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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220406BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20220406BHJP
   G01S 17/87 20200101ALI20220406BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G01S7/497
G01S17/87
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017243036
(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公開番号】P2019109772
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
(72)【発明者】
【氏名】阪下 英知
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-134743(JP,A)
【文献】特開2011-221957(JP,A)
【文献】特開2013-164329(JP,A)
【文献】特開2014-235129(JP,A)
【文献】特開2004-003987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/12
G01S 7/497
G01S 17/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動する移動体であって、
複数方向に関して周囲の物体までの距離をそれぞれ測定する第1及び第2の測距センサと、
前記移動体を移動させる移動機構と、
前記第1及び第2の測距センサによる測定結果に基づいて、前記移動機構を制御する移動制御部と、
前記第1及び第2の測距センサによる、前記移動体に装着された基準部材である測定対象の測定結果を用いて、当該第1及び第2の測距センサの測定結果を合わせるための較正を、前記第1及び第2の測距センサのそれぞれについて、本来の取付位置及び角度に関する誤差を取得することによって行う較正部と、を備えた移動体。
【請求項2】
前記基準部材は、前記移動体に着脱可能に装着される、請求項記載の移動体。
【請求項3】
前記基準部材は、2個存在し、
前記第1及び第2の測距センサは、それぞれ異なる前記基準部材について較正用の測定を行う、請求項または請求項記載の移動体。
【請求項4】
前記第1及び第2の測距センサの測定結果を用いて前記移動体の現在位置を取得する現在位置取得部をさらに備え、
前記移動制御部は、前記現在位置取得部によって取得された現在位置を用いて前記移動機構を制御する、請求項1から請求項のいずれか記載の移動体。
【請求項5】
前記第1及び第2の測距センサによる測定結果を用いて障害物を検知する障害物検知部をさらに備え、
前記移動制御部は、前記障害物検知部によって検知された障害物への衝突を防ぐように前記移動機構を制御する、請求項1から請求項のいずれか記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距センサによる測定結果に基づいて移動制御を行う移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体において、測距センサを有するものが知られている。その測距センサは、例えば、移動体の現在位置の取得(自己位置同定)や、障害物の検知のためなどに用いられる。なお、移動体において、その測距センサの角度に関する誤差を補正するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-221957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、移動体によっては、2以上の測距センサを有しているものもある。そのように、2以上の測距センサを用いることによって、全方向の周囲の物体までの距離を測定することもできる。例えば、270度の測距エリアである2個のレーザレンジセンサを用いることによって、全周囲(360度)に関する測距を行うことができるようになる。そのような場合には、2個のレーザレンジセンサの測定結果を合わせる必要がある。そうでなければ、同じ物体を一方のレーザレンジセンサで検知した場合と、他方のレーザレンジセンサで検知した場合とにおいて、検知した物体の位置や方向が異なることになり、例えば、その検知された物体の位置や方向が不安定に揺れ動くことになり得るからである。そのように、2個のレーザレンジセンサの測定結果を合わせるための調整を人手で行う場合には、非常に煩雑な作業を行わなくてはならないことになる。また、上記特許文献1のようにして、1個の測距センサの角度の誤差を補正することはできたとしても、2個のレーザレンジセンサの測定結果を合わせるための調整を行うことはできなかった。
一般的にいえば、2個の測距センサを有する移動体において、その2個の測距センサの測定結果を自動的に合わせることができるようにしたいという要望があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、2個の測距センサの測定結果を合わせるための較正を自動的に行うことができる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による移動体は、自律的に移動する移動体であって、複数方向に関して周囲の物体までの距離をそれぞれ測定する第1及び第2の測距センサと、移動体を移動させる移動機構と、第1及び第2の測距センサによる測定結果に基づいて、移動機構を制御する移動制御部と、第1及び第2の測距センサによる所定の測定対象の測定結果を用いて、第1及び第2の測距センサの測定結果を合わせるための較正を行う較正部と、を備えたものである。
このような構成により、第1及び第2の測距センサの測定結果を合わせるための較正を自動的に行うことができるようになる。したがって、2個の測距センサの測定結果を合わせるための調整を手動で行う必要がなくなり、利便性が向上することになる。
【0007】
また、本発明による移動体では、測定対象は、移動環境に存在してもよい。
このような構成により、移動環境に存在する測定対象を用いて較正を行うことができるため、例えば、測定対象を移動体に取り付けるための治具などを別途、用意しなくてもよいことになる。
【0008】
また、本発明による移動体では、測定対象は、移動体に装着された基準部材であってもよい。
このような構成により、移動体に装着された基準部材、すなわち移動体との相対的な位置関係の分かっている基準部材を用いて較正を行うことになり、2個の測距センサについて、相対的な位置合わせだけでなく、絶対的な位置合わせもできるようになる。
【0009】
また、本発明による移動体では、基準部材は、移動体に着脱可能に装着されてもよい。
このような構成により、較正を行うときにのみ、基準部材を移動体に装着することも可能になり、移動体が移動する際には、基準部材を移動体から外しておくこともできるようになる。
【0010】
また、本発明による移動体では、基準部材は、2個存在し、第1及び第2の測距センサは、それぞれ異なる基準部材について較正用の測定を行ってもよい。
このような構成により、第1及び第2の測距センサが、それぞれ異なる基準部材について測定を行うことによって較正を行うこともできるようになる。したがって、例えば、一方の基準部材は、第1の測距センサの測定範囲に存在するが、第2の測距センサの測定範囲には存在せず、他方の基準部材は、第2の測距センサの測定範囲に存在するが、第1の測距センサの測定範囲には存在しない、という状況でも較正を行うことができるようになる。
【0011】
また、本発明による移動体では、第1及び第2の測距センサの測定結果を用いて移動体の現在位置を取得する現在位置取得部をさらに備え、移動制御部は、現在位置取得部によって取得された現在位置を用いて移動機構を制御してもよい。
このような構成により、較正された第1及び第2の測距センサの測定結果を用いて移動体の現在位置を取得することができるようになり、より精度の高い現在位置の取得が可能となる。
【0012】
また、本発明による移動体では、第1及び第2の測距センサによる測定結果を用いて障害物を検知する障害物検知部をさらに備え、移動制御部は、障害物検知部によって検知された障害物への衝突を防ぐように移動機構を制御してもよい。
このような構成により、較正された第1及び第2の測距センサの測定結果を用いて障害物の検知を行うことができるようになり、より精度の高い障害物の検知が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明による移動体によれば、2個の測距センサの測定結果を合わせるための較正を自動的に行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態による移動体の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による移動体の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態における2個の測距センサによる測距範囲の一例について説明するための図
図4】同実施の形態における較正用の治具の取り付けられた移動体を示す図
図5】同実施の形態における較正用の治具の取り付けられた移動体を示す図
図6】同実施の形態における測定対象に関する測定について説明するための図
図7】同実施の形態における較正用の測定対象の他の例について説明するための図
図8】同実施の形態における較正用の治具の他の例について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による移動体について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による移動体は、2個の測距センサの測定結果を合わせるための較正を自動的に行うことができるものである。
【0016】
図1は、本実施の形態による移動体1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による移動体1は、自律的に移動するものであり、移動機構11と、第1及び第2の測距センサ12A,12Bと、障害物検知部13と、現在位置取得部14と、移動制御部15と、較正部16とを備える。なお、移動体1が自律的に移動するとは、移動体1がユーザ等から受け付ける操作指示に応じて移動するのではなく、自らの判断によって目的地に移動することであってもよい。その目的地は、例えば、手動で決められたものであってもよく、または、自動的に決定されたものであってもよい。また、その目的地までの移動は、例えば、移動経路に沿って行われてもよく、または、そうでなくてもよい。また、自らの判断によって目的地に移動するとは、例えば、進行方向、移動や停止などを移動体1が自ら判断することによって、目的地まで移動することであってもよい。また、例えば、移動体1が、障害物に衝突しないように移動することであってもよい。移動体1は、例えば、台車であってもよく、移動するロボットであってもよい。ロボットは、例えば、エンターテインメントロボットであってもよく、監視ロボットであってもよく、搬送ロボットであってもよく、清掃ロボットであってもよく、動画や静止画を撮影するロボットであってもよく、その他のロボットであってもよい。
【0017】
移動機構11は、移動体1を移動させる。移動機構11は、例えば、移動体1を全方向に移動できるものであってもよく、または、そうでなくてもよい。全方向に移動できるとは、任意の方向に移動できることである。移動機構11は、例えば、走行部(例えば、車輪など)と、その走行部を駆動する駆動手段(例えば、モータやエンジンなど)とを有していてもよい。なお、移動機構11が、移動体1を全方向に移動できるものである場合には、その走行部は、全方向移動車輪(例えば、オムニホイール、メカナムホイールなど)であってもよい。全方向移動車輪を有し、全方向に移動可能な移動体については、例えば、特開2017-128187号公報を参照されたい。この移動機構11としては、公知のものを用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0018】
第1及び第2の測距センサ12A,12Bは、それぞれ複数方向に関して周囲の物体までの距離を測定する。なお、第1及び第2の測距センサ12A,12Bは、同様のものであるため、それらを区別しない場合には、測距センサ12と呼ぶこともある。測距センサ12は、例えば、レーザセンサや、超音波センサ、マイクロ波を用いた距離センサ、ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像を用いた距離センサなどであってもよい。そのレーザセンサは、レーザレンジセンサ(レーザレンジスキャナ)であってもよい。なお、それらの測距センサについてはすでに公知であり、それらの説明を省略する。本実施の形態では、測距センサ12がレーザレンジセンサである場合について主に説明する。また、本実施の形態では、移動体1が2個の第1及び第2の測距センサ12A,12Bを有している場合について説明するが、移動体1は、3個以上の測距センサ12を有していてもよい。2個以上の測距センサ12を用いる場合には、その2個以上の測距センサ12によって、全方向がカバーされてもよい。また、測距センサ12が超音波センサや、マイクロ波を用いた距離センサなどである場合に、測距センサ12の測距方向を回転させることによって複数方向の距離を測定してもよく、複数方向ごとに配置された複数の測距センサ12を用いて複数方向の距離を測定してもよい。第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって、所定範囲の方向に関して距離が測定されてもよく、全方向に関する距離が測定されてもよい。例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって、移動体1の前方のみの範囲について、複数方向の距離が測定されてもよい。また、例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって、全周囲(360度)について、あらかじめ決められた角度間隔で複数方向の距離が測定されてもよい。その角度間隔は、例えば、1度間隔や2度間隔、5度間隔などのように一定であってもよい。測距センサ12から得られる情報は、例えば、移動体1のある向きを基準とした複数の方位角のそれぞれに関する周辺の物体までの距離であってもよい。その距離を用いることによって、移動体1のローカル座標系において、移動体1の周囲にどのような物体が存在するのかを知ることができるようになる。
【0019】
図3は、本実施の形態による移動体1の第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる測距範囲について説明するための図であり、移動体1を上方から見た図である。図3を参照して、第1及び第2の測距センサ12A,12Bは、上面視が矩形である移動体1の対角となる2個の頂点付近にそれぞれ配置されており、例えば、それぞれ270度の範囲において測距を行う。図3における放射状の矢印は、レーザレンジセンサである測距センサ12から出射されるレーザを模式的に示している。また、第1及び第2の測距センサ12A,12Bは、測距されない方向がないように配置されており、180度の範囲については、重複した測定を行う。また、移動体1には、図3で示されるように、移動体1の上面視の中央Cを原点とするローカル座標系(xy直交座標系)が設定されているものとする。なお、以下、そのローカル座標系を「R座標系」と呼ぶこともある。また、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる測距結果は、後述するように、例えば、障害物の検知に用いられてもよく、現在位置の取得に用いられてもよい。
【0020】
障害物検知部13は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる測定結果を用いて障害物を検知する。後述するように、較正部16によって第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための調整が行われている場合には、障害物検知部13は、その調整後の測定結果を用いて、障害物検知を行ってもよい。一方、較正部16によって、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための誤差が取得されただけである場合には、障害物検知部13は、その誤差を用いて第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせる処理を行い、その処理後の情報を用いて、障害物検知を行ってもよい。障害物検知部13は、例えば、測距センサ12によって測定された距離によって、移動体1の近くに物体が存在することが分かった場合に、その物体を障害物として検知してもよい。例えば、測距センサ12によって測定された周囲の物体までの距離が所定の閾値以下になった場合に、障害物検知部13は、その物体を障害物として検知してもよい。その周囲の物体までの距離は、例えば、測距センサ12からの距離であってもよく、移動体1の外縁からの距離であってもよく、移動体1の外縁を仮想的に膨張させた位置からの距離であってもよく、その他の基準からの距離であってもよい。その閾値は、1個であってもよく、または、2個以上存在してもよい。後者の場合には、例えば、停止領域と減速領域とに応じた2個の閾値が存在してもよい。停止領域に存在する障害物が検知された場合には、移動体1が停止され、減速領域に存在する障害物が検知された場合には、移動体1が減速されてもよい。なお、障害物が検知される領域は、1個であってもよい。その領域は、例えば、停止領域であってもよく、減速領域であってもよい。
【0021】
現在位置取得部14は、移動体1の現在位置を取得する。現在位置の取得は、例えば、無線通信を用いて行われてもよく、周囲の物体までの距離の測定結果を用いて行われてもよく、周囲の画像を撮影することによって行われてもよく、現在位置を取得できるその他の手段を用いてなされてもよい。無線通信を用いて現在位置を取得する方法としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いる方法や、屋内GPSを用いる方法、最寄りの無線基地局を用いる方法などが知られている。また、例えば、周囲の物体までの距離の測定結果を用いたり、周囲の画像を撮影したりすることによって現在位置を取得する方法としては、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などによって知られている方法を用いてもよい。周囲の物体までの距離の測定結果としては、例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いてもよい。すなわち、現在位置取得部14は、第1及び第2の測距センサ12Bの測定結果を用いて移動体1の現在位置を取得してもよい。その場合に、較正部16によって第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための調整が行われているときには、現在位置取得部14は、その調整後の測定結果を用いて、現在位置の取得を行ってもよい。一方、較正部16によって、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための誤差が取得されただけであるときには、現在位置取得部14は、その誤差を用いて第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせる処理を行い、その処理後の情報を用いて、現在位置の取得を行ってもよい。また、あらかじめ作成された地図(例えば、周囲の物体までの距離の測定結果や撮影画像を有する地図など)が記憶されている場合には、現在位置取得部14は、地図を用いて、周囲の物体までの距離の測定結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよく、周囲の画像を撮影し、地図を用いて、その撮影結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部14は、例えば、自律航法装置を用いて現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部14は、移動体1の向き(方向)を含む現在位置を取得することが好適である。その方向は、例えば、北を0度として、時計回りに測定された方位角によって示されてもよく、その他の方向を示す情報によって示されてもよい。その向きは、電子コンパスや地磁気センサによって取得されてもよい。
【0022】
移動制御部15は、移動機構11を制御することによって、移動体1の移動を制御する。移動の制御は、移動体1の移動の向きや、移動の開始・停止などの制御であってもよい。例えば、移動経路が設定されている場合には、移動制御部15は、移動体1がその移動経路に沿って移動するように、移動機構11を制御してもよい。より具体的には、移動制御部15は、現在位置取得部14によって取得される現在位置が、その移動経路に沿ったものになるように、移動機構11を制御してもよい。また、移動制御部15は、地図を用いて、移動の制御を行ってもよい。その場合には、移動体1は、地図が記憶される記憶部を備えていてもよい。
【0023】
なお、移動制御部15は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる測定結果に基づいて、移動機構11を制御するものである。第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる測定結果に基づいて移動制御を行うとは、その移動制御において、少なくとも間接的に第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果が用いられることを意味しており、例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いて検知された障害物への衝突を防ぐように移動制御することであってもよく、また、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いて取得された移動体1の現在位置を用いて移動制御することであってもよい。本実施の形態では、移動制御部15が、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いて障害物検知部13によって検知された障害物への衝突を防ぐように移動機構11を制御する場合について主に説明する。
【0024】
また、障害物検知部13によって検知された障害物への衝突を防ぐように移動機構11を制御する場合に、移動制御部15は、前述のように、停止領域に存在する障害物が検知されたときには、移動体1が停止するように移動機構11を制御し、停止領域において障害物は検知されていないが、減速領域に存在する障害物が検知されたときには、移動体1がその時点の速度よりも減速するように移動機構11を制御してもよい。移動体1が減速される場合に、その減速後の速度が決まっていてもよく、または、そうでなくてもよい。後者の場合には、例えば、その時点の速度に対して相対的に決まる速度(例えば、50%の速度など)となるように減速が行われてもよい。また、移動制御部15は、障害物が検知された場合に、その障害物を迂回するように移動体1を移動させることによって、障害物への衝突を防止してもよい。障害物の迂回を行う場合には、移動制御部15は、検知された障害物の位置を障害物検知部13から受け取ってもよい。その位置は、移動体1のローカル座標系における位置であってもよい。
【0025】
なお、上記のような移動の制御は公知であり、その詳細な説明を省略する。また、移動体1が移動経路に沿って移動する場合に、その移動経路は、移動制御部15によって取得されてもよい。その移動経路の取得は、例えば、移動経路の生成によって行われてもよく、外部のサーバ等から移動経路を受け取ることによって行われてもよい。
【0026】
較正部16は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる所定の測定対象の測定結果を用いて、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための較正を行う。その所定の測定対象は、後述するように、測距センサ12による測距結果を用いて、少なくとも2個の特徴点の位置を特定できる形状であることが好適である。その特徴点は、例えば、頂点(エッジ)に対応した点であってもよい。この較正は、ある箇所を第1の測距センサ12Aで測定した結果と、第2の測距センサ12Bで測定した結果とが同じになるように行われるものである。その較正は、前述のように、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための調整であってもよく、または、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための誤差の取得であってもよい。前者の場合には、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果は調整済みのものとなるため、ある箇所に関する両者の測定結果は同じになるが、後者の場合には、その調整のための処理が別途、必要になる。
【0027】
具体的な較正の処理について説明する前に、較正に用いられる治具20について説明する。図4は、治具20の装着された移動体1を示す上面図であり、図5は、図4における太矢印の方向から見た治具20の装着された移動体1を示す側面図である。治具20は、治具本体21と、測定対象である基準部材22とを有する。治具本体21の一端は、移動体1に着脱可能に取り付けられるようになっており、他端には基準部材22が固定されている。すなわち、基準部材22は、移動体1に着脱可能に装着されるようになっている。治具本体21は、例えば、ネジ等によって、着脱可能に移動体1に取り付けられてもよい。図5で示されるように、治具本体21は、移動体1の2以上の箇所に取り付けられることが好適である。基準部材22を、あらかじめ決められた場所に高い精度で配置するためである。治具20が移動体1に装着された際に、基準部材22は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの両方によって測定される箇所に存在することが好適である。また、測距センサ12は、通常、離散的な角度について距離を測定するものであるため、基準部材22における特定の箇所の角度や距離を測定することは困難である。したがって、基準部材22は、測距センサ12が測定を行う平面(通常、水平方向の平面である。)において、図4で示されるように、複数の直線L1,L2,L3と、それらの直線の交点である複数の特徴点T1,T2とを有するものであることが好適である。なお、移動体1のローカル座標系において、特徴点T1,T2の座標値は、それぞれ(x,y)=(T1,T1)、(T2,T2)のように既知であるとする。その場合には、図6で示されるように、第1の測距センサ12Aは、測定点P1~P6に関する第1の測距センサ12Aの座標系(図6におけるx1y1座標系(2次元直交座標系)であり、以下、「M1座標系」と呼ぶこともある。)における位置をそれぞれ特定することができる。較正部16は、それらの測定点を用いることによって、M1座標系における直線L1~L3をそれぞれ特定することができ、それらの交点であるT1,T2のM1座標系における座標値を取得することができる。それらの座標値は、それぞれ(x1,y1)=(T1x1,T1y1)、(T2x1,T2y1)であったとする。なお、ここでは、L1~L3の各直線が、2個の測定点によって特定される場合について説明したが、3個以上の測定点によって各直線が特定されてもよい。そのようにすることで、より精度の高い直線の特定が可能となる。また、3個以上の測定点によって直線を特定する場合には、例えば、最小二乗法などを用いて直線を特定してもよい。また、M1座標系は、R座標系に対して、(q1,q1)だけ平行移動しており、また角度φ1だけ回転しているとする。すると、M1座標系における座標値(px1,py1)は、同次変換行列PRM1によって次式のように、R座標系における座標値(p,p)に変換される。なお、その同次変換行列PRM1は、q1,q1,φ1を引数として有している。
(p,p,1)=PRM1(px1,py1,1)
【0028】
ここで、同次変換行列PRM1の詳細を明記すると、次式のようになる。
【数1】
【0029】
また、上記のように、R座標系において既知である(T1,T1)、(T2,T2)は、それぞれM1座標系において測定結果から取得された(T1x1,T1y1)、(T2x1,T2y1)に対応することになるため、次式のようになる。
(T1,T1,1)=PRM1(T1x1,T1y1,1)
(T2,T2,1)=PRM1(T2x1,T2y1,1)
【0030】
上式より、q1,q1,φ1に関する4つの方程式が得られるため、例えば、そのうちの3つの方程式を解くことによって、同次変換行列PRM1に含まれるq1,q1,φ1を取得できる。また、q1,q1,φ1を用いることによって、第1の測距センサ12Aに関する本来の取付位置及び角度に関する誤差を取得することもできる。例えば、本来のM1座標系は、R座標系に対して、(A1,A1)だけ平行移動しており、回転の角度は「0」であったとする。すると、例えば、第1の測距センサ12Aの本来の取付位置に関する誤差は、(q1-A1,q1-A1)となり、第1の測距センサ12Aの本来の取付位置に関する誤差は、φ1となる。なお、q1,q1,φ1を取得することによって、その誤差を取得できるため、第1の測距センサ12Aに関する誤差の取得とは、q1,q1,φ1や、同次変換行列PRM1の取得の取得であると考えてもよい。また、本来の取付位置及び角度は、例えば、設計時の取付位置及び角度であってもよい。
【0031】
また、同様のことを、第2の測距センサ12Bの座標系についても行うことができる。具体的には、較正部16は、第2の測距センサ12Bによる測定結果を用いることによって、第2の測距センサ12Bの座標系(x2y2座標系(2次元直交座標系)であり、以下、「M2座標系」と呼ぶこともある。)におけるT1,T2の座標値(T1x2,T1y2)、(T2x2,T2y2)をそれぞれ取得することができる。なお、M2座標系は、R座標系に対して、(q2,q2)だけ平行移動しており、また角度φ2だけ回転しているとする。すると、M2座標系における座標値(px2,py2)は、同次変換行列PRM2によって次式のように、R座標系における座標値(p,p)に変換される。また、その同次変換行列PRM2は、q2,q2,φ2を引数として有している。また、同次変換行列PRM2は、q1,q1,φ1がq2,q2,φ2となった以外は、上記同次変換行列PRM1と同様のものである。
(p,p,1)=PRM2(px2,py2,1)
【0032】
また、上記のように、R座標系において既知である(T1,T1)、(T2,T2)は、それぞれM2座標系において測定結果から取得された(T1x2,T1y2)、(T2x2,T2y2)に対応することになるため、次式のようになる。
(T1,T1,1)=PRM2(T1x2,T1y2,1)
(T2,T2,1)=PRM2(T2x2,T2y2,1)
【0033】
したがって、上記方程式を解くことによって、同次変換行列PRM2に含まれるq2,q2,φ2を取得することができる。また、q2,q2,φ2を用いることによって、第2の測距センサ12Bに関する本来の取付位置及び角度に関する誤差を取得することもできる。なお、この場合にも、q2,q2,φ2を取得することによって、その誤差を取得できるため、第2の測距センサ12Bに関する誤差の取得とは、q2,q2,φ2の取得や、同次変換行列PRM2の取得であると考えてもよい。
【0034】
較正部16は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって測定された測定結果を合わせるための調整を行った上で、それらの調整後の測定点の座標値、例えば、R座標系における測定点の座標値を、障害物検知部13や現在位置取得部14に渡してもよい。具体的には、第1及び第2の測距センサ12A,12Bが、それぞれM1座標系における各測定点の座標値(px1,py1)、M2座標系における各測定点の座標値(px2,py2)を算出するものである場合には、較正部16は、それらの座標値(px1,py1)、(px2,py2)を同次変換行列PRM1、PRM2によってそれぞれ変換することによって、M1,M2座標系における各測定点をR座標系における座標値に変換した上で、障害物検知部13や現在位置取得部14に渡してもよい。そのようにすることで、障害物検知部13や現在位置取得部14は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって測定されたR座標系における位置を受け取ることができるようになる。なお、その場合に、較正部16は、測定点に関するユニーク処理をした上で、その測定点の座標値を障害物検知部13や現在位置取得部14に渡してもよい。例えば、測距の角度範囲が一部重複している場合には、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって、同じ測定点の座標値が取得されることがある。その場合には、較正部16は、一方の座標値を削除することによって、測定点に関するユニーク処理を行ってもよい。測定点が同じであるかどうかの判断では、測定誤差等が考慮されてもよい。また、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果に応じたM1座標系における各測定点の座標値(px1,py1)、M2座標系における各測定点の座標値(px2,py2)が、障害物検知部13や現在位置取得部14によって算出される場合には、較正部16は、その座標値を障害物検知部13や現在位置取得部14から受け取って、R座標系の座標値に変換し、障害物検知部13や現在位置取得部14に戻してもよい。このように、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための調整の処理が、較正部16によって行われてもよい。
【0035】
また、較正部16は、障害物検知部13や現在位置取得部14に、第1及び第2の測距センサ12A,12Bに関する誤差の情報(例えば、取得した同次変換行列PRM1、PRM2や、取得したq1,q1,φ1,q2,q2,φ2、または、それらと本来の取付位置及び角度との誤差など)を渡してもよい。その場合には、障害物検知部13や現在位置取得部14によって、例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによって取得された測定点の位置が、M1,M2座標系からR座標系に変換され、その変換後の位置が用いられてもよい。この場合にも、変換後の測定点に関するユニーク処理が行われてもよい。このように、較正部16は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるために必要な情報(例えば、同次変換行列等)を取得するだけであり、両者を合わせるための調整は、較正部16以外の構成要素によって行われてもよい。
【0036】
上記説明のように、較正部16は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの各測定結果を用いて特定された2個の特徴点T1,T2を用いて較正を行うものである。したがって、基準部材22の2個の2個の特徴点T1,T2の位置を、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いてそれぞれ特定できるようになっていることが好適である。そのため、図4で示される基準部材22の場合には、例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの両方が、直線L1~L3のそれぞれについて、2点以上の測定点の距離を測定できるようになっていることが好適である。
【0037】
また、上記説明では、測距センサ12によって2次元平面における角度と距離が取得される場合について説明したが、測距センサ12によって3次元空間における角度と距離が取得されてもよい。その場合には、3次元の同次変換行列を用いることによって、上記と同様に較正を行うことができる。
【0038】
なお、上記説明では、測定対象が移動体1に装着された基準部材22であり、その基準部材22の移動体1に対する相対的な位置が既知である場合について説明したが、そうでなくてもよい。例えば、図7で示されるように、較正部16は、移動環境に存在する測定対象30を用いて較正を行ってもよい。その移動環境に存在する測定対象30は、例えば、較正のために移動環境に配置されたものであってもよく、または、移動環境にあらかじめ存在する物体を、測定対象30として用いてもよい。ここで、移動体1に対する測定対象30の相対的な位置が既知でない場合(すなわち、上記説明におけるT1,T2の座標値が既知でない場合)であっても、較正部16は、上記説明と同様にして、M1座標系とM2座標系との間での変換を行う同次変換行列を特定することができる。したがって、M1座標系における座標値と、M2座標系における座標値とを相互に変換することができ、例えば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの一方で距離の測定された物体と、他方で距離の測定された物体とが同じものであるかどうかを知ることができるようになる。すなわち、この場合には、各測距センサ12によって測定された測定点に関して、移動体1のローカル座標系における位置を知るための位置合わせ(絶対的な位置合わせ)を行うことはできないが、両測定点が同じ位置かどうかを知るための位置合わせ(相対的な位置合わせ)を行うことはできる。
【0039】
また、上記説明では、基準部材22が、治具本体21を介して移動体1に装着される場合について説明したが、そうでなくてもよい。基準部材22は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの両方によって測定される移動体1上の箇所に、直接、装着されてもよい。その場合には、その基準部材22は、移動体1に対して取り外し可能になっていなくてもよい。そのように、取り外し可能になっていない場合には、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの較正のために基準部材22を移動体1に装着したり、取り外したりする作業が不要になり、較正を行うための作業が低減されることになる。
【0040】
次に、移動体1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)較正部16は、第1の測距センサ12Aに基準部材22に関する測定を行わせる。
【0041】
(ステップS102)較正部16は、第2の測距センサ12Bに基準部材22に関する測定を行わせる。
【0042】
(ステップS103)較正部16は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる基準部材22に関する測定結果を用いて、上記のように、較正を行う。
【0043】
なお、基準部材22が移動体1に着脱可能なものである場合には、移動体1の操作者等は、例えば、ステップS101が実行される前に、基準部材22を移動体1に装着し、ステップS102が実行された後(ステップS103の実行後であってもよい)に、基準部材22を移動体1から取り外してもよい。その基準部材22の移動体1への着脱は、治具20の移動体1への着脱によって行われてもよい。
【0044】
(ステップS104)移動制御部15は、移動を開始するかどうか判断する。そして、移動を開始する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、移動を開始するまでステップS104の処理を繰り返す。なお、移動制御部15は、例えば、移動経路に沿った自律的な移動を開始する場合に、移動を開始すると判断してもよい。
【0045】
(ステップS105)移動制御部15は、移動体1の移動の制御を行う。この移動の制御は、例えば、目的地に向かう自律的な移動の制御である。このステップS105の移動の制御が繰り返して行われることによって、移動体1は、出発地から目的地に到達することになる。
【0046】
(ステップS106)障害物検知部13は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる測定結果を用いて、障害物を検知したかどうか判断する。そして、障害物を検知した場合には、ステップS107に進み、そうでない場合には、ステップS105に戻る。なお、障害物の検知は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果に関する調整後の情報を用いて行われるものとする。
【0047】
(ステップS107)移動制御部15は、障害物の検知に応じた移動制御を行う。その移動制御は、例えば、移動体1の減速や停止であってもよく、障害物を迂回するように移動体1を移動させることであってもよい。障害物の検知に応じて移動体1を停止させた場合には、移動制御部15は、障害物が検知されなくなるまで停止を継続し、障害物が検知されなくなってから、ステップS105に戻って移動を再開してもよい。また、障害物の検知に応じて移動体1を減速させた場合には、移動制御部15は、移動速度の上限を減速後のものに制限した上で、ステップS105に戻って移動を継続してもよい。その場合には、障害物が検知されなくなったとき(ステップS106でNOと判断されたとき)に、移動速度の上限の制限を解除してもよい。また、障害物の検知に応じて障害物を迂回するように移動体1を移動させる場合には、移動制御部15は、障害物検知部13から受け取った障害物の位置を用いて、その位置を迂回する経路を取得し、その迂回の経路に応じた移動を行うことによって障害物が検知されなくなった後に、ステップS105に戻って目的地までの移動を継続してもよい。
【0048】
なお、図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、図2のフローチャートには含まれていないが、現在位置取得部14による現在位置の取得は、繰り返して行われているものとする。また、図2のフローチャートにおいて、移動体1が目的地に到達したこと、または電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0049】
以上のように、本実施の形態による移動体1によれば、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための較正を自動的に行うことができるようになる。したがって、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を合わせるための調整を手動で行う必要がなくなり、利便性が向上することになる。また、基準部材22が移動体1に対して着脱可能なものである場合には、較正を行うときに、基準部材22を移動体1に装着し、移動体1が移動するときに、基準部材22を移動体1から基準部材22を取り外すようにしてもよい。そのようにして、基準部材22が移動時の測距を妨げないようにすることができる。また、基準部材22が移動体1に対して取り外し可能ではなく、移動体1に装着されたままになる場合には、基準部材22を着脱する作業が不要になるというメリットはあるが、その基準部材22の存在する範囲については、第1及び第2の測距センサ12A,12Bによる障害物検知や自己位置同定のための測距を行うことができないことになる。その観点からは、基準部材22が、移動体1に着脱可能となっていることが好適である。
【0050】
なお、上記説明では、基準部材が1個である場合について説明したが、そうでなくてもよい。2個の基準部材を用いて、第1及び第2の測距センサ12A,12Bに関する較正が行われてもよい。そのように、2個の基準部材を用いて第1及び第2の測距センサ12A,12Bに関する較正が行われる場合には、例えば、図8で示されるように、第1の基準部材22Aは、第1の測距センサ12Aの測定範囲に存在するが、第2の測距センサ12Bの測定範囲には存在せず、第2の基準部材22Bは、第2の測距センサ12Bの測定範囲に存在するが、第1の測距センサ12Aの測定範囲には存在しないようになっていてもよい。この場合には、第1及び第2の測距センサ12A,12Bは、それぞれ異なる基準部材22A,22Bについて較正用の測定を行ってもよい。すなわち、第1の測距センサ12Aは、第1の基準部材22Aについて測定を行い、第2の測距センサ12Bは、第2の基準部材22Bについて測定を行ってもよい。したがって、この場合には、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの両方によって測定される箇所に基準部材22A,22Bが存在しなくてもよいことになる。この場合であっても、第1及び第2の基準部材22A,22Bは、治具本体21を介して移動体1に装着されるものであるため、第1及び第2の基準部材22A,22Bの特徴点のR座標系における位置は既知であり、その特徴点の座標値を用いることによって、上記と同様にして、較正を行うことができる。また、相対的な位置関係の分かっている2個の測定対象が移動環境に存在する場合にも、同様にして、第1及び第2の測距センサ12A,12Bは、それぞれ異なる測定対象について較正用の測定を行うことにより、両測距センサ12に関する相対的な位置合わせを行うこともできる。
【0051】
また、本実施の形態による現在位置取得部14は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いて現在位置を取得してもよく、または、そうでなくてもよい。上記のように、現在位置取得部14は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いない方法によって移動体1の現在位置を取得してもよい。また、移動制御に現在位置が用いられない場合には、移動体1は、現在位置取得部14を備えていなくてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、障害物検知部13が第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いて障害物を検知する場合について説明したが、そうでなくてもよい。障害物検知部13は、第1及び第2の測距センサ12A,12Bの測定結果を用いないで障害物の検知を行ってもよい。その場合には、障害物検知部13は、例えば、接触センサを用いて障害物の検知を行ってもよい。また、障害物の検知を行わない場合には、移動体1は、障害物検知部13を備えていなくてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、移動体1が2個の測距センサ12を有する場合について説明したが、そうでなくてもよい。移動体1は、3個以上の測距センサ12を有していてもよい。その場合にも、上記と同様にして、その3個以上の測距センサ12の測定結果を合わせるための較正が較正部16によって行われることが好適である。
【0054】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0056】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0058】
また、上記実施の形態において、移動体1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0059】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。また、そのプログラムは、サーバなどからダウンロードされることによって実行されてもよく、所定の記録媒体(例えば、光ディスクや磁気ディスク、半導体メモリなど)に記録されたプログラムが読み出されることによって実行されてもよい。また、このプログラムは、プログラムプロダクトを構成するプログラムとして用いられてもよい。また、そのプログラムを実行するコンピュータは、単数であってもよく、複数であってもよい。すなわち、集中処理を行ってもよく、または分散処理を行ってもよい。
【0060】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上より、本発明による移動体によれば、2個の測距センサに関する較正を自動的に行うことができるという効果が得られ、自律的に移動する移動体として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 移動体
11 移動機構
12A 第1の測距センサ
12B 第2の測距センサ
13 障害物検知部
14 現在位置取得部
15 移動制御部
16 較正部
22 基準部材
22A 第1の基準部材
22B 第2の基準部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8