殿を防止する方法(特許文献6)、オクテニルコハク酸澱粉を添加することで凝集・沈殿を防止する方法(特許文献7)、PGA(アルギン酸プロピレングリコールエステル)と油脂エマルジョンとショ糖エステル及び/又はグリセリン脂肪酸エステルを添加し、その液を均質化することで蛋白質粒子の凝集を防止する方法(特許文献8)、酸性乳とペクチンを均質化処理した後に、カルシウム成分を加えることで乳蛋白質の凝集・沈殿を防止する方法(特許文献9)、乳蛋白質とペクチンを酸性下で均質化し、次の工程でカルシウム、γ-PGA(ポリ-γ-グルタミン酸)を添加することで乳蛋白質成分の凝集及び沈殿を抑制する方法(特許文献10)及び乳蛋白質とペクチンを酸性下で均質化し、次の工程でカルシウム及び糖類を添加する工程を経ることで乳蛋白質成分の凝集・沈殿を防止する方法(特許文献11)等の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-20180号公報
【文献】特開平7-16084号公報
【文献】特開平4-99442号公報
【文献】特開昭60-256372号公報
【文献】特開平5-7458号公報
【文献】特開2005-323530号公報
【文献】特開2006-333730号公報
【文献】特開昭60-262584
【文献】特開平8-56567号公報
【文献】特開2003-61575号公報
【文献】特開平11-187851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蛋白質、亜鉛などのミネラル、ビタミン、機能性成分、酸味料、甘味料、香味料等を配合した、pH3.8、Brix23、蛋白質含有量12質量%の酸性飲料において、特許文献1乃至11に記載の方法を適用し、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の保管条件で保管したところ、何れの方法においても、想定される保管期間内において、蛋白質成分の凝集・沈殿が観察された。
【0006】
従って、本発明は上記の様な不都合を生じない、即ち、上記の様な蛋白質含有酸性飲料において、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿を生じない蛋白質含有酸性飲料の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、蛋白質含有酸性飲料用の組成物に、ペクチンを特定量添加し、その後に、50~250MPaで高圧加圧処理すると、得られた蛋白質含有酸性飲料は、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿が有意に抑制され得ることを見出し、また、蛋白質含有酸性飲料用の組成物に、発酵セルロースを特定量添加し、その後に、200~300MPaで高圧加圧処理すると、得られた蛋白質含有酸性飲料は、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿が有意に抑制され得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
従って、本発明は、
[1]蛋白質含有酸性飲料用の組成物にペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料におけるペクチンの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法、
[2]蛋白質含有酸性飲料用の組成物に発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料における発酵セルロースの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法、
[3]蛋白質含有酸性飲料用の組成物にペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料におけるペクチンの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法、
[4]蛋白質含有酸性飲料用の組成物に発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料における発酵セルロースの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法、
[5]50~250MPaでの高圧加圧処理により得られる蛋白質含有酸性飲料であって、
該蛋白質含有酸性飲料は、該蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%の濃度で、ペクチンを含有する飲料、
[6]200~300MPaでの高圧加圧処理により得られる蛋白質含有酸性飲料であって、
該蛋白質含有酸性飲料は、該蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%の濃度で、発酵セルロースを含有する飲料
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿を生じないという優れた効果を有する、蛋白質、ミネラル、ビタミン、機能性成分、酸味料、甘味料、香味料等が配合された、蛋白質含有酸性飲料の製造方法が提供される。
また、本発明により、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法及び蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
更に詳細に本発明を説明する。
本発明は、蛋白質含有酸性飲料用の組成物にペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料におけるペクチンの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法、並びに、蛋白質含有酸性飲料用の組成物に発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料における発酵セルロースの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法に関する。
【0011】
本発明で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物は、例えば、水中に、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、機能性成分、酸味料、甘味料、香味料等を含み得る組成物である。
蛋白質含有酸性飲料用の組成物で使用され得る、蛋白質、脂質、ビタミン、ミネラル、機能性成分、酸味料、甘味料、香味料としては、例えば、以下に示したもの等が挙げられる。
【0012】
<蛋白質>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得る蛋白質としては、例えば、大豆蛋白質、カゼイン(カゼイン塩)等の乳蛋白質、乳清蛋白質、卵白、ゼラチン、コラーゲン、プロタミン等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
好ましくは、コラーゲン、プロタミン等が挙げられる。
【0013】
<脂質>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得る脂質としては、例えば、単不飽和脂肪酸、多不飽和脂肪酸、ω-3脂肪酸、および共役リノール酸等の脂肪酸の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
好ましくは、多不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)等が挙げられる。
【0014】
<ビタミン>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得るビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンC、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、ビタミンB6、葉酸(ビタミンB9)、ビタミンB12、ビオチン(ビタミンB7)、パントテン酸(ビタミンB5)等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0015】
<ミネラル>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得るミネラルとしては、例えば、カリウム(K)、塩素(Cl)、カルシウム(Ca)、リン(P)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、フッ素(F)、セレン(Se)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ヨウ素(I)等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0016】
<機能性成分>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得る機能性成分としては、例えば、DNAやヌクレオプロテイン(該DNAやヌクレオプロテインは、例えば、鮭、鱒、鰊及び鱈等の魚類の白子等から抽出し、精製することにより得られたものであり得る。)、RNA(例えば、酵母から抽出し、精製することにより得られたものであり得る。)、難消化性デキストリンやイヌリンなどの食物繊維類、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、牡蠣エキス、キトサン、プロポリス、ローヤルゼリー、トコフェロール、ポリフェノール類、フラボノイド類等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0017】
<酸味料>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得る酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、又はそれらの塩類が挙げられ、中でも、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】
<甘味料>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得る甘味料としては、天然甘味料、人工甘味料、またはこれらの混合物であり得、また、単糖類および/または二糖類等の炭水化物甘味料を含み得る。具体例としては、例えば、果糖、蔗糖、ブドウ糖、オリゴ糖、希少糖、糖アルコール、コーンシロップ、濃縮サトウキビジュース、ライスシロップ、メイプルシロップ、ブラックモルトシロップ、果物ジュース濃縮物、蜂蜜、アガーベ、タピオカシロップ、チコリー根シロップ、ルオハングオ、ステビアおよびその誘導体、エリスリトール、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、タガトース、アリテーム、チクロ等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0019】
<香味料>
蛋白質含有酸性飲料用の組成物に使用し得る香味料としては、例えば、果物の香味、コーラの香味、コーヒーの香味、チョコレートの香味、乳製品の香味、コーヒー、コーラの実、朝鮮人参、カカオ果、バニラ抽出物、柑橘油、柑橘抽出物等の1種又は2種以上の混合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
<その他>
本発明で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物は、その他の成分として、例えば
、保存料、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、着色剤、乳化剤、増粘剤、消泡剤、食感調整剤等を含んでいてもよい。
【0021】
本発明で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物は、水中に蛋白質を含有する組成物であって、好ましは、蛋白質を、該組成物の質量に基づいて、1~15質量%含み、より好ましくは、3~12質量%含む。
本発明で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物は、酸性を示す組成物であって、好ましくは、pHが4.0未満であり、より好ましくは、pHが3.9以下である。
また、本発明で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物におけるpHは、好ましくは、3.0以上であり、より好ましくは、3.5以上である。
【0022】
また、本発明で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物におけるBrix値は、例えば、1%(W/V)以上30%(W/V)以下等が挙げられ、好ましくは、5%(W/V)以上25%(W/V)以下等が挙げられる。
尚、Brix値は、屈折計、旋光計、近赤外分光分析計等を用いた公知の方法により測定すればよく、具体的には、例えば、屈折計により測定することができる。
【0023】
本発明の蛋白質の凝集・沈殿が抑制された蛋白質含有酸性飲料の製造方法は、上記で示されるような蛋白質含有酸性飲料用の組成物に、ペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理する工程とを含むか、又は、上記で示されるような蛋白質含有酸性飲料用の組成物に、発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む。
【0024】
使用され得るペクチンとしては、特に限定されないが、好ましくは、HMペクチン(エステル化度:50%、SP値:1100以上)が挙げられる。
ペクチンの添加濃度としては、高圧加圧処理後に得られる蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%、好ましくは、0.2~0.4質量%である。
ペクチンを添加した際の高圧加圧処理における処理圧力は、50~250MPa、好ましくは、60~245MPa、より好ましくは、60~150MPaであり、1Pass~5Passで行うことができ、1Passで行うのが好ましい。
処理温度としては、冷却から蛋白質が変性しない程度の加温までを採用することができる。
上記の処理において、冷却は必ずしも必要としない。
具体的な処理温度としては、例えば、0℃~85℃程度が挙げられる。
処理速度としては、使用する機器により変動するため、特に限定されるものではないが、具体的な処理速度としては、例えば、1~100L/hr等が挙げられる。
【0025】
使用され得る発酵セルロースとしては、特に限定されないが、具体的には、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製のサンアーティストPG等が挙げられる。
発酵セルロースの添加濃度としては、高圧加圧処理後に得られる蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%、好ましくは、0.2~0.4質量%である。
発酵セルロースを添加した際の高圧加圧処理における処理圧力は、200~300MPa、好ましくは、230~260MPaであり、1Pass~5Passで行うことができ、1Passで行うのが好ましい。
処理温度としては、冷却から蛋白質が変性しない程度の加温までを採用することができる。
上記の処理において、冷却は必ずしも必要としない。
具体的な処理温度としては、例えば、0℃~85℃程度が挙げられる。
処理速度としては、使用する機器により変動するため、特に限定されるものではないが
、具体的な処理速度としては、例えば、1~100L/hr等が挙げられる。
【0026】
発酵セルロースを使用する場合、脂質を併用して使用するのが好ましい。
発酵セルロースとの併用に適した脂質としては、例えば、多不飽和脂肪酸が挙げられ、具体的には、EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)等が挙げられ、DHAが好ましい。
発酵セルロースと脂質を併用して使用する場合における、脂質の添加濃度としては、高圧加圧処理後に得られる蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.01~0.1質量%、好ましくは、0.02~0.08質量%である。
発酵セルロースを添加した際の高圧加圧処理における処理圧力は、200~300MPa、好ましくは、230~260MPaであり、1Pass~5Passで行うことができる。
処理温度及び処理速度は、発酵セルロースを単独で使用した際の条件と同様の条件を採用することができる。
発酵セルロースと脂質を併用して使用する場合、上記の処理圧力で5Passで処理を行った場合においても、長期間(例えば、6ヶ月間)に亘って蛋白質成分の凝集・沈殿を抑制し得る。
【0027】
高圧加圧処理に使用し得る装置としては、通常の高圧加圧処理に使用される装置であれば特に限定されるものではないが、例えば、湿式微粒化装置が挙げられる。
高圧加圧処理装置のチャンバーとしては、ボール衝突チャンバー、斜向衝突チャンバー、分離チャンバー、シングルノズルチャンバー、スリットチャンバー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
好ましいチャンバーとしては、ボール衝突チャンバー、斜向衝突チャンバー等が挙げられる。
【0028】
上記の製造方法に従って製造された蛋白質含有酸性飲料は、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿を生じないという優れた効果を示し得る。
【0029】
本発明はまた、蛋白質含有酸性飲料用の組成物にペクチンを添加する工程と、該ペクチンが添加された組成物を50~250MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料におけるペクチンの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法、並びに、蛋白質含有酸性飲料用の組成物に発酵セルロースを添加する工程と、該発酵セルロースが添加された組成物を200~300MPaで高圧加圧処理する工程とを含む、蛋白質含有酸性飲料中に含まれる蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法であって、
前記方法により得られた蛋白質含有酸性飲料における発酵セルロースの濃度は、該飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%である、方法にも関する。
【0030】
上記の蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法で使用され得る蛋白質含有酸性飲料用の組成物は、上記の製造方法において使用したものと同様のものを用いることができ、また、ペクチン又は発酵セルロースを添加する工程並びに高圧加圧処理する工程における種々の条件等も上記の製造方法において使用したものと同様のものを用いることができる。
該蛋白質の凝集・沈殿を抑制する方法により、蛋白質含有酸性飲料を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿を生じないものとすることができる。
【0031】
本発明はまた、50~250MPaでの高圧加圧処理により得られる蛋白質含有酸性飲
料であって、
該蛋白質含有酸性飲料は、該蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%の濃度で、ペクチンを含有する飲料、並びに、200~300MPaでの高圧加圧処理により得られる蛋白質含有酸性飲料であって、
該蛋白質含有酸性飲料は、該蛋白質含有酸性飲料の質量に基づいて0.1~0.5質量%の濃度で、発酵セルロースを含有する飲料にも関する。
上記の蛋白質含有酸性飲料は、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)のあらゆる保管環境に長期間(例えば、6ヶ月間)保存しても蛋白質成分の凝集・沈殿を生じないという優れた効果を示し得る。
【実施例
【0032】
以下の例で本発明をより詳細に説明するが、これらの例は本発明をある特定の態様に制限することを意図しない。
実施例1
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、ペクチン(HMペクチン、エステル化度:50%以上、SP値:1100以上、Cargill製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力70MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が83.7%であった。また、配合成分のコラーゲン独特の臭いが軽減され、若干粘性のある、口当たりの良い酸性飲料であった。更に、この溶液を水で等量希釈しても白濁は観られなかった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)保管の全ての環境下において、試験直後と比べても変化はなく、凝集・沈殿は認められず、良好な保存安定性を示す懸濁状の蛋白質含有酸性飲料であった。
【0033】
比較例1
60℃に加温したイオン交換水1200gにコラーゲン210g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物16g、亜鉛含有食用酵母2g、エリスリトール106g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)0.6g、保存料(安息香酸ナトリウム)1.2g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)0.8gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)140g、香料(パイナップルフレーバー)4g、酸味料(クエン酸)34gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を2000gとした。
この時点の溶液は、ELSZ-2000(大塚電子(株)製)を用いて測定したゼータ電位が-1.9mV、粘度が0.8878cp、誘電率が78.3であり、配合成分のコラーゲン独特の臭いが若干感じられる酸性飲料であった。
保管試験用として以下の通りにして試料を作成した。
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が78.8%であった。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、冷所(3℃)における4日間、常温(成り行き室温)における4日間、微温(37℃)における4日間の保管で凝集・沈殿が認められた。
【0034】
比較例2
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力70MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が82.0%であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、冷所(3℃)における4日間、常温(成り行き室温)における30日間、微温(37℃)における14日間の保管で凝集・沈殿が認められた。
【0035】
比較例3
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力245
MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が88.8%であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、冷所(3℃)における4日間、常温(成り行き室温)における30日間、微温(37℃)における14日間の保管で凝集・沈殿が認められた。
【0036】
比較例4
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力245MPa・5Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が89.2%であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、冷所(3℃)における4日間、常温(成り行き室温)における4日間、微温(37℃)における4日間の保管で凝集・沈殿が認められた。
【0037】
比較例5
60℃に加温したイオン交換水180gにペクチン(HMペクチン、エステル化度:50%以上、SP値:1100以上、Cargill製)1.2g(0.4質量%)を攪拌し、溶解させた。次にコラーゲン31.5g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物2.4g、亜鉛含有食用酵母0.3g、エリスリトール15.9g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)0.09g、保存料(安息香酸ナトリウム)0.18g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)0.12gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)21g、香料(パイナップルフレーバー)0.6g、酸味料(クエン酸)5.1gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を300gとした。
この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、冷所(3℃)における14日間、微温(37℃)における14日間の保管で凝集・沈殿が認められた。また、常温(成り行き室温)保管における14日間の保管では、凝集・沈殿が若干認められ、更に継続し30日間における保管では全ての試験区で凝集・沈殿が認められた。
【0038】
実施例2
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、ペクチン(HMペクチン、エステル化度:50%以上、SP値:1100以上、Cargill製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力245MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が87.7%であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)保管の全ての環境下における60日間の保管では、試験直後と比べても変化はなく、凝集・沈殿は認められず、良好な保存安定性を示す懸濁状の蛋白質含有酸性飲料であった。
また、冷所(3℃)における180日間、常温(成り行き室温)における180日間で凝集・沈殿が認められず良好であったものの、微温(37℃)における100日間の保管で凝集・沈殿が認められた。
【0039】
実施例1、2及び比較例1~5における保管試験の結果を表1に纏めた。
尚、表中における凝集・沈殿の評価基準(○~×)並びに判定(AA、A、B及びC)は以下の通りとした。
[評価基準]
○:凝集・沈殿が認められなかった。
△:凝集・沈殿が若干認められた。
×:凝集・沈殿が認められた。
[判定]
AA:180日間、全ての保管条件で凝集・沈殿が認められなかった。
A:60日間、全ての保管条件で凝集・沈殿が認められなかった。
B:60日間、一部の試験区で凝集・沈殿が認められたが、他の試験区では沈殿が認められなかった。
C:60日間、全ての保管条件で凝集・沈殿が認められた。
【表1】
【0040】
実施例3
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、発酵セルロース(サ
ンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力245MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が78.6%であった。また、配合成分のコラーゲン独特の臭いが軽減され、口当たりの良い酸性飲料であった。更に、この溶液を水で等量希釈しても白濁は観られなかった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)保管の全ての環境下において、試験直後と比べても変化はなく、凝集・沈殿は認められず、良好な保存安定性を示す懸濁状の蛋白質含有酸性飲料であった。
【0041】
比較例6
60℃に加温したイオン交換水180gに発酵セルロース(サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)1.2g(0.4質量%)を攪拌し、溶解させた。次にコラーゲン31.5g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物2.4g、亜鉛含有食用酵母0.3g、エリスリトール15.9g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)0.09g、保存料(安息香酸ナトリウム)0.18g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)0.12gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)21g、香料(パイナップルフレーバー)0.6g、酸味料(クエン酸)5.1gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を300gとした。
この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。
この溶液は、静置すると発酵セルロースに由来する不溶性の物質が沈降し、蛋白質成分由来の凝集・沈殿と判別できなかったため、保存試験を中止した。
【0042】
比較例7
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、発酵セルロース(サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル
径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力70MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が68.3%であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
その結果、常温(成り行き室温)における60日間で凝集・沈殿が認められた。また、冷所(3℃)における4日間、微温(37℃)における4日間の保管で若干凝集・沈殿が認められた。その後、60日間の保管で全ての試験区において、凝集・沈殿が認められた。
【0043】
実施例3、比較例6及び比較例7における保管試験の結果を表2に纏めた。
また、比較のため、比較例1~4の結果も併せて記載した。
尚、表中における凝集・沈殿の評価基準(○~×)並びに判定(AA、A、B及びC)は前記した通りである。
【表2】
【0044】
実施例4
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、発酵セルロース(サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、DHA(ドコサヘキサエン酸)2.7g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力245MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が59.2%であった。また、配合成分のコラーゲン独特の臭いが軽減され、口当たりの良い酸性飲料であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)保管の全ての環境下において、試験直後と比べても変化はなく、凝集・沈殿は認められず、良好な保存安定性を示す懸濁状の蛋白質含有酸性飲料であった。
【0045】
実施例5
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、発酵セルロース(サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、DHA(ドコサヘキサエン酸)2.7g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力245MPa・5Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が43.3%であった。また、配合成分のコラーゲン独特の臭いが軽減され、口当たりの良い酸性飲料であった。
容器に詰めたこの溶液を、冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)の環境下で180日間保管し、凝集・沈殿の有無を目視で観察した。
冷所(3℃)、常温(成り行き室温)、微温(37℃)保管の全ての環境下において、試験直後と比べても変化はなく、凝集・沈殿は認められず、良好な保存安定性を示す懸濁状の蛋白質含有酸性飲料であった。
【0046】
比較例8
60℃に加温したイオン交換水180gに発酵セルロース(サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)1.2g(0.4質量%)を攪拌し、溶解させた。次に
コラーゲン31.5g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物2.4g、亜鉛含有食用酵母0.3g、エリスリトール15.9g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)0.09g、保存料(安息香酸ナトリウム)0.18g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)0.12g、DHA(ドコサヘキサエン酸)0.16gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)21g、香料(パイナップルフレーバー)0.6g、酸味料(クエン酸)5.1gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を300gとした。
この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。
この溶液は、静置すると発酵セルロースに由来する不溶性の物質が沈降し、蛋白質成分由来の凝集・沈殿と判別できなかったため、保存試験を中止した。
【0047】
比較例9
60℃に加温したイオン交換水3250gにコラーゲン525g、発酵セルロース(サンアーティストPG、三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)20g、DNA含有サケ白子抽出物・RNA含有食用酵母抽出物40g、亜鉛含有食用酵母5g、エリスリトール265g、乳化剤(ポエムZL-3、理研ビタミン(株)社製)1.5g、保存料(安息香酸ナトリウム)3g、ビタミンミックス(チアミン硝酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、ビタミンB12、葉酸、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム)2gを混合した粉末原料を加え、攪拌し、溶解させた。次に、該溶液に、果糖ぶどう糖液糖(ハイフラクトM75、日本コーンスターチ(株)社製)350g、香料(パイナップルフレーバー)10g、DHA(ドコサヘキサエン酸)2.7g、酸味料(クエン酸)85gを順次加え、イオン交換水を添加して全量を5000gとした。
この溶液を高圧加圧装置(スターバースト25005、ボール衝突チャンバー、ノズル径φ0.14、処理圧力70~245MPa、(株)スギノマシン製)を用い圧力70MPa・1Passの条件で高圧加圧処理した。この溶液を容器に充填し、密栓した後、80℃達温5分間加熱処理して、酸性飲料を作成し、保管試験の試料とした。この時点の溶液は、pHが3.8、Brix値が23.5、透過率が59.0%であった。
この溶液は、静置すると発酵セルロースに由来する不溶性の物質が沈降し、蛋白質成分由来の凝集・沈殿と判別できなかったため、保存試験を中止した。
【0048】
実施例4、実施例5、比較例8及び比較例9における保管試験の結果を表3に纏めた。
また、比較のため、比較例1~4の結果も併せて記載した。
尚、表中における凝集・沈殿の評価基準(○~×)並びに判定(AA、A、B及びC)は前記した通りである。
【表3】