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  • 特許-チタン酸アルミニウム粉末の製造方法 図1
  • 特許-チタン酸アルミニウム粉末の製造方法 図2
  • 特許-チタン酸アルミニウム粉末の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】チタン酸アルミニウム粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
C01G23/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018149043
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020023414
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591051335
【氏名又は名称】河合石灰工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 翔太
(72)【発明者】
【氏名】臼井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】太田 康博
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-088459(JP,A)
【文献】特開2010-215416(JP,A)
【文献】特開2013-224255(JP,A)
【文献】特開昭61-057653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物によって被覆された水酸化アルミニウム粉末、又は、チタン化合物によって被覆された擬ベーマイト粉末を焼成する、
ことを特徴とするチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
【請求項2】
焼成温度が1300℃~1500℃である、
請求項1に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
【請求項3】
前記チタン化合物は、硫酸チタニル、四塩化チタン又はオルトチタン酸テトライソプロピルから生成される、
請求項1又は2に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
【請求項4】
前記水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末と前記チタン化合物との配合割合は、AlとTiOとのモル比(Al/TiO)が0.6~1.1となるよう調整される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
【請求項5】
前記チタン酸アルミニウム粉末は、金属溶湯用部材として使用される、
請求項1から4のいずれか1項に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルミニウム(Al・TiO又はAlTiO)は、1800℃以上という高い融点を有し、熱膨張率が低く、耐熱衝撃性に優れている。これらの特性を利用して、チタン酸アルミニウムは、例えば自動車の排ガス処理用触媒担体に用いられている(特許文献1)。
【0003】
チタン酸アルミニウムは、従来、粉末状のチタン源と粉末状のアルミニウム源とを混合し、得られた混合粉末を圧縮成形して成形体を作製し、当該成形体を焼成することにより製造されている。そしてチタン酸アルミニウム粉末は、このようにして得られた成形体を粉砕することにより製造されている(特許文献2)。
【0004】
特許文献3には、チタン源粉末、アルミニウム粉末及びシリコン源粉末を含む前駆体混合物を焼成し、これを粉砕及び分級してチタン酸アルミニウム系セラミックス粉末を製造する方法が開示されている。特許文献3では、当該製造方法により、平均粒子径が20μmを超えるチタン酸アルミニウム系セラミックス粉末が得られたとしている。
【0005】
特許文献4には、Al、TiO、酸化鉄及び有機物粉体を含む混合物を加圧成形した後、密閉容器内で1600℃から1700℃で焼成し粉砕することにより、チタン酸アルミニウム粉体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-72038号公報
【文献】WO2005/105704
【文献】WO2010/041648
【文献】特開平11-60240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
チタン酸アルミニウム粉末を製造するにあたり、製造コストを抑えるため、できる限り低温で合成することが好ましい。特許文献4のように1600℃を超える高温で焼成を行う製造方法では、製造コストが高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、チタン酸アルミニウム粉末を低温で製造することが可能な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法の特徴は以下の通りである。
(項目1)
チタン化合物によって被覆された水酸化アルミニウム粉末、又は、チタン化合物によって被覆された擬ベーマイト粉末を焼成する、
ことを特徴とするチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
(項目2)
焼成温度が1300℃~1500℃である、
項目1に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
(項目3)
前記チタン化合物は、硫酸チタニル、四塩化チタン又はオルトチタン酸テトライソプロピルから生成される、
項目1又は2に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
(項目4)
前記水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末と前記チタン化合物との配合割合は、AlとTiOとのモル比(Al/TiO)が0.6~1.1となるよう調整される、
項目1から3のいずれか1項に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
(項目5)
前記チタン酸アルミニウム粉末は、金属溶湯用部材として使用される、
項目1から4のいずれか1項に記載のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法では、チタン化合物によって被覆された水酸化アルミニウム粉末又はチタン化合物によって被覆された擬ベーマイト粉末を焼成するため、アルミニウム源とチタン源との接触面積が増えて反応が進行し易くなる。その結果、低温でチタン酸アルミニウム粉末を合成できると共に、未反応原料の残存や副生成物の生成割合を抑えることができる。
【0011】
本発明のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法は、粉末状の原料からチタン酸アルミニウム粉末を製造することができ、チタン酸アルミニウムの成形体を作製する必要がない。したがって、当然、チタン酸アルミニウムの成形体を粉砕する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)実施例1の焼成前の粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)画像、(b)比較例1の焼成前の粉末のSEM画像である。
図2】実施例1の焼成前の粉末の粒子断面の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図3】(a)~(c)はそれぞれ実施例1、実施例4及び実施例5で得られたチタン酸アルミニウム粉末のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のチタン酸アルミニウム粉末の製造方法について説明する。
【0014】
本発明の製造方法は、粉末状原料を使用し、チタン酸アルミニウムの成形体を作製することなくチタン酸アルミニウム粉末を作製することを特徴とする。より詳細には、本発明の製造方法は、チタン源を被覆したアルミニウム源粉末を焼成することにより、チタン酸アルミニウム粉末を製造することを特徴とする。
【0015】
アルミニウム源粉末には、水酸化アルミニウム粉末(Al(OH))又は擬ベーマイト粉末(Al・nHO、1.4<n<2.0)を使用することができる。アルミニウム源粉末には、水酸化アルミニウム粉末及び擬ベーマイト粉末以外にも、遷移アルミナ粉末を使用することができる。
【0016】
水酸化アルミニウム粉末の粒子径は特に限定されないが、例えば粒子径がD50=1μm~5μmの粉末を使用することが好ましい。擬ベーマイト粉末は、例えば一次粒子の粒子径が数nmであり、一次粒子が凝集した二次粒子の粒子径が数十μmである粉末を使用することができる。
【0017】
チタン源は特に限定されないが、酸化チタン(TiO)などの無機系のチタン化合物を使用することができ、二種以上のチタン化合物を組み合わせて使用することもできる。
【0018】
チタン化合物は、長径が500nm未満であることが好ましく、300nm未満であることがより好ましい。チタン化合物の長径が500nm未満であることにより、副生成物(TiO及びα-Al)の生成を抑えることができ、焼成温度が低くても純度の高いチタン酸アルミニウムが得られる。
【0019】
また、チタン化合物はアルミニウム源を被覆していることが好ましい。チタン化合物の被覆層は、300nm未満の層厚を有することが好ましく、100nm未満の層厚を有することがより好ましい。被覆層が300nm未満であることにより、副生成物(TiOやα-Al)の生成を抑えることができ、焼成温度が低くても純度の高いチタン酸アルミニウムが得られる。
【0020】
チタン化合物は、水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末を被覆する工程において、チタン化合物前駆物質を化学反応させることにより生成させたものであってもよい。例えば、硫酸チタニル(TiOSO・nHO、1<n<2)、四塩化チタン(TiCl)又はオルトチタン酸テトライソプロピル([(CHCHO]Ti)などの化合物(チタン化合物前駆物質)は、水と混合し、必要に応じて加熱をすると、加水分解反応により酸化チタンを生成することが知られている。この化学反応を利用し、水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末と上記のようなチタン化合物前駆物質とを水中で混合及び加熱することにより、チタン化合物前駆物質から生成した酸化チタンによって水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末を被覆することができる。
【0021】
チタン化合物を水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末に被覆する方法は特に限定されないが、できる限りチタン化合物を水酸化アルミニウム粉末全体又は擬ベーマイト粉末全体にムラなく均一に被覆する観点から、湿式で行うことが好ましい。湿式でチタン化合物を水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末に被覆する方法としては、例えば、水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末にチタン化合物含有溶液を噴霧する方法や、水酸化アルミニウム粉末のスラリー又は擬ベーマイト粉末のスラリーとチタン化合物含有溶液とを混合する方法などが挙げられる。
【0022】
特に好ましい方法としては、水酸化アルミニウム粉末のスラリー又は擬ベーマイト粉末のスラリーと水溶性チタン化合物前駆物質を含有する水溶液とを混合し、必要に応じて所定温度(例えば、100℃以下)で攪拌し、共沈させ、チタン化合物で被覆された水酸化アルミニウム粉末のスラリー又はチタン化合物で被覆された擬ベーマイト粉末のスラリーを得る方法が挙げられる。当該方法を用いることにより、チタン化合物前駆物質から生成したチタン化合物によって、水酸化アルミニウム粉末の表面又は擬ベーマイト粉末の表面を均一に被覆できる。
【0023】
チタン化合物によって被覆された水酸化アルミニウム粉末のスラリー又はチタン化合物によって被覆された擬ベーマイト粉末のスラリーを調製した後、それらのスラリーを濾過及び洗浄する工程をさらに含んでいてもよい。スラリーを濾過及び洗浄する工程において、それらのスラリーが酸性(例えば、pH5未満)である場合には、それらのスラリーにpH調整剤を添加してpHを上昇させる工程を含んでいてもよい。pHは5程度になるまで上昇させることが好ましい。pH調整剤はアルカリ性物質であり、強アルカリ性物質であっても弱アルカリ性物質であってもよい。pH調整剤は、無機系及び有機系に限定されず用いることができるが、コスト面で無機系の方が経済的である。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属に由来するもの、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属に由来するもの、アンモニア水などが挙げられる。
【0024】
湿式法によって準備された、チタン化合物被覆水酸化アルミニウム粉末又はチタン化合物被覆擬ベーマイト粉末は、乾燥工程を経て焼成される。
【0025】
水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末とチタン化合物との配合割合は、AlとTiOとのモル比(Al/TiO)が0.6~1.1となるよう調整されることが好ましく、0.8~1.0となるよう調整されることがより好ましい。
【0026】
焼成温度は、チタン酸アルミニウムが合成される温度であれば特に限定されないが、焼成温度が高いと製造コストが高くなるため、できる限り低温で焼成することが好ましい。使用する水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末、使用するチタン化合物、及び焼成時間によっても異なるが、焼成温度は、例えば1300℃~1500℃、好ましくは1300℃~1350℃である。
【0027】
焼成時間は、チタン酸アルミニウムが合成される時間であれば特に限定されないが、焼成時間が長くなると製造コストが高くなるため、できる限り短時間で焼成することが好ましい。使用する水酸化アルミニウム粉末又は擬ベーマイト粉末、使用するチタン化合物、及び焼成温度によっても異なるが、焼成時間は5時間以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法は、焼成によって合成されたチタン酸アルミニウム粉末を解砕する工程を含んでいてもよい。焼成後のチタン酸アルミニウム粉末は、一次粒子同士の凝集や軽度の焼結により、二次粒子を形成している場合がある。このような場合に、チタン酸アルミニウム粉末を解砕することで、適切な粒子径に調整することができる。なお、解砕とは、一次粒子同士の凝集をほぐしたり、焼結によって生じた一次粒子間の融着を破壊したりすることにより、一次粒子自体をほとんど破壊することなく、二次粒子を一次粒子まで分散する操作のことである。解砕には、公知の解砕手段を利用することができ、例えばボールミルなどの粉砕装置を利用することができる。このとき、一次粒子を破壊しないよう、解砕力や解砕時間は適宜調節される。
【0029】
チタン酸アルミニウム粉末中に含まれる副生成物の割合は15質量%未満であることが好ましく、10質量%未満であることがより好ましい。副生成物としては、使用するアルミニウム源やチタン源にもよるが、例えばAl(コランダム)やTiO(ルチル)が生成することが知られている。
【0030】
チタン酸アルミニウム粉末は、Al及びTi以外の金属元素を実質的に含有していないことが好ましい。なお、「Al及びTi以外の金属元素を実質的に含有していない」とは、意図的にAl及びTi以外の金属元素を添加しないことを意味し、不可避的不純物としてAl及びTi以外の金属元素を含有することは許容される。
【0031】
チタン酸アルミニウム粉末は、金属溶湯用部材をコーティングするためのコーティング剤として使用できる。金属溶湯としては、例えばアルミニウム溶湯が挙げられる。部材はとしては、例えば取鍋など金属溶湯を入れるための容器が挙げられる。チタン酸アルミニウム粉末を使用したコーティング剤によって部材をコーティングすることにより、部材の腐食といった、金属溶湯と部材との反応を防止できる。また、チタン酸アルミニウム粉末は、成形体の原料やフィラーとして使用することができる。
【実施例
【0032】
以下では、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例及び比較例におけるチタン酸アルミニウム粉末の合成手順を以下で説明する。また、実験条件及び実験結果を表1及び表2に示す。
【0034】
<チタン酸アルミニウム粉末の合成>
[実施例1]
(1)軟水350mLの入ったビーカに、硫酸チタニル(n=1.5として計算)を62.5g投入し、硫酸チタニルが軟水に完全に溶解してビーカ内の液体が透明になるまで撹拌した。
(2)上記(1)で作製した硫酸チタニル水溶液に水酸化アルミニウム粉末(日本軽金属株式会社製、BF013)を45.5g投入し、前駆体溶液とした。なお、水酸化アルミニウム粉末と硫酸チタニルの質量は、AlとTiOのモル比が1:1となるよう決定した。
(3)上記(2)で得られた前駆体溶液を80℃で20.5時間撹拌した。この工程において、表面が酸化チタンで被覆された水酸化アルミニウム粉末のスラリーが得られる。
(4)上記(3)で得られたスラリーに、pH調整剤としてアンモニア水(濃度28wt%)を、pHが5になるまで添加した。
(5)上記(4)で得られたスラリーを、吸引濾過により、濾液の電気伝導度が30mS/m以下になるまで軟水で洗浄した。
(6)上記(5)で得られたスラリーを120℃で15時間乾燥した。
(7)上記(6)で得られた粉末を乳鉢または小型粉砕機で解砕し、酸化チタンによって被覆された水酸化アルミニウム粉末を作製した。
(8)上記(7)で得られた粉末を耐熱容器に入れ、当該耐熱容器を電気炉に入れ、200℃/hの昇温速度で室温から1350℃まで昇温し、1350℃で5時間保持し、その後電気炉内で自然冷却した。
(9)上記(8)で得られた粉末を乳鉢または小型粉砕機で解砕し、本発明のチタン酸アルミニウム粉末を得た。
【0035】
[実施例2]
焼成温度を1300℃に変更した以外、実施例1と同じ手順及び条件で実験した。
【0036】
[実施例3]
実施例1の水酸化アルミニウム粉末を水酸化アルミニウム粉末(住友化学株式会社製、C‐301N)に変更した以外、実施例1と同じ手順及び条件で実験した。
【0037】
[実施例4]
実施例1の水酸化アルミニウム粉末を水酸化アルミニウム粉末(住友化学株式会社製、CL‐303)に変更した以外、実施例1と同じ条件で実験した。
【0038】
[実施例5]
実施例1の水酸化アルミニウム粉末を擬ベーマイト粉末(富田製薬株式会社、AD-220T)37.6g(n=1.5として計算)に変更した以外、実施例1と同じ手順及び条件で実験した。
【0039】
[比較例1]
(1)水酸化アルミニウム粉末(日本軽金属株式会社製、BF013)3.9gと、アナターゼ型酸化チタン粉末(関東化学株式会社製、試薬)2.0gとを混合し、混合粉末を作製した。なお、水酸化アルミニウム粉末とアナターゼ型酸化チタン粉末の質量は、AlとTiOのモル比が1:1となるよう決定した。
(2)上記(1)で得られた混合粉末を耐熱容器に入れ、当該耐熱容器を電気炉に入れ、200℃/hの昇温速度で室温から焼成温度である1350℃まで昇温し、1350℃で5時間保持し、その後電気炉内で自然冷却した。
【0040】
[比較例2]
比較例1の水酸化アルミニウム粉末を水酸化アルミニウム粉末(住友化学株式会社製、CL‐303)に変更した以外、比較例1と同じ手順及び条件により実験を行った。
【0041】
[比較例3]
比較例1の水酸化アルミニウム粉末を擬ベーマイト粉末(富田製薬株式会社、AD-220T、n=1.5として計算)3.2gに変更した以外、比較例1と同じ手順及び条件により実験を行った。
【0042】
[比較例4]
比較例1の水酸化アルミニウム粉末をα-アルミナ粉末(関東化学株式会社製)2.55gに変更した以外、比較例1と同じ手順及び条件により実験を行った。
【0043】
[比較例5]
市販のチタン酸アルミニウム粉末(ASONE株式会社製)を使用した。
【0044】
<評価方法>
[X線回折測定]
(1)粉末X線回折測定装置(装置名:BRUKER AXS製 D2 PHASER、X線:CuKα線)を用いて、X線回折パターンから生成物を同定した。
(2)粉末X線回折測定装置に付属した定量分析ソフトTOPASを用い、X線回折パターンのピーク強度から、チタン酸アルミニウムの生成割合(質量%)を求めた(表1参照)。
【0045】
[SEM観察]
(1)エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を搭載した走査型電子顕微鏡(装置名:日本電子株式会社製 JSM-7500FA)を使用して、実施例1及び比較例1の焼成前の粉末を観察し、酸化チタンによる水酸化アルミニウム粒子の被覆状態を調べた。実施例1の粉末について、走査型電子顕微鏡に付属の計測ツールを使用して、水酸化アルミニウム粒子を被覆している酸化チタンの長径を測定した。
(2)SEMにより、実施例1、実施例4及び実施例5において作製されたチタン酸アルミニウム粉末を観察した。
(3)EDSにより、実施例1~5及び比較例5のチタン酸アルミニウム粉末中の元素比を測定した。EDSの元素マッピング測定は、視野倍率:3000倍、加速電圧:15kV、積算回数:50回の条件で行った。測定されたAl濃度はすべてAl酸化物中のAlによるものであり、測定されたTi濃度はすべてTi酸化物中のTiによるものであると考え、Al酸化物とTi酸化物の質量割合を算出した(表2参照)。
【0046】
[TEM観察]
透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製 JEM-2100)を用いて、実施例1の焼成前の粉末の断面を観察した。まず、エポキシ樹脂中に、酸化チタンによって被覆された水酸化アルミニウム粉末を埋め込み、イオンスライサ(日本電子株式会社製 EM-09100IS)を用いて切断して、粒子断面を露出させた。透過型電子顕微鏡付属の計測ツールを使用して、水酸化アルミニウム粒子を被覆している酸化チタン層の厚みを計測した。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
図1(a)に示すように、実施例1の焼成前の粉末では、水酸化アルミニウム粒子の表面が、長径20~300nmの酸化チタン粒子で被覆されている。一方、図1(b)に示すように、比較例1の焼成前の粉末では、水酸化アルミニウム粒子の表面は酸化チタン粒子によって被覆されておらず、酸化チタン粒子は水酸化アルミニウム粒子の周囲に存在していることが分かる。図2のTEM画像では、中心の色が濃い部分が水酸化アルミニウムであり、その周囲の色が薄い部分が酸化チタンである。酸化チタン層の厚みは、42~68nmであった。以上の結果から、実施例1の焼成前の粉末では、水酸化アルミニウム粒子が、長径20~300nmの酸化チタン粒子によって、層厚100nm未満で被覆されていることが分かる。
【0050】
XRDの結果、実施例1~5のいずれでも、90質量%以上のチタン酸アルミニウムが生成しており、副生成物は10質量%未満であった。副生成物は、TiOとα-Alであった。この結果から、本発明の製造方法により、1300℃又は1350℃という低温でも、副生成物の少ないチタン酸アルミニウム粉末を作製することができることが分かる。
【0051】
EDS分析の結果、実施例1~5のチタン酸アルミニウム粉末は、AlとTi以外の金属元素を含んでいなかった。これに対し、比較例5のチタン酸アルミニウム粉末は、Siの金属元素を約9質量%含んでいた。
図1
図2
図3