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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】増毛作業支援冶具及び増毛方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
A41G3/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019072314
(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公開番号】P2020169422
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2019070982
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519120352
【氏名又は名称】合同会社VIRISE
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】北村 直子
【審査官】柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-002207(JP,A)
【文献】実開平06-076327(JP,U)
【文献】特開2013-124420(JP,A)
【文献】登録実用新案第3208986(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0276807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、
ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、
前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、
前記係合部材は、前記周囲地毛寝かせ部材の上部から上方へ向かって突出するとともに、
前記ターゲット地毛の先端側部分を支持する支持部を有し、
前記支持部は、前記係合部材の上端であり、
前記係合部材と前記周囲地毛寝かせ部材との境界部分には、前記周囲地毛寝かせ部材及び前記周囲地毛を挟むためのヘアピンが挿入可能なスリットが形成されていることを特徴とする増毛作業支援冶具。
【請求項2】
地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、
ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、
前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、
前記係合部材は、前記周囲地毛寝かせ部材の上部から上方へ向かって突出するとともに、
前記係合部材の上端には、前記地毛に対して係合するフック部材が複数設けられ、
前記係合部材は、板状に形成され、頭部に対して起立し、
前記係合部材の上端部は、横方向に延び、
前記フック部材は、横方向に並んでいることを特徴とする増毛作業支援冶具。
【請求項3】
前記フック部材は、面ファスナーであることを特徴とする請求項記載の増毛作業支援冶具。
【請求項4】
地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、
ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、
前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、
前記周囲地毛寝かせ部材は頭の上に載置される載置板を備え、
前記載置板には前記ターゲット地毛が挿通する開口が形成され、
前記開口の稜線が前記被塗布部分の識別子であることを特徴とする増毛作業支援冶具。
【請求項5】
地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、
ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、
前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、
前記周囲地毛寝かせ部材は頭の上に載置される載置板を備え、
前記載置板には前記ターゲット地毛が挿通する開口が形成され、
前記開口の縁部が作業者の目線から退避するように、前記縁部の端面が斜めに形成されることを特徴とする増毛作業支援冶具。
【請求項6】
請求項1ないしのうちいずれか1項記載の増毛作業支援冶具を用いて、前記ターゲット地毛の前記被塗布部分に接着剤を塗布することを特徴とする増毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増毛作業支援冶具及び増毛方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自毛に対して増毛や美粧のための毛材の接着が行われているが、この接着作業においては、多数の自毛のできるだけ根部に近い位置に逐次手作業で毛材の接着を行う必要があり、しかも、接着する毛材自体が非常に細いものであって、接着作業に困難性を伴うため、多数本の接着には長時間を必要とした。そこで、地毛に対し増毛用の毛髪を結びつける方法が開発された(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3210081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地毛が伸びると、結び目が先端側に移動する結果、結び目が目立つようになってしまう。これを回避するためには、増毛のやり直しが必要となる。結果、特許文献1の方法もまた、手軽な方法とは言えない。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、地毛が伸びても外観の影響が少なく、また、手軽に行うことができる増毛方法及び増毛作業支援冶具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の増毛作業支援冶具は、地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、前記係合部材は、前記周囲地毛寝かせ部材の上部から上方へ向かって突出するとともに、前記ターゲット地毛の先端側部分を支持する支持部を有し、前記支持部は、前記係合部材の上端であり、前記係合部材と前記周囲地毛寝かせ部材との境界部分には、前記周囲地毛寝かせ部材及び前記周囲地毛を挟むためのヘアピンが挿入可能なスリットが形成されていることを特徴とする。また、本発明の増毛作業支援冶具は、地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、前記係合部材は、前記周囲地毛寝かせ部材の上部から上方へ向かって突出するとともに、前記係合部材の上端には、前記地毛に対して係合するフック部材が複数設けられ、前記係合部材は、板状に形成され、頭部に対して起立し、前記係合部材の上端部は、横方向に延び、前記フック部材は、横方向に並んでいることを特徴とする。さらに、本発明の増毛作業支援冶具は、地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、前記周囲地毛寝かせ部材は頭の上に載置される載置板を備え、前記載置板には前記ターゲット地毛が挿通する開口が形成され、前記開口の稜線が前記被塗布部分の識別子であることを特徴とする。加えて、本発明の増毛作業支援冶具は、地毛のうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分と、前記被塗布部分よりも先端側に位置する先端側部分と定義した際、ターゲット地毛の被塗布部分が起立するように前記ターゲット地毛の先端側部分に対して係合する係合部材と、前記ターゲット地毛の周りに生えている周囲地毛を寝かす周囲地毛寝かせ部材と、を備え、前記周囲地毛寝かせ部材は頭の上に載置される載置板を備え、前記載置板には前記ターゲット地毛が挿通する開口が形成され、前記開口の縁部が作業者の目線から退避するように、前記縁部の端面が斜めに形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の増毛方法は、上記の増毛作業支援冶具を用いて、前記ターゲット地毛の前記被塗布部分に接着剤を塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地毛が伸びても外観の影響が少なく、また、手軽に行うことができる増毛方法及び増毛作業支援冶具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の増毛作業支援冶具の概要を示す斜視図である。
図2】増毛作業支援冶具の概要を示す断面図である。
図3】フック部材の概要を示す拡大図である。
図4】増毛方法のフローチャートである。
図5】第2の増毛作業支援冶具の概要を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、説明の便宜上、水平面内における任意の方向をX方向とし、水平面内における任意の方向のうちX方向と直交する方向をY方向とし、水平面に直交する方向をZ方向とする。また、地毛GMのうち、毛根側に設定され接着剤が塗布される部分を被塗布部分GM1と、被塗布部分GM1よりも先端側に位置する先端側部分GM2と定義する。
【0012】
図1~2に示すように、増毛作業支援冶具2は、ターゲットとなる地毛GMの周りに生えている周囲地毛を寝かせるための抑え部材10と、地毛GMの先端側部分GM2に対して係合する係合部材20と、地毛GMに対して係合するフック部材30と、を備える。
【0013】
抑え部材10は、頭部に載置するためのものであり、板状に形成される。抑え部材10は、X方向及びY方向に延びる長方形状に形成される。抑え部材10には、地毛GMを挿通するための開口10Xが形成される。開口10Xの形成位置は、ターゲットとなる地毛GMの先端側部分GM2が係合部材20に係合できるようになっていればよい。これにより、ターゲットとなる地毛GMとそれ以外の地毛との分離が確実に行えるため、増毛作業の効率が向上する。
【0014】
また、開口10Xの縁部のうち、作業者側の端面FMが垂直になっていると、作業者の目線ML上において、開口10Xの縁部が毛根MKを遮ることとなってしまう。そこで、毛根MKを通る作業者の目線MLから退避するように、端面FMは、斜めになっていることが好ましい。これにより、作業者は、地毛GMの毛根MKが視認しやすくなるため、増毛作業の効率が向上する。
【0015】
係合部材20は、板状に形成されるものであり、抑え部材10のX方向端部からZ方向に向かって突出するように伸びる。係合部材20は、Z方向及びY方向に延びる長方形状に形成される。Z方向における係合部材20の高さH20は、先端側部分GM2が係合した際、被塗布部分GM1が起立する程度であればよい。被塗布部分GM1は、目的に応じて適宜設定すればよいが、例えば、毛根MKから5mm以下であることが好ましい。また、開口10Xは、X方向よりもY方向へ長くのびていることが好ましい。例えば、開口10Xの長さは、X方向において1mm~2mm、Y方向において3cm~6cmであることが好ましく、4cm~4.5cmであることがより好ましい。これにより、開口10Xを通った地毛GMが、係合部材20の上端部において互いに重ならなりにくくなるため、増毛作業の効率が向上する。このため、開口10Xは、Y方向に細長くのびることが好ましい。
【0016】
また、抑え部材10は、被塗布部分GM1の識別子を有することが好ましい。本実施形態では、開口10Xの縁部のうち作業者と反対側の稜線10XSが被塗布部分GM1の識別子となる。なお、図2では、上側の稜線10XSを被塗布部分GM1の識別子としたが、本発明はこれに限られず、下側の稜線を被塗布部分GM1の識別子としてもよいし、開口10Xの縁部に識別子となるような目盛りや印などを適宜設けてもよい。
【0017】
フック部材30は、係合部材20の上部に設けられることが好ましい。フック部材30は、係合部材20に係合した地毛GMが係合できるものであればよい。フック部材30として、例えば、フック部Fを有する面ファスナーを用いることが好ましい(図3)。
【0018】
図1に示すように、抑え部材10と係合部材20の連結部分において、Y方向両端側に横スリットSLが形成されていることが好ましい。また、横スリットSLからヘアピンHPを挿入して、抑え部材10及び周囲地毛を挟み込むことができる。
【0019】
次に、増毛作業支援冶具2を用いた増毛方法100について説明する。
【0020】
図4に示すように、増毛方法100は、増毛作業支援冶具2の位置合わせを行う位置合わせステップS110と、ターゲットとなる地毛GMを開口10Xに通す通しステップS120と、ターゲットとなる地毛GMの周りに生えている周囲地毛を抑えるように、頭部に増毛作業支援冶具2を載置する載置ステップS130と、ターゲットとなる地毛GMの被塗布部分GM1を起立させる起立ステップS140と、被塗布部分GM1に接着剤を塗布する接着剤塗布ステップS150と、被塗布部分GM1に塗布された接着剤に対し、人毛又は人口毛を接着させる接着ステップS160と、を備える。
【0021】
位置合わせステップS110では、ターゲットとなる地毛GMに開口10Xが重なるように、頭部における増毛作業支援冶具2の位置合わせを行う。
【0022】
通しステップS120では、ターゲットとなる地毛GMを開口10Xに通す。なお、通しステップS120は、載置ステップS130よりも後に行ってもよいが、作業的には、載置ステップS130より前に行うことが好ましい。
【0023】
載置ステップS130では、位置合わせステップS110において設定した位置に、増毛作業支援冶具2を載置する。これにより、ターゲットとなる地毛GMが開口10Xに通った状態で、地毛GMの周りに生えている周囲地毛を寝かすことができる。また、横スリットSLからヘアピンを挿入して、抑え部材10及び周囲地毛を挟み込む。これにより、頭部から増毛作業支援冶具2が固定されるため、作業効率の向上とともに、増毛作業支援冶具2の脱落防止を実現できる。
【0024】
起立ステップS140では、係合部材20の上端に地毛GMの先端側部分GM2を載せる。これにより、先端側部分GM2が係合部材20と係合するため、根元側の被塗布部分GM1が起立する。このとき、先端側部分GM2がフック部材30と係合することで、Y方向における先端側部分GM2の位置決めが可能となる。これにより、先端側部分GM2の不用意な移動がなくなるため、根元側の被塗布部分GM1の姿勢が安定する結果、接着剤塗布ステップS150と接着ステップS160の作業効率が向上する。
【0025】
接着剤塗布ステップS150では、被塗布部分GM1に接着剤を塗布する。接着剤としては、公知の接着剤(例えば、アイラッシュ用国産エチルグルー等)が使用できる。接着剤を塗布する道具としては、公知の道具を使用できる。
【0026】
被塗布部分GM1に接着剤を塗布する際、開口10Xの稜線10XSを被塗布部分GM1の識別子として利用することが好ましい。すなわち、作業者から見て、毛根MKと開口10Xの稜線10XSの間を接着剤塗布領域として設定し、当該領域に接着剤を塗布することが好ましい。これにより、各地毛において、接着剤の塗布位置を揃えることができる。
【0027】
接着ステップS160では、被塗布部分GM1に対し、人毛又は人口毛を接着する。ターゲットとなる地毛GMに対する接着ステップS160が終わったら、新たなターゲットとなる地毛GMに対し、位置合わせステップS110から接着ステップS160を行う。これを繰り返すことにより、所望の地毛に対し、人毛又は人口毛を接着する接着作業を行うことができる。
【0028】
上記実施形態では、抑え部材10と、係合部材20及びフック部材30が一体化した増毛作業支援冶具2を用いたが、本発明はこれに限られず、各部材が別体となってもよい。
【0029】
上記実施形態では、フック部材30として、例えば、フック部Fを有する面ファスナーを用いたが、本発明はこれに限られず、地毛に対して粘着性を有する材料から係合部材20を形成してもよい。地毛に対して粘着性を有する材料としては、シリコン樹脂等がある。
【0030】
上記実施形態では、抑え部材10に開口10Xを形成したが、本発明はこれに限られない。例えば、図5に示す増毛作業支援冶具2は、抑え部材10において開口10Xが形成されていない。この場合において、抑え部材10の端面の稜線10XSが、被塗布部分GM1の識別子となる。
【0031】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
2 増毛作業支援冶具
10 抑え部材
10X 開口
10XS 稜線
20 係合部材
30 フック部材
GM1 被塗布部分
F フック部
FM 端面
GM 地毛
GM1 被塗布部分
GM2 先端側部分
MK 毛根
ML 目線
100 増毛方法
S110 位置決めステップ
S120 通しステップ
S130 載置ステップ
S140 起立ステップ
S150 接着剤塗布ステップ
S160 接着ステップ


図1
図2
図3
図4
図5