(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】両頭平面研削盤
(51)【国際特許分類】
B24B 7/17 20060101AFI20220406BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220406BHJP
B24B 47/12 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B24B7/17 Z
B24B41/06 Z
B24B47/12
(21)【出願番号】P 2018150535
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594050670
【氏名又は名称】日清工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 光市
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079821(JP,A)
【文献】実開平02-110334(JP,U)
【文献】実開平04-055140(JP,U)
【文献】特開平03-184358(JP,A)
【文献】特開2003-124167(JP,A)
【文献】特開平10-217081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0162183(US,A1)
【文献】特開2018-144208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B3/00-7/30
B24B21/00-51/00
H01L21/304;21/463
H01L21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを研削するために第1方向に間隔をあけて対向配置されかつ回転する一対の砥石、
前記ワークを収容する本体部と、前記本体部に収容された前記ワークの外周面の周方向に沿って変形可能でありかつ前記本体部に支持される線状部材とを有し、前記線状部材が前記ワークの外周面を押圧することによって前記ワークを保持する保持部、
前記第1方向に延びる第1回転軸周りに前記保持部を回転させる回転駆動部、および
前記ワークを前記一対の砥石で挟んで前記ワークの両主面を研削するために少なくとも一方の前記砥石を前記ワークに対して切り込ませる砥石切込部を備え
、
前記保持部は、相互に対向する一対の前記線状部材を有し、前記一対の線状部材で前記ワークを挟むことによって前記ワークを保持し、
前記本体部は、前記各線状部材の中央部が前記本体部に対して前記第1方向に変位可能となるように、前記各線状部材の中央部を固定することなく前記各線状部材の一端部および他端部を支持する、両頭平面研削盤。
【請求項2】
前記一対の線状部材の一方は、前記ワークの外周面の一方側半分に沿うように変形可能に設けられ、前記一対の線状部材の他方は、前記ワークの外周面の他方側半分に沿うように変形可能に設けられる、請求項
1に記載の両頭平面研削盤。
【請求項3】
前記本体部は、前記一対の線状部材が相互に近づく方向および離れる方向に変位可能となるように、前記各線状部材の一端部および他端部を支持する、請求項
1または2に記載の両頭平面研削盤。
【請求項4】
前記本体部は、前記各線状部材の他端部を支点として、前記一対の線状部材が相互に近づく方向および離れる方向に開閉可能となるように、前記一対の線状部材を支持する、請求項
3に記載の両頭平面研削盤。
【請求項5】
前記本体部は、前記ワークの外周面に対向しかつ前記ワークの周方向に沿って延びる溝部を有し、
前記一対の線状部材は、前記各線状部材の少なくとも一部が前記溝部内に位置するように前記溝部に沿って設けられる、請求項
1から
4のいずれかに記載の両頭平面研削盤。
【請求項6】
前記第1方向において、前記溝部の寸法は、前記一対の線状部材の寸法よりも大きく設定される、請求項
5に記載の両頭平面研削盤。
【請求項7】
前記線状部材は、前記ワークの外周面に面接触する内周面を有する、請求項1から
6のいずれかに記載の両頭平面研削盤。
【請求項8】
前記保持部は、前記線状部材よりも摩擦係数が大きくかつ前記線状部材を被覆する被覆部材をさらに有する、請求項1から
7のいずれかに記載の両頭平面研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は両頭平面研削盤に関し、より特定的には、一対の砥石を回転させてワークの両主面を研削する両頭平面研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術の一例として、特許文献1には、回転ホルダーを有するワーク保持装置が開示されている。回転ホルダーは環状に形成され、回転ホルダーの内周面には、2つの保持突起が形成されるとともに、板ばねが設けられる。板ばねが、回転ホルダーの内方に配置されたワークを押圧することによって、ワークは、板ばねおよび保持突起に挟まれるようにして、回転ホルダーに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、板ばねは、ワークの外周面の周方向に沿うように変形可能に設けられるものではない。また、保持突起は、ワークの外周面の周方向に沿うように平面視において円弧状に形成されていると考えられるが、実際には、ワークや保持突起には製造上のばらつきが生じるので、保持突起を、ワークの外周面の周方向に沿うように形成することは困難である。このため、ワークを保持したときに、ワークと板ばねおよび保持突起との接触面積が小さくなり、各接触部分においてワークに集中荷重が加わるすなわちワークに3点集中荷重が加わるので、ワーク(特に径方向の厚みが小さいワーク)が歪んでしまうおそれがある。また、ワークが歪むことを避けるために、ワークを押圧する力を小さくすると、各接触部分において十分な摩擦力が得られず、ワークを加工しているときに、ワークが回転ホルダーに対して滑ってしまうおそれがある。このように、ワークが歪んだり滑ることによって、ワークの加工精度は低下する。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ワークの両主面の加工精度を向上させることができる、両頭平面研削盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、ワークを研削するために第1方向に間隔をあけて対向配置されかつ回転する一対の砥石、ワークを収容する本体部と、本体部に収容されたワークの外周面の周方向に沿って変形可能でありかつ本体部に支持される線状部材とを有し、線状部材がワークの外周面を押圧することによってワークを保持する保持部、第1方向に延びる第1回転軸周りに保持部を回転させる回転駆動部、およびワークを一対の砥石で挟んでワークの両主面を研削するために少なくとも一方の砥石をワークに対して切り込ませる砥石切込部を備える、両頭平面研削盤が提供される。
【0007】
この発明では、線状部材はワークの外周面の周方向に沿うように変形可能に設けられるので、線状部材とワークとの真実接触面積を大きくできる。したがって、ワークを保持したときにワークを押圧する力を分散させることができる。このように、ワークを保持したとき、ワークと線状部材との接触部分には均等荷重が加わる。また、線状部材とワークとの真実接触面積が大きくなることによって、線状部材とワークとの間の摩擦係数が大きくなるので、ワークを押圧する力を大きくすることなく線状部材とワークとの摩擦力を大きくできる。これによって、ワークが歪むことを抑制できるとともにワークが滑ることを抑制でき、ワークの両主面の加工精度を向上できる。
【0008】
好ましくは、保持部は、相互に対向する一対の線状部材を有し、一対の線状部材でワークを挟むことによってワークを保持する。この場合、一対の線状部材でワークを挟むことによって、ワークを押圧する力をバランスよく分散できるとともに、線状部材とワークとの真実接触面積を大きくできる。したがって、ワークが歪むことを抑制できるとともにワークが滑ることを抑制でき、ワークの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0009】
また好ましくは、一対の線状部材の一方は、ワークの外周面の一方側半分に沿うように変形可能に設けられ、一対の線状部材の他方は、ワークの外周面の他方側半分に沿うように変形可能に設けられる。この場合、ワークの外周面の全周に沿うように一対の線状部材が設けられるので、線状部材とワークとの真実接触面積をさらに大きくできる。したがって、ワークが歪むことを抑制できるとともにワークが滑ることを抑制でき、ワークの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0010】
さらに好ましくは、本体部は、各線状部材の中央部が本体部に対して第1方向に変位可能となるように、各線状部材の中央部を固定することなく各線状部材の一端部および他端部を支持する。この場合、各線状部材の中央部がワークの外周面を押圧することによって、ワークは第1方向に移動可能に保持されるので、たとえばワークの両主面にうねりがある場合であっても、ワークの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0011】
好ましくは、本体部は、一対の線状部材が相互に近づく方向および離れる方向に変位可能となるように、各線状部材の一端部および他端部を支持する。この場合、一対の線状部材を相互に離れる方向に変位させることによって、ワークを本体部に容易に収容できるとともに、一対の線状部材を相互に近づく方向に変位させることによって、ワークを容易に保持できる。したがって、研削効率を向上できる。
【0012】
また好ましくは、本体部は、各線状部材の他端部を支点として、一対の線状部材が相互に近づく方向および離れる方向に開閉可能となるように、一対の線状部材を支持する。この場合、各線状部材の他端部を変位させる必要がないので、簡単な構造で研削効率を向上できる。
【0013】
さらに好ましくは、本体部は、ワークの外周面に対向しかつワークの周方向に沿って延びる溝部を有し、一対の線状部材は、各線状部材の少なくとも一部が溝部内に位置するように溝部に沿って設けられる。この場合、線状部材をワークの外周面に対向する溝部に沿って設けることによって、線状部材をワークの外周面の所望の位置に容易に配置できる。したがって、線状部材をワークの外周面に容易に押圧させることができ、研削効率を向上できる。
【0014】
好ましくは、第1方向において、溝部の寸法は、一対の線状部材の寸法よりも大きく設定される。この場合、一対の線状部材を溝部内において第1方向に揺動可能に設けることができる。したがって、一対の線状部材で押圧されたワークを、第1方向に移動させることができるので、ワークの研削精度をさらに向上できる。
【0015】
また好ましくは、線状部材は、ワークの外周面に面接触する内周面を有する。この場合、線状部材とワークとの真実接触面積をさらに大きくできる。したがって、ワークが歪むことを抑制できるとともにワークが滑ることを抑制でき、ワークの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0016】
さらに好ましくは、保持部は、線状部材よりも摩擦係数が大きくかつ線状部材を被覆する被覆部材をさらに有する。この場合、被覆部材とワークとの摩擦力を、線状部材とワークとの摩擦力よりも大きくできるので、ワークが滑ることを抑制でき、ワークの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0017】
なお、この発明において「ワークの両主面」とは、ワークの外周面に接続される一対の面のことを意味する。たとえば、ワークが円環形状を有する場合には、ワークの両主面とは一対の円環状の面(すなわち、ワークの表面のうち外周面および内周面を除く2つの面)のことを意味し、ワークが円板形状を有する場合には、ワークの両主面とは一対の円形状の面(すなわち、ワークの表面のうち外周面を除く2つの面)のことを意味する。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、ワークの両主面の加工精度を向上させることができる、両頭平面研削盤が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の一実施形態に係る立型両頭平面研削盤を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図2】立型両頭平面研削盤の主要部の構成を示す断面図解図である。
【
図4】立型両頭平面研削盤の主要部の構成を示す平面図である。
【
図5】保持部を示す図であり、(a)は一部断面平面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
【
図6】保持部の主要部を示す図であり、(a)は一部断面拡大図であり、(b)は(a)のC-C線断面図である。
【
図7】保持部にワークWを収容した状態を示す一部断面平面図である。
【
図8】保持部の他の例を示す一部断面平面図である。
【
図9】保持部のその他の例を示す一部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、この発明の一実施形態に係る立型両頭平面研削盤10を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。なお、
図1(b)においては、図面が煩雑になることを避けるために、後述する駆動モータ22bを含む一部の構成の図示を省略している。
【0022】
図1を参照して、立型両頭平面研削盤(以下、単に両頭平面研削盤という)10は、凹部12aを有するコラム12を含む。凹部12aは、前方(後述する伝達部材42側)に向かって開口するようにコラム12の中央部に形成される。コラム12の凹部12aには、ワークWを研削するための一対の砥石14a,14bが矢印V方向(この実施形態では上下方向)に間隔をあけて同軸上に対向配置される。この実施形態では、矢印V方向が第1方向に相当する。
【0023】
この実施形態では、砥石14a,14bはそれぞれ平面視において円環形状を有する。また、この実施形態では、ワークWは平面視において円環形状を有する。したがって、ワークWは断面円形の外周面を有する。
【0024】
一対の砥石14a,14bは、砥石軸16a,16bによって支持される。砥石軸16a,16bは、砥石軸ユニット18a,18bによって回転自在かつ上下移動可能に支持されるとともに、ベルト20a,20bを介して駆動モータ22a,22bに連動する。したがって、駆動モータ22a,22bの回転駆動力がベルト20a,20bを介して砥石軸16a,16bに伝達され、これによって砥石14a,14bが回転駆動される。
【0025】
砥石軸16a,16bは、砥石切込装置24a,24bによって上下方向に移動可能である。砥石軸16a,16bが砥石切込装置24a,24bによって上下方向に移動することによって、一対の砥石14a,14bがそれぞれ上下方向に移動し、ワークWに対して切り込むことができる。なお、この実施形態では、下側の砥石14bの高さは、後述するガイドプレート104の上面(研削加工前のワークWの下面)と略等しい高さに予め設定され、砥石14bが磨耗したとき等には上下方向に移動されて微調整される。この実施形態では、砥石切込装置24aが砥石切込部に相当する。
【0026】
コラム12に隣接する位置にフロントコラム26が配置される。フロントコラム26に搬送ユニット28および回転駆動ユニット30が支持される。搬送ユニット28は、駆動モータ32、駆動軸34、伝達部材35および旋回プレート36を含む。回転駆動ユニット30は、駆動モータ38、駆動軸40および伝達部材42を含む。この実施形態では、回転駆動ユニット30が回転駆動部に相当する。
【0027】
図2は、両頭平面研削盤10の主要部の構成を示す断面図解図である。
【0028】
図2をも参照して、駆動軸34は上下方向に延びるように設けられかつ伝達部材35を介して駆動モータ32に連結される。駆動軸34の上端部には、ボルト43によって旋回プレート36が固定される。この実施形態では、旋回プレート36は、矢印V方向に対して直角に設けられる。駆動モータ32の回転が伝達部材35を介して駆動軸34に伝達され、駆動軸34が回転駆動される。旋回プレート36は、駆動軸34を中心として回転する。この実施形態では、旋回プレート36が一方向(たとえば、平面視において時計回り)に180度回転することによって後述する保持部52が供給位置Sから研削位置Gへと移動し、旋回プレート36が他方向に180度回転することによって保持部52が研削位置Gから供給位置Sへと移動する。
【0029】
図3は、旋回プレート36を示す平面図であり、
図4は、両頭平面研削盤10の主要部の構成を示す平面図である。
【0030】
図2~
図4を参照して、旋回プレート36は、凹部44、貫通部46、複数(この実施形態では、4つ)のねじ穴48、および複数(この実施形態では、3つ)の貫通孔50を有する。凹部44は、旋回プレート36の上面から下方に凹み、底面44aおよび貫通孔44bを有する。貫通孔44bには、駆動軸40が回転可能に挿通され、底面44a上には、駆動軸40の上端部に固定される伝達部材42が回転可能に設けられる。凹部44についての詳細な説明は省略するが、凹部44は、伝達部材42が回転可能な十分な大きさでかつ貫通部46に繋がるように形成される。
【0031】
図2を参照して、駆動軸34は中空形状を有する。
図1および
図2を参照して、駆動軸40は、上下方向に延びるように駆動軸34内に挿通される。駆動軸40の下端部には駆動モータ38が接続される。駆動モータ38によって駆動軸40が回転駆動され、伝達部材42が回転する。なお、図面が煩雑になることを避けるために図示は省略するが、伝達部材42の外周面にはギア溝が形成される。すなわち、この実施形態では、伝達部材42としてギアが用いられる。
【0032】
図2および
図3を参照して、貫通部46は旋回プレート36を上下方向に貫通する。貫通部46は、水平面に対して平行な支持面46aを含む。支持面46aは略円環形状を有する。支持面46aは、凹部44の底面44aに接続される。この実施形態では、底面44aと支持面46aとが面一になるように、凹部44および貫通部46が形成される。
【0033】
図2および
図4を参照して、貫通部46に環状の保持部52が設けられる。ワークWは、保持部52によって保持される。ワークWの保持方法については後述する。
【0034】
図5は、保持部52を示す図であり、(a)は一部断面平面図であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
図6は、保持部52の主要部を示す図であり、(a)は一部断面拡大図であり、(b)は(a)のC-C線断面図である。なお、
図6(b)においては、図面が煩雑になることを避けるため、ワークWの図示を省略する。
図7は、保持部52にワークWを収容した状態を示す一部断面平面図である。
【0035】
図5~
図7を参照して、保持部52は、環状の本体部54、および本体部54に支持される一対の線状部材56a,56bを有する。本体部54は、本体部54の上面側外周部において、本体部54の径方向の外方に向かって鍔状に突出する鍔状部57を有する。すなわち、鍔状部57は、平面視円環形状となる。また、鍔状部57は、その外周面に図示しないギア溝を有する。
図2を参照して、鍔状部57は旋回プレート36の支持面46aに摺動可能に支持される。鍔状部57のギア溝と伝達部材42のギア溝とは互いに噛み合う。これにより、駆動モータ38の回転駆動力が、駆動軸40および伝達部材42を介して保持部52に伝達される。その結果、保持部52は、矢印V方向(上下方向)に延びる回転軸58周りに回転する。この実施形態では、回転軸58が第1回転軸に相当する。
【0036】
図4を参照して、この実施形態では、平面視において、伝達部材42が反時計回りに回転することによって、保持部52が時計回りに回転する。なお、伝達部材42が時計回りに回転し、保持部52が反時計回りに回転してもよい。
【0037】
図2および
図4を参照して、鍔状部57の上方を覆うように、旋回プレート36の上面に円環状のガイドプレート60が支持される。ガイドプレート60は、旋回プレート36から保持部52が外れてしまうことを防止する。この実施形態では、ガイドプレート60は、4つのねじ62をそれぞれ、ガイドプレート60の対応する貫通孔(図示せず)に挿通し、旋回プレート36の対応するねじ穴48(
図3参照)に螺入することによって旋回プレート36の上面に固定される。
【0038】
図5~
図7を参照して、本体部54は、貫通部64、第1支持部66、第2支持部68、および一対の溝部70a,70bをさらに有する。
【0039】
貫通部64は、本体部54の中央を上下方向に貫通し、平面視において円形状に形成される。
【0040】
第1支持部66は、第1凹部72、一対のレバー74a,74b、ばね76、およびストッパ78を有する。第1凹部72は、本体部54の上面から下方に凹み、貫通部64に繋がるように形成される。第1凹部72の幅は、貫通部64側よりも鍔状部57側の方が大きい。一対のレバー74a,74bは、略L字状に形成され、第1凹部72内に相互に対向して設けられる。レバー74aは、溝部80aを有し、ボルト82a周りに揺動可能に設けられる。溝部80aは、本体部54の径方向におけるレバー74aの内端部側において、レバー74aの上面から下面まで形成される。溝部80aは、溝部70aの第1凹部72側端部に向かって開口するように設けられる。これによって、線状部材56aを、溝部70aに沿うように設け易くなる。溝部80aは、溝部80aの端部に形成される平面視略円形の係止部84aを有する。係止部84aは、レバー74aの上面から下面まで形成される。レバー74bは、溝部80bを有し、ボルト82b周りに揺動可能に設けられる。溝部80bは、本体部54の径方向におけるレバー74bの内端部側において、レバー74bの上面から下面まで形成される。溝部80bは、溝部70bの第1凹部72側端部に向かって開口するように設けられる。これによって、線状部材56bを、溝部70bに沿うように設け易くなる。溝部80bは、溝部80bの端部に形成される平面視略円形の係止部84bを有する。係止部84bは、レバー74bの上面から下面まで形成される。ばね76は、本体部54の径方向における一対のレバー74a,74bの外端部同士を繋ぎ、一対のレバー74a,74bの外端部が相互に離れる方向に一対のレバー74a,74bを押圧する。これによって、本体部54の径方向における一対のレバー74a,74bの内端部は、相互に近づく方向に揺動される。ストッパ78は、本体部54の径方向における一対のレバー74a,74bの内端部同士の間に設けられ、ボルト86によって第1凹部72内に固定される。ストッパ78は、保持部52がワークWを保持しないとき、ばね76によって相互に近づく方向に揺動される一対のレバー74a,74bの内端部を係止する。
【0041】
第2支持部68は、第2凹部88および支持部材90を有する。第2凹部88は、本体部54の上面から下方に凹み、貫通部64を挟んで第1凹部72に対向しかつ貫通部64に繋がるように形成される。第2凹部88の幅は、貫通部64側よりも鍔状部57側の方が小さい。支持部材90は、第2凹部88の幅方向に延び、ボルト92によって第2凹部88内に固定される。また、支持部材90は、一対の溝部94a,94bを有する。一対の溝部94a,94bは、ボルト92を挟んで対称に設けられ、支持部材90の上面から下面まで形成される。溝部94aは、溝部70aの第2凹部88側端部に向かって開口するように設けられる。これによって、線状部材56aを、溝部70aに沿うように設け易くなる。溝部94aは、溝部94aの端部に形成される平面視略円形の係止部96aを有する。係止部96aは、支持部材90の上面から下面まで形成される。溝部94bは、溝部70bの第2凹部88側端部に向かって開口するように設けられる。これによって、線状部材56bを、溝部70bに沿うように設け易くなる。溝部94bは、溝部94bの端部に形成される平面視略円形の係止部96bを有する。係止部96bは、支持部材90の上面から下面まで形成される。
【0042】
一対の溝部70a,70bは、本体部54の内周面から径方向の外方に凹み、貫通部64を挟んで相互に対向するように形成される。一対の溝部70a,70bは、本体部54の軸方向の中央近傍に形成される。一対の溝部70a,70bはそれぞれ、本体部54の周方向に延び、第1凹部72と第2凹部88とに繋がる。矢印V方向において、一対の溝部70a,70bの寸法H1は、一対の線状部材56a,56bの本体部98a,98b(後述)の寸法H2よりも大きく設定される。
【0043】
一対の線状部材56a,56bは、本体部54の径方向の外方に凸に湾曲し、かつ相互に対向するように設けられる。
【0044】
線状部材56aは、本体部98a、本体部98aの一端部に設けられるボス部100a、および本体部98aの他端部に設けられるボス部102aを有する。本体部98aは、断面略円形かつ線状に形成され、変形可能な部材からなる。この実施形態では、線状部材56aとしてワイヤロープが用いられる。ボス部100aは上下方向に延びかつ円柱状に形成され、ボス部100aの直径は係止部84aの直径よりもやや小さく形成される。ボス部102aは上下方向に延びかつ円柱状に形成され、ボス部102aの直径は係止部96aの直径よりもやや小さく形成される。本体部98aは、本体部98aの少なくとも一部が溝部70a内に位置するように溝部70aに沿って設けられる。本体部98aの一端部は、ボス部100aとともに上方から溝部80a内に挿入される。このとき、ボス部100aは係止部84aに係止される。これによって、線状部材56aは、本体部98aの軸方向において溝部80aから外れないように本体部54に支持される。本体部98aの他端部は、ボス部102aとともに上方から溝部94a内に挿入される。このとき、ボス部102aは係止部96aに係止される。これによって、線状部材56aは、本体部98aの軸方向において溝部94aから外れないように本体部54に支持される。このように、線状部材56aの中央部(本体部98a)が本体部54に固定されることなく、線状部材56aの一端部(ボス部100a)および他端部(ボス部102a)が本体部54に支持されるので、線状部材56aの中央部(本体部98a)は、溝部70a内を矢印V方向に変位可能となる。
【0045】
線状部材56bは、本体部98b、本体部98bの一端部に設けられるボス部100b、および本体部98bの他端部に設けられるボス部102bを有する。本体部98bは、断面略円形かつ線状に形成され、変形可能な部材からなる。この実施形態では、線状部材56bとしてワイヤロープが用いられる。ボス部100bは上下方向に延びかつ円柱状に形成され、ボス部100bの直径は係止部84bの直径よりもやや小さく形成される。ボス部102bは上下方向に延びかつ円柱状に形成され、ボス部102bの直径は係止部96bの直径よりもやや小さく形成される。本体部98bは、本体部98bの少なくとも一部が溝部70b内に位置するように溝部70bに沿って設けられる。本体部98bの一端部は、ボス部100bとともに上方から溝部80b内に挿入される。このとき、ボス部100bは係止部84bに係止される。これによって、線状部材56bは、本体部98bの軸方向において溝部80bから外れないように本体部54に支持される。本体部98bの他端部は、ボス部102bとともに上方から溝部94b内に挿入される。このとき、ボス部102bは係止部96bに係止される。これによって、線状部材56bは、本体部98bの軸方向において溝部94bから外れないように本体部54に支持される。このように、線状部材56bの中央部(本体部98b)が本体部54に固定されることなく、線状部材56bの一端部(ボス部100b)および他端部(ボス部102b)が本体部54に支持されるので、線状部材56bの中央部(本体部98b)は、溝部70b内を矢印V方向に変位可能となる。
【0046】
一対の線状部材56a,56bは、一対のレバー74a,74bをボルト82a,82b回りに揺動させることによって、他端部(ボス部102a,102b)を支点として相互に近づく方向および離れる方向に開閉可能となるように設けられる。すなわち、一対の線状部材56a,56bは、相互に近づく方向および離れる方向に変位可能となるように設けられる。
【0047】
図1を参照して、旋回プレート36の下方にガイドプレート104が設けられる。ガイドプレート104は、保持部52からワークWが落下することを防止する。また、ガイドプレート104は、旋回プレート36によってワークWが供給位置Sと研削位置Gとの間で搬送される際に、ワークWの下面をガイドプレート104の上面に沿って滑らせつつワークWを供給位置Sまたは研削位置Gへ案内する。
【0048】
図5および
図7を参照して、保持部52によるワークWの保持方法について説明する。
【0049】
まず
図7に示すように、本体部54の径方向における一対のレバー74a,74bの外端部を相互に近づく方向(矢印D参照)に揺動させる。たとえば、エアチャック等の治具を用いて、矢印D方向の力を加えることによって、一対のレバー74a,74bを揺動させる。これに伴って、本体部54の径方向における一対のレバー74a,74bの内端部は相互に離れる方向に揺動する。これによって、一対の線状部材56a,56bは、他端部(ボス部102a,102b)を支点として、相互に離れる方向に開く。この状態で、一対の線状部材56a,56bの間すなわち本体部54の貫通部64にワークWを収容する。このとき、一対の溝部70a,70bは、ワークWの外周面に対向しかつワークWの周方向に沿って延びる。また、このとき、ばね76は縮んだ状態となる。次に、エアチャック等による矢印D方向の力を解除し、ばね76が伸びようとする力によって、本体部54の径方向における一対のレバー74a,74bの外端部を相互に離れる方向に揺動させ内端部を相互に近づく方向に揺動させる。これによって、一対の線状部材56a,56bが、他端部(ボス部102a,102b)を支点として、相互に近づく方向に閉まり、
図5に示すように、一対の線状部材56a,56bの中央部(本体部98a,98b)が、ワークWの外周面の周方向に沿って変形するとともにワークWの外周面を押圧する。このように、一対の線状部材56a,56bの中央部(本体部98a,98b)がワークWを挟みかつワークWの外周面を押圧することによって、保持部52はワークWを矢印V方向に移動可能に保持する。
【0050】
次に、
図1、
図2および
図4を参照して、両頭平面研削盤10の主要動作を説明する。
【0051】
まず、図示しないローディング装置によって供給位置Sに位置する保持部52に研削待ちのワークWが供給される。
【0052】
次に、搬送ユニット28によって、保持部52に保持されたワークWが一対の砥石14a,14b間に送り込まれる。具体的には、旋回プレート36が180度回転することによって、保持部52に収容されたワークWが供給位置Sから研削位置Gに搬送される。
【0053】
搬送後、回転駆動ユニット30によって保持部52およびワークWが回転される。具体的には、駆動モータ38の回転駆動力が駆動軸40および伝達部材42を介して保持部52に伝達され、保持部52が回転する。このとき、保持部52に保持されたワークWは、回転軸58(
図2参照)周りに保持部52と一体的に回転する。
【0054】
つづいて、駆動モータ22a,22bによって砥石14a,14bが回転されるとともに、砥石切込装置24aによって上側の砥石14aが予め設定された位置(この実施形態では、砥石14aがワークWに当たる寸前の位置)まで急速下降される。
【0055】
そして、砥石14aの切込速度(下降速度)が予め設定された粗研削速度まで減速され、一対の砥石14a,14bによってワークWの両主面の粗研削が実施される。このとき、一対の砥石14a,14bで一時に挟まれるのはワークWの研削されるべき全ての面ではないが、ワークWは回転しているのでワークWの研削されるべき全ての面が一対の砥石14a,14b間を通過し研削される。
【0056】
予め設定された所定の切込位置までの粗研削が終了すれば、砥石14aの切込速度が予め設定された精研削速度まで減速され、一対の砥石14a,14bによってワークWの両主面の精研削が実施される。予め設定された所定の切込位置(仕上げ寸法位置)までの精研削が終了すれば、砥石14aの下降が停止され、スパークアウトが実施される。
【0057】
所定のスパークアウト時間が経過すれば、砥石切込装置24aによって上側の砥石14aが迅速に元の位置まで上昇される。砥石14aの上昇の開始とほぼ同時に、搬送ユニット28によって、保持部52に収容されたワークWが一対の砥石14a,14b間から送り出される。具体的には、旋回プレート36が180度回転することによって、保持部52に収容されたワークWが研削位置Gから供給位置Sに搬送される。
【0058】
最後に、図示しないアンローディング装置によって保持部52からワークWが排出される。
【0059】
このような両頭平面研削盤10によれば、一対の線状部材56a,56bはワークWの外周面の周方向に沿うように変形可能に設けられるので、一対の線状部材56a,56bとワークWとの真実接触面積を大きくできる。したがって、ワークWを保持したときにワークWを押圧する力を分散させることができる。このように、ワークWを保持したとき、ワークWと一対の線状部材56a,56bとの接触部分には均等荷重が加わる。また、一対の線状部材56a,56bとワークWとの真実接触面積が大きくなることによって、一対の線状部材56a,56bとワークWとの間の摩擦係数が大きくなるので、ワークWを押圧する力を大きくすることなく一対の線状部材56a,56bとワークWとの摩擦力を大きくできる。これによって、ワークWが歪むことを抑制できるとともにワークWが滑ることを抑制でき、ワークWの両主面の加工精度を向上できる。
【0060】
一対の線状部材56a,56bでワークWを挟むことによって、ワークWを押圧する力をバランスよく分散できるとともに、一対の線状部材56a,56bとワークWとの真実接触面積を大きくできる。したがって、ワークWが歪むことを抑制できるとともにワークWが滑ることを抑制でき、ワークWの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0061】
各線状部材56a,56bの中央部(本体部98a,98b)がワークWの外周面を押圧することによって、ワークWは矢印V方向に移動可能に保持されるので、たとえばワークWの両主面にうねりがある場合であっても、ワークWの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0062】
一対の線状部材56a,56bを相互に離れる方向に変位させることによって、ワークWを本体部54に容易に収容できるとともに、一対の線状部材56a,56bを相互に近づく方向に変位させることによって、ワークWを容易に保持できる。したがって、研削効率を向上できる。
【0063】
本体部54は、各線状部材56a,56bの他端部(ボス部102a,102b)を支点として、一対の線状部材56a,56bが相互に近づく方向および離れる方向に開閉可能となるように、一対の線状部材56a,56bを支持するので、各線状部材56a,56bの他端部を変位させる必要がなく、簡単な構造で研削効率を向上できる。
【0064】
一対の線状部材56a,56bをワークWの外周面に対向する一対の溝部70a,70bに沿って設けることによって、一対の線状部材56a,56bをワークWの外周面の所望の位置に容易に配置できる。したがって、一対の線状部材56a,56bをワークWの外周面に容易に押圧させることができ、研削効率を向上できる。
【0065】
矢印V方向において、一対の溝部70a,70bの寸法H1は、一対の線状部材56a,56bの寸法H2よりも大きく設定されるので、一対の線状部材56a,56bを一対の溝部70a,70b内において矢印V方向に揺動可能に設けることができる。したがって、一対の線状部材56a,56bで押圧されたワークWを、矢印V方向に移動させることができるので、ワークWの研削精度をさらに向上できる。
【0066】
以下、保持部の他の例について説明する。なお、上述した保持部52と共通する部分については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0067】
【0068】
図8を参照して、保持部106は、環状の本体部108、および本体部108に支持される一対の線状部材110a,110bを有する。本体部108は、鍔状部57、貫通部64、第1支持部112、第2支持部114、および一対の溝部116a,116bを有する。
【0069】
第1支持部112は、第1凹部118、一対のレバー120a,120b、および2つのばね76を有する。第1凹部118は、本体部108の上面から下方に凹み、貫通部64に繋がるように形成される。一対のレバー120a,120bは、略S字状に形成され、第1凹部118内に相互に対向して設けられる。レバー120aは、第1凹部118内において溝部116b側に設けられ、レバー120bは、第1凹部118内において溝部116a側に設けられる。レバー120aは、溝部122aを有し、ボルト82a周りに揺動可能に設けられる。溝部122aは、本体部108の径方向におけるレバー120aの内端部側において、レバー120aの上面から下面まで形成される。溝部122aは、レバー120bに向かって開口するように設けられる。溝部122aは、溝部122aの端部に形成される平面視略円形の係止部124aを有する。係止部124aは、レバー120aの上面から下面まで形成される。レバー120bは、溝部122bを有し、ボルト82b周りに揺動可能に設けられる。溝部122bは、本体部108の径方向におけるレバー120bの内端部側において、レバー120bの上面から下面まで形成される。溝部122bは、レバー120aに向かって開口するように設けられる。溝部122bは、溝部122bの端部に形成される平面視略円形の係止部124bを有する。係止部124bは、レバー120bの上面から下面まで形成される。各ばね76は、本体部108の径方向における各レバー120a,120bの外端部と第1凹部118の側面とを繋ぎ、一対のレバー120a,120bの外端部が相互に近づく方向に各レバー120a,120bを押圧する。これによって、本体部108の径方向における一対のレバー120a,120bの内端部は、相互に離れる方向に揺動される。
【0070】
第2支持部114は、第2凹部126および一対の溝部128a,128bを有する。第2凹部126は、本体部108の上面から下方に凹み、貫通部64を挟んで第1凹部118に対向しかつ貫通部64に繋がるように形成される。一対の溝部128a,128bは、本体部108の上面から下方に凹み、第2凹部126を挟んで相互に対向しかつ第2凹部126に繋がるように形成される。溝部128aは、溝部128aの端部に形成される平面視略円形の係止部130aを有し、溝部128bは、溝部128bの端部に形成される平面視略円形の係止部130bを有する。
【0071】
一対の溝部116a,116bは、本体部108の内周面から径方向の外方に凹み、貫通部64を挟んで相互に対向するように形成される。一対の溝部116a,116bは、本体部108の軸方向の中央近傍に形成される。一対の溝部116a,116bはそれぞれ、本体部108の周方向に延び、第1凹部118と第2凹部126とに繋がる。各溝部116a,116bの深さ(本体部108の径方向における各溝部116a,116bの寸法)は、各溝部116a,116bの第1凹部118側端部において、漸次深くなるように形成される。
【0072】
一対の線状部材110a,110bはそれぞれ、一対の線状部材56a,56bの本体部98a,98bよりも全長が長い本体部132a,132bを有する。この実施形態では、一対の線状部材110a,110bとしてワイヤロープが用いられる。本体部132a,132bは、断面略円形かつ線状に形成され、一端部側および他端部側において相互に交差するように設けられる。本体部132aは、本体部132aの少なくとも一部が溝部116a内に位置するように溝部116aに沿って設けられ、本体部132aの一端部は、ボス部100aとともに上方から溝部122a内に挿入され、本体部132aの他端部は、ボス部102aとともに上方から溝部128a内に挿入される。本体部132bは、本体部132bの少なくとも一部が溝部116b内に位置するように溝部116bに沿って設けられ、本体部132bの一端部は、ボス部100bとともに上方から溝部122b内に挿入され、本体部132bの他端部は、ボス部102bとともに上方から溝部128b内に挿入される。このように、各線状部材110a,110bの中央(本体部132a,132b)が本体部108に固定されることなく、各線状部材110a,110bの一端部(ボス部100a,100b)および他端部(ボス部102a,102b)が本体部108に支持される。したがって、各線状部材110a,110bの中央部(本体部132a,132b)は、各溝部116a,116b内を矢印V方向(
図1参照)に変位可能となる。
【0073】
一対の線状部材110a,110bは、一対のレバー120a,120bをボルト82a,82b回りに揺動させることによって、他端部(ボス部102a,102b)を支点として相互に近づく方向および離れる方向に開閉可能となるように設けられる。すなわち、一対の線状部材110a,110bは、相互に近づく方向および離れる方向に変位可能となるように設けられる。
【0074】
保持部106によるワークWの保持方法について説明する。まず、本体部108の径方向における一対のレバー120a,120bの外端部を相互に離れる方向(矢印E参照)に揺動させる。たとえば、エアチャック等の治具を用いて、矢印E方向に力を加えることによって、一対のレバー120a,120bを揺動させる。これに伴って、本体部108の径方向における一対のレバー120a,120bの内端部は相互に近づく方向に揺動する。これによって、一対の線状部材110a,110bは、他端部(ボス部102a,102b)を支点として、相互に離れる方向に開く。この状態で、一対の線状部材110a,110bの間すなわち本体部108の貫通部64にワークWを収容する。このとき、一対の溝部116a,116bは、ワークWの外周面に対向しかつワークWの周方向に沿って延びる。また、このとき、各ばね76は縮んだ状態となる。次に、エアチャック等による矢印E方向の力を解除し、各ばね76が伸びようとする力によって、本体部108の径方向における一対のレバー120a,120bの外端部を相互に近づく方向に揺動させ内端部を相互に離れる方向に揺動させる。これによって、一対の線状部材110a,110bは、他端部(ボス部102a,102b)を支点として、相互に近づく方向に揺動する。そして、
図8に示すように、線状部材110aの中央部(本体部132a)は、ワークWの外周面の一方側半分に沿うように変形するとともにワークWの外周面を押圧し、線状部材110bの中央部(本体部132b)は、ワークWの外周面の他方側半分に沿うように変形するとともに、ワークWの外周面を押圧する。このように、一対の線状部材110a,110bの中央部(本体部132a,132b)がワークWを挟みかつワークWの外周面を押圧することによって、保持部106はワークWを矢印V方向(
図1参照)に移動可能に保持する。
【0075】
保持部106を用いた場合、保持部52を用いた場合と同様の作用効果を奏することができる。さらに、ワークWの外周面の全周に沿うように一対の線状部材110a,110bが設けられるので、線状部材110a,110bとワークWとの真実接触面積をさらに大きくできる。したがって、ワークWが歪むことを抑制できるとともにワークWが滑ることを抑制でき、ワークWの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0076】
【0077】
図9を参照して、保持部134は、環状の本体部136、および本体部136に支持される線状部材138を有する。本体部136は、鍔状部57、貫通部64、第1支持部112、および溝部139を有する。
【0078】
溝部139は、保持部106の溝部116a,116bの第2凹部126側を延長し相互に接続したものと同形状、同寸法に設定される。線状部材138は、線状部材110a(110b)の本体部132a(132b)よりも全長が長い本体部140を有する。この実施形態では、線状部材138としてワイヤロープが用いられる。本体部140は、断面略円形かつ線状に形成される。また、本体部140は、本体部140の少なくとも一部が溝部139内に位置するように溝部139に沿って平面視略環状に設けられ、本体部140の一端部および他端部は、相互に交差するように設けられる。本体部140の一端部は、ボス部100aとともに上方から溝部122aに挿入され、本体部140の他端部は、ボス部102aとともに上方から溝部122bに挿入される。
【0079】
線状部材138は、一対のレバー120a,120bをボルト82a,82b回りに揺動させることによって、開閉可能となるように設けられる。
【0080】
保持部134によるワークWの保持方法について説明する。まず、保持部106の場合と同様、本体部136の径方向における一対のレバー120a,120bの外端部を相互に離れる方向(矢印F参照)に揺動させる。これに伴って、本体部136の径方向における一対のレバー120a,120bの内端部は相互に近づく方向に揺動する。これによって、線状部材138は、外方に開くように変位する。この状態で、線状部材138の内方すなわち本体部136の貫通部64にワークWを収容する。このとき、各ばね76は縮んだ状態となる。次に、保持部106の場合と同様、各ばね76が伸びようとする力によって、本体部136の径方向における一対のレバー120a,120bの外端部を相互に近づく方向に揺動させ内端部を相互に離れる方向に揺動させる。これによって、線状部材138は、内方に閉じるように変位する。そして、
図9に示すように、線状部材138の中央部(本体部140)は、ワークWの外周面の周方向の全周に沿うように変形するとともに、ワークWの外周面を押圧する。
【0081】
保持部134を用いた場合、線状部材138とワークWとの真実接触面積を大きくすることによって、ワークWが歪むことを抑制できるとともにワークWが滑ることを抑制でき、ワークWの両主面の加工精度を向上できる。また、第2支持部を設ける必要がないので、コストを削減できる。
【0082】
上述の実施形態では、保持部52,106,134が、線状部材56a,56b,110a,110b,138を被覆する被覆部材を有さない場合について説明したが、これに限定されない。保持部52,106,134は、線状部材56a,56b,110a,110b,138よりも摩擦係数が大きくかつ線状部材56a,56b,110a,110b,138を被覆する被覆部材を有してもよい。この場合、被覆部材とワークWとの摩擦力を、線状部材56a,56b,110a,110b,138とワークWとの摩擦力よりも大きくできるので、ワークWが滑ることを抑制でき、ワークWの両主面の加工精度をさらに向上できる。
【0083】
上述の実施形態では、2つの線状部材56a,56b(110a,110b)を有する保持部52(106)、および1つの線状部材138を有する保持部134について説明したが、これに限定されない。保持部は、3つ以上の線状部材を有してもよい。
【0084】
上述の実施形態では、保持部134が、平面視略環状に設けられる1つの線状部材138を有する場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、保持部は、平面視略半円弧状に設けられる1つの線状部材を有してもよい。この場合、保持部は、1つの線状部材と保持部の本体部の内周面とで、ワークWを挟みかつワークWの外周面を押圧することによって、ワークWを保持できる。
【0085】
上述の実施形態では、線状部材56a,56b,110a,110,138が、断面略円形の本体部98a,98b,132a,132b,140を有する場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、線状部材は、断面楕円形、断面三角形、または断面四角形等の本体部を有してもよい。
【0086】
また、線状部材は、ワークWの外周面に面接触する内周面を有してもよい。この場合、線状部材とワークWとの真実接触面積をさらに大きくできるので、ワークWが歪むことを抑制できるとともにワークWが滑ることを抑制でき、ワークWの両主面の加工精度を向上できる。
【0087】
上述の実施形態では、線状部材56a,56b,110a,110b,138に、ワイヤロープを用いる場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、線状部材に、紐、針金、ロープ(ワイヤロープ以外)、またはケーブル等を用いてもよい。
【0088】
上述の実施形態では、ワークWの研削時には砥石14bの位置が固定されているが、砥石切込装置24bによって砥石14bを上昇させつつワークWを研削してもよい。この場合、砥石切込装置24a,24bが砥石切込部に相当する。また、砥石14aの位置を固定し、砥石14bのみを上昇させることによってワークWを研削してもよい。この場合、砥石切込装置24bが砥石切込部に相当する。砥石14bの切込速度は必ずしも砥石14aの切込速度と同じでなくてもよい。
【0089】
上述の実施形態では、この発明を立型の両頭平面研削盤に適用した場合について説明したが、この発明は横型の両頭平面研削盤にも適用できる。
【0090】
上述の実施形態では、円環状のワークWを研削する場合について説明したが、この発明に係る両頭平面研削盤が研削できるワークの形状は上述の例に限定されない。この発明に係る両頭平面研削盤は、種々のワーク(たとえば、円板状、円柱状、楕円板状または多角形板状のワーク)を研削できる。また、この発明に係る両頭平面研削盤は、外周面に凹部または切欠を有するワークを研削することもできる。
【符号の説明】
【0091】
10 立型両頭平面研削盤
14a,14b 砥石
24a,24b 砥石切込装置
28 搬送ユニット
30 回転駆動ユニット
52,106,134 保持部
54,98a,98b,108,132a,132b,136,140 本体部
56a,56b,110a,110b,138 線状部材
58 回転軸
70a,70b,80a,80b,94a,94b,116a,116b,122a,122b,128a,128b,139 溝部
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