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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/00 20060101AFI20220406BHJP
   B43K 3/00 20060101ALI20220406BHJP
   B43K 3/04 20060101ALI20220406BHJP
   B43K 7/12 20060101ALI20220406BHJP
【FI】
B43K7/00 100
B43K3/00 F
B43K3/00 H
B43K3/04
B43K7/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018125322
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020001350
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 玄樹
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116031(JP,A)
【文献】実開平6-50884(JP,U)
【文献】実開昭56-17176(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 7/00
B43K 3/00
B43K 3/04
B43K 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と該軸筒の前部に係止された先口とを有し、前記軸筒の内部に配設され前記先口の前端開口部から前端部が突出する筆記体と、前記軸筒の外周部に配設された把持体と、を備えた筆記具であって、
前記把持体が円筒状の把持部と、前記把持部を固定する固定部とを有し、
前記軸筒の外面に、前記把持体が装着される装着部が形成されると共に、前記装着部に前記把持体の固定部に形成された係止部と係止する被係止部が形成され、
前記先口と前記軸筒とを係止させた状態で、前記先口と前記軸筒とが前記把持体の一方の開口部側から挿入され、前記軸筒の被係止部と前記把持体の係止部とを係止することで前記把持体を前記軸筒に対して着脱自在に構成すると共に、前記軸筒の被係止部と前記把持体の係止部との係止状態を解除して前記把持体を前記軸筒から取り外し、前記先口と前記軸筒とを前記把持体の他方の開口部側から挿入して前記軸筒の被係止部と前記把持体の係止部とを着脱自在に係止することで、前記軸筒に対して前記把持体を前後両方向から着脱可能に構成したことを特徴とする筆記具。
【請求項2】
前記把持体の把持部の少なくとも一部がゴム弾性を有する合成樹脂で形成されると共に、前記把持体の固定部が複数の部材で構成され、前記把持部を複数の前記固定部で狭持して固定するよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記把持体の固定部に形成する係止部を前後に分けて形成すると共に、前後それぞれの係止部と前記軸筒の装着部に形成した被係止部とを係止可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記把持体の係止部と前記軸筒の被係止部とを螺合により係止したことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の筆記具。
【請求項5】
前記把持体の前後方向を逆にして前記軸筒に装着することで前記筆記具の重心位置が軸筒の軸方向に沿って前後に移動するよう構成したことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の筆記具。
【請求項6】
前記固定部を構成する複数の部材の内、少なくとも1部品以上が金属材料で形成されていることを特徴とする請求項2ないし5の何れか1項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関するものであり、特に軸筒を取り囲む把持体を備えた筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具は、筆記時の疲労を軽減することや、筆記具を把持した際に滑らないよう把持部の形状や材質、形成する方法に工夫がなされてきた。把持部の形成方法としては、軸筒の外周面に形成した取付部に把持部を有する把持体を装着し、軸筒の前部に先口を取り付け、把持体を軸筒と先口とで狭持して固定する方法、または、軸筒の外面に溝や凸部、軸径の大小部を直接形成する方法、または、軸筒の外面に二色成形等を用いて把持部を一体的に形成する方法等が一般的に用いられている。一方、使用者が筆記具を把持した際に掴み易く且つ筆記し易いかどうかについては、使用者の手の大きさ、握力、趣向、疲労状態等により変化する。このため、筆記具を把持した際の触感を任意に変えられるものが望まれるが、前述した把持部を形成する方法では、軸筒に把持部を一体的に設けている場合は把持感触を変更することは困難であり、また、軸筒と先口で把持体を狭持する方法でも、把持体を装着する向きは通常決まっており、把持した際の触感を変えるには新しい把持体を用意して付け替える必要があった。
【0003】
これを解決する方法として、実開平6-50884「筆記具における軸筒」には、把持部に外面処理の異なる環体を複数個、着脱自在に配置し、複数の環体を組み替えることにより、使用者の触感の好みに合わせて把持部を構成し、把持感触を変更することができる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-50884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実開平6-50884「筆記具における軸筒」では、複数の環体を組み替えることで把持感触は使用者の好みに合わせることが可能であるが、組み替える際には先部材を外してから複数の環体を取り外したり、個々に凹凸嵌合ないし螺子嵌合等で固定されている複数の環体を軸筒から取り外してから組み替える必要があり手間が掛かっていた。
【0006】
本発明は以上の知見からなされたものであって、軸筒から先口を取り外すことなく、使用者の好みによって把持した際の把持感触を容易に変更可能な筆記具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
「1.軸筒と該軸筒の前部に係止された先口とを有し、前記軸筒の内部に配設され前記先口の前端開口部から前端部が突出する筆記体と、前記軸筒の外周部に配設された把持体と、を備えた筆記具であって、
前記把持体が円筒状の把持部と、前記把持部を固定する固定部とを有し、
前記軸筒の外面に、前記把持体が装着される装着部が形成されると共に、前記装着部に前記把持体の固定部に形成された係止部と係止する被係止部が形成され、
前記先口と前記軸筒とを係止させた状態で、前記先口と前記軸筒とが前記把持体の一方の開口部側から挿入され、前記軸筒の被係止部と前記把持体の係止部とを係止することで前記把持体を前記軸筒に対して着脱自在に構成すると共に、前記軸筒の被係止部と前記把持体の係止部との係止状態を解除して前記把持体を前記軸筒から取り外し、前記先口と前記軸筒とを前記把持体の他方の開口部側から挿入して前記軸筒の被係止部と前記把持体の係止部とを着脱自在に係止することで、前記軸筒に対して前記把持体を前後両方向から着脱可能に構成したことを特徴とする筆記具。
2.前記把持体の把持部の少なくとも一部がゴム弾性を有する合成樹脂で形成されると共に、前記把持体の固定部が複数の部材で構成され、前記把持部を複数の前記固定部で狭持して固定するよう構成したことを特徴とする前記1項に記載の筆記具。
3.前記把持体の固定部に形成する係止部を前後に分けて形成すると共に、前後それぞれの係止部と前記軸筒の装着部に形成した被係止部とを係止可能としたことを特徴とする前記1項または2項に記載の筆記具。
4.前記把持体の係止部と前記軸筒の被係止部とを螺合により係止したことを特徴とする前記1項ないし3項の何れか1項に記載の筆記具。
5.前記把持体の前後方向を逆にして前記軸筒に装着することで前記筆記具の重心位置が軸筒の軸方向に沿って前後に移動するよう構成したことを特徴とする前記1項ないし4項の何れか1項に記載の筆記具。
6.前記固定部を構成する複数の部材の内、少なくとも1部品以上が金属材料で形成されていることを特徴とする前記2項ないし5項の何れか1項に記載の筆記具。」である。
【0008】
本発明によれば、先口と軸筒とが係止した状態で、把持体の一方の開口部または他方の開口部のどちら側からでも先口および軸筒を挿入して軸筒の装着部に対して着脱自在に構成してあることから、先口を外すことなく把持体を軸筒から取り外し、前後方向を逆にして再装着することができる。このため、把持感触や外観を使用者の好みに合わせて容易に変更することができる。
また、軸筒の装着部に形成した被係止部と把持体の内面に形成した係止部との係止手段としては、容易に着脱することができると共に、筆記時や持ち運び時に把持体に力が掛かっても簡単には外れることがないよう構成することが好ましく、その手段は特に限定されることはないが、例えば、係止部に雌螺子部を設け、被係止部に雄螺子部を設けて螺合により着脱不能に係止してもよく、係止部と被係止部とを乗り越え嵌合などでしっかり係止した後、係止部や被係止部に対して指で押圧する等、部分的に力を加えることで係止状態を解除可能に構成してもよい。
【0009】
また、把持体の把持部の少なくとも一部がゴム弾性を有する合成樹脂で形成することが好ましく、これにより把持体を把持した際に把持部が撓むことでしっかり保持することができる。また、把持部を合成樹脂で一体的に形成する場合、把持体を軸筒に対して前後逆に係止することで把持感触が変わるように、把持部の前後の外径に径差をつけたり、曲率面と平面等、形状に差をつけたり、表面に凹凸部を設けて触感や滑り難さを変えてもよい。
尚、ゴム弾性を有する合成樹脂材料としては、例えば、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー、ニトリルゴム、ウレタンゴム、イソチレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム等の中から選択することができる。
そして、本発明の筆記具を把持して筆記する際、把持体の把持部で把持してもよく、固定部を把持して筆記してもよい。そして、固定部の外周面には塗装や凹凸面(例えばローレット加工等)を施して外観性や滑り難さを向上させてもよい。
【0010】
また、把持体の把持部は複数の固定部により狭持するよう構成することが好ましく、これにより、把持部の少なくとも一部をゴム弾性を有する合成樹脂で形成した際に、把持部が固定部により狭持されてしっかり固定されることから、把持部が把持体の中で前後にずれることを防止することができる。そして、把持体を軸筒からの取り外し、前後方向を逆にして再取り付けする動作がし易くなる効果を奏する。
【0011】
更に、把持体の内周面に形成する係止部は、1箇所に形成してもよく、複数に分けて形成してもよいが、係止部を前後に分けて形成し、把持体を前後逆に取り付ける際に前後それぞれの係止部と被係止部とが係止可能に構成することが好ましい。
これは、係止部を1箇所で形成する場合、係止部は前後どちらからでも軸筒に装着できるよう把持体の前後方向における中間位置に形成する必要があり、係止部と被係止部とを係止させ難くなるが、係止部を把持体の前後に分けて形成する場合、係止部を把持体の両端部に近い位置に形成することができるため、加工及び組み立てが容易となるためである。
【0012】
また、把持体の係止部と軸筒の被係止部との係止手段は、前述したように特に限定されることはないが、螺合を用いて係止することが好ましく、これは、本発明の筆記具を把持部で把持することで筆記をする場合、把持部を含め把持体には軸筒の軸方向に沿って筆記先端側に力が掛かるが、螺合で固定する場合、取り付け及び取り外し方向が軸筒の軸方向に対して略直交方向となるため、筆記時に把持体と軸筒との係止状態が緩んで外れやすくなることを防止できるためである。
尚、係止部と被係止部とを螺合により係止する場合、筆記時の振動により螺合状態が緩むことがないよう、緩み防止手段を設けることがより好ましく、その手段としては軸筒と把持体との間にゴム弾性を有する合成樹脂(例えば、ニトリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等で形成されたOリング)等を挟むことで緩みを防止してもよい。
【0013】
更に、軸筒に対する把持体の取り付け方向を前後逆にすることで筆記具の重心位置が変化するよう構成することが好ましく、この場合、先口を軸筒から外すことなく把持感触や外観を使用者の好みに合わせて容易に変更することができる。
【0014】
そして、把持体の固定部を構成する複数の部材の内、少なくとも1部品以上が金属材料を用いて形成されることが好ましく、この場合、金属材料は比重が高いことから軸筒に対する把持体の取り付け方向を前後逆した際に重心位置を変化させ易くなると共に、表面に塗装やメッキ処理、ローレット加工等を施すことが容易となるため、外観性の向上や、把持感触、滑り難さ等を調整し易く、把持体を前後逆にした際の把持感触や外観に変化をつけ易い効果を奏する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軸筒から先口を取り外すことなく、使用者の好みによって把持した際の把持感触を容易に変更可能な筆記具を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1のボールペンの側面図である。
図2】実施例1のボールペンの縦断面図である。
図3】把持体を分解した拡大側面図(一部断面図)である。
図4図1において、ボールペンレフィル(筆記体)を先口の前端開口部から前方へ突出させた状態を示す縦断面図である。
図5図1において、把持体を取り外した状態を示す説明図である。
図6図4において、把持体を前後逆にして付け替える状態を示す説明図である。
図7図1において、把持体を前後逆に付け替えた状態を示す側面図である。
図8図1において、把持体を前後逆に付け替えた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照しながら本発明の筆記具1をボールペンを用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
尚、本発明で、「前方」とは、筆記具における先口側を指し、「後方」とは、その反対側を指す。また、「内方」とは、軸筒の外周部から軸心に向かう方向を指し、「外方」とは、その反対方向を指す
【0018】
実施例1
本実施例の筆記具1は、ノック式のボールペンであり、図1及び図2に示すように、軸筒2と、軸筒2内に前後に摺動可能に収納されたボールペンレフィル3(筆記体)と、ボールペンレフィル3の後方に配設された回転カム4と、回転カム4の後方に配置され軸筒2の後部開口部2aから後方に向かって突出するノック体5と、軸筒2の側面に嵌着された金属製のクリップ6と、軸筒2の前部に軸周方向に取り囲むように配設された把持体7と、軸筒2の前部に螺合により着脱自在に係止された先口8と、により構成してある。
また、軸筒2は、軸筒本体9と、軸筒本体9の後部に着脱不能に嵌着された後軸体10と、により構成してある。
【0019】
ボールペンレフィル3は、図2に示すように、PP樹脂(比重:0.90)からなるインキ収容筒11に筆記具用インキ組成物を直接収容し、インキ収容筒11の前端開口部にボール(φ0.70mm)を回転自在に抱持したステンレス製(比重:7.85)のボールペンチップ12の後端部をインキ収容筒11の前端部に圧入嵌合して得たものである。
【0020】
軸筒本体9は、図1図2図4及び図5に示すように、PC樹脂(比重:1.2)を用いて筒状に形成され、前部外周面9aに把持体7が装着される装着部9bが形成してある。また、装着部9bの後部には、後述する把持体7の係止部と係止する被係止部として第一の雄螺子部9cを形成し、更に、軸周方向に延びる溝部9dが形成してある。
そして、軸筒本体9の前部外周面には、第二の雄螺子部9eを形成してある。
【0021】
把持体7は、図1から図5に示すように、筒状に形成されており、前後方向に貫通する内孔7aを形成してある。また、把持体7の、前部開口部7b(他方の開口部)の内面(内孔7aの前部)には、軸筒本体9(軸筒2)の第一の雄螺子部9c(被係止部)と係止するための係止部として前部雌螺子部7cが形成してあり、後部開口部7d(一方の開口部)の内面(内孔7aの後部)には、前部雌螺子部7cと同様に、軸筒本体9(軸筒2)の第一の雄螺子部9c(被係止部)と係止するための係止部として後部雌螺子部7eを形成してある。
【0022】
また、把持体7は、各々筒状に形成された第一の固定部材13と第二の固定部材14により把持部15と継手16とを狭持して嵌着することで一体に構成してある。
【0023】
第一の固定部材13について詳述すると、図1から図5に示すように、第一の固定部材13は金属材料である黄銅(比重:8.4)を用いて筒状に切削加工後、表面にクロムメッキを施してあり、前部に比べて後部を径小に形成してある。また、後部外周面には、その前部に軸周方向に沿って延び、外方へ突出する第一の固定部13aを形成すると共に、その後部には軸周方向に延び、外方へ突出する後部係着部13bを形成してある。また、前部内周面には前述した前部雌螺子部7cが形成してある。
【0024】
第二の固定部材14について詳述すると、図1から図5に示すように、金属材料である黄銅(比重:8.4)を用いて筒状に切削加工後、表面にクロムメッキを施してあり、後部に比べて前部を径小に形成してある。また、前部外周面には、その後部に軸周方向に沿って延びる段状の第二の固定部14aを形成すると共に、その前部には軸周方向に延び外方へ突出する前部係着部14bを形成してある。更に、後部内周面には前述した後部雌螺子部7eを形成してある。
尚、第二の固定部材14の後部外周面14cには機械加工によりローレット加工を施すことで、指で把持した際に滑り難くしてある。
【0025】
継手16について詳述すると、図2から図5に示すように、継手16は金属材料である黄銅(比重:8.4)を用いて筒状に形成してあり、前部内面に第一の固定部材13の後部係着部13bが着脱不能に圧入装着され、後部内面には第二固定部材14の前部係着部14bが着脱不能に圧入装着してある。
【0026】
把持部15について詳述すると、図1から図5に示すように、把持部15は樹脂材料であるシリコンゴム(比重:1.2)を用いて筒状に形成してある。
尚、第一の固定部材13と第二の固定部材14とを継手16を挟んで各々を圧入して係止することで、第一の固定部13aと第二の固定部14aと継手16の外周面16aとが一体となり、把持部15を狭持して装着する固定部7fとなる。
【0027】
また、把持体7は係止部である後部雌螺子部7eと軸筒本体9の被係止部である第一の雄螺子部9cとを螺着することで軸筒本体9(軸筒2)の装着部9bに着脱自在に係止してあり、装着する際、軸筒本体9と把持体7との間にOリング17が挟まれ、つぶれることで後部雌螺子部7eと第一の雄螺子部9cとの螺着状態を強固にして把持体7が軸筒2から緩んで外れることを防止してある。
そして、図5に示すように、把持体7の後部開口部7e(一方の開口部)の外径寸法L1と、前部開口部7b(他方の開口部)の外径寸法L2とは、略同一の寸法で形成してある。
更に、軸筒本体8の中央外周部8dと把持体7の後部開口部7eの外径寸法L3を略同一に形成することで、把持体7の前後方向を入れ替えても軸筒本体8との各外周部が段差のない連続面となるよう形成してある。
【0028】
また、第二の固定部材14は、第一の固定部材13及び継手16と同様に比重の高い金属材料で形成されると共に、第一の固定部材13及び継手16に比して体積を大きく形成してあるため、把持体7の前後方向における重心は筆記具1の長手方向における中央付近に位置するよう構成してある。
【0029】
尚、本実施例では、把持体7の固定部7fを3部品で構成した場合を例示したが、2部品で狭持させてもよく、4部品以上の部品を各々連結させて1体的に構成してもよく、1部品で把持体7の固定部7fを構成してもよい。そして、1部品で構成する場合は部品が減ることで組立工数が減りコストダウンが可能であり、2部品以上で把持部15を狭持して固定することで把持部15を柔らかい材質で形成しても固定部7fから把持部15が脱落することを防止することができる。
また、本実施例では筒状の継手16を用いているため、継手16の長さを変えることで把持体7を長手方向に伸ばしたり短く形成することが容易である。更に、外観部品となる第一の固定部材13及び第二の固定部材14の全長を短く形成できるため、メッキや塗装等の加飾に掛かる費用を抑えることができると共に、化学処理や機械処理による外周面へのローレット加工、切削加工による成形等がし易くなることで製作時のコストを抑える効果を奏する。
【0030】
次に、先口8について詳述すると、先口8は金属材料である黄銅(比重:8.4)を用いて形成してあり、図2に示すように、前部にボールペンレフィル3のボールペンチップ12が前方に向かって突出可能な前端開口部8aを形成してある。尚、前端開口部8aの内径寸法は、ボールペンレフィル3が軸筒2内で前後に摺動可能になるように、ボールペンチップ12の外径寸法より若干大きく形成してある。
また、先口8の後部内面には、軸筒本体9の雄螺子部9cと着脱自在に螺合により係止する雌螺子部8bが形成してあり、更に、先口8の内面に形成された内段部8cとボールペンレフィル3の外段部3aとの間にコイルスプリング18を張架することで、コイルスプリング18によりボールペンレフィル3を後方に弾発してある。
【0031】
また、後軸体10について詳述すると、後軸体10はPC樹脂(比重:1.2)を用いて形成してある。そして、図1に示すように、後軸体10は前筒部10aと後筒部10bで構成されており、前筒部10aは後筒部10bより小径で形成してある。更に、前筒部10aには外方に突出する係止突部10cが形成してあり、係止突部10cと軸筒本体9の内面に形成した係止凹部9fとを係着することで、軸筒本体9に後軸体10を着脱不能に嵌着し、軸筒本体9と後軸体10とで軸筒2を構成してある。
また、後筒部10bの外周面には外方に突出する突起部10dを形成してあり、突起部10dにクリップ6を嵌着し固定してある。
【0032】
更に、後軸体10の内部には、ノック操作によりボールペンレフィル3を先口8の前部開口部8aから出没させる一般的にボールペンで使用されている回転カム機構19を形成してある。
【0033】
回転カム機構19には、軸筒2の内部に配設したボールペンレフィル3の出没切替のための回転カム4と、後軸体10の内周面に回転カム4に係合するカム溝10eと、を設けてある。そして、ボールペンレフィル3の前端が軸筒2内に没入した状態(図1参照)でノック体5が前方へ押圧操作(ノック操作)されると、ノック体5に押されて回転カム4がカム溝10eに沿って前方へ摺動し、回転カム4に押されたボールペンレフィル3の前端が先口8の前端開口部8aから前方へ突出され、更に、回転カム機構19の作用により回転カム4が回転されることによって、回転カム4は軸筒本体9の内段に当接して軸方向後方への相対移動が禁止され、押圧操作の終了後もボールペンレフィル3の前端の突出状態が維持される図4の状態となる。
また、図4のボールペンレフィル3の前端が突出した状態で、再度ノック体5が前方へ押圧操作(ノック操作)されると、回転カム機構19の作用によって回転カム4の軸方向後方への相対移動が許容され、コイルスプリング18の弾発力によってボールペンレフィル3及びノック体5が軸方向後方に押し戻されて初期状態(図1の状態)に復帰するように構成してある。
尚、ノック体5はABS樹脂(比重:1.05)を用いて形成し、回転カム4はPOM樹脂(比重:1.4)を用いて形成してある。
【0034】
ここで、図2及び図4から図8を用いて把持体7の前後方向を入れ替え、軸筒本体9(軸筒2)の前部外周面9aの装着部9bに取り付けることで把持感触、筆記感及び重心位置が変化することを説明する。
図2に示すように、把持体7は軸筒本体9(軸筒2)の装着部9bに螺着されており、軸筒本体9に対して把持体7を反時計回り(左回し)することで、把持体7の後部雌螺子部7eと軸筒本体9の第一の雄螺子部9cとの螺合を解除し、その状態で、軸筒2に対して把持体7を前方へ引き抜くことで先口8を取り外すことなく容易に把持体7を軸筒2から取り外すことができる。(図5の状態)
図5の状態で、図6のように把持体7の前後方向を逆にして先口8と軸筒2とを把持体7の前部開口部から再挿入し、軸筒本体の第一の雄螺子部9cと把持体7の前部雌螺子部7cとを螺着することで把持体7を軸筒2に先口8を取り外すことなく容易に取り付けることができる。(図7及び図8の状態)
【0035】
この時、最重量部である金属製の第二の固定部材14が把持体7における後方側から前方側に移動することで筆記具1の重心位置が軸筒2の前方側へ移動するため、筆記先端のブレが小さくなることで筆記動作が安定する。そして、把持体7の第二の固定部材14が手で把持する際の把持位置に移動し、第二の固定部材14の表面には機械的処理によるローレット加工を施してあることから滑り難くしっかり把持することができると共に筆圧をかけて筆記したい場合等に使用し易いものとなる。逆に、重量部である第二の固定部14が後方側にある図1の状態では、筆記具1の重心位置が軸筒2の中央付近に位置するため、筆記先端部が動かし易くなることで小さな文字を書いたり、軽く握って筆記したい場合に使い易いものとなる。また、この際、シリコンゴムで形成した把持体7の把持部15が把持位置にあるため、軽く把持して筆記しても滑り難いものとなった。
尚、具体的に、本実施例における筆記具1の筆記時の重心位置は、把持体7が図4の向きにある場合は、ボールペンチップ12のボールの先端から53.3mm、把持体の前後方向を逆にして再装着した場合では、ボールペンチップ12のボールの先端から47.8mmとなるため、図1の状態から図7のように把持体7の前後方向を入れ替えることで重心が前方側へ移動し、これにより把持感触が変化した。
【0036】
また、本実施の形態では、便宜上、回転カムを用いたノック式ボールペンを例示してあるが、他の繰り出し構造を有するノック式筆記具やキャップ式筆記具にも広く実施することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…筆記具、
2…軸筒、2a…後部開口部、
3…ボールペンレフィル、3a…外段部、
4…回転カム、
5…ノック体、
6…クリップ、
7…把持体、7a…内孔、7b…前部開口部(一方の開口部)、
7c…前部雌螺子部(係止部)、7d…後部開口部(他方の開口部)、
7e…後部雌螺子部(係止部)、7f…固定部、
8…先口、8a…前端開口部、8b…雌螺子部、8c…内段部、8d…中央外周部
9…軸筒本体、9a…前部外周面、9b…装着部、9c…第一の雄螺子部(被係止部)、
9d…溝部、9e…第二の雄螺子部、9f…係止凹部、
10…後軸体、10a…前筒部、10b…後筒部、10c…係止突部、
10d…突起部、10e…カム溝、
11インキ収容筒、
12…ボールペンチップ、
13…第一の固定部材、13a…第一の固定部、13b…後部係着部、
14…第二の固定部材、14a…第二の固定部、14b…前部係着部、
15…把持部、
16…継手、16a…外周面、
17…Oリング、
18…コイルスプリング、
19…回転カム機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8