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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】放射性薬剤投与システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/00 20060101AFI20220406BHJP
   A61M 36/04 20060101ALN20220406BHJP
【FI】
A61M5/00 500
A61M36/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018117105
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019217041
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 広明
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504783(JP,A)
【文献】特開2008-000201(JP,A)
【文献】特開平06-294895(JP,A)
【文献】特開2006-296917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/00
A61M 36/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽壁の内部に放射性薬剤を収容し、前記放射性薬剤を投与するための放射性薬剤投与装置と、
前記放射性薬剤投与装置の外側を囲むように配置され、放射線を遮蔽する遮蔽部材を取り付け可能なフレーム部と、
前記フレーム部に対して取り付けられる前記遮蔽部材と、を備え
前記フレーム部は、前記放射性薬剤投与装置に対して近接及び離間が可能に構成される、放射性薬剤投与システム。
【請求項2】
前記フレーム部は、任意の箇所に前記遮蔽部材を取り付け可能である、請求項1に記載の放射性薬剤投与システム。
【請求項3】
前記フレーム部は、車輪を備える、請求項1に記載の放射性薬剤投与システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性薬剤投与システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この分野の技術として下記特許文献1に記載の放射性薬剤投与装置が知られている。この装置では、輸送液を搬送するための輸送ラインが、輸送液シリンジと翼付針とを接続している。この輸送ラインに対して、放射性薬剤を供給するための薬剤ラインが合流している。所望の放射能量の放射性薬剤が、薬剤シリンジから薬剤ラインを通じて輸送ラインに送り込まれた後、輸送液と一緒に輸送液シリンジで押し出されることにより、輸送ライン及び翼付針を通じて患者に放射性薬剤が投与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-136786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、放射性薬剤投与装置では、所望の放射能量の放射性薬剤を投与するようになっている。このような放射性薬剤投与装置には、放射性薬剤を取り扱う内部構成を遮蔽壁で覆うなどにより、放射線を遮蔽するための遮蔽機能が設けられている。ここで、放射性薬剤投与装置を扱う施設により、放射線に関する安全性に対する取り組みが異なる。従って、安全性をより高く設定している施設では、薬剤投与装置に遮蔽材を追加で取り付けることが求められる場合がある。しかしながら、薬剤投与装置に遮蔽材を追加する場合には、薬事申請が必要となるため、遮蔽材追加に伴う安全性評価(強度等の評価)や申請書類の作成に時間・コストがかかる場合がある。
【0005】
このような課題に鑑み、本発明は、遮蔽機能を容易に高めることができる放射性薬剤投与システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放射性薬剤投与システムは、遮蔽壁の内部に放射性薬剤を収容し、放射性薬剤を投与するための放射性薬剤投与装置と、放射性薬剤投与装置の外側を囲むように配置され、放射線を遮蔽する遮蔽部材を取り付け可能なフレーム部と、フレーム部に対して取り付けられる遮蔽部材と、を備える。
【0007】
本発明の放射性薬剤投与システムは、放射性薬剤投与装置の外側を囲むように配置され、放射線を遮蔽する遮蔽部材を取り付け可能なフレーム部と、フレーム部に対して取り付けられる遮蔽部材と、を備える。このような構成では、フレーム部に対して遮蔽部材を取り付けるだけで、放射線に対する遮蔽機能を高めることができる。また、放射性薬剤投与装置の遮蔽壁自体には変更を加える必要がないため、薬事申請を行うことなく、遮蔽機能を高めることができる。以上により、放射性薬剤投与システムの遮蔽機能を容易に高めることができる。
【0008】
また、フレーム部は、任意の箇所に遮蔽部材を取り付け可能であってよい。この場合、放射性薬剤投与システムの施設の安全性の基準や使用状況にあわせて、必要な箇所の遮蔽機能を高めることができる。
【0009】
また、フレーム部は、放射性薬剤投与装置に対して近接及び離間が可能に構成されてよい。この場合、フレーム部を放射性薬剤投与装置から離間した状態にて、フレーム部に対する遮蔽部材の取り付けを行うことができる。
【0010】
また、フレーム部は、車輪を備えてよい。この場合、シンプルな構成にて、フレーム部を放射性薬剤投与装置に対して近接及び離間させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、遮蔽機能を容易に高めることができる放射性薬剤投与システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る放射性薬剤投与システムの構成を示す斜視図である。
図2図1に示す放射性薬剤投与システムのフレーム部及び遮蔽部材を放射性薬剤投与装置から離間させた展開斜視図である。
図3】放射性薬剤投与装置を模式的に示す図である。
図4】遮蔽部材の取り付け態様の一例を示す放射性薬剤投与システムの正面図である。
図5図4に示す放射性薬剤投与システムの側面図である。
図6図4に示す放射性薬剤投与システムの側面図である。
図7図4に示す放射性薬剤投与システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
放射性薬剤投与システム100は、PET(ポジトロン断層撮影法)検査を受ける被験者(投与先)に対して放射性薬剤を投与するためのシステムである。図1及び図2に示すように、放射性薬剤投与システム100は、放射性薬剤投与装置1と、フレーム部50と、遮蔽部材61,62,63,64,65と、を備える。
【0015】
放射性薬剤投与装置1は、被験者に対して放射性薬剤を投与するための装置である。放射性薬剤投与装置1は、遮蔽壁2の内部に放射性薬剤及び当該放射性薬剤と投与するための各種構成要素を収容する。遮蔽壁2は、内部空間を有する箱状の筐体を構成している。遮蔽壁2は、上下方向に長手方向を有する直方体の筐体を構成しているが、形状は特に限定されない。放射性薬剤投与装置1は、前面1a、背面1b、上面1c、底面1d、側面1e,1fを有する。放射性薬剤投与装置1は、底面1dに車輪71を有する。なお、以降の説明においては、前面1a及び背面1bに対して垂直な方向を前後方向と称し、側面1e,1fに対して垂直な方向を横方向と称する場合がある。また、前面1aから背面1bを見たときの状態を基準に「左」「右」の語を用いる。従って、側面1eが左側の側面であり、側面1fが右側の側面である。
【0016】
ここで、図3を参照して、放射性薬剤投与装置1の内部の構成について詳細に説明する。図3に示すように、放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤Rを収容する薬剤バイアル3と、薬剤バイアル3から放射性薬剤Rを吸入すると共に吸入した放射性薬剤Rを排出する薬剤シリンジ5と、を備えている。また、放射性薬剤投与装置1は、生理食塩水(輸送液)Qを収容する生食パック7と、生食パック7から生理食塩水Qを吸入すると共に吸入した生理食塩水Qを排出する生食シリンジ9(輸送液シリンジ)と、を備えている。
【0017】
放射性薬剤投与装置1は、生食パック7と生食シリンジ9とを接続する生食吸入ライン13と、生食シリンジ9と翼付針11(投与部)とを接続する輸送ライン15を備えている。生食吸入ライン13と輸送ライン15とは、生食シリンジ9の出入口近傍で一部重複してもよい。生食吸入ライン13には、生食パック7に刺入される採取針13aが含まれる。また、放射性薬剤投与装置1は、薬剤バイアル3と薬剤シリンジ5とを接続する薬剤吸入ライン17と、薬剤シリンジ5と輸送ライン15とを接続する薬剤ライン19を備えている。薬剤ライン19は、生食シリンジ9と翼付針11との間の合流部21において輸送ライン15に合流している。薬剤吸入ライン17と薬剤ライン19とは、薬剤シリンジ5の出入口近傍で一部重複してもよい。薬剤吸入ライン17には、薬剤バイアル3に刺入される採取針17aが含まれる。
【0018】
また、放射性薬剤投与装置1は、合流部21と翼付針11との間の分岐部23において輸送ライン15から分岐した廃液ライン27を備えている。廃液ライン27の終端は廃液ボトル10に接続されている。また、廃液ライン27の途中には廃液バッファ28も設けられている。以下、輸送ライン15のうち、生食シリンジ9から合流部21までの部分を輸送ライン上流部15a、合流部21から分岐部23までの部分を輸送ライン中流部15b、分岐部23から翼付針11までの部分を輸送ライン下流部15cと呼ぶ。
【0019】
薬剤シリンジ5の周囲には、当該薬剤シリンジ5に吸入された放射性薬剤Rの放射能量を測定する測定ユニット31が設けられている。また、輸送ライン下流部15c上には開閉可能なピンチバルブ33が設けられており、廃液ライン27上には開閉可能なピンチバルブ35が設けられている。また、輸送ライン下流部15c上には放射性薬剤Rの通過を検出する通過センサ37が設けられている。輸送ライン下流部15c上において、翼付針11の直ぐ上流の位置には、フィルタ39が設けられている。また、放射性薬剤投与装置1は、放射性薬剤Rからの放射線を遮蔽すべく、薬剤バイアル3を収納する遮蔽室43と、薬剤シリンジ5を収納する遮蔽室45と、廃液ボトル10を収納する遮蔽室47とを備えている。
【0020】
また、放射性薬剤投与装置1は、薬剤シリンジ5及び生食シリンジ9のピストンを駆動し、薬剤シリンジ5及び生食シリンジ9による液体の吸入及び排出を制御する制御部41を備えている。制御部41は、更に、ピンチバルブ33,35の開閉動作を制御する。
【0021】
なお、各ライン(生食吸入ライン13,輸送ライン15、薬剤吸入ライン17、薬剤ライン19等)は、例えば、滅菌されたエクステンションチューブ等の管体によって形成されている。また、上記各ラインの接続部や分岐部には、例えば、T字管等の官材が適宜挿入されている。
【0022】
上述の構成要素のうち、フィルタ39、翼付針11及びそれらを接続するライン以外の構成要素は、遮蔽壁2の内部に収容されている。フィルタ39、翼付針11及びそれらを接続するラインは、遮蔽壁2の外に引き出されている。
【0023】
放射性薬剤投与装置1では、翼付針11が被験者に刺入される。その後、薬剤シリンジ5のピストンが引下げられると、薬剤バイアル3の放射性薬剤Rが、薬剤吸入ライン17を通じて薬剤シリンジ5に吸入される。その後、ピンチバルブ33が閉じピンチバルブ35が開いた状態で、薬剤シリンジ5のピストンが押上げられる。これにより、薬剤ライン19を通じて、薬剤シリンジ5から輸送ライン15に対して放射性薬剤Rが押込まれる。このとき、輸送ライン15の余剰の生理食塩水Qは、廃液ライン27を通じて廃液ボトル10に排出される。この動作により、輸送ライン15上にあった生理食塩水Qの一部が、放射性薬剤Rに置換される。その後、生食シリンジ9のピストンが引下げられると、生食パック7の生理食塩水Qが、生食吸入ライン13を通じて生食シリンジ9に吸入される。その後、ピンチバルブ33が開きピンチバルブ35が閉じた状態で、生食シリンジ9のピストンが押上げられる。これにより、輸送ライン15内にあった放射性薬剤Rは、生食シリンジ9からの圧力により、翼付針11を通じて生理食塩水Qと一緒に被験者の体内に投与される。
【0024】
図1及び図2に戻り、フレーム部50は、放射性薬剤投与装置1の外側を囲むように配置され、放射線を遮蔽する遮蔽部材61,62,63,64,65を取り付け可能である。なお、放射性薬剤投与装置1の外側を囲む状態とは、フレーム部50が放射性薬剤投与装置1を全周にわたって取り囲んでいる状態のみならず、放射性薬剤投与装置1の周方向の一部を取り囲み、他の部分を取り囲んでいないような状態も含んでいる。本実施形態では、フレーム部50は、前面1a及び側面1e,1fに対応する箇所では放射性薬剤投与装置1を囲んでいるが、背面1bに対応する箇所では放射性薬剤投与装置1を囲んでいない。フレーム部50は、上側のフレームを構成する部材51,52,53と、下側のフレームを構成する部材54,55,56と、上下のフレームを連結する部材57,58と、を備える。各部材51~58の材質として、鉄、鉛、アルミニウム等が採用される。
【0025】
上側のフレームを構成する部材51,52,53は、放射性薬剤投与装置1の上面1c付近の高さ位置に配置される。フレーム部50で放射性薬剤投与装置1の外側を囲んだ状態では、部材51は前面1a(または前面1aを上方へ広げた仮想的な面)と対向するように横方向に延びる。部材52,53は側面1e,1f(または側面1e,1fを上方へ広げた仮想的な面)と対向するように前後方向に延びる。部材51は、部材52,53の前側の端部同士を連結するように配置される。部材52,53の後側の端部間には部材が設けられていない。これにより、上側のフレームは、後端側が開口するようなコ字状の形状を有する。
【0026】
下側のフレームを構成する部材54,55,56は、放射性薬剤投与装置1の底面1d付近の高さ位置に配置される。フレーム部50で放射性薬剤投与装置1の周囲を覆った状態では、部材54は前面1a(または前面1aを下方へ広げた仮想的な面)と対向するように横方向に延びる。部材55,56は側面1e,1f(または側面1e,1fを下方へ広げた仮想的な面)と対向するように前後方向に延びる。部材54は、部材55,56の前側の端部同士を連結するように配置される。部材55,56の後側の端部間には部材が設けられていない。これにより、下側のフレームは、後端側が開口するようなコ字状の形状を有する。
【0027】
部材57,58は、上側のフレームと下側のフレームとを連結するように上下方向に延びる。部材57は、左側の部材52と部材55とを連結する。部材57は、前後方向において、部材52,55の略中央位置に配置される。部材58は、右側の部材53と部材56とを連結する。部材58は、前後方向において、部材53,56の略中央位置に配置される。
【0028】
フレーム部50は、放射性薬剤投与装置1に対して近接及び離間が可能に構成される。図1に示すように、フレーム部50は、放射性薬剤投与装置1の外側を囲むように、当該放射性薬剤投与装置1に近接した位置に配置可能である。また、図2に示すように、フレーム部50は、放射性薬剤投与装置1から離間した位置に配置可能である。また、フレーム部50は、図1に示す位置と図2に示す位置との間を往復移動することができる。具体的には、フレーム部50は、車輪59を備える。車輪59は、部材55の前後方向の両端部、及び部材56の前後方向の両端部に設けられる。なお、図2に示す状態から図1に示す状態へフレーム部50を移動させるとき、上側のフレーム及び下側のフレームのうち、開口している後端側から放射性薬剤投与装置1へ近づける。これにより、フレーム部50は、放射性薬剤投与装置1と干渉することなく、当該放射性薬剤投与装置1の外側を囲むように配置される。
【0029】
遮蔽部材61,62,63,64,65は、放射線を遮蔽する部材である。遮蔽部材61,62,63,64,65は、放射性薬剤投与装置1の遮蔽壁2に対する追加の遮蔽材として、当該遮蔽壁2よりも外側に配置される。遮蔽部材61,62,63,64,65は、矩形の板状部材として構成される。遮蔽部材61,62,63,64,65の材質として放射線を遮断する材質が採用され、例えば鉛、タングステンなどが採用される。遮蔽部材61,62,63,64,65の厚みは特に限定されないが、遮蔽性を確保する一方で重量が過度に重くならないように、例えば3~15mmの範囲に設定されることが好ましい。遮蔽部材61,62,63,64,65と放射性薬剤投与装置1の各面との間の離間距離は特に限定されず、フレーム部50との位置関係によって定められるが、放射線を漏れなく遮断するため、50mm以内に設定されることが好ましい。
【0030】
遮蔽部材61,62,63,64,65は、フレーム部50に対して取り付けられる。遮蔽部材61,62,63,64,65は、フレーム部50に対して着脱可能に取り付けられる。フレーム部50に対する遮蔽部材61,62,63,64,65の取り付け方法は特に限定されないが、例えば、ボルト締めによってフレーム部50に取り付けられてよい。その他、フレーム部50は、遮蔽部材61,62,63,64,65を挟み込んで固定するようなクランプ機構を有していてもよく、遮蔽部材61,62,63,64,65を嵌合させて固定する嵌合構造を有していてもよい。
【0031】
遮蔽部材61,62,63,64,65がフレーム部50に対して取り付けられるタイミングは特に限定されない。遮蔽部材61,62,63,64,65は、フレーム部50が放射性薬剤投与装置1から離間した位置に配置されているとき(図2に示す位置)に、当該フレーム部50に取り付けられてよい。または、遮蔽部材61,62,63,64は、フレーム部50が放射性薬剤投与装置1に近接した位置に配置されているとき(図1に示す位置)に、当該フレーム部50に取り付けられてよい。なお、遮蔽部材65は、フレーム部50を放射性薬剤投与装置1に近接させるように移動させる際に、当該放射性薬剤投与装置1と干渉しないように、移動後にフレーム部50に取り付けられる。
【0032】
遮蔽部材61は、放射性薬剤投与装置1の前面1aと対向して当該前面1aを覆うように配置される。遮蔽部材61は、前面1a側の遮蔽壁2に対する追加の遮蔽材として機能する。遮蔽部材61は、フレーム部50の部材52,53,55,56の前端、及び部材51,54の少なくとも何れかに支持される。
【0033】
遮蔽部材65は、放射性薬剤投与装置1の背面1bと対向して当該背面1bを覆うように配置される。遮蔽部材65は、背面1b側の遮蔽壁2に対する追加の遮蔽材として機能する。遮蔽部材65は、フレーム部50の部材52,53,55,56の後端の少なくとも何れかに支持される。
【0034】
遮蔽部材62は、放射性薬剤投与装置1の上面1cと対向して当該上面1cを覆うように配置される。遮蔽部材62は、上面1c側の遮蔽壁2に対する追加の遮蔽材として機能する。遮蔽部材62は、フレーム部50の部材51,52,53の少なくとも何れかに支持される。
【0035】
遮蔽部材63は、放射性薬剤投与装置1の左側の側面1eと対向して当該側面1eを覆うように配置される。遮蔽部材63は、側面1e側の遮蔽壁2に対する追加の遮蔽材として機能する。遮蔽部材63は、フレーム部50の部材51,54の左端、及び部材52,55,57の少なくとも何れかに支持される。
【0036】
遮蔽部材64は、放射性薬剤投与装置1の右側の側面1fと対向して当該側面1fを覆うように配置される。遮蔽部材64は、側面1f側の遮蔽壁2に対する追加の遮蔽材として機能する。遮蔽部材64は、フレーム部50の部材51,54の右端、及び部材53,56,58の少なくとも何れかに支持される。
【0037】
フレーム部50は、任意の箇所に遮蔽部材を取り付け可能である。図1に示す例においては、遮蔽部材61,62,63,64,65が全てフレーム部50に取り付けられているが、遮蔽部材61,62,63,64,65の少なくとも何れかがフレーム部50に取り付けられていればよい。すなわち、放射性薬剤投与装置1の前面1a、背面1b、上面1c、側面1e,1fの何れかが遮蔽部材に覆われており、他の面は遮蔽部材に覆われていなくともよい。また、図1に示す例においては、フレーム部50は、前面1a、背面1b、上面1c、側面1e,1fの略全面を覆うことができるように、遮蔽部材61,62,63,64,65を取り付け可能であるが、各面の一部だけを覆うように遮蔽部材61,62,63,64,65が取り付けられてもよい。例えば、遮蔽部材61,62,63,64,65はそれぞれ一枚の板状部材として構成されているが、それぞれ分割された複数枚の板状部材として構成されてよい。そして、分割された板状部材の一部のみがフレーム部50に取り付けられてもよい。
【0038】
図4図7を参照して、フレーム部50の任意の箇所に遮蔽部材が取り付けられた場合の例について説明する。ただし、図4図7に示す構成は一例にすぎず、フレーム部50への遮蔽部材の取り付け態様は、要求される遮蔽性能などに応じて適宜変更してよい。図4図7に示すように、フレーム部50には、前面1aを覆う遮蔽部材61と、側面1e,1fを覆う遮蔽部材63,64と、上面1cを覆う遮蔽部材62と、が取り付けられている。また、遮蔽部材61,63,64,62は、前面1a、側面1e,1f及び上面1cのうちの必要な箇所を部分的に覆うように、フレーム部50に取り付けられる。
【0039】
放射性薬剤投与装置1は、前面1a側の上側の領域に扉部材76を有している(図4参照)。扉部材76は前面1aを両開きすることで、遮蔽壁2の内部空間にアクセスするための扉を構成する。放射性薬剤を投与する投与者は、扉部材76を開くことで、放射性薬剤投与装置1の内部空間に放射性薬剤などをセットする。放射性薬剤投与装置1の上面1cには操作パネル72が設けられており、当該上面1cから翼付針11(図7参照)が引き出される。
【0040】
遮蔽部材61は、前面1aのうち、扉部材76が設けられている上側の領域に対応する位置を覆う(図4参照)。従って、前面1aのうち、下側の領域は遮蔽部材61に覆われることなく露出している。遮蔽部材63は、側面1eのうち、部材57より前側の領域であって、上側の領域に対応する位置を覆う(図5参照)。従って、側面1eの他の領域は遮蔽部材63に覆われることなく露出している。遮蔽部材64は、側面1fのうち、部材58より前側の領域であって、上側の領域に対応する位置を覆う(図6参照)。従って、側面1fの他の領域は遮蔽部材64に覆われることなく露出している。遮蔽部材62は、上面1cのうち、前側の領域における中央位置付近に対応する位置を覆う(図7参照)。従って、上面1cの他の領域は遮蔽部材62に覆われることなく露出している。上面1cのうち、操作パネル72が設けられる箇所、及び翼付針11が引き出される箇所は、遮蔽部材62から露出している。
【0041】
図4図7に示すような遮蔽部材の配置によれば、投与者が被験者に対して放射性薬剤を投与するために放射性薬剤投与装置1の側面1e又は側面1fの前側付近に位置する場合、遮蔽部材63又は遮蔽部材64が、放射性薬剤投与装置1から投与者へ向かう放射線を遮蔽することができる。また、操作パネル72を操作するために投与者が放射性薬剤投与装置1の前面1a付近に位置し、体の一部が上面1cの前側付近に位置する場合、遮蔽部材61及び遮蔽部材62が、放射性薬剤投与装置1から投与者へ向かう放射線を遮蔽することができる。また、放射性薬剤投与装置1の内部空間では上側の領域での放射線が多い一方、下側の領域での放射線は少ない。従って、遮蔽部材61,63,64が放射性薬剤投与装置1の上側の領域のみを覆うことで、必要な箇所だけに対する遮断性能を向上できる。
【0042】
次に、本実施形態に係る放射性薬剤投与システム100の作用・効果について説明する。
【0043】
本実施形態に係る放射性薬剤投与システム100は、放射性薬剤投与装置1の周囲を覆うように配置され、放射線を遮蔽する遮蔽部材61,62,63,64,65を取り付け可能なフレーム部50と、フレーム部50に対して取り付けられる遮蔽部材61,62,63,64,65と、を備える。このような構成では、フレーム部50に対して遮蔽部材61,62,63,64,65を取り付けるだけで、放射線に対する遮蔽機能を高めることができる。また、放射性薬剤投与装置1の遮蔽壁2自体には変更を加える必要がないため、薬事申請を行うことなく、遮蔽機能を高めることができる。以上により、放射性薬剤投与システム100の遮蔽機能を容易に高めることができる。
【0044】
また、フレーム部50は、任意の箇所に遮蔽部材61,62,63,64,65を取り付け可能である。この場合、放射性薬剤投与システム100の施設の安全性の基準や使用状況にあわせて、必要な箇所の遮蔽機能を高めることができる。例えば、放射性薬剤投与システム100を配置する室内のレイアウト変更が発生し、要求される放射線の遮蔽態様に変更が生じた場合などに、遮蔽壁2の構造を変更することなく、遮蔽部材のフレーム部50に対する取り付け箇所を変更するだけで、レイアウト変更に容易に対応することができる。
【0045】
また、フレーム部50は、放射性薬剤投与装置1に対して近接及び離間が可能に構成されている。この場合、フレーム部50を放射性薬剤投与装置1から離間した状態にて、フレーム部50に対する遮蔽部材61,62,63,64,65の取り付けを行うことができる。
【0046】
また、フレーム部50は、車輪59を備えている。この場合、シンプルな構成にて、フレーム部50を放射性薬剤投与装置1に対して近接及び離間させることができる。
【0047】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0048】
例えば、フレーム部の構成は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上下方向に延びる部材として二本の部材57,58が採用されていたが、三本以上の部材が設けられてもよい。例えば、上側及び下側のフレームの四か所の角部にそれぞれ上下方向に延びる部材が設けられてもよい。
【0049】
また、放射性薬剤投与システムは、一台のフレーム部を備えていたが、複数台のフレーム部を有していてもよい。例えば、前後方向から二台のフレーム部で放射性薬剤投与装置の全周を取り囲むようにしてもよい。
【0050】
また、フレーム部に車輪が設けられることで、フレーム部が放射性薬剤投与装置に対して近接及び離間が可能に構成されていたが、他の機構によって近接及び離間が可能に構成されてよい。例えば、床部にフレーム部を往復移動させるようなスライド部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…放射性薬剤投与装置、50…フレーム部、59…車輪、61,62,63,64,65…遮蔽部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7