(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】電気外科用切断器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20220406BHJP
A61B 17/295 20060101ALI20220406BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B17/295
A61B18/18 100
(21)【出願番号】P 2018549515
(86)(22)【出願日】2017-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2017061740
(87)【国際公開番号】W WO2017198671
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2016-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】スウェイン,サンドラ・メイ
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】モリス,スティーブン
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02487288(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢動点において接合された第1のブレードと第2のブレードであって、前記第1のブレードが、前記第1のブレードの第1の表面上の第1の伝導性要素を前記第1のブレードの第2の表面上の第2の伝導性要素から分離する第1の誘電材料で作製された平面体であり、前記第2の表面が、前記第1の表面の反対方向に向いている、前記第1のブレードと前記第2のブレード;
前記第1のブレードと前記第2のブレードとの間に間隙が生じるように前記枢動点を中心に前記第1のブレードと前記第2のブレードとの間に相対的回転をもたらして、開位置と閉位置との間で切り替えるための作動手段であって、前記相対的回転が、前記第1のブレードの前記平面体によって形成される平面に実質的に沿って行われる、前記作動手段;
前記第1のブレードにRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを送り込むための同軸伝送線であって、第2の誘電材料によって分離された内側伝導体と外側伝導体とを有する、前記同軸伝送線
を有する電気外科用切断器具であって、
前記内側伝導体及び前記外側伝導体が、前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素のうちの一方にそれぞれ接続され、
前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素が、前記同軸伝送線によって前記第1のブレードに送り込まれるRFエネルギーに対応するRF電場を前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素と前記第2の伝導性要素との間で維持するためのアクティブ電極及びリターン電極として機能することができ、
前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素が、前記同軸伝送線によって前記第1のブレードに送り込まれるマイクロ波エネルギーに対応するマイクロ波電磁(EM)場を放出するためのアンテナ構造体としても機能することがで
き、
前記第1のブレード及び前記第2のブレードが、前記電気外科用切断器具の遠位端に置かれているクレビス構造体の中に取り付けられ、前記クレビス構造体が、前記同軸伝送線に装着するための基部と、前記第1のブレード及び前記第2のブレードを受け入れるための長手方向に延びる凹部を画定する筐体と、を含み、
前記クレビス構造体が、前記長手方向に延びる凹部を横断する回転軸を含み、前記第1のブレード及び前記第2のブレードが、前記回転軸上に回転可能に取り付けられており、
前記同軸伝送線の前記内側伝導体及び前記外側伝導体と、前記第1のブレードにおける前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素との間の電気接続が、前記回転軸上に設けられた複数の伝導性のスリーブを介して行われる、
前記電気外科用切断器具。
【請求項2】
前記第2のブレードが、前記第2のブレードの第1の表面上の第1の伝導性要素を前記第2のブレードの第2の表面上の第2の伝導性要素から分離する第1の誘電材料で作製された平面体を備え、前記第2の表面が、前記第1の表面の反対方向に向き、
前記同軸伝送線が、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを前記第2のブレードに送り込むように構成され、
前記内側伝導体及び前記外側伝導体が、前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素のうちの一方にそれぞれ接続され、
前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素が、前記同軸伝送線によって前記第2のブレードに送り込まれるRFエネルギーに対応するRF電場を前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素と前記第2の伝導性要素との間で維持するためのアクティブ電極及びリターン電極として機能することができ、
前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素が、前記同軸伝送線によって前記第2のブレードに送り込まれるマイクロ波エネルギーに対応するマイクロ波電磁(EM)場を放出するためのアンテナ構造体としても機能することができる、
請求項1に記載の電気外科用切断器具。
【請求項3】
前記第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素が、前記間隙にわたって互いに対向する前記第1のブレードの面及び前記第2のブレードの面において露出している、請求項2に記載の電気外科用切断器具。
【請求項4】
前記間隙にわたって対向する前記第1のブレードの前記面及び前記第2のブレードの前記面が、湾曲している、請求項3に記載の電気外科用切断器具。
【請求項5】
前記間隙にわたって対向する前記第1のブレードの前記面及び前記第2のブレードの前記面が、それぞれ、前記第1のブレードの前記平面体によって形成される平面及び前記第2のブレードの前記平面体によって形成される平面に対して、垂直に配向される、請求項3または4に記載の電気外科用切断器具。
【請求項6】
前記同軸伝送線の前記内側伝導体が、前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2のブレードの前記第2の伝導性要素に電気的に接続され、
前記同軸伝送線の前記外側伝導体が、前記第1のブレードの前記第2の伝導性要素及び前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素に電気的に接続されている、
請求項2から5のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項7】
前記同軸伝送線の前記内側伝導体が、前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素に電気的に接続され、
前記同軸伝送線の前記外側伝導体が、前記第1のブレードの前記第2の伝導性要素及び前記第2のブレードの前記第2の伝導性要素に電気的に接続されている、
請求項2から5のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項8】
前記開位置から前記閉位置への移動中、各ブレードの前記第1の表面が、互いを越えるように摺動する、請求項2から7のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項9】
前記閉位置において、前記間隙にわたって互いに対向する前記第1のブレードの前記面及び前記第2のブレードの前記面が、平行である、請求項3から5のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項10】
前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素が、前記第1の表面及び前記第2の表面上の1つまたは複数の金属化層から形成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項11】
前記第1の誘電材料の厚さが、1mm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項12】
前記閉位置にあるとき、前記電気外科用切断器具によって規定される外形形状の最大外径が、5mm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項13】
前記同軸伝送線の前記内側伝導体が、中空であり、中を貫通しているチャネルを画定する、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項14】
前記作動手段が、前記枢動点に対して可動である作動要素を備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項15】
前記作動要素が、前記第1のブレード及び/または前記第2のブレードに動作可能に接続されているプッシュロッドを含む、請求項14に記載の電気外科用切断器具。
【請求項16】
前記作動手段が、カム構成体を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項17】
前記カム構成体が、
前記枢動点に対して長手方向に摺動するように取り付けられたプッシュロッドと、
前記第1のブレードにおいて形成されたガイド経路とを備え、
前記プッシュロッドが、前記ガイド経路と動作可能に係合し、
前記ガイド経路が、長手方向からオフセットされ、それによって、前記枢動点に対して前記プッシュロッドが長手方向に移動すると、前記第1のブレードが、前記枢動点に対して枢動する、
請求項16に記載の電気外科用切断器具。
【請求項18】
前記ガイド経路が、前記枢動点からオフセットされている方向に延びる線形進路である、請求項17に記載の電気外科用切断器具。
【請求項19】
前記プッシュロッドが、前記線形進路上に位置するように制約されて取り付けられた従動子を備える、請求項18に記載の電気外科用切断器具。
【請求項20】
前記プッシュロッドが、前記同軸伝送線において摺動可能に取り付けられている、請求項17から19のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項21】
前記作動手段が、前記プッシュロッドに枢動可能に接続された近位端と、前記枢動点からオフセットされた場所において前記第1のブレードに枢動可能に接続された遠位端とを有する連結部を備える、請求項15に記載の電気外科用切断器具。
【請求項22】
前記プッシュロッドが、前記第1のブレードに固着されている予め形成された湾曲した遠位部分を有するワイヤを備える、請求項15に記載の電気外科用切断器具。
【請求項23】
前記第1のブレードと前記第2のブレードとを前記開位置に向かって圧迫するように構成された付勢手段を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項24】
前記作動手段が、前記第1のブレード及び前記第2のブレードに対して摺動可能に取り付けられているカラーを含み、前記カラーが、前記第1のブレード及び前記第2のブレードを囲んで前記第1のブレード及び前記第2のブレードを前記閉位置に保持する第1の位置と、前記第1のブレード及び前記第2のブレードを露出させて前記第1のブレード及び前記第2のブレードを開くことを可能にする第2の位置との間で可動である、請求項1~23のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具。
【請求項25】
枢動点において接合された第1のブレードと第2のブレードであって、各ブレードが、第1の表面上の第1の伝導性要素を第2の表面上の第2の伝導性要素から分離する第1の誘電材料で作製された平面体であり、前記第2の表面が、前記第1の表面の反対方向に向いている、前記第1のブレードと前記第2のブレード;
開位置と閉位置との間で、前記枢動点を中心に前記第1のブレードと前記第2のブレードとの間に相対的回転をもたらすための作動手段であって、前記相対的回転が、前記第1のブレードおよび前記第2のブレードの各々の前記平面体によって形成される平面に実質的に沿って行われる、前記作動手段;
第2の誘電材料によって分離された第1の内側伝導体と第1の外側伝導体とを有する第1の同軸伝送線であって、前記第1のブレードにRF信号及びマイクロ波周波数信号を送り込むように構成され、前記第1の内側伝導体及び前記第1の外側伝導体がそれぞれ、前記第1のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素に接続されている、前記第1の同軸伝送線;
第3の誘電材料によって分離された第2の内側伝導体と第2の外側伝導体とを有する第2の同軸伝送線であって、前記第2のブレードにRF信号及びマイクロ波周波数信号を送り込むように構成され、前記第2の内側伝導体及び前記第2の外側伝導体がそれぞれ、前記第2のブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素に接続されている、前記第2の同軸伝送線
を有する電気外科用切断器具であって、
各ブレードの前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素が、前記第1の同軸伝送線及び前記第2の同軸伝送線それぞれによって前記第1のブレード及び前記第2のブレードに送り込まれる前記RF信号に対応するRF電場を前記第1の伝導性要素と前記第2の伝導性要素との間で維持するためのアクティブ電極及びリターン電極として機能することができ、
前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素がまた、前記第1の同軸伝送線及び前記第2の同軸伝送線それぞれによって前記第1のブレード及び前記第2のブレードに送り込まれる前記マイクロ波周波数信号に対応するマイクロ波周波数EM場を放出するためのアンテナ構造体としても機能することがで
き、
前記第1のブレード及び前記第2のブレードが、前記電気外科用切断器具の遠位端に置かれているクレビス構造体の中に取り付けられ、前記クレビス構造体が、前記第1の同軸伝送線および前記第2の同軸伝送線に装着するための基部と、前記第1のブレード及び前記第2のブレードを受け入れるための長手方向に延びる凹部を画定する筐体と、を含み、
前記クレビス構造体が、前記長手方向に延びる凹部を横断する回転軸を含み、前記第1のブレード及び前記第2のブレードが、前記回転軸上に回転可能に取り付けられており、
前記第1の同軸伝送線の前記第1の内側伝導体及び前記第1の外側伝導体と、前記第1のブレードにおける前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素との間の電気接続、ならびに、前記第2の同軸伝送線の前記第2の内側伝導体及び前記第2の外側伝導体と、前記第2のブレードにおける前記第1の伝導性要素及び前記第2の伝導性要素との間の電気接続が、前記回転軸上に設けられた複数の伝導性のスリーブを介して行われる、
前記電気外科用切断器具。
【請求項26】
RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを出力するように構成された電気外科用発電機;
前記電気外科用発電機からRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを受け取るように接続された請求項1~
25のいずれか一項に記載の電気外科用切断器具
を含む電気外科用用具。
【請求項27】
前記第1のブレードと前記第2のブレードとの間の前記電気外科用発電機からのRFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーを交番に切り替えるように構成された信号オルタネータを含む、請求項
26に記載の電気外科用用具。
【請求項28】
前記信号オルタネータが、同軸スイッチ、PINダイオード、及びバラクタダイオード電源スイッチのうちのいずれか1つを備える、請求項
27に記載の電気外科用用具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を切断し、凝固させるための電気外科用切断/凝固器具に関する。詳細には、本発明は、生体組織を切断するための高周波(radiofrequency:RF)エネルギー及び/または止血(すなわち、血液の凝固を促進させることによって破裂した血管を封止する)のためのマイクロ波周波数エネルギーを送り込むことができる電気外科用切断器具に関する。
【背景技術】
【0002】
外科の切除は、ヒトまたは動物の体内から臓器の切片を取り除く手法である。臓器は、非常に血管が豊富であり得る。組織が切断(すなわち、分断または横切開)されると、小血管は、損傷または裂傷される場合がある。最初の出血の後には、出血を塞ぐために血液が血塊へと変わる凝固カスケードが続く。手術中、患者にとって、失う血液は可能な限り少ないことが望ましく、したがって、出血のない切断を行うために、装置が種々、開発されている。内視鏡的手技の場合、血液の流れにより執刀医の視覚が覆い隠される場合があるので、出血が生じて臨機に処理されないことはやはり望ましくない。鋭利なブレードの代わりに、RFエネルギーを使用して生体組織を切断することが知られている。RFエネルギーを使用して切断する方法では、電流が(イオン細胞含有物によって促進されて)組織基質の中を通るとき、組織を横切る電子流に対するインピーダンスが熱を発生させるという原理を使用して手術が行われる。純正弦波が組織基質に加えられると、組織の水分含有量を蒸発させるのに十分な熱が細胞内で発生する。したがって、細胞膜によって制御し得ない内部細胞圧力が大幅に上昇し、その結果、細胞の裂傷が生じる。このことが広範囲にわたって生じると、組織が横切開されたことがわかり得る。
【0003】
上記の手技は、少脂肪組織においては手際よく進むが、多脂肪組織においては、電子の通過を促進するイオン成分がより少ないので、あまり効率的でない。このことは、脂肪の蒸発の潜熱は水の蒸発の潜熱よりもはるかに大きいので、細胞の含有物を蒸発させるのに必要なエネルギーははるかに大きいことを意味する。RF凝固は、あまり効率的ではない波形を組織に加えることによって行われ、それによって、細胞含有物を、蒸発させるのではなく、およそ65℃まで加熱し、乾燥作用によって組織を乾かし、血管壁内のタンパク質を変形させる。この変形は、凝固カスケードへの刺激として働き、したがって、血塊化が増進される。同時に、血管壁内のコラーゲンは、変形して棒状からコイル状の分子になり、それにより、血管が収縮し大きさが縮小して、血塊にアンカーポイントが与えられ、塞がれるべき範囲はより小さくなる。
【0004】
しかしながら、多脂肪組織が存在する場合、電気的効果は低下するので、RF凝固はあまり効率的でない。したがって、多脂肪の出血性素因者を止血することは非常に困難な場合がある。組織は、断端がきれいな白色ではなく、外観が黒ずんで焦げている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、その最も概括的には、電気外科用切断器具を提供し、この電気外科用切断器具は、ハサミに似たまたはペンチに似たような方式で機械的に動作可能な一対の枢動可能ブレードを備え、ブレードは、ブレード間の間隙に存在する組織を切断しかつ/または凝固させるためにRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを送り込むことができる電極構造体を有する。具体的には、本発明は、内視鏡、胃カメラ、または腹腔鏡などの外科用スコーピング装置の機器用チャネルを介して器具の挿入を可能にできるほど小型の作動機構とエネルギー送込み機構との組合せに関する。装置はまた、観血術、すなわち、腹腔を開いた状態で肝葉の無血切除を行うためにも使用可能になる。
【0006】
1つの態様によれば、本発明は、枢動点において接合された第1のブレードと第2のブレードであって、各ブレードが、その第1の表面上の第1の伝導性要素をその第2の表面上の第2の伝導性要素から分離する第1の誘電材料で作製された平面体を備え、第2の表面が、第1の表面の反対方向に向いている、第1のブレードと第2のブレード;第1のブレードと第2のブレードとの間に間隙が生じるように枢動点を中心に第1のブレードと第2のブレードとの間に相対的回転をもたらして、開位置と閉位置との間で切り替えるための作動手段であって、相対的回転が、実質的にブレードの平面内にある、作動手段;第1のブレード及び第2のブレードにRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを送り込むための同軸伝送線であって、第2の誘電材料によって分離された内側伝導体と外側伝導体とを有する、同軸伝送線を有する電気外科用切断/凝固器具を提供し、内側伝導体及び外側伝導体は、第1のブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素のうちの一方にそれぞれ接続され、内側伝導体及び外側伝導体は、第2のブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素のうちの一方にそれぞれ接続され、各ブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、同軸伝送線によってブレードに送り込まれるRFエネルギーに対応するRF及びマイクロ波の電場をそれらの間で維持するためのアクティブ電極及びリターン電極として機能することができ、各ブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、同軸送電線によってブレードに送り込まれるマイクロ波エネルギーに対応するマイクロ波電磁(electromagnetic:EM)場を放出するためのアンテナ構造体としても機能することができる。本発明のこの態様は、RF及びマイクロ波のエネルギーを送り込むことができるが、本発明は、それらのエネルギータイプのうちの一方のみとともに使用されてよい。
【0007】
この切断器具は、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーとをともに分離して、かつ互いに組み合わせて(すなわち、同時に)送り込むように構成されていることが好ましい。したがって、切断器具は、マイクロ波エネルギー源及びRFエネルギー源からエネルギーを受け取るように接続され得る。周波数ダイプレクサ/デュプレクサユニット(または信号加算器)が、RF信号とマイクロ波信号とを組み合わせるために設けられることがある。周波数ダイプレクサ/デュプレクサユニットは、高い周波数マイクロ波エネルギーの、より低い周波数RFエネルギー源への逆戻りを防止するための低域通過フィルタと、より低い周波数RFエネルギーの、より高い周波数マイクロ波エネルギー源への逆戻りを防止するための高域通過フィルタとを備えることができる。マイクロ波エネルギー源及びRFエネルギー源は、たとえばWO2012/076844に開示されているタイプの電気外科用発電機の一部とすることができる。
【0008】
電気外科用切断器具は、内視鏡、または腹腔鏡などのチャネルの内側に合うようにサイズ設定され得る。したがって、電気外科用切断器具の最大直径は(たとえば、閉位置にあるとき)、10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらにより好ましくは3mm以下であることが好ましい。好ましい実施形態では、最大直径が2.8mmになることが想定される。電気外科用器具は、ブレードを取り囲んでいても、またはさらには機器用チャネルの全長にわたって延びていてもよい保護スリーブ(たとえば、カテーテルなど)を含むことができる。
【0009】
第1のブレードの構造と第2のブレードの構造は、実質的に同一とすることができる。したがって、本明細書における本開示は、第1のブレードに関して説明するいずれの特徴も第2のブレードにおいて存在し得ることを明示的に企図する。
【0010】
しかしながら、代替の例では、上に定義したブレード構造体は、ブレードのうちの一方に関してのみ提供され得る。他方のブレードは、反対のブレードから送り込まれるエネルギーに影響を与えない、たとえば硬質の誘電材料から形成された受動的構造体を含むことができる。
【0011】
第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、間隙にわたって互いに対向する第1のブレードの面及び第2のブレードの面において露出し得る。これらの面は、機械的切断に慣例的に関連付けられるブレードの場所に対応しているので、本明細書においては「切断エッジ」を示すことがある。切断エッジは、機械的切断を行うように構成され得、機械的切断は、第1の及び/または第2の伝導性要素(電極とも称されることがある)から送り込まれるRFエネルギーによって支援され得る。1つの例では、切断は、たとえば、ブレード上の鋭利にされたエッジを用いて、全体的に機械的に行われる(たとえば、「冷温」切断)。マイクロ波エネルギーは、機械的切断の実行前または実行後に、組織を凝固させ、またはアブレーションするために供給され得る。
【0012】
各切断エッジは、直線エッジとすることができる。ブレードの切断エッジは、ブレードの平面体の平面と垂直、または実質的に垂直であることが好ましい。ブレードは、自由にその周りで回転することができる回転軸に取り付けられることが好ましく、各ブレードは、回転軸が通る穴を有する。ブレードは、穴の内側表面と回転軸の外側表面とが互いにぴったり接して(すなわち、接触して)いるように、回転軸に取り付けられていることが好ましい。
【0013】
上述したように、ブレードの切断エッジに対する枢動の位置に応じて、2つのブレードの第1の表面は、(ハサミに似たような方式で)互いを越えるように摺動することができ、切断は、第1の表面が、せん断表面として機能し、互いを越えるように摺動するときのせん断操作によって一部、生じる。このハサミに似た操作は、枢動点が切断エッジと垂直な方向に切断エッジから取り外される位置に置かれているときに行われる。このハサミに似た構成では、各ブレードの第1の表面は、ブレードが閉位置にあるとき、互いに向き合っており(接触している場合がある)、各ブレードの第2の表面は、ブレードの外側で、互いとは別の方向に向いている。閉位置では、各ブレードの切断エッジは、互いを越えるように移動しており、そのため、外向きに互いから反対方向に向き、すなわち、第1のブレードの切断エッジは、第2のブレードの切断エッジの反対方向にまたは実質的に反対方向に向く。
【0014】
代替として、ペンチに似た構成では、枢動点が切断エッジと一直線に置かれているとき、ブレードの切断エッジは、互いに向き合い、ブレードが閉位置にあるとき、互いに接触し得る。したがって、切断は、接触している2つの切断エッジ間の力の結果として一部、生じる。本発明では、組織の切断は、主としてRFエネルギーによって生じるものであり、せん断の機械的操作または2つのブレード間の力によって生じるものでないことが好ましい。しかしながら、機械的操作が、切断を促進することになることは想定される。したがって、たとえば、家庭用のハサミまたはペンチとは異なり、本発明では、ブレードの切断エッジは、鋭利にされているのではなく、扁平、実質的に扁平である、または湾曲している(たとえば、丸い)ことが好ましい。このようにして、切断は、機械的力ではなく、主としてRFエネルギーによって確実に達成され、それにより、結果的に出血が生じにくい、よりきれいな、より慎重に制御可能な切断につながる。この構成はまた、患者に導入される鋭利なブレードまたは表面もしくはエッジが存在しないので、患者に対する恐れを低減し得る。切断エッジ同士が触れている、またはほとんど触れているこの構成における閉位置では、第1のブレードの第1の表面は、第2のブレードの第2の表面に隣接し、逆もまた同様である。
【0015】
本発明の実施形態では、ブレードが開位置から閉位置に移動するとき、各ブレードに関連する電場が、反対のブレード上の伝導性要素にそれほど影響を受けないことが好ましい。そのため、上述のハサミに似た構成では、同軸伝送線の内側伝導体は、第1のブレードの第1の伝導性要素及び第2のブレードの第2の伝導性要素に接続されていることが好ましい。同様に、同軸伝送線の外側伝導体は、第1のブレードの第2の伝導性要素及び第2のブレードの第1の伝導性要素に接続されていることが好ましい。
【0016】
逆に、ペンチに似た構成では、ブレードが互いに向かって(互いを横断するのではなく)移動するとき、第1のブレード上の第1の伝導性要素は、第2のブレード上の第2の伝導性要素に隣接するように移動し、逆も同様である。そのため、この構成では、同軸伝送線の内側伝導体は、第1のブレードの第1の伝導性要素及び第2のブレードの第1の伝導性要素に接続されていることが好ましい。同様に、同軸伝送線の外側伝導体は、第1のブレードの第2の伝導性要素及び第2のブレードの第2の伝導性要素に接続されていることが好ましい。
【0017】
対向する表面が両極性を有する電気信号を受け取る場合であっても、使用に際してはつねに生体組織により2つのブレードが分離されていることになるので、ブレードが一緒に動くときに短絡の恐れはほとんどない。このことをさらに確実にするために、ブレードの一方または双方は、ブレードが閉じているとき、各ブレードの切断エッジの接触を防止する隔置手段を含むことができる。隔置手段は、ブレードの一方または双方に置かれていてよく、閉位置であっても、ブレードの切断エッジ間に十分な程度の間隔をつねに確保する。隔置手段は、ブレードの一方または双方に突起を含むことができる。ブレード間の距離は、個々の各ブレードにおける伝導性要素によって生み出される電場と同様の大きさである電場をブレード間に生成できるほどに小さくてよいので、両方のブレードからの相反する2つの場が極めて接近しているとき、装置の切断または凝固の性能は増進され得ることになる。この構成では、組織へのエネルギー送込み機構は、従来のRF双極装置のものと類似しているが、より効率的であり得る。
【0018】
各ブレードにおいて、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、第1の誘電材料の両表面に形成される1つまたは複数の金属化層の形態とすることができる。より具体的には、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、機器の先端部またはエッジが生体組織に接触する接触領域において局所電場を設けるように構成され得る。局所電場は、極めて高い可能性があり、それにより、マイクロプラズマ(すなわち、高熱プラズマ)が切断エッジに形成されることになり得、ここで、生体組織に接触するのが最も望ましい。このマイクロプラズマは、効率的な切断を達成するという点で特に効率的であり得る。高温マイクロプラズマによって生じるいかなる有害作用にも耐えるために、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、チタン及びタングステンなど、高い融点、たとえば1500℃の融点の伝導性材料から作製されている部分、たとえばめっきされた領域を切断エッジにおいて、切断エッジに対して隣接するように含むことができる。そのような材料の使用は、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素が、生成されるマイクロプラズマによって確実に腐食されないようにするために役立つ。
【0019】
第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素はまた、より高い融点の伝導体上に堆積またはめっきされる銀及び金などの融点がより低い伝導性材料から作製された接続部分を含むこともできる。接続部分は、たとえばはんだ付けなどによって、同軸伝送線の内側伝導体と外側伝導体との接続を容易にすることができる。1つの実施形態では、チタンタングステン(TiW)シード層が、銀または金の層を上部に堆積して使用され得る。より低い融点材料は、同軸伝送線の内側伝導体及び外側伝導体が装着されることになる領域にのみ、すなわち、ブレードの近位端においてのみ、より高い融点材料上に堆積され、たとえば、穴を取り囲む切断エッジ(ここで、マイクロプラズマが形成されることになる)から離間され得、ブレードは、この穴を通る回転軸に取り付けられ得る。同軸伝送線がブレードに接続する点における電場は、相対的に低くすべきであり、したがって、この点における温度は、より低い融点材料の融点よりもはるかに低くすべきであるという事実が、この構成から得られる。金属化層は、金、銀、及びチタンなどの生体適合性材料から作製されていることが好ましい。
【0020】
第1の誘電材料の誘電率が空気の誘電率よりも大きく、切断エッジにおける第1の誘電材料の厚さが、小さく、好ましくは1mm以下、たとえば0.5mmである場合、RF組織切断は、切断エッジにおいて行うことができる。これにより、電流は確実に、優先的リターン経路に沿って滑らかに流れることができるようになる。またそれにより、マイクロプラズマを生み出すことができるほどに高い電場が生み出される。
【0021】
論じているように、ブレードはまた、同軸伝送線からマイクロ波周波数エネルギーを受け取るように構成されている。そのため、同軸伝送線は、RF信号とは別個に、またはRF信号と同時に、マイクロ波周波数信号を伝達するように構成され得る。したがって、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、受け取ったマイクロ波信号に対応するマイクロ波EM放射線を放出するために、近接場アンテナまたは近接場電極として機能するように、第1の誘電材料において構成されている。異なる周波数信号によってブレードが違って「見られる(seen)」結果として、マイクロ波信号及びRF信号の異なる処理が可能である。RF信号の場合、ブレードは、平行板コンデンサのようにモデル化され得る。第1の伝導性要素と第2の伝導性要素との間にRF信号によって設定される電場は、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素のエッジを、たとえば第1の誘電材料の外側エッジから後退させることによって、第1の誘電材料内に実質的に含められ得る。RFエネルギーを用いて切断を行うためには、場が、第1の誘電材料から外に延びることが望ましいことは明白である。これは、RF切断部分を指定した領域において、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素のエッジをブレードの切断エッジまで(ただし、横切らずに)延ばすことによって達成され得る。次いで、平行板コンデンサの2つの板(すなわち、第1の誘電材料によって分離された第1の伝導性要素と第2の伝導性要素との)間に設定され、ブレードの1つまたは複数のエッジと接触することにより生体組織内に結合されるRF場は、制御されたマイクロプラズマを生成することができ、マイクロプラズマは、RFの組織切断処理を可能にし、または増進させることができる。ハサミ操作に関与していない、すなわち切断エッジの反対側のエッジは、作動解除されている、またはRFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーを接触組織内に送り込むことがないように構成されていることが好ましく、これは、ハサミ操作に関与していないエッジ周りの金属化部を削ることによって達成され得る。
【0022】
一方、マイクロ波信号の場合、ブレードは、たとえば、マイクロ波エネルギーの電気的波長の半分からその整数倍までの物理長を有する平行板伝送線または平面伝送線としてモデル化され得る。この場合におけるマイクロ波周波数EMエネルギーの放出パターンは、ブレード及びマイクロ波供給構造、すなわち、同軸伝送線の全体的な形状によって決まる。この場合においては、同軸伝送線と第1の伝導性要素との間の近位端における間隙は、ソースからのマイクロ波エネルギーが、組織によって提示される負荷インピーダンスとインピーダンスの点で確実に一致するという重要な役割を果たす。平面伝送線構成体の全長もまた、同軸伝送線の(または同軸伝送線からの)インピーダンス(またはエネルギー送込み)を生体組織と(または生体組織に)一致させるという点で重要であり、すなわち、この構造により、四分の一波長インピーダンス変成器、または半波長共振器が形成可能になる。知られているシミュレーション器具を使用すると、マイクロ波周波数エネルギーEMエネルギーが放出されるエッジから制御されるように、形状を調整することができる。好ましいシミュレーションは、CSTのMicrowave Studioである。
【0023】
ブレードの開閉は、多くのやり方で達成され得る。具体的には、作動手段の少なくとも一部が、枢動点に対して可動であることが好ましい。より具体的には、作動手段の少なくとも一部が、同軸伝送線の長手方向軸と平行なまたは実質的に平行な方向で枢動点に対して可動であることが好ましい。作動手段は、ブレードの一部に接触するように構成された1つまたは複数のプッシュロッドを含むことが好ましく、このプッシュロッドは、ブレード自体から実質的に近位で取り外される位置から制御可能である。このようにして、ブレードの開閉は、切断器具の遠位端が患者の内部で使用される場合、使用者によって達成され得る。
【0024】
同軸伝送線の内側伝導体は、中空で、すなわち、その中を貫通するチャネルを画定することができる。チャネルは、材料を機器にまたは機器から運搬して、たとえば、流体を供給する、もしくは流体を処理部位から除去するために、または作動手段、たとえばプッシュワイヤもしくは制御ロッドの一部を運搬するために使用され得る。チャネルはまた、内視鏡または腹腔鏡の適用例にとってこれは特に興味を引くものであるが、切除または切断/凝固すべき組織の位置特定を助けるために画像センサ及び照明を含んでいてもよく、この具体的な例では、ハサミ装置は、内視鏡、胃カメラ、または腹腔鏡の機能も行うことができる。作動手段は、機器を誘導するように構成された1つまたは複数の制御ワイヤをさらに含むことができる。
【0025】
作動手段は、枢動点に対して可動である作動要素を備えることができる。たとえば、作動要素は、第1のブレード及び/または第2のブレードに動作可能に接続されているプッシュロッドを含むことができる。作動要素は、その長手方向移動経路が、たとえば、外科用スコーピング装置の機器用チャネルを介して延びている場合、この経路が確実にそれに沿ってうまく画定されるように、同軸伝送線に摺動可能に接続され得る。
【0026】
1つの例では、作動手段は、ブレードの相対的回転をもたらすように構成されたカム構成体を備えることができる。この場合、「カム構成体」は、構成要素がブレードの所与の一部に対抗して摺動する結果として、構成要素の線形運動を第1のブレード及び/または第2のブレードの回転運動に変換する構成体を示す。
【0027】
カム構成体は、枢動点に対して長手方向に摺動するように取り付けられたプッシュロッドと、第1のブレードにおいて形成されたガイド経路とを備えることができ、プッシュロッドは、ガイド経路に動作可能に係合し、ガイド経路は、長手方向からオフセットされ、それによって、プッシュロッドが枢動点に対して長手方向に移動すると、第1のブレードは、枢動点に対して枢動することになる。ガイド経路は、たとえば長手方向に対して角度を付けて枢動点からオフセットされている方向に延びている線形進路とすることができる。プッシュロッドは、長手方向にのみ移動することができるように制約され得、線形進路の中に取り付けられ線形進路上に位置するように制約された従動子を備えることができる。プッシュロッドの長手方向と一直線に維持されるように従動子とガイド経路との間で交差するためには、ガイド経路は、従動子が移動するにつれて、配向を変更しなくてはならない。
【0028】
カム構成体は、両方のブレードにあてがうことも、または一方のブレードのみにあてがうこともでき、その場合、ブレードは、ブレードが確実に枢動点を中心に対称に移動するような形でヒンジ留めされ得る。
【0029】
ガイド経路は、ブレードの表面内の凹部の形態であっても、または代替として、ブレードを通る穴またはスロットの形態であってもよく、従動子は、プッシュロッドのそれぞれの遠位端における突起の形態とすることができる。プッシュロッドの往復運動、すなわち、実質的に線形である前後への運動により、突起とガイド経路との接触点が変わることになり、ガイド経路は、突起がガイド経路に沿って摺動するにつれて接触点が変わると、(固定された)枢動点を中心にブレードが回転することになるように形状付けられることが好ましい。たとえば、ガイド経路は、実質的に線形であり、プッシュロッドの前方/後方への方向に対して斜めに配向され得る。当然ながら、ブレードが枢動点を中心に反対方向に回転するようにするためには、一方のブレードにおけるガイド経路は、他方のブレードにおけるガイド経路の反対方向に傾斜され得る。このようにブレードを接続することによって、高いレベルの制御が可能であり、可動部品の数が低減される。カム構成体をやはり利用する代替の実施形態では、ガイド経路は、ブレードの表面上の隆起部分の形態とすることができ、プッシュロッドは、その遠位端に、対応する凹部を有することができる。この場合、動作原理は、スロット/突起構成と変わらないままである。
【0030】
上記の実施形態では、プッシュロッドは、同軸伝送線を取り囲む中空管構造体またはジャケットの端部に置かれていることが好ましく、その内側表面は、同軸伝送線の外側表面にぴったり接していることが好ましい。好ましい実施形態では、管は、同軸伝送線に対して適所に固定され、プッシュロッドは、それらが内部に置かれている管のチャネル内で前後に移動することができる。代替として、管は、同軸伝送線の外側表面に沿って前後に容易に摺動させて、管内でプッシュロッドを移動させるのではなく、管を移動させることによって作動を達成することができる材料で作製されていてもよい。
【0031】
2つのプッシュロッドは、管の遠位端表面から延びていることが好ましい。ブレード、より重要には枢動点は、同軸伝送線に堅くまたは実質的に堅く接続されているので、論じているように、同軸伝送線及び枢動点に対する管及びプッシュロッドの運動により、ブレードの開閉が作動可能になる。同軸伝送線の外側表面に沿って摺動する、またはプッシュロッド自体がその内部で摺動する管状構造を用いることによって、プッシュロッドの運動方向は、その遠位端において同軸伝送線の長手方向軸と平行または実質的に平行であるように制約され、それにより制御の向上が可能になる。ここで説明しているブレードごとにプッシュロッドを備える管構造体を有すると、たとえば、同軸伝送線の周りに巻かれている単一のプッシュロッドに対する改良が提示される。そのような構造体は、装置がカテーテル内に含まれているとき、カテーテルの外側エッジに押し進む傾向があり、続いて、摺動運動とブレードが開く程度との間に一貫性のない関係を引き起こす。そのような不正確さは、たとえば、繊細な外科用切除手技においては望ましくない。
【0032】
いくつかの場合では、たとえば、プッシュロッドの運動方向に対するガイド経路の角度、及び2つのブレード間の枢動点の剛性に応じて、プッシュロッドの突起(または凹部)がガイド経路内を前後に移動すると、ブレードを開くのではなく2つのプッシュロッドを広げる傾向があるガイド経路のエッジからの抵抗力を経験することがある。プッシュロッドの弱化または破損につながる可能性があるそのような広がりを防止するためには、プッシュロッドは、筋交い構造を用いて接続され得る。
【0033】
上述のカム構成体の特定の寸法に応じて、プッシュロッドが3.5mm移動すると、ブレードが完全に開いた位置にあるときの7mmの開きへと変換され得る。この分離またはレベルの制御が不十分である状況では、ギア付きハンドルが、管構造体の近位端に固定され得る。これにより、器具が内視鏡を介して患者内に挿入されなくてはならないときの問題につながる可能性がある、より長いブレードを使用する必要性がなくなる。
【0034】
2つのプッシュロッドを有する管構造体をやはり使用し得る代替の構成では、ロッドは、枢動軸においてブレードに堅く接続されているワイヤ(または類似の)で作製されていてもよい。ワイヤは、たとえば曲がって形状付けられていることが好ましく、それにより、ワイヤの前後運動は、たとえば、ドアハンドルと同様に、枢動軸を中心に回転する。ワイヤは、湾曲した形状に予め形状付けられていることが好ましく、ブレードに接触するワイヤの部分は、プッシュロッドの前後運動の方向に対して角変位が最大の一部であることが好ましい。好ましい実施形態では、ワイヤは、ニチノールで作製されている。この構成は、カム構成体よりも製造するのが簡単であることが有利である。
【0035】
別の例では、作動手段は、枢動点からオフセットされた場所において、プッシュロッドに枢動可能に接続された近位端と、第1のブレードに枢動可能に接続された遠位端とを有する連結部を備えることができる。各ブレードは、連結部に接続するための場所を設けるために、その近位端から延びるアームを有することができる。アームは、連結部を介してプッシュロッドの遠位端に接続され得る。連結部は、その近位端においてはプッシュロッドに、その遠位端においてはブレードのアームに枢動可能に接続されている実質的に線形の硬質材料片の形態であることが好ましい。この構成では、連結部がプッシュロッドの端部とブレードのアームとの間に一定距離を確立するので、枢動点とプッシュロッドとの間の相対運動により、ブレードのアームと連結部との間の角度は、(プッシュロッドの運動方向に応じて)増加/減少することになり、したがって、ブレードの開/閉を生じさせることができる。好ましくは、各ブレードは、別の連結部に接続され、2つの連結部はともに、同じ点でプッシュロッドの遠位端に枢動可能に接続されている。このようにして、2つのブレードの対称構成が達成され、プッシュロッドが、横方向に外れることなく、確実に前方/後方への方向にのみ移動することができるために役立つ。この連結部構成体は、ロバストな構成体であり、プッシュロッドまたは他の構成要素の曲げまたは破損の恐れが低減される。連結部構成体におけるプッシュロッドは、うまく働くようにするためには、周辺ではなく、中央に置かれなくてはならない。これは、その中を貫通するチャネルを有する同軸伝送線の中空の内側伝導体を有することによって達成され得る。この場合では、たとえばニチノールワイヤなどの金属プッシュロッドが使用される場合、それは、チャネルの内側表面から電気的に絶縁され得る。これは、チャネルの内側表面またはプッシュロッドの外側表面のいずれかに、あるいは両方に絶縁コーティングを用いることによって行うことができる。
【0036】
別の例では、プッシュロッドは、第1のブレードに堅く固着されている予め形成された湾曲した遠位部分を有するワイヤを備えることができる。
【0037】
器具は、第1のブレードと第2のブレードとを開位置に向かって圧迫するように構成された付勢手段を備えることができる。付勢手段は、ブレード間に存在するばね(たとえば、コイルばね、または板ばね)とすることができる。付勢手段は、開位置にブレードを維持するように構成されていることが好ましい。
【0038】
作動手段は、第1のブレード及び第2のブレードに対して摺動可能に取り付けられているカラーを含むことができ、カラーは、ブレードを囲んでブレードを閉位置に保持する第1の位置と、ブレードを露出させてブレードを開くことを可能にする第2の位置との間で可動である。カラーは、閉位置にあるとき、直径がブレードの最大幅よりも大きいことが好ましい。第1の位置では、カラーは、ブレードを囲んで、閉じているまたは部分的に閉じている位置にブレードを保持することができ、したがって、患者への損傷の恐れを低減させる。次いで、ブレードがより露出するように第2の位置へと後方に向かってカラーが移動すると、ブレードは、ブレードの外側エッジとカラーの口部との間の接触点が変わるにつれて、より大きい程度まで開くことが可能になる。より具体的には、第2の位置では、第1の位置において囲まれたブレードの一部が露出することになり、この露出により、ブレードをより大きい程度まで広くことが可能になる。ブレードの開閉を作動させるためにワイヤを利用する実施形態と同様に、この実施形態はまた、カム機構及び連結部機構よりも単純な構造体を有し、可動部品はより少なく、ガイドワイヤ/プッシュロッドはより少ない。
【0039】
ブレードは、切断器具の遠位端に置かれているクレビス構造体の中に取り付けられていてよく、このクレビス構造体は、同軸伝送線に装着された基部と、第1のブレード及び第2のブレードを受け入れるための長手方向凹部を画定する筐体とを含む。
【0040】
クレビス構造体は、実質的にU形状の側面輪郭を与えるように中央凹部を含むステンレス鋼などの材料片とすることができる。好ましい実施形態では、ブレードは、凹部の一方の側から他方の側に延びる回転軸の周りを枢動し、回転軸は、ブレードができるだけ多く、周囲の生体組織に対して露出し得るように、クレビス構造体の遠位端に向かって置かれていることが好ましい。回転軸は、各端部においてピンにより定位置に封止され得る。ブレードの平面と垂直な方向の凹部の幅は、それらの間に含まれている2つのブレードの総厚とほぼ同じであることが好ましい。このようにして、凹部の内側壁は、ブレードに追加の支持をもたらし、ブレードは、使用に際して、平面内でのみ移動し、その平面と垂直な方向には揺動しないように確実に制約される。凹部の基部における床部は、同軸ケーブルの内側伝導体と外側伝導体とがともに露出して、それらが各ブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素との接続を形成することができるようになるほど大きい範囲を有するべきである。凹部床部は、実質的には扁平であることが好ましいが、湾曲していてもよい。クレビス構造体は、鋭利なエッジを含まない、同軸伝送線の外側表面との連続表面を形成するために、円筒形であることが好ましい。クレビス構造体は、やはり切断器具が使用されているときの患者への損傷をもたらす可能性がある鋭利なエッジを取り除くために、その遠位端において半球形または他の湾曲した部分をさらに含む。
【0041】
たとえば作動手段がカムを含む場合、1つまたは複数のプッシュロッドを含む本発明の実施形態では、クレビス構造体の凹部の内側壁は、1つまたは複数のガイド、たとえば前後運動中にプッシュロッドを支持する溝を含むことが好ましい。このことは、プッシュロッドの曲げまたは広がりを防止するために役立つ。
【0042】
同軸伝送線の内側伝導体及び外側伝導体と、第1のブレード及び第2のブレードのそれぞれにおける第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素との間の電気接続は、ブレードが互いに対して回転しているときの最小移動点である回転軸を介して行われ得る。したがって、ブレードが回転軸において取り付けられているとき、内側/外側の伝導体と各ブレードの表面における伝導性要素との間の接続は、回転軸の外側表面に置かれている伝導構造体を介して行われることが好ましい。それに対応して、各ブレードの穴の内側表面は、そのブレードの対応する表面における伝導性要素に電気的に接続されている伝導性コーティングを含むことができる。好ましい実施形態では、ブレードの第1の表面における第1の伝導性要素は、ブレードの穴(回転軸がその中を通る)の内側表面上に延びていることができる。同様に、ブレードの第2の表面における第2の伝導性要素もまた、穴の内側表面上に延びていることができる。短絡を防止するためには、穴の内側表面上に延びる第1の表面からの金属化部及び第2の表面からの金属化部は、互いから電気的に絶縁されなくてはならない。これは、それらの間に空間を有し、回転軸を絶縁材料から作製することによって最も容易に達成される。同軸伝送線の伝導体と接続するために、内側伝導体は、2つのブレード間の空間内に軸方向に延び、回転軸の外側表面上の伝導性のスリーブ、コーティング、またはストリップに接触することができる。伝導性コーティングは、第1のブレードの穴の内側表面における金属化部と接触している回転軸の部分内に延びて、内側伝導体とブレードの第1の表面における金属化部との間の電気接続を確立する。同様に、外側伝導体、または外側伝導体に接続されている一本の伝導性材料は、軸方向に延び、第1のブレードの穴の内側表面と接触している回転軸の部分における伝導性のコーティングまたはストリップに接触して、外側伝導体とブレードの第2の表面における金属化部との間の電気接続を確立することができる。
【0043】
外側伝導体及び内側伝導体を除いて、第2のブレードにも同じことが当てはまり、すなわち、外側伝導体が第2のブレードの第1の表面に電気的に接触し、内側伝導体が第2のブレードの第2の表面に電気的に接触しているようにするためには、それぞれに接続されている伝導材料のストリップは、経路を横断しなくてはならない。このことは、各伝導体の遠位端から延びている伝導材料のストリップを有することによって最良に達成され、これらのストリップは、装置の3次元性により、互いに接触せずに互いを横断することができる。いくつかの実装形態では、伝送線の内側伝導体及び外側伝導体のうちの一方または両方から延びている伝導材料のストリップは、クレビス構造体の内側壁に置かれて、確実にそれらが使用に際して曲げられないようにまたは破損しないようにすることができる。
【0044】
代替の実施形態では、電気接触点は、枢動軸上にあるのではなく、ブレード自体の第1の/第2の表面上にある場合がある。枢動軸を中心とするブレードの回転中、その性質そのものによって、これらの一部は、各ブレード上の穴の内側表面よりも長い距離を移動することになる。したがって、いくつかの実施形態では、各ブレードの各表面における金属化部の形状は、切断器具が使用されている間、均一な接触を維持するために、ブレードの運動中はいつでも同軸伝送線の内側/外側伝導体との接触が確実に維持されるように選択されなくてはならない。
【0045】
他の実施形態では、内側伝導体が各ブレードの第1の表面に接続され、外側伝導体が各ブレードの第2の表面に接続されるが、同様に、より単純な構造が想定され、ここでは、伝導材料のストリップは、いずれにしても互いを横断する必要がない。たとえば、内側伝導体は、2つに分岐するだけでよく、2つのブレード間に延びていることができ、回転軸における伝導スリーブを介してか、またはブレードと直接、接続するかのいずれかでブレードと電気的に接続される。同様に、伝導ストリップは、外側伝導体の端部表面の各側から延びていることができ、各伝導ストリップは、クレビス壁とブレードの第2の表面(外側にある)との間の間隙内に延びていることができ、ブレードの表面における伝導要素を用いてか、または回転軸における伝導スリーブを介してかのいずれかで電気的接触が形成される。この構成は、たとえば、ブレードが閉位置にあるとき、切断エッジが正面で合うことができるペンチに似た構成において利用され得る。
【0046】
両方のブレードから同時にRF信号及び/またはマイクロ波信号を送り込むための一代替形態として、本発明のいくつかの実施形態では、信号は、ブレード間で交番され得る。これは、ブレードのそれぞれの中に別個の入力部を有することによって達成され得る。したがって、本発明の第2の態様によれば、電気外科用切断器具が提供され、この電気外科用切断器具は、枢動点において接合された第1のブレードと第2のブレードであって、各ブレードが、第1の表面上の第1の伝導性要素を第2の表面上の第2の伝導性要素から分離する第1の誘電材料で作製された平面体を備え、第2の表面が、第1の表面の反対方向に向いている、第1のブレードと第2のブレード;開位置と閉位置との間で、枢動点を中心に第1のブレードと第2のブレードとの間に相対的回転をもたらすための作動手段であって、相対的回転が、実質的にブレードの平面内にある、作動手段;第2の誘電材料によって分離された第1の内側伝導体と第1の外側伝導体とを有する第1の同軸伝送線であって、第1のブレードにRF周波数信号及びマイクロ波周波数信号を送り込むように構成され、第1の内側伝導体及び第1の外側伝導体がそれぞれ、第1のブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素に接続されている、第1の同軸伝送線;第3の誘電材料によって分離された第2の内側伝導体と第2の外側伝導体とを有する第2の同軸伝送線であって、第2のブレードにRF周波数信号及びマイクロ波周波数信号を送り込むように構成され、第2の内側伝導体及び第2の外側伝導体がそれぞれ、第2のブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素に接続されている、第2の同軸伝送線を有し、各ブレードの第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素は、第1の同軸伝送線及び第2の同軸伝送線それぞれによって第1のブレード及び第2のブレードに送り込まれるRF信号に対応するRF電場をそれらの間で維持するためのアクティブ電極及びリターン電極として機能することができ、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素はまた、第1の同軸伝送線及び第2の同軸伝送線それぞれによって第1のブレード及び第2のブレードに送り込まれるマイクロ波信号に対応するマイクロ波周波数EM場を放出するためのアンテナ構造体としても機能することができる。
【0047】
互換性がある場合、上に提示されたオプションの特徴は、本発明の第2の態様にも当てはまる。具体的には、この構成は、上に明記したブレード構造体のすべてと互換性があり、作動機構はすべて、この構造体とともに使用され得る。クレビス構造体(及び対応する関連のオプションの特徴)もまた、本発明の第2の態様の実施形態と完全に互換性がある。同軸伝送線の伝導体間の電気接続は、伝導ストリップを横断する必要はないので、本発明の第1の態様の電気外科用切断器具に関してさらに簡略化される。接続は、回転軸上の伝導スリーブを介しても、またはブレードの表面における伝導性要素との直接的な接触によっても行うことができる。接続が回転軸における伝導コーティング、スリーブ、またはストリップを介して行われる実施形態では、異なるブレードに接続されている前記コーティング、スリーブ、またはストリップは、互いから電気的に絶縁されて、第1のブレードに供給される信号が第2のブレードに確実に到達しないように、かつ逆も同様になるように、すなわち、一方のブレードのみが確実に所与のときに機能しているようにすることが好ましい。
【0048】
第1の及び第2の同軸伝送線は、カテーテルなどの中に含まれていることが好ましく、カテーテルの側面に装着されていることが好ましい。作動手段は、カム構成体の形態とすることができ、ここで、上述のプッシュロッドを含んでいるジャケットまたは類似の管構造体は、カテーテルの外側表面に置かれている。ジャケットまたは管構造体はまた、カテーテルの内側表面に置かれていてもよい。代替として、中央プッシュロッドは、上述の連結部構成と同様に、第1の同軸伝送線と第2の同軸伝送線との間の間隙またはチャネルの内部に置かれていてもよい。
【0049】
第1のブレードと第2のブレードとの間のマイクロ波信号及び/またはRF信号の送込みを交番するために、器具は、第1のブレードと第2のブレードとの間のマイクロ波信号/RF信号の送込みを交番するように構成された交番手段をさらに含むことができる。交番手段は、マイクロ波及び/または信号発電機の出力部と同軸伝送線の端部との間に接続されている交番同軸スイッチ、たとえば、単極ダブルスロースイッチの形態であることが好ましく、ここでは、極は、同軸伝送線のそれぞれに1つずつ接続されて2つのスロー間で迅速に交番するように構成されている。2つのブレード間のエネルギー送込みを交番することによって、インピーダンス変成器の必要なしに、標準50Ω伝送線を使用することができる。最大電圧を半減すべきであるので、電圧破壊に関連する利点もある。好ましい実施形態では、交番同軸スイッチは、50Hzにおいて動作すること、すなわち、20msのサイクルを有することが可能である。
【0050】
別の態様では、本発明は、電気外科用用具を提供し、この電気外科用の用具は、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを出力するように構成された電気外科用発電機と、電気外科用発電機からRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを受け取るように接続されている、上に明記した(すなわち、本明細書に記載の第1の態様または第2の態様のいずれかによる)電気外科用切断器具とを含む。この用具は、第1のブレードと第2のブレードとの間の電気外科用発電機からのRFエネルギーまたはマイクロ波エネルギーを交番に切り替えるように構成された信号オルタネータを含むことができる。
【0051】
信号オルタネータは、2つのブレード間のマイクロ波エネルギー及び/またはRFエネルギーを切り替えるように働くことができる。これにより、装置の遠位端においてより多くの電力を送り込むことを可能にするとともに、ブレードがショートする恐れを回避することができる。信号オルタネータは、スイッチ要素とすることができ、たとえば、同軸スイッチ、PINダイオード、及びバラクタダイオード電源スイッチのうちのいずれか1つを備える。スイッチは、ハンドピースの中に含まれていても、またはブレードが置かれている遠位端に置かれていてもよい。
【0052】
エネルギー送込みが準連続に現れるようにするために、1秒未満、またはさらには100ms未満で第1のブレード及び第2のブレードに送り込まれるエネルギーを切り替えることが望ましい場合がある。1つの例では、150msのエネルギー噴出が第1のブレードから送り込まれ得、続いて100ms、その後、第2のブレードから150msの噴出が送り込まれる。この構成では、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーを送り込むことができる2つの別個のブレードを有することによる利点をなおも得ることができる。
【0053】
本願全体を通じて、RFは、10kHzから300MHzまでの範囲における安定した一定周波数を意味することができ、マイクロ波周波数は、300MHzから100GHzまでの範囲における安定した一定周波数を意味することができる。RFエネルギーは、エネルギーが神経刺激をもたらさないようにするほど高く、エネルギーが組織白化、または組織構造に対する不必要な熱的余裕もしくは損傷をもたらさないようにするほど低い周波数を有するべきである。RFエネルギーの好ましいスポット周波数には、100kHz、250kHz、400kHz、500kHz、1MHz、5MHzのうちのいずれか1つまたは複数が挙げられる。マイクロ波エネルギーの好ましいスポット周波数には、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、14.5GHz、及び24GHzが挙げられる。
【0054】
さらには、本願全体を通じて、「伝導体」、「伝導性」、及び「伝導」などの用語が使用されるとき、これは、別段の明記がない限り、電気的伝導を意味すると理解すべきである。
【0055】
本発明の実施形態について、添付の図面を参照して詳細に論じる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】本発明の第1の態様の一実施形態による切断器具を示す。
【
図2A】本発明の実施形態において使用され得るクレビス構造体の上面図及び側面図、同軸ケーブルの遠位端を示す。
【
図2B】本発明の実施形態において使用され得るクレビス構造体の上面図及び側面図、同軸ケーブルの遠位端を示す。
【
図2C】本発明の実施形態において使用され得るクレビス構造体の上面図及び側面図、同軸ケーブルの遠位端を示す。
【
図3A】本発明の一実施形態による切断器具について、その実施形態の内部作動機構を示すために種々の層を切り取って示す。
【
図3B】本発明の一実施形態による切断器具について、その実施形態の内部作動機構を示すために種々の層を切り取って示す。
【
図3C】本発明の一実施形態による切断器具について、その実施形態の内部作動機構を示すために種々の層を切り取って示す。
【
図3D】本発明の一実施形態による切断器具について、その実施形態の内部作動機構を示すために種々の層を切り取って示す。
【
図3E】本発明の一実施形態による切断器具について、その実施形態の内部作動機構を示すために種々の層を切り取って示す。
【
図4A】開構成から閉構成へのブレードの移動の連続段階における本発明の一実施形態による切断器具を示す。
【
図4B】開構成から閉構成へのブレードの移動の連続段階における本発明の一実施形態による切断器具を示す。
【
図4C】開構成から閉構成へのブレードの移動の連続段階における本発明の一実施形態による切断器具を示す。
【
図4D】開構成から閉構成へのブレードの移動の連続段階における本発明の一実施形態による切断器具を示す。
【
図4E】開構成から閉構成へのブレードの移動の連続段階における本発明の一実施形態による切断器具を示す。
【
図5A】本発明の実施形態において使用され得る作動機構を示す。
【
図5B】本発明の実施形態において使用され得る作動機構を示す。
【
図6A】本発明の実施形態において使用され得る別の作動機構を示す。
【
図6B】本発明の実施形態において使用され得る別の作動機構を示す。
【
図7A】同軸伝送線とブレード上の伝導性要素との間の電気接続を示す概略的な横断面図である。
【
図7B】同軸伝送線とブレード上の伝導性要素との間の電気接続を示す概略的な横断面図である。
【
図7C】同軸伝送線とブレード上の伝導性要素との間の電気接続を示す概略的な横断面図である。
【
図7D】同軸伝送線とブレード上の伝導性要素との間の電気接続を示す概略的な横断面図である。
【
図7E】同軸伝送線とブレード上の伝導性要素との間の電気接続を示す概略的な横断面図である。
【
図8】本発明の第2の態様の一実施形態による電気外科用切断器具を示す。
【
図9】本発明の一実施形態である切断器具のシミュレーションしたブレード構造体の上面斜視図である。
【
図10】
図9に示したブレード構造体の底面斜視図である。
【
図11】生体組織にマイクロ波エネルギーを送り込んでいるときの
図9に示したブレード構造体のリターンロスを示すグラフである。
【
図12】生体組織に接触しているときの
図9に示したブレード構造体の電力密度シミュレーションである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1~
図4Eは、本発明の一実施形態による切断器具1のいくつかの図を示している。切断器具1は、大まかに4つのセクション、すなわち、ブレード構成体10、クレビス構造体40、作動機構60、及び同軸伝送線80に分割され得る。これらの一部について、関連の図面を参照して説明する。同じ機能部についての同じ参照数字は、
図1~
図4Eのすべてにおいて使用される。
【0058】
図1は、上述の4つのセクションをすべて含む切断器具1の透視図を示している。ブレード構成体10は、第1のブレード12a及び第2のブレード12bから構成されている。ブレード12a、12bは、実質的に同一であり、反対の方向に向いて切断器具1上に取り付けられている。ブレードは実質的に同一であるので、2つのブレード間で区別するために有用である場合を除いて、一方のブレードまたは他方のブレードに関してのみ、機能部にラベル付けしている。この場合では、第1のブレードの機能部の参照数字は、「a」を示し、第2のブレード上の機能部の参照数字は、「b」を示す。次の説明では、これらは、各ブレードの構造上の機能部が同じであるので省略される。
【0059】
ブレード12は、2つの主要部、すなわち、枢動部13とブレード部15とから成る。
図4A~
図4Eでわかり得るように、ブレード部15は、枢動部13から後退されている(すなわち、枢動部13の近位に置かれている)。これについては、より詳細に後で説明する。各ブレード2のブレード部15は、ブレード12の前部を画定する直線状の切断エッジ14と、切断エッジの反対側の湾曲した背面エッジ16とを有する平面セラミック体である。切断エッジ14は、扁平な切断面18を画定する。金属化層20の形態の第1の電極が、ブレードの上表面21に存在する。同様の金属化層もまた、ブレードの底表面上に存在して、第2の電極(図面には示されていない)を形成する。金属化部20は、形状が、ブレード部15自体と類似している。金属化部20の前面エッジ22は、ブレード部15の切断エッジ14まではずっと延びているが、切断面へと下方には延びていない。金属化部20の背面エッジ24は、湾曲し、ブレード部15の背面エッジ16に略平行に延びている。金属化部の背面エッジ24は、切断器具1が使用されているとき、切断/凝固が望ましくない背面表面には電場がまったく出現しない、または無視できるほどのものであるようにブレード部15の背面エッジ16から離間されている。同様に、金属化部20の前面エッジ22は、高エネルギーRF電場が切断面18にわたってブレード2上の第1の電極と第2の電極との間に生成され得るように、ブレード部15の切断エッジ14まで延びている。
【0060】
枢動部13は、湾曲した隅部を有する実質的に長方形の平面体であり、ブレード部15の近位端17に装着されている。穴26が、枢動部13の中を貫通して回転軸54を受け入れ、この回転軸54を中心にブレード2が自由に回転できる。枢動部13はまた、細長いスロット28も含み、このスロット28は、切断エッジ14に対して斜めに配向されている。スロット28の目的については、切断器具1の動作について論じる間に、より詳細に後述する。ノッチ29もまた、枢動部13とブレード部15との間の領域内に存在する。
【0061】
ブレード部15は、たとえば
図1を見たときの紙面において枢動部13から後退されている。このようにして、第1のブレード12a及び第2のブレード12bは、それらが、閉位置(すなわち、
図4Eに示されている位置)へと回転したとき、1対のハサミのエッジのように互いを越えるように摺動するのではなく、1対のペンチにおけるエッジのように切断エッジ18a、18bが互いに面して合うように、切断器具1上に取り付けられ得る。
【0062】
図2A~
図2Cは、ブレードが上に取り付けられるクレビス構造体40をより詳細に示している。クレビス構造体40は、ドーム型の遠位端40bを有する、たとえばステンレス鋼の、円筒40aで形成されている。横断面が長方形(具体的には
図2C参照)の凹部44は、2つの細長い壁46、48を画定するクレビス構造体40のほぼ完全長に延びており、各壁は、凹部44の内部の内側表面を画定する。凹部はまた、内側表面47、49を接合する基部50を有する。
図2Aでは、作動機構60及び同軸伝送線80の端部表面を見ることができる。クレビス構造体40の遠位端42に向かって、穴52が、壁46、48のそれぞれの中に存在する。本実施形態では、穴は、凹部44内に枢動部13の完全長を収容するために、クレビス構造体40の円筒形部分とドーム型部分と間の境界に置かれている。回転軸54は、穴52のそれぞれの中を通ることができ、ブレード12がその上に穴26を介して取り付けられ得る。ブレードは、クレビス構造体40自体の構造をより良く示すために
図2A~
図2Cに示されていない。
図2Bに最良に示されているように、長方形のノッチ49が、壁46、48のそれぞれの外側エッジに存在する。同軸伝送線80は、クレビス構造体40の基部50において露出している。内側伝導体82、外側伝導体84、及びこの2つを分離する誘電材料86を含む同軸伝送線は、たとえば
図3A及び
図3Bにより良く示されている。
【0063】
図3A、
図3B、及び
図4A~
図4Eは、本発明のこの実施形態の切断器具1においてブレード12a、12bを開閉するために使用される作動機構60を示し、具体的には、
図4A~
図4Dは、様々な作動段階を示すために、クレビス構造体40を省略して機構を示している。ブレード12a、12bの作動は、各ブレード2の中のスロット28a、28bと相互作用するプッシュロッドの端部における突起から構成されているカム構成体によって達成される。より具体的には、ジャケット62が、同軸伝送線80の外側表面の周りに置かれている。ジャケットは、硬質プッシュロッド64、66をそれぞれが含む2つの溝を含んでいる。プッシュロッド64、66は、ジャケット62の長手方向軸の方向に、ジャケットに対して前後に可動である。したがって、プッシュロッド64、66がジャケットの端部表面63から突き出る長さは、変動し得る。各プッシュロッド64、66の端部に、突起65、67がある。突起はそれぞれ、ブレードが回転軸54上に取り付けられるとき、ブレード12の一方のスロット28の中に据わるように構成されている。
【0064】
次に、作動機構60の開動作について、
図4A~
図4Eを参照して説明する。
図4Eに示されているように、完全に閉じている状態では、プッシュロッド64、66は、可能な最大限まで退避される。プッシュロッド64、66は、ブレード12a、12bの切断面18a、18b間の接触により、それ以上は退避することはできない。本実施形態の作動機構60は、枢動点25と突起65、67との間の相対運動に依存する。そのため、これを達成するためには、枢動点25の場所は、ジャケット62の端部表面63に対して固定され、そこからプッシュロッド64、66が突き出ることが必要である。使用に際しては、ブレード12の平行移動を最小限に抑えるようにするために、枢動点25を静止させたままでプッシュロッド64、66を前後に動かす。
【0065】
ブレード12を開くために、プッシュロッド64、66は、ジャケット62の端部表面63からさらに突き出るように前方に移動する。プッシュロッド64、66は、硬質であり、ジャケット62の長手方向に移動するように制約される。スロット28a、28bは、長手方向に対して非ゼロ角度であり、これは、突起65、67が長手方向に移動することにより、突起65、67がそれらのそれぞれのスロットの壁に当接すると、枢動点25を中心にブレードを強制的に回転させることを意味する。突起がスロット28a、28bの遠位端に到達したとき、プッシュロッド64、66は、ジャケット62の端部表面63から、それ以上突き出ることができず、したがって、ブレード12は、
図4Aに示されているように、最大限、開いている。ブレード12を再度閉じるためには、プッシュロッド64、66は、退避される。
図4D及び
図4Eに示すようにブレード12が閉じられたとき、ブレード12がさらには回転できないので、プッシュロッド64、66はそれ以上退避されず、突起65、67は、それらのそれぞれのスロット28a、28bの端部に置かれる。
【0066】
代替の作動機構160が、
図5A及び
図5Bに示されている。この構成では、湾曲したニチノールワイヤ168が、ブレード112上のピンまたは溝などの枢動機能部167に堅く装着され、それにより、ワイヤは、その機能部に対して回転することができなくなる。ドアハンドルの端部を回転させることによりその枢動軸を中心にドアハンドルを回転させるのと同じやり方で、ワイヤ168の、その湾曲した形状と組み合わさった前後運動により、その遠位端170に向かってワイヤの内向きに湾曲した部分169は、枢動機能部167を回転させる。この構成が効果的であるようにするためには、ブレード112の中の穴126とブレードが取り付けられている回転軸との間のあらゆる摩擦(または回転に対する他の抵抗)に耐えることができるほど十分に、ワイヤ168の硬度は高くなくてはならない。ワイヤ168の曲率が大きいほど、かつそれに関連して内向きに湾曲した部分169の長さが大きいほど、レバー操作の向上が存在するので、この作動機構160はより効果的になる。この構成は、その簡便さの点で有利である。
【0067】
さらなる代替の作動機構260が、
図6A及び
図6Bに示されている。この構成では、各ブレード212a、212bは、枢動部213から後方へと延びる突出アーム272を有する。アーム272の近位端232は、連結部234の遠位端に接続されている。連結部234とアーム272は、ピン236などの留め具を介して枢動可能に接続されている。連結部234は、ピン236を中心にアーム272に対して自由に回転できる。連結部234の近位端は、中央プッシュロッド240の遠位端に別のピン238を介して枢動可能に接続されている。ブレード212a、212bは、連結部234a、234bを介してプッシュロッド240と対称に接続されている。この対称構成は、ブレード212a、212bが作動したとき、プッシュロッド240の運動が左右の揺動ではなく、確実に矢印によって示されている方向に制約されるために役立つので重要である。
【0068】
上述のカム構成体の実施形態と同様に、この作動機構260の鍵は、ピン238と枢動点225との間の相対運動である。加えて、アーム272及び連結部234の存在は、ピン236が、ピン238と枢動点225との両方との間に一定距離を保たなくてはならないことを意味する。したがって、プッシュロッド240が前方へと(すなわち、上方へと)移動したとき、突出アーム272と連結部234との間の角度は、一定の分離を維持するように減少しなくてはならず、それにより、枢動点225を中心とするアーム272の回転、したがって、枢動点225を中心とするブレード212a、212b全体の回転がもたらされる。
【0069】
図7A~
図7Eは、クレビス構造体40の近位端の概略的な(縮尺通りではない)図であり、それは、同軸伝送線80の内側伝導体82及び外側伝導体84と、第1のブレード12a及び第2のブレード12bの表面上の電極との間の電気接続を例示している。これらの概略図では、作動機構60は省略されているが、上述の様々な作動機構は、電気接続構成のすべてと互換性があることが認識されよう。同様に、ブレード12a、12bは、間の間隙と互いに隣接しているように示されているが、同じ電気接続が何らかのブレード構成、たとえば本明細書において論じられているペンチタイプの構成体またはハサミタイプの構成体とともに使用可能であることが認識され得る。
【0070】
図7Aでは、電気接続は、回転軸54を介して行われる。このようにして、電気接続は、ブレード12a、12bが回転したとき、最小限、移動する一部において形成される。同軸伝送線80は、凹部44の基部50において終端する。内側伝導体82は、同軸伝送線の誘電材料86の端部表面87を越えるように電気コンタクト90へと延び、この電気コンタクト90は、第1の分岐90aと第2の分岐90bとに分かれる。この実施形態では、電気コンタクト90は、内側伝導体82の延長部であり、この内側伝導体90とつながっているが、電気コンタクト90は、内側伝導体82の端部表面83と電気的に接触している別個の伝導材料片から形成されていることが可能である。第1の分岐90aは、ブレード12a、12b間に延び、伝導スリーブ92aと電気的に接触している。伝導スリーブ92aは、回転軸54の外側表面をコーティングする伝導材料層の形態である。第1の分岐90aの遠位端及び第1のブレード12aに対する伝導スリーブ92aの位置については、より詳細に後述する。
【0071】
第2の分岐90bは、第2のブレード12bの近位端を越えるように(第2のブレード12bとは電気的に接触しないように)凹部にわたって延び、クレビス壁48と第2のブレード12bの外側表面23aとの間の領域内に延びている。第1の分岐90aと同様に第2の分岐90bの遠位端は、構造が伝導スリーブ92aと類似する伝導スリーブ92bと電気的に接触している。
【0072】
同軸伝送線80の外側伝導体84は、電気コンタクト94a、94bと電気的に接続されている。電気コンタクト94aは、第1のブレード12aの外側表面23aとクレビス壁46との間の領域内に延び、先に述べた伝導スリーブ92a、92bと構造が同じである伝導スリーブ96aに電気的に接続されている。内側伝導体82と同様に、電気コンタクト94aは、同軸伝送線80の外側伝導体84とつながっていても、または外側伝導体84の端部表面85と接触している別個の伝導材料片から形成されていてもよい。
【0073】
電気コンタクト94bは、ブレード12a、12bの内側表面21a、21b間の領域内に延びている。そのように行う際、短絡を防止するために、電気コンタクト94bは、電気コンタクト90から電気的に絶縁されていることが重要である。実際に、これは、
図7Aに示されていない凹部内にコンタクト90、94間の角度オフセットを有するか、または電気コンタクト90、94a、94bの周りに絶縁コーティングを設けるかのいずれかによって達成され得る。電気コンタクト94bの遠位端は、先に述べた3つの伝導スリーブ92a、92b、94aと構造がやはり類似する伝導スリーブ96bに電気的に接続されている。
【0074】
ブレード12a、12bは、回転軸54上に取り付けられる。各ブレードの表面21a、21b、23a、23b上の金属化部20a、20b、20c、20dは、図面では黒い太線によって示されている。この金属化部20a、20b、20c、20dは、マイクロ波/RFのエネルギーを使用して切断及び凝固を行うために、同軸伝送線80に電気的に接続されている必要がある。
図7Aに示されている実施形態では、電気接続は、回転軸54を介している。より具体的には、一例として第1のブレード12aを用いて(この状況は、第2のブレード12bと同じである)、たとえばブレード12aの内側表面21a上の金属化部20は、ブレード12aの中の穴26(これを介してブレード12aが回転軸54上に取り付けられる)の周囲における口部の上に延びて、穴26の内側表面上の伝導シェル100aを形成する。次いで、ブレード12aが回転軸54上に取り付けられたとき、電気接続が伝導シェル100aと伝導スリーブ92aとの間に形成される。したがって、本実施形態では、伝導スリーブ92aは、電気コンタクト90aの遠位端と伝導シェル100aとの両方に電気的に接続され得る位置に置かれている必要がある。同じことが残りの3つの伝導スリーブ92b、96a、96bにも当てはまる。使用に際して、ブレード12a、12bが作動機構60(図示せず)を用いて回転軸54を中心に回転すると、伝導シェル100a、100b、100c、100dと伝導スリーブ92a、92b、96a、96bと間の周方向の電気接続は、回転中、すべての点において維持されて、均一な信号が確実に金属化部20a、20b、20c、20dに送り込まれる。電気接続の信頼性を確保するために、本実施形態では、穴26a、26bの内側表面、すなわち、伝導シェル100a、100b、100c、100dは、回転軸54の外側表面、すなわち、伝導スリーブ92a、92b、96a、96bにぴったり接している。
【0075】
図7Bは、
図7Aと類似の構成を示している。様々な実施形態と変わらない機能部については、再度説明せず、対応する参照数字が与えられる。
【0076】
図7Bの実施形態では、回転軸54において接続されているのではなく、電気コンタクト90、94a、94bの遠位端と分岐90a、90bは、ブレード12a、12bのそれぞれの表面21a、21b、23a、23b上の金属化部20a、20b、20c、20dに直接、接続されている。これらの実施形態では、電気コンタクト90、94a、94bがブレード12a、12bの回転中に接触し得るブレード12a、12bの表面21a、21b、23a、23bのすべての一部において、金属化部20a、20b、20c、20dが存在することが不可欠である。このことは、単刀直入には、たとえば
図5A及び
図5Bに示されているように、ブレードの近位部分の大部分をカバーされた金属化部でカバーすることによって達成される。代替の実施形態では(図示せず)、電気コンタクトは、
図7Bに示すように、回転軸54の下ではなく、回転軸54の上にある位置においてブレードの表面上の金属化部に電気的に接続され得る。そのような実施形態では、電気コンタクトは、回転軸54自体から電気的に絶縁すべきである。
【0077】
図7Cは、先の2つに類似する実施形態を示し、ここでは、同軸伝送線80の内側伝導体82は、チャネル89を画定するために中空である。この場合には、
図7A及び
図7Bに示すように、分岐した電気コンタクトを有するのではなく、電気コンタクト90a’、90b’は、内側伝導体82の端部表面の両側から延びる。示されている実施形態では、電気コンタクト90a’、90b’の遠位端は、ブレード12a、12bの表面21a、21b上の金属化部20b、20cに電気的に接続されているが、他の実施形態では、それらは、
図7Aの実施形態に示すように回転軸54上の伝導スリーブに電気的に接続されていてもよい。
【0078】
図7Dは、先の3つの図面に類似のさらなる別の実施形態を示している。この場合には、内側伝導体82がブレードの内側表面21a、21bに接続され、外側伝導体84がブレードの外側表面23a、23bに接続されているので、電気コンタクトの渡り線はまったく必要ない。この特定の例では、内側伝導体につながっている電気コンタクト93は、回転軸54の近くでT形状に分岐し、Tの各アーム93a、93bは、ブレード12a、12bのうちの一方における金属化部20b、20cに接触する。もちろん、T形状は、内側伝導体が、たとえばこの実施形態において取ることができ得る多くの形状のうちの1つである。先に説明したように、この構成は、
図9に示されているブレード12a、12b間の斥力を避けるために、電気外科用切断器具のペンチに似た構成に利用され得ることになる。
【0079】
図7Eは、先の実施形態に類似する実施形態を示しているが、ただしこの場合には、ブレード12a、12b上の金属化部20a、20b、20c、20dとの接続は、
図7Aに示すように、回転軸54上の伝導性スリーブ92’、96a、96bを介して行われる。本実施形態では、同軸伝送線80の外側伝導体84から延びている電気コンタクト94a、94bに接続するために2つの伝導性スリーブ96a、96bと、ブレード12a、12bの両方の中の穴26a、26bの内側表面に接続し、単一の分岐していない電気コンタクト90’によって内側伝導体82に電気的に接続されている単一の伝導スリーブ92’とが存在する。同様の実施形態では(図示せず)、ブレードの内側表面それぞれに関連する伝導スリーブが存在することがあり、この場合には、電気コンタクトは、たとえばY形状に分岐されることになり、それにより、分岐のそれぞれの遠位端は、伝導スリーブのうちの1つと電気接続を形成することができるようになる。
【0080】
図8は、本発明の第2の態様の一実施形態による電気外科用切断器具200を含む電気外科用用具を示す概略的図面である。切断器具200に加えて、
図8はまた、RF周波数信号及び/またはマイクロ波周波数信号を切断器具200に供給することができる発電機出力部202を含む。発電機出力部202は、接続部204を介してSPDTスイッチ206に接続されている。SPDTスイッチ206は、1つの入力端子、及び2つの出力端子(
図8には1及び2と示されている)を有する。極208は、2つの出力端子間で迅速に切り替えることができる。出力部はそれぞれ、単一の同軸伝送線、すなわち、第1の同軸伝送線80aか、または第2の同軸伝送線80bかのいずれかに接続されている。その結果、極208が2つの出力端子間で振動するとき、同軸伝送線80a、80bのうちの一方のみがいずれの時点においても発電機に接続されている。同軸伝送線80a、80bは、内側伝導体82a、82b、外側伝導体84a、84b、及びこの2つとは分離している誘電材料86a、86bから形成される。これらの伝送線80a、80bは、標準50Ω同軸ケーブルの形態であってよい。
【0081】
第1の同軸伝送線80aと第2の同軸伝送線80bとの間における空間は、チャネル89を形成し、このチャネル89を介してプッシュロッドまたはガイドワイヤ(図示せず)が挿入されて作動手段として機能することができる。同軸伝送線80a、80bと第1のブレード12a及び第2のブレード12bとの間の電気接続の簡略図は、同軸伝送線80a、80bの遠位端において示されている。より具体的には、構成要素は、次のように接続される:
・ 第1の同軸伝送線80aの外側伝導体84aは、接続部99aを介して第1のブレード12aの外側表面23aに接続される。
【0082】
・ 第1の同軸伝送線80aの内側伝導体82aは、接続部99bを介して第1のブレード12aの内側表面21aに接続される。
【0083】
・ 第2の同軸伝送線80bの外側伝導体84bは、接続部101aを介して第2のブレード12bの内側表面21bに接続される。
【0084】
・ 第2の同軸伝送線80bの内側伝導体82bは、接続部101bを介して第2のブレード12bの外側表面23bに接続される。
【0085】
先に論じたように、第1の及び第2の電極を形成するために、両ブレード12a、12bの内側表面及び外側表面21a、21b、23a、23b上に金属化部(図示せず)が存在する。この概略図面では、クレビス40及び回転軸54などの機能部は、切断器具200の他の機能部を曖昧にしないために省略されているが、これらは、示されている実施形態と完全に互換性があることに留意されたい。たとえば、同軸伝送線80a、80bとブレード12a、12bとの間の接続は、
図7A~
図7Eに示されている構造と類似の構造を使用して形成されてもよい。
【0086】
図8はまた、各ブレードの出力のプロットを示している。極208がSPDTスイッチ206内で振動すると、発電機出力部202は、順番に第1のブレード12a及び第2のブレード12bに交番に供給される。極208は、プロットからわかり得るように、時間t
i(i=0,1,2,3,4)における位置を切り替える。いずれの点でも、両ブレード12a、12bから同時に出力される信号はない。好ましい実施形態では、スローの切り替え間隔は、約20msである。信号がブレード12a、12bにおいて受け取られているときを例示するために、波形が概略的に描かれていることに留意されたい。現実には、波形はそれ自体、RFスペクトルの最下端においてさえも、はるかにより高い周波数を有することになる。
図8に示されている波形は、本発明の実施形態において利用される周波数を表すものとして解釈すべきではない。
【0087】
図9及び
図10は、本発明の一実施形態である切断器具において使用され得る概略的なブレード構造体300の上方図及び下方図である。1つのブレード302のみが
図9に示されているが、例示のクレビス構造体304は、第2のブレードがブレード302に隣接して取り付けられることになる余地を残し、それにより、それらは、ハサミに似た形で動作することが認識され得る。
【0088】
この実施形態では、ブレード302は、回転軸308を中心にクレビス構造体304に枢動可能に取り付けられている平面誘電要素306を備える。平面誘電要素306は、生体組織に係合するための内向き扁平エッジ310と、内向き扁平エッジ310とは反対の外向き湾曲エッジ312とを有する。
【0089】
第1の伝導性要素314が、平面誘電要素306の上側表面に取り付けられている。第2の伝導性要素316が、平面誘電要素306の下側表面に取り付けられている。この実施形態では、第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素314、316は、上側表面上のパターン化された金属化層である。第1の及び第2の伝導性要素のパターンならびに厚さは、内向き扁平エッジに沿ってマイクロ波パワーの均一な送込みを確実にするために、(たとえばシミュレーションを用いて)選択され得る。
【0090】
この実施形態では、第1の伝導性要素314は、外向き湾曲エッジ312から後退され、対照的に、第2の伝導性要素は、外向き湾曲エッジ312に合うように延びている。第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素314、316はともに、内向き扁平エッジ310に合うように延びている(かつ内向き扁平エッジ310において露出し得る)。第2の伝導性要素316は、厚さが第1の伝導性要素314よりも大きくてよい。第1の伝導性要素及び第2の伝導性要素314、316はそれぞれ、内向き扁平エッジ310に沿って延びている、金属化部のそれぞれの指部318、320と、金属化部の指部の背面に金属化部が存在しないそれぞれの切欠き部分322、324とを有することができる。各切欠き部分322、324は、金属化部の外向きストリップ326、328によって境界付けされ得、この金属化部の外向きストリップ326、328は、角度付けされた接続ストリップ330、332によって金属化部のそのそれぞれの指部318、320に電気的に接続されている。この構成により、後述するように、ブレード構造体のリターンロスが改善され、また均一な電力送込みが確保される。
【0091】
図9及び
図10に示されている構成では、クレビス構造体304の外側に取り付けられた同軸ケーブル334によって、ブレード構造体300に電力が送り込まれる。クレビス構造体の他方の側における第2の同軸ケーブル(図示せず)を使用して、第2のブレードに電力を供給することができる。
【0092】
同軸ケーブル334は、回転軸308に電気的に接続されている外側伝導体336を有し、この回転軸308は、第2の伝導性要素316に電気的に接続されている。同軸ケーブル334は、外側伝導体336の遠位端を越えて突き出て、側方に延びているカップリングブロック338に電気的に接続する内側伝導体を有し、このカップリングブロック338は、クレビス構造体304の中の穴340の中を通って第1の伝導性要素314に電気的に接続している。
【0093】
図11は、ブレード構造体300のリターンロスを示すグラフである。周波数5.8GHzを有するマイクロ波エネルギーが同軸ケーブル334を介して供給されるとき、リターンロスは、3dBよりも良好である。
【0094】
図12は、周波数5.8GHzを有するマイクロ波エネルギーの生体組織内への電力吸収を示すブレード構造体300のシミュレーションである。ブレードの他のエリアからのいかなる望ましくない電力漏洩もなく、内向き扁平エッジに隣接する均一な電力送込み領域が存在することがわかり得る。