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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220406BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017248283
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2019114130
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】坂原 洋人
(72)【発明者】
【氏名】阪下 英知
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律的に移動する移動体であって、
移動環境に存在するマーカの撮影画像を取得する撮影部と、
前記撮影画像において認識したマーカを用いて、移動環境に存在するマーカに対する前記撮影部の相対的な位置を取得することによって前記移動体の位置を取得する位置取得部と、
前記移動体を移動させる移動機構と、
前記位置取得部によって取得された位置を用いて、前記マーカに対してあらかじめ決められた位置であり、障害物の存在していない位置である移動先に移動するように前記移動機構を制御する移動制御部と、
複数方向に関して周囲の物体までの距離を測定する測距センサと、
前記位置取得部によって取得された位置を用いた前記移動制御部による前記移動先への移動制御が行われる前に、前記測距センサによる測定結果を用いて、当該移動先に障害物が存在するかどうか判断する判断部と、を備え、
前記移動制御部は、前記判断部によって前記移動先に障害物が存在しないと判断された場合に、当該移動先への移動制御を行い、前記判断部によって前記移動先に障害物が存在すると判断された場合に、当該移動先への移動制御を行わない、移動体。
【請求項2】
前記移動機構は、前記移動体を全方向に移動できるものである、請求項1記載の移動体。
【請求項3】
前記移動制御部は、前記判断部によって前記移動先に障害物が存在すると判断された場合には、前記移動機構を制御して前記マーカと前記撮影部との相対的な位置関係を変更させ、当該変更後に取得された撮影画像を用いて前記位置取得部によって取得された位置を用いた移動制御を行う、請求項1または請求項2記載の移動体。
【請求項4】
前記マーカと前記撮影部との相対的な位置関係を変更させるための制御は、あらかじめ決められた移動に関する制御である、請求項3記載の移動体。
【請求項5】
前記マーカと前記撮影部との相対的な位置関係を変更させるための制御は、ランダムな移動に関する制御である、請求項3記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律的に移動する移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の移動体において、移動環境に配置されたマーカ(マーク)を撮影し、その撮影したマーカを用いることによって、移動体のマーカに対する位置を取得することが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-207942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、逆光などの理由によってマーカを適切に撮影できなかった場合には、マーカを用いて取得した移動体の位置が不正確なものとなる。そのような場合には、マーカを用いて取得した不正確な位置に応じて移動制御を行うことによって、移動体が想定外の移動を行うことになるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、マーカを用いて取得された位置が不正確であった場合でも、移動体の移動に関する安全性を高めることができる移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による移動体は、自律的に移動する移動体であって、マーカの撮影画像を取得する撮影部と、撮影画像において認識したマーカを用いて、移動体の位置を取得する位置取得部と、移動体を移動させる移動機構と、位置取得部によって取得された位置を用いて、移動機構を制御する移動制御部と、複数方向に関して周囲の物体までの距離を測定する測距センサと、位置取得部によって取得された位置を用いた移動制御部による移動制御が行われる前に、測距センサによる測定結果を用いて、移動制御に応じた移動先に障害物が存在するかどうか判断する判断部と、を備え、移動制御部は、判断部によって移動先に障害物が存在しないと判断された場合に、移動先への移動制御を行い、判断部によって前記移動先に障害物が存在すると判断された場合に、移動先への移動制御を行わない、ものである。
このような構成により、マーカを用いて取得された位置に応じた移動を行う際に、移動先に障害物が存在するかどうかの判断結果に応じて移動を行うことになる。そのため、例えば、マーカを適切に撮影できなかったことにより、マーカを用いて取得された位置が不正確であった場合にも、移動先において移動体が障害物に衝突しないようにすることができ、安全性を高めることができる。
【0007】
また、本発明による移動体では、移動機構は、移動体を全方向に移動できるものであってもよい。
このような構成により、マーカを用いた移動の制御をより適切に行うことができるようになる。
【0008】
また、本発明による移動体では、移動制御部は、判断部によって移動先に障害物が存在すると判断された場合には、移動機構を制御してマーカと前記撮影部との相対的な位置関係を変更させ、変更後に取得された撮影画像を用いて位置取得部によって取得された位置を用いた移動制御を行ってもよい。
このような構成により、マーカを異なる位置や方向から再撮影することによって、マーカを用いた適切な位置を取得することができるようになる。
【0009】
また、本発明による移動体では、マーカと撮影部との相対的な位置関係を変更させるための制御は、あらかじめ決められた移動に関する制御であってもよく、ランダムな移動に関する制御であってもよい。
このような構成により、あらかじめ決められたように移動体を移動させること、または、ランダムに移動体を移動させることによって、マーカの撮影位置や撮影方向を変更することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明による移動体によれば、マーカを用いて取得された位置が不正確であったとしても、移動先において移動体が障害物に衝突しないようにすることができ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による移動体の構成を示すブロック図
図2】同実施の形態による移動体の動作を示すフローチャート
図3】同実施の形態における配置されたマーカと移動体とを示す模式図
図4】同実施の形態におけるマーカの認識について説明するための図
図5A】同実施の形態における移動制御時の判断処理について説明するための図
図5B】同実施の形態における移動制御時の判断処理について説明するための図
図6A】同実施の形態における測距の一例を示す図
図6B】同実施の形態における測距の一例を示す図
図7A】同実施の形態における再撮影時の移動制御について説明するための図
図7B】同実施の形態における再撮影時の移動制御について説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による移動体について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による移動体は、マーカを撮影して取得した位置を用いて移動制御を行う際に、移動先に障害物が存在するかどうかを事前に判断し、その判断結果に応じて移動を行うものである。
【0013】
図1は、本実施の形態による移動体1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による移動体1は、自律的に移動するものであり、移動機構11と、撮影部12と、位置取得部13と、測距センサ14と、判断部15と、現在位置取得部16と、移動制御部17とを備える。なお、移動体1が自律的に移動するとは、移動体1がユーザ等から受け付ける操作指示に応じて移動するのではなく、自らの判断によって目的地に移動することであってもよい。その目的地は、例えば、手動で決められたものであってもよく、または、自動的に決定されたものであってもよい。また、その目的地までの移動は、例えば、移動経路に沿って行われてもよく、または、そうでなくてもよい。また、自らの判断によって目的地に移動するとは、例えば、進行方向、移動や停止などを移動体1が自ら判断することによって、目的地まで移動することであってもよい。また、例えば、移動体1が、障害物に衝突しないように移動することであってもよい。移動体1は、例えば、台車であってもよく、移動するロボットであってもよい。ロボットは、例えば、エンターテインメントロボットであってもよく、監視ロボットであってもよく、搬送ロボットであってもよく、清掃ロボットであってもよく、動画や静止画を撮影するロボットであってもよく、その他のロボットであってもよい。
【0014】
移動機構11は、移動体1を移動させる。移動機構11は、例えば、移動体1を全方向に移動できるものであってもよく、または、そうでなくてもよい。本実施の形態では、移動機構11が、移動体1を全方向に移動できるものである場合について主に説明する。全方向に移動できるとは、任意の方向に移動できることである。移動機構11は、例えば、走行部(例えば、車輪など)と、その走行部を駆動する駆動手段(例えば、モータやエンジンなど)とを有していてもよい。なお、移動機構11が、移動体1を全方向に移動できるものである場合には、その走行部は、全方向移動車輪(例えば、オムニホイール、メカナムホイールなど)であってもよい。全方向移動車輪を有し、全方向に移動可能な移動体については、例えば、特開2017-128187号公報を参照されたい。この移動機構11としては、公知のものを用いることができるため、その詳細な説明を省略する。
【0015】
撮影部12は、移動環境に存在するマーカを撮影して撮影画像を取得する。撮影部12は、例えば、CCDやCMOSなどのイメージセンサによって実現することができる。また、撮影部12は、撮影対象からの光をイメージセンサの受光面に結像させるための光学系を含んでいてもよい。また、撮影画像のデータ形式等は問わない。撮影部12は、移動体1に固定されているため、移動体1の移動に応じて撮影対象が異なることになる。したがって、撮影部12は、例えば、連続的に撮影を行い、撮影範囲にマーカが含まれる場合に、そのマーカを含む撮影画像が位置取得部13等によって用いられてもよく、または、あらかじめ決められたマーカの撮影位置に移動した場合に、マーカを含む撮影画像を取得してもよい。なお、撮影範囲にマーカが含まれるかどうかの判断は、例えば、マーカのパターンマッチングによって行ってもよく、その他の方法によって行ってもよい。図3は、移動体1の撮影部12によってマーカ5が撮影されている状況を示す模式図である。図3で示されるように、撮影部12の撮影範囲にマーカ5が存在することにより、撮影部12は、マーカ5の撮影画像を取得することができる。なお、図3では、マーカ5が表示板7に表示されている場合について示しているが、マーカ5は、例えば、壁などに配置されていてもよい。
【0016】
マーカは、視覚的に認識可能な2次元の図形であり、移動体1の位置決めのために移動環境に配置されている。例えば、移動体1が給電位置や、搬送対象の積み降ろし位置に正確に移動できるようにするため、マーカが配置されていてもよい。マーカの形状(図形の形状)は問わないが、例えば、正方形状や、長方形状、その他の多角形状、円形状、楕円形状、また、それらの組み合わせであってもよい。なお、その形状は、特定可能な3以上の特徴点を有していることが好適である。また、その特徴点の少なくとも3点については、特徴点間のサイズが既知であることが好適である。そのサイズは、マーカと、撮影部12との相対的な位置関係を取得するのに必要であるため、移動体1の図示しない記録媒体において保持されており、位置取得部13等がアクセス可能になっていることが好適である。マーカは、例えば、紙やフィルム等に印刷され、移動環境に配置される。移動体1の移動環境に配置されるマーカのワールド座標系における位置(例えば、ワールド座標系とマーカの座標系との相対的な関係(平行移動、回転に関する情報)であってもよい。)は分かっていてもよく、または、そうでなくてもよい。前者の場合には、マーカの撮影画像を用いることによって、移動体1のワールド座標系における位置を取得することができるようになり、後者の場合には、マーカの撮影画像を用いることによって、移動体1のマーカに対する相対的な位置(例えば、マーカの座標系における位置など)を取得することができるようになる。したがって、マーカのワールド座標系における位置が分からない場合には、移動環境に配置されているマーカに対する相対的な位置によって、位置決めを行うことになるため、移動体1の目的とする位置決め場所に対して、あらかじめ決められた相対的な位置となるように、そのマーカが配置されることが好適である。
【0017】
位置取得部13は、撮影画像において認識したマーカを用いて、移動体1の位置を取得する。その位置は、マーカに対する相対的な位置であってもよく、ワールド座標系における位置であってもよい。ここで、位置取得部13がマーカの撮影画像を用いて直接的に得ることができるのは、移動体1のマーカに対する相対的な位置(例えば、マーカ座標系における移動体1の位置など)である。一方、マーカのワールド座標系における位置が既知である場合には、位置取得部13は、その相対的な位置と、ワールド座標系におけるマーカの位置とを用いて、移動体1のワールド座標系における位置をも取得できることになる。位置取得部13が取得する位置は、角度(姿勢)を含まないものであってもよく、または角度を含んでいてもよい。その角度とは、マーカの面に対する相対的な角度であってもよく、ワールド座標系における角度であってもよい。本実施の形態では、位置取得部13によって取得される位置に、角度も含まれる場合について主に説明する。具体的な位置の取得方法については、後述する。
【0018】
ここで、位置取得部13によって不適切な位置の取得が行われる状況について、図4を用いて具体的に説明する。図4(a)は、マーカ5の適切な撮影画像を示す図であり、図4(b)は、マーカ5の撮影画像において適切に認識されたマーカ6を示す図である。図4(a)の撮影画像においてマーカを認識した場合には、図4(b)で示されるように、適切に認識することができる。一方、例えば、露出がオーバーになっており、マーカ5の右側が白飛びしているような場合には、図4(c)で示されるマーカ6のように、誤って認識されることもある。そのように、誤認識されたマーカを用いて位置を取得すると、マーカ5に対する移動体1の誤った位置が取得されることになり、その位置を用いた移動制御は、不適切なものとなる。
【0019】
測距センサ14は、複数方向に関して周囲の物体までの距離を測定する。測距センサ14は、例えば、レーザセンサや、超音波センサ、マイクロ波を用いた距離センサ、ステレオカメラによって撮影されたステレオ画像を用いた距離センサなどであってもよい。そのレーザセンサは、レーザレンジセンサ(レーザレンジスキャナ)であってもよい。なお、それらの測距センサについてはすでに公知であり、それらの説明を省略する。本実施の形態では、測距センサ14がレーザレンジセンサである場合について主に説明する。また、移動体1は、1個のレーザレンジセンサを有していてもよく、または、2個以上のレーザレンジセンサを有していてもよい。後者の場合には、2個以上のレーザレンジセンサによって、全方向がカバーされてもよい。また、測距センサ14が超音波センサや、マイクロ波を用いた距離センサなどである場合に、測距センサ14の測距方向を回転させることによって複数方向の距離を測定してもよく、複数方向ごとに配置された複数の測距センサ14を用いて複数方向の距離を測定してもよい。測距センサ14は、所定範囲の方向に関して距離を測定するものであってもよく、全方向に関して距離を測定するものであってもよい。例えば、測距センサ14は、移動体1の前方のみの範囲について、複数方向の距離を測定するものであってもよい。また、例えば、測距センサ14は、全周囲(360度)について、あらかじめ決められた角度間隔で複数方向の距離を測定するものであってもよい。その角度間隔は、例えば、1度間隔や2度間隔、5度間隔などのように一定であってもよい。測距センサ14から得られる情報は、例えば、移動体1のある向きを基準とした複数の方位角のそれぞれに関する周辺の物体までの距離であってもよい。その距離を用いることによって、移動体1のローカル座標系において、移動体1の周囲にどのような物体が存在するのかを知ることができるようになる。
【0020】
判断部15は、位置取得部13によって取得された位置を用いた移動制御部17による移動制御が行われる前に、測距センサ14による測定結果を用いて、移動制御に応じた移動先に障害物が存在するかどうか判断する。具体的には、判断部15は、その判断処理を行う際に、移動制御部17から、移動先の位置を示す情報を受け取り、その情報を用いて、移動先における移動体1の位置を特定する。その移動先の位置を示す情報は、移動体1の移動先の座標値であってもよい。その座標値は、例えば、移動先における移動体1の輪郭を示すものであってもよく、または、移動体1の代表点の位置と移動体1の方向(角度)とを示すものであってもよい。後者の場合には、判断部15は、移動体1の輪郭を示す情報を用いて、移動先における移動体1の輪郭の位置を特定することが好適である。次に、判断部15は、測距センサ14による測定結果を用いて、障害物の位置を特定する。その障害物の位置は、障害物の輪郭の位置を示すものであってもよい。そして、判断部15は、移動先において移動体1が障害物に衝突するかどうかを判断する。その判断は、例えば、移動先における移動体1の輪郭の位置と、障害物の輪郭の位置とに重なりがあるかどうかによって判断されてもよい。すなわち、判断部15は、両者に重なりがある場合には、移動体1が障害物に衝突すると判断し、両者に重なりがない場合には、移動体1が障害物に衝突しないと判断してもよい。なお、判断部15は、その判断時に、移動先の移動体1の外縁を膨張させたものを、移動体1の移動先における輪郭として用いてもよく、移動誤差を考慮して衝突するかどうかを判断してもよい。後者の場合には、判断部15は、例えば、移動先における移動体1の輪郭の位置と、障害物の輪郭の位置とが移動誤差以下の距離しか離れていないときに、両者は衝突すると判断し、両者が移動誤差を超えて離れているときに、両者は衝突しないと判断してもよい。
【0021】
現在位置取得部16は、移動体1の現在位置を、マーカを用いないで取得する。現在位置の取得は、例えば、無線通信を用いて行われてもよく、周囲の物体までの距離の測定結果を用いて行われてもよく、周囲の画像を撮影することによって行われてもよく、現在位置を取得できるその他の手段を用いてなされてもよい。無線通信を用いて現在位置を取得する方法としては、例えば、GPS(Global Positioning System)を用いる方法や、屋内GPSを用いる方法、最寄りの無線基地局を用いる方法などが知られている。また、例えば、周囲の物体までの距離の測定結果を用いたり、周囲の画像を撮影したりすることによって現在位置を取得する方法としては、例えば、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)などによって知られている方法を用いてもよい。周囲の物体までの距離の測定結果としては、例えば、測距センサ14の測定結果を用いてもよい。また、あらかじめ作成された地図(例えば、周囲の物体までの距離の測定結果や撮影画像を有する地図など)が記憶されている場合には、現在位置取得部16は、地図を用いて、周囲の物体までの距離の測定結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよく、周囲の画像を撮影し、地図を用いて、その撮影結果に対応する位置を特定することによって現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部16は、例えば、自律航法装置を用いて現在位置を取得してもよい。また、現在位置取得部16は、移動体1の向き(方向)を含む現在位置を取得することが好適である。その方向は、例えば、北を0度として、時計回りに測定された方位角によって示されてもよく、その他の方向を示す情報によって示されてもよい。その向きは、電子コンパスや地磁気センサによって取得されてもよい。
【0022】
なお、位置取得部13は、撮影部12によってマーカが撮影された際にのみ、位置を取得できるものである。したがって、移動体1がマーカの存在しない箇所を移動している場合には、位置取得部13による位置の取得を行うことはできないため、移動体1は、マーカの撮影以外の方法によって移動体1の現在位置を取得する現在位置取得部16を備えていることが好適である。
【0023】
移動制御部17は、移動機構11を制御することによって、移動体1の移動を制御する。移動の制御は、移動体1の移動の向きや、移動の開始・停止などの制御であってもよい。例えば、移動経路が設定されている場合には、移動制御部17は、移動体1がその移動経路に沿って移動するように、移動機構11を制御してもよい。より具体的には、移動制御部17は、現在位置取得部16によって取得される現在位置が、その移動経路に沿ったものになるように、移動機構11を制御してもよい。また、移動制御部17は、地図を用いて、移動の制御を行ってもよい。その場合には、移動体1は、地図が記憶される記憶部を備えていてもよい。
【0024】
また、移動制御部17は、マーカを用いて取得された位置、すなわち位置取得部13によって取得された位置を用いて、移動機構11を制御する。移動制御部17は、位置取得部13によって取得された位置を用いて、移動体1が、所定の位置となるように移動させてもよい。具体的には、移動制御部17は、マーカを用いて取得された位置により、移動体1を給電位置や、搬送対象の積み降ろし位置などに移動させてもよい。通常、現在位置取得部16によって取得された位置よりも、マーカを用いて取得された位置の方が高い精度になる。したがって、移動制御部17は、高い精度の要求される移動については、マーカを用いて取得された位置を用いて行ってもよい。例えば、エレベータのカゴへの出入りなども、エレベータのカゴ内やエレベータホールに配置されたマーカを用いて行われてもよい。例えば、移動制御部17は、マーカの存在する位置までは、現在位置取得部16によって取得された現在位置を用いた移動制御を行い、撮影部12によってマーカが撮影された後は、マーカを用いて取得された位置を用いた移動制御を行ってもよい。なお、マーカを用いた移動制御は、すでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0025】
なお、移動制御部17は、マーカを用いて取得された位置を用いた移動制御を行う前に、判断部15によって移動先に障害物が存在しないと判断された場合に、その移動先への移動制御を行い、判断部15によって移動先に障害物が存在すると判断された場合に、その移動先への移動制御を行わない。このようにすることで、仮にマーカが誤認識され、その誤認識されたマーカを用いて不適切な位置の取得が行われたとしても、移動体1が障害物に衝突することを避けることができる。なお、移動先は、例えば、マーカを用いた位置決めを行う位置であってもよい。その位置は、マーカに対して相対的に決まる位置であるため、移動制御部17は、マーカを用いて取得された移動体1の位置を用いることによって、その移動先の位置を特定することができる。その移動先の特定は、例えば、移動体1のローカル座標系において行われてもよく、他の座標系において行われてもよい。
【0026】
また、移動制御部17は、判断部15によって移動先に障害物が存在すると判断された場合には、移動機構11を制御してマーカと撮影部12との相対的な位置関係を変更させ、その変更後に取得された撮影画像を用いて位置取得部13によって取得された位置を用いた移動制御を行ってもよい。マーカと撮影部12との相対的な位置関係の変更は、例えば、撮影位置の変更であってもよく、撮影方向の変更であってもよく、または、その両方であってもよい。なお、その再撮影に応じて取得された位置を用いた移動制御においても、移動制御部17は、上記のように、判断部15による判断結果に応じて移動制御を行うものとする。すなわち、再撮影に応じて取得された位置を用いた移動制御における移動先にも障害物が存在すると判断された場合には、その移動先への移動は行われないことになる。そのように、再撮影を行っても移動先への移動制御を行えない場合には、移動制御部17は、再度、マーカと撮影部12との相対的な位置関係を変更させてもよい。このように、マーカと撮影部12との相対的な位置関係の変更と、マーカの撮影とは、移動体1が、移動先に移動できるようになるまで繰り返されてもよい。なお、マーカとの位置関係の変更と、再撮影とをあらかじめ決められた回数だけ繰り返しても、移動先に障害物が存在しないと判断されない場合には、移動制御部17は、異常が発生しているとして、移動制御を中止してもよい。
【0027】
移動制御部17が、マーカと撮影部12との相対的な位置関係を変更させるための制御は、例えば、あらかじめ決められた移動に関する制御であってもよく、または、ランダムな移動に関する制御であってもよい。その移動に関する制御は、上記のように、移動体1の位置及び/または方向の変更であってもよい。移動制御部17が、あらかじめ決められた移動に関する制御を行う場合には、例えば、移動体1の移動の順序が、あらかじめ決められていてもよい。例えば、1回目の再撮影時には、初めの撮影場所における移動体1のローカル座標系(2次元直交座標系(xy座標系)とし、そのx軸とのなす角度をωとする。)において、(x,y,ω)=(a101,b101,c101)の位置及び方向となるように移動し、2回目の再撮影時には、1回目の再撮影時の撮影場所における移動体1のローカル座標系において、(x,y,ω)=(a102,b102,c102)の位置及び方向となるように移動する、というように再撮影の回数ごとに、移動先の位置や方向が決められていてもよい。そして、移動制御部17は、それらが記憶されている記録媒体から位置や方向を読み出して、それに応じた移動を行ってもよい。また、ランダムな移動に関する制御が行われる場合には、再撮影時の位置や方向がランダムに決定されることになるが、その際にも、例えば、初めの撮影位置及び撮影方向に対してあらかじめ決められた範囲内において、再撮影時の移動体1の位置や方向がランダムに決定されてもよい。なお、マーカとの相対的な位置関係が変更された後であっても、その位置及び方向で撮影部12が撮影を行うことによって、マーカが撮影されるようになっていることが好適である。その変更は、マーカの再撮影のために行われるものだからである。また、再撮影時の位置や方向に移動する際にも、移動体1が障害物に衝突しないようにすることが好適である。そのため、例えば、移動制御部17は、再撮影時の移動についても、移動先に障害物が存在するかどうかの判断部15による判断結果に応じて移動を行ってもよく、または、図示しない接触センサ等を用いた障害物検知を行いながら、低速で再撮影時の移動先に移動するようにしてもよい。
【0028】
次に、マーカを用いた位置の取得について説明する。ここで、撮影部12のローカル座標系をCとし、マーカ5のローカル座標系をCとする。また、ある点に関して、撮影部12の座標系Cにおける座標値を(x,y,z)=(pCx,pCy,pCz)とし、マーカ5の座標系Cにおける座標値を(x,y,z)=(pMx,pMy,pMz)とすると、両座標値は、両座標系間で座標値を変換する同次変換行列PCMを用いて次式のように関連づけられることになる。なお、Tは、転置を示している。
(pCx,pCy,pCz,1)=PCM(pMx,pMy,pMz,1)
【0029】
上式の同次変換行列PCMには、引数q,q,q,θ,φ,ψが含まれており、それらは、撮影部12の座標系Cに対するマーカ5の座標系Cの平行移動(q,q,q)と回転(θ,φ,ψ)とを示すものである。なお、上記のように、マーカの3点の特徴点間のサイズが既知であるとすると、そのサイズ(特徴点間の距離)を用いることによって、同次変換行列PCMに含まれる各引数を求められることが知られており、同次変換行列PCMを特定することができる。このようにして、マーカを撮影することにより、同次変換行列PCMを算出でき、撮影部12の座標系Cとマーカ5の座標系Cとの関係、すなわち、マーカ5に対する撮影部12の相対的な位置を取得することができる。なお、移動体1のローカル座標系において、撮影部12の向きを含む位置は既知である。したがって、撮影部12とマーカ5との位置関係が分かれば、移動体1とマーカ5との位置関係も分かることになる。このようにして、移動体1は、マーカ5に対する移動体1の位置を取得することができる。なお、マーカ5を誤認識した場合には、同次変換行列PCMの各引数として、誤った値が算出されることになり、結果として、それを用いて取得される移動体1の位置(例えば、マーカ座標系における移動体1の位置)が、不正確なものとなる。
【0030】
また、マーカ5のワールド座標系における位置が既知である場合には、移動体1とマーカ5との相対的な位置関係と、マーカ5のワールド座標系における位置とを用いることによって、移動体1のワールド座標系における位置をも取得できることは言うまでもない。
【0031】
また、本実施の形態では、マーカを用いた位置の取得に同次変換行列を用いる場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。同次変換行列を用いない方法によっても、マーカを用いた位置の取得を行うことができることは言うまでもない。
【0032】
次に、移動体1の動作について図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)移動制御部17は、移動体1の移動の制御を行う。この移動の制御は、例えば、目的地に向かう自律的な移動の制御である。このステップS101の移動の制御が繰り返して行われることによって、移動体1は、出発地から目的地に向けて移動することになる。
【0033】
(ステップS102)移動制御部17は、マーカを用いた位置決めを行うかどうか判断する。そして、マーカを用いた位置決めを行う場合には、ステップS103に進み、そうでない場合には、ステップS101に戻る。なお、移動制御部17は、例えば、現在位置取得部16によって取得された現在位置によって、移動体1がマーカを撮影できる領域に入ったことが分かった場合に、マーカを用いた位置決めを行うと判断してもよい。その場合には、例えば、マーカを撮影できる領域があらかじめ登録されていてもよい。また、例えば、ステップS101での移動制御中にも撮影部12による撮影が行われている場合には、移動制御部17は、その撮影画像にマーカが含まれるようになったときに、マーカを用いた位置決めを行うと判断してもよい。
【0034】
(ステップS103)撮影部12は、マーカの撮影画像を取得する。取得された撮影画像は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
【0035】
(ステップS104)位置取得部13は、ステップS103で取得された撮影画像を用いて移動体1の位置を取得する。
【0036】
(ステップS105)移動制御部17は、ステップS104で取得された位置を用いて、移動体1の移動先の位置を特定する。例えば、ステップS103で撮影されたマーカに対する位置決めを行う場合には、そのマーカとあらかじめ決められた位置関係となる位置が移動先となってもよい。また、移動体1が目的地に向けて移動している際には、位置取得部13によって取得された位置を基準として特定された目的地の位置が、移動先となってもよい。本実施の形態では、この移動先が、移動体1のローカル座標系において特定される場合について主に説明するが、他の座標系において特定されてもよい。
【0037】
(ステップS106)測距センサ14は、移動体1の周囲の物体までの距離を測定する。
【0038】
(ステップS107)判断部15は、移動体1の移動先に、障害物が存在するかどうかを、ステップS106の測距結果を用いて判断する。そして、移動先に障害物が存在する場合には、ステップS109に進み、障害物が存在しない場合には、ステップS108に進む。
【0039】
(ステップS108)移動制御部17は、移動体1をステップS105で特定した移動先に移動させることによって、移動体1の位置決めを行う。なお、その移動先は、ステップS104で取得された位置を用いて行われるため、移動制御部17は、ステップS104で取得された位置を間接的に用いて移動制御を行うことになる。そして、移動体1の移動に関する一連の処理は終了となる。なお、ステップS108において、その位置決めのための移動途中においても、撮影画像の取得と、取得された撮影画像において認識されたマーカを用いた移動制御を繰り返して行ってもよい。その場合においても、撮影ごとに判断部15による判断を行い、その判断結果に応じて移動制御や再撮影を行うようにしてもよい。
【0040】
(ステップS109)移動制御部17は、マーカと撮影部12との相対的な位置関係が変更されるように、移動機構11を制御する。そして、ステップS103に戻る。なお、ステップS109の制御が複数回行われる場合、すなわち、2回以上の再撮影が行われる場合には、その再撮影時のマーカと撮影部12との相対的な位置関係は、それまでの撮影時の位置関係と異なっていることが好適である。
【0041】
なお、図2のフローチャートにおける処理の順序は一例であり、同様の結果を得られるのであれば、各ステップの順序を変更してもよい。また、図2のフローチャートには含まれていないが、現在位置取得部16による現在位置の取得は、マーカが撮影されるまでは繰り返して行われているものとする。また、撮影部12によってマーカの撮影が行われている際(ステップS103)には、移動体1は、停止していることが好適である。また、図2のフローチャートでは、位置取得部13によって取得された位置を用いて、移動体1の位置決めが行われる場合について説明したが、その位置を用いて、位置決め以外の移動体1の移動制御が行われてもよい。
【0042】
次に、本実施の形態による移動体1の動作について、具体例を用いて説明する。この具体例では、移動体1が架台に進入する際の移動について説明する。図5Aで示されるように、架台9は、上面視が略コの字状になっており、その内側の突き当たり部分に、表示板7に表示されているマーカ5が配置されている。そのマーカ5は、移動体1が架台9に進入する際の位置決めに用いられるものである。なお、架台9の上部には図示しないパレットを載置できるようになっており、架台9の内部に進入した移動体1が図示しないリフタを作動させて、搬送対象の載置されているパレットを上方に持ち上げることによって、搬送対象を移動体1に載せることができる。また、搬送先の架台において、移動体1がリフタを作動させて、パレットを降下させることによって、パレットが架台に載置され、搬送対象を降ろすことができる。
【0043】
まず、移動体1は、現在位置取得部16によって取得された現在位置を用いて、図5Aで示される架台9の前方の位置まで移動したとする(ステップS101)。その位置は、あらかじめ移動体1において設定されていてもよい。その位置に到着すると、移動制御部17は、マーカを用いた位置決めを行うと判断する(ステップS102)。そして、撮影部12は、マーカ5を撮影して撮影画像を取得し、そのマーカ5の撮影画像を位置取得部13に渡す(ステップS103)。位置取得部13は、その撮影画像においてマーカ5を認識し、その認識したマーカを用いて移動体1の位置を取得し、その位置を移動制御部17に渡す(ステップS104)。なお、この具体例では、その取得された移動体1の位置は、マーカ座標系における位置であるとする。この場合には、撮影画像においてマーカ5が正確に認識され、それに応じて正確な位置が取得されたとする。すると、移動制御部17は、その位置を用いて、マーカ5との位置決めを行う位置である移動先の位置及び角度(x,y,ω)=(a1,b1,c1)を特定する(ステップS105)。具体的には、マーカ座標系における位置決めを行う位置(ここでは、角度を含むとする)は、図示しない記録媒体で記憶されているものとする。そして、移動制御部17は、それを読み出し、位置取得部13によって取得された位置から、位置決めを行う位置までのマーカ座標系における移動量(平行移動及び回転)を取得する。そして、移動制御部17は、それを移動体1のローカル座標系に変換することによって移動先の位置及び角度(a1,b1,c1)を取得することができる。
【0044】
その後、測距センサ14は、移動体1の周囲の物体に関する測距を行う(ステップS106)。その測距によって、図6Aで示されるように、架台9や表示板7の複数の測定点Pまでの距離がそれぞれ測定される。測距センサ14は、複数の測定点Pの位置を、図6Bで示されるように、移動体1のローカル座標系における各座標値(α1,β1)、(α2,β2)等に変換して判断部15に渡す。
【0045】
すると、判断部15は、移動制御部17から受け取った移動先の位置及び角度(a1,b1,c1)を用いて、移動先における移動体1の輪郭を、図5Aの破線で示されるように特定する。また、判断部15は、測距センサ14から受け取った測定点Pの座標値(α1,β1)等を結ぶことによって、障害物の輪郭を、図6Bの破線で示されるように特定する。そして、判断部15は、移動先における移動体1の輪郭と、障害物の輪郭とに重なりがあるかどうかを判断する(ステップS107)。ここでは、両者に重なりがなかったとする。すると、判断部15は、移動先に障害物が存在しないと判断し、その判断結果を移動制御部17に渡す。その判断結果を受け取ると、移動制御部17は、移動体1が移動先の位置及び角度(a1,b1,c1)に移動するように移動機構11を制御し、マーカ5に対する移動体1の位置決めが行われることになる(ステップS108)。
【0046】
次に、マーカを誤認識した場合について説明する。例えば、移動体1が図5Bで示される架台9の前方の位置に到着し、撮影部12がマーカ5を撮影した際に、位置取得部13が、図4(c)で示されるように、マーカを誤認識したとする。すると、位置取得部13は、その誤認識の結果に応じて誤った位置を取得し、移動制御部17は、その誤った位置に基づいて移動先の位置を取得することになる(ステップS103~S105)。その移動先の位置及び角度が、図5Bで示されるように、(x,y,ω)=(a2,b2,c2)であったとする。
【0047】
その後、上記説明と同様に測距センサ14による測距が行われ、判断部15による判断が行われる(ステップS106,S107)。この場合には、図5Bの破線で示される、移動先における移動体1の輪郭と、図6Bの破線で示される障害物の輪郭とが重なるため、判断部15は、移動先に障害物が存在すると判断し、その判断結果を移動制御部17に渡す。その判断結果を受け取ると、移動制御部17は、図示しない記録媒体から、再撮影を行う位置及び角度を示す(a11,b11,c11)を読み出し、その時点のローカル座標系における(x,y,ω)=(a11,b11,c11)となる位置及び角度に移動するように移動機構11を制御する(ステップS109)。その結果、移動体1は、図7Aの破線で示される位置及び角度に移動することになる。その後、再度、マーカ5の撮影や、それに応じた位置の取得、移動先の位置の特定、移動先に障害物が存在するかどうかの判断が行われることになる(ステップS103~S107)。
【0048】
この場合にも、移動先に障害物が存在したとする。すると、移動制御部17は、図示しない記録媒体から次の再撮影の位置及び角度を読み出し、図7Bで示されるように、その時点のローカル座標系における(x,y,ω)=(a12,b12,c12)となる位置及び角度に移動するように移動機構11を制御する(ステップS109)。その結果、移動体1は、図7Bの破線で示される位置及び角度に移動することになる。その後、再度、マーカ5の撮影や、それに応じた位置の取得、移動先の位置の特定、移動先に障害物が存在するかどうかの判断が行われることになる(ステップS103~S107)。この場合には、移動先に障害物が存在しなかったとする。すると、移動制御部17は、移動体1がその移動先に移動するように移動機構11を制御し、マーカ5に対する位置決めが行われることになる(ステップS108)。
【0049】
なお、上記具体例では、位置取得部13によって、マーカ座標系における位置が取得され、移動制御部17によって、移動体1のローカル座標系における移動先が特定される場合について説明したが、それら以外の座標系において、それらの処理が行われてもよい。例えば、ワールド座標系において、位置の取得や移動先の特定が行われてもよい。
【0050】
以上のように、本実施の形態による移動体1によれば、マーカを用いて取得された位置に応じた移動を行う際に、移動先に障害物が存在するかどうかの判断結果に応じて移動を行うことができる。そのため、マーカの誤認識結果に応じて誤った位置が取得され、その誤った位置に応じて不適切な移動先が特定された場合であっても、その不適切な移動先への移動が行われることによって移動体1が障害物に衝突する事態を回避することができ、安全性を向上することができる。例えば、架台などのように、狭い範囲に進入する場合には、測距結果に応じた障害物検知などを行わないこともある。そのような場合であっても、本実施の形態のように、判断結果に応じた移動を行うことによって、障害物への衝突を避けることができる。また、移動先に障害物が存在すると判断された場合に、移動制御部17により、マーカと移動体1との相対的な位置関係が変更された後に再度、撮影が行われることによって、マーカを用いた適切な位置の取得を行うことができ、適切な位置決めを行うことができるようになる。
【0051】
なお、本実施の形態では、移動先に障害物が存在すると判断された場合に、再撮影を行うために移動体1が移動すると説明したが、そうでなくてもよい。例えば、移動先に障害物が存在すると判断された場合には、異常が発生したとして、保守の担当者等に連絡するようにしてもよい。また、例えば、マーカの誤認識が起こる原因としては、マーカの撮影画像が適正露出になっていないことが考えられる。したがって、移動先に障害物が存在すると判断された場合に、撮影部12は、同じ位置において、露出を変更して再撮影を行うようにしてもよい。その露出の変更は、例えば、露出のアンダー側からオーバー側への変更であってもよく、その逆であってもよく、または、その他のルールに応じたものであってもよい。そして、適正露出での撮影が行われた結果、移動先に障害物が存在しないと判断された場合に、移動制御部17は、移動先への移動を行うようにしてもよい。この場合にも、移動先に障害物が存在しないと判断されるまで、露出を変更した再撮影と、判断とが繰り返されてもよい。露出の変更は、例えば、シャッタースピード(露光時間)の変更によって行われてもよく、絞り(F値)の変更によって行われてもよく、その両方によって行われてもよい。
【0052】
また、本実施の形態による移動体1は、測距センサ14による測定結果を用いて障害物を検知する障害物検知部を備えていてもよい。そして、移動制御部17は、その障害物検知部によって障害物が検知された場合に、その障害物への衝突を防ぐように移動機構11を制御してもよい。障害物との衝突を防止する移動制御は、例えば、移動体1の停止や減速、障害物の迂回等であってもよい。なお、マーカを用いて取得された位置に応じた位置決めを行う場合には、上記のように、狭い範囲での移動であるなどの理由から、その障害物検知部による障害物の検知を行わなくてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態において、各構成要素間で行われる情報の受け渡しは、例えば、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に異なるものである場合には、一方の構成要素による情報の出力と、他方の構成要素による情報の受け付けとによって行われてもよく、または、その情報の受け渡しを行う2個の構成要素が物理的に同じものである場合には、一方の構成要素に対応する処理のフェーズから、他方の構成要素に対応する処理のフェーズに移ることによって行われてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、各構成要素が実行する処理に関係する情報、例えば、各構成要素が受け付けたり、取得したり、選択したり、生成したり、送信したり、受信したりした情報や、各構成要素が処理で用いる閾値や数式、アドレス等の情報等は、上記説明で明記していなくても、図示しない記録媒体において、一時的に、または長期にわたって保持されていてもよい。また、その図示しない記録媒体への情報の蓄積を、各構成要素、または、図示しない蓄積部が行ってもよい。また、その図示しない記録媒体からの情報の読み出しを、各構成要素、または、図示しない読み出し部が行ってもよい。
【0056】
また、上記実施の形態において、各構成要素等で用いられる情報、例えば、各構成要素が処理で用いる閾値やアドレス、各種の設定値等の情報がユーザによって変更されてもよい場合には、上記説明で明記していなくても、ユーザが適宜、それらの情報を変更できるようにしてもよく、または、そうでなくてもよい。それらの情報をユーザが変更可能な場合には、その変更は、例えば、ユーザからの変更指示を受け付ける図示しない受付部と、その変更指示に応じて情報を変更する図示しない変更部とによって実現されてもよい。その図示しない受付部による変更指示の受け付けは、例えば、入力デバイスからの受け付けでもよく、通信回線を介して送信された情報の受信でもよく、所定の記録媒体から読み出された情報の受け付けでもよい。
【0057】
また、上記実施の形態において、移動体1に含まれる2以上の構成要素が通信デバイスや入力デバイス等を有する場合に、2以上の構成要素が物理的に単一のデバイスを有してもよく、または、別々のデバイスを有してもよい。
【0058】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上より、本発明による移動体によれば、マーカを用いて取得された位置が不正確であっても、移動先での障害物との衝突を回避できるという効果が得られ、自律的に移動する移動体として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 移動体
11 移動機構
12 撮影部
13 位置取得部
14 測距センサ
15 判断部
16 現在位置取得部
17 移動制御部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B