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特許7054382燃料電池モジュール、燃料電池装置および燃料電池モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール、燃料電池装置および燃料電池モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20220406BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20220406BHJP
   H01M 8/2475 20160101ALI20220406BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220406BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/0612
H01M8/2475
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/12 102C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018524017
(86)(22)【出願日】2017-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2017022215
(87)【国際公開番号】W WO2017221813
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2018-12-12
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2016122166
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 光博
(72)【発明者】
【氏名】嶌田 光隆
(72)【発明者】
【氏名】山内 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】横尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴之
(72)【発明者】
【氏名】神林 達也
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】関口 哲生
【審判官】木戸 優華
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-331881(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141304(WO,A1)
【文献】特開2016-71947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを配列してなるセルスタックと、各燃料電池セルの燃料ガス供給側端部に連結されて各燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドと、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器とを備えるセルスタック装置と、
酸素含有ガスを吐出する吐出口を有し、酸素含有ガスを前記各燃料電池セルに供給する酸素含有ガス導入板と、
前記セルスタック装置および酸素含有ガス導入板を収容する収納容器と、を備え、
前記収納容器は、前記セルスタック装置の前記燃料電池セルの配列方向に沿った側方側の最も大きな一面が開口した箱体と該開口を塞ぐ蓋体とからなり、
前記箱体の開口は、前記セルスタック装置の前記燃料電池セルの配列方向に沿った側方側から見たときに、前記セルスタック装置の投影面を包含する大きさを有し、
前記酸素含有ガス導入板が、前記セルスタック装置よりも前記箱体の前記開口と反対側に位置する底面側にのみ配置されている燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記酸素含有ガス導入板は、酸素含有ガス導入口を有する基端部が、前記改質器側に位置し、酸素含有ガス吐出口を有する先端部が、前記セルスタック装置のマニホールドまで延びている請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記セルスタック装置を前記酸素含有ガス導入板に固定する固定部材を備える請求項1または2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記固定部材は、少なくとも一部が前記マニホールドの前記酸素含有ガス導入板と反対側の外面と当接し、少なくとも一端部が前記酸素含有ガス導入板に締結されている請求項3に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記セルスタック装置の前記燃料電池セルの配列方向に沿った側方側であって、前記セルスタック装置と前記収納容器との間に介在配置される側部断熱材と、
前記セルスタックを保持するセルスタック保持用断熱材と、をさらに備え、
前記セルスタック保持用断熱材が、前記側部断熱材のセルスタック側の面に設けられた凹部に嵌入されている請求項1~4のいずれか1つに記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
前記改質器は、前記燃料電池セルを挟んで前記マニホールドとは反対側に配設されており、前記側部断熱材の一方の端部が、前記改質器近傍まで延設されている請求項5に記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールを作動させるための補機とを外装ケース内に収納してなる燃料電池装置。
【請求項8】
複数の燃料電池セルを配列してなるセルスタックと、各燃料電池セルの燃料ガス供給側端部に連結されて各燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドと、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器とを備えるセルスタック装置と、該セルスタック装置を収容する収納容器であって、収容されたときに前記セルスタック装置の前記燃料電池セルの配列方向に沿った側方側の最も大きな一面に、前記セルスタック装置の前記燃料電池セルの配列方向に沿った側方側から見たときに、前記セルスタック装置の投影面を包含する大きさを有する、セルスタック装置装填用の開口が設けられた箱体と該開口を塞ぐ蓋体とからなる収納容器と、を準備する工程と、
前記収納容器の箱体を、前記セルスタック装置装填用の開口を上に向ける工程と、
前記準備工程で準備された前記セルスタック装置を横倒しにして、横倒し状態のまま前記開口から前記箱体内に挿入することで位置決めされる工程と、
前記セルスタック装置の装填の前および/または後に、前記箱体内の該セルスタック装置に対して前記箱体の底面側または開口側に、酸素含有ガス導入板を取り付ける工程と、
前記箱体の開口を前記蓋体で閉鎖する工程と、を備える燃料電池モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記セルスタック装置の装填の前に、前記開口から見た箱体の底面に、一方の側部断熱材を載置する工程と、
前記セルスタック装置の装填の後に、挿入された前記セルスタック装置の上方に、他方の側部断熱材を載置する工程と、を備える請求項8に記載の燃料電池モジュールの製造方法。
【請求項10】
前記セルスタック装置の前記燃料電池セルを保持するセルスタック保持用断熱材をさらに備え、
セルスタック装置側の面に凹部が設けられた前記側部断熱材を少なくとも1つ準備する工程と、
前記凹部が設けられた前記側部断熱材に前記セルスタック保持用断熱材を嵌入して、該側部断熱材を前記収納容器内に載置する、もしくは、前記セルスタック保持用断熱材を載置し、該セルスタック保持用断熱材に前記側部断熱材の凹部を嵌入して該側部断熱材を前記収納容器内に載置する工程と、を備える請求項9に記載の燃料電池モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記開口から見た箱体の底面に、前記一方の側部断熱材を装填する工程に引き続いて、
前記酸素含有ガス導入板を取り付ける工程と、
前記酸素含有ガス導入板に前記セルスタック保持用断熱材を載置する工程と、
該セルスタック保持用断熱材の上に、前記セルスタック装置を載置する工程と、
前記セルスタック保持用断熱材に凹部を有する前記他方の側部断熱材を嵌入した該他方の側部断熱材を前記セルスタック装置の上に載置する、もしくは、前記セルスタック装置の上に前記セルスタック保持用断熱材を載置した後、前記セルスタック保持用断熱材に凹部を有する前記他方の側部断熱材を嵌入して該他方の側部断熱材を前記セルスタック装置の上に載置する工程と、を備える請求項10に記載の燃料電池モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュール、燃料電池装置と、燃料電池モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の構成として、収納容器内に、燃料ガス(水素含有ガス)と空気(酸素含有ガス)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルを複数積層したセルスタックを備える燃料電池モジュールと、該燃料電池モジュールおよびその動作に必要な補機類を外装ケース等の筐体に収納した燃料電池装置とが、種々提案されている(たとえば、特許文献1,2を参照。)。
【0003】
上述の燃料電池モジュールにおいては、収納容器の前後の板を取り外し、その内部にセルスタックを挿入して、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/119615号
【文献】特開2009-158121号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の燃料電池モジュールは、複数の燃料電池セルを配列してなるセルスタックと、各燃料電池セルの燃料ガス供給側端部に連結されて各燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドと、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器とを備えるセルスタック装置と、酸素含有ガスを吐出する吐出口を有し、酸素含有ガスを前記各燃料電池セルに供給する酸素含有ガス導入板と、前記セルスタック装置および酸素含有ガス導入板を収容する収納容器と、を備える。前記収納容器は、一面が開口した箱体と該開口を塞ぐ蓋体とからなり、前記箱体の開口は、前記セルスタック装置の側方側から見た前記セルスタック装置の投影面の最大長さより大きな開口長さを有する。さらに、前記酸素含有ガス導入板は、前記セルスタック装置よりも前記開口から見た箱体の底面側にのみ配置されている。
【0006】
また、本開示の燃料電池装置は、前記燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールを作動させるための補機とを外装ケースに内に収納したものである。
【0007】
またさらに、本開示の燃料電池モジュールの製造方法は、複数の燃料電池セルを配列してなるセルスタックと、各燃料電池セルの燃料ガス供給側端部に連結されて各燃料電池セルに燃料ガスを供給するマニホールドと、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器とを備えるセルスタック装置と、該セルスタック装置を収容する収納容器であって、その一面に、前記セル配列の横方向から見た前記セルスタック装置の投影面の最大長さより大きな開口長さを有する、セルスタック装置装填用の開口が設けられた箱体と該開口を塞ぐ蓋体とからなる収納容器と、を準備する工程と、
前記収納容器の箱体を、前記セルスタック装置装填用の開口を上に向ける工程と、
前記準備工程で準備された前記セルスタック装置を横倒しにして、横倒し状態のまま前記開口から前記箱体内に挿入して位置決めする工程と、
前記セルスタック装置の装填の前および/または後に、前記箱体内の該セルスタック装置の周囲に、酸素含有ガス導入板を取り付ける工程と、
前記箱体の開口を前記蓋体で閉鎖する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とから、より明確になるであろう。
図1】第1実施形態の燃料電池モジュールの構成を示す分解斜視図である。
図2】2A~2Fは順に、第1実施形態の燃料電池モジュールの組み立て手順を説明する図である。
図3】第1実施形態の燃料電池モジュールの内部構成を示す断面図である。
図4】第2実施形態の燃料電池モジュールの内部構成を示す断面図である。
図5】第3実施形態の燃料電池モジュールの内部構成を示す断面図である。
図6】第4実施形態の燃料電池モジュールの構成を示す分解斜視図である。
図7】第4実施形態の燃料電池モジュールの内部構成を示す断面図である。
図8】実施形態のインナーケースの長孔の拡大図である。
図9】実施形態の燃料電池モジュールを用いた燃料電池装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参考にして、実施形態を詳細に説明する。
図1は、第1実施形態の燃料電池モジュール10の構成を示す分解斜視図であり、図2はその組み立て手順を示す図、図3はその内部構成を示す断面図である。なお、図1および図2は、モジュール組み立て作業のために、燃料電池モジュール10を作業台等に容器開口(大形開口1c)を上にして載置した状態(いわゆる「横倒し」あるいは「寝かせた」状態)を示している。また、組み立て後に輸送や使用される場合は、図3の断面図のように、容器開口を側面にしてセルスタック2Aを正立させた状態(立てた状態)で用いられる。
【0010】
図に示す第1実施形態の燃料電池モジュール10は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。組み立て後の完成図(図3の断面図)に示すように、その構成は、容器の内壁(インナーケース1B)と容器の外壁(アウターカバー1A)との間にガス流路が形成された二重構造の収納容器1の内側に、底部断熱材6および側部断熱材7A,7B等から構成される内側断熱材を配設してその内部(中央)空間に発電室11と燃焼室12とを形成し、これら各室の中に、セルスタック2A,マニホールド2Bおよび改質器2C等からなるセルスタック装置2を収容した構成をとる。
【0011】
なお、発電室11と燃焼室12とは一体化されていてもよい。また、底部断熱材6、側部断熱材7A,7Bの「底部」、「側部」とは、組み立て後の稼動状態(図3)で底部側、側部側に位置するという意味である。すなわち、図1図2のように組み立て中の場合は、底部断熱材6は横倒しになったセルスタック2Aの側方に位置し、側部断熱材7A,7Bは、横倒しになったセルスタック2Aの下側に相当する、インナーケース1Bの箱体底部1d(底面)側か、横倒しになったセルスタック2A上側の蓋体(クローズドプレート5)側に位置する。
【0012】
この燃料電池モジュール10の最大の特徴は、その収納容器1として、図1図2に示すような一面が大きく開口する箱体(インナーケース1B)を用いたことである。この箱体の上面に位置する大形開口1cは、図のように横倒しにしたセルスタック装置2を開口の上側から挿入できるように、その開口長さまたは開口径(対角長さ)が、マニホールド2Bおよび改質器2Cを含むセルスタック装置2の側面サイズ(セルスタック装置2のセル配列の側方側から見た装置投影面の最大長さまたは最大横断径)より大きくなっている。これにより、セルスタック装置2を、容器(箱体)内で移動させたりすることなく、容器内の所定の位置に、一度の作業で、容易にかつ正確に収めることができる。
【0013】
上記燃料電池モジュール10の構成と製造方法(組み立て)について、詳しく説明する。燃料電池モジュール10は、図1の分解斜視図に下から順に示すように、アウターカバー1Aとインナーケース1Bとからなる収納容器1、側部断熱材の一方(箱体底面側)をなす側部断熱材7A、燃料電池セルに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス導入板3、酸素含有ガス導入板3の上面に配置されたリブ状のセルスタック保持用断熱材8A,8B、先に述べたマニホールド2Bおよび改質器2Cを含むセルスタック装置2と、そのマニホールド2B側の側面に配設される底部断熱材6、側部断熱材の他方(箱体開口側)をなす側部断熱材7Bと、その下面側に取り付けられるとともにセルスタック保持用断熱材8A,8Bと対をなすセルスタック保持用断熱材8C,8D、および、収納容器1(インナーケース1B)を塞ぐペーパーガスケット4とクローズドプレート5等、から構成されている。なお、一部の部材を省略してもよく、また他の部材を追加してもよい。
【0014】
そして、インナーケース1B内に収容される、セルスタック装置2を含む各部材、すなわち酸素含有ガス導入板3、底部断熱材6、側部断熱材7A,7B、セルスタック保持用断熱材8A,8B,8C,8D等は、セルスタック装置2と同様、インナーケース1Bのセルスタック装置挿入用の大形開口1cより小さなサイズとされている。これらの各部材は、この大形開口1cから、箱体底部1d(開口から見た箱体の底面)に向けて、容易に挿入できるようになっている。
【0015】
そして、燃料電池モジュール10を組み立てる際は、まず、セルスタック装置2と、セルスタック装置挿入用の大形開口1cを備える収納容器1の箱体であるインナーケース1Bとを準備し、この大形開口1cを上に向けて、図2〔FIG.2A〕のように作業台等の上に載置する。
【0016】
つぎに、上記大形開口1cからインナーケース1Bの箱体底部1dに、容器全体を立てた(正立させた)際に容器内側の発電室11等の側壁を形成する側部断熱材7Aを、図2〔FIG.2B〕のように挿入して載置する。続いて、酸素含有ガス導入板3をインナーケース1Bの内壁に設けられた酸素含有ガス流路13の酸素含有ガス導出口1eから挿入して、この側部断熱材7Aの上側に載置し、その酸素含有ガス導入口3d側の基端部3bを、図3に示すように、酸素含有ガス導出口1eに、溶接やねじ止め等(図示省略)により固定する。
【0017】
なお、図3に示すような内部構成を有する燃料電池モジュール10においては、後述する燃料ガス燃焼後の排ガスを熱交換器まで送給する排ガス流路16,17,18を構成するための部材を、側部断熱材7Aを配置する前にインナーケース1Bに設けて、その部材の上に、側部断熱材7Aを載置することができる。以下の第2,第3実施形態における燃料電池モジュール20,30も同様である。
【0018】
また、この実施形態では、酸素含有ガス導入板3をセルスタック装置2より先に挿入・載置する場合、すなわち、酸素含有ガス導入板3がセルスタック装置2よりも箱体底部1d(開口1cから見た箱体の底面)側に配設される場合を示したが、後記の第4実施形態(図6図7)のように酸素含有ガス導入板3をセルスタック装置2よりも後(大形開口1c側)に挿入・載置する場合や、セルスタック装置2の上下両側(大形開口1c側および箱体底部1d側)に配設する場合もある。
【0019】
ここで、酸素含有ガス導入板3を溶接にて固定する場合においては、本実施形態のように酸素含有ガス導入板3をセルスタック装置2よりも先に挿入・載置した場合、酸素含有ガス導入板3を溶接によって固定した後に、セルスタック装置2を挿入すればよいことから、セルスタック装置2が溶接による熱的影響を受けることがなく、また気密を保持することが容易になるという利点がある。なお、酸素含有ガス導入板3をねじ止めする場合には、酸素含有ガス導入板3は、セルスタック装置2の大形開口1c側に挿入する構成としてもよい。
【0020】
ついで、図2〔FIG.2C〕のように酸素含有ガス導入板3上の所定位置に、セルスタック装置2を支持するための、一対のリブ状セルスタック保持用断熱材8A,8Bを配設し、セルスタック装置2を挿入する準備を行う。なお、図1図2では見えにくいため図示を省略しているが、この酸素含有ガス導入板3の上面(セルスタック装置2側)には、セルスタック保持用断熱材8A,8Bの配設位置を決定する、断熱材固定部材9,9が取り付けられている(図3を参照)。これにより、セルスタック保持用断熱材8A,8Bは、図3のように容器開口を側面にしてセルスタック2Aを正立させた、輸送状態もしくは稼動状態において、後工程で載置されるセルスタック装置2を、適切な位置で支持(保持)できるようになっている。
【0021】
つぎに、準備工程で準備されたセルスタック装置2を横倒しにして、この横倒し状態のまま、大形開口1cからインナーケース1B内に挿入し、図2〔FIG.2D〕のように酸素含有ガス導入板3上の所定位置に載置して位置決めする。そして、このセルスタック装置2のマニホールド2Bとインナーケース1Bとの間に形成される隙間に、底部断熱材6を挿入して、セルスタック装置2の位置固定をより確実なものにする。なお、底部断熱材6を挿入した後にセルスタック装置2を挿入してもよい。
【0022】
なお、このとき、セルスタック装置2に接続する配管(流路)や配線等も、同時に接続したり結線したりして、セルスタックが作動できる状態にする。すなわち、改質器2Cの一端から軸線方向に突出する燃料・水供給管31が、インナーケース1Bの一面(前面)に設けられた燃料・水供給管用の貫通孔1gに挿通され、その先端が収納容器1の外側まで引き出される。また、集電用のバスバー33は、インナーケース1Bの一面(先の貫通孔1gが設けられた前面)とその反対側の面(後面)とに設けられた、バスバー接続用の貫通孔1hにそれぞれ挿通される。そして、収納容器1の内部に位置するバスバー33の端部が、セルスタック装置2から軸線方向に突出する各バスバー端子32に、ねじ等の締結用具を用いて固定される。
【0023】
また、配管や配線等の接続と同時に、これら配管や配線等と容器外部との接続や挿通に関与するアウターカバー1A(二重容器の外壁に相当)も、インナーケース1B(二重容器の内壁に相当)の外側に装着し、これらカバー1Aとケース1B、さらには断熱材(側部断熱材7A,底部断熱材6)との間に形成される隙間に、空気やガスの流路を形成する。
【0024】
なお、セルスタック装置2に対して予め配管(流路)や配線等を接続した状態で、セルスタック装置2を挿入してもよい。この場合において、大形開口1cは、これら配管や配線等が接続されていない状態で、セルスタック装置2の側面サイズ(セルスタック装置2のセル配列の側方側から見た装置投影面の最大長さまたは最大横断径)より大きくなっていればよい。
【0025】
セルスタック装置2に対する配管や配線等の接続が完了したら、図2〔FIG.2E〕のように、発電室11等の反対側の側壁を形成する側部断熱材7Bを、セルスタック装置2の上に載置する。最後に、大形開口1cの上に、この大形開口1cを覆うペーパーガスケット4を載せ、その上に図2〔FIG.2F〕のようにクローズドプレート5を載置して、ねじ等によりこのクローズドプレート5をインナーケース1Bに締結して、容器の大形開口1cを閉鎖する。
【0026】
なお、発電室11等の反対側の側壁を形成する側部断熱材7Bにも、図2〔FIG.2E〕では見えない下面側に、セルスタック装置2を支持するための、一対のリブ状セルスタック保持用断熱材8C,8Dが取り付けられている。これらのセルスタック保持用断熱材8C,8Dも、反対側のセルスタック保持用断熱材8A,8Bと同様、側部断熱材7Bの一面の所定位置に設けられた溝状凹部7e,7e(断熱材固定部材9に相当するもの)に嵌入されて、その配設位置が固定されている。したがって、これらセルスタック保持用断熱材8C,8Dも、図3のように容器開口を側面にしてセルスタック装置2を正立させた際、そのセルスタック装置2を適切な位置で支持(保持)できるようになっている。
【0027】
なお、側部断熱材7Bに嵌合されるセルスタック保持用断熱材8C,8Dは、予め側部断熱材7Bに嵌入された状態でセルスタック装置2上に載置してもよく、また、セルスタック装置2を装填した後、セルスタック保持用断熱材8C,8Dをセルスタック装置2の上に載置し、当該セルスタック保持用断熱材8C,8Dを側部断熱材7Bの凹部に嵌入させて、当該側部断熱材7Bを収納容器1内に載置してもよい。
【0028】
以上のように、本実施形態の燃料電池モジュールの製造方法は、セルスタック装置2を、容器(箱体)内で移動させることなく、容器内の所定の位置に、一度の作業で、簡単に収めることができる。しかも、容器内の配管や配線等の接続作業は大形開口1cから行うことになるので、作業スペースが充分にあるため、これらの作業を手早く容易に完了することができるという利点もある。したがって、本実施形態の燃料電池モジュール10の製造方法は、モジュール生産の効率を向上させることができる。
【0029】
一方、セルスタック装置2を収容する収納容器1の細部において、先に述べた、インナーケース1Bの一面(前面)に形成された燃料・水供給管用の貫通孔1gと、バスバー接続用の貫通孔1hとは、図8の拡大図に示すように、特定の方向に異形の孔形状となっていてもよい。すなわち、燃料・水供給管用の貫通孔1gは、収納容器1(インナーケース1B)の横方向(図示H方向)に長孔状または長楕円状に形成されていてもよい(図8FIG.8AおよびFIG.8Bを参照)。これにより、先述の組み立ての際、この貫通孔1gに燃料・水供給管31を容易に差し込むことが可能になり、組み立て作業性が向上する。
【0030】
また、バスバー接続用の貫通孔1hは、収納容器1の縦方向(図示V方向)に長孔状または長楕円状に形成されていてもよい(図8FIG.8CおよびFIG.8Dを参照)。これは、バスバー33の設置にあたり上下方向(V方向)にばらつきが生じた場合にも対応できるように構成したものである。これにより、上述の貫通孔1gと同様、燃料電池モジュール組み立ての際の作業性が向上する。したがって、これらの構成により、燃料電池装置の組み立て時間の短縮と効率化が可能である。なお、これらの貫通孔における長孔状または長楕円状とは、穴形状の長径Lと短径Lの長さが異なることをいう。
【0031】
つぎに、前述のようにして組み立てられ、この収納容器1内に収容された、燃料電池モジュール10の各装置および部材について説明する。
【0032】
収納容器1の中央の空間(図3における下側の発電室11と上側の燃焼室12)に収容されたセルスタック装置2は、先にも述べたように、セルスタック2A,マニホールド2Bおよび改質器2Cを組み合わせて構成されている。
【0033】
セルスタック2Aは、内部を燃料ガスが長手方向(稼動時上下方向)に流通する燃料ガス流路(図示せず)を有する中空平板型の柱状燃料電池セルを立設させた状態で一列に配列し、隣接する燃料電池セル間が集電部材(図示せず)を介して電気的に直列に接続されている。なお、燃料電池セルとしては、柱状のものであればよく、たとえば円筒型や横縞型にも適用できる。
【0034】
また、セルスタック2Aは、図3のように、容器内の中央の、断熱材(底部断熱材6、側部断熱材7A,7B)で囲われた発電室11内に収納されており、これを構成する各燃料電池セルの下端は、ガラスシール材等の絶縁性接合材(図示せず)でマニホールド2Bに固定されている。
【0035】
セルスタック2Aの上方(組み立て前の横倒し状態の図1図2では側方)には、天然ガスや灯油等の原燃料を改質して燃料電池セルに供給する燃料ガスを生成するための改質器2Cが配設されている。そして、この改質器2Cで生成された燃料ガスが、燃料ガス供給管2d(図1図2では図示省略)を通じてマニホールド2Bに供給される。なお、改質器2Cは、懸架部材2e,2eにより、発電室11上側の燃焼室12内に保持されている。
【0036】
そして、マニホールド2Bに供給された燃料ガスは、図3に示すように、各燃料電池セル(セルスタック2A)の内部に設けられたガス流路を下端より上端に向けて流れる。各燃料電池セルでは、この燃料ガスと、側方に位置する酸素含有ガス導入板3の吐出口3cから供給される酸素含有ガス(空気)とで、発電が行なわれる。
【0037】
なお、セルスタック装置2においては、各燃料電池セル(セルスタック2A)の上端において燃料ガス流路の終端より排出される、発電に寄与しなかった余剰の燃料ガスと酸素含有ガスとを混合して、セルスタック2Aと改質器2Cの間に位置する燃焼部12Aにおいて図示しない着火手段等により着火して燃焼させ、その燃焼熱を改質器2Cの加熱および原燃料の改質に利用している。そのため、容器中央の内部空間における、上側のセルスタック保持用断熱材8B,8Dで区切られた改質器2C側の上側空間(高温部)を燃焼室12、セルスタック2A側の下側空間(低温部)を発電室11、と呼称している。
【0038】
つぎに、セルスタック装置2の周囲に配置され、このセルスタック装置2の断熱および位置固定と、発電室11,燃焼室12を形成する断熱材は、図3に示すように、セルスタック装置2の側面方向(図1図2においては箱体の上下方向)に配置される大形の側部断熱材7A,7Bと、その内側でセルスタック装置2を挟み込むように両側から支持するセルスタック保持用断熱材8A,8Cおよび8B,8Dと、セルスタック装置2の下側に配置される底部断熱材6とである。なお、断熱材としては、一般的に使用される断熱材料を用いることができる。たとえば、アルミナ系、シリカ系、アルミナシリカ系材料から構成された断熱材を用いることができる。
【0039】
図示左側の大形の側部断熱材7Bの内側面(セルスタック装置2側)には、先にも述べたように、セルスタック保持用断熱材支持用の溝状凹部7e,7eが設けられている。また、これらの溝状凹部7e,7eに嵌入されたセルスタック保持用断熱材8C,8Dが、所定の適切な位置で、セルスタック装置2を支持するようになっている。
【0040】
また、この図示左側の側部断熱材7Bは、収納容器1内部において、その内側を、下側のマニホールド2Bから上側の改質器2Cにまで至る、広い範囲を覆うように配設されている。この構成は、燃焼部12Aのスペースを規制することにも寄与している。すなわち、燃焼部12Aのスペース(容積)が小さくなることから、セルスタック2Aからこの燃焼部12A内に排出される余剰の燃料ガスが薄まることなく、その濃度を比較的高く維持することが可能になる。これにより、燃焼部12Aおよび燃焼室12内における余剰燃料ガスの着火性や燃焼性が改善されるという利点がある。なお、図において側部断熱材7Bの一方の端部(上端)は、インナーケース1Bの内面まで到達しているが、改質器2Cの近傍(燃焼部12Aと重なる部分)にまで延設されていれば上述の利点を有する。
【0041】
また、側部断熱材7A,7Bは、セルスタック装置2下部のマニホールド2Bを左右から挟みこんでいるため、このマニホールド2B部位を緩やかに保持して位置決めしている。これにより、セルスタック装置2の下部は、輸送時等の揺れや振動を受けても、その位置が変動しないようになっている。
【0042】
さらに、これらの断熱材の外側と、二重容器であるアウターカバー1A(外壁に相当)、インナーケース1B(内壁に相当)との間には、図3に示すような、セルスタック装置2に酸素含有ガスを供給する流路、セルスタック装置2から排出される燃焼排ガスを装置外へ排出または熱交換器等へ輸送するための流路等が設けられている。なお、各断面図は模式図であるため、流路の厚みを実際より誇張して描いており、流路の、容器の厚み方向(紙面表裏方向)の重なりや蛇行、迂回等、三次元的な形状を、必ずしも反映させているものではない。また、他の部材の厚みや寸法も、実際のものとは異なる。
【0043】
第1実施形態の燃料電池モジュール10は、セルスタック装置2に酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス流路13,14,15と、燃料ガス燃焼後の排ガスを熱交換器まで送給する排ガス流路16,17,18とを有している。
【0044】
排ガス流路は、燃焼室12で発生する高温の燃焼排ガスを、酸素含有ガス導入板3を貫通する排ガス導出口16aを経由して、側部断熱材7A上側の空間(第1の排ガス流路16)に排出する。排ガス流路はさらに、その空間に連通する側面の第2の排ガス流路17(インナーケース1B内側の排ガスポケット)および底部の第3の排ガス流路18と、その流路の終端に設けられたペーパーガスケット4の排ガス導出口4aおよびクローズドプレート5の排ガス導出口5aを通じて、燃焼排ガスを収納容器1の外部に排出する。
【0045】
なお、収納容器1の外には、仮想線(二点鎖線)で描いた外部排気流路形成用プレート22で形成された外部排気流路19と、この外部排気を熱交換器に向けて送り出す排気口23と、を設けることができる。
【0046】
また、インナーケース1Bを挟んで、排ガス流路16,17,18と熱交換可能に配置された酸素含有ガス流路13,14,15は、図示しない空気ブロア等の補機から送給される酸素含有ガスを受け入れる酸素含有ガス(空気)流入管21(二点鎖線で表示)と、容器底部の第1の酸素含有ガス流路13と、第2の排ガス流路17(排ガスポケット)と対向して排ガスとの熱交換を主に担う第2の酸素含有ガス流路14と、容器上部で酸素含有ガスをさらに加温する第3の酸素含有ガス流路15(空気溜まり)と、から構成されている。
【0047】
そして、上部の第3の酸素含有ガス流路15には、図3に示すように、この第3の酸素含有ガス流路15から下方のマニホールド2B部位に向けて垂下する、酸素含有ガス導入板3が接続されている。そして、加温された酸素含有ガスが、柱状のセルスタック2Aの根元(下端)部近くまで送給され、ここからセルスタック2Aの下端部に向けて、直接的に供給される。また、セルスタック2Aの下端部に供給された酸素含有ガスは、各燃料電池セルの柱状の外形に沿って、セルスタック2Aの上端(燃焼室12)の方向へ移動する。
【0048】
酸素含有ガス導入板3について説明すると、酸素含有ガス導入板3は、たとえば薄い板状部材を2枚用いて中空の厚板状に成型されたものであって、セルスタック2Aのセル配列方向長さに相当する板幅を有する。なお、図3では上側の、酸素含有ガス流入側の第3の酸素含有ガス流路15側の基端部3bは、導入板幅方向にスリット状に開口する酸素含有ガス導入口3dとなっている。また、下側の、セルスタック2A側の先端部3aには、その先端(縁部)より少し距離をおいた位置に、酸素含有ガス吐出口3cが設けられている。
【0049】
この構成により、酸素含有ガス導入板3は、前述のように燃焼室12の上部で温められた酸素含有ガスを、柱状のセルスタック2Aの根元(下端)部に、効率的に届けることができる。
【0050】
なお、酸素含有ガス吐出口3cは、一方の薄板状部材を貫通する小孔状で、通常、幅方向に所定の間隔を開けて複数個形成されている。また、同じ一方の薄板状部材の表面(セルスタック2A側の面)には、先にも述べた、セルスタック保持用断熱材8A,8Bを保持するための断熱材固定部材9,9が取り付けられている。
【0051】
酸素含有ガス吐出口3cを有する酸素含有ガス導入板3は、その下端(先端部3a)が、酸素含有ガス導入口3dを有する改質器2C側の上端(基端部3b)から、マニホールド2Bまで延設されている。これにより、酸素含有ガス導入板3が熱により変形したとしても、マニホールド2Bに当接するため、それ以上の変形を抑制することができる。
【0052】
さらに、酸素含有ガス導入板3の先端部3aは、あらかじめマニホールド2Bの縁部に当接させてもよい。これにより、熱等に起因する酸素含有ガス導入板3の変形や移動をより抑制できるとともに、当接するマニホールド2Bを、より確実に固定することができる。したがって、本実施形態の燃料電池モジュール10は、組み立て後にセルスタック2Aを正立させた状態(立てた状態)で輸送等を行っても、セルスタック装置2がしっかり固定され、振動や揺れ等によるセルスタックの移動が防止されている。
【0053】
なお、酸素含有ガス導入板3の変形防止策としては、上記先端部3aをマニホールド2Bの縁部に当接させる手法のほか、酸素含有ガス導入板3を直接他の部材にねじ止めをしてもよい。
【0054】
たとえば図4に示す第2実施形態のように、酸素含有ガス導入板3とこれに対向するインナーケース1Bの箱体底部1dとの間に、側部断熱材7Bを貫通する筒状の係留部材24,24を配設し、これに、酸素含有ガス導入板3を、ねじ等の締結手段25により締結して固定してもよい。これにより、先に述べたものと同様、熱等に起因する酸素含有ガス導入板3の変形や移動を抑制できる。
【0055】
なお、図4の断面図は、係留部材24の存在する部分のみを示したものであって、係留部材は、酸素含有ガス導入板3の幅方向(奥行方向であり、紙面の表裏方向)に複数箇所、間隔をあけて配設することができる。そのため、図4では、締結手段(ねじ)25配設用に設けられた酸素含有ガス導入板3の凹部により、酸素含有ガス導入板3の内部空間(酸素含有ガスまたは空気の流路)が塞がれているように見える。しかしながら、実際は、前述の凹部と他の凹部との間の何もない空間を、酸素含有ガスが迂回して流動するため、特に問題とはならない。したがって、凹部および係留部材24、締結手段25の個数および配置は任意に設定できる。なお、インナーケース1Bの箱体底部1dにおける凸部においても、同様であり、排ガス流路17も、実際は前述の凸部と他の凸部との間の空間を、排ガスが迂回して流動するため、この凸部についても、係留部材24等の数に応じて任意に設定できる。
【0056】
また、逆に、セルスタック装置2のマニホールド2Bを、酸素含有ガス導入板3に固定してもよい。たとえば図5に示す第3実施形態のように、マニホールド(図では見えない)の周囲を取り囲むコの字状の固定部材26を準備して、このコの字状の固定部材26の両端部を、ねじ等の締結手段27により酸素含有ガス導入板3に固定してもよい。これにより、セルスタック装置2およびマニホールド2Bの位置がしっかりと固定される。したがって、製品輸送時等の振動を受けても、セルスタック装置2の位置がずれるおそれがない。また、固定側の酸素含有ガス導入板3も、熱等に起因する酸素含有ガス導入板3の変形や移動が抑制されるという効果を奏する。
【0057】
なお、これら係留部材や固定部材の形状や締結方法は、特に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば固定部材は、L字状の部材を2つ用い、その一部をマニホールド2Bの酸素含有ガス導入板3と反対側の外面に当接し、それぞれの一端部をねじ等の締結手段27によって酸素含有ガス導入板3に固定することもできる。また、係留部材と固定部材を組み合わせて配設することもでき、係留や固定の相手部材を変更してもよい。
【0058】
つぎに、第1実施形態とは内部構成および製造方法(組み立て手順)が異なる第4実施形態について説明する。
図6は、第4実施形態の燃料電池モジュール40の構成を示す分解斜視図であり、図7はその内部構成を示す断面図である。
【0059】
第4実施形態の燃料電池モジュール40も、容器の内壁(インナーケース1B)と容器の外壁(アウターカバー1A)との間に複数のガス流路が形成された二重構造の収納容器1の内側に、セルスタック2A,マニホールド2Bおよび改質器2C等からなるセルスタック装置2を収容した構成である。
【0060】
この第4実施形態の燃料電池モジュール40が、第1実施形態の燃料電池モジュール10と異なる点は、燃料電池セルに酸素含有ガスを供給する酸素含有ガス導入板3が、セルスタック装置2の上側(組み付け順では後)に配設されている点である。したがって、図7の断面図にも現れているように、その収納容器1内の構成は、第1実施形態の断面図(図3)とは、左右対称(鏡像関係)のようになっている。
【0061】
第4実施形態の燃料電池モジュール40を組み立てる際は、まず、インナーケース1Bの大形開口1cから箱体底部1dに、セルスタック装置2側の上面に既にセルスタック保持用断熱材8C,8Dが取り付けられた側部断熱材7Cを、挿入して載置する。なお、これらセルスタック保持用断熱材8C,8Dは、前述の側部断熱材7Bと同様、所定位置に設けられた溝状凹部7e,7eに嵌入させて取り付けられている。また、燃料ガス燃焼後の排ガスを熱交換器まで送給する排ガス流路16,17,18を構成するための部材を、側部断熱材7Cを配置する前にインナーケース1Bに設けて、その部材の上に、側部断熱材7Cを載置することができる。
【0062】
また、セルスタック装置2の上側に載置される酸素含有ガス導入板3上も、向きは異なるものの、その構成は、第1実施形態における酸素含有ガス導入板3と同等である。図6では見えない下面側に、断熱材固定部材9,9が取り付けられており、これを利用して、セルスタック保持用断熱材8A,8Bが取り付けられている。
【0063】
以上の構成によっても、特に問題なく、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、各セルスタック保持用断熱材8A,8Bおよび8C,8Dは、図7のように容器開口を側面にしてセルスタック2Aを正立させた、輸送状態もしくは稼動状態において、セルスタック装置2を適切な位置で支持(保持)できるようになっている。
【0064】
また、セルスタック装置2を、容器(箱体)内で移動することなく、容器内の所定の位置に、一度の作業で、簡単に収めることができるうえ、容器内の配管や配線等の接続作業をするスペースが充分にあるため、これらの作業を手早く容易に完了することができる。本実施形態の燃料電池モジュール40の製造方法も、モジュール生産の効率を向上させることができる。
【0065】
なお、この燃料電池モジュール40にも、第2実施形態(図4)の係留部材24のような酸素含有ガス導入板3を係留する手段や、第3実施形態(図5)の固定部材26のようなマニホールド2Bの位置を固定する手段を配設してもよい。
【0066】
つぎに、図9は、燃料電池モジュール10および20,30,40等と、これら燃料電池モジュールを作動させるための熱交換器等の補機(図示せず)とを、外装ケース50に内に収納した燃料電池装置60の一例を示す透過斜視図である。なお、図9においては、一部構成を省略して示している。
【0067】
燃料電池装置60は、支柱51と外装板52から構成される外装ケース50内を仕切板53により上下に区画し、その上側を上述の燃料電池モジュール10および熱交換器(図示せず)を収納するモジュール収納室54とし、下側を燃料電池モジュール10を動作させるための補機を収納する補機収納室55として構成されている。なお補機収納室55に収納する補機を省略して示している。
【0068】
また、仕切板53には補機収納室55の空気をモジュール収納室54側に流すための空気流通口56が設けられており、モジュール収納室54を構成する外装板52の一部にモジュール収納室54内の空気を排気するための排気口57が設けられている。
【0069】
このような燃料電池装置60においては、上述したように、モジュール収納室54内に燃料電池モジュール10および熱交換器を収納することで補機収納室55の高さ方向を小さくでき、それにより燃料電池装置60を小型化することができる。
【0070】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【0071】
たとえば、燃料電池モジュールにおいては、酸素含有ガス導入板をセルスタック装置のどちらか一方側ではなく、その両側に配設する構成としてもよい。さらには、排ガス流路と酸素含有ガス流路も、インナーケース1Bの外側にアウターカバー1Aを設けて形成するのではなく、クローズドプレート5に形成することも可能である。
【0072】
また、セルスタックの形状も、列状のものに限られるものではなく、他の配列のセルスタックを有するセルスタック装置を用いることもできる。また、収納容器も、そのセルスタック装置の形状(外形)に合わせて、直方体状、円筒状のほか、立方体状や角柱状等であってもよい。
【0073】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0074】
1 収納容器
1A アウターカバー
1B インナーケース
1c 大形開口
1d 箱体底部(底面)
2 セルスタック装置
2A セルスタック
2B マニホールド
2C 改質器
3 酸素含有ガス導入板
6 底部断熱材
7A,7B 側部断熱材
8A,8B,8C,8D セルスタック保持用断熱材
10 燃料電池モジュール
13,14,15 酸素含有ガス流路
16,17,18 排ガス流路
19 外部排気流路
20 燃料電池モジュール
30,40 燃料電池モジュール
50 外装ケース
54 モジュール収納室
60 燃料電池装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9