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特許7054252包装用緩衝気泡シート、包装用緩衝気泡シートの製造装置、包装用緩衝気泡シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】包装用緩衝気泡シート、包装用緩衝気泡シートの製造装置、包装用緩衝気泡シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/03 20060101AFI20220406BHJP
   B31D 3/04 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B65D81/03 100A
B31D3/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020087016
(22)【出願日】2020-05-18
(65)【公開番号】P2021181322
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2020-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 伸一
(72)【発明者】
【氏名】横井 篤
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚子
(72)【発明者】
【氏名】岩坂 正基
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-290279(JP,A)
【文献】米国特許第06036016(US,A)
【文献】特開2006-035707(JP,A)
【文献】特開2002-172718(JP,A)
【文献】登録実用新案第3068820(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/250753(US,A1)
【文献】特開昭61-162333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31D 5/00
B32B 3/12
B32B 3/26-3/30
B65D 65/00-65/46
B65D 81/00-81/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に膨出する多数の中空突起が規則的に配列されたキャップフィルムと、前記中空突起内に空気を封入するバックフィルムとを積層してなる包装用緩衝気泡シートであって、
一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間に、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない易分離線部を備え、
MD方向に分子配向した前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが、配向方向を揃えて積層されており、
前記易分離線部は、前記中空突起の突出方向と同じ方向に、前記キャップフィルムが線状に突出した中空の線状突起を含み、
前記線状突起が、MD方向に直交する方向に沿って設けられ、
前記易分離線部及びその延長線は、前記中空突起に交差しない
ことを特徴とする包装用緩衝気泡シート
【請求項2】
中空状に膨出する多数の中空突起が規則的に配列されたキャップフィルムと、前記中空突起内に空気を封入し平坦状のフィルムであるバックフィルムとを積層してなる包装用緩衝気泡シートであって、
一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間は、
前記列間の大部分の領域であって、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着された融着領域と、
前記融着領域を分断する線状に設けられ、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない易分離線部とを備え、
前記易分離線部は、前記中空突起の突出方向と同じ方向に、前記キャップフィルムが線状に突出した中空の線状突起を含み、
前記易分離線部及びその延長線は、前記中空突起に交差しない
ことを特徴とする包装用緩衝気泡シート
【請求項3】
一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間に、前記中空突起の突出方向と同じ方向に突出する屈曲加工線部が、MD方向に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の包装用緩衝気泡シート
【請求項4】
前記キャップフィルムが、高密度ポリエチレン15~40重量%、低密度ポリエチレン20~50重量%、直鎖状低密度ポリエチレン5~40重量%を含み、
前記バックフィルムが、高密度ポリエチレン25~50重量%、低密度ポリエチレン10~40重量%、直鎖状低密度ポリエチレン5~40重量%、環状ポリオレフィンコポリマー4~10重量%を含む
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の包装用緩衝気泡シート
【請求項5】
MD方向を巻き取り方向にしてロール状に巻き取られた
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の包装用緩衝気泡シート
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装用緩衝気泡シートの製造装置であって、
フィルム状に押し出された溶融状態の前記キャップフィルムを成形する成形ロールと、
前記成形ロールによって成形された前記キャップフィルムと、溶融樹脂をフィルム状に押し出してなる前記バックフィルムとを積層する積層部とを備え、
前記成形ロールの外周面には、前記中空突起に対応する配列で形成され前記中空突起を真空成形する多数の吸引キャビティと、一定又は不定の列数ごとに隣接する前記吸引キャビティの列間に形成され前記キャップフィルムに線状突起を成形する線状突起成形溝とが設けられており、
前記積層部は、前記キャップフィルムに成形された前記線状突起と、前記バックフィルムとの間に、空隙を形成しつつ、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとを積層することにより、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない前記易分離線部を形成する
ことを特徴とする包装用緩衝気泡シートの製造装置。
【請求項7】
前記線状突起成形溝は、前記成形ロールの軸方向に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載の包装用緩衝気泡シートの製造装置。
【請求項8】
前記成形ロールの外周面には、一定又は不定の列数ごとに隣接する前記吸引キャビティの列間に形成され、前記キャップフィルムに屈曲加工を施す屈曲加工線部加工溝が周方向に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の包装用緩衝気泡シートの製造装置。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載の包装用緩衝気泡シートの製造装置を用いた包装用緩衝気泡シートの製造方法であって、
溶融樹脂をフィルム状に押し出しながら連続供給して、前記成形ロールの外周面と接触させることにより、前記キャップフィルムに、前記中空突起を真空成形するとともに、前記線状突起を形成するキャップフィルム成形工程と、
前記積層部によって、前記キャップフィルムの前記線状突起と、前記バックフィルムとの間に、空隙を形成しつつ、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとを積層することにより、一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間に、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない易分離線部を形成するシート積層工程とを備える
ことを特徴とする包装用緩衝気泡シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡シート、気泡シートの製造装置、気泡シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する多数の中空突起が形成されたキャップフィルムに、当該突起内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって形成された、独立した多数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような気泡シートに関し、本出願人は、キャップフィルムとバックフィルムの少なくともいずれか一層に、環状オレフィン・コポリマーを添加することにより、流れ方向、すなわち、MD方向(Machine Direction)に直交する巾方向に易カット性を有する気泡シートを先に提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-16616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本出願人のその後の検討によれば、環状オレフィン・コポリマーの添加は製造コストの面から好ましくなく、また、環状オレフィン・コポリマーの添加量が十分でないと、気泡シートを手で引き裂く際の力の入れ加減によっては、巾方向に引き裂く途中に引き裂き方向がずれてしまい、引き裂き難いと感じることがあるという知見が得られた。
【0006】
そこで、本出願人は、気泡シートをより容易に手で引き裂くことができるように、さらなる検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、易カット性を向上させた気泡シート、気泡シートの製造装置、気泡シートの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の気泡シートは、中空状に膨出する多数の中空突起が規則的に配列されたキャップフィルムと、前記中空突起内に空気を封入するバックフィルムとを積層してなる包装用緩衝気泡シートであって、一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間に、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない易分離線部を備え、MD方向に分子配向した前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが、配向方向を揃えて積層されており、前記易分離線部は、前記中空突起の突出方向と同じ方向に、前記キャップフィルムが線状に突出した中空の線状突起を含み、前記線状突起が、MD方向に直交する方向に沿って設けられ、前記易分離線部及びその延長線は、前記中空突起に交差しないことを特徴とする構成としてある。
【0008】
また、本発明の気泡シートの製造装置は、中空状に膨出する多数の中空突起が規則的に配列されたキャップフィルムと、前記中空突起内に空気を封入し平坦状のフィルムであるバックフィルムとを積層してなる包装用緩衝気泡シートであって、一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間は、前記列間の大部分の領域であって、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着された融着領域と、前記融着領域を分断する線状に設けられ、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない易分離線部とを備え、前記易分離線部は、前記中空突起の突出方向と同じ方向に、前記キャップフィルムが線状に突出した中空の線状突起を含み、前記易分離線部及びその延長線は、前記中空突起に交差しないことを特徴とする構成としてある。
【0009】
また、本発明の包装用緩衝気泡シートの製造方法は、溶融樹脂をフィルム状に押し出しながら連続供給して、前記成形ロールの外周面と接触させることにより、前記キャップフィルムに、前記中空突起を真空成形するとともに、前記線状突起を形成するキャップフィルム成形工程と、前記積層部によって、前記キャップフィルムの前記線状突起と、前記バックフィルムとの間に、空隙を形成しつつ、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとを積層することにより、一定又は不定の列数ごとに隣接する前記中空突起の列間に、前記キャップフィルムと前記バックフィルムとが融着されていない易分離線部を形成するシート積層工程とを備える方法としてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、易カット性を向上した気泡シート、気泡シートの製造装置、気泡シートの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の気泡シートを説明する図である。
図2】第1実施形態の気泡シートを分断する態様を説明する図である。
図3】第1実施形態の気泡シートの製造装置を模式的に示す図である。
図4】第1実施形態の成形ロールの外周部分を周方向に展開した構成を説明する図である。
図5】第1実施形態の積層工程を拡大して説明する図である。
図6】第2実施形態の成形ロールの一部断面図である。
図7】第3実施形態の気泡シートを説明する図である。
図8】第3実施形態の横方向に沿って切断した気泡シートの斜視図を拡大したである。
図9】第3実施形態のキャップフィルムが易分離線部で切断される状態、屈曲加工線部で切断される状態を模式的に示す図である。
図10】第3実施形態の成形ロールの外周部分を周方向に展開した構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の気泡シート1を説明する図である。
図1(A)は、気泡シート1を気泡室35側(表側Z2)から見た図である。
図1(B)は、図1(A)のB-B断面図である。
図1(C)は、図1(B)のC部拡大図である。
図2は、第1実施形態の気泡シート1を分断する態様を説明する図である。
図2(A)は、気泡シート1の分断作業を説明する図である。
図2(B)から図2(E)は、気泡シート1が易分離線部45で分断する態様を、拡大して示す断面図である。
これらの図面では、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系は、図1に示すように、気泡シート1の横方向X、縦方向Y、厚さ方向Z(裏側Z1、表側Z2)を表す。また、各図は、シート、フィルムの厚さ、横線状突起12に関連する形状等を、適宜、誇張して図示した。
【0013】
(気泡シート1)
気泡シート1は、緩衝性能を利用することにより、例えば、包装の緩衝材、引越し、模様替え時の養生材等として使用される。
また、気泡シート1は、保温性能、断熱性能を利用することにより、例えば、建築材、コンクリート打設時の養生シート等として使用される。
図1に示すように、気泡シート1は、キャップフィルム10、バックフィルム20、気泡領域30、融着領域40を備える。
【0014】
キャップフィルム10、バックフィルム20は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料をフィルム状に溶融押出してなる。キャップフィルム10、バックフィルム20は、縦方向Y(MD方向)に分子配向し、配向方向を揃えて積層されている。
キャップフィルム10は、中空突起11、横線状突起12を備える。
中空突起11は、縦方向Y、横方向Xに複数配列されている。中空突起11は、表側Z2に膨出している。中空突起11の内部は、中空である。
【0015】
横線状突起12は、縦方向Yに配列された隣り合う中空突起11の列間に設けられている。
表側Z2から見た状態で、横線状突起12の形状は、キャップフィルム10の横方向Xの一端から他端までを結ぶような、横方向Xに平行な直線状である。
横線状突起12は、キャップフィルム10の裏面を表側Z2に窪ませたような形状であり、溝状に形成される。
横線状突起12は、一定又は不定の列数ごとに隣接する中空突起11の列間に設けられている。本実施形態では、横線状突起12は、3列ごとに隣接する中空突起11の列間に設けられた例を説明する。
このように、一定又は不定の列数ごとに隣接する中空突起11の列間に横線状突起12を設けることにより、作業者は、メジャー等の測定器を用いなくても、縦方向Yの長さを把握できるため、気泡シート1を分断する場合の作業効率がよい。
【0016】
バックフィルム20は、キャップフィルム10の裏側Z1に融着されることにより、キャップフィルム10に対して積層される。
気泡領域30は、気泡シート1のうち気泡室35が設けられた領域である。気泡室35は、キャップフィルム10内に空気が封入されて形成される。
融着領域40は、気泡シート1のうち気泡領域30が設けられていない領域であり、また、キャップフィルム10とバックフィルム20とが融着された領域である。
融着領域40は、易分離線部45を備える。
【0017】
易分離線部45は、融着領域40内であって、キャップフィルム10とバックフィルム20とが融着されていない部分である。すなわち、易分離線部45は、バックフィルム20がキャップフィルム10の融着領域40に対してフラットに重ねられることにより、キャップフィルム10及びバックフィルム20間に空隙が形成された部分である。
なお、易分離線部45の面積は、十分に小さいため、本実施形態では、易分離線部45は、融着領域40の一部領域に設けられたものとして説明する。
【0018】
易分離線部45は、気泡シート1のうち、キャップフィルム10の横線状突起12に対応した領域に、線状に形成される。つまり、易分離線部45は、キャップフィルム10が線状に突出した中空の横線状突起12を含み、縦方向Yに配列された気泡室35間の領域に、線状に形成される。また、易分離線部45は、横方向X(配向方向とは直交する方向)に沿って設けられている。
【0019】
図1(C)に示すように、上記構成により、易分離線部45では、キャップフィルム10及びバックフィルム20は、融着されていない。
このため、図2に示すように、易分離線部45は、引っ張り又はせん断方向に力が加わった場合に、易分離線部45の周囲の融着領域40よりも、破断しやすい。
図2(B)から図2(E)に示すように、これは、易分離線部45の周囲では、キャップフィルム10とバックフィルム20と融着されており、両者が一体となって力を受け止めるのに対して、易分離線部45では、キャップフィルム10とバックフィルム20とが融着しておらず、両者が分離しているために、一体となって力を受け止めることができないためと考えられる。
さらに、易分離線部45では、横線状突起12が湾曲したような形状になっているために、バックフィルム20が単独で力を受け止める。そのため、バックフィルム20は、縦方向Yに伸びやすく、横線状突起12に比べると伸び量が多くなるために、分断されやすくなる。このため、易分離線部45では、最初に、バックフィルム20が単独で伸びた後に、横線状突起12が伸びる態様となる。なお、図2(D)、(E)には、バックフィルム20が分断後に、横線状突起12が分断される態様を示すが、バックフィルム20が伸びた後、さらに、バックフィルム20及び横線状突起12が、一緒に伸びることにより分断される態様でもよい。
【0020】
一般的な気泡シートは、フィルムのMD方向の方が、TD方向に比べて引き裂かれ易い傾向にある。これに対して、本実施形態の気泡シート1は、上記のような易分離線部45を備えるので、フィルムのMD方向であるか、TD方向であるかにかかわらず、易分離線部45に沿って、より容易に手で引き裂くことができる。したがって、フィルムのTD方向に沿って易分離線部45を設けた場合であっても、気泡シート1をTD方向に沿って手で引き裂いていく途中で、MD方向へ引き裂き方向がずれてしまうことなく、易分離線部45に沿ってきれいに切断できる。
【0021】
このように、本実施形態の気泡シート1は、易分離線部45に沿って、横方向Xに容易に切断することができる。
【0022】
(製造装置50)
気泡シート1の製造装置50について説明する。
図3は、第1実施形態の気泡シート1の製造装置50を模式的に示す図である。
図4は、第1実施形態の成形ロール70の外周部分を周方向に展開した構成を説明する図である。
図4(A)は、成形ロール70の外周部分を外周面の法線方向から見た図である。
図4(B)は、図4(A)のB-B部断面図である。
製造装置50は、フラットダイ51,52、静電付与部60(積層部)、成形ロール70、剥離ロール81、巻き取りロール82を備える。フラットダイ51,52、静電付与部60、成形ロール70、剥離ロール81、巻き取りロール82は、気泡シート1、フィルム10,20の流れ方向B(つまりMD方向)の上流側B1から下流側B2に向けて、この順番で配置されている。
流れ方向Bは、気泡シート1の縦方向Yに対応しており、奥行方向A(配向方向とは直交する方向)は、気泡シート1の横方向Xに対応している。成形ロール70、剥離ロール81、巻き取りロール82は、流れ方向Bに対応した方向に回転駆動される。
【0023】
フラットダイ51,52は、それぞれ溶融樹脂を押し出す押し出し装置(図示せず)に取り付けられている。フラットダイ51,52は、それぞれ押し出し装置から送られてくる溶融樹脂を、キャップフィルム10、バックフィルム20に対応した厚みに成形する。
なお、本実施形態では、このような溶融状態の樹脂フィルムも、キャップフィルム10、バックフィルム20という。
【0024】
静電付与部60は、フラットダイ52から送られてくるバックフィルム20を帯電させる帯電装置である。静電付与部60の構成は、バックフィルム20を帯電させることができるものであればよく、限定されない。
図3に示す例では、静電付与部60は、奥行方向Aに一列に配置された放電針61と、これらの放電針61と対になる対電極62とを備える。バックフィルム20は、放電針61と対電極62との間に通される。そして、放電針61と対電極62との間に直流電圧を印加することにより、電子をバックフィルム20に放電する。これにより、静電付与部60は、バックフィルム20を帯電させる。
なお、放電針61の設置位置を適宜調整することで、成形ロール70を対電極として利用して、図示するような対電極62を省略してもよい。
【0025】
成形ロール70は、フラットダイ51から送り出される溶融状態のキャップフィルム10に、中空突起11、横線状突起12の形状を成形するためのロールである。
図4に示すように、成形ロール70の外周面は、吸引キャビティ71、横線状突起成形溝72を備える。
【0026】
吸引キャビティ71は、溶融状態のキャップフィルム10に、中空突起11の形状を真空成形により賦形する有底の穴である。吸引キャビティ71は、周方向(流れ方向B)及び奥行方向Aに、キャップフィルム10の中空突起11に対応した位置に、複数配置されている。
なお、吸引キャビティ71の底部には、キャップフィルム10を吸引するための吸引口71aが設けられている。
【0027】
横線状突起成形溝72は、溶融状態のキャップフィルム10に、横線状突起12を成形するための溝である。横線状突起成形溝72は、横線状突起12に対応した位置に設けられている。
すなわち、横線状突起成形溝72は、吸引キャビティ71以外の領域であって、キャップフィルム10とバックフィルム20との間の融着領域40に対応する領域に、線状に設けられた溝であり、キャップフィルム10に横線状突起12を成形する。横線状突起成形溝72は、奥行方向A(成形ロール70の回転軸の軸方向)に沿って設けられている。
【0028】
図3に示すように、剥離ロール81は、キャップフィルム10とバックフィルム20とを積層してなる気泡シート1を、成形ロール70上から剥離するためのロールである。
巻き取りロール82は、剥離ロール81から送られてきた気泡シート1を巻き取ることにより、気泡シート1をロール状のロール体1aにするためのロールである。
【0029】
(製造方法)
図3図5等を参照して、上記製造装置50を用いて、気泡シート1を製造する方法について説明する。
図5は、第1実施形態の積層工程を拡大して説明する図である。
製造装置50は、気泡シート1を、以下の製造工程に従って製造する。
【0030】
(流し工程♯1)
図3に示すように、フィルム10,20をフラットダイ51,52から連続供給しながら、成形ロール70、剥離ロール81、巻き取りロール82を回転することにより、フィルム10,20、気泡シート1を流れ方向Bに送る。
なお、フィルム10,20は、溶融状態でフラットダイ51,52から送り出されることにより、押し出されながら延伸するため、MD方向である縦方向Yに配向する。
【0031】
(キャップフィルム成形工程♯2)
フラットダイ51から送られてきたキャップフィルム10の裏面を、成形ロール70の外周面に載置するようにして、両者を接触させる。キャップフィルム10は、溶融状態であるので、成形ロール70の外周面に倣うようにして、変形する。これにより、成形ロール70は、キャップフィルム10を吸引して中空の中空突起11を真空成型により形成し、また、キャップフィルム10を成形して横線状突起12を形成する。
【0032】
(帯電工程♯3)
静電付与部60は、フラットダイ52から送られてくるバックフィルム20に放電することにより、バックフィルム20を帯電させる。
【0033】
(シート積層工程♯4)
静電付与部60によって帯電されたバックフィルム20は、成形ロール70の回転に応じて、その周面に沿って送られるキャップフィルム10に対して、静電気の作用によって密着する。両フィルム10,20は、融着可能な程度に溶融状態を維持しており、密着することにより融着する。このように、静電付与部60は、バックフィルム20を帯電させることにより、キャップフィルム10とバックフィルム20とを密着させて、融着することができる。
【0034】
なお、キャップフィルム10とバックフィルム20との積層は、本実施形態とは異なり、ニップローラ(加圧ロール)等を用いる形態でもよい。つまり、キャップフィルム10とバックフィルム20とを融着する工程では、ニップローラ等と成形ロール70との間に、キャップフィルム10及びバックフィルム20を挟み込むことにより、キャップフィルム10及びバックフィルム20を加圧してもよい。
【0035】
このようにして、キャップフィルム10とバックフィルム20とを積層することで、図5(A)に示すように、キャップフィルム10の中空突起11に対応した領域には、キャップフィルム10とバックフィルム20との間に空隙が形成される(矢印A35参照)。これにより、気泡室35が形成され、また、これら気泡室35が形成された領域が気泡領域30となる。
【0036】
また、図5(B)に示すように、キャップフィルム10の中空突起11以外の領域では、キャップフィルム10とバックフィルム20とが融着され、融着領域40が形成される(矢印A40参照)。但し、キャップフィルム10の横線状突起12が形成された部分では、キャップフィルム10とバックフィルム20とが融着されず、空隙が設けられることにより、易分離線部45が形成される。
【0037】
(冷却工程♯5)
成形ロール70は、回転することにより、密着した両フィルム10,20を剥離位置に送る。この過程において、両フィルム10,20は、冷却されることにより、溶融状態から固化する。また、両フィルム10,20は、固化にともない、より強固に融着される。
【0038】
(剥離工程♯6)
気泡シート1は、剥離ロール81に掛け渡されている。このため、気泡シート1は、剥離位置で成形ロール70から剥離し、その後、剥離ロール81に掛け渡されている方向に、進行方向が変化する。
【0039】
(巻き取り工程♯7)
さらに、気泡シート1は、巻き取りロール82に掛け渡されている。このため、気泡シート1は、剥離ロール81から巻き取りロール82の方向にガイドされて、巻き取りロール82に巻き取られる。
これにより、気泡シート1は、縦方向Yを巻き取り方向にして、ロール体1aの形態に巻き取られる。
【0040】
気泡シート1の使用者は、製造された気泡シート1のロール体1aから、気泡シート1を必要分だけ引き出した後、ロール体1aから分断する。前述したように、気泡シート1は、易分離線部45で分断できるので、分断時の作業性がよい。
【0041】
また、本実施形態の中空突起11の形状は、ほぼ直方体である。このため、本実施形態の気泡シート1は、従来の円柱状の中空突起を備える気泡シートに比べると、融着領域40の占有面積の割合が小さくなり、気泡領域30の占有面積の割合が多くなる。このため、本実施形態の気泡シート1は、中空突起の高さを従来よりも低くしても、緩衝に関する性能を発揮できる。これにより、規定長さ(例えば42m等)のロール体1aは、巻径を従来よりも小さくすることができ、運搬コストの削減を図ることができる。
例えば、従来の中空突起が高さ3.5mmであったのに対して、本実施形態の中空突起11は、高さ3.0mmにすることができた。これにより、ロール体の外形は、従来380mmであったのに対して、本実施形態では330mmにすることができた。
このように、本実施形態にあっては、中空突起11の形状をほぼ直方体とするのが好ましいが、中空突起11の形状は特に限定されない。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の気泡シート1は、配向方向とは異なる横方向Xに沿った方向であっても、容易に切断できる。このため、梱包時等の作業性を向上できる。
また、気泡シート1は、静電付与部60、成形ロール70を備える製造装置50を用いることにより、容易に製造することができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、製造装置の成形ロールを第1実施形態から変更したものである。
なお、以下の説明及び図面において、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾(下2桁)に同一の符号を適宜付して、重複する説明を適宜省略する。
図6は、第2実施形態の成形ロール270の一部断面図である。
図6(A)は、吸引キャビティ71、横線状突起成形溝272近傍を拡大した断面図である。
図6(B)は、横線状突起成形溝272近傍をさらに拡大した断面図である。
【0044】
図6(A)に示すように、横線状突起成形溝272の幅W(mm)は、例えば「0.5≦W≦1.5」である。また、横線状突起成形溝272の深さは、横線状突起12の高さよりも十分に深い。つまり、横線状突起成形溝272の深さが十分に深いために、キャップフィルム10は、成形時において、横線状突起成形溝272の底に到達しない。
成形ロール270の横線状突起成形溝272の底部は、溝吸引口272aを備える。
溝吸引口272aは、吸引キャビティ271の吸引口271aと同様に、外部空気を吸引する。つまり、溝吸引口272aは、横線状突起成形溝272内部の空気を吸引する。
【0045】
このように、本実施形態では、横線状突起成形溝272は、キャップフィルム10の抗張力(引っ張り強さ)に対応して、キャップフィルム10を成形可能な程度の十分な幅Wを有する。すなわち、横線状突起成形溝272の幅が本実施形態よりも小さい形態であると、絞り深さが浅くなってしまうので、横線状突起12を十分な深さに成形できない可能性がある。
これに加えて、横線状突起成形溝272は、溝吸引口272aを備えるので、溶融状態のキャップフィルム10を吸引することにより、横線状突起12を十分な深さに成形できる。
【0046】
図6(B)に示すように、キャップフィルム10が成形ロール270に載置される直前の状態では、横線状突起成形溝272の直上のキャップフィルム10は、溝吸引口272aに吸引作用によって、横線状突起12に対応した突起(最終的に形成される状態よりも低い状態)が形成される。
このため、横線状突起成形溝272の直上の空間における横線状突起成形溝272の開口縁部とキャップフィルム10との隙間Sは、その周囲の空間における隙間よりも小さい。そのため、溝吸引口272aに吸引作用による空気の流速(矢印F参照)は、ベンチェリ効果によって、横線状突起成形溝272の直上付近の空間の方が、その周囲の空間よりも大きくなる。
【0047】
上記作用によって、横線状突起成形溝272の表面272bは、十分に冷却される。また、横線状突起12は、空気の流れ及び横線状突起成形溝272の表面272bによって十分に冷却される。そのため、横線状突起12及びバックフィルム20の間が融着されにくい状態となる。これにより、本実施形態の製造装置は、易分離線部を、より確実に中空の状態に形成できる。
【0048】
なお、上記各種の製造条件(横線状突起成形溝272の幅、帯電条件等)は、フィルム10,20の厚さ、幅等に応じて、適宜設定することができる。
また、キャップフィルム10を横線状突起成形溝272に吸引する構成は、溝吸引口272aに限定されず、負圧の作用によってキャップフィルム10を横線状突起成形溝272に吸引できる構成であればよい。
【0049】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の気泡シート301を説明する図である。
図7(A)は、気泡シート301を気泡室35側(表側Z2)から見た図である。
図7(B)は、図7(A)のB-B断面を拡大した図である。
図7(C)は、図7(A)のC-C断面を拡大した図である。
図8は、第3実施形態の横方向Xに沿って切断した気泡シート301の斜視図を拡大したである。
図7図8に示すように、本実施形態の気泡シート301は、上記実施形態の気泡シート1に対して、気泡シート301を配向方法(MD方向)に沿って引き裂き易くし、かつ、引き裂き方向をガイドする屈曲加工線部346を追加したものである。易分離線部345、横線状突起312等の構成は、上記実施形態と同様である。
なお、本実施形態では、横線状突起312等によって形成される易分離線部345は、2列ごとに隣接する中空突起11の列間に設けられている。
【0050】
屈曲加工線部346は、キャップフィルム10を屈曲加工してなる縦線状突起313を含む。
縦線状突起313は、配向方向である縦方向Yに平行に設けられている。
縦線状突起313は、向き及び断面形状が横線状突起312とは異なるものの、表側Z2に膨出していること等の構成は横線状突起312と同様である。
なお、縦線状突起313は、横線状突起312とは異なり、バックフィルム320に対して融着していてもよい。このため、縦線状突起313は、バックフィルム320との間に隙間を有さなくてもよい。
縦線状突起313は、一定又は不定の列数ごとに隣接する中空突起11の列間に設けられている。本実施形態では、縦線状突起313は、4列ごとに隣接する中空突起11の列間に設けられている。
このため、作業者は、シート分断作業時において、横線状突起312と同様に、縦線状突起313を、気泡シート301の横方向Xの長さを把握するために利用できる。
【0051】
図7(B)、図7(C)、図8に示すように、縦線状突起313の断面形状は、V字状であるのに対して、横線状突起312の断面形状は、U字状である。
横線状突起312の突出高さh312(キャップフィルム310の裏面から横線状突起312の頂部までの長さ)は、縦線状突起313の突出高さh313(キャップフィルム310の裏面から縦線状突起313の頂部までの長さ)よりも十分に高い。このため、成形上の理由によって、横線状突起312の頂部の厚さt312は、縦線状突起313の厚さt313よりも薄くなっている。なお、横線状突起312及び縦線状突起313が交差する交差部分312a(図8参照)は、肉厚が最も薄くなる。
【0052】
また、頂部において、縦線状突起313の肉厚部分と、横線状突起312の肉厚部分とは交差していない。
つまり、図8に示すように、縦線状突起313は、横線状突起312の側面に連結しており、横線状突起312の頂部の肉厚部分には連結していない。
【0053】
屈曲加工線部346は、気泡シート301のうち、キャップフィルム310の縦線状突起313に対応した領域に、線状に形成される。つまり、屈曲加工線部346は、キャップフィルム310を屈曲加工してなる縦線状突起313を含み、横方向Xに配列された気泡室35間の領域に、線状に形成される。また、屈曲加工線部346は、縦方向Y(配向方向)に平行に設けられている。
図7(C)、図8に示すように、屈曲加工線部346は、キャップフィルム310の縦線状突起313、及びこの縦線状突起313の裏面に密着するバックフィルム320等によって、構成される。
【0054】
ここで、キャップフィルム310単体(つまり、キャップフィルム310及びバックフィルム320が積層されていない状態のキャップフィルム310)の線状突起の切断のし易さは、縦方向Yが配向方向であるものの、肉厚等の要因によって、横線状突起312の方が、縦線状突起313よりも切断されやすい。
一方、バックフィルム320は、例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)を50%の配合にすること等によって、縦方向Yへの配向がより高くなるように、設計されている。このため、キャップフィルム310及びバックフィルム320が積層された気泡シート301の状態において、屈曲加工線部346は、易分離線部345と同様に、十分に切断されやすい作用を奏する。
【0055】
図9は、第3実施形態のキャップフィルム310が易分離線部345で切断される状態、屈曲加工線部346で切断される状態を模式的に示す図である。
図9(A)、図9(B)に示すように、キャップフィルム310は、第1実施形態と同様な手法によって(図2(A)参照)、工具等を用いることなく、易分離線部345、屈曲加工線部346から分断することができる。
図9(A)に示すように、前述したように、易分離線部345は、横線状突起312の頂部が薄いこと等の理由によって、切断時の横方向Xへの直進性がよく、また、交差部分312aを通過する場合に、屈曲加工線部346側に逸れることが抑制される。
図9(B)に示すように、屈曲加工線部346も同様に、キャップフィルム310の配向、及びバックフィルム320の上記配向等によって、切断時の縦方向Yへの直進性がよく、また、交差部分312aを通過する場合に、易分離線部345側に逸れることが抑制される。
【0056】
このように、本実施形態の気泡シート301は、縦方向Y、横方向Xの両方向において、任意の方向に切断しやすい。
【0057】
また、本実施形態にあっては、気泡シート301がより切断しやすくなるように、キャップフィルム310が、高密度ポリエチレン15~40重量%、低密度ポリエチレン20~50重量%、直鎖状低密度ポリエチレン5~40重量%を含み、バックフィルム320が、高密度ポリエチレン25~50重量%、低密度ポリエチレン10~40重量%、直鎖状低密度ポリエチレン5~40重量%、環状オレフィン・コポリマー4~10重量%を含むように、それぞれの樹脂材料を調製するのが好ましい。
特に、環状オレフィン・コポリマーを添加することで、他の樹脂材料中に環状オレフィン・コポリマーが微細な島状に点在し、気泡シート301が引き裂かれる際には、島状の環状オレフィン・コポリマーが優先的に破壊され、その破壊される作用力が隣接する同様の島状の環状オレフィン・コポリマーへ次々と伝播しながら破壊されることから、易カット性を発揮させることができる。本実施形態では、易分離線部345や屈曲加工線部346を備えることと相俟って、少量の環状オレフィン・コポリマーの添加により、易カット性のさらなる向上を図ることができるため、製造コストの面からも有利である。
【0058】
(製造装置)
図10は、第3実施形態の成形ロール370の外周部分を周方向に展開した構成を説明する図である。
図10(A)は、成形ロール370の外周部分を外周面の法線方向から見た図である。
図10(B)は、図10(A)のB-B断面を拡大した図である。
図10(C)は、図10(A)のC-C断面を拡大した図である。
気泡シート301は、第1又は第2実施形態と同様な製造装置(図3図6等参照)を用いて製造することができる。
すなわち、図10に示すように、本実施形態の成形ロール370は、第1又は第2実施形態と同様に、吸引キャビティ371、横線状突起成形溝372等を備える。
また、成形ロール370は、これらの構成に加えて、キャップフィルム310に屈曲加工を施す屈曲加工線部加工溝としてのV溝373を備える。
V溝373は、溶融状態のキャップフィルム310に、縦線状突起313を成形するための溝である。V溝373は、縦線状突起313に対応した位置に設けられている。
すなわち、V溝373は、吸引キャビティ371以外の領域であってキャップフィルム310及びバックフィルム320間の融着領域40に対応する領域に、線状に設けられた溝であり、キャップフィルム310に縦線状突起313を成形する。V溝373は、流れ方向B(成形ロール370の回転方向)に、平行となるように、成形ロール370の周方向に沿って設けられている。
【0059】
V溝373の深さは、十分に低く、断面形状がV字状である。
このため、キャップフィルム成形工程(図3のキャップフィルム成形工程♯2参照)において、溶融状態であるキャップフィルム310は、成形ロール370のV溝373に倣うようにして変形する。これにより、縦線状突起313が、キャップフィルム310に形成される。
【0060】
また、シート積層工程(図3のシート積層工程♯4参照)において、帯電されたバックフィルム320は、キャップフィルム310に対して、静電気の作用によって密着する。両フィルム310,320は、融着可能な程度に溶融状態を維持しており、密着することにより融着する。このように、バックフィルム320が帯電することにより、キャップフィルム310及びバックフィルム320が密着し融着する。
このとき、キャップフィルム310の縦線状突起313の突出高さh313(図7参照)が十分に低いため、静電気の作用によって、縦線状突起313の裏面(つまりキャップフィルム310の裏面)と、バックフィルム320の表面とが密着し溶着する。これにより、屈曲加工線部346が形成される。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、後述する変形形態等のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。また、実施形態に記載した効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載したものに限定されない。なお、前述した実施形態に含まれる各構成及び後述する変形形態に含まれる各構成は、これを単独で用いること、又はこれらを適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0062】
(変形形態)
(1)前述した実施形態において、線状突起は、直線状である例を示したが、これに限定されない。線状突起の形状は、例えば、用途等に応じて適宜に設定でき、曲線等でもよい。また、線状突起は、連続した形態に限定されず、例えば、断続的に設けられた点線状でもよい。
【0063】
(2)前述した実施形態において、キャップフィルムの縦線状突起と、バックフィルム320の表面と溶着している例を示したが、これに限定されない。両者の間には、縦線状突起と同様に、隙間を有していてもよい。この場合には、屈曲加工線部の全体に渡って隙間を有していてもよく、又は一部のみに隙間を有していてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,301 気泡シート
1a ロール体
10,310 キャップフィルム
11 中空突起
12,312 横線状突起
20 バックフィルム
30 気泡領域
35 気泡室
40 融着領域
45,345 易分離線部
50 製造装置
51,52 フラットダイ
60 静電付与部
61 放電針
62 対電極
70,270,370 成形ロール
71,271,371 吸引キャビティ
71a,271a 吸引口
72,272,372 横線状突起成形溝
81 剥離ロール
82 巻き取りロール
272a 溝吸引口
313 縦線状突起
346 屈曲加工線部
373 V溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10