(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】放射化量測定を行う装置及び放射化量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01T 3/00 20060101AFI20220406BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
G01T3/00 G
G01T7/00 B
(21)【出願番号】P 2017097483
(22)【出願日】2017-05-16
【審査請求日】2020-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 清崇
(72)【発明者】
【氏名】武川 哲也
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-030598(JP,U)
【文献】特開2012-122962(JP,A)
【文献】特開2009-128008(JP,A)
【文献】米国特許第04837442(US,A)
【文献】特開平11-023799(JP,A)
【文献】特開平11-038147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 3/00
G01T 7/00
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子測定部材と、放射化量測定装置と、を含む、放射化量測定を行う装置であって、
前記中性子測定部材は、
中性子線が照射されることで放射化する金属からなる複数の放射化部材と、
前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、
を有し、
前記放射化量測定装置は、
前記放射化部材が固定される間隔と同じ間隔で、複数のホールが形成されたガンマ線コリメータと、
前記複数のホールを導波した放射線を個別に検出する放射線検出器と、
を有
し、
前記ガンマ線コリメータの複数のホールは、それぞれ、前記複数の放射化部材のうち互いに異なる1つの放射化部材に個別に対応し、
前記ガンマ線コリメータは、前記複数のホールのそれぞれに対して、前記複数の放射化部材のうち当該ホールに対応する1つの放射化部材を、それぞれ個別に且つ同時に接触させた際に、対応する放射化部材とは異なる放射化部材から放出される放射線が当該ホールへ入射することを防ぐ、放射化量測定を行う装置。
【請求項2】
中性子測定部材と、放射化量測定装置と、を含む、放射化量測定を行う装置であって、
前記中性子測定部材は、
中性子線が照射されることで放射化する金属からなる複数の放射化部材と、
前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、
を有し、
前記放射化量測定装置は、
前記複数の放射化部材のうちの1つの放射化部材のみに対応するホールが形成され、特定の放射化部材を当該ホールに接触させた際に他の放射化部材から放出される放射線を遮蔽する遮蔽部材と、
前記ホールを導波した放射線を検出する放射線検出器と、
を有する、放射化量測定を行う装置。
【請求項3】
中性子測定部材の放射化量測定方法であって、
中性子線が照射されることで放射化された金属からなる複数の放射化部材と、前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、を有する、中性子線照射後の中性子測定部材を準備する工程と、
前記放射化部材が固定される間隔と同じ間隔で、複数の複数のホールが形成されたガンマ線コリメータの前記複数のホールのそれぞれに対して、前記中性子測定部材の前記複数の放射化部材を個別に接触させる工程と、
前記複数の放射化部材のそれぞれから放出されて、前記複数のホールのそれぞれを導波した放射線を放射線検出器により個別に検出する工程と、
を有
し、
前記ガンマ線コリメータの複数のホールは、それぞれ、前記複数の放射化部材のうち互いに異なる1つの放射化部材に個別に対応し、
前記ガンマ線コリメータは、前記複数のホールのそれぞれに対して、前記複数の放射化部材のうち当該ホールに対応する1つの放射化部材を、それぞれ個別に且つ同時に接触させた際に、対応する放射化部材とは異なる放射化部材から放出される放射線が当該ホールへ入射することを防ぐ、放射化量測定方法。
【請求項4】
中性子測定部材の放射化量測定方法であって、
中性子線が照射されることで放射化された金属からなる複数の放射化部材と、前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、を有する、中性子線照射後の中性子測定部材を準備する工程と、
前記複数の放射化部材のうちの1つの放射化部材のみに対応するホールが形成され、特定の放射化部材を当該ホールに接触させた際に他の放射化部材から放出される放射線を遮蔽する遮蔽部材の前記ホールに対して、前記中性子測定部材の前記複数の放射化部材のうちの一の放射化部材を接触させた状態で、前記一の放射化部材から放出されて、前記遮蔽部材のホールを導波した放射線を放射線検出器により検出する工程と、
前記遮蔽部材の前記ホールに接触する放射化部材を前記一の放射化部材とは異なる他の放射化部材に変更して、前記他の放射化部材から放出されて、前記遮蔽部材のホールを導波した放射線を前記放射線検出器により検出する工程と、
を有する、放射化量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子測定部材及び放射化量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線捕捉療法では、被照射体の照射対象位置に照射する中性子線の線量を適切に管理する必要がある。そのため、例えば、特許文献1に記載のように標的部位に中性子測定用の金線を装着し、金線の放射化量から中性子の分布を推定する方法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中性子の分布を評価しようとするためには、複数の金線を互いに異なる位置に配置した上で、複数の金線それぞれの放射化量を測定する必要がある。中性子線を照射する環境において、複数の金線それぞれを目的の位置に精度よく配置しようとすると、作業量が増大する。
【0005】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、中性子の分布を精度よく測定することが可能な中性子測定部材及び放射化量測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る中性子測定部材は、中性子線が照射されることで放射化する金属からなる複数の放射化部材と、前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、を有する。
【0007】
上記の中性子測定部材によれば、固定部材に対して複数の放射化部材が所定の間隔で固定されているので、複数の放射化部材を個別に所望の位置に配置する場合と比較して放射化部材を適切に配置することが可能となり、中性子の分布を精度よく測定することが可能となる。
【0008】
ここで、前記固定部は、可塑性を有するシート状の部材である態様とすることができる。
【0009】
上記のように、固定部が可塑性を有するシート状の部材である場合、中性子の測定対象となる場所の形状等に応じて固定部を変形することが可能となるため、測定対象の場所によらず中性子の分布を精度よく測定する音が可能となる。
【0010】
また、本発明の一形態に係る放射化量測定方法は、中性子測定部材の放射化量測定方法であって、中性子線が照射されることで放射化された金属からなる複数の放射化部材と、前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、を有する、中性子線照射後の中性子測定部材を準備する工程と、前記放射化部材が固定される間隔と同じ間隔で複数のホールが形成されたガンマ線コリメータの前記複数のホールのそれぞれに対して、前記中性子測定部材の前記複数の放射化部材を接触させる工程と、前記複数の放射化部材のそれぞれから放出されて、前記複数のホールのそれぞれを導波した放射線を放射線検出器により個別に検出する工程と、を有する。
【0011】
上記の放射化量測定方法によれば、中性子測定部材において複数の放射化部材が固定される間隔と同じ間隔で複数のホールが形成されたガンマ線コリメータを用いて、複数の放射化部材のそれぞれから放出される放射線を個別に検出することが可能となる。したがって、中性子測定部材の複数の放射化部材の放射化量を個別に精度よく測定することができる。
【0012】
また、本発明の一形態に係る放射化量測定方法は、中性子測定部材の放射化量測定方法であって、中性子線が照射されることで放射化された金属からなる複数の放射化部材と、前記複数の放射化部材が所定の間隔で固定される固定部と、を有する、中性子線照射後の中性子測定部材を準備する工程と、前記複数の放射化部材のうちの1つの放射化部材のみに対応するホールが形成された遮蔽部材の前記ホールに対して、前記中性子測定部材の前記複数の放射化部材のうちの一の放射化部材を接触させた状態で、前記一の放射化部材のそれぞれから放出されて、前記遮蔽部材のホールを導波した放射線を放射線検出器により検出する工程と、前記遮蔽部材の前記ホールに接触する放射化部材を前記一の放射化部材とは異なる他の放射化部材に変更して、前記他の放射化部材から放出されて、前記遮蔽部材のホールを導波した放射線を前記放射線検出器により検出する工程と、を有する。
【0013】
上記の放射化量測定方法によれば、放射化部材のうちの1つの放射化部材のみに対応するホールが形成された遮蔽部材を用いて、複数の放射化部材のうちの一の放射化部材から放出される放射線を検出した後、遮蔽部材のホールに接触する放射化部材を一の部材から他の部材に変更して放射線の検出を行う。このような構成とすることで、複数の放射化部材のそれぞれから放出される放射線を個別に検出することが可能となる。したがって、中性子測定部材の複数の放射化部材の放射化量を個別に精度よく測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中性子の分布を精度よく測定することが可能な中性子測定部材及び放射化量測定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】中性子測定部材及び放射化量測定装置について説明する図である。
【
図3】放射化量の測定方法の一実施例を説明する図である。
【
図4】放射化量の測定方法の他の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る中性子測定部材と、この中性子測定部材の放射化量測定に用いられる放射化量測定装置と、を示す図である。
図1(a)は、中性子測定部材1の概略構成図であり、
図1(b)は放射化量測定装置2の概略構成図である。
【0018】
中性子測定部材1は、複数の放射化部材11と、複数の放射化部材11を固定する固定部12と、を有する。中性子測定部材1は、中性子捕捉療法システム等の中性子線が照射される環境において、中性子の強度の分布を測定するために用いられる。中性子測定部材1が、中性子捕捉療法システムにおいて用いられる場合は、例えば、中性子線Nを照射する装置のビーム軸方向に沿った強度分布の測定に用いられる。
【0019】
中性子測定部材1の放射化部材11は、中性子が照射されると放射化する金属材料により構成される。中性子線が照射されると放射化する金属材料としては、例えば、金、ヨウ素、マンガン等が挙げられる。これらの金属は照射された中性子の強度に応じて放射化量が変化するため、この放射化量を測定することで中性子の強度を推定することができる。
【0020】
複数の放射化部材11の形状は、例えば、線状又は箔状とすることができる。ただし、放射化部材11は、それぞれ、中性子場を乱さない程度の大きさ及び厚さとされる。具体的には、放射化部材11の大きさは、例えば、金箔を放射化部材11として用いる場合には、面積を2mm×2mm程度とし、厚さを0.5mm程度とすることができる。なお、放射化部材11が大きすぎると、測定精度が低下する。一方、放射化部材11が小さすぎると、検出効率が低下する。したがって、金属の種類等を考慮して適宜その大きさは選択できる。
【0021】
放射化部材11は、固定部12上に所定の間隔で配置される。放射化部材11の間隔は、中性子の強度分布の測定間隔に基づいて決定される。
【0022】
複数の放射化部材11が固定される固定部12は、中性子場を乱さない材料から構成されるシート状の部材である。固定部12の材料としては、例えば、アクリル樹脂等を用いることができるが、特に限定されない。ただし、固定部12が可塑性を有していると、取り扱い性が向上する。また、固定部12が可塑性を有していると、例えば、中性子の強度分布を測定する対象位置が曲線状に配置している場合であっても、その形状に合わせて変形が可能となるため、種々の測定条件に対応可能となる。
【0023】
固定部12の大きさは、1つの中性子測定部材1に取り付ける放射化部材11の数及び配置(間隔)に応じて設定される。固定部12に対して取り付ける放射化部材11の個数は特に限定されない。また、配置も適宜変更することができる。
図1(a)では、固定部12に対して放射化部材11が一列に配置されている例を示しているが、シート状の固定部12に対して複数の放射化部材11が2次元配置されていてもよい。
【0024】
また、固定部12の厚さは特に限定されないが、中性子場を乱さないためには固定部12はより薄くすることが好ましい。
【0025】
放射化部材11は、固定部12の表面に対して固定されていてもよいし、例えば、複数のシート状の部材により放射化部材11を挟み込んで固定化してもよい。固定部12は、複数の放射化部材11が所定の間隔で保持されるように放射化部材11を固定できればよく、その方法は特に限定されない。
【0026】
放射化量を算出した後に、当該算出結果から中性子強度を算出する際には、中性子測定部材1に含まれる放射化部材11の材料の種類(金属の種類)、相対位置(放射化部材11間の距離)、及び、放射化部材11それぞれの質量が必要となる。ただし、中性子測定部材1によって、複数の放射化部材11の相対位置や質量は異なる場合がある。したがって、中性子測定部材1は、使用前に中性子測定部材1毎に上記の情報が予め記録される。そして、放射化量に基づく中性子強度の算出の際には、中性子測定部材1毎に事前に記録された情報を利用して、各放射化部材11において中性子量の算出が行われる。中性子測定部材1毎の上記の情報(放射化部材11の材料の種類、相対位置、及び、質量)は、中性子測定部材1を個別に特定する情報(例えば、シリアル番号等)に対応付けて予めデータベース化して管理する態様とすることができる。
【0027】
次に、この中性子測定部材1の放射化部材11に係る放射化量を測定する放射化量測定装置2について説明する。
図1(b)に示すように、放射化量測定装置2は、ガンマ線絶対値測定器21と、ガンマ線個別測定器22(放射線検出器)と、測定値校正部23と、を有する。なお、放射化量測定装置に含まれる機能部は、複数台の装置(測定器)を組み合わせて構成される。
【0028】
ガンマ線絶対値測定器21は、中性子測定部材1の複数の放射化部材11の放射化に伴って生成されるガンマ線の絶対量を測定する機能を有する。ガンマ線絶対値測定器21としては、公知のガンマ線検出器を利用することができる。
【0029】
ガンマ線個別測定器22は、中性子測定部材1の複数の放射化部材11の放射化に伴って生成されるガンマ線の線量を、放射化部材11毎に測定する機能を有する。放射化部材11毎に個別に測定する方法について、詳細は後述するが、測定対象の放射化部材11からのガンマ線と隣接する放射化部材11からのガンマ線とを区別しながら測定する。
【0030】
測定値校正部23は、ガンマ線個別測定器22で測定された放射化部材11毎のガンマ線の線量を、ガンマ線絶対値測定器21で測定されたガンマ線の線量で校正し、放射化部材11毎のガンマ線の線量、すなわち、放射化部材11毎の放射化量を算出する機能を有する。ガンマ線個別測定器22による放射化部材11毎のガンマ線の線量は、上述のように隣接する放射化部材11からのガンマ線と区別して計測するために数値が小さくなる場合がある。そこで、測定値校正部23において、ガンマ線絶対値測定器21で測定されたガンマ線の線量を用いて校正することで、放射化部材11毎のガンマ線の線量をより正確に算出することができる。測定値校正部23は、CPU、ROM、RAM等から構成された電子制御ユニットとして構成することができる。
【0031】
なお、ガンマ線絶対値測定器21による絶対値の測定と、測定値校正部23による校正は、行わなくてもよい。その場合でも、放射化部材11毎にガンマ線の線量を測定して、放射化量を算出することができる。
【0032】
次に、
図2を参照しながら、放射化量測定方法について説明する。まず、中性子測定部材1を測定対象の領域に配置する(S01)。このとき、中性子測定部材1を所望の場所に適切に配置することで、複数の放射化部材11のそれぞれが所望の位置に配置される。次に、中性子線を照射して、中性子測定部材1の各放射化部材11を放射化させる(S02)。これにより、中性子線照射後の、各放射化部材11が放射化された中性子測定部材1が準備される。
【0033】
その後、中性子測定部材1について、複数の放射化部材11に伴って生成されるガンマ線の絶対値のガンマ線絶対値測定器21による測定(S03)と、複数の放射化部材11それぞれのガンマ線のガンマ線個別測定器22による測定(S04)と、を行う。これらの測定(S02,S03)は、同時に行ってもよいし、個別に行ってもよい。また、測定順序は特に限定されない。
【0034】
図3を参照しながら、ガンマ線絶対値測定器21による測定及びガンマ線個別測定器22による測定の一実施例について説明する。
【0035】
図3に示す実施例では、中性子測定部材1の両面において、ガンマ線絶対値測定器21による測定及びガンマ線個別測定器22による測定を同時に行っている。まず、中性子測定部材1の図示下方では、ガンマ線絶対値測定器21としてのガンマ線検出器により、中性子測定部材1の各放射化部材11からのガンマ線を測定している。放射化部材11において生成されるガンマ線は等方的に放射されるので、中性子測定部材1の下方に設けられるガンマ線絶対値測定器21は、中性子測定部材1の複数の放射化部材11から出射されるガンマ線のうちの1/2を検出することができる。したがって、ガンマ線絶対値測定器21で検出されたガンマ線の線量を2倍すると、中性子測定部材1の複数の放射化部材11から出射されるガンマ線の絶対値を算出することができる。
【0036】
一方、中性子測定部材1の図示上方には、位置敏感型ガンマ線検出器31(放射線検出器)と、ガンマ線コリメータ32とを組み合わせたガンマ線個別測定器22が設けられている。ガンマ線コリメータ32は、中性子測定部材1の複数の放射化部材11の対応した位置にそれぞれ設けられた複数のホール32a(開口)を有し、各放射化部材11からのガンマ線を位置敏感型ガンマ線検出器31へ導波している。ガンマ線コリメータ32は、ホール32a以外では放射線(ガンマ線)は遮蔽される。また、測定時には、ガンマ線コリメータ32の複数のホール32aのそれぞれに対して、中性子測定部材1の複数の放射化部材11のそれぞれが接触される。そのため、隣接する放射化部材11からのガンマ線が別のホール32aには入射しないようにされる。
【0037】
上記のようにガンマ線コリメータ32及び位置敏感型ガンマ線検出器31を配置した状態でガンマ線の測定を行うと、各放射化部材11から出射されるガンマ線が、互いに異なるホール32aを通過して位置敏感型ガンマ線検出器31へ到達することで、位置敏感型ガンマ線検出器31では、互いに異なるホール32aから入射するガンマ線を個別に測定することで、複数の放射化部材11のそれぞれからのガンマ線の線量を測定することができる。
【0038】
ただし、ガンマ線コリメータ32を用いて、各放射化部材11から出射されるガンマ線のうち特定方向(位置敏感型ガンマ線検出器31へ向かう方向)へ出射されたガンマ線のみを検出していることになるので、ガンマ線個別測定器22で検出されるガンマ線の総量は、ガンマ線絶対値測定器21で検出されるガンマ線の線量よりも小さくなる。
【0039】
そこで、放射化量測定装置2の測定値校正部23(
図2参照)において、ガンマ線絶対値測定器21での検出結果から算出される複数の放射化部材11から出射されるガンマ線の絶対値を利用して校正をする(S05)。これにより、複数の放射化部材11のそれぞれから出射されるガンマ線の線量を算出することができる。
【0040】
なお、ガンマ線絶対値測定器21で検出されるガンマ線の絶対値を利用した校正を行わない場合には、放射化量を別の方法で校正してもよい。例えば、放射化部材11の配置と、ガンマ線コリメータ32の形状及び配置と、から放射化部材11から放出される放射線のうちガンマ線コリメータ32のホール32aを介して位置敏感型ガンマ線検出器31に到達する放射線の割合を事前にシミュレーション等で求めておき、その結果を利用して、放射化量の校正を行ってもよい。また、線量が既知の線源からのガンマ線を事前に測定することで、その測定結果を利用して放射化量の校正を行ってもよい。
【0041】
なお、
図3に示すように位置敏感型ガンマ線検出器31を用いる場合、位置分解能は、放射化部材11の大きさよりも少し大きい程度とすることが好ましい。位置分解能を上記のように調整することで、検出精度を高めることができる。
【0042】
次に、
図4は、ガンマ線絶対値測定器21による測定及びガンマ線個別測定器22による測定の他の実施例について説明する。
【0043】
図4に示す実施例では、中性子測定部材1の両面において、ガンマ線絶対値測定器21による測定及びガンマ線個別測定器22による測定を同時に行っている。中性子測定部材1の図示下方における、ガンマ線絶対値測定器21としてのガンマ線検出器により、中性子測定部材1の各放射化部材11からのガンマ線の測定は、
図3に示す実施例と同じである。
【0044】
一方、中性子測定部材1の図示上方には、単チャネル型の単チャネル型ガンマ線検出器33(放射線検出器)と、1つの放射化部材11からのガンマ線のみを単チャネル型ガンマ線検出器33に到達させるホール34aを有し、他の放射化部材11からのガンマ線は遮蔽する遮蔽部材34と、を組み合わせたガンマ線個別測定器22が設けられている。このようなガンマ線個別測定器22では、複数の放射化部材11のうちの1つの放射化部材11のみに対応するホール34aが形成された遮蔽部材34のホール34aに対して、中性子測定部材1の複数の放射化部材11のうちの一の放射化部材を接触させた状態で、一の放射化部材11のそれぞれから放出されて、遮蔽部材34のホール34aを導波した放射線(ガンマ線)を検出する。
【0045】
その後、ガンマ線個別測定器22と中性子測定部材1との相対位置を変化させることで、他の放射化部材11からのガンマ線を個別に検出することができる。具体的には、中性子測定部材1を固定した状態でガンマ線個別測定器22を移動させる、又は、ガンマ線個別測定器22を固定した状態で中性子測定部材1を移動させる。これにより、他の放射化部材11から放出されて、遮蔽部材34のホール34aを導波した放射線(ガンマ線)を検出することができる。そしてこの工程を繰り返すことで、中性子測定部材1の各放射化部材11からの放射線を個別に検出することができる。
【0046】
複数の放射化部材11からのガンマ線を個別に検出した後、
図3に示す実施例と同様に、放射化量測定装置2の測定値校正部23(
図2参照)において、ガンマ線絶対値測定器21での検出結果から算出される複数の放射化部材11から出射されるガンマ線の絶対値を利用して校正をする(S05)。これにより、複数の放射化部材11のそれぞれから出射されるガンマ線の線量を算出することができる。
【0047】
なお、
図3及び
図4に示す実施例のように、中性子測定部材1の図示下方におけるガンマ線絶対値測定器21による中性子測定部材1の各放射化部材11からのガンマ線の絶対値の測定と、図示上方におけるガンマ線個別測定器22による中性子測定部材1の各放射化部材11からのガンマ線の個別測定と、を同時に行う必要はない。したがって、例えば、各放射化部材11からのガンマ線の絶対値の測定を行った後に、各放射化部材11からのガンマ線の個別測定を行う校正としてもよい。ただし、放射化からの経過時間によってガンマ線の放出量が変化するので、経過時間等を組み合わせて評価することが好ましい。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る中性子測定部材1によれば、固定部12に対して複数の放射化部材11が所定の間隔で固定されているので、複数の放射化部材11を個別に所望の位置に配置する場合と比較して放射化部材を適切に配置することが可能となる。したがって、中性子の分布を精度よく測定することが可能となる。
【0049】
また、上記の中性子測定部材1のように、固定部12が可塑性を有するシート状の部材である場合、中性子の測定対象となる場所の形状等に応じて固定部を変形することが可能となる。したがって、測定対象の場所によらず中性子の分布を精度よく測定する音が可能となる。
【0050】
また、
図3に示す放射化量測定方法によれば、中性子測定部材1において複数の放射化部材11が固定される間隔と同じ間隔で複数のホール32aが形成されたガンマ線コリメータ32を用いることで、複数の放射化部材11のそれぞれから放出される放射線を位置敏感型ガンマ線検出器31において個別に検出することが可能となる。したがって、中性子測定部材1の複数の放射化部材11の放射化量を個別に精度よく測定することができる。
【0051】
また、
図4に示す放射化量測定方法によれば、中性子測定部材1の複数の放射化部材11のうちの1つの放射化部材11のみに対応するホールが形成された遮蔽部材34を用いることで、複数の放射化部材のうちの一の放射化部材11から放出される放射線を単チャネル型ガンマ線検出器33において検出した後、遮蔽部材34のホール34aに接触する放射化部材を一の部材から他の部材に変更して測定を行う。このような構成とすることで、複数の放射化部材のそれぞれから放出される放射線を個別に検出することが可能となる。したがって、中性子測定部材の複数の放射化部材の放射化量を個別に精度よく測定することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0053】
例えば、上記実施形態では、放射化された放射化部材11から放出される放射線がガンマ線である場合について説明したが、放射化部材11から放出される放射線の種類は特に限定されない。
【0054】
また、放射化された放射化部材11から放出される放射線を個別に検出するためのガンマ線コリメータ32及び遮蔽部材34等の形状は特に限定されない。
【符号の説明】
【0055】
1…中性子測定部材、2…放射化量測定装置、11…放射化部材、12…固定部、21…ガンマ線絶対値測定器、22…ガンマ線個別測定器、23…測定値校正部、31…位置敏感型ガンマ線検出器、32…ガンマ線コリメータ、33…単チャネル型ガンマ線検出器、34…遮蔽部材。