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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/06 20120101AFI20220406BHJP
   G06Q 20/06 20120101ALI20220406BHJP
【FI】
G06Q40/06
G06Q20/06 300
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021551803
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2021030172
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2020139538
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516047898
【氏名又は名称】株式会社Artrigger
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】堺谷 円香
(72)【発明者】
【氏名】茂木 健一
【審査官】貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-13405(JP,A)
【文献】特開2019-191744(JP,A)
【文献】特開2002-99733(JP,A)
【文献】特開2002-288431(JP,A)
【文献】特開2003-99598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0221029(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントラクト機能が実装されているブロックチェーンにおいて、当該ブロックチェーンに実装された資金コントラクトの機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
前記資金コントラクトの作成者が定めた出資終了日、出資者受益条件、収益算定基準期間、及び前記出資を解散するための解散条件を含む出資条件を取得する機能と、
出資者が出資したトークンの総計である総出資トークンを、前記出資を管理する出資管理サーバから取得して前記ブロックチェーンに登録する機能と、
前記出資終了日を経過していることを条件として、総出資トークンを前記作成者に関連付けられた作成者端末に送信する機能と、
前記作成者が他者に設定したコンテンツの利用権に基づいて得られた収益である収益トークンを取得する機能と、
前記収益トークンをデポジットとして前記ブロックチェーンに登録する機能と、
前記収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、前記収益算定基準期間の経過後に、前記総出資トークンに前記出資者受益条件に含まれる割合を乗じたトークン数である作成者引き出し可能トークン数を上限として、前記作成者端末に送信する機能と、
前記出資者から前記出資を解散するか否かの投票を受け付ける機能と、
受け付けた前記投票が前記解散条件を満たす場合、前記ブロックチェーンに登録されている前記デポジットを前記出資者それぞれに設定された出資率に応じて前記出資者に配分する機能と、
を前記コンピュータに実現させるプログラム。
【請求項2】
前記コンピュータに、
前記収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンから前記作成者引き出し可能トークン数を減じたトークンである配分可能トークンが0より大きい場合、当該配分可能トークンを前記出資者それぞれに設定された出資率に応じて配分する機能と、
配分したトークンを前記出資者それぞれに関連付けられた端末に送信する機能と、
をさらに実現させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記出資条件は、出資の上限額を定める出資上限トークン数をさらに含んでおり、
前記プログラムは、前記コンピュータに、
前記出資終了日を経過するか、又は前記総出資トークンが前記出資上限トークン数に到達するかの少なくとも一方を満たす場合、新たな出資の受付を禁止する機能をさらに実現させる、
請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記収益トークンを取得する機能は、前記コンテンツの利用権に基づいて得られた収益を格納する他のブロックチェーンから、前記収益トークンを取得する、
請求項1からのいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
コントラクト機能が実装されているブロックチェーンに実装された資金コントラクトの機能を実行するコンピュータのプロセッサが、
前記資金コントラクトの作成者が定めた出資終了日、出資者受益条件、収益算定基準期間、及び前記出資を解散するための解散条件を含む出資条件を取得するステップと、
出資者が出資したトークンの総計である総出資トークンを、前記出資を管理する出資管理サーバから取得して前記ブロックチェーンに登録するステップと、
前記出資終了日を経過していることを条件として、総出資トークンを前記作成者に関連付けられた作成者端末に送信するステップと、
前記作成者が他者に設定したコンテンツの利用権に基づいて得られた収益である収益トークンを取得するステップと、
前記収益トークンをデポジットとして前記ブロックチェーンに登録するステップと、
前記収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、前記収益算定基準期間の経過後に、前記総出資トークンに前記出資者受益条件に含まれる割合を乗じたトークン数である作成者引き出し可能トークン数を上限として、前記作成者端末に送信するステップと、
前記出資者から前記出資を解散するか否かの投票を受け付けるステップと、
受け付けた前記投票が前記解散条件を満たす場合、前記ブロックチェーンに登録されている前記デポジットを前記出資者それぞれに設定された出資率に応じて前記出資者に配分するステップと、
を実行する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプログラム及び情報処理方法に関し、特にブロックチェーンを利用した出資及び利益配分を管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロックチェーン技術を用いた経済活動が急速に進展してきている。ブロックチェーン技術は、参加者全ての取引の履歴を記録した巨大な元帳を、参加者全員で共有する分散データベース技術の一種であると捉えることもできる。このため、ブロックチェーン技術は通貨以外の様々な取引に応用することができ、例えば、複数者間で契約書を交わす際の証跡としてブロックチェーンを用いることも提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
例えば、非特許文献1には、ブロックチェーン技術を用いて株式や債券、特許やサービス利用権等の権利等の有価証券をデジタル化し、資金調達に用いるSTO(Security Token Offering)が示されている。STOはブロックチェーン技術で実現されるトークンを用いた新たな資金調達の手法である。起業家等は、STOによって出資者から資金を調達することができる。STOは有価証券をデジタル化したものであるため、出資者は配当を受けることができるし、STOをオンラインの交換所等で売却することで現金化することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-91149号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】STO(Security Token Offering)とは・意味、[online]、金融・投資メディアHEDGE GUIDE、[令和2年4月15日検索]、インターネット <URL:https://hedge.guide/cryptocurrency/glossary/sto>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
株価やその配当金等は、出資を受けた起業家等が手がける事業の業績に依存する。本願の発明者は、スマートコントラクト機能を備えるブロックチェーン技術を利用することによって、ブロックチェーンで実現されるトークンを用いることにより、出資から収益配分までの透明性を高め得る可能性について認識した。
【0007】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、トークンを用いた経済活動において、出資から収益配分までの透明性を高める技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、コントラクト機能が実装されているブロックチェーンにおいて、当該ブロックチェーンに実装された資金コントラクトの機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。このプログラムは、前記資金コントラクトの作成者が定めた出資終了日、出資者受益条件、及び収益算定基準期間を含む出資条件を取得する機能と、出資者が出資したトークンの総計である総出資トークンを、前記出資を管理する出資管理サーバから取得して前記ブロックチェーンに登録する機能と、前記出資終了日を経過していることを条件として、総出資トークンを前記作成者に関連付けられた作成者端末に送信する機能と、前記作成者が他者に設定したコンテンツの利用権に基づいて得られた収益である収益トークンを取得する機能と、前記収益トークンをデポジットとして前記ブロックチェーンに登録する機能と、前記収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、前記収益算定基準期間の経過後に、前記総出資トークンに前記出資者受益条件に含まれる割合を乗じたトークン数である作成者引き出し可能トークン数を上限として、前記作成者端末に送信する機能と、を前記コンピュータに実現させる。
【0009】
前記プログラムは、前記コンピュータに、前記収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンから前記作成者引き出し可能トークン数を減じたトークンである配分可能トークンが0より大きい場合、当該配分可能トークンを前記出資者それぞれに設定された出資率に応じて配分する機能と、配分したトークンを前記出資者それぞれに関連付けられた端末に送信する機能と、をさらに実現させてもよい。
【0010】
前記出資条件は、出資の上限額を定める出資上限トークン数をさらに含んでいてもよく、前記プログラムは、前記コンピュータに、前記出資終了日を経過するか、又は前記総出資トークンが前記出資上限トークン数に到達するかの少なくとも一方を満たす場合、新たな出資の受付を禁止する機能をさらに実現させてもよい。
【0011】
前記出資条件は、前記出資を解散するための解散条件をさらに含んでいてもよく、前記プログラムは、前記コンピュータに、前記出資者から前記出資を解散するか否かの投票を受け付ける機能と、受け付けた前記投票が前記解散条件を満たす場合、前記ブロックチェーンに登録されている前記デポジットを前記出資者それぞれに設定された出資率に応じて前記出資者に配分する機能と、をさらに実現させてもよい。
【0012】
前記収益トークンを取得する機能は、前記コンテンツの利用権に基づいて得られた収益を格納する他のブロックチェーンから、前記収益トークンを取得してもよい。
【0013】
このプログラムを提供するために、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供されてもよく、また、このプログラムが通信回線で伝送されてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様は、コントラクト機能が実装されているブロックチェーンに実装された資金コントラクトの機能を実行するコンピュータのプロセッサが実行する情報処理方法である。この方法において、前記プロセッサが、前記資金コントラクトの作成者が定めた出資終了日、出資者受益条件、及び収益算定基準期間を含む出資条件を取得するステップと、出資者が出資したトークンの総計である総出資トークンを、前記出資を管理する出資管理サーバから取得して前記ブロックチェーンに登録するステップと、前記出資終了日を経過していることを条件として、総出資トークンを前記作成者に関連付けられた作成者端末に送信するステップと、前記作成者が他者に設定したコンテンツの利用権に基づいて得られた収益である収益トークンを取得するステップと、前記収益トークンをデポジットとして前記ブロックチェーンに登録するステップと、前記収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、前記収益算定基準期間の経過後に、前記総出資トークンに前記出資者受益条件に含まれる割合を乗じたトークン数である作成者引き出し可能トークン数を上限として、前記作成者端末に送信するステップと、を実行する。
【0015】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トークンを用いた経済活動において、出資から収益配分までの透明性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態の概要を説明するための模式図である。
図2】実施の形態に係る情報処理装置の機能構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態に係る出資管理部の機能構成を模式的に示す図である。
図4】実施の形態に係るブロックチェーンの構成を模式的に示す図である。
図5】実施の形態に係る収益管理部の機能構成を模式的に示す図である。
図6】実施の形態に係る情報処理装置が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施の形態の概要>
図1は、実施の形態の概要を説明するための模式図である。実施の形態に係るブロックチェーンBはプライベートなブロックチェーンであり、作成者Aが使用する作成者端末Ta、複数の出資者Iがそれぞれ使用する複数の出資者端末Ti、及び出資を管理する出資管理サーバSが互いに通信可能な態様で接続することによって構成されている。本実施の形態において、作成者Aは、例えばキャラクター等のコンテンツの作成者、又は作成者Aからライセンスを受けた製品の製造等を行うライセンシーであり、コンテンツを用いた事業をするために出資者Iから出資を募る。以下、本明細書においては、作成者Aからライセンスを受けた製品の製造等を行うライセンシーも含めて、便宜上「作成者A」と記載する。
【0019】
ブロックチェーンBは、コントラクト機能を実装するブロックチェーンであり、例えばイーサリアム(Ethereum)で実現されている。コントラクトは、取引時に実行される処理であり、所定のプログラミング言語を用いて記述されたコントラクトプログラムPによって実装される。コントラクトプログラムPは、ブロックチェーンBに参加している各出資者端末Ti及び作成者端末Taにおいて実行されることにより、出資者Iによる出資、作成者Aへの出資金の送金、作成者Aが取得した収益の管理、及び出資者I及び作成者Aへの収益の配分を管理する機能を実現する。
【0020】
以下、図1を参照して実施の形態に係る処理の概要を(1)から(8)で説明するが、その説明は図1中の(1)から(8)と対応する。
【0021】
(1)作成者Aは、出資に関する条件を定める出資条件を作成しブロックチェーンBに登録する。出資条件は、出資開始日、出資終了日、出資者受益条件、収益算定基準期間、出資上限金額、出資か現金額、出資者受益条件、及び出資解散条件を含む。なお、ひとたび作成者Aが出資条件をブロックチェーンBに登録すると、作成者Aを含めて何人も出資条件を変更することはできない。仮に何らかの方法によってあるブロックチェーンBに格納されている出資条件が改ざんされたとしても、ブロックチェーンBが備えるコンセンサスアルゴリズムによってその改ざんは棄却されるからである。
【0022】
作成者AがブロックチェーンBに出資条件を登録すると、ブロックチェーンBに参加している全ての出資者端末Tiにおいて出資条件を確認することができる。出資条件に含まれる各項目の詳細は後述する。
【0023】
(2)出資者Iは、図示しない交換所を介してトークンを購入する。ここで「トークン」とは、ブロックチェーンBを利用した仮想通貨である。交換所はインターネットに接続したサーバ(不図示)で実現されている。出資者Iは、交換所を利用することにより、オンラインでトークンを貨幣で購入したり、トークンを貨幣に換金したりすることができる。
【0024】
(3)出資管理サーバSは、出資者Iの作成者Aに対する出資を管理するサーバである。作成者Aが登録した出資条件を承諾する出資者Iは、作成者Aに対してトークンを用いて出資する。
【0025】
(4)作成者端末Taは、出資条件に含まれる出資終了日が経過した後に、総出資トークンを取得する。
(5)作成者Aは、出資を受けたときにはまだコンテンツCを捜索していない場合には、総出資トークンを現金化し、それを元手にコンテンツCを創作する。
(6)作成者Aは、創作したコンテンツの利用権を第三者Fにライセンスし、その使用料を収益として取得する。図1に示す例では、作成者Aは創作したコンテンツCであるペンギンのキャラクターの利用権を第三者Fにライセンスして使用料を得ている。ライセンシーである第三者Fは、コンテンツCを付したマグカップやTシャツを製造販売したり、コンテンツCを主人公とする動画を製造販売したりしている。
【0026】
(7)作成者Aが第三者Fから取得した使用料は収益トークンとしてブロックチェーンBに登録される。収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンは、作成者引き出し可能トークン数を上限として作成者Aに配分される。
【0027】
(8)また、収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンから作成者引き出し可能トークン数を減じたトークン数が0より大きい場合、出資者それぞれに設定された出資率に応じて残りのトークンが各出資者に配分される。なお、出資者がトークンの代わりに現金での配分を望む場合、出資管理サーバSは、その出資者に割り当てたトークンをブロックチェーンBから消去するとともに、消去したトークンに相当する現金を出資者の銀行口座に振り込む。
【0028】
このように、実施の形態に係るブロックチェーンBは、スマートコントラクト機能を利用することによって、出資者Iによる出資から収益配分までの一連の流れを管理することができる。これにより、ブロックチェーンBは、トークンを用いた経済活動において、出資から収益配分までの透明性を高めることができる。加えて、ブロックチェーンBは、トークンを用いた経済活動において、出資から収益配分までの非改ざん性及び堅牢性も高めることができる。出資者は、出資先の経済活動の透明性が高まるため、出資すべきか否かの決断がしやすくなる。出資を受ける作成者Aに取っては、出資者から出資を受けやすくなり、事業のための資金を集めやすくなる点で効果がある。
【0029】
<実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成>
図2は、実施の形態に係る情報処理装置1の機能構成を模式的に示す図である。情報処理装置1は、コントラクト機能が実装されているブロックチェーンBにおいて、ブロックチェーンBに実装された資金コントラクトの機能を実現するためのコンピュータであり、具体的にはブロックチェーンBを管理しているノード(Node)である。情報処理装置1は、記憶部2と制御部3とを備える。
【0030】
図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0031】
記憶部2は、情報処理装置1を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や情報処理装置1の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やブロックチェーンBに実装されたコントラクト機能を実現するためのコントラクトプログラムP、当該コントラクトプログラムPの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0032】
制御部3は、情報処理装置1のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部2に記憶されたプログラムを実行することによって出資管理部30、収益管理部31、及び配分部32として機能する。
【0033】
出資管理部30は、出資者Iが作成者Aに対して行う出資を管理する。収益管理部31は、コンテンツの利用権に基づいて第三者Fから得た収益を管理する。配分部32は、作成者Aが得た収益の配分や、出資解散時におけるデポジットの配分を管理する。以下、出資管理部30、収益管理部31、及び配分部32について、図3図4、及び図5を参照しながら説明する。
【0034】
図3は、実施の形態に係る出資管理部30の機能構成を模式的に示す図である。出資管理部30は、条件取得部300、出資登録部301、出資送信部302、及び出資禁止部303を備える。
【0035】
条件取得部300は、資金コントラクトの作成者である作成者Aが定めた出資終了日、出資者受益条件、及び収益算定基準期間を含む出資条件を取得する。作成者Aが定めた出資条件はブロックチェーンBに登録されている。条件取得部300は、ブロックチェーンBを参照して出資条件を取得する。出資登録部301は、出資者が出資したトークンの総計である総出資トークンを、出資を管理する出資管理サーバSから取得してブロックチェーンBに登録する。
【0036】
図4は、実施の形態に係るブロックチェーンBの構成を模式的に示す図である。図4に示すように、ブロックチェーンBは、複数のブロックを連結した情報である。複数のブロックのそれぞれは、直前のブロックを示す情報のハッシュ値、ナンス値、総出資トークン、デポジット、出資者・出資金一覧、及び出資条件が含まれている。ナンス値は、ブロックのハッシュ値が特定の条件を満たされるようにするために用いられる情報である。
【0037】
出資条件は、出資開始日、出資終了日、収益算定基準期間、出資者受益条件、出資上限金額、出資下限金額、及び解散条件を含んでいる。
【0038】
出資開始日及び出資終了日は、出資者Iが出資可能な期間を特定している。出資者Iは、出資開始日の前には作成者Aに出資することができない。同様に、出資者Iは、出資終了日の経過後も、作成者Aに出資することができない。
【0039】
出資上限金額及び出資下限金額は、出資者Iが出資可能な金額の総額を特定している。出資終了日が経過しても総出資トークンが出資か現金額に満たない場合は出資は成立せず、各出資者Iに出資が返還される。また、出資終了日までに総出資トークンが出資上限金額に到達すると、出資終了日が経過していなくても出資者Iは新たな出資をすることができない。
【0040】
収益算定基準期間は、作成者Aがライセンスの利用権に基づいて得られた収益を、各出資者I及び作成者Aに配分するタイミングを定める。収益算定基準期間の具体例は、例えば1年間、6ヶ月間、3ヶ月等である。出資終了日から収益算定基準期間が経過する度に、その期間の間に得られた収益は各出資者I及び作成者Aに配分される。
【0041】
出資者受益条件は、収益算定基準期間の間に作成者Aが得た収益を出資者Iに配分するか否かを決定するために参照される条件である。出資者受益条件の具体例は所定の割合である。収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンが、総出資トークンに出資者受益条件が定める割合を乗じたトークン数を上回る場合、上回ったトークンが出資者Iに配分される。
【0042】
解散条件は、作成者Aが募集した出資を解散するか否かを決定するために参照される条件である。解散条件の具体例は所定の割合である。出資者Iの合計人数に解散条件が定める割合を乗じた数を上回る出資者Iが解散に賛成する場合、出資は解散される。出資が解散されると、その時点でデポジットされている収益トークンが各出資者Iの出資比率に応じて配分される。
【0043】
出資を解散するか否かは各出資者Iによる投票によって決定されるが、各出資者Iの投票の重みは、各出資者Iの出資率に応じて変更されてもよい。具体的には、出資率の大きな出資者Iほど、投票の重みを大きくしてもよい。また、投票の重みには上限が設けられていてもよい。
【0044】
図3の説明に戻る。出資送信部302は、出資終了日を経過していることを条件として、総出資トークンを作成者Aに関連付けられた作成者端末Taに送信する。作成者Aは、作成者端末Taに送信されたトークンを換金して得た資金を基にコンテンツCを作成する。作成者Aは、作成したコンテンツCの利用権を第三者にライセンスし、ライセンスの使用料をコンテンツCの利用権に基づいて得られた収益として取得する。
【0045】
ライセンスの使用料(コンテンツCの利用権に基づいて得られた収益)とは、例えば、第三者FがコンテンツCを付した商品の販売額に応じて定められ、第三者Fが作成者Aに対して支払う金銭である。また、ライセンスの使用料は、第三者FがコンテンツCを付した商品の販売額ではなく、販売数に応じて定められてもよい。いずれにしても、コンテンツCの利用権に基づいて得られた作成者Aの収益は、ライセンスの使用料を管理するライセンス収益管理サーバ(不図示)によって管理される。なお、ライセンス収益管理サーバは、実施の形態に係る資金コントラクト機能を有するブロックチェーンBと同じブロックチェーンBを用いて作成者Aの収益を管理している。
【0046】
図5は、実施の形態に係る収益管理部31の機能構成を模式的に示す図である。収益管理部31は、収益取得部310、収益登録部311、収益送信部312、及び解散受付部313を備える。
【0047】
収益取得部310は、作成者Aが他者(第三者F)に設定したコンテンツCの利用権に基づいて得られた収益である収益トークンを取得する。具体的には、収益取得部310は、ライセンス収益管理サーバに問い合わせることによって、作成者AがコンテンツCの利用権に基づいて得られた収益をトークンの形で取得する。
【0048】
上述したように、ライセンス収益管理サーバは、実施の形態に係る資金コントラクト機能を有するブロックチェーンBとは異なる他のブロックチェーンを用いて作成者Aの収益を管理している。このため、収益取得部310は、コンテンツの利用権に基づいて得られた収益を格納する他のブロックチェーンから、収益トークンを取得する。
【0049】
収益登録部311は、収益取得部310が取得した収益トークンをデポジットとしてブロックチェーンBに登録する。収益登録部311がブロックチェーンBにデポジットとして登録したトークンは、収益算定基準期間が定める特定の期間を除いて、作成者A及び出資者Iを含むいかなる者も引き出すことはできない。収益送信部312は、収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、収益算定基準期間の経過後に作成者端末Taに送信する。より具体的には、収益送信部312は、総出資トークンに出資者受益条件に含まれる割合を乗じたトークン数である作成者引き出し可能トークン数を上限として、デポジットされた収益トークンの全部又は一部を作成者端末Taに送信する。
【0050】
このように、作成者Aは、出資者受益条件が定める範囲で収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンを資金として使用できる。これにより、作成者Aは、コンテンツCの利用権に基づく収益を増加させるために、コンテンツCの作成に積極的に投資することができる。
【0051】
図2の説明に戻る。配分部32は、収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンが作成者引き出し可能トークンより多い場合、すなわち、収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンから作成者引き出し可能トークン数を減じたトークンである配分可能トークンが0より大きい場合、その配分可能トークンを出資者Iそれぞれに設定された出資率に応じて配分する。配分部32は、出資者Iそれぞれに配分したトークンを出資者Iそれぞれに関連付けられた出資者端末Tiに送信する。
【0052】
これにより、各出資者Iは、作成者AがコンテンツCの利用権に基づいて取得した収益が作成者引き出し可能トークンを上回ることを条件として、作成者Aが取得した収益の一部を出資比率に応じて取得することができる。
【0053】
上述したように、作成者Aが定める出資条件には、出資可能期間の終わりを示す出資終了日と出資の上限額を定める出資上限トークン数とが含まれている。そのため、出資禁止部303は、出資終了日を経過するか、又は総出資トークンが出資上限トークン数に到達するかの少なくとも一方を満たす場合、新たな出資の受付を禁止する。これにより、出資禁止部303は、作成者Aが定める出資条件の実効性を担保することができる。
【0054】
また、作成者Aが定める出資条件には、出資を解散するための解散条件が含まれる。そのため、解散受付部313は、出資者から出資を解散するか否かの投票を受け付ける。配分部32は、解散受付部313が受け付けた投票が解散条件を満たす場合、ブロックチェーンBに登録されているデポジットを出資者Iそれぞれに設定された出資率に応じて出資者Iに配分し、各出資者Iに対応する出資者端末Tiに送信する。これにより、配分部32は、出資解散後の精算処理を自動化することができる。
【0055】
<情報処理装置1が実行する情報処理方法の処理フロー>
図6は、実施の形態に係る情報処理装置1が実行する情報処理の流れを説明するためのフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、出資管理処理、収益管理処理、及び解散処理に大別される。
【0056】
本フローチャートにおける処理は、コントラクト機能が実装されているブロックチェーンBに実装された資金コントラクトの機能を実行する各情報処理装置1において実行される。したがって、各情報処理装置1で実行される本フローチャートにおける処理は、それぞれ情報処理装置1が起動したときに開始する。
【0057】
条件取得部300は、資金コントラクトの作成者である作成者Aが定めた出資終了日、出資者受益条件、及び収益算定基準期間を含む出資条件をブロックチェーンBから読み出して取得する(S2)。出資登録部301は、作成者Aが定めた出資条件を承認する出資者Iから出資を受け付ける(S4)。
【0058】
出資条件に定められた出資終了日に至るまでの間(S6のNo)、出資登録部301は出資の受付を継続する。出資条件に定められた出資終了日を経過すると(S6のYes)、出資送信部302は、出資者Iが出資したトークンの総計である総出資トークンを作成者Aに関連付けられた作成者端末Taに送信する(S8)。以上、ステップS2からステップS8までの4つのステップが、出資管理処理を構成する。
【0059】
収益取得部310は、コンテンツの利用権に基づいて得られた収益を格納する他のブロックチェーンから、収益トークンを取得する(S10)。解散受付部313が解散条件を満たす投票を出資者Iから受け付けておらず(S12のNo)、かつ収益算定基準期間が終了すると(ステップS14のYes)、収益送信部312は、収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、作成者引き出し可能トークン数を上限として、作成者端末Taに送信する(S16)。また、配分部32は、収益算定基準期間の間にデポジットされたトークンから作成者引き出し可能トークン数を減じたトークンである配分可能トークンを出資者Iそれぞれに設定された出資率に応じて配分し、出資者端末Tiに送信する(S18)。以上、ステップS10からステップS18までの5つのステップが、収益管理処理を構成する。
【0060】
解散受付部313が解散条件を満たす投票を出資者Iから受け付けておらず(S12のNo)、かつ収益算定基準期間が経過するまでの間(ステップS14のNo)、ステップS10に戻って収益取得部310は収益トークンの取得を継続する。また、配分部32が出資者Iに収益を配分すると新たな収益算定基準期間が始まり、収益取得部310は収益トークンの受信を開始する。
【0061】
解散受付部313が解散条件を満たす投票を出資者Iから受け付けると(S12のYes)、配分部32はブロックチェーンBに登録されているデポジットを出資者Iそれぞれに設定された出資率に応じて配分し出資者端末Tiに送信することで解散処理を実行する(S20)。配分部32が解散処理を実行すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0062】
<実施の形態に係る情報処理装置1が奏する効果>
以上説明したように、実施の形態に係るブロックチェーンBを実行することにより、情報処理装置1は、トークンを用いた経済活動において、出資から収益配分までの透明性を高めることができる。
【0063】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果をあわせ持つ。
【符号の説明】
【0064】
1・・・情報処理装置
2・・・記憶部
3・・・制御部
30・・・出資管理部
300・・・条件取得部
301・・・出資登録部
302・・・出資送信部
303・・・出資禁止部
31・・・収益管理部
310・・・収益取得部
311・・・収益登録部
312・・・収益送信部
313・・・解散受付部
32・・・配分部
B・・・ブロックチェーン
P・・・コントラクトプログラム
S・・・出資管理サーバ
Ta・・・作成者端末
Ti・・・出資者端末
【要約】
資金コントラクトの機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、資金コントラクトの作成者が定めた出資条件を取得する機能と、出資者が出資したトークンの総計である総出資トークンをブロックチェーンに登録する機能と、出資終了日を経過していることを条件として、総出資トークンを作成者端末に送信する機能と、作成者が他者に設定したコンテンツの利用権に基づいて得られた収益である収益トークンをデポジットとしてブロックチェーンに登録する機能と、収益算定基準期間の間にデポジットされた収益トークンの全部又は一部を、収益算定基準期間の経過後に、総出資トークンに出資者受益条件に含まれる割合を乗じたトークン数である作成者引き出し可能トークン数を上限として、作成者端末に送信する機能と、をコンピュータに実現させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6