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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】分注装置及び分注方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20220406BHJP
【FI】
G01N35/10 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017250248
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019117076
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 友希男
(72)【発明者】
【氏名】大内 哲志
(72)【発明者】
【氏名】三井 栄二
(72)【発明者】
【氏名】松岡 淳一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 武宏
(72)【発明者】
【氏名】北野 幸彦
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-309888(JP,A)
【文献】特開2009-103492(JP,A)
【文献】特開2011-112501(JP,A)
【文献】特開2003-149094(JP,A)
【文献】特開2000-019184(JP,A)
【文献】特開平09-218165(JP,A)
【文献】特開平07-260797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/10,
G01N 21/94,
G01N 33/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロプレートのウェルに検体を分注する分注装置であって、
前記ウェルに向けて光を発光する発光部と、
前記発光部から発光され、前記ウェルまたは前記ウェルに残存する異物のうちの少なくとも1つから反射した光を受光する受光部と、
前記受光した光に基づいて前記受光部と前記ウェルまたは前記異物との距離を測定する異物検出ユニットと、
前記受光部と前記ウェルまたは前記異物との距離から前記ウェル内の異物の有無を判断する制御部を備える分注装置。
【請求項2】
前記異物検出ユニットは、前記発光部と前記受光部とが一体化され備えられている請求項1に記載の分注装置。
【請求項3】
前記異物検出ユニットは、前記発光部によって発光された光の位相と、前記受光部によって受光された光の位相との間の位相差から、前記ウェルまたは前記異物との距離を測定する請求項に記載の分注装置。
【請求項4】
前記発光部によって発光される光は、レーザ光である請求項3に記載の分注装置。
【請求項5】
前記異物検出ユニットによって測定された前記ウェルまたは前記異物との距離についての閾値が設定され、
前記制御部は、前記異物検出ユニットによって測定された前記ウェルまたは前記異物との距離が閾値よりも小さいときに、前記ウェルに異物が有ると判断する請求項から4のいずれか1項に記載の分注装置。
【請求項6】
ハンド部を有するロボットを備え、
前記異物検出ユニットは、前記ハンド部によって把持されることが可能に構成されている請求項から5のいずれか1項に記載の分注装置。
【請求項7】
マイクロプレートのウェルに検体を分注する分注方法であって、
前記ウェルに向けて光を発光部で発光する発光工程と、
前記発光工程で発光され前記ウェルまたは前記ウェルに残存する異物のうちの少なくとも1つから反射した光を受光部で受光する受光工程と、
前記受光した光に基づいて前記受光部と前記ウェルまたは前記異物との距離を異物検出ユニットで測定する距離測定工程と、
前記距離測定工程で測定された距離から前記ウェル内の異物の有無を判断する判断工程と、
前記ウェルに検体を分注する分注工程とを備えた分注方法。
【請求項8】
マイクロプレートのウェルに検体を分注する分注装置であって、
発光部と受光部とが一体化されて備えられ、自身と前記ウェルまたは前記ウェルに残存する異物のうちの少なくとも1つとの距離を測定する異物検出ユニットと、
前記異物検出ユニットと前記ウェルまたは前記異物との距離から前記ウェル内の異物の有無を判断する制御部とを備え、
前記発光部は、前記ウェルに向けて光を発光し、
前記受光部は、前記発光部から発光され、前記ウェルまたは前記異物から反射した光を受光し、
前記異物検出ユニットは、前記受光部が受光した光に基づいて前記異物検出ユニットと前記ウェルまたは前記異物との距離を測定する、分注装置。
【請求項9】
発光部と受光部とが一体化されて備えられた異物検出ユニットを用いてウェル内の異物の有無の判断を行う分注方法であって、
前記ウェルに向けて光を前記発光部で発光する発光工程と、
前記発光工程で発光され前記ウェルまたは前記ウェルに残存する異物のうちの少なくとも1つから反射した光を前記受光部で受光する受光工程と、
前記受光部が受光した光に基づいて前記異物検出ユニットと前記ウェルまたは前記異物との距離を前記異物検出ユニットで測定する距離測定工程と、
前記距離測定工程で測定された距離から前記ウェル内の異物の有無を判断する判断工程と、
前記ウェルに検体を分注する分注工程とを備えた分注方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の収容された収容部に異物が含まれているか否かを検出する分注装置及び分注方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学的な手段を用いて、マイクロプレートのウェルに収容された検体の内部にフィブリンや血餅等の異物が含まれているか否かを検出する方法が開示されている。そのような方法として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。特許文献1に開示された方法においては、検体をCCDカメラによって撮像し、撮像した画像による画像情報に基づいて、検体中にフィブリン等の異物が含まれているか否かが検出されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-112501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された方法では、マイクロプレートのウェルに収容された検体の画像から、画像情報として各種のパラメータが取得されているが、検体が収容されていないマイクロプレートのウェル中にフィブリン等の異物が含まれているか否かを検出していなかった。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、マイクロプレートのウェルに異物が含まれているか否かの検出を行うことが可能な分注装置及び分注方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分注装置は、マイクロプレートのウェルに検体を分注する分注装置であって、前記ウェルに向けて光を発光する発光部と、前記発光部から光が照射された前記ウェルからの光を受光する受光部と、前記受光部によって受光された光の情報から前記ウェル内の異物の有無を判断する制御部を備えていることを特徴とする。
【0007】
上記構成の分注装置では、ウェルからの光を受光する受光部によって受光された光の情報から異物の有無を判断するので、ウェルに異物が含まれているか否かの検出を行うことができる。
【0008】
また、前記発光部と前記受光部とが一体化された異物検出ユニットを備え、前記異物検出ユニットは、前記受光部によって受光された光から、前記ウェルと前記受光部との間の距離を測定してもよい。
【0009】
異物検出ユニットが、受光部によって受光された光から、ウェルと受光部との間の距離を測定するので、測定された距離から、ウェルに異物が含まれているか否かを検出することができる。
【0010】
また、前記異物検出ユニットは、前記発光部によって発光された光の位相と、前記受光部によって受光された光の位相との間の位相差から、距離を測定してもよい。
【0011】
発光部によって発光された光の位相と、受光部によって受光された光の位相との間の位相差から距離が測定されるので、ウェルと受光部との間の距離を正確に測定することができる。
【0012】
また、前記発光部によって発光される光は、レーザ光であってもよい。
【0013】
発光部によって発光される光がレーザ光であるので、距離の測定を容易に行うことができる。
【0014】
また、前記異物検出ユニットによって測定された距離についての閾値が設定され、前記制御部は、前記異物検出ユニットによって測定された距離が閾値よりも小さいときに、前記ウェルに異物が有ると判断してもよい。
【0015】
異物検出ユニットによって測定された距離が閾値よりも小さいときに、ウェルに異物が有ると判断されるので、制御部による異物の有無の判断を容易に行うことができる。
【0016】
また、ハンド部を有するロボットを備え、前記異物検出ユニットは、前記ハンド部によって把持されることが可能に構成されていてもよい。
【0017】
異物検出ユニットがロボットのハンド部によって把持されることが可能に構成されているので、異物検出ユニットを検出対象の検体に対応する位置に正確に配置させることができ、距離の測定をより確実に行うことができる。
【0018】
また、本発明の異物検出方法は、マイクロプレートのウェルに検体を分注する分注方法であって、前記ウェルに光を照射する照射工程と、前記ウェル内の異物の有無を判断する判断工程と、前記ウェルに検体を分注する分注工程とを備えたことを特徴とする。
【0019】
上記構成の異物検出方法では、判断工程でウェル内の異物の有無が判断されるので、ウェルに異物が含まれているか否かの検出を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の分注装置によれば、ウェルに異物が含まれているか否かの検出を行うことができるので、ウェル内の検体の試験、分析を正確に行うことができる。また、本発明の分注方法によれば、ウェルに異物が含まれているか否かの検出を行うことができるので、ウェル内の検体の試験、分析を行う際には、試験、分析を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る異物検出装置の側面図である。
図2】(a)、(b)は図1の異物検出装置におけるハンド部についての斜視図である。
図3図1の異物検出装置によって異物の有無の検出の行われるマイクロプレートの斜視図である。
図4】(a)は図1の異物検出装置における本体部の制御系統の構成について示したブロック図であり、(b)は図1の異物検出装置によって異物の検出が行われる際の制御系統の構成について示したブロック図である。
図5】検出対象のウェルに異物が存在しない場合に、図1の異物検出装置によってマイクロプレートの検出対象のウェルについて異物の有無の検出が行われている状態の異物検出装置及びマイクロプレートについて示した構成図である。
図6】検出対象のウェルに異物が存在する場合に、図1の異物検出装置によって、異物の有無についての検出が行われている状態の異物検出装置及びマイクロプレートについて示した構成図である。
図7図1の異物検出装置によって異物の有無の検出を行う際の、各工程についての異物検出装置及びマイクロプレートの周辺について示した構成図である。
図8図1の異物検出装置によって異物の有無の検出を行う際のフローについて示したフローチャートである。
図9図1の異物検出装置によって異物の有無の検出を行う際に、マイクロプレートのウェルに対し異物の有無の検出を行う順番について示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る分注装置及び分注方法について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る分注装置1の側面図である。
【0024】
分注装置1は、本体部100と、マイクロプレート設置用台200とを備えている。マイクロプレート設置用台200上には、マイクロプレート300が設置されている。本実施形態では、本体部100は、多軸の産業用ロボットとして用いられている。本実施形態で用いられる本体部100は、ロボットアーム110を備えている。また、本体部100は、ロボット制御部14を有している。
【0025】
本体部100は、ハンド部10を備えている。ハンド部10は、2つのフィンガー部11を備えている。ハンド部10は、2つのフィンガー部11によって異物検出ユニット20を把持可能に構成されている。
【0026】
異物検出ユニット20は、検出対象からの距離を測定することが可能に構成されている。本実施形態では、異物検出ユニット20は、検出対象に向けて光を発光する発光部と、発光部によって発光された光を受光する受光部とを備えている。本実施形態では、発光部は、ウェルに向けて光を発光する。また、受光部は、発光部から照射されウェルからの光を受光する。ウェルの内部に異物が無い場合には、発光部から照射されウェルで反射した光が、受光部によって受光される。ウェルの内部に異物が有る場合には、発光部から照射され異物で反射した光が、受光部によって受光される。いずれの場合であっても、ウェルに向けて照射されウェルからの光が、受光部によって受光される。
【0027】
本実施形態では、異物検出ユニット20は、発光部と受光部とが一体化されて形成されている。また、本実施形態では、発光部によって発光される光は、レーザ光である。
【0028】
異物検出ユニット20は、発光部からレーザ光を発光し、検出対象で反射した反射光を受光部によって受光する。発光部によって発光されたレーザ光と、検出対象で反射して受光部によって受光されたレーザ光との間の位相差を検出することにより、異物検出ユニット20と検出対象との間の距離を測定することができる。すなわち、異物検出ユニット20は、距離を測定する際の距離センサーとして機能する。本実施形態では、異物検出ユニット20における発光部から発光される光としてレーザ光が用いられているので、光が拡散し難く、検出対象のウェル310の内部の検体に向けて効率的に光を発することができる。従って、異物検出ユニット20による距離の測定を容易に行うことができる。
【0029】
図2(a)、(b)に、ハンド部10について拡大した斜視図を示す。図2(a)に示されるように、2つのフィンガー部11は、それぞれ互いに近接、離間する方向に移動可能に構成されている。
【0030】
図2(a)には、2つのフィンガー部11が互いに離間した状態について示されている。また、図2(b)には、2つのフィンガー部11が互いに近接し、それらの間に異物検出ユニット20が挟まれて把持されている状態について示されている。2つのフィンガー部11が互いに離間した状態でフィンガー部11同士の間に異物検出ユニット20を配置し、そこから2つのフィンガー部11を互いに近接させてフィンガー部11を異物検出ユニット20に当接させることにより、2つのフィンガー部11によって異物検出ユニット20を把持することができる。
【0031】
図3に、本実施形態で用いられるマイクロプレート300の斜視図を示す。マイクロプレート300は、主に生化学的分析や臨床検査等で使用されるものである。マイクロプレート300は、透明な樹脂によって形成され、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等によって形成されている。マイクロプレート300には、検体等の液体を収容可能な穴としてのウェル(検体収容部)310が複数形成されている。本実施形態では、長辺に12個、短辺に8個並べられ、計96個のウェル310が形成されている。通常、マイクロプレート300におけるウェル310の内部に検体が注入され、検体についての分析、試験が行われる。
【0032】
本実施形態では、マイクロプレート300におけるウェル310の内部に、検体として、血液が注入される。ウェル310の底面には、微小な溝が形成されている。ウェル310の内部に血液が注入されると、ウェル310の底面の溝320の内部に血液が入り込む(図5)。ウェル310への血液の注入が終わると、ウェル310の内部が洗浄される。ウェル310内部の洗浄が行われると、ウェル310の内部に注入された血液のうち、溝320の内部に入り込んだ血液のみが残留する。溝320の内部に残った血液についての分析、試験が、その後の工程で行われる。
【0033】
このように、本実施形態では、分注装置1は、マイクロプレート300のウェル310内に検体を分注する不図示の分注部を備えている。分注部は、本体部100のハンドに取り付けられたピペットによって構成されてもよい。つまり、本体部100のハンドに取り付けられたピペットが、マイクロプレート300のウェル310内に検体を分注するように構成されてもよい。
【0034】
次に、本体部100の制御構成について説明する。図4(a)に、本体部100における制御構成についてのブロック図を示す。
【0035】
図4(a)に示されるように、本体部100におけるロボット制御部14は、演算部14aと、記憶部14bと、サーボ制御部14cとを含む。
【0036】
ロボット制御部14は、例えばマイクロコントローラ等のコンピュータを備えたロボットコントローラである。なお、ロボット制御部14は、集中制御する単独のロボット制御部14によって構成されていてもよいし、互いに協働して分散制御する複数のロボット制御部14によって構成されていてもよい。
【0037】
記憶部14bには、ロボットコントローラとしての基本プログラム、各種固定データ等の情報が記憶されている。演算部14aは、記憶部14bに記憶された基本プログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、本体部100の各種動作を制御する。すなわち、演算部14aは、本体部100の制御指令を生成し、これをサーボ制御部14cに出力する。例えば、演算部14aは、プロセッサユニットによって構成されている。
【0038】
サーボ制御部14cは、演算部14aにより生成された制御指令に基づいて、本体部100におけるロボットアーム110のそれぞれの関節に対応するサーボモータの駆動を制御するように構成されている。
【0039】
図4(b)に、分注装置1によって異物の検出が行われる際の制御系統の構成についてのブロック図を示す。
【0040】
図4(b)に示されるように、分注装置1は、異物の検出を行う構成の制御部として、異物検出制御部(制御部)50を備えている。異物検出制御部50は、受光部によって受光された光の情報からウェル内の異物の有無を判断する。異物検出制御部50は、異物有無判断部51と、記憶部52とを有している。
【0041】
異物有無判断部51は、異物検出ユニット20によって測定された距離に基づいて、マイクロプレート300におけるウェル310の内部に異物が有るか否かを判断することができる。記憶部52には、異物検出ユニット20によって測定された距離についての閾値等が格納されている。異物有無判断部51が記憶部52に記憶された距離についての閾値を読み出し、異物検出ユニット20によって測定された距離と、距離についての閾値とを比較することにより、ウェル310の内部に異物が有るか否かを判断する。
【0042】
次に、本実施形態における分注装置1によって行われる、マイクロプレート300における検出対象のウェル310についての異物の有無の検出について説明する。
【0043】
図5に、マイクロプレート300における検出対象のウェル310について、異物の有無についての検出が行われている状態の、分注装置1の本体部100及びマイクロプレート300についての構成図を示す。図5には、検出対象のウェル310に異物が存在しない場合について、ウェル310の異物の有無の検出が行われている状態の分注装置1の本体部100及びマイクロプレート300についての構成図を示す。異物の有無の検出が行われる際には、ウェル310の内部の血液が洗浄によって除去され、ウェル310の底面に形成された溝320の内部にのみ血液が残った状態にある。
【0044】
マイクロプレート300における検出対象のウェル310について、異物の有無についての検出が行われる際には、異物検出ユニット20の発光部からレーザ光が発光される。異物検出ユニット20は、検出対象のウェル310の内部に向けてレーザ光を発光させる。これにより、異物検出ユニット20の発光部から発せられたレーザ光は、ウェル310の内部を進む。
【0045】
図5に示される状態では、検出対象のウェル310には異物が存在しないので、異物検出ユニット20の発光部から発光されたレーザ光は、検出対象のウェル310の底面の溝320の内部に入り込んだ血液の液面に到達することが可能である。
【0046】
ウェル310内に血液が注入され、ウェル310内の洗浄が終わると、異物検出ユニット20によって検出対象についてのウェル310の底面の溝320内に収容されている血液からの距離が測定される。このとき発光部から発光されるレーザ光と、ウェル310の底面の溝320内の血液の液面で反射し受光部で受光されるレーザ光との間の位相差から、異物検出ユニット20から血液の液面までの距離が検出される。
【0047】
図5の状態では、ウェル310内に異物が存在しないので、異物検出ユニット20によって異物検出ユニット20からウェル310内の検体までの距離が測定された結果、異物検出ユニット20とウェル310における底面の溝320内の血液の液面との間の距離が出力される。異物検出ユニット20とウェル310における底面の溝320内の血液の液面との間の距離が正常に出力されると、検出対象のウェル310の内部には、レーザ光の光軸Lを遮るものが存在せず、異物が存在しないと判断される。これにより、検出対象のウェル310に、異物が存在しないことが検出される。
【0048】
図6に、検出対象のウェル310内に異物400が存在している場合における、異物の有無についての検出が行われている状態の分注装置1の本体部100及びマイクロプレート300についての構成図を示す。
【0049】
図6に示される状態では、検出対象のウェル310の入口の部分に異物400が存在し、異物検出ユニット20の発光部から発光されたレーザ光の光軸Lを遮っている。異物400がウェル310の一部を塞いでいることから、洗浄工程でウェル310の内部を完全に洗浄しきれずに、ウェル310の内部に検体の血液410が残った状態にある。異物400としては、例えば、血液中のフィブリンや血液が凝固して形成された血餅等がある。
【0050】
検出対象のウェル310に異物400が存在する場合には、異物検出ユニット20によってウェル310内部の検体までの距離が検出される際に、発光部から発光されたレーザ光の光軸Lが異物によって遮られる。従って、発光部によって発光されたレーザ光は、ウェル310の底面まで到達せずに、光路の途中で、異物400で反射して受光部に向かう。これにより、異物検出ユニット20から検体までの距離として、異物検出ユニット20とウェル310における底面の溝320内の血液の液面との間の距離よりも短い距離が出力される。
【0051】
そのため、異物検出ユニット20から検体までの距離として、ウェル310に異物400が存在しない場合に出力される異物検出ユニット20と検体との間の距離よりも小さい距離が検出された場合には、ウェル310に異物が存在すると判断される。これにより、検出対象のウェル310に異物が存在することが検出される。このとき、検出される距離についての閾値が設定され、異物検出ユニット20によって検出されたウェル310内部の血液の液面までの距離が閾値よりも小さい場合には、検出対象のウェル310に異物が存在していると判断することにしてもよい。
【0052】
本実施形態では、検出対象のウェル310に異物が存在しているか否かの判断は、異物検出制御部50の異物有無判断部51が、異物検出ユニット20によって測定された距離に基づいて行う。異物検出制御部50は、例えば、本体部100とは別に設置されたPCが役割を果たしてもよい。その場合、PCの内部に配置されたCPUが異物検出制御部50として機能してもよい。このように、PCの内部の異物検出制御部50における異物有無判断部51が、異物検出ユニット20によって測定された距離に基づいて、異物が存在しているか否かの判断を行ってもよい。
【0053】
また、ロボット制御部14が、異物検出制御部50としての機能を有するように構成されてもよい。ロボット制御部14が異物検出制御部50を備え、異物検出制御部50が異物検出ユニット20によって測定された距離に基づいて、異物が存在しているか否かの判断を行ってもよい。
【0054】
異物検出制御部50とロボット制御部14とは、同じ制御部によって構成されていてもよいし、それぞれ別々の制御部によって構成されていてもよい。
【0055】
次に、分注装置1によって、マイクロプレート300における検出対象のウェル310についての異物の有無の検出が行われる際のフローについて説明する。
【0056】
図7(a)~(d)に、分注装置1の本体部100が異物の有無の検出を行う際の各工程について示した構成図を示す。また、図8に、分注装置1が異物の有無の検出を行う際のフローについて示したフローチャートを示す。
【0057】
図7(a)に示される状態では、既に、マイクロプレート300のウェル310内へ検体が分注され(分注工程)、その後ウェル310内についての洗浄が行われている。ウェル310内への検体の注入及びウェル310内の洗浄が行われると、ウェル310についての異物の有無の検出が行われる。
【0058】
まず、図7(a)に示されるように、分注装置1の本体部100におけるロボットアーム110の駆動を制御し、ハンド部10の異物検出ユニット20をマイクロプレート300に近接させるように移動させる。このように、ハンド部10を移動させることにより、異物検出ユニット20を、マイクロプレート300における検出対象のウェル310に近接させる(S1)。
【0059】
ロボットアーム110の駆動を制御し、ハンド部10を移動させた結果、図7(b)に示されるように、異物検出ユニット20が検出対象のウェル310の上方の位置に到達すると(S2)、そこで異物検出ユニット20から検出対象のウェル310に向けて、発光部からレーザ光が照射される(照射工程)。
【0060】
図7(c)に、異物検出ユニット20から検出対象のウェル310に向けて、発光部からレーザ光が発光される状態について示す。これによって異物検出ユニット20からウェル310内部の血液の液面までの距離が検出される(S3)。
【0061】
異物検出ユニット20からウェル310内部の血液の液面までの距離が検出された結果、異物検出ユニット20とウェル310における底面の溝320内の血液の液面との間の距離が出力されると、検出対象のウェル310には異物は存在しないと判断される。これにより、検出対象のウェル310に異物が存在していないことが検出される。
【0062】
その一方、異物検出ユニット20からウェル310内部の血液の液面までの距離が検出された結果、異物検出ユニット20とウェル310における底面の溝320内の血液の液面との間の距離よりも短い距離が出力されると、検出対象のウェル310に光軸Lを遮るものが存在し、そこに異物が存在すると判断される。これにより、検出対象のウェル310に異物が存在していることが検出される。
【0063】
このように、異物検出ユニット20によって血液の液面までの距離を測定することによって、検出対象のウェル310について、ウェル310内の異物の有無についての判断が行われることに伴い、異物の有無が検出される(S4)(判断工程)。
【0064】
マイクロプレートにおける幅方向の全ての検出対象のウェル310についての異物の有無の検出が行われると、そこで幅方向の全ての検出対象のウェル310についての異物の有無の検出が行われたか否かの判断が行われる(S5)。
【0065】
幅方向の全ての検出対象のウェル310について異物の有無の検出がまだ行われていない場合には、フローは、S2に戻って、次の検出対象のウェル310についての異物の有無の検出が行われる。幅方向の全ての検出対象のウェル310について異物の有無の検出が行われるまで、S2からS4までの異物の有無の検出工程が繰り返し行われる。
【0066】
マイクロプレート300における幅方向の全てのウェル310について異物の有無の検出が行われたことが確認されると、そこで長さ方向の全ての検出対象のウェル310についての異物の有無の検出が行われたか否かの判断が行われる(S6)。
【0067】
長さ方向の全ての検出対象のウェル310について異物の有無の検出がまだ行われていない場合には、フローは、S2に戻って、次の検出対象の列におけるウェル310についての異物の有無の検出が行われる。長さ方向の全ての列の検出対象のウェル310について異物の有無の検出が行われ、マイクロプレート300における全ての検出対象のウェル310について異物の有無の検出が行われるまで、S2からS4までの異物の有無の検出工程が繰り返し行われる。
【0068】
図9に、マイクロプレート300における異物の有無の検出が行われるウェル310の順番についての構成図を示す。
【0069】
まず、マイクロプレート300における長さ方向についての一端部の列(列1)のウェル310について、一端から他端にかけて順番に異物の有無の検出を行う。一列のウェル310について、一端から他端にかけて全てのウェル310について異物の有無の検出を行うと、異物検出ユニット20がマイクロプレート300の長さ方向に沿って移動し、次の列(列2)について、一端から他端にかけて全てのウェル310についての異物の有無の検出を行う。これを繰り返し、マイクロプレート300における長さ方向の全ての列について一端から他端にかけてのウェル310についての異物の有無の検出が行い、マイクロプレート300の全てのウェル310について異物の有無の検出を行う。
【0070】
マイクロプレート300における全ての検出対象のウェル310について異物の有無の検出が行われると、ウェル310についての異物の有無の検出が完了する。全ての検出対象のウェル310についての異物の有無の検出が完了すると、ロボットアーム110の駆動を制御し、ハンド部10を移動させることにより、図7(d)に示されるように、異物検出ユニット20をマイクロプレート300から離間させる。これにより、異物の有無の検出のフローが終了する。
【0071】
本実施形態では、発光部から発光されるレーザ光は、検出対象のウェル310の中心に向けて発せられている。従って、光軸Lは、通常、検出対象のウェル310の入口における径方向中心に近い位置を通過する。そのため、仮に、小さい異物が検出対象のウェル310における側面に付着している場合には、光軸Lが異物によって遮られずに通過してしまうことが考えられる。その結果、ウェル310の内部に異物が存在しているにもかかわらず、光軸Lが遮られずに、異物検出ユニット20とウェル310における底面の溝320内の血液の液面との間の距離が出力され、異物が存在しないと判断されるケースが考えられる。しかしながら、そのように小さな異物に関しては、異物検出工程の前の洗浄の工程で既に除去されている可能性が高い。
【0072】
本実施形態では、異物の有無の検出は、洗浄工程で除去しきれなかったような比較的大きな異物を検出することを目的として行われる。図6に示されるように、洗浄工程で除去しきれなかったような比較的大きな異物がウェル310に存在していると、ウェル310から異物を取り出せないことから異物がウェル310を塞いでしまい、異物の下方に血液410が残っている可能性がある。ウェル310の底面の溝320の内部だけでなく、異物の下方でウェル310の内部が血液410で満たされた状態にある場合、その後の血液についての試験、分析の結果に影響を及ぼす可能性がある。
【0073】
このように、本実施形態では、その後の血液についての試験、分析の結果への影響について考慮すれば、洗浄工程でのウェル310の底面の溝320の内部に位置する血液以外の血液についての除去の支障となるような、比較的大きな異物が検出されればよい。つまり、洗浄工程の際にウェル310を塞いでしまい、ウェル310からの血液の排出を阻むような比較的大きな異物が検出されればよい。ウェル310が異物によって塞がれたことで異物の下方でウェル310が血液で満たされた結果、血液の液面の位置の変化が検出されるような、比較的大きな異物が検出されればよい。
【0074】
本実施形態の分注装置1によれば、異物検出ユニット20がウェル310からの光の情報に基づいた距離を測定するだけで検出対象のウェル310における異物の有無を検出することができるので、異物の有無の検出を行うための構成を簡易にすることができる。
【0075】
特に、検体についての画像を撮像するための構成や、検体の撮像によって得られた画像から各種のパラメータを取得するために高性能の解析手段を必要とせず、異物の有無の検出を行うための構成を簡易にすることができる。従って、検出対象のウェルについての異物の有無の検出を行う装置の製造コストを低く抑えることができる。
【0076】
また、本実施形態の異物検出方法では、異物検出ユニット20がウェル310からの光の情報に基づいた距離を測定するだけで検出対象のウェル310における異物の有無を検出することができるので、異物の検出を簡易な方法で行うことができる。従って、効率的に異物の検出を行うことができる。検出対象のウェル310における異物の有無の検出を高速で行うことができ、全ての検出対象のウェル310についての異物の有無の検出を短時間で行うことができる。
【0077】
また、本実施形態では、本体部100のハンド部10が、2つのフィンガー部11によって異物検出ユニット20を挟み込むことにより、異物検出ユニット20を把持することが可能に構成されている。そのため、ハンド部10は、異物検出ユニット20以外のものについても把持することが可能に構成されている。例えば、ハンド部10が、2つのフィンガー部11によってマイクロプレート300を挟み込むことにより、マイクロプレート300を把持することができる。ハンド部10がマイクロプレート300を把持した状態でロボットアーム110を移動させることにより、本体部100がマイクロプレート300を移動させることができる。そのため、ハンド部10が異物検出ユニット20を把持してマイクロプレート300におけるウェル310内部の異物の有無の検出を行い、全てのウェル310内部の異物の有無の検出を終えると、ハンド部10が、異物検出ユニット20の把持を解除してマイクロプレート300を把持し、本体部100がマイクロプレート300を所定位置に移動させるように分注装置1が構成されてもよい。また、ハンド部10は、異物検出ユニット20及びマイクロプレート300以外のその他のものについても把持することができる。
【0078】
なお、上記実施形態では、異物検出ユニット20は、発光部がレーザ光を発光し、反射したレーザ光を受光部で受光する構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。異物検出ユニット20で発光部から発光される光はレーザ光でなくてもよく、白色光等、他の光であってもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、発光部によって発光された光の位相と、受光部によって受光された光の位相との間の位相差から、異物検出ユニット20が検体からの距離を測定しているが、本発明は上記実施形態に限定されない。ウェル310からの光の情報に基づいた距離を測定できるのであれば、他の手法によって距離の測定が行われてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、マイクロプレートにおけるウェル内部に収容される検体として血液が用いられているが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、髄液や尿といった他の検体が用いられてもよい。また、検体は、医療目的に用いられるものでなくてもよく、液体であればどんなものが用いられてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、異物としては、血液の成分として構成されたフィブリンや、血液が凝固して形成された血餅等が挙げられているが、本発明は上記実施形態に限定されない。検体として血液以外のものが用いられる場合には、異物として、その検体によって生成されるものであってもよい。また、異物は、検体から生成されるものでなくてもよい。例えば、空中に浮遊する埃等、検体とは関係ないものであってもよく、どのようなものであってもよい。
【0082】
なお、上記実施形態では、マイクロプレート300のウェル310内へ検体の分注が行われ、ウェル310についての洗浄を行った後に、ウェル310についての異物の有無の検出が行われている。しかしながら、本発明は上記実施形態に限定されない。ウェル310についての異物の有無の検出は、ウェル310内に検体が分注される前に行われてもよい。その場合、まだ検体の注入されていないウェル310についての異物の有無を検出することができる。例えば、ウェル310への検体の分注が行われる前に埃や塵がウェル310内部に入り込む場合が考えられる。そのような場合に、埃や塵の存在を検知することができる。また、ウェル310に検体を分注する前に、ウェル310から埃や塵を除去することができる。このように、ウェル310への分注前に、ウェル310についての異物の有無を検出することができるので、検体についての試験、分析が行われる際に、試験、分析の結果をより正確に行うことができる。
【0083】
このように、ウェル310内の異物の有無を判断する判断工程は、ウェル310に検体を分注する分注工程の前に行われてもよい。また、本実施形態のように、ウェル310内の異物の有無を判断する判断工程は、ウェル310に検体を分注する分注工程と、ウェル310内を洗浄する洗浄工程の後に行われてもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 分注装置
20 異物検出ユニット
50 異物検出制御部
300 マイクロプレート
310 ウェル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9