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7054398改変されたマルチプレックスおよびマルチステップ増幅反応ならびにそのための試薬
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】改変されたマルチプレックスおよびマルチステップ増幅反応ならびにそのための試薬
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20220406BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALI20220406BHJP
   C12Q 1/6848 20180101ALI20220406BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6853 Z ZNA
C12Q1/6848 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019532037
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017079273
(87)【国際公開番号】W WO2018108421
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】1621477.7
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】399117121
【氏名又は名称】アジレント・テクノロジーズ・インク
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】デル-ファベロ,ユルゲン・ペーター・ロード
(72)【発明者】
【氏名】ヘイルマン,リーン
(72)【発明者】
【氏名】テーゲンボシュ,バート
(72)【発明者】
【氏名】グーセンス,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】デ・シュライバー,ヨアヒム
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03081653(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0203057(US,A1)
【文献】国際公開第2014/110528(WO,A1)
【文献】特表2014-515604(JP,A)
【文献】特表2009-539379(JP,A)
【文献】JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2007年01月11日,Vol. 129, No. 5,pp. 1456-1464
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのプライマーであって、5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず、前記標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域、
d.さらなるRNAヌクレオチド、
e.前記標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするさらなる領域、および
f.ブロッキング基
を含む、プライマー。
【請求項2】
aとbとの間に、
.前記標的核酸分子の鎖とハイブリダイズする4つまでのヌクレオチド
さらに含み、領域およびがいずれも同じ前記標的核酸分子とハイブリダイズして、前記標的核酸分子中のDNA塩基と対になったRNAヌクレオチドが生じる、請求項1のプライマー。
【請求項3】
標的核酸分子を増幅するための、請求項1または2に記載のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含む、プライマー対。
【請求項4】
標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットであって、
a.請求項1または2に記載のプライマー、または請求項で定義されるプライマー対、および
b.RNase H
を含む、試薬のセット。
【請求項5】
請求項1または2に記載のプライマー、請求項に記載のプライマー対、または請求項に記載の試薬のセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅の方法
【請求項6】
第1のプライマー対を用いてRNase Hの存在下に標的核酸分子を増幅するステップを含む、標的核酸分子の増幅のための方法であって、前記第1のプライマー対が、
i.5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず前記標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む第1のフォワードプライマー、
ii.5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ(これは最初の標的核酸分子とハイブリダイズしない)、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず前記標的核酸の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む第1のリバースプライマー
を含み、それにより、
a.第1ラウンドの増幅の後、前記標的核酸分子が複製され、第1の増幅生成物が前記ユニバーサルタグおよび前記第1のフォワードプライマーのRNAヌクレオチドを組み込み、第2の増幅生成物が前記ユニバーサルタグおよび前記第1のリバースプライマーのRNAヌクレオチドを組み込み、
b.第2ラウンドの増幅では、前記第1のリバースプライマーが、前記第1の増幅生成物とハイブリダイズして、前記ユニバーサルタグの相補体と前記第1のフォワードプライマーの前記RNAヌクレオチドのDNA相補体とを組み込んだ第3の増幅生成物を産生し、前記第1のフォワードプライマーが、前記第2の増幅生成物とハイブリダイズして、前記ユニバーサルタグの相補体と前記第1のリバースプライマーの前記RNAヌクレオチドのDNA相補体とを組み込んだ第4の増幅生成物を産生し、前記第3の増幅生成物および前記第4の増幅生成物がそれぞれRNase H活性の基質となり、それにより前記RNAヌクレオチドの切断がもたらされ、それにより前記標的核酸分子のさらなる増幅が制限される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に重複アンプリコンが産生される場合のマルチプレックス核酸増幅の効率を改良するための試薬および方法に関する。本発明はまた、マルチステップ核酸増幅の効率、特に同じ反応混合物中または反応容器中で連続的に起こるように設計された2つの個別の増幅反応の性能を改良する為の試薬および方法に関する。本発明はさらに、第1の増幅反応のアウトプットを制御することによってマルチステップ核酸増幅反応を改良するための試薬および方法に関する。特に、異常な増幅生成物の形成を最小化するプライマーが提供される。そのようなプライマーは第1の増幅反応および第2の増幅反応が単一の反応混合物中または反応容器中で起こる場合に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(mPCR)はPCRの変形であり、単一の核酸増幅反応に核酸増幅プライマーまたはPCRプライマーの2つ以上の対を含ませることによって2つ以上の標的配列を増幅することができる。マルチプレックスPCRは実験室において時間と労力をかなり削減できる可能性を有している。1988年にこれが最初に記述されて以来、この手法は遺伝子欠失解析、変異および多形の解析、定量解析、ならびに逆転写(RT)PCR等のヒトにおけるDNA検査の多くの領域に適用され成功してきた。感染症の分野では、マルチプレックスPCRはウイルス、細菌、および寄生体の同定のための価値あるツールであることが示されてきた。
【0003】
しかしmPCRの最適化には、感度が低い、特異性が低い、ある種の特定の標的が優先的に増幅される、および/または意図しない配列が増幅される等のいくつかの難点がある。
【0004】
他の標的配列に対する1つの標的配列の優先的な増幅は、mPCRにおける既知の現象である。この傾向を誘起する2つの主なプロセスの種類が確認されており、それはPCRドリフトとPCR選択である。PCRドリフトは、特に初期のサイクルにおいて、特にテンプレートの濃度が極めて低い場合のPCR試薬の相互作用の変動によると考えられる傾向である。一方、PCR選択は標的の特性、標的の横にある配列、または標的ゲノム全体によるある種のテンプレートの増幅に有利な機構として定義される。これらの特性には、短い配列の優先的な増幅が含まれる。
【0005】
特に、マルチプレックスPCRにおける2つ以上のプライマー対の存在により、たとえば短い、望ましくない断片の優先的な増幅によって異常な増幅生成物が得られる機会が増大する。mPCRを実施する際に直面する異常な(意図しない)アンプリコンの増幅の論点を図1に示す。
【0006】
本発明者らの目的は、マルチプレックスPCRに基づく検査の開発において、単一の検査で多重の反応容器の使用を必要とする、不要で異常な生成物(短い異常な生成物が好ましい)の問題に対処することである。例として、BRCA遺伝子の重複領域を増幅する現在のPCR検査は、標的配列が信頼性をもってカバーされていることを保証するために4つの個別のチューブで増幅を実施することを必要とする。このため、検査が複雑になる。
【0007】
典型的には、マルチプレックスPCRは2つの個別の反応で起こることになる。第1の反応では、標的特異的プライマーとユニバーサルタグとのセットを用いてそれぞれのアンプリコンにユニバーサルフォワードタグおよびユニバーサルリバースタグを付加する。次いでその生成物を第2の増幅反応の前に精製する。次に第2の反応では、これらのタグに対して設計されたユニバーサルプライマーを用いて全てのアンプリコンを増幅し、さらなるプロセシングおよび同定の目的のために必要な任意のさらなる配列(アダプター等)を付加する。
【0008】
このシステムは次善の策であり、労力がかかる。さらに、第1のステップの後に反応混合物を停止し分離する必要があるので、過誤の可能性やシステムへの夾雑がもたらされる。したがって、単一の反応容器中でこれらのステップの両方を実施できる方法を特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
本発明者らはマルチプレックスおよびマルチステップの核酸増幅反応において遭遇した問題への種々の解決策を考案した。理想的には、種々の解決策を組み合わせて、第1の増幅とそれに続く「ユニバーサル」増幅(即ち、標的配列に関わらない共通のプライマー対に基づく)において、重複する標的配列の増幅を可能にし、アダプター配列を、さらなる検出方法、好ましくは次世代シーケンシングに用いることができる最終増幅生成物に組み込むことができる。明確にするため、改良されるそれぞれの領域を個別の見出しの下に記述し、その後に種々の組合せを論じる。しかし、有利に組み合わせるための種々の解決策が考案され、そのような全ての組合せが本発明の範囲内で予想されることに留意されたい。改良の1つの領域に関して記述した選択肢が他の領域、たとえば試料のタイプ、核酸のタイプ等にも必要に応じて変更して適用できることも認識されたい。しかし、本発明の全ての態様に共通の要素の理解を容易にするため、以下の導入的定義を提供する。このような定義は本発明の開示にわたって適用され、それぞれの態様をさらに詳しく記述する場合には追加の説明を提供する。
【0010】
本発明は核酸増幅反応に関する。本発明の全ての態様によれば、核酸増幅は典型的にまた好ましくはPCRによる。しかし、本発明は当業者によって認識され、必要な他の増幅システムに適合させることができる。
【0011】
本発明は特に、2つ以上の標的配列が並列に増幅されるマルチプレックス核酸増幅に関する。これは典型的には単一の核酸増幅反応に2つ以上の核酸増幅プライマー対を含ませることによって達成される。本発明のいくつかの態様によれば、マルチプレックス増幅には標的核酸分子の重複領域を増幅するプライマー対が関連している。
【0012】
本発明はまた、2つ以上の異なった増幅反応が起こるマルチステップ核酸増幅に関する。典型的には、第1の増幅反応は標的の核酸分子を増幅する標的特異的プライマーを利用する。標的特異的プライマーはユニバーサルタグも含んでいる。ユニバーサルタグは反応が進行するとともに増幅生成物に組み込まれる。第2の増幅反応では、次にこれらのタグ配列とハイブリダイズするように設計されたユニバーサルプライマーが用いられて第1の増幅からの増幅生成物が増幅される。第2の増幅にはさらなるプロセシングおよび同定の目的のために必要なさらなる配列(アダプター等)を組み込むプライマーが関与している。したがって、「ユニバーサル」増幅の概念は、増幅される最初の標的分子の特異的なターゲット配列に依存せずに増幅が実施されるという事実によって支配される。これは、第2の増幅においてプライマー結合部位として作用することができる付加的な配列(いわゆる「ユニバーサルタグ」)を、第1の増幅反応の増幅生成物に組み込むことによっている。したがって、第2の増幅におけるプライマーのプライマー領域は、ユニバーサルタグ配列に対応している。そのようなプライマー領域に含まれるプライマーを、本明細書では「ユニバーサルプライマー」と称する。
【0013】
本発明によれば標的の核酸分子に制限はない。本発明の試薬および方法を用いて任意の好適な標的核酸分子を増幅することができる。多くの異なった標的核酸分子を標的とすることができる。これには多重標的核酸特異的プライマー対の使用が含まれる。本発明の全ての態様によれば、標的の核酸分子が二本鎖である場合には、それぞれの特異的プライマー対のフォワードプライマーおよびリバースプライマーのプライマー領域は、それぞれ二本鎖標的核酸分子の逆平行の相補的鎖に相補的または実質的に相補的であり、これとハイブリダイズすることができる。もちろん、増幅プロセスの間に標的の核酸分子が増幅される(複製される)とともに、それぞれの特異的プライマー対のフォワードプライマーおよびリバースプライマーは、それぞれのプライマー領域を介して、増幅の間に形成された、増幅された(複製された)標的核酸分子の相補領域に結合することができる。これは事実上、当技術で既知の増幅プロセスに照らして当業者には明白であるように、増幅された(複製された)標的の核酸分子が(指数関数的に)増幅の間に形成されるとともに、優先的に起こることになる。したがって、「標的核酸分子」という用語は、増幅が始まる前に存在していた最初の標的核酸分子の部分としてか、増幅の間に産生された標的核酸分子であるかにかかわらず、増幅すべき核酸分子の所望の領域を意味する。したがって、「最初の標的核酸分子」という用語は、増幅が始まる前に存在していた標的核酸分子(即ちもとの試料から抽出された)を意味するために用いられる。
【0014】
好ましい実施形態では、本発明の全ての態様によれば、標的核酸分子はDNA分子である。DNAはゲノムDNA、ミトコンドリアDNA等でよい。ゲノムDNAが好ましい。DNAは任意の好適な試料から精製してよい。試料の種類には血液試料(特に血漿、およびまた血清から)、唾液、尿またはリンパ液等のその他の体液が含まれる。その他の試料の種類には凍結組織またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)材料等の固体組織が含まれる。特に好ましい実施形態では、DNA分子は二本鎖DNA(dsDNA)分子である。鎖は当技術で慣用されているように、それぞれ「センス」または「コーディング」鎖および「アンチセンス」または「非コーディング」鎖と称される。これらの実施形態では、特異的プライマー対のフォワードプライマーのプライマー領域はアンチセンス鎖の領域に相補的であり、同じ特異的プライマー対のリバースプライマーのプライマー領域は、フォワードプライマーが結合している領域の下流のセンス鎖の領域に相補的である。代替の実施形態では、DNA分子は一本鎖DNA(ssDNA)分子である。いくつかの実施形態では、ssDNAはもとの試料中で既にインサイチューで変性している。たとえば、ssDNAはFFPE材料から精製してよい。ssDNAを用いる場合は、特異的プライマー対のフォワードプライマーまたはリバースプライマーのプライマー領域はssDNA分子に相補的である。特異的プライマー対の他方のプライマーは、増幅サイクルの間に形成された相補的ssDNA分子に相補的で、したがってこれとハイブリダイズするプライマー領域を含む。さらなる実施形態では、最初の標的核酸分子はssDNAおよびdsDNA分子の両方として存在してよい。たとえば、FFPE材料から精製したDNAの場合には、DNAはssDNAとdsDNAの両方を含んでよい。DNAは試料中の細胞の中に見出され、またはこれから誘導される。あるいは、DNAは循環する、または「無細胞」DNA(cfDNA)であってよい。そのようなDNAは血液試料(特に血漿、およびまた血清から)、唾液、尿またはリンパ液等の他の体液を含む種々の体液から得ることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、本発明の全ての態様によれば、標的核酸分子はRNA分子から誘導される。RNAは上で論じたDNAと同じ試料の種類から得てよい。RNAはメッセンジャーRNA(mRNA)、ミクロRNA(miRNA)等であってよい。mRNAが好ましい。そのような実施形態では、RNAは典型的には逆転写酵素によって逆転写されて相補的DNA(cDNA)分子を形成し、次いでこれを本発明のプライマーを用いて増幅することができる。逆転写酵素によってRNAをcDNAに逆転写する方法は当技術で公知である。任意の好適な逆転写酵素を用いることができ、好適な逆転写酵素の例は当技術で広く利用可能である。したがってそのような実施形態では、最初の標的核酸分子はcDNA分子である。DNAポリメラーゼを用いて相補的鎖を産生させるまでは、最初のcDNA分子は一本鎖であってよい。相補的鎖のこの合成は、本発明のプライマーを用いて実施することができる。二本鎖DNA分子がいったん生成すれば、本発明のプライマー対はさらなる増幅を指令することができる。したがって、特定の実施形態では、本発明の全ての態様によれば、試料からのRNAは最初にcDNAに逆転写され、次いで本明細書で定義したプライマーのセットを用いてcDNA分子が増幅される。逆転写反応およびこれに続く増幅反応は、(好ましくは)同じ反応容器中で起こってよい。
【0016】
したがって、明らかになるように、本発明の全ての態様によれば、それぞれのプライマーの「プライマー領域」は、標的核酸分子の鎖とハイブリダイズして(DNA)ポリメラーゼ酵素による新たな相補的核酸分子鎖の合成を指令することができるプライマーの領域を画定する。
【0017】
標的核酸分子は任意の好適な試料から得てよい。容易に認識されるように、本発明の方法はインビトロ法であり、予め単離された試料を用いて実施してよい。好ましい実施形態では、試料はヒト対象から得てよい。しかし、本発明の種々の態様によれば、任意の供給源からの任意の核酸含有試料が増幅に受け入れられる可能性がある。
【0018】
標的核酸分子を増幅するように設計されたプライマー対は、一般にタグを組み込んでいる。これらのタグは、本発明の大多数の実施形態において、ユニバーサル増幅が起こるために重要であり、本明細書では「ユニバーサルタグ」と称する。そのようなタグは最初の標的核酸分子とハイブリダイズする必要はない。この機能はプライマー領域によって提供される。しかし、いったんタグが増幅生成物に含まれると、これらは第2の増幅ステップでユニバーサルプライマーがハイブリダイズする次の標的として作用することができる。好適なタグは当技術で公知である。典型的には、タグはユニバーサルプライマーがその配列に対して特異的に設計されることを可能にするために十分な長さを有する。したがって、これらは典型的には20ヌクレオチドまたはそれ以上の長さである。本発明によって有用なタグは配列番号1(タグ1)または配列番号2(タグ2)のヌクレオチド配列を含み、実質的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0019】
本発明の全ての態様によれば、第2の増幅はさらなる増幅生成物にアダプター配列を含ませるように用いられる。アダプター配列は下流のプロセシングのための任意の好適な配列であってよい。下流のプロセシングによって、標的核酸を試料中で検出し、および/または定量することが可能になる。たとえば、好適な固体表面上に固定されたオリゴヌクレオチドに相補的なアダプター配列によって、そのようなアダプターを組み込んだ配列の固定が可能になる。その他の応用は、液体中のオリゴヌクレオチドにハイブリダイズするアダプターによっている。アダプターはアレイに基づく解析またはシーケンシングに基づく解析に有用である。本発明の全ての態様による好ましい実施形態では、アダプター配列は高スループット核酸シーケンシングのための任意の好適なアダプター配列であってよい。そのようなシーケンシングは典型的には、また好ましくは次世代シーケンシング(NGS)プラットフォームを用いて実施される。NGSプラットフォームの例には、Illuminaシーケンシング(Hi-SeqおよびMi-Seq等)、SMRTシーケンシング(Pacific Biosciences)、ナノポアシーケンシング、SoLIDシーケンシング、パイロシーケンシング(たとえばRoche454)、単分子シーケンシング(SeqLL/Helicos)、およびIon-Torrent(Thermo Fisher)が含まれ、これらは当業者には公知である。当業者には知られているように、アダプター配列はシーケンシングのための好適な固体表面(その性質はフローセル(Illumina)、ゼロモードウェーブガイド(SMRT)またはビーズ(パイロシーケンシング)等のシーケンシングプラットフォームによる)に固定されたオリゴヌクレオチドに相補的である。本発明はアダプター配列の細目に関して限定することを意図していない。本発明の利点は、下流のプロセシングをいかにして実施するかよりむしろ、増幅試薬およびプロセスの改変にある。アダプターの具体的な例には、Illumina MiSeqまたはHiSeqプラットフォームによるシーケンシングに有用なp5アダプターおよびp7アダプター、ならびにThermo Fisher Ion-Torrentプラットフォームを用いるシーケンシングに有用なAアダプターおよびP1アダプターが含まれる。
【0020】
本発明の種々のプライマーは増幅生成物にバーコードを含ませるためにも用いられる。バーコード配列は当技術で公知である。第1の増幅に用いる標的特異的プライマーに関する本発明の態様のため、分子バーコードが有利にプライマーに含まれる。分子バーコードは、それが組み込まれる次のアンプリコンをシーケンシング後のインシリコ解析において同定することを可能にする特定の核酸配列である。
【0021】
第2ラウンドの増幅(典型的にはいわゆる「ユニバーサル」増幅、好ましくはユニバーサルPCR)を含む本発明の態様に特に関係するバーコードの主な形態は、試料バーコードである。したがって、試料バーコードは有利には第2ラウンド増幅(即ちユニバーサル)プライマーに含まれてよい。試料バーコード配列は試料の同定を可能にするために用いられる。これは単一のシーケンシング操作で複数の試料を検討する場合に有利である。しかし、これは任意選択的にある。いくつかの応用、たとえば試料のウルトラディープシーケンシングのため、試料バーコード配列は冗長であってよい。含まれる場合には、試料バーコード配列は高スループット核酸シーケンシングのための任意の好適な試料バーコード配列であってよい。いくつかの実施形態では、バーコード配列は選択したNGSプラットフォームに基づいて選択してよい。試料バーコード配列は本明細書では分子識別子(MID)配列またはユニークインデックス配列と称してもよい。これは特定のアンプリコンの起源を同定し、特定の起源を有するアンプリコンをグループ化するために、シーケンシング後のインシリコ解析において用いることができる所定の(他のバーコード配列に比較して)ユニークな配列である。そのような配列の使用は当技術で公知である。特定の実施形態では、それぞれの試料バーコードの長さは少なくとも4、6または8ヌクレオチドであり、任意選択的に20ヌクレオチドまでである。
【0022】
本発明のいくつかの態様では、プライマーまたはプライマーをコードする配列はブロッキング基を含んでよい。ブロッキング基は関係する配列の望ましくない伸長を防止する。この目的のため任意の好適なブロッキング基を使用することができ、用いることができるブロッキング基は当業者には周知である。ある実施形態では、ブロッキング基は3’ddC、3’反転dT、3’C3スペーサー(C3プロパンジオールスペーサー等)、3’アミノ、および3’ホスホリル化から選択される。
【0023】
本発明の重要な利点は、単一の反応混合物中でマルチプレックス反応およびマルチステップ反応を実施する能力である。「単一反応混合物」は、関係する増幅生成物(第1ラウンドおよび第2ラウンドの両方)を産生することを含むそれまでの方法ステップの全てが、成分を分離しまたは除去する必要なく行なわれることを意味する。特に、ユニバーサル増幅の前に第1の増幅生成物を精製する必要はない。いくつかの実施形態では、本方法(即ち、さらなる増幅生成物を産生する)に必要な全ての試薬は、第1の増幅を行う前に合わせられる。したがって、本方法は単一の反応容器中で実施される。いったん反応混合物が形成されれば(増幅そのもの、たとえばサーマルサイクリングの実施は別として)さらなる増幅生成物が産生されるまで、反応容器をさらに操作する必要はない。したがって本方法は「ワンチューブの」または「均一な」方法と考えてよい。本発明は、本明細書に記載した増幅反応を実施するために必要な試薬を含む反応容器に関する。
【0024】
疑念を避けるため、本発明の方法はさらなる増幅生成物の産生の後の(即ち、ユニバーサル、または第2ラウンドの増幅の後の)追加のステップの実施を包含している。そのような方法は反応容器の同じ反応混合物に制約されない。そのような方法は典型的には標的核酸分子の検出、および多くの場合に定量を含む。好ましい実施形態では、本発明の方法は特定の標的核酸分子を同定し、任意選択的に定量するために用いられる。好ましい実施形態では、本方法はさらなる増幅生成物のシーケンシングをさらに含む。シーケンシングは典型的には大量並列法で実施される。好ましくは、シーケンシングは次世代シーケンシング(NGS)手法を用いて実施される。シーケンシングは本発明の増幅反応の反応混合物とは異なる反応混合物中で起こり得る。
【0025】
用語「アンプリコン」は本明細書で「増幅生成物」と相互交換可能に用いられる。
【0026】
<重複標的配列を含むマルチプレックス増幅の改良>
本発明者らは、重複標的配列を含むマルチプレックス増幅(特にmPCR)を実施するための改良された試薬を開発した。特に本発明者らはmPCR等のマルチプレックス核酸増幅アッセイにおいて異常なアンプリコン(即ち意図しないアンプリコン)の増幅を制限しまたは無効にする手段を提供する。これは単一の反応容器中または混合物中でマルチプレックス核酸増幅アッセイを行うために特に有利である。それにより、個別の反応容器中または混合物中で重複増幅反応を実施する必要がなくなる。
【0027】
したがって、第1の態様では、本発明は標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットを提供し、このセットは、
a.標的核酸分子の第1の領域を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む、第1のプライマー対、
b.第1の領域と少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第2の領域を増幅するように設計された第2のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域および第1のリバースプライマーの5’末端に組み込まれた核酸タグと5’から3’への方向で同一であるプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第2のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第2のリバースプライマー
を含む、第2のプライマー対
を含み、
第1のリバースプライマーと第2のフォワードプライマーとの間に異常な(短い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(短い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(短い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。この概念を説明するため、これを図2に示す。標的核酸分子の第1の領域は標的核酸分子の第2の領域の上流(5’から3’への方向で(二本鎖の場合のセンス鎖で))にある。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1のフォワードプライマーおよび第2のリバースプライマーはまた、プライマー領域の5’の核酸タグを組み込んでいる。さらに、第1のフォワードプライマーの核酸タグと第2のリバースプライマーの核酸タグは5’から3’への方向で同一であり、それにより、第1のフォワードプライマーと第2のリバースプライマーとの間に異常な(長い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(長い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(長い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。この概念を説明するため、これを図4に示す。
【0029】
したがって、本明細書の全ての態様によれば、異常な増幅生成物は長さによって(相互に、また必要であれば所望の増幅生成物から)区別することができる。「短い」異常な増幅生成物は、第1のプライマー対のリバースプライマーがすぐ下流にある第2のプライマー対のフォワードプライマーと増幅生成物を形成することによって生じる。対照的に、「長い」異常な増幅生成物は、第1のプライマー対のフォワードプライマーがすぐ下流にある第2のプライマー対のリバースプライマーと増幅生成物を形成することによって生じる。短い異常生成物は特に問題であり、したがって本発明の1つの焦点である。
【0030】
標的核酸分子の特定の領域を増幅するように設計された特定のプライマー対における両方のプライマーがプライマー領域の5’の核酸タグを含む場合には、対におけるそれぞれのプライマーに組み込まれた核酸タグ(たとえば第1のフォワードプライマーの核酸タグおよび第1のリバースプライマーの核酸タグ)は異なっている。したがって、タグは実質的に同一でなく、好ましくは5’から3’への方向で同一性を共有しない。したがって、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する機構は避けられる。所望の増幅生成物の3’末端には5’核酸タグへのリバース相補配列は形成されず、分子内ハイブリダイゼーション事象が起こることが可能になる。この概念を説明するため、これを図4に示す。
【0031】
さらなる実施形態では、プライマーのセットは、
a.第2の領域と少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第3の領域を増幅するように設計された第3のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第3のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第3のリバースプライマー
を含む、第3のプライマー対をさらに含み、
第3のフォワードプライマーの核酸タグと、第2のリバースプライマーの核酸タグは、ともに5’から3’への方向で同一であり、それにより、第3のフォワードプライマーと第2のリバースプライマーとの間に異常な(短い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(短い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(短い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な(短い)増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。この概念を説明するため、これを図5A~Cに示す。標的核酸分子の第3の領域は標的核酸分子の第2の領域の下流(即ちセンス鎖の5’から3’への方向で)にある。
【0032】
さらなる実施形態では、第3のリバースプライマーはまた、プライマー領域の5’の核酸タグを組み込んでおり、第2のフォワードプライマーの核酸タグと第3のリバースプライマーの核酸タグも5’から3’への方向で同一であり、それにより、第2のフォワードプライマーと第3のリバースプライマーとの間に異常な(長い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(長い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(長い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成されることをさらに特徴とする。この概念を説明するため、これを図5A~Cに示す。
【0033】
同様に、プライマーのセットは、第3の領域の下流(センス鎖の5’から3’への方向で)にあり、これと少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第4の領域、第4の領域の下流(センス鎖の5’から3’への方向で)にあり、これと少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第5の領域、等々をそれぞれ増幅するように設計された第4のプライマー対、第5のプライマー対、等々をさらに含んでよく、第4、第5等のプライマー対は、第1、第2または第3のプライマー対について記述した1つまたは複数の核酸タグを、必要に応じて変更して有してよい。本発明による単一マルチプレックス増幅反応(mPCR等)において同時に用いることができるプライマーのセットにおけるプライマー対の総数には特に制限はないが、その代わり当業者には理解されるように所望のアンプリコンの数、用いる(DNA)ポリメラーゼの効率による。特定の実施形態では、プライマーのセットにおけるプライマー対の数は少なくとも5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000等であってよい。特定の実施形態では、プライマーのセットにおけるプライマー対の数は5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000等までであってよい。本発明によればマルチプレックスフォーマットで大きなDNA標的を効率的に増幅し、異常な増幅生成物の生成を最小化しまたは排除することを可能にするためにこの配置に従う任意の数のプライマー対が提供される。プライマー対の任意の所望の総数に従って、隣接するプライマー対の間の同一のタグの相互配置を用いることができる。同様に、単一の反応において複数の異なった標的をマルチプレックス化することができる。標的の少なくとも1つおよび好ましくは全ての標的が重複領域の増幅に関与し、したがって本発明のプライマーのセットを用いて増幅することができる。
【0034】
したがって、主要で高度に有利な態様においては、本発明は、標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットであって、
a.標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計された少なくとも2つのプライマー対を含み、それぞれのプライマー対が
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだリバースプライマー
を含む、少なくとも2つのプライマー対を含み、
それぞれのプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの核酸タグが異なっており、直近のプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーのタグが5’から3’への方向で同一であり、それにより、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーの間で異常な増幅生成物が形成される事象において異常な増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される、プライマーのセットを提供する。
【0035】
本明細書に記述した「プライマー対」は特定の所望の増幅生成物を生成するように設計されたプライマーの対を意味することに注意されたい。したがって、プライマー対は意図せずに異常な増幅生成物の産生をもたらすプライマーを記述するために用いる用語ではない。それぞれのプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの核酸タグは異なっている。これはさらに増幅されることが防止される意図した増幅生成物の産生を阻害する。それと対照的に、直近のプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーのタグは5’から3’への方向に同一である。本明細書で詳細に説明するように、そのような配置によって、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーとの間で異常な増幅生成物が形成される事象において、異常な増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こる。これにより、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造の形成がもたらされる。したがって、プライマー対の中およびその間のタグのこの全体の配置によって、長短両方の異常な増幅生成物のさらなる産生が阻害される。
【0036】
本発明の全ての態様によれば、核酸タグは最初の標的核酸分子に相補的でなく、したがってこれとハイブリダイズすることができないプライマーの領域である。その5’末端における核酸タグとその3’末端における相補配列を含む異常な増幅生成物(これは図3A~Cに示し、本明細書に詳しく説明したように、増幅の間に産生される)が形成されると、核酸タグと異常な増幅生成物の3’末端におけるその相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。
【0037】
より具体的には、増幅のラウンドまたはサイクル(これらの用語は本明細書で相互交換可能に用いられる)の間に異常な増幅生成物が生成し、次の増幅のラウンドまたはサイクルで(当技術で公知のPCR等の増幅方法ごとに)単一の核酸鎖に解離する(融解する)ために十分な程度に加熱されると、アニーリングステップの間に温度が引き続いて低下された際に、核酸タグと一本鎖の異常な増幅生成物の3’末端におけるその相補配列とのハイブリダイゼーションは、一本鎖の異常な増幅生成物とさらなるプライマーとの分子間ハイブリダイゼーションよりも有利になる。この分子内ハイブリダイゼーション事象によって、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。タグと相補体との相互作用により、ヘアピンまたは馬蹄形の分子が産生される。二次構造の正確なコンフォメーションは重要ではない。重要なことは、分子の末端の間の相互作用が異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害するということである。
【0038】
タグはヌクレオチドの配列から形成され、(DNA)ポリメラーゼが相補配列を合成するためのテンプレートとしてこれらを用いることができれば、DNA系、RNA系、またはそれらの組合せであってよい。好ましくはこれらはDNAからなっている。核酸タグはカノニカルヌクレオチドおよび/または非カノニカルヌクレオチドを含んでよい。カノニカルヌクレオチドにはグアニン、シトシン、チミン、アデニン、およびウラシルが含まれる。非カノニカルヌクレオチドにはイノシン、チオウリジン、イソグアニン、イソシトシン、およびジアミノピリミジンが含まれる。好適な相補的塩基対形成、即ち相互にハイブリダイズすることができるヌクレオチドの対である塩基対形成は、当業者にはよく知られている。
【0039】
融解温度(Tm)は当技術で(および本明細書において)核酸デュプレックスの二本鎖が解離して一本鎖になる温度と定義される。したがって、Tmはデュプレックスの安定性の指標を提供する。特定の実施形態では、相補的タグ由来配列(短い異常増幅生成物における)の間の分子内ハイブリダイゼーションによる二次構造のTmは、標的配列への分子間ハイブリダイゼーションに関連するプライマーのTm最高値より高い。したがって、プライマーをその標的核酸分子の相補的結合領域から解離させる温度では、核酸タグと一本鎖の異常な増幅生成物の3’末端におけるその相補配列との間で形成された二次構造は変化しないままであり、したがって異常な増幅生成物のさらなる増幅は阻害される。特に、相補的タグ由来配列(短い異常な増幅生成物における)の間の分子内ハイブリダイゼーションによる二次構造のTmは、標的配列への分子間ハイブリダイゼーションに関連するプライマーのTm最高値より、少なくとも1または2℃高く、任意選択的に3、4、5、6、7、8、9もしくは10℃またはそれ以上高くてよい。
【0040】
本発明のプライマーに組み込まれたタグはユニバーサルタグを含み、実質的にこれからなり、またはこれからなってよい。このユニバーサルタグ配列は増幅生成物に含まれ、したがってユニバーサルプライマーの使用を必要とする第2の増幅が起こることを可能にする。本明細書で定義したプライマーの対(即ち所望の増幅生成物を増幅するように設計されたフォワードプライマーおよびリバースプライマー)については、フォワードプライマーに組み込まれたユニバーサルタグ配列はリバースプライマーに組み込まれたユニバーサルタグ配列とは異なる。これにより、さらなる増幅が防止される意図された(所望の)増幅生成物の産生が防止される。しかし、そのようなタグ配列の以前の実施とは対照的に、本発明では直近のプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーのユニバーサルタグは5’から3’への方向で同一である。本明細書で詳細に説明するように、そのような配置によって、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーとの間で異常な増幅生成物が形成される事象において、異常な増幅生成物の5’末端のユニバーサルタグと増幅の間に形成された異常な増幅生成物の3’末端の相補配列との間で分子内ハイブリダイゼーション事象が起こることが保証される。これにより、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造の生成がもたらされる。したがって、プライマー対の中およびその間のユニバーサルタグのこの全体の配置によって、長短両方の異常な増幅生成物のさらなる産生が阻害される。
【0041】
ユニバーサルタグ配列は、同じ配列の対が全てのプライマーに使用されるので、いわゆる「ユニバーサル」であることを理解されたい。次いで第2ラウンドの増幅が、標的配列に関わらず、単一のユニバーサルプライマー対によって指令される。しかし本発明では、隣接するプライマー対の間のタグの相互配置は、ユニバーサルプライマーが第1の増幅反応の生成物を増幅するために対応する様式で作用することを単に意味している。典型的には、そのような増幅生成物は分子のそれぞれの末端にタグおよびアダプター配列を組み込む。これを本明細書でさらに論じ、一般的概念を図6A~Cに示す。
【0042】
この配置が第2の増幅において異常な増幅生成物をさらに抑制しまたは排除する機会を提供することはさらに留意に値する。もし何らかの望ましくない増幅生成物がユニバーサルプライマーによって増幅されることができるならば、これらはいずれかの末端に相補的アダプターまたは任意選択的にバーコード配列をさらに組み込むことになる。それにより鎖のいずれかの末端に相補性領域が伸長し、したがって分子内相互作用がさらに有利になり、それによりさらなる増幅が抑制される。
【0043】
タグに関してより一般的に、また疑念を避けるために、ユニバーサルタグはヌクレオチドの配列から形成され、(DNA)ポリメラーゼが相補配列を合成するためのテンプレートとしてこれらを用いることができれば、DNAベース、RNAベース、またはこの二つの組合せであってよい。本明細書で論じるいくつかの(RNase H)実施形態では、これらはRNAベースではない。これらは好ましくはDNAからなっている。ユニバーサルタグはカノニカルヌクレオチドおよび/または非カノニカルヌクレオチドを含んでよい。カノニカルヌクレオチドにはグアニン、シトシン、チミン、アデニンおよびウラシルが含まれる。非カノニカルヌクレオチドにはイノシン、チオウリジン、イソグアニン、イソシトシンおよびジアミノピリミジンが含まれる。好適な相補的塩基対形成、即ち相互にハイブリダイズすることができるヌクレオチドの対である塩基対形成は、当業者にはよく知られている。
【0044】
それぞれのタグはプライマー領域の5’(または上流)に位置していなければならない。しかし、プライマーはプライマー領域の上流にさらに付加的な配列を含んでよい。これらは好ましくはタグとプライマー領域との間に位置するが、タグの上流であってよい。含まれてもよい他の付加的な配列は、リアルタイムで増幅をモニターすることを可能にする、いわゆる「スコーピオン」プローブ等のプローブである。そのようなプローブ配列は典型的にはタグの上流に位置する。
【0045】
含まれてもよいさらに他の付加的な配列はバーコード、特に当技術で既知の分子バーコードである。簡潔には、それぞれの分子バーコードは、それが組み込まれる次のアンプリコンをシーケンシング後のインシリコ解析において同定することを可能にする特定の核酸配列である。
【0046】
当業者には容易に理解されるように、プライマーはたとえばフルオロフォアでラベルしてもよい。
【0047】
タグの長さは、所与の増幅反応において異常な増幅生成物の生成が最小化されることを保証するように当業者によって容易に決定することができる。本発明者らによって、24ヌクレオチドのタグが最適であるが、広範囲のタグ長さが十分であることが示された。多くの実施形態では、タグはさらなる「ユニバーサル」プライマーがハイブリダイズする配列を提供するように用いられる。したがって、そのようなタグは、当業者にはよく知られているように、プライマー設計の要求に一致している。したがって、いくつかの実施形態では、それぞれのタグは少なくとも15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32または33ヌクレオチドの長さを有している。いくつかの実施形態では、それぞれのタグは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32または33ヌクレオチドの長さを有している。いくつかの実施形態では、それぞれのタグは15~35ヌクレオチドの長さ、または20~30ヌクレオチドの長さ、好ましくは20~25ヌクレオチドの長さを有している。
【0048】
タグの組成も融解温度およびハイブリダイゼーション特性の観点から重要である。さらなる実施形態では、それぞれのタグはGCの多い配列を含む。GCの多い配列はそれぞれの塩基対が3つの水素結合を含むので好ましい(2つだけの水素結合を含むAT対と比較して)。「GCが多い」は主としてグアニンヌクレオチドおよび/またはシトシンヌクレオチドを含む核酸配列を意味する。これは50%超および100%の間のグアニン残基およびシトシン残基のいずれでもよい。タグはたとえば50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100%のグアニンヌクレオチドおよび/またはシトシンヌクレオチドを含んでよい。特定の実施形態では、タグはグアニンヌクレオチドのみ、またはシトシンヌクレオチドのみを含む。他の実施形態では、タグはグアニンヌクレオチドおよびシトシンヌクレオチドの組合せを含む。タグが100%未満のグアニンヌクレオチドおよび/またはシトシンヌクレオチドである場合には、残りのヌクレオチドは他の任意のカノニカルヌクレオチドまたは非カノニカルヌクレオチドから選択してよい。
【0049】
所望の増幅生成物の大きさは、用いるべき特定の増幅反応による。これは標的配列の性質にもよる。mPCRでは、それぞれのプライマー対は30~500ヌクレオチド、好ましくは30~300ヌクレオチド、より好ましくは50~150ヌクレオチドの範囲の増幅生成物を生成するように意図してよい。増幅生成物を次の次世代シーケンシングに用いる場合には、それぞれのプライマー対は30~500ヌクレオチド、好ましくは30~300ヌクレオチド、より好ましくは70~250ヌクレオチドの範囲の増幅生成物を生成するように意図してよい。mPCRを用い、たとえばプローブに基づくシステムを用いて増幅生成物をリアルタイムで検出する場合には、短い増幅生成物が好ましい。したがって、それぞれのプライマー対は30~300ヌクレオチド、好ましくは30~250ヌクレオチド、より好ましくは30~150ヌクレオチドの範囲の増幅生成物を生成するように意図してよい。関連する実施形態では、直近のプライマー対から産生される意図された増幅生成物の間の重複のレベルは10~100ヌクレオチド、好ましくは10~50ヌクレオチド、より好ましくは10~30ヌクレオチドの範囲である。重複の領域は短い異常増幅生成物の長さ(マイナスタグ配列)に対応する。しかし、所望の増幅生成物の長さは本発明の基本的特徴ではないことを理解されたい。したがって、それぞれのプライマー対は500ヌクレオチドより大きく、たとえば1000、2000ヌクレオチド等までの増幅生成物を生成するように意図してよい。それぞれの所望の増幅生成物の長さは、使用する(DNA)ポリメラーゼ酵素の伸長限界の長さであるか、それに近い。したがって、本発明によって、所望の増幅生成物の長さに関するユーザー融通性が可能になる。それは、これが標的核酸分子中の目的の標的領域に相補的なプライマー領域に過ぎないからである。目的の標的領域に適したプライマー領域(したがってアンプリコンの大きさ)の設計は、増幅の目的に応じて当業者には慣習的である。
【0050】
特定の実施形態では、それぞれのタグは標的核酸分子との同一性を示さない。そのため、異常なタグ結合の可能性が最小化される。しかし、プライマー領域が同じ領域で標的核酸分子にも結合し、(増幅を指令するという意味で)生産的でないハイブリダイゼーションが起こることは極めて考えにくいので、これは本質的な特徴ではない。
【0051】
本発明のプライマー対はキットの形でも提供することができる。したがって、関連する態様では、本発明によって本明細書で定義するプライマーのセットを含むマルチプレックス核酸増幅用のキットが提供される。
【0052】
特定の実施形態では、キットは後続のシーケンシングのためのユニバーサルプライマーをさらに含み、それぞれのユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、
a.アダプター配列、
b.任意選択的に試料バーコード配列、
c.マルチプレックス増幅に用いられる対応するプライマーのユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0053】
アダプター配列は次世代(NGS)プラットフォームを用いる高スループット核酸シーケンシングのための任意の好適なアダプター配列でよい。NGSプラットフォームの例には、Illuminaシーケンシング(Hi-SeqおよびMi-Seq等)、SMRTシーケンシング(Pacific Biosciences)、ナノポアシーケンシング、SoLIDシーケンシング、パイロシーケンシング(たとえばRoche454)およびIon-Torrent(Thermo Fisher)が含まれ、これらは当業者には周知である。アダプター配列はシーケンシングのための好適な固体表面(その性質はフローセル(Illumina)、ゼロモードウェーブガイド(SMRT)またはビーズ(パイロシーケンシング)等のシーケンシングプラットフォームによる)に固定化されたオリゴヌクレオチドに相補的であってよい。例には、Illumina MiSeqまたはHiSeqプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なp5アダプターおよびp7アダプター、ならびにThermo Fisher Ion Protonプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なAアダプターおよびP1アダプターが含まれる。
【0054】
試料バーコード配列は試料の同定を可能にするために用いられる。これは単一のシーケンシング操作で複数の試料を検討する場合に有利である。しかしこれは任意選択的にある。いくつかの応用、たとえば試料のウルトラディープシーケンシングのため、試料バーコード配列は冗長であってよい。含まれる場合には、試料バーコード配列は選択したNGSプラットフォームを用いる高スループット核酸シーケンシングのための任意の好適な試料バーコード配列であってよい。
【0055】
プライマー対がマルチプレックスにおいて用いられる場合に増幅生成物に組み込まれるユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域は、それが(DNA)ポリメラーゼのためのプライマーとして作用することができれば、DNA系もしくはRNA系またはそれらの組合せであってよい。好ましくは、ユニバーサルプライマー領域はDNAからなっている。ユニバーサルプライマー領域はカノニカルヌクレオチドおよび/または非カノニカルヌクレオチドを含んでよい。カノニカルヌクレオチドにはグアニン、シトシン、チミン、アデニンおよびウラシルが含まれる。非カノニカルヌクレオチドにはイノシン、チオウリジン、イソグアニン、イソシトシンおよびジアミノピリミジンが含まれる。再び、ユニバーサルプライマーは種々のNGSプラットフォームにおける使用のための技術で周知である。
【0056】
さらなる実施形態では、キットは、ポリメラーゼ、ジヌクレオチドトリリン酸(dNTP)、MgCl、および緩衝剤の1つまたは複数、その全てまでを含むmPCRのための好適な試薬をさらに含んでよい。任意の好適なポリメラーゼが利用できる。一般に、本発明の核酸標的を増幅するためにDNAポリメラーゼが用いられる。例には、TaqポリメラーゼまたはPfuポリメラーゼ等の熱安定性ポリメラーゼおよびこれらの酵素の種々の誘導体が含まれる。好適な緩衝剤も周知で購入可能であり、PCR増幅に必要な多数の成分を含むPCRマスターミックスの中に含まれていてよい。
【0057】
さらなる実施形態では、キットは逆転写酵素を含むRNAのcDNAへの逆転写のための好適な試薬をさらに含んでよい。任意の好適な逆転写酵素を利用することができる。好適な緩衝剤も周知で購入可能であり、逆転写に必要な多数の成分を含む逆転写マスターミックスの中に含まれていてよい。
【0058】
好ましい実施形態では、キットはユニバーサルプライマーの対を含む。これらはそれぞれ第1のユニバーサルプライマーおよび第2のユニバーサルプライマーと称され得る。より具体的には、第1のユニバーサルプライマーは、5’から3’の順に、
a.第1のアダプター配列(本明細書で定義する)、
b.(任意選択的に)試料バーコード配列(本明細書で定義する)、
c.プライマー対がマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれる第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0059】
第2のユニバーサルプライマーは、5’から3’の順に、以下を含む。
a.第2のアダプター配列(本明細書で定義する)。第2のアダプターは一般に第1のアダプター配列と異なる。典型的には、第2のアダプター配列は第1のアダプター配列との配列同一性を実質的にまたは殆ど共有しない。
b.(任意選択的に)本明細書で定義する試料バーコード配列。
c.プライマー対がマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれる第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域。
【0060】
図6A~Cに示すユニバーサルプライマーの対を用いる増幅により、第1のアダプター配列(および任意選択的に試料バーコード配列)が一端に組み込まれ、第2のアダプター配列(および任意選択的に試料バーコード配列)が他端に組み込まれた所望の増幅生成物が産生される。これにより(直ちに)高スループットの大量の並列DNAシーケンシングにおける使用が可能になる。いくつかの好ましい実施形態では、第1のアダプター配列および第2のアダプター配列はそれぞれIllumina MiSeqまたはHiSeqプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なp5アダプターおよびp7アダプターである。他の同様に好ましい実施形態では、第1のアダプター配列および第2のアダプター配列はそれぞれThermo Fisher Ion Protonプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なAアダプターおよびP1アダプターである。
【0061】
さらなる実施形態では、ユニバーサルプライマーは、本明細書で定義され、当技術で知られているように、ユニバーサルプライマー領域の上流であるがアダプター配列の下流に試料バーコードを含んでよい。したがって、特定の実施形態では、その/それぞれのユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、アダプター配列、試料バーコード、およびユニバーサルプライマー領域を含む。
【0062】
さらなる態様では、本発明は本明細書で定義されるプライマーのセットを用いて本明細書で定義されるタグ付けされた増幅生成物を創成する、本明細書で定義される標的核酸分子の重複領域の増幅を含むマルチプレックス核酸増幅反応(たとえばmPCR)をも提供する。
【0063】
いくつかの実施形態では、マルチプレックス核酸増幅反応は、増幅生成物を検出するステップをさらに含む。増幅生成物の検出は、たとえばゲル電気泳動等の日常的な方法によってよく、またはSYBR Green I(Sambrook、Russell、Molecular Cloning - A Laboratory Manual、第3版)、TaqMan(登録商標)システム(Applied Biosystems)、Hollandら、「Detection of specific polymerase chain reaction product by utilising the 5’-3’ exonuclease activity of Thermus aquaticus DNA polymerase」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88、7276~7280頁(1991年)、Gelminiら、「Quantitative polymerase chain reaction-based homogeneous assay with flurogenic probes to measure C-Erb-2 oncogene amplification」、Clin.Chem.43,752~758頁(1997)およびLivakら、「Towards fully automated genome wide polymorphism screening」、Nat.Genet.9, 341~342頁(19995)等のインターカレーティング蛍光染料の使用等のリアルタイムまたはエンドポイント検出法、またはモレキュラービーコンシステム、Tyagi、Kramer、「Molecular Beacons-probes that fluoresce upon hybridazation」、Nat.Biotechnol.14、303~308(1996)およびTyagiら、「Multicolor molecular beacons for allele discrimination」、Nat Biotechnol.16、49~53(1998)を用いて行なってよい。ScorpionシステムおよびFRET系システム等の他のシステムを必要に応じて採用してよい。
【0064】
代替の実施形態では、マルチプレックス核酸増幅反応はシーケンシングのためのタグ付けされた増幅生成物を調製する付加的な増幅を含み、付加的な増幅反応はユニバーサルプライマーを利用し、それぞれのユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、
a.本明細書で定義するアダプター配列、
b.任意選択的に本明細書で定義する試料バーコード配列、
c.プライマー対が本明細書で定義するマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれるユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0065】
そのような付加的な増幅は好ましくは本発明のユニバーサルプライマーの対を使用する。
【0066】
アダプター配列、ユニバーサルプライマー、および試料バーコードは上で論じた。上の議論は必要に応じて変更して適用され、簡潔のため繰り返さない。
【0067】
本発明は標的核酸分子を検出しおよび/または定量するためのシーケンシング反応をも包含する。そのような方法は、本発明による増幅反応およびそれに続く、好ましくは次世代シーケンシング手法を用いる増幅生成物のシーケンシングを含む。
【0068】
<第1の増幅反応の程度の制御によって単一反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
本発明者らは、単一の反応混合物中または反応容器中におけるマルチステップ、典型的には2ステップの増幅の性能を向上させる第1の増幅反応で用いるプライマーを開発した。第1の増幅における第1のプライマーの役割は目的の標的配列を増幅し、アンプリコンにユニバーサルタグを組み込むことである。タグ付けされたアンプリコンは次いで第2の増幅のためのテンプレートとして作用し、第2の増幅においてユニバーサルプライマーはタグにハイブリダイズして、さらなるプロセシングおよび同定の目的に必要な追加的な配列、特にアダプターを組み込む。マルチステップ増幅が単一の反応混合物中または反応容器中で行なわれる場合、第1のプライマーが生成物を産生し続け、第2の増幅反応と事実上、競合するという問題がある。これは異常な生成物の産生をもたらす可能性がある。したがって第1の増幅反応の程度を制御する必要がある。
【0069】
本発明のプライマーは、1つの鎖の上にRNA塩基を含む二本鎖DNA配列を切断するRNase Hの能力を利用している。RNA塩基の傍に典型的には少なくとも4つ(ただしこの数は増幅に用いる正確なRNase H酵素による。実験ではパイロコッカス・アビシ(Pyrococcus abyssi)からのRNase H2はRNA塩基の3’の少なくとも4つの塩基対のデュプレックス領域を必要とすることが示されている)の二本鎖(または「デュプレックス」)DNAの塩基対がいずれかの側に存在するならば、RNase HはRNA塩基の5’末端を切断することになる。したがって、本発明のプライマーは、全プライマー配列が二本鎖増幅生成物に組み込まれるまではRNase Hが作用できないような位置に存在するRNA塩基を含む。相補的鎖の合成によってRNA塩基が修正される。したがって、本発明のさらなるプライマーが相補的鎖に結合すれば、いずれかの側に二本鎖(または「デュプレックス」)DNAの少なくとも4つ(これは増幅に用いる正確なRNase H酵素によるが)の塩基対が傍にあるRNA塩基を含む二本鎖配列が産生される。したがってRNase HがRNA塩基を切断する。この反応は第1の増幅反応の効率を低減するように働き、最終混合物中の異常な配列の割合を低減する。
【0070】
特にパイロコッカス・アビシからのRNase H2を用いる場合、いずれかの側の4塩基対の二本鎖領域が切断事象を引き起こすために最小であると考えられるが、RNAヌクレオチドのいずれかの側の二本鎖DNAの短い領域を用いて他のRNase H酵素が有効であることも可能である。これはたとえばDobosy JR、Rose SD、Beltz KR、Rupp SM、Powers KM、Behlke MA、Walder JA(2011年)、「RNase H-dependent PCR (rhPCR):improved specificity and single nucleotide polymorphism detection using blocked cleavable primers」、BMC Biotechnol,11巻、80頁に説明されている実験的アプローチによって容易に試験することができる。7頁に記載されている実験を参照されたい。RNAヌクレオチドの3’のプライマー領域が標的核酸分子とハイブリダイズする必要があり、したがって実際上、4ヌクレオチドより有意に長いことになることも留意されたい。典型的には、プライマー領域は最小で15ヌクレオチドで、一般には少なくとも20ヌクレオチドである。
【0071】
1つの態様によれば、本発明は、5’から3’の順に、
a.ユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのプライマーを提供する。
【0072】
RNase Hの要求により、本発明のこの態様による標的核酸分子はDNAである。DNAはRNAの逆転写によって産生することができる。したがって、標的核酸分子はゲノムDNAまたはcDNAを含んでよい。標的核酸分子は二本鎖または一本鎖であってよい。
【0073】
マルチステップ増幅は典型的には2ステップ反応であり、好ましくは単一の反応混合物中または反応容器中で起こる。第1の増幅は標的核酸分子を増幅し、アンプリコンにユニバーサルタグを組み込むために用いられる。第2の増幅はユニバーサル増幅であり、ここではユニバーサルタグがさらなるプロセシングおよび同定の目的のためのアダプター配列を組み込むために用いられるユニバーサルプライマーのためのハイブリダイゼーション部位として作用する。したがって、本発明のプライマーはマルチステップ増幅の第1ステップにおける使用のためである。
【0074】
プライマーは5’から3’の順に、以下を含む。
【0075】
a.ユニバーサルタグ
タグはいわゆる「ユニバーサル」タグであり、第2ラウンドの「ユニバーサル」プライマーがハイブリダイズすることができる配列を第1ラウンドの増幅生成物に組み込むために用いられる。したがって、タグ配列はユニバーサルプライマーのプライマー領域と同じであるように設計される。
【0076】
したがって、タグは最初の標的核酸分子の配列と一致しない。最初の標的核酸分子へのハイブリダイゼーションは別のプライマー領域によって達成される。もちろん、いったんタグが増幅生成物に組み込まれれば、タグ配列はプライマーのためのさらなるハイブリダイゼーション領域として作用する。
【0077】
第2の増幅反応を妨げる可能性があるRNase Hによる望ましくない切断を防止するため、タグはRNAヌクレオチドを含まないことが重要である。したがって典型的には、タグはDNAヌクレオチドからなる。しかし、ヌクレオチドが第2の増幅において適切に設計されたユニバーサルプライマーと塩基対を形成することができるならば、RNase H活性に感受性のない任意のヌクレオチドを使用することができる。
【0078】
b.RNAヌクレオチド
特定のRNAヌクレオチドは重要ではない。それは単に二本鎖DNAのコンテキストに存在する場合にRNase Hによって切断できるヌクレオチドであればよい。上で論じたように、典型的には、二本鎖DNAのコンテキストはRNAヌクレオチドのいずれかの側に二本鎖(または「デュプレックス」)DNA塩基の4塩基対を最小限必要とする。好ましくは、単一のRNAヌクレオチドがプライマーに含まれる。RNAヌクレオチドは標的DNA分子中の対応するDNAヌクレオチドと一致しても、一致しなくてもよいことにも留意されたい。いずれの場合にも、RNAヌクレオチドは増幅生成物に組み込まれる。相補的鎖の合成によってRNA塩基が修正され、対応するDNAヌクレオチドが含まれる。したがって、本発明のさらなるプライマーが相補的鎖に結合すれば、いずれかの側に二本鎖(または「デュプレックス」)DNAの少なくとも4つ(これは増幅に用いる正確なRNase H酵素によるが)の塩基対が傍にあるRNA塩基を含む二本鎖配列が産生される。したがってRNase HがRNA塩基を切断する。この反応は第1の増幅反応の効率を低減するように働き、最終混合物中の異常な配列の割合を低減する。
【0079】
c.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
プライマー領域は標的核酸分子の増幅を指令する。再び、標的核酸の増幅を妨げる可能性があるRNase Hによる望ましくない切断を防止するため、プライマー領域はRNAヌクレオチドを含まないことが重要である。したがって典型的には、プライマー領域は標的DNA配列にハイブリダイズするDNAヌクレオチドからなる。しかし、ヌクレオチドが標的核酸配列と塩基対を形成することができるならば、RNase H活性に感受性のない任意のヌクレオチドを使用することができる。最初のプライマー結合の際にRNase H基質が産生されず、その代わりに相補的鎖の合成とそれに続くプライマーの相補的鎖への結合に依存する作用機序によって、標的に関してプライマー領域を設計する自由度がある。したがって、所望の標的DNA分子とのハイブリダイゼーションを確実にするというプライマー設計の制約の中で、ミスマッチは許容され、本発明の実施に不都合な影響を及ぼすことはない。所与の標的核酸配列に対するプライマーの設計は十分に当業者の能力の範囲内である。
【0080】
いくつかの実施形態では、プライマー領域はRNAヌクレオチドを組み込むことができることに留意されたい。これには最初の標的DNA分子へのプライマーの結合がRNase H基質を産生しないという前提がある。したがって典型的には、RNAヌクレオチドはプライマー領域の開始から(5’から3’への方向で)3ヌクレオチドを超えて下流にあることはできない。それにより、RNAヌクレオチドは、最初の標的核酸分子の増幅の前に、いずれかの側に少なくとも4塩基対の二本鎖(または「デュプレックス」)DNA塩基が存在しないということが保証される。これを模式的に図10に示す。
【0081】
典型的には、RNAヌクレオチドは別として、プライマー中の残りのヌクレオチドはDNAヌクレオチドである。しかし既に論じたように、他の非RNAヌクレオチドも、それらが対応するDNAヌクレオチドの機能を再現し、RNase H活性に感受性がないならば、プライマーに用いることができる。
【0082】
Dobosyら(Dobosy Jr、Rose Sd、Beltz Kr、Rupp Sm、Powers Km、Behlke MA、Walder JA(2011年)、「RNase H-dependent PCR (rhPCR):improved specificity and single nucleotide polymorphism detection using blocked cleavable primers」、BMC Biotechnol、11:80)はrhPCRを開発した。このシステムはプライマーダイマーを排除するためにRNase H活性によっている。これはRNase H活性によって活性化されるブロックされたプライマーによっている。このシステムとは対照的に、本発明はブロックされたプライマーを必要としない。したがって、本発明のプライマーはブロッキング基を必要とせず、特にRNA塩基の下流のブロッキング基を必要としない。それにも関わらず、いくつかの実施形態では、本発明のプライマーは最初にDobosyによって述べられた機能を含むように改変され得る(Dobosyの図1を参照)。これには第1のRNAヌクレオチドの(5’から3’の方向に)下流のさらなるRNAヌクレオチドを必要とする。したがって、いくつかの実施形態では、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのプライマーは、5’から3’の順に、
a.ユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域、
d.さらなるRNAヌクレオチド、
e.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするさらなる領域、
f.ブロッキング基
を含む。
【0083】
したがって、本発明のプライマーはRNase H依存性PCR(rhPCR)反応における使用のために適合させることができる。このシステムはプライマーダイマーの形成およびその他のテンプレートに依存しない反応を避けるために特に有利である。これは標的DNA分子への最初のプライマー結合に際して形成されるRNase H基質に依存している。ブロックされたプライマーは不活性である。RNase Hによる切断に際して、プライマー領域(c)のブロックが効果的に解除され、DNA鎖の合成を開始することができる。
【0084】
そのようなプライマーについて必要な追加的な特徴は、以下の通りである。
【0085】
d.さらなるRNAヌクレオチド
さらなる切断部位がプライマーに導入される必要があり、これはプライマー領域の下流である必要がある。特定のRNAヌクレオチドは重要ではない。それは単に二本鎖DNAのコンテキストに存在する場合にRNase Hによって切断できるヌクレオチドであればよい。上で論じたように、典型的には、二本鎖DNAのコンテキストはRNAヌクレオチドのいずれかの側に二本鎖(または「デュプレックス」)DNA塩基の4塩基対を最小限必要とする。好ましくは、単一のさらなるRNAヌクレオチドがプライマーに含まれる。RNAヌクレオチドは好ましくは標的DNA分子中の対応するDNAヌクレオチドと一致することにも留意されたい。これにより、RNase Hによる切断の効率が最大化される。したがって、本発明のプライマーが標的DNAに結合すれば、いずれかの側に二本鎖(または「デュプレックス」)DNAの典型的には少なくとも4つ(これは増幅に用いる正確なRNase H酵素によるが)の塩基対が傍にあるRNA塩基を含む二本鎖配列が産生される。したがってRNase HがRNA塩基を切断し、プライマー領域を直接合成に放出する。
【0086】
e.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするさらなる領域
さらなる領域は標的核酸分子の鎖とハイブリダイズし、したがってプライマー領域のみの使用と比較して標的DNA分子への特異性が改良される。さらなるRNAヌクレオチドおよびさらなる領域は、プライマー領域の結合部位から続く連続的なDNA塩基にハイブリダイズする。さらなる領域が存在してDNA標的への結合に際してRNase H切断のためのコンテキストを提供するので、これはプライマー領域と組み合わせて、さらなるRNAヌクレオチドのいずれかの側の二本鎖(または「デュプレックス」)DNA塩基の十分な塩基対を提供するために十分な長さがあればよい。典型的には、さらなる領域は、標的結合に際してRNase H媒介切断のための関連するコンテキストを産生するために最小で4ヌクレオチドの長さである。これらのヌクレオチドの少なくとも最初のものは、好ましくは標的DNA分子と一致する。これはRNase Hによる効率の良い切断を保証する最も重要なヌクレオチドである。しかし理想的には、少なくとも最初の1、2、3または4つ、および好ましくは全てのヌクレオチドが、標的DNA分子と一致する。これによって切断効率が最大化されるが、必須ではない。
【0087】
単一のさらなるRNAヌクレオチドが必要なものの全てであり、したがって好ましいが、さらなる領域にはRNase Hによって切断する追加のさらなるRNAヌクレオチドが含まれてもよい。必要なものの全ては、増幅を指令することを可能にするプライマー領域のブロックの放出である。さらなる領域は単にRNase H活性のための適切な基質コンテキストを提供しさえすればよく、それ自体でさらなる機能を提供するわけではない。したがって、切断がブロッキング基の除去をもたらし、プライマー領域が標的核酸分子を伸長させることを可能にするならば、多重の切断事象が可能である。しかし典型的には、さらなる領域は標的DNA配列にハイブリダイズするDNAヌクレオチドからなる。それにも関わらず、ヌクレオチドが標的核酸配列と塩基対を形成することができるならば、RNase H活性に感受性のない任意のヌクレオチドを使用することができる。
【0088】
f.ブロッキング基
ブロッキング基はRNase Hによる切断(これによりプライマー領域のブロックが効果的に解除される)の前に望ましくない伸長を防止する。この目的のため任意の好適なブロッキング基を使用することができ、用いることができるブロッキング基は当業者には周知である。ある実施形態では、ブロッキング基は3’ddC、3’反転dT、3’C3スペーサー(C3プロパンジオールスペーサー等)、3’アミノ、および3’ホスホリル化から選択される。
【0089】
本発明のプライマーは追加の要素を組み込んでもよい。たとえば、プライマーは増幅生成物の増幅および/または検出のモニタリングを容易にするため好適なラベルを含んでよい。好ましい実施形態では、本発明のプライマーはバーコード配列をさらに含む。典型的には、バーコード配列はRNAヌクレオチドの下流に配置される。好ましいバーコード配列は分子バーコードである。特定の実施形態では、分子バーコードの長さは少なくとも4、6または8ヌクレオチドである。一般には、分子バーコードの長さは20ヌクレオチドを超えない。
【0090】
本発明のプライマーは「標準の」第2のプライマー(即ち、タグを有する標的特異的プライマー)と組み合わせてプライマー対を形成するために用いることができるが、本発明のプライマーは有利には第1の増幅において対で用いられる。したがって、本発明は標的核酸分子を増幅するための本発明のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むプライマー対をも提供する。
【0091】
本発明を実施するための重要な試薬がRNase Hである。RNase Hのリボヌクレアーゼ活性により、DNA/RNAデュプレックス基質中のRNAの3’-O-P結合が切断して、3’-ヒドロキシルおよび5’-ホスフェート末端生成物が産生される。本発明において有用なRNase H酵素は核酸増幅の間、活性でなければならない。酵素はプライマーがテンプレートにハイブリダイズするとともに増幅生成物上でリアルタイムに作用する。したがって、PCRが本発明によって最も好ましい増幅プロセスであるので、典型的には、RNase Hは熱安定なRNase Hである。好ましくは、そのようなRNase HはPCRの間に用いられる高温(サーマルサイクリング)よりも、室温での活性が顕著に低い。しかし、等温増幅反応(たとえばNASBA)を実施する場合には、熱安定なRNase Hは必須ではない。
【0092】
したがって、本発明はRNase Hとともに本発明のプライマーまたはプライマー対を含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットをさらに提供する。好ましくは、RNase Hは熱安定性である。パイロコッカス・アビシからのRNase H2等のRNase H2が利用できる。
【0093】
本発明は、本発明のプライマー、プライマー対または試薬のセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチステップ(典型的には2ステップ)増幅を提供する。そのような反応は、好ましくは単一の反応混合物中または反応容器中で起こる。
【0094】
本発明は、本発明の第1のプライマー対を用いてRNase Hの存在下に標的核酸分子を増幅するステップを含む、標的核酸分子の増幅のための方法であって、
a.第1ラウンドの増幅の後、標的核酸分子が複製され、第1の増幅生成物がユニバーサルタグおよび第1のフォワードプライマーのRNAヌクレオチドを組み込み、第2の増幅生成物がユニバーサルタグおよび第1のリバースプライマーのRNAヌクレオチドを組み込み、
b.第2ラウンドの増幅では、第1のリバースプライマーが、第1の増幅生成物とハイブリダイズして、ユニバーサルタグの相補体と第1のフォワードプライマーのRNAヌクレオチドのDNA相補体とを組み込んだ第3の増幅生成物を産生し、第1のフォワードプライマーが、第2の増幅生成物とハイブリダイズして、ユニバーサルタグの相補体と第1のリバースプライマーのRNAヌクレオチドのDNA相補体とを組み込んだ第4の増幅生成物を産生し、第3の増幅生成物および第4の増幅生成物がそれぞれRNase H活性の基質となり、それによりRNAヌクレオチドの切断がもたらされ、それにより標的核酸分子のさらなる増幅が制限される、方法を提供する。
【0095】
上で言及したように、第1ラウンドおよび第2ラウンドの増幅は、それぞれ本発明の第1のフォワードプライマーおよび第1のリバースプライマーを含む。したがって、この方法は第1の増幅反応を記述している。これはマルチステップ増幅反応のコンテキストで起こってよく、好ましくはまさに起こっている。そのような反応は好ましくは単一の反応混合物中または反応容器中で起こる。
【0096】
したがって、増幅の方法はシーケンシングのためのタグ付けされた増幅生成物を調製するための追加的な増幅をさらに含んでよく、追加的な増幅反応はユニバーサルプライマーを利用し、それぞれのユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、
a.本明細書で定義するアダプター配列、
b.任意選択的に本明細書で定義する試料バーコード配列、
c.プライマー対が本明細書で定義するマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれるユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0097】
そのような追加的な増幅には、好ましくは本発明のユニバーサルプライマーの対が使用される。より具体的には、第1のユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、
a.第1のアダプター配列(本明細書で定義する)、
b.(任意選択的に)試料バーコード配列(本明細書で定義する)、
c.プライマー対がマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれる第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0098】
第2のユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、以下を含む。
a.第2のアダプター配列(本明細書で定義する)。第2のアダプターは一般に第1のアダプター配列と異なる。典型的には、第2のアダプター配列は第1のアダプター配列との配列同一性を実質的にまたは殆ど共有しない。
b.(任意選択的に)本明細書で定義する試料バーコード配列。
c.プライマー対がマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれる第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域。
【0099】
本発明は標的核酸分子を検出しおよび/または定量するためのシーケンシング反応をも包含する。そのような方法は、本発明による増幅反応およびそれに続く、好ましくは次世代シーケンシング手法を用いる増幅生成物のシーケンシングを含む。
【0100】
本発明のプライマー、プライマー対および試薬のセットは、キットの形でも提供され得る。したがって、関連する態様では、本発明は上記のプライマー、プライマー対または試薬のセットを含む標的核酸分子のマルチステップ増幅のためのキットを提供する。
【0101】
特定の実施形態では、キットは後続のシーケンシングのためのユニバーサルプライマーをさらに含み、それぞれのユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、
a.アダプター配列、
b.任意選択的に試料バーコード配列、
c.第1の増幅で用いる対応するプライマーのユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0102】
アダプター配列は次世代(NGS)プラットフォームを用いる高スループット核酸シーケンシングのための任意の好適なアダプター配列でよい。NGSプラットフォームの例には、Illuminaシーケンシング(Hi-SeqおよびMi-Seq等)、SMRTシーケンシング(Pacific Biosciences)、ナノポアシーケンシング、SoLIDシーケンシング、パイロシーケンシング(たとえばRoche454)およびIon-Torrent(Thermo Fisher)が含まれ、これらは当業者には周知である。アダプター配列はシーケンシングのための好適な固体表面(その性質はフローセル(Illumina)、ゼロモードウェーブガイド(SMRT)またはビーズ(パイロシーケンシング)等のシーケンシングプラットフォームによる)に固定化されたオリゴヌクレオチドに相補的であってよい。例には、Illumina MiSeqまたはHiSeqプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なp5アダプターおよびp7アダプター、ならびにThermo Fisher Ion Protonプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なAアダプターおよびP1アダプターが含まれる。
【0103】
試料バーコード配列は試料の同定を可能にするために用いられる。これは単一のシーケンシング操作で複数の試料を検討する場合に有利である。しかしこれは任意選択的にある。いくつかの応用、たとえば試料のウルトラディープシーケンシングのため、試料バーコード配列は冗長であってよい。含まれる場合には、試料バーコード配列は選択したNGSプラットフォームを用いる高スループット核酸シーケンシングのための任意の好適な試料バーコード配列であってよい。
【0104】
プライマー対が第1の増幅において用いられる場合に増幅生成物に組み込まれるユニバーサルタグと同一(5’から3’への方向で)のユニバーサルプライマー領域は、それが(DNA)ポリメラーゼのためのプライマーとして作用することができれば、DNA系もしくはRNA系またはそれらの組合せであってよい。好ましくは、ユニバーサルプライマー領域はDNAからなっている。ユニバーサルプライマー領域はカノニカルヌクレオチドおよび/または非カノニカルヌクレオチドを含んでよい。カノニカルヌクレオチドにはグアニン、シトシン、チミン、アデニンおよびウラシルが含まれる。非カノニカルヌクレオチドにはイノシン、チオウリジン、イソグアニン、イソシトシンおよびジアミノピリミジンが含まれる。再び、ユニバーサルプライマーは種々のNGSプラットフォームにおける使用のための技術で周知である。
【0105】
好ましい実施形態では、キットはユニバーサルプライマーの対を含む。これらはそれぞれ第1のユニバーサルプライマーおよび第2のユニバーサルプライマーと称され得る。より具体的には、第1のユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、
a.第1のアダプター配列(本明細書で定義する)、
b.(任意選択的に)試料バーコード配列(本明細書で定義する)、
c.プライマー対がマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれる第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域
を含む。
【0106】
第2のユニバーサルプライマーは、5’から3’の順に、以下を含む。
a.第2のアダプター配列(本明細書で定義する)。第2のアダプターは一般に第1のアダプター配列と異なる。典型的には、第2のアダプター配列は第1のアダプター配列との配列同一性を実質的にまたは殆ど共有しない)。
b.(任意選択的に)本明細書で定義する試料バーコード配列。
c.プライマー対がマルチプレックス増幅で用いられる場合に増幅生成物に組み込まれる第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域。
【0107】
さらなる実施形態では、ユニバーサルプライマーは、本明細書で定義され、当技術で知られているように、ユニバーサルプライマー領域の上流であるがアダプター配列の下流に試料バーコードを含んでよい。したがって、特定の実施形態では、その/それぞれのユニバーサルプライマーは5’から3’の順に、アダプター配列、試料バーコード、およびユニバーサルプライマー領域を含む。
【0108】
さらなる実施形態では、キットは、ポリメラーゼ、ジヌクレオチドトリリン酸(dNTP)、MgCl、および緩衝剤の1つまたは複数、その全てまでを含むmPCRのための好適な試薬をさらに含んでよい。任意の好適なポリメラーゼが利用できる。一般に、本発明の核酸標的を増幅するためにDNAポリメラーゼが用いられる。例には、TaqポリメラーゼまたはPfuポリメラーゼ等の熱安定性ポリメラーゼおよびこれらの酵素の種々の誘導体が含まれる。好適な緩衝剤も周知で購入可能であり、PCR増幅に必要な多数の成分を含むPCRマスターミックスの中に含まれていてよい。
【0109】
さらなる実施形態では、キットは逆転写酵素を含むRNAのcDNAへの逆転写のための好適な試薬をさらに含んでよい。任意の好適な逆転写酵素を利用することができる。好適な緩衝剤も周知で購入可能であり、逆転写に必要な多数の成分を含む逆転写マスターミックスの中に含まれていてよい。
【0110】
キットは後続のシーケンシングのための試薬をさらに含んでもよい。
【0111】
キットは使用説明書を含んでよい。そのような説明書はキットの中に添付文書として含まれてよい。
【0112】
<ユニバーサルプライマーの生成を遅延させることによって単一の反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
本発明者らは、標的核酸分子のマルチステップ、特に少なくとも2ステップの増幅(特にPCR)を実施するための改良された試薬を開発した。特に、本発明者らは単一の反応容器中でマルチステップ核酸増幅アッセイを実施するための試薬のセットを提供する。それにより、個別の反応容器中でマルチステップ増幅反応のそれぞれのステップを実施する必要がなくなる。試薬は、標的核酸の第1の増幅と同時にユニバーサルプライマーを産生するために用いられる。したがって、本発明によればユニバーサルプライマーを産生するために増幅反応が必要である。それにより、標的核酸の第1の増幅に対してユニバーサルプライマーの産生に遅れが生じる。この遅れにより、ユニバーサルプライマーの基質として作用する第1の増幅反応の生成物(即ちタグ付けされたアンプリコン)の十分な量の産生が可能になる。これが次に、単に反応の開始時にユニバーサルプライマーを加えた場合に優勢となる非特異的相互作用を低減することを助ける。
【0113】
したがって、第1の態様では、本発明は標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットを提供し、該セットは、
a.標的核酸分子を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む、第1のプライマー対、
b.第1の核酸分子であって、5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む、第1の核酸分子、
c.第2の核酸分子であって、5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む、第2の核酸分子、
d.第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する、第1のアダプタープライマー
e.第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する、第2のアダプタープライマー
を含み、
dおよびeの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物は、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグは、プライマーとして作用して、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅して、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する。
【0114】
したがって第1の核酸分子および第2の核酸分子はユニバーサルプライマー対を形成するユニバーサルプライマー配列のリバース相補体を表す。第1の核酸分子および第2の核酸分子を第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーとともに用いることによって、第1のプライマー対によって産生される増幅生成物を増幅するユニバーサルプライマー対の生成の一時的な遅れが生じる。これにより、第1の(標的特異的)プライマー対を用いてユニバーサルプライマー対のための過剰な基質を産生する標的核酸分子の十分な増幅が可能になる。これにより、単一の反応容器中でマルチステップ増幅を行う試みからさもなければ生じるかも知れない非特異的な効果が低減される。
【0115】
標的分子を増幅する第1のプライマー対は、現在用いられているタグ付けされた標的特異的プライマー対と比較して、改変する必要はない(マルチステップ増幅を行うための先行技術のシステムの説明については図1を参照されたい)。したがって、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットも提供され、該セットは、
a.第1の核酸分子であって、5’から3’の順に、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズする第1のプライマー対のフォワードプライマーに組み込まれた第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む、第1の核酸分子、
b.第2の核酸分子であって、5’から3’の順に、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズする第1のプライマー対のリバースプライマーに組み込まれた第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む、第2の核酸分子、
c.第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む、増幅生成物を産生する、第1のアダプタープライマー、
d.第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む、増幅生成物を産生する、第2のアダプタープライマー
を含み、
cおよびdの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物は、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグは、プライマーとして作用して、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅して、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する。
【0116】
しかし好ましい実施形態では、本発明のプライマーはこれらの(リバース相補体)核酸分子とともに用いられる。したがって、本明細書に記載した試薬(のセット)は、単一の反応混合物中で実施される標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のために好適である。
【0117】
本発明の関連する態様によれば、標的核酸分子のマルチステップ増幅のための方法であって、
a.第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1の増幅生成物を生成するために、第1のプライマー対を用いて標的核酸分子を増幅するステップと、ここで、第1のプライマー対は、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含み、
b.5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子を増幅するステップと、ここで、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする第1のアダプタープライマーを用い、
c.5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子を増幅するステップと、ここで、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする第2のアダプタープライマーを用い、
d.ステップbおよびステップcの増幅生成物をユニバーサルプライマー対として用いて、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅するステップと、ここで、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびに機能性配列を組み込んださらなる増幅生成物を生成するプライマーとして作用する、
を含み、単一の反応混合物中で実施される、方法が提供される。
【0118】
疑念を避けるため、本発明の方法はさらなる増幅生成物の産生の後の(即ち、ユニバーサル増幅の後の)追加のステップの実施を包含している。そのような方法は反応容器の同じ反応混合物に制約されない。そのような方法は典型的には標的核酸分子の検出を含んでいる。好ましい実施形態では、本発明の方法は特定の標的核酸分子を同定し、任意選択的に定量するために用いられる。好ましい実施形態では、本方法はさらなる増幅生成物のシーケンシングをさらに含む。シーケンシングは典型的には大量並列法で実施される。好ましくは、シーケンシングは次世代シーケンシング(NGS)手法を用いて実施される。シーケンシングはステップa~dの反応混合物とは異なる反応混合物中で行なってよい。
【0119】
したがって、本発明は、標的核酸分子のマルチステップ増幅を含む、標的核酸分子を検出し、任意選択的に定量するための方法であって、
a.第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1の増幅生成物を生成するために、第1のプライマー対を用いて標的核酸分子を増幅するステップと、ここで、第1のプライマー対は、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含み、
b.5’から3’の順に、
iii.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iv.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
v.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子を増幅するステップと、ここで、5’から3’の順に、
iii.第1のアダプター配列、
iv.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする第1のアダプタープライマーを用い、
c.5’から3’の順に、
vi.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
vii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
viii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子を増幅するステップと、ここで、5’から3’の順に、
iii.第2のアダプター配列、
iv.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする第2のアダプタープライマーを用い、
d.ステップbおよびステップcの増幅生成物をユニバーサルプライマー対として用いて、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅するステップと、ここで、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびに機能性配列を組み込んださらなる増幅生成物を生成するプライマーとして作用する、
を含み、本方法は、単一の反応混合物中で実施され、
好ましくは次世代シーケンシング手法を用いて、さらなる増幅生成物をシーケンシングする、方法を提供する。
【0120】
シーケンシングの前に、さらなる増幅生成物を精製してよい。シーケンシングは選択した手法によるが、(当業者には容易に理解されるように)シグナル産生目的のためのさらなる増幅生成物のさらなる増幅を含んでよい。そのようなさらなる増幅は、ブリッジ増幅またはビーズ系増幅(エマルジョンPCR)等の任意の好適な手法であってよい。本発明による有用なNGSプラットフォームの例には、Illuminaシーケンシング(Hi-SeqおよびMi-Seq等)、SMRTシーケンシング(Pacific Biosciences)、ナノポアシーケンシング、SoLIDシーケンシング、パイロシーケンシング(たとえばRoche454)、単分子シーケンシング(SeqLL/Helicos)およびIon-Torrent(Thermo Fisher)が含まれ、これらは当業者には周知である。
【0121】
多くのシーケンシング技術には試料の同定のためにバーコード配列が利用されている。したがって、本発明の全ての態様では、第1の核酸分子は第1のバーコード配列、典型的には第1の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含んでよい。したがって、好ましい実施形態では、第1の核酸分子は5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.第1の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iv.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む。
【0122】
第1の核酸分子が第1のバーコード配列、典型的には第1の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含む実施形態では、第1のアダプタープライマーは第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、第1のアダプター配列、第1のバーコード配列および第1のユニバーサルタグを含む増幅生成物を産生する。第1の核酸分子が第1の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含む好ましい実施形態では、第1のアダプタープライマーは第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1の試料バーコード、
iii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する。
【0123】
増幅生成物は、ユニバーサルプライマーとして作用して、第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物とユニバーサルプライマー対を形成し、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグ、第1のバーコード配列、特に試料バーコード、ならびに第1のアダプターおよび第2のアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する。
【0124】
本発明の全ての態様によれば、第2の核酸分子は第2のバーコード配列、典型的には第2の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含んでよい。したがって、好ましい実施形態では、第2の核酸分子は5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.第2の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列
iv.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む。
【0125】
第2の核酸分子が第2のバーコード配列、典型的には第2の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含む実施形態では、第2のアダプタープライマーは第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、第2のアダプター配列、第2のバーコード配列および第2のユニバーサルタグを含む増幅生成物を産生する。第2の核酸分子が第2の試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含む好ましい実施形態では、第2のアダプタープライマーは第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列
ii.第2の試料バーコード
iii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する。
【0126】
この増幅生成物は、ユニバーサルプライマーとして作用して、第1のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物とユニバーサルプライマー対を形成し、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグ、第2のバーコード配列、特に第2の試料バーコード、ならびに第1のアダプターおよび第2のアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する。
【0127】
特定の実施形態では、第1の核酸分子および第2の核酸分子の両方は、バーコード配列、特に試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列をさらに含む。これらの実施形態では、さらなる増幅生成物は、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグ、第1のバーコード配列および第2のバーコード配列、好ましくは試料バーコード、ならびに第1のアダプターおよび第2のアダプターを組み込む。
【0128】
したがって、本発明の1つの重要な貢献は、ユニバーサルプライマーに対応するリバース相補体配列の提供である。リバース相補体配列は3’末端でブロックされて、望ましくない増幅を防止している。したがって、関連する態様では、本発明は5’から3’の順に、
a.タグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
b.任意選択的にバーコード配列、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
c.後続のプロセシングに必要なアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
d.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む核酸分子を提供する。
【0129】
典型的には、そのような分子は対で提供され、ユニバーサルプライマー対を形成する。したがって、本発明は、第1の核酸分子と、第2の核酸分子との組合せであって、5’から3’の順に、
a.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
b.任意選択的にバーコード配列、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
c.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
d.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子と、
5’から3’の順に、
a.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
b.任意選択的にバーコード配列、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
c.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
d.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子との、組合せを提供する。
【0130】
本発明によって用いられるユニバーサルプライマーに対応する特定のリバース相補体配列は、配列番号5~24のいずれか1つのヌクレオチド配列を含み、実質的にこれからなり、またはこれからなる。
【0131】
それぞれのユニバーサルプライマーはアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズするプライマーを用いて産生される。したがって、ユニバーサルプライマーとアダプタープライマーの組合せは、本発明のさらなる態様を形成する。特に、ユニバーサルプライマーリバース相補体核酸分子と、プライマーとの組合せであって、プライマーは、アダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
a.後続のプロセシングに必要なアダプター配列、
b.任意選択的にバーコード配列、好ましくは試料バーコード、
c.タグ
を含む増幅生成物を産生する、組合せが提供される。
【0132】
好ましい組合せは、ユニバーサルプライマー対のリバース相補体を表す第1の核酸分子および第2の核酸分子と、それぞれの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーとの組合せである。特に、
第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
a.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列、
b.任意選択的に第1のバーコード配列、好ましくは試料バーコード、
c.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第1のアダプタープライマー、
第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
a.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列、
b.任意選択的に第2のバーコード配列、好ましくは試料バーコード、
c.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第2のアダプタープライマー
とユニバーサルプライマー対を形成するユニバーサルプライマーリバース相補体核酸分子の組合せが提供される。
【0133】
本発明による有用な特定のアダプタープライマーは、配列番号3および/または配列番号4のヌクレオチド配列を含み、実質的にこれらからなり、またはこれらからなる。
【0134】
本発明の関連する態様によれば、上で定義した試薬のセットを用いてタグおよびアダプター配列を組み込んだ増幅生成物を創成する標的核酸分子の増幅を含むマルチステップ核酸増幅反応が提供される。
【0135】
本発明の試薬のセットは、キットの形でも提供され得る。したがって、関連する態様では、本発明は試薬のセット、核酸分子または上述の組合せを含む標的核酸分子のマルチステップ増幅のためのキットを提供する。
【0136】
さらなる実施形態では、キットは、ポリメラーゼ、ジヌクレオチドトリリン酸(dNTP)、MgCl、および緩衝剤の1つまたは複数、その全てまでを含むPCRのための好適な試薬をさらに含んでよい。任意の好適なポリメラーゼが利用できる。一般に、本発明の核酸標的を増幅するためにDNAポリメラーゼが用いられる。例には、TaqポリメラーゼまたはPfuポリメラーゼ等の熱安定性ポリメラーゼおよびこれらの酵素の種々の誘導体が含まれる。
【0137】
好適な緩衝剤も周知で購入可能であり、PCR増幅に必要な多数の成分を含むPCRマスターミックスの中に含まれていてよい。
【0138】
さらなる実施形態では、キットは逆転写酵素を含むRNAのcDNAへの逆転写のための好適な試薬をさらに含んでよい。任意の好適な逆転写酵素を利用することができる。好適な緩衝剤も周知で購入可能であり、逆転写に必要な多数の成分を含む逆転写マスターミックスの中に含まれていてよい。
【0139】
キットは後続のシーケンシングのための試薬をさらに含んでもよい。
【0140】
キットは使用説明書を含んでよい。そのような説明書はキットの中に添付文書として含まれてよい。
【0141】
<重複標的配列を含むマルチプレックス増幅を改良することおよび第1の増幅反応の程度の制御によって単一反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
好ましい実施形態では、本発明のプライマーは標的核酸分子の重複領域を増幅するためのマルチプレックスにおける第1の増幅反応に用いられる。これらのプライマーは有利に、次の第2の増幅反応(一般にはPCR)において増幅することができるタグ付けされた増幅生成物を生成する。本発明は、第1の増幅反応の程度を制御して第2の反応との競合を最小化し、異常な増幅生成物の過剰な生成を防止するプライマーをも提供する。これらのプライマーの特徴は、標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計された本発明のプライマーに含んでよい。
【0142】
したがって、たとえば、
a.標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計された少なくとも2つのプライマー対を含む、標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットにおいて、それぞれのプライマー対が、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域と、プライマー領域の5’のユニバーサルタグを組み込んだフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域と、プライマー領域の5’のユニバーサルタグを組み込んだリバースプライマー
を含み、
それぞれのプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーのユニバーサルタグが異なり、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーのユニバーサルタグが5’から3’への方向で同一であり、それにより、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーとの間で異常な増幅生成物が形成される事象において、異常な増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成され、
プライマーは、5’から3’の順に、
a.ユニバーサルタグの下流のRNAヌクレオチド、
b.RNAヌクレオチドを含まず、標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含んでよい。
【0143】
そのような実施形態では、ユニバーサルタグはRNAヌクレオチドを含まない。それぞれの関連する態様の全てのさらなる実施形態は必要に応じて変更して適用され、簡潔のため繰り返さない。たとえば、本明細書で定義したユニバーサルプライマーの対はマルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅のための試薬のセットに含まれてよい。
【0144】
そのようなプライマーのセットは、本明細書で論じるように、マルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅に用いることができる。これらは本明細書で論じるようにキットに含ませることができる。これらは本明細書で論じるように反応容器に含ませることができる。1つの重要な利点は、単一の反応が同じ反応混合物中で起こり得るという事実である。
【0145】
第2の増幅反応に続いて、増幅生成物はアダプターおよび任意選択的に下流のプロセシングおよび同定を可能にするバーコードを含む。理想的にはこれは本明細書で論じるようにNGSによって、標的核酸の同定および/または定量が可能になる。
【0146】
<重複標的配列を含むマルチプレックス増幅を改良する、およびユニバーサルプライマーの産生を遅延させることによって単一反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
好ましい実施形態では、本発明のプライマーは標的核酸分子の重複領域を増幅するためのマルチプレックスにおける第1の増幅反応に用いられる。これらのプライマーは有利に、次の第2の増幅反応(一般にはPCR)において増幅することができるタグ付けされた増幅生成物を生成する。本発明は、第2の増幅反応に必要なユニバーサルプライマーの生成を遅延させるために有用なユニバーサルプライマーのリバース相補体を形成する核酸分子をも提供する。これは、ユニバーサルプライマーがハイブリダイズする第1の増幅反応からの十分な生成物(タグ付けされたアンプリコン)が産生されるまで第2の増幅反応の開始を制御するために有用である。これらの試薬は、標的核酸分子の重複領域を増幅し、効率的な第2ステージの増幅を確実にするために有利に組み合わせることができる。
【0147】
したがって、たとえば
a.標的核酸分子を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む第1のプライマー対、
b.5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子、
c.5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子、
d.第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第1のアダプタープライマー、
e.第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第2のアダプタープライマー
を含み、
dおよびeの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物が、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、プライマーとして作用して、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅して、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットにおいて、
標的核酸分子の多重重複領域は、重複領域を増幅する少なくとも2つのプライマー対を用いて増幅される。そのような態様では有利に、試薬は
a.標的核酸分子の第1の領域を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む第1のプライマー対、
b.第1の領域と少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第2の領域を増幅するように設計された第2のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域および第1のリバースプライマーの5’末端に組み込まれた核酸タグと5’から3’の方向で同一であるプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第2のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第2のリバースプライマー
を含む、標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットを含み、
第1のリバースプライマーと第2のフォワードプライマーとの間に異常な(短い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(短い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(短い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。
【0148】
さらにより好ましくは、試薬は標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットを含み、プライマーのセットは
a.標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計された少なくとも2つのプライマー対を含み、それぞれのプライマー対は
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’のユニバーサルタグを組み込んだフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’のユニバーサルタグを組み込んだリバースプライマー
を含み、
それぞれのプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーのユニバーサルタグが異なっており、直近のプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーのユニバーサルタグが5’から3’への方向で同一であり、それにより、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーの間で異常な増幅生成物が形成される事象において異常な増幅生成物の5’末端のユニバーサルタグと増幅の間に形成された異常な増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される。
【0149】
それぞれの関連する態様の全てのさらなる実施形態は必要に応じて変更して適用され、簡潔のため繰り返さない。
【0150】
いくつかの実施形態では、それぞれのプライマー対における少なくとも1つのプライマーはバーコード、任意選択的に分子バーコードを含む。他の実施形態では、標的核酸分子を増幅するためのそれぞれのプライマーはバーコード、任意選択的に分子バーコードを含む。
【0151】
プライマーを含むそのような試薬のセットは、本明細書で論じるように、マルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅に用いることができる。これらは本明細書で論じるようにキットに含ませることができる。これらは本明細書で論じるように反応容器に含ませることができる。1つの重要な利点は、同じ反応混合物中で全体の(マルチプレックスおよびマルチステップ)反応が起こり得るという事実である。
【0152】
第2の増幅反応に続いて、増幅生成物はアダプターおよび任意選択的に下流のプロセシングおよび同定を可能にするバーコードを含む。理想的にはこれは本明細書で論じるようにNGSによって、標的核酸の同定および/または定量が可能になる。
【0153】
ユニバーサルプライマーの産生を遅延させることおよび第1の増幅反応の程度を制御することによって、単一の反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にすること
第1の増幅反応および第2の増幅反応の間のバランスは、両方の反応を単一の反応混合物または反応容器中で行うことの重要な障害である。この問題に対する2つの相補的な解決が提供され、これらは有利に組み合わせることができる。
【0154】
したがって、たとえば
a.標的核酸分子を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む第1のプライマー対、
b.5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子、
c.5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子、
d.第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第1のアダプタープライマー、
e.第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第2のアダプタープライマー
を含み、
dおよびeの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物が、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、プライマーとして作用して、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅して、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットにおいて、
第1のフォワードプライマーと第1のリバースプライマーの少なくとも1つ、および好ましくは両方は、5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず、標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのプライマーである。
【0155】
それぞれの関連する態様の全てのさらなる実施形態は必要に応じて変更して適用され、簡潔のため繰り返さない。
【0156】
したがって、RNase H(好ましくは熱安定性RNase H)を反応混合物に添加することができる。この試薬の組合せにより、第1の増幅反応の程度を制御することと、第2の増幅反応の開始を遅延させることの両方ができる。それにより、単一の反応混合物または反応容器中で両方の増幅反応の性能を向上することができ、極めて有利である。
【0157】
プライマーを含むそのような試薬のセットは、本明細書で論じるように、マルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅に用いることができる。これらは本明細書で論じるようにキットに含ませることができる。これらは本明細書で論じるように反応容器に含ませることができる。1つの重要な利点は、同じ反応混合物中で全体の(マルチステップ)反応が起こり得るという事実である。
【0158】
第2の増幅反応に続いて、増幅生成物はアダプターおよび任意選択的に下流のプロセシングおよび同定を可能にするバーコードを含む。理想的にはこれは本明細書で論じるようにNGSによって、標的核酸の同定および/または定量が可能になる。
【0159】
<第1の増幅反応の程度の制御によって重複標的配列を含むマルチプレックス増幅を改良することおよび単一の反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする、およびユニバーサルプライマーの生成を遅延させることおよび第1の増幅反応の程度の制御によって単一反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
最も好ましくは、本発明のプライマーは標的核酸分子の重複領域を増幅するためのマルチプレックスにおける第1の増幅反応に用いられる。これらのプライマーは有利に、次の第2の増幅反応(一般にはPCR)において増幅することができるタグ付けされた増幅生成物を生成する。本発明は、RNAヌクレオチドを組み込んで第1の増幅反応の程度を制御し、第2の反応との競合を最小化して異常な増幅生成物の過剰な生成を防止するプライマーをも提供する。これらのプライマーの特徴は、標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計された本発明のプライマーに含ませることができる。
【0160】
そのような第1ステージのプライマーは有利に核酸分子と組み合わされて、ユニバーサルプライマーのリバース相補体、好ましくはユニバーサルプライマー対を形成し、これは第2の増幅反応に必要なユニバーサルプライマーの生成を遅延させるために有用である。これは、ユニバーサルプライマーがハイブリダイズする第1の増幅反応からの十分な生成物(タグ付けされたアンプリコン)が産生されるまで第2の増幅反応の開始を制御するために有用である。これらの試薬は、標的核酸分子の重複領域を増幅し、効率的な第2ステージの増幅を確実にするために有利に組み合わせることができる。
【0161】
プライマーを含むそのような試薬のセットは、本明細書で論じるように、マルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅に用いることができる。これらは本明細書で論じるようにキットに含ませることができる。これらは本明細書で論じるように反応容器に含ませることができる。1つの重要な利点は、同じ反応混合物中で全体の(マルチプレックスおよびマルチステップ)反応が起こり得るという事実である。
【0162】
第2の増幅反応に続いて、増幅生成物はアダプターおよび任意選択的に下流のプロセシングおよび同定を可能にするバーコードを含む。理想的にはこれは本明細書で論じるようにNGSによって、標的核酸の同定および/または定量が可能になる。
【0163】
それぞれの関連する態様の全ての関連する実施形態は必要に応じて変更して適用され、簡潔のため繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0164】
図1】アンプリコンが重複領域を共有するマルチプレックスPCR反応における異常な増幅生成物の生成に関連する問題の模式図である。
図2】短い異常な増幅生成物の増幅を阻害する本発明のプライマーのセットの使用の模式図である。
図3A】どのようにしてヘアピン様二次構造が形成され、短い異常な増幅生成物の増幅が阻害されるかを説明するための、本発明のプライマーのセットを用いた3ラウンドのmPCRの模式図である。
図3B】どのようにしてヘアピン様二次構造が形成され、短い異常な増幅生成物の増幅が阻害されるかを説明するための、本発明のプライマーのセットを用いた3ラウンドのmPCRの模式図である。
図3C】どのようにしてヘアピン様二次構造が形成され、短い異常な増幅生成物の増幅が阻害されるかを説明するための、本発明のプライマーのセットを用いた3ラウンドのmPCRの模式図である。
図4】長短両方の異常な増幅生成物の増幅を阻害するための本発明のプライマーの2つのセットの使用の模式図である。
図5A】長短の異常な増幅生成物の実質的に全ての増幅を阻害するための本発明のプライマーの3つのセットの使用の模式図である。
図5B】長短の異常な増幅生成物の実質的に全ての増幅を阻害するための本発明のプライマーの3つのセットの使用の模式図である。
図5C】長短の異常な増幅生成物の実質的に全ての増幅を阻害するための本発明のプライマーの3つのセットの使用の模式図である。
図6A】長短両方の異常な増幅生成物の増幅を阻害するための本発明のプライマーの2つのセットの使用およびそれに続く本発明のユニバーサルプライマーによる第2の増幅の模式図である。
図6B】長短両方の異常な増幅生成物の増幅を阻害するための本発明のプライマーの2つのセットの使用およびそれに続く本発明のユニバーサルプライマーによる第2の増幅の模式図である。
図6C】長短両方の異常な増幅生成物の増幅を阻害するための本発明のプライマーの2つのセットの使用およびそれに続く本発明のユニバーサルプライマーによる第2の増幅の模式図である。
図7】標準のBRCA腫瘍MASTR Dxプライマーの使用により異常な短いPCR生成物の形成が生じることを証明するトレースである。
図8】BRCA腫瘍プライマー対に結合したタグ配列を重複するアンプリコンの1ステップマルチプレックスに適合させるための適応によって、異常な短いPCR生成物の形成が排除され、所望のアンプリコンの生成のみが生じることを証明するトレースである。
図9】本発明によるプライマーの模式図を図9Aに示す。そのようなプライマーの代表的な配列および最初の標的核酸分子上のプライマーの結合部位を図9Bに示す。分子バーコードを含む本発明によるプライマーの模式図を図9Cに示す。
図10】本発明によるさらなるプライマーの模式図を図10Aに示す。そのようなプライマーの代表的な配列および最初の標的核酸分子上のプライマーの結合部位を図10Bに示す。分子バーコードを含む本発明によるさらなるプライマーの模式図を図10Cに示す。
図11A】第1の増幅反応の効率を低減させるための本発明のプライマーの使用の模式図である。
図11B】第2の「ユニバーサル」増幅反応を示す図である。
図12】標的核酸分子のマルチステップ増幅を行うための従来技術の2チューブシステムの模式図である。
図13A】単一の反応混合物中で標的核酸分子のマルチステップ増幅を行うための本発明の試薬のセットの使用の模式図である。
図13B】単一の反応混合物中で標的核酸分子のマルチステップ増幅を行うための本発明の試薬のセットの使用の模式図である。
図13C】単一の反応混合物中で標的核酸分子のマルチステップ増幅を行うための本発明の試薬のセットの使用の模式図である。
図14】MIDおよびrcMIDプライマーを用いる第2のPCR生成物の断片分析である。
図15】MIDプライマーとrcMID+p5/p7プライマーを用いた第2のPCRの結果の断片分析に基づく比較である。上のパネルはMIDプライマーによる増幅の結果、下のパネルはrcMID+p5/7プライマーによる増幅の結果である。
図16】それぞれMIDプライマーとrcMID+p5/p7プライマーを用いた2ステップ(上のパネル)および1ステップ(下のパネル)の間の断片分析に基づく比較である。着色したボックスは期待されるアンプリコンの位置を示す。
図17】X軸上にアンプリコンの長さ、Y軸上にそれぞれのピークの高さとして表したそれぞれのアンプリコンの収率を示す断片分析の結果である。図17Aは、第1のプライマー対にRNA塩基を含まない1ステップPCRの断片分析の結果を示す図である。図17Bは、同じ結果であるが、それぞれが第1のPCR生成物の予想される大きさを表す長方形(灰色のバンド)を重ねた図である。図17Cは、同じ結果であるが、それぞれがユニバーサルPCRの後のPCR生成物の予想される大きさを表す長方形(灰色のバンド)を重ねた図である。
図18】X軸上にアンプリコンの長さ、Y軸上にそれぞれのピークの高さとして表したそれぞれのアンプリコンの収率を示す断片分析の結果である。図18Aは、第1のプライマー対にRNA塩基を含む1ステップPCRの断片分析の結果を示す図である。図18Bは、同じ結果であるが、それぞれが第1のPCR生成物の予想される大きさを表す長方形(灰色のバンド)を重ねた図である。図18Cは、同じ結果であるが、それぞれがユニバーサルPCRの後のPCR生成物の予想される大きさを表す長方形(灰色のバンド)を重ねた図である。
【発明を実施するための形態】
【0165】
<重複標的配列を含むマルチプレックス増幅の改良>
図1は、アンプリコンが重複領域を共有するマルチプレックスPCR反応における異常な増幅生成物の生成に付随する問題を示す。ここでは例として、増幅すべき2つの標的配列、即ち標的配列1(TS1;12)および標的配列2(TS2;13)を含むDNAデュプレックス鎖(11)を示す。読者の利便のため、それぞれの標的配列は独立に示しているが、これらの配列の両方は実際上、同じDNAデュプレックス鎖の上に存在し、重複していることを理解されたい。重複領域は点々のボックスとして示している。フォワードプライマー(14)とリバースプライマー(15)はTS1を増幅してアンプリコン1(AM1;16)を生成するように設計されている。第2のフォワードプライマー(17)と第2のリバースプライマー(18)はTS2を増幅してアンプリコン2(AM2;19)を生成するように設計されている。その機構が当技術で周知の増幅の間、AM1とAM2の両方が期待通り産生される。しかし、DNAデュプレックス鎖の上に重複する標的配列により、示されているように異常な増幅生成物も生成する。「長い」異常な増幅生成物1(AB1;111)は、TS2リバースプライマー(18)と協奏して作用するTS1フォワードプライマー(14)によって形成される。「短い」異常な増幅生成物2(AB2;112)は、TS1リバースプライマー(15)と協奏して作用するTS2フォワードプライマー(17)によって形成される。最も短いアンプリコンであるAB2が優先的に形成され得る。
【0166】
図2は、本発明のプライマーのセットの使用が図1に示した問題の克服をいかにして助けるかを説明する。したがって、図2は増幅すべき2つの標的配列、即ち標的配列1(TS1;22)および標的配列2(TS2;23)を含むDNAデュプレックス鎖(21)を示す。読者の利便のため、それぞれの標的配列は独立に示しているが、これらの配列の両方は実際上、同じDNAデュプレックス鎖(21)の上に存在し、重複していることを理解されたい。重複領域は点々のボックスとして示している。第1のフォワードプライマー(24)と第1のリバースプライマー(25)はTS1を増幅してアンプリコン1(AM1;26)を生成するように設計されている。即ち、第1のフォワードプライマー(24)はDNAデュプレックス鎖(21)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、第1のリバースプライマー(25)はTS1のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(21)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。第2のフォワードプライマー(27)と第2のリバースプライマー(28)はTS2を増幅してアンプリコン2(AM2;29)を生成するように設計されている。したがって、第2のフォワードプライマー(27)はDNAデュプレックス鎖(21)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、第2のリバースプライマー(28)はTS2のそれぞれの境界を画定するDNAデュプレックス鎖(21)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。
【0167】
本発明によれば、第1のリバースプライマー(25)と第2のフォワードプライマー(27)は、それぞれの5’末端に同一のヌクレオチド配列(白丸;以後「タグ」と称する)でそれぞれタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’の方向で同一である。タグは増幅前の最初のDNAデュプレックス鎖(21)とはハイブリダイズしない。
【0168】
その機構が当技術で周知の、少なくとも3サイクルのmPCR増幅(一連の変性ステップである1つの増幅サイクル、それに続くアニーリングステップ、それに続く伸長ステップ)の間、AM1とAM2の両方が期待通り産生される。AM1は第1の(TS1)リバースプライマー(25)と協奏して作用する第1の(TS1)フォワードプライマー(24)によって生成し、AM2は第2の(TS2)リバースプライマー(28)と協奏して作用する第2の(TS2)フォワードプライマー(27)によって生成する。しかし重要なことに、第2の(TS2)フォワードプライマー(27)および第1の(TS1)リバースプライマー(25)の代わりにタグ付けされていない従来のプライマーを用いた場合に指数関数的に形成されるであろう短い異常な増幅生成物は、何ら顕著な程度には蓄積しない。これは、短い異常な増幅生成物が形成された場合に、それぞれの一本鎖がその5’末端に核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒丸で表す)を含むからである。これにより、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次ヘアピン様構造(212)が形成することが可能になる。より具体的には、増幅サイクルの間に異常な増幅生成物が形成され、次いで単一の核酸鎖に解離(融解)するのに十分な程度に加熱される。次の増幅サイクルの間、アニーリングステップの間に温度が下がると、5’核酸タグと一本鎖の異常な増幅生成物の3’末端の相補配列とのハイブリダイゼーションは、一本鎖の異常な増幅生成物とさらなるプライマーとの分子間ハイブリダイゼーションよりもエントロピー的に有利になる。したがって、短い異常な増幅生成物のさらなる増幅が阻害される。結果として、AM1およびAM2の増幅効率が改良される。
【0169】
この例では、第2の(TS2)リバースプライマー(28)と協奏して作用する第1の(TS1)フォワードプライマー(24)によって、長い異常な増幅生成物(211)は依然として形成され得る。しかしそれにも関わらず、AM1およびAM2の方が短いのでそれらの生成が優先する。
【0170】
短い異常な増幅生成物からの二次ヘアピン様構造の形成を、図3A~Cにより詳細に示す。図3Aに示すように、第1ラウンドのmPCRの間に、最初の標的核酸分子のDNAデュプレックスは変性(または融解)して、センス鎖(31)とアンチセンス鎖(32)に分離している。アニーリングステップの間の冷却は、第2の(TS2)フォワードプライマー(27)がその相補的プライマー領域(実線矢印)を介して標的核酸分子のアンチセンス鎖(32)にハイブリダイズしていることを意味する。第1の(TS1)リバースプライマー(25)はその相補的プライマー領域(破線矢印)を介して標的核酸分子のセンス鎖(31)にハイブリダイズしている。第2の(TS2)フォワードプライマー(27)と第1の(TS1)リバースプライマー(25)の両方はそれらのそれぞれの5’末端に核酸タグを含み、核酸タグは、説明のためのみであるが、ヌクレオチド配列CTAGTT(5’から3’へ)として示される。それぞれのハイブリダイズしたプライマーからのDNAポリメラーゼによる5’から3’への方向の伸長により、新たなセンス鎖(33)およびアンチセンス鎖(34)が合成され、それらのそれぞれの5’末端にCTAGTTタグが組み込まれる。
【0171】
図3Bに示すように、第2ラウンドのmPCRで、増幅ラウンド1で形成された二本鎖DNAデュプレックスは変性(または融解)して、センス鎖とアンチセンス鎖に分離する。簡潔にするため、それらのそれぞれの5’末端にCTAGTTタグを組み込んだ新たなセンス鎖(33)およびアンチセンス鎖(34)のみを示す。変性に続いて、アニーリングステップの間の冷却は、第2の(TS2)フォワードプライマー(27)がその相補的プライマー領域(実線矢印)を介してアンチセンス鎖(34)にハイブリダイズしていることを意味する。第1の(TS1)リバースプライマー(25)はその相補的プライマー領域(破線矢印)を介してセンス鎖(33)にハイブリダイズしている。それぞれのハイブリダイズしたプライマーからのDNAポリメラーゼによる伸長により、それぞれ別の新たなセンス鎖(35)およびアンチセンス鎖(36)が合成される。それらのそれぞれの5’末端において、新たなセンス鎖(35)およびアンチセンス鎖(36)はCTAGTT配列を含む。それらのそれぞれの3’末端において、新たなセンス鎖(35)およびアンチセンス鎖(36)は、DNAポリメラーゼを介する複製の機構によって、相補的なAACTAG配列を(5’から3’への方向で)含む。
【0172】
ここで図3Cに示すように、第3ラウンドのmPCRでは、増幅ラウンド2で形成された二本鎖DNAデュプレックスは変性(または融解)して、センス鎖とアンチセンス鎖に分離する。変性の後、およびアニーリングステップの間の冷却に際して、新たなセンス鎖(35)と新たなアンチセンス鎖(36)の相補的な5’および3’タグ末端はハイブリダイズ(37)して折り畳まれたヘアピン様構造を形成する。この分子内ハイブリダイゼーション事象はさらなるプライマーとの分子間ハイブリダイゼーションよりもエントロピー的に有利であり、その結果、優先的に形成される。したがって、プライマーはここで標的核酸分子に優先的に結合することになり、それによりmPCRプロセスが改良される。
【0173】
さらなる実施例で、図4は、本発明による特に好ましいプライマーのセットの使用によって、長短両方の異常な増幅生成物の指数関数的な増幅がいかに防止され、所望の増幅生成物に有利になるかを示す。そのようなプライマーのセットの数を増加させて単一の反応容器中でいくつかの重複領域を増幅させることがいかにしてできるかは容易に予測できる。
【0174】
したがって、図4は増幅すべき2つの標的配列、即ち標的配列1(TS1;42)および標的配列2(TS2;43)を含むDNAデュプレックス鎖(41)を示す。読者の利便のため、それぞれの標的配列は独立に示しているが、これらの配列の両方は実際上、同じDNAデュプレックス鎖(41)の上に存在し、重複していることを理解されたい。重複領域は点々のボックスとして示している。第1のフォワードプライマー(44)と第1のリバースプライマー(45)はTS1を増幅してアンプリコン1(AM1;46)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(44)はDNAデュプレックス鎖(41)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(45)はTS1のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(41)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。第2のフォワードプライマー(47)と第2のリバースプライマー(48)はTS2を増幅してアンプリコン2(AM2;49)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(47)はDNAデュプレックス鎖(41)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(48)はTS2のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(41)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。
【0175】
重要なことに、第1のリバースプライマー(45)と第2のフォワードプライマー(47)は、それぞれのプライマーの5’末端に同一のヌクレオチド配列(白丸;以後「タグセット1」と称する)でタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’への方向で同一である。
【0176】
セット1のタグは最初の標的DNAデュプレックス鎖(41)とはハイブリダイズしない。さらに、第1のフォワードプライマー(44)と第2のリバースプライマー(48)はそれぞれのプライマーの5’末端に、タグセット1のそれとは異なる配列の、同一のヌクレオチド配列(白三角;以後「タグセット2」と称する)でタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’への方向で同一である。タグセット2も最初の標的DNAデュプレックス鎖(41)とはハイブリダイズしない。
【0177】
その機構が当技術で周知の、少なくとも3ラウンドのmPCR増幅(一連の変性ステップである1ラウンドの増幅、それに続くアニーリングステップ、それに続く伸長ステップ)の間、AM1とAM2の両方が期待通り産生される。AM1は第1の(TS1)リバースプライマー(45)と協奏して作用する第1の(TS1)フォワードプライマー(44)によって生成し、AM2は第2の(TS2)リバースプライマー(48)と協奏して作用する第2の(TS2)フォワードプライマー(47)によって生成する。しかし重要なことに、タグ付けされていない従来のプライマーを用いた場合に指数関数的に形成される長短両方の異常な増幅生成物は、何ら顕著な程度には蓄積しない。これは、短い異常な増幅生成物が形成された場合に、それぞれの一本鎖がその5’末端にタグセット1の核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒丸で表す)を含むからである。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、短い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次ヘアピン様構造(410)が形成することが可能になる。同様に、長い異常な増幅生成物が形成された場合には、それぞれの一本鎖がその5’末端にタグセット2の核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒三角で表す)を含む。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、長い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次ヘアピン様構造(411)が形成することが可能になる。結果として、AM1およびAM2の増幅効率が改良される。隣接するプライマー対におけるタグの相互配置によって全ての異常な増幅生成が妨げられるので、この設計は単一の反応容器中での標的核酸の多重重複領域のmPCRに特に有益である。
【0178】
さらなる実施例で、図5A~Cは、本発明による特に好ましいプライマーのセットの使用によって、実質的に全ての長短の異常な増幅生成物の指数関数的な増幅がいかに防止され、標的核酸分子の3つの重複する標的領域に関する所望の増幅生成物に有利になるかを示す。そのようなプライマーのセットの数をさらに増加させて単一の反応容器中で4つまたはそれ以上(数百または数千を含む)の重複領域を増幅させることがいかにしてできるかは容易に予測できる。
【0179】
したがって、図5Aは増幅すべき3つの標的配列、即ち標的配列1(TS1;52)、標的配列2(TS2;53)、および標的配列3(TS3;54)を含むDNAデュプレックス鎖(51)を示す。読者の利便のため、それぞれの標的配列は独立に示しているが、これらの配列の全ては実際上、同じDNAデュプレックス鎖(51)の上に存在していることを理解されたい。TS1(52)とTS2(53)は点々のボックス(514)として示す重複領域を共有している。TS2(53)とTS3(54)はチェック模様のボックス(515)として示す重複領域を共有している。
【0180】
第1のフォワードプライマー(55)と第1のリバースプライマー(56)はTS1(52)を増幅して図5Cに示すアンプリコン1(AM1;57)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(55)はDNAデュプレックス鎖(51)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(56)はTS1(52)のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(51)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。第2のフォワードプライマー(58)と第2のリバースプライマー(59)はTS2(53)を増幅して図5Cに示すアンプリコン2(AM2;510)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(58)はDNAデュプレックス鎖(51)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(59)はTS2(53)のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(51)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。第3のフォワードプライマー(511)と第2のリバースプライマー(512)はTS3(54)を増幅して図5Cに示すアンプリコン2(AM3;513)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(511)はDNAデュプレックス鎖(51)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(512)はTS3(54)のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(51)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。
【0181】
重要なことに、第1のリバースプライマー(56)と第2のフォワードプライマー(58)は、それぞれのプライマーの5’末端に同一のヌクレオチド配列(白丸;以後「タグセット1」と称する)でタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’への方向で同一である。セット1のタグは最初の標的DNAデュプレックス鎖(51)とはハイブリダイズしない。さらに、第1のフォワードプライマー(55)と第2のリバースプライマー(59)はそれぞれのプライマーの5’末端に、タグセット1のそれとは異なる配列の、同一のヌクレオチド配列(白三角;以後「タグセット2」と称する)でタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’への方向で同一である。タグセット2も最初の標的DNAデュプレックス鎖(51)とはハイブリダイズしない。さらに、第3のフォワードプライマー(511)も5’末端に第2のリバースプライマー(59)のそれと同一のヌクレオチド配列(5’から3’への方向で)を有するタグでタグ付けされており、第3のリバースプライマー(512)は5’末端に第2のフォワードプライマー(58)のそれと同一のヌクレオチド配列(5’から3’への方向で)を有するタグでタグ付けされている。いずれのタグも、最初の標的DNAデュプレックス鎖(51)とはハイブリダイズできない。
【0182】
その機構が当技術で周知の、少なくとも3ラウンドのmPCR増幅(一連の変性ステップである1ラウンドの増幅、それに続くアニーリングステップ、それに続く伸長ステップ)の間、AM1、AM2、およびAM3の全てが期待通り産生される。AM1(57)は第1の(TS1)リバースプライマー(56)と協奏して作用する第1の(TS1)フォワードプライマー(55)によって生成し、AM2(510)は第2の(TS2)リバースプライマー(59)と協奏して作用する第2の(TS2)フォワードプライマー(58)によって生成し、AM3(513)は第3の(TS3)リバースプライマー(512)と協奏して作用する第3の(TS3)フォワードプライマー(511)によって生成する。しかし重要なことに、タグ付けされていない従来のプライマーを用いた場合に指数関数的に形成される実質的に長短全ての異常な増幅生成物は、何ら顕著な程度には蓄積しない。これは、協奏して作用する第2のフォワードプライマー(58)と第1のリバースプライマー(56)によって短い異常な増幅生成物が形成された場合に、それぞれの一本鎖がその5’末端にタグセット1の核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒丸で表す)を含むからである。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、短い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する図5Bに示す二次ヘアピン様構造(516)が形成することが可能になる。同様に、協奏して作用する第3のフォワードプライマー(511)と第2のリバースプライマー(59)によって短い異常な増幅生成物が形成された場合には、それぞれの一本鎖がその5’末端にタグセット2の核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒三角で表す)を含む。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、短い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する図5Bに示す二次ヘアピン様構造(517)が形成することが可能になる。
【0183】
協奏して作用する第1のフォワードプライマー(55)と第2のリバースプライマー(59)によって長い異常な増幅生成物が形成された場合に、それぞれの一本鎖がその5’末端にタグセット2の核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒三角で表す)を含む。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、長い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する図5Bに示す二次ヘアピン様構造(518)が形成することが可能になる。同様に、協奏して作用する第2のフォワードプライマー(58)と第3のリバースプライマー(512)によって長い異常な増幅生成物が形成された場合には、それぞれの一本鎖がその5’末端にタグセット1の核酸タグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒丸で表す)を含む。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、長い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する図5Bに示す二次ヘアピン様構造(519)が形成することが可能になる。協奏して作用する第1のフォワードプライマー(55)と第3のリバースプライマー(512)によって長い異常な増幅生成物が形成する理論的可能性は残るが、これは最も長いアンプリコンであるので、最も起こりにくい。結果として、タグ付けされていない従来のプライマー対と比べて、本発明によるプライマーセットを用いることによって、AM1(57)、AM2(510)、およびAM3(513)の増幅効率が改良される。図に示されるように、隣接するプライマー対におけるタグの相互配置によって実質的に全ての異常な増幅生成が妨げられるので、この設計は単一の反応容器中での標的核酸の多重重複領域のmPCRに特に有益である。
【0184】
好ましい実施形態では、本発明のプライマーはプライマー領域の上流にユニバーサルタグを含む。このユニバーサルタグは増幅生成物に含まれ、したがってユニバーサルプライマーの使用を必要とする第2の増幅が起こることを可能にする。これを図6A~Cに示す。
【0185】
したがって、図6Aは増幅すべき2つの標的配列、即ち標的配列1(TS1;62)および標的配列2(TS2;63)を含むDNAデュプレックス鎖(61)を示す。読者の利便のため、それぞれの標的配列は独立に示しているが、これらの配列の両方は実際上、同じDNAデュプレックス鎖(61)の上に存在し、重複していることを理解されたい。重複領域は点々のボックスとして示している。第1のフォワードプライマー(64)と第1のリバースプライマー(65)はTS1を増幅してアンプリコン1(AM1;66)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(64)はDNAデュプレックス鎖(61)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(65)はTS1のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(61)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。第2のフォワードプライマー(67)と第2のリバースプライマー(68)はTS2を増幅してアンプリコン2(AM2;69)を生成するように設計されている。即ち、フォワードプライマー(67)はDNAデュプレックス鎖(61)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(実線矢印)を含み、リバースプライマー(68)はTS2のそれぞれの境界でDNAデュプレックス鎖(61)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(点線矢印)を含む。
【0186】
図4に関して既に述べたように、第1のリバースプライマー(65)と第2のフォワードプライマー(67)は、それぞれのプライマーの5’末端に同一のヌクレオチド配列(白丸;以後「第2のユニバーサルタグ」と称する)でタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’への方向で同一である。第2のユニバーサルタグは最初の標的DNAデュプレックス鎖(61)とはハイブリダイズしない。さらに、第1のフォワードプライマー(64)と第2のリバースプライマー(68)はそれぞれのプライマーの5’末端に、第2のユニバーサルタグのそれとは異なる配列の、同一のヌクレオチド配列(白三角;以後「第1のユニバーサルタグ1」と称する)でタグ付けされている。疑念を避けるため、配列は5’から3’への方向で同一である。第1のユニバーサルタグも最初の標的DNAデュプレックス鎖(61)とはハイブリダイズしない。
【0187】
図から分かるように、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグはプライマー領域の上流に位置している。ユニバーサルタグは、全てのプライマー対で、相互配置において同じ配列が使用されているので、「ユニバーサル」と称されることを理解されたい。したがって、本発明に従って第3のプライマー対が存在し、第3のフォワードプライマーがユニバーサルタグを含むならば、それは第1のユニバーサルタグ(即ち、第1のフォワードプライマーに含まれる同じユニバーサルタグであるが、第2のフォワードプライマーに含まれるユニバーサルタグとは異なる)になる。そのようなユニバーサルタグの使用により、第2の増幅に必要なプライマーの数を低減し、第2の増幅反応を単純化することができる。第2の増幅は、増幅生成物に組み込まれたユニバーサルタグ配列へのプライマーのハイブリダイゼーションによっている。同様の理由で同じことがリバースプライマーに適用される。したがって、本発明に従って第3のプライマー対が存在し、第3のリバースプライマーがユニバーサルタグを含むならば、それは第2のユニバーサルタグ(即ち、第1のリバースプライマーに含まれる同じユニバーサルタグであるが、第2のリバースプライマーに含まれるユニバーサルタグとは異なる)になる。第1のユニバーサルタグも第2のユニバーサルタグも、最初の標的DNAデュプレックス鎖(61)とはハイブリダイズしない。
【0188】
その機構が当技術で周知の、少なくとも3ラウンドのmPCR増幅(一連の変性ステップである1ラウンドの増幅、それに続くアニーリングステップ、それに続く伸長ステップ)の間、AM1とAM2の両方が期待通り産生される。AM1は第1の(TS1)リバースプライマー(65)と協奏して作用する第1の(TS1)フォワードプライマー(64)によって生成し、AM2は第2の(TS2)リバースプライマー(68)と協奏して作用する第2の(TS2)フォワードプライマー(67)によって生成する。しかし重要なことに、タグ付けされていない従来のプライマーを用いた場合に指数関数的に形成される長短両方の異常な増幅生成物は、何ら顕著な程度には蓄積しない。これは、短い異常な増幅生成物が形成された場合に、それぞれの一本鎖がその5’末端に第2のユニバーサルタグを、またその3’末端に第2のユニバーサルタグの相補体(黒丸で表す)を含むからである。これにより、既に述べたように、第2のユニバーサルタグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、短い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次ヘアピン様構造(610)が形成することが可能になる。同様に、長い異常な増幅生成物が形成された場合には、それぞれの一本鎖がその5’末端に第1のユニバーサルタグを、またその3’末端に核酸タグの相補体(黒三角で表す)を含む。これにより、既に述べたように、核酸タグとその相補体との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、長い異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次ヘアピン様構造(611)が形成することが可能になる。結果として、AM1およびAM2の増幅効率が改良される。
【0189】
さらに、AM1(66)とAM2(69)は第1のユニバーサルタグと第2のユニバーサルタグを含む。重要なことに、またより具体的に、AM1(66)のセンス鎖は5’末端に第1のユニバーサルタグを含み、AM1(66)のアンチセンス鎖は5’末端に第2のユニバーサルタグを含む。対照的に、AM2(69)のセンス鎖は5’末端に第2のユニバーサルタグを含み、AM2(69)のアンチセンス鎖は5’末端に第1のユニバーサルタグを含む。次いでユニバーサルタグの組込みにより、第2ラウンドの増幅生成物のそれぞれの末端に異なったアダプター分子(および任意選択的に試料バーコード分子)を組み込むさらなる増幅反応が起こることが可能になる。
【0190】
図6Bに示すように、ここで第2の増幅におけるユニバーサルプライマーの対のための結合部位としてユニバーサルタグの相補体を用いることができる。より具体的には、第1のユニバーサルプライマー(612)は、5’から3’の順に、
a.本明細書で定義するアダプター配列である第1のアダプター配列(アダプター1)、
b.本明細書で定義する試料バーコード配列、
c.図に示されるように生成した増幅生成物に組み込まれた第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域(白三角)
を含み、
第2のユニバーサルプライマー(613)は5’から3’の順に、
a.本明細書で定義するアダプター配列であってアダプター1と実質的にまたは殆ど配列同一性を共有しない第2のアダプター配列(アダプター2)、
b.本明細書で定義する試料バーコード配列、
c.図に示されるように生成した増幅生成物に組み込まれた第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一であるユニバーサルプライマー領域(白丸)
を含む。
【0191】
したがって、第2の増幅の間に、第1のユニバーサルプライマー領域(これは(5’から3’への方向で)第1のユニバーサルタグと同一である)は第1のユニバーサルタグの相補体にハイブリダイズし、(DNA)ポリメラーゼ酵素によるそれぞれのアンプリコンの伸長を引き起こす。その機構は当技術で周知である。同様に、第2のユニバーサルプライマー領域(これは(5’から3’への方向で)第2のユニバーサルタグと同一である)は第2のユニバーサルタグの相補体にハイブリダイズし、(DNA)ポリメラーゼ酵素によるそれぞれのアンプリコンの伸長を引き起こす。
【0192】
結果として、増幅生成物(614)および(615)が、図6Cに示すように産生される。決定的なことに、ここでそれぞれの生成物はいずれかの末端に第1のアダプター配列および第2のアダプター配列を組み込んでいる。プライマー対におけるユニバーサルタグの配置により、第1のアダプター配列および第2のアダプター配列は異なった増幅生成物中の分子の対向する末端にあってよい。これは後続のプロセシングには問題ではない。それぞれの増幅生成物(614)および(615)の末端における第1のアダプター配列および第2のアダプター配列の組込みは、これらが今や高スループットの大量並列DNAシーケンシングのために使用できることを意味している。たとえば、アダプター1およびアダプター2はそれぞれ、Illumina MiSeqまたはHiSeqプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なp5アダプターおよびp7アダプターであってよい。あるいは、アダプター1およびアダプター2はそれぞれ、Thermo Fisher Ion Protonプラットフォームを用いるシーケンシングに必要なAアダプターおよびP1アダプターであってよい。
【0193】
特に有利には、第1のフォワードプライマー(64)、第1のリバースプライマー(65)、第2のフォワードプライマー(67)、および第2のリバースプライマー(65)を用いる第1の増幅、ならびにユニバーサルプライマー(612)および(613)を用いる第2の増幅は、同じ反応容器中で行うことができる。言い換えると、上述のプライマーの全ては必要な増幅試薬(dNTP、ポリメラーゼ等)とともに組み合わせて反応の開始時に含ませてよい。したがって、単一の反応容器中で、それぞれセンス鎖およびアンチセンス鎖の5’末端に必須のアダプターを完備した、標的核酸の所望の重複アンプリコンを、高スループットの大量並列DNAシーケンシングのために産生させることができる。シーケンシングは個別の反応容器中で(たとえばシーケンシング機器のフローセルで)起こることになることが注目される。
【0194】
第1の増幅反応の程度の制御によって単一反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にすること
図9Aに、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのプライマー(1)を模式的に示す。プライマーは5’から3’の順に第1にユニバーサルタグ(2)を含む。タグ(2)は、第2の増幅でユニバーサルプライマーがハイブリダイズすることができる配列を増幅生成物に組み込むために用いられる。タグ(2)はRNAヌクレオチドを含まず、最初の標的核酸分子とハイブリダイズしない。RNAヌクレオチド(3)はタグ(2)の下流に(即ち3’末端に)見出される。RNAヌクレオチド(3)の下流にはプライマー領域(4)が存在する。このプライマー領域(4)は標的核酸分子の鎖とハイブリダイズして増幅を指令する。プライマー領域は典型的にはDNA系であり、RNAヌクレオチドを何ら含まない。
【0195】
図9B図9Aと同じラベリングを用いており、標的核酸分子へのプライマーの最初のハイブリダイゼーションを示す。これは理論的な標的配列に基づいている。タグ(2)はDNAヌクレオチドからなっており、最初の標的核酸分子とはハイブリダイズしない。RNAヌクレオチド(3)は、この場合にはウラシルであるが、タグ(2)の下流に(即ち3’末端に)見出される。RNAヌクレオチド(3)の下流にはプライマー領域(4)が存在する。このプライマー領域(4)は標的核酸分子の鎖(6)とハイブリダイズし、5’から3’への方向の増幅を指令する。プライマー領域はDNAヌクレオチドからなっている。
【0196】
図9C図9Aと同じラベリングを用いており、分子バーコード(7)を組み込むプライマーを示す。この図では分子バーコードはRNAヌクレオチドの下流に位置しているが、これは本質的ではない。典型的には、分子バーコードはユニバーサルタグの下流に存在している。
【0197】
図10A図9と同じラベリングを用いており、標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのさらなるプライマー(1)を模式的に示す。プライマーは5’から3’の順に第1にユニバーサルタグ(2)を含む。タグ(2)は、第2の増幅でユニバーサルプライマーがハイブリダイズすることができる配列を増幅生成物に組み込むために用いられる。タグ(2)はRNAヌクレオチドを含まず、最初の標的核酸分子とはハイブリダイズしない。RNAヌクレオチド(3)はタグ(2)の下流で、プライマー領域(4)の第3のヌクレオチドに見出される。このプライマー領域(4)は標的核酸分子の鎖とハイブリダイズして増幅を指令する。プライマー領域は一本鎖ヌクレオチドは別としてDNA系である。RNAヌクレオチドの側にはその5’末端(5)に2DNA塩基対のみのヌクレオチドが存在し、したがってRNase Hの基質として作用しない。
【0198】
図10B図10Aと同じラベリングを用いており、標的核酸分子へのプライマーの最初のハイブリダイゼーションを示す。これは理論的な標的配列に基づいている。タグ(2)はDNAヌクレオチドからなっており、最初の標的核酸分子とはハイブリダイズしない。RNAヌクレオチド(3)はタグ(2)の下流で、プライマー領域(4)の第3のヌクレオチドに見出される。このプライマー領域(4)は標的核酸分子の鎖(6)とハイブリダイズし、5’から3’への方向の増幅を指令する。プライマー領域はヌクレオチドの一本鎖のRNA-DNA対(3)を含む。しかし、これはRNAヌクレオチドの上流に十分な二本鎖性を与えない。したがって、アニールされたプライマーはRNase H活性によって切断されない。これは、RNAヌクレオチドの側にはその5’末端(5)に2DNA塩基対のみのヌクレオチドが存在するからである。
【0199】
図10C図10Aと同じラベリングを用いており、分子バーコード(7)を組み込むプライマーを示す。この図では分子バーコードはRNAヌクレオチドの下流に位置しているが、これは本質的ではない。典型的には、分子バーコードはユニバーサルタグの下流に存在している。
【0200】
図11Aは第1の増幅反応を制限するための本発明のプライマーの使用の模式図である。これは図11Bに示す第2の増幅反応との競合を防止するために重要である。第2の増幅反応との競合は、下流のプロセシングのためのアダプター配列を組み込まないタグ付けされた増幅生成物の過剰な生成をもたらす可能性がある。それぞれの図には、種々の分子成分の識別を助けるための符号が含まれている。
【0201】
図11Aに標的二本鎖DNA分子(31)を示す。本発明のフォワードプライマー(32)およびリバースプライマー(33)も示されている。フォワードプライマー(32)およびリバースプライマー(33)は標的DNA(31)のそれぞれの鎖とハイブリダイズしてPCRによる増幅をもたらし、RNA塩基とタグの両方を組み込んだそれぞれの生成物の一本鎖を有する二本鎖の増幅生成物(34、35)を生成する。
【0202】
例としてRNA塩基およびフォワードプライマー(32)からのタグを組み込んだ増幅生成物(34)を用いるPCRの第2サイクルを示す。PCRの第2サイクルでは、リバースプライマー(33)は増幅生成物(34)の3’末端にハイブリダイズして伸長し、二本鎖増幅生成物(36)を生成する。伸長反応の間にフォワードプライマーがコピーされる。RNA塩基はこのプロセスの一部としてDNAポリメラーゼによって「補正」される。したがって、増幅生成物(36)は5’末端にリバースプライマー(33)を含み、3’末端(37)にタグを含むがRNA塩基を含まないフォワードプライマーのリバース相補体を含む鎖を組み込む。
【0203】
この増幅生成物(36)はRNase Hの基質となり、これはRNA塩基の5’末端を切断して第1のタグ(38)を放出する。増幅生成物(36)の最端部の鎖の2つの代替的な運命を図11Aにさらに示す。第1に、フォワードプライマー(32)がこの鎖にハイブリダイズする場合には、ハイブリダイゼーションに際してRNase H活性の基質が産生されることになる(39)。フォワードプライマー(32)は切断し、したがってタグを組み込まない鎖の増幅を指令することのみができる(図示せず)。したがって、生成物は増幅の第2ラウンドには有用でない。第2に、フォワードプライマー(32)からの切断されたタグがプライマーとして作用する場合には、これは二本鎖増幅生成物(310)を産生する。伸長反応の間にリバースプライマーがコピーされる。RNA塩基はこのプロセスの一部としてDNAポリメラーゼによって「補正」される。したがって、増幅生成物(310)は5’末端にRNA塩基を含まずフォワードプライマー(32)を含み、3’末端(311)にタグを含むがRNA塩基を含まないリバースプライマーのリバース相補体を含む鎖を組み込む。この鎖(311)は第2の増幅反応の望ましい生成物である。この二本鎖増幅生成物(310)はRNase Hのさらなる基質であり、これはRNA塩基の5’末端を切断して第2のタグ(312)を放出する。
【0204】
鎖(311)を取れば、この鎖にも2つの代替的な運命が存在する。第1に、リバースプライマー(33)がこの鎖にハイブリダイズする場合には、ハイブリダイゼーションに際してRNase H活性の基質が産生されることになる(図示せず)。リバースプライマー(33)は切断し、したがってタグを組み込まない鎖の増幅を指令することのみができる(図示せず)。したがって、生成物は増幅の第2ラウンドには有用でない。第2に、リバースプライマー(33)からの切断されたタグがプライマーとして作用する場合には、これはRNA塩基を含まず分子の両末端にタグ付けされた二本鎖増幅生成物を産生する(313)。これは第2の増幅反応を指令する望ましい生成物である。
【0205】
図11Bに、第1の増幅反応からの二本鎖増幅生成物(313)の増幅に基づく第2の増幅反応を示す。代表させる目的で二本鎖増幅生成物(313)の最端部の鎖を取れば、第1のアダプター配列およびタグ1配列を組み込んだユニバーサルフォワードプライマー(314)はタグ1配列のリバース相補体にハイブリダイズして、アダプターを伸長生成物(315)に組み込む伸長を指令する。第2のアダプター配列およびタグ2配列を組み込んだユニバーサルリバースプライマー(316)はタグ2配列のリバース相補体にハイブリダイズして、伸長生成物(315)をテンプレートとして用いてアダプターを伸長生成物(317)に組み込む伸長を指令する。この鎖はいずれかの末端にアダプターを組み込んでいる。ユニバーサルフォワードプライマー(314)を用いるこの鎖(317)の伸長により、いずれかの末端にアダプター配列を組み込んだ所望の二本鎖生成物(318)が生成される。関連する二本鎖DNAコンテキストには見出されるRNAヌクレオチドが何ら存在しないので、RNase Hはこれらの生成物のいずれにも作用できないことに留意されたい。したがって、第2の増幅反応の効率は、反応混合物中に存在するRNase Hによって妨げられない。
【0206】
<ユニバーサルプライマーの産生を遅延させることによって単一の反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
図12に、2つの反応ステップを分離した反応容器(チューブ1およびチューブ2)中で行うマルチステップ増幅を行う従来技術のシステムを示す。
【0207】
第1の反応容器は、増幅すべき標的配列(9)を含むDNAデュプレックス鎖(8)を含む。第1のフォワードプライマー(13)および第1のリバースプライマー(14)は標的配列を増幅するように設計されている。即ち、第1のフォワードプライマー(13)は標的配列(12)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(10)を含み、第1のリバースプライマー(14)は標的配列(12)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(11)を含む。
【0208】
第1のフォワードプライマー(13)はその5’末端に第1のユニバーサルタグ(15)でタグ付けされており、第1のリバースプライマー(14)はその5’末端に第2のユニバーサルタグ(16)でタグ付けされている。その機構が当技術で周知のPCR増幅の間に、第1のフォワードプライマー(13)および第1のリバースプライマー(14)は、第1のユニバーサルタグ(15)および第2のユニバーサルタグ(16)を組み込んだ増幅生成物(17)を産生する。
【0209】
第2の反応容器(チューブ2)中の後続の反応では、第2のフォワードプライマー(18)および第2のリバースプライマー(19)が用いられ、チューブ1における第1の反応からの増幅生成物(17)が増幅される。第2のフォワードプライマー(18)は5’から3’の順に第1のアダプター配列(110)、任意選択的に第1のバーコード配列(111)、およびアンチセンス鎖に組み込まれた第1のユニバーサルタグ(15)の相補体とハイブリダイズするプライマー領域(112)を含む。第2のリバースプライマー(19)は5’から3’の順に第2のアダプター配列(113)、第2のバーコード配列(114)、および第2のユニバーサルタグ(16)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(115)を含む。PCR増幅の間に、第2のフォワードプライマー(18)および第2のリバースプライマー(19)は、第1のユニバーサルタグ(15)および第2のユニバーサルタグ(16)、第1のバーコード(111)および第2のバーコード(114)、ならびに第1のアダプター配列(110)および第2のアダプター配列(113)を組み込んださらなる増幅生成物(116)を産生する。
【0210】
このシステムは非効率で労働集約的である。さらに、第1のステップの後に反応混合物を停止し、分離する必要があるため、エラーやシステムの汚染が生じる。
【0211】
図13に、本発明の試薬のセットを用いることによって、単一の反応混合物中で標的核酸分子のマルチステップ増幅を行うことがいかにして可能になるかを示す。これには従来法に対して多くの利点がある。
【0212】
図13は、同じ反応混合物または反応容器中で並行して起こる3つの個別の増幅プロセスを説明するために提示している。
【0213】
図13Aに第1の増幅を示す。単一の反応混合物は、増幅すべき標的配列(22)を含むDNAデュプレックス鎖(21)を含む。第1のフォワードプライマー(23)および第1のリバースプライマー(24)は標的配列を増幅するように設計されている。即ち、第1のフォワードプライマー(23)は標的配列(22)のアンチセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(20)を含み、第1のリバースプライマー(24)は標的配列(22)のセンス鎖とハイブリダイズするプライマー領域(28)を含む。
【0214】
第1のフォワードプライマー(23)はその5’末端に第1のユニバーサルタグ(25)でタグ付けされており、第1のリバースプライマー(24)はその5’末端に第2のユニバーサルタグ(26)でタグ付けされている。その機構が当技術で周知のPCR増幅の間に、第1のフォワードプライマー(23)および第1のリバースプライマー(24)は、第1のユニバーサルタグ(25)および第2のユニバーサルタグ(26)を組み込んだ増幅生成物(27)を産生する。
【0215】
図13Bに、第1の増幅と並行して起こる増幅を示す。反応混合物はまた、5’から3’の順に第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列(29)、任意選択的に第1のバーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列(210)、第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列(211)、およびアダプター配列(211)を超える伸長を防止するブロッキング基(227)を含む第1の核酸分子(28)を含む。第1のアダプタープライマー(212)は第1のアダプター配列のリバース相補体(211)とハイブリダイズして、5’から3’の順に第1のアダプター配列(214)、任意選択的に第1のバーコード(215)、および第1のユニバーサルタグ(216)を含む増幅生成物(213)を産生する。
【0216】
反応混合物は、5’から3’の順に第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列(218)、任意選択的に第2のバーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列(219)、第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列(220)、およびアダプター配列(220)を超える伸長を防止するブロッキング基(228)を含む第2の核酸分子(217)をさらに含む。第2のアダプタープライマー(221)は第2のアダプター配列のリバース相補体(220)とハイブリダイズして、5’から3’の順に第2のアダプター配列(223)、任意選択的に第2のバーコード(224)、および第2のユニバーサルタグ(225)を含む増幅生成物(222)を産生する。
【0217】
図13Cに第2の増幅を示す。図13Bからの増幅生成物213および225は、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグ配列(216)および第2のユニバーサルタグ配列(223)は、第1の増幅からの増幅生成物(27)を増幅するプライマーとして作用する。これにより、第1のユニバーサルタグ(25)および第2のユニバーサルタグ(26)、任意選択的に第1のバーコード(215)および第2のバーコード(224)、ならびに第1のアダプター(214)および第2のアダプター(223)を含むさらなる増幅生成物(226)が産生する。さらなる増幅生成物は、典型的には標的核酸分子を検出し、および/または定量するシーケンシングを含む下流のプロセシングに有用である。
【0218】
第1の核酸分子(28)および第2の核酸分子(217)を第1のアダプタープライマー(212)および第2のアダプタープライマー(221)とともに使用することにより、増幅生成物213および222の生成が一時的に遅延される。これにより、標的核酸分子の第1の増幅がタグ付けされた増幅生成物(27)を生成させることが可能になる。第2の増幅を実施するためのユニバーサルプライマーとして作用する増幅生成物213および222が産生されるときまでに、基質である増幅生成物(27)は既に過剰に存在している。
【0219】
<箇条項目>
本明細書に記載した改良は、それぞれ互いに有利に組合せて、改良された方法を可能にすることができる。そのような組合せを以下の項目に詳細に説明する。
1.標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットであって、
a.標的核酸分子の第1の領域を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む第1のプライマー対、
b.第1の領域と少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第2の領域を増幅するように設計された第2のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域および第1のリバースプライマーの5’末端に組み込まれた核酸タグと5’から3’への方向で同一であるプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第2のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第2のリバースプライマー
を含む第2のプライマー対
を含み、
第1のリバースプライマーと第2のフォワードプライマーとの間に異常な(短い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(短い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(短い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される、プライマーのセット。
2.第1のフォワードプライマーおよび第2のリバースプライマーがまた、プライマー領域の5’の核酸タグを組み込んでおり、第1のフォワードプライマーの核酸タグと第2のリバースプライマーの核酸タグが5’から3’への方向で同一であり、それにより、第1のフォワードプライマーと第2のリバースプライマーとの間に異常な(長い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(長い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(長い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成されることをさらに特徴とする、項目1のプライマーのセット。
3.a.第2の領域と少なくとも部分的に重複する標的核酸分子の第3の領域を増幅するように設計された第3のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだ第3のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域を組み込んだ第3のリバースプライマー
を含む、第3のプライマー対をさらに含み、
第3のフォワードプライマーの核酸タグと第2のリバースプライマーの核酸タグも5’から3’の方向で同一であり、それにより、第3のフォワードプライマーと第2のリバースプライマーとの間に異常な(短い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(短い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(短い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される、項目2に記載のプライマーのセット。
4.第3のリバースプライマーがまた、プライマー領域の5’の核酸タグを組み込んでおり、第2のフォワードプライマーの核酸タグと第3のリバースプライマーの核酸タグも5’から3’への方向で同一であり、それにより、第2のフォワードプライマーと第3のリバースプライマーとの間に異常な(長い)増幅生成物が形成される事象において、異常な(長い)増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な(長い)増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成されることをさらに特徴とする、項目3のプライマーのセット。
5.標的核酸分子の重複領域のマルチプレックス増幅における使用のためのプライマーのセットであって、
a.標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計された少なくとも2つのプライマー対であって、それぞれのプライマー対が
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の核酸タグを組み込んだリバースプライマー
を含む、少なくとも2つのプライマー対を含み、
それぞれのプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの核酸タグが異なっており、直近のプライマー対におけるフォワードプライマーとリバースプライマーの核酸タグが5’から3’への方向で同一であり、それにより、直近のプライマー対のフォワードプライマーとリバースプライマーの間で異常な増幅生成物が形成される事象において異常な増幅生成物の5’末端の核酸タグと増幅の間に形成された異常な増幅生成物の3’末端の相補配列との間に分子内ハイブリダイゼーション事象が起こり、異常な増幅生成物のさらなる増幅を阻害する二次構造が形成される、プライマーのセット。
6.核酸タグおよびその相補配列のTmがプライマー領域のTm最高値より高い、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
7.核酸タグおよびその相補配列のTmがプライマー領域のTm最高値より少なくとも2℃高く、任意選択的に10℃まで高い、項目5に記載のプライマーのセット。
8.それぞれのタグの長さが少なくとも4ヌクレオチド、任意選択的に20ヌクレオチドまでである、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
9.それぞれのタグの長さが4、6、8、または10ヌクレオチドである、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
10.それぞれのタグがGCの多い配列を含む、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
11.それぞれのプライマー対が50~150ヌクレオチドの増幅生成物を生成することを意図した、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
12.直近のプライマー対から産生される意図された増幅生成物の間の重複のレベルが10~30ヌクレオチドである、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
13.それぞれのタグが標的核酸分子との同一性を示さない、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
14.それぞれの核酸タグがユニバーサルタグを含む、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
15.それぞれのプライマー対が第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグを含む、項目14に記載のプライマーのセット。
16.それぞれのプライマー対における少なくとも1つのプライマーがバーコード、任意選択的に分子バーコードを含む、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
17.それぞれのプライマーがバーコード、任意選択的に分子バーコードを含む、先行する項目のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
18.項目1から17のいずれか1項で定義されるプライマーのセットを含む、マルチプレックス核酸増幅のためのキット。
19.a.それぞれのユニバーサルプライマーが5’から3’の順に、
i.アダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.マルチプレックス増幅に用いられる対応するプライマーのユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む、ユニバーサルプライマー、
b.DNAポリメラーゼ、
c.dNTP
の少なくとも1つをさらに含む、項目18のキット。
20.a.5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む第1のユニバーサルプライマー、
b.5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列
iii.第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む、第2のユニバーサルプライマー
を含む、項目18または19のキット。
21.項目1から17のいずれか1項で定義されるプライマーのセットを含む、マルチプレックス核酸増幅のための反応容器。
22.a.後続のシーケンシングのためのユニバーサルプライマーであって、それぞれのユニバーサルプライマーが5’から3’の順に、
i.アダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.マルチプレックス増幅に用いられる対応するプライマーのユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含むユニバーサルプライマー、
b.DNAポリメラーゼ、
c.dNTP
の少なくとも1つをさらに含む、項目21の反応容器。
23.a.5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む第1のユニバーサルプライマー、
b.5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む、第2のユニバーサルプライマー
を含む、項目21または22の反応容器。
24.逆転写酵素をさらに含む、項目18から20のいずれか1項のキット、または項目21から23のいずれか1項の反応容器。
25.第1のアダプター配列が第2のアダプター配列と異なる、項目20のキット、または項目23の反応容器。
26.第1のアダプター配列がp5アダプターであり、第2のアダプター配列がp7アダプターである、項目25のキットまたは反応容器。
27.第1のアダプター配列がAアダプターであり、第2のアダプター配列がP1アダプターである、項目25のキットまたは反応容器。
28.項目1から17のいずれか1項で定義されるプライマーのセットを用いてタグ付けされた増幅生成物を創成する標的核酸分子の重複領域の増幅を含む、マルチプレックス核酸増幅反応。
29.シーケンシングのためのタグ付けされた増幅生成物を調製するための追加の増幅をさらに含み、追加の増幅反応がユニバーサルプライマーを利用し、それぞれのユニバーサルプライマーが5’から3’の順に、
a.アダプター配列、
b.任意選択的に試料バーコード配列、
c.マルチプレックス増幅に用いられる対応するプライマーのユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む、項目28のマルチプレックス核酸増幅反応。
30.ユニバーサルプライマーが、
a.5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む第1のユニバーサルプライマー、
b.5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む、第2のユニバーサルプライマー
を含むユニバーサルプライマー対を形成する、項目28または29のマルチプレックス核酸増幅反応。
31.第1のアダプター配列がp5アダプターであり、第2のアダプター配列がp7アダプターである、項目30のマルチプレックス核酸増幅反応。
32.第1のアダプター配列がAアダプターであり、第2のアダプター配列がP1アダプターである、項目30のマルチプレックス核酸増幅反応。
33.シーケンシングが次世代シーケンシングである、項目29から32のいずれか1項のマルチプレックス核酸増幅反応。
34.標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のためのプライマーであって、5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず、標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む、プライマー。
35.RNAヌクレオチドの下流のブロッキング基を含まない、項目34のプライマー。
36.5’から3’の順に、
a.ユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域、
d.さらなるRNAヌクレオチド、
e.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするさらなる領域、
f.ブロッキング基
を含む、項目34のプライマー。
37.タグおよび/またはプライマー領域がDNAヌクレオチドからなる、項目34から36のいずれか1項のプライマー。
38.RNAヌクレオチドの下流にバーコード配列、任意選択的に分子バーコードをさらに含む、項目34から37のいずれか1項のプライマー。
39.5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ、
b.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズする4つまでのヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチド、
d.RNAヌクレオチドを含まず、標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含み、領域bおよびdがいずれも同じ標的核酸分子とハイブリダイズして、標的核酸分子中のDNA塩基と対になったRNAヌクレオチドが生じる、項目34から38のいずれか1項のプライマー。
40.標的核酸分子を増幅するための、項目34から39のいずれか1項に記載のフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むプライマー対。
41.標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットであって、
a.項目34から39のいずれか1項に記載のプライマー、または項目40で定義されるプライマー対、
b.RNase H
を含む、試薬のセット。
42.項目34から39のいずれか1項に記載のプライマー、項目40に記載のプライマー対、または項目41に記載の試薬のセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅。
43.第1のプライマー対を用いてRNase Hの存在下に標的核酸分子を増幅するステップを含む、標的核酸分子の増幅のための方法であって、第1のプライマー対が、
i.5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む第1のフォワードプライマー、
ii.5’から3’の順に、
a.RNAヌクレオチドを含まないユニバーサルタグ(これは最初の標的核酸分子とハイブリダイズしない)、
b.RNAヌクレオチド、
c.RNAヌクレオチドを含まず標的核酸の鎖とハイブリダイズするプライマー領域
を含む第1のリバースプライマー
を含み、それにより、
c.第1ラウンドの増幅の後、標的核酸分子が複製され、第1の増幅生成物がユニバーサルタグおよび第1のフォワードプライマーのRNAヌクレオチドを組み込み、第2の増幅生成物がユニバーサルタグおよび第1のリバースプライマーのRNAヌクレオチドを組み込み、
d.第2ラウンドの増幅では、第1のリバースプライマーが、第1の増幅生成物とハイブリダイズして、ユニバーサルタグの相補体と第1のフォワードプライマーのRNAヌクレオチドのDNA相補体とを組み込んだ第3の増幅生成物を産生し、第1のフォワードプライマーが、第2の増幅生成物とハイブリダイズして、ユニバーサルタグの相補体と第1のリバースプライマーのRNAヌクレオチドのDNA相補体とを組み込んだ第4の増幅生成物を産生し、第3の増幅生成物および第4の増幅生成物がそれぞれRNase H活性の基質となり、それによりRNAヌクレオチドの切断がもたらされ、それにより標的核酸分子のさらなる増幅が制限される、方法。
44.第1のフォワードプライマーおよび/または第1のリバースプライマーが項目34から39のいずれか1項で定義される、項目43に記載の方法。
45.項目34から39のいずれか1項に記載のプライマー、項目40に記載のプライマー対、もしくは項目41に記載の試薬のセット、または項目42から44のいずれか1項に記載の増幅であって、
a.RNase HがRNase H2、任意選択的にパイロコッカス・アビシからのRNase H2のように熱安定性であり、および/または
b.標的核酸分子がゲノムDNAもしくはcDNAを含み、および/または
c.標的核酸分子が二本鎖または一本鎖である、
プライマー、プライマー対、もしくは試薬のセット、または増幅。
46.項目34から39のいずれか1項に記載のプライマー、項目40に記載のプライマー対、または項目41に記載の試薬のセットを含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅のためのキット。
47.DNAポリメラーゼおよびdNTPの少なくとも1つをさらに含む、項目46のキット。
48.セット中の少なくとも1つのプライマーが項目34から39のいずれか1項に記載のプライマーである、項目1から17のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
49.セット中のそれぞれのプライマー対が項目34から39のいずれか1項に記載のプライマーを含む、項目1から17のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
50.セット中のそれぞれのプライマー対が項目40に記載のプライマー対を含む、項目1から17のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
51.セット中のそれぞれのプライマーが項目34から39のいずれか1項に記載のプライマーである、項目1から17のいずれか1項に記載のプライマーのセット。
52.項目48から51のいずれか1項に記載のプライマーのセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅。
53.増幅が、標的核酸分子の重複領域の増幅を含むマルチプレックス核酸増幅反応を含む、項目52の増幅。
54.
a.5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第1のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む第1のユニバーサルプライマー、
b.5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.任意選択的に試料バーコード配列、
iii.第2のユニバーサルタグと(5’から3’への方向で)同一のユニバーサルプライマー領域
を含む、第2のユニバーサルプライマー
を使用する第2の増幅を含む、項目52または53の増幅。
55.標的核酸分子を検出し、および/または定量する方法であって、
a.ユニバーサルタグおよびアダプター配列を組み込んだ増幅生成物を産生するために項目54の方法を実施するステップ、
b.標的核酸分子を検出し、および/または定量するために増幅生成物をシーケンシングするステップであって、任意選択的にシーケンシングが次世代シーケンシングである、ステップ
を含む、方法。
56.標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットであって、
a.標的核酸分子を増幅するように設計された第1のプライマー対であって、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含む第1のプライマー対、
b.5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子、
c.5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子、
d.第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第1のアダプタープライマー、
e.第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する第2のアダプタープライマー
を含み、
dおよびeの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物が、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、プライマーとして作用して、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅して、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する、試薬のセット。
57.標的核酸分子のマルチステップ増幅における使用のための試薬のセットであって、
a.5’から3’の順に、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズする第1のプライマー対のフォワードプライマーに組み込まれた第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子、
b.5’から3’の順に、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズする第1のプライマー対のリバースプライマーに組み込まれた第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子、
c.第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する、第1のアダプタープライマー、
d.第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生する、第2のアダプタープライマー
を含み、
cおよびdの第1のアダプタープライマーおよび第2のアダプタープライマーを用いて産生された増幅生成物が、ユニバーサルプライマー対を形成し、ここで第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、プライマーとして作用して、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅して、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成する、試薬のセット。
58.標的核酸分子のマルチステップ増幅のための方法であって、
a.第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1の増幅生成物を生成するために、第1のプライマー対を用いて標的核酸分子を増幅するステップと、ここで、第1のプライマー対は、
i.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第1のユニバーサルタグを組み込んだ第1のフォワードプライマー、
ii.標的核酸分子の鎖とハイブリダイズするプライマー領域およびプライマー領域の5’の第2のユニバーサルタグを組み込んだ第1のリバースプライマー
を含み、
b.5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子を増幅するステップと、ここで、5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする第1のアダプタープライマーを用い、
c.5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第2の核酸分子を増幅するステップと、ここで、5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする第2のアダプタープライマーを用い、
d.ステップbおよびステップcの増幅生成物をユニバーサルプライマー対として用いて、第1のプライマー対によって産生された増幅生成物を増幅するステップと、ここで、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグが、第1のユニバーサルタグおよび第2のユニバーサルタグならびにアダプターを組み込んださらなる増幅生成物を生成するプライマーとして作用する、
を含み、単一の反応混合物中で実施される、方法。
59.標的核酸分子を検出し、および/または定量する方法であって、
a.さらなる増幅生成物を産生するために項目58の方法を実施するステップ、
b.標的核酸分子を検出し、および/または定量するためにさらなる増幅生成物をシーケンシングするステップであって、ここで、任意選択的にシーケンシングが次世代シーケンシングである、
を含む方法。
60.項目56から59のいずれか1項の試薬のセットまたは方法であって、
a.第1の核酸分子が5’から3’の順に、
i.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.第1のバーコード、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iv.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含み、
b.5’から3’の順に、
i.第1のアダプター配列、
ii.第1のバーコード、好ましくは第1の試料バーコード、
iii.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第1のアダプタープライマーが第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズし、
さらなる増幅生成物が、第1のユニバーサルタグ、第2のユニバーサルタグ、第1のバーコード、好ましくは第1の試料バーコード、ならびに第1のアダプターおよび第2のアダプターを組み込む、
試薬のセットまたは方法。
61.項目56から60のいずれか1項の試薬のセットまたは方法であって、
a.第2の核酸分子が5’から3’の順に、
i.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
ii.第2のバーコード、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iii.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
iv.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含み、
b.5’から3’の順に、
i.第2のアダプター配列、
ii.第2のバーコード、好ましくは第2の試料バーコード、
iii.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第2のアダプタープライマーが第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズし、
さらなる増幅生成物が、第1のユニバーサルタグ、第2のユニバーサルタグ、第2のバーコード、好ましくは第2の試料バーコード、ならびに第1のアダプターおよび第2のアダプターを組み込む、
試薬のセットまたは方法。
62.標的核酸分子がDNAである、項目56から61のいずれか1項の試薬のセットまたは方法。
63.標的核酸分子がRNAである、項目56から62のいずれか1項の試薬のセットまたは方法。
64.項目56から63のいずれか1項の試薬のセットまたは方法であって、標的核酸分子が、
a.ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織から抽出された、または
b.無細胞DNA、任意選択的に
i.母親の血流から得られた無細胞胎児DNA、もしくは
ii.体液、任意選択的に血液、尿、もしくは脊髄液から得られた無細胞DNA、もしくは
iii.無細胞腫瘍DNAであるか、または
c.血液由来である、
試薬のセットまたは方法。
65.ユニバーサルプライマーのリバース相補体を形成する核酸分子であって、5’から3’の順に、
a.タグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
b.任意選択的に、バーコード、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
c.後続のプロセシングに必要なアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
d.アダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む、核酸分子。
66.項目65の核酸分子と、プライマーとの組合せであって、プライマーは、アダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズして、5’から3’の順に、
a.後続のプロセシングに必要なアダプター配列、
b.任意選択的に試料バーコード、
c.タグ
を含む増幅生成物としてユニバーサルプライマーを産生する、組合せ。
67.第1の核酸分子と、第2の核酸分子との組合せであって、5’から3’の順に、
a.第1のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
b.任意選択的に、バーコード配列、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
c.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
d.第1のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む第1の核酸分子と、
5’から3’の順に、
e.第2のユニバーサルタグのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
f.任意選択的に、バーコード配列、好ましくは試料バーコードのリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
g.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列のリバース相補体であるヌクレオチドの配列、
h.第2のアダプター配列を超える伸長を防止するブロッキング基
を含む、組合せ。
68.項目67の核酸分子と、
a.5’から3’の順に、
a.後続のプロセシングに必要な第1のアダプター配列、
b.任意選択的に、第1のバーコード配列、好ましくは試料バーコード、
c.第1のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために第1のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする、第1のアダプタープライマー、
d.5’から3’の順に、
a.後続のプロセシングに必要な第2のアダプター配列、
b.任意選択的に、第2のバーコード配列、好ましくは試料バーコード、
c.第2のユニバーサルタグ
を含む増幅生成物を産生するために、第2のアダプター配列のリバース相補体とハイブリダイズする、第2のアダプタープライマー
との組合せ。
69.アダプター配列が次世代シーケンシングのためのアダプター配列である、項目56から68のいずれか1項の試薬のセット、方法、核酸分子、または組合せ。
70.それぞれのバーコードの長さが少なくとも4、6、または8ヌクレオチド、任意選択的に20ヌクレオチドまでである、項目59から70のいずれか1項の試薬のセット、方法、核酸分子、または組合せ。
71.それぞれのタグの長さが少なくとも20ヌクレオチド、任意選択的に30ヌクレオチドまでである、項目56から70のいずれか1項の試薬のセット、方法、核酸分子、または組合せ。
72.ブロッキング基が以下の3’ddC、3’逆転dT、3’C3スペーサー、3’アミノ、および3’ホスホリル化から選択される、項目56から71のいずれか1項の試薬のセット、方法、核酸分子、または組合せ。
73.項目56から72のいずれか1項に定義される試薬のセットを用いてタグおよびアダプター配列を組み込んだ増幅生成物を創成する標的核酸分子の増幅を含む、マルチステップ核酸増幅反応。
74.項目56から72のいずれか1項の試薬のセット、核酸分子、または組合せを含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅のためのキット。
75.DNAポリメラーゼおよびdNTPの少なくとも1つをさらに含む、項目74のキット。
76.少なくとも第1のプライマー対および第2のプライマー対を含み、標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計されたプライマーのセットを含む、項目56から72のいずれか1項の試薬のセット。
77.プライマーのセットが、項目1から17のいずれか1項に記載のプライマーのセットを含む、項目77の試薬のセット。
78.項目76または77に記載の試薬のセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅。
79.標的核酸分子を検出し、および/または定量する方法であって、
a.ユニバーサルタグおよびアダプター配列を組み込んだ増幅生成物を産生するために項目78の増幅を実施するステップ、
b.標的核酸分子を検出し、および/または定量するために増幅生成物をシーケンシングするステップであって、任意選択的にシーケンシングが次世代シーケンシングである、ステップ
を含む、方法。
80.項目56から72のいずれか1項に記載の試薬のセットであって、第1のプライマー対の中の少なくとも1つのプライマーが項目34から41のいずれか1項に記載のプライマーである、試薬のセット。
81.項目56から72のいずれか1項に記載の試薬のセットであって、第1のプライマー対の中の両方のプライマーが項目34から41のいずれか1項に記載のプライマーである、試薬のセット。
82.項目56から72のいずれか1項に記載の試薬のセットであって、標的核酸分子を増幅するように設計されたそれぞれのプライマーが項目34から41のいずれか1項に記載のプライマーである、試薬のセット。
83.項目80から82のいずれか1項に記載の試薬のセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチステップ増幅。
84.標的核酸分子を検出し、および/または定量する方法であって、
a.ユニバーサルタグおよびアダプター配列を組み込んだ増幅生成物を産生するために項目83の増幅を実施するステップ、
b.標的核酸分子を検出し、および/または定量するために増幅生成物をシーケンシングするステップであって、任意選択的にシーケンシングが次世代シーケンシングである、ステップ
を含む方法。
85.少なくとも第1のプライマー対および第2のプライマー対を含み、標的核酸分子の重複領域を増幅するように設計されたプライマーのセットを含む、項目56から72のいずれか1項の試薬のセット。
86.プライマーのセットが、項目48から51のいずれか1項に記載のプライマーのセットを含む、項目85の試薬のセット。
87.項目85または86に記載の試薬のセットの使用を含む、標的核酸分子のマルチプレックス増幅およびマルチステップ増幅。
88.増幅が標的核酸分子の重複領域の増幅を含むマルチプレックス核酸増幅反応を含む、項目87の増幅。
89.標的核酸分子を検出し、および/または定量する方法であって、
a.ユニバーサルタグおよびアダプター配列を組み込んだ増幅生成物を産生するために項目87または88の増幅を実施するステップ、
b.標的核酸分子を検出し、および/または定量するために増幅生成物をシーケンシングするステップであって、任意選択的にシーケンシングが次世代シーケンシングである、ステップ
を含む方法。
【0220】
ここで以下の説明的かつ非限定的な例によって本発明はよりよく理解されよう。
【実施例
【0221】
<重複標的配列を含むマルチプレックス増幅を改良する>
[実施例1:重複するアンプリコンのマルチプレックス増幅における隣接するプライマー対の間の相互に配置された同一のタグの使用により、異常生成物の形成が低減される]
(方法)
重複するアンプリコンの1ステップマルチプレックスが理論的に予想された通りに機能することを示すための実験を実施した。概念実証として、BRCA腫瘍MASTR Dxアッセイ(Multiplicom、NV、Belgium)を利用した。このアッセイにより181個のアンプリコンが生成され、そのうち173個のアンプリコンを、重複プライマー対を用いて増幅する。したがって、通常の配置のタグ配列を含むもとのプライマーセットを用いるマルチプレックス反応として(即ち、単一のPCR反応として)増幅を実施すると、期待されるPCR生成物より短い異常なPCR断片が産生される可能性がある。この問題に対する解決策としての本発明の性能を示すため、関連するプライマーセットを再設計して、重複するアンプリコンの1ステップマルチプレックスの要求をタグ配列が満たすようにした(即ち、本明細書で説明したプライマー対の間のプライマー上のタグの相互配置)。したがって、既存のプライマーセットでは、それぞれのフォワードプライマーはタグ1を含み、それぞれのリバースプライマーはタグ2を含んでいた。再設計したプライマーでは、隣接するプライマー対は逆のタグ配向を有していた(フォワードプライマー1-タグ1、リバースプライマー1-タグ2、フォワードプライマー2-タグ2、リバースプライマー2-タグ1、等々)。タグ1配列は配列番号1として提供され、タグ2配列は配列番号2として提供される。
【0222】
このアッセイの使用説明書に概略が記されている実験条件で、標準の2ステップPCRプロトコルで両方のプライマーセットを用いた。簡潔には、それぞれのプライマーセットについて50ngのゲノムテンプレートDNAを用いて1つのマルチプレックスPCR反応を組み立て、第1のPCR反応を20サイクル実施した。得られたアンプリコンを1000倍に希釈し、続いてこの希釈された生成物2μlを標準の第2の20サイクルのPCRに用いた。
【0223】
(結果)
両方の実験で得られたPCR生成物をフラグメントアナライザーで分析した(図7および図8)。
【0224】
図7より、標準のBRCA腫瘍MASTR Dxプライマーを用いた単一のPCR反応条件の大部分では重複するアンプリコンのプライマーの間で形成された短い望ましくないアンプリコンと符合する大きさの範囲のPCR生成物が形成され、短いアンプリコンの形成が期待された(長い)アンプリコンの形成より優勢であることが示される。
【0225】
図8より、この実験において、BRCA腫瘍プライマー対に結合したタグ配列を、期待されるアンプリコンのみが形成される重複するアンプリコンのための1ステップマルチプレックスに準拠するように適合させると、短い望ましくないアンプリコンが存在しないことが明らかである。
【0226】
<ユニバーサルプライマーの産生を遅延させることによって単一の反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
[実施例2:リバース相補体配列のアダプター部分にハイブリダイズするプライマーを用いてリバース相補体配列を増幅してユニバーサルプライマーを産生させることができる]
(方法)
アダプター配列プライマー(これらの実験でそれぞれrcMIDおよびp5/p7プライマーと称する)とともに特定のアダプター(およびバーコード)配列を組み込んだユニバーサルプライマーのリバース相補体が、期待されるアンプリコンを産生するために通常のユニバーサルプライマー(これらの実験でMIDプライマーと称する)を置き換えることができることを示すために、第1の概念実証実験を実施した。ここで、通常のMID配列およびrcMID+p5/p7プライマーを用いて2ステップPCRプロトコルを実施し、市販のアッセイ(HNPCC MASTR)の全ての標的アンプリコンを増幅した。手順はHNPCC使用説明文書に記載されているように実施した(www.multiplicom.com/product/hnpcc-mastr)。マルチプレックスPCRに基づく標的増幅条件は、HNPCC MASTRキットを用いて使用説明書に記載されているように実施したが、全てのHNPCCプライマーを5つの個別の部分ではなく1つの反応で一緒に混合したという改変を行なった。簡潔には、50ngのゲノムテンプレートDNAを用いて、全てのHNPCCプライマー対を含む1つのマルチプレックスPCR反応を組み立て、第1のPCR反応を20サイクル実施した。得られたアンプリコンを1000倍に希釈し、続いてこの希釈された生成物2μlを、MIDまたはrcMID+p5/p7プライマーとともに第2の20サイクルのPCRラウンドに用いた。
【0227】
rcMID+p5/p7プライマーが第1のPCRプライマー対とともに1ステップ反応によって期待されるアンプリコンを産生することができることを示すために、第2の概念実証実験を実施した。ここで、BRCA腫瘍MASTRプラスDx市販アッセイ(www.multiplicom.com/product/brca-tumor-mastr-plus-dx)の第1の部分からの第1のPCRプライマー対を、MIDプライマーを用いる2ステップPCRとして、またはrcMID+p5/p7プライマーを用いる1ステップPCRとして実施した。2ステップPCRはそれぞれ20PCRサイクルの2つの反応で実施した。1ステップPCRは30PCRサイクルを超える単一の反応で実施した。両方の実験について、50ngのインプットゲノムDNAを用いた。
【0228】
P5プライマー配列は配列番号3として提供され、P7プライマー配列は配列番号4として提供される。
【0229】
それぞれが3’逆転dTブロッキング基でブロックされたrcMID配列は、配列番号5~24として提供される。配列番号5~14を、P5プライマーを用いる第2ステージの増幅のためのMIDプライマーを生成するために伸長した。これらはタグ1配列のリバース相補体を含み、それぞれはタグ配列のすぐ下流に異なったバーコード配列を含んでいる。配列番号15~24を、P7プライマーを用いる第2ステージの増幅のためのMIDプライマーを生成するために伸長した。これらはタグ2配列のリバース相補体を含み、それぞれはタグ配列のすぐ下流に異なったMID配列を含んでいる。
【0230】
(結果)
第1の概念実証実験の結果を図14に示す。図14は断片解析の結果を表し、アンプリコンの長さをX軸に、それぞれのピークの高さとして表したそれぞれのアンプリコンの収率をY軸に示す(ピークが高ければ収率が良い)。
【0231】
図14の左上のパネルは通常のMIDプライマーを用いた第2のPCRの断片解析の結果を示し、このアッセイの予想される断片解析パターンが得られている。
【0232】
右上のパネルはrcMID+p5/p7プライマーを用いた第2のPCRの断片解析の結果を示す。得られたパターンは左上のパネルと同じであるが、全収率のみが低かった。これは、rcMIDプライマーからのMIDプライマーの産生によって第2のPCRの開始の出現が遅延され、それにより低収率となったという事実によって説明できる。
【0233】
さらに、第2のPCRを成功させるためにrcMIDおよびP5/P7を反応に加えることが必要であることが、下のパネルから明らかである。左下のパネルは、P5プライマーおよびP7プライマーのみを反応に加えた場合に増幅生成物が存在しないことを示す。右下のパネルは、p5/p7プライマーなしにrcMIDプライマーのみを加えた場合に増幅がないことを示す。
【0234】
図15は、MIDおよびrcMID+P5/P7プライマーを用いて得られた結果の断片解析結果をより詳細に表す。この図は、両方の増幅のパターンが同一であり、rcMID+p5/p7反応の場合に収率のみが低いことを明らかに示している(下のパネル)。
【0235】
第2の概念実証実験の結果を図16に示す。この図から、1ステップPCRの組立てで予想される全てのアンプリコンが存在する(ただし収率は低い。Y軸が同一でないことに注意)ことが明らかである。さらに、1ステップPCRにおいてさらなるアンプリコンが存在していたことが観察された。これらの余分のアンプリコンは、最終アンプリコンの一端または両端にMIDプライマーを欠くアンプリコンを生じる第1のPCR生成物アンプリコンが相対的に多く存在した結果である。しかし、このデータは、rcMID+P5/P7システムによって同じ単一の反応混合物中(1ステップ反応)で両方の増幅を実施できることを明らかに示している。
【0236】
<ユニバーサルプライマーの産生を遅延させることおよび第1の増幅反応の程度を制御することによって、単一の反応混合物中のマルチステップ増幅反応を可能にする>
[実施例3]
(1ステップ反応)
それぞれが(最初の標的DNA分子中の標的配列にハイブリダイズする)プライマー領域と、rcMID+p5/p7プライマーと組み合わせたタグ配列(第1のPCRプライマー対)との間にRNA塩基を有するフォワードプライマーおよびリバースプライマー(即ちプライマー対)が、1ステップ反応(即ち同じ反応容器中で第1の増幅と第2の増幅の両方が並列に起こる反応)において、rcMID+p5/p7プライマーと組み合わせた、RNAを含まない第1のPCRプライマー対と比較して、望ましくない短いPCR生成物の産生が少ないことを示すために、概念実証実験を実施した。
【0237】
プライマー領域とBRCA腫瘍MASTRプラスDx市販アッセイ(www.multiplicom.com/product/brca-tumor-mastr-plus-dx)の第1部分からのタグとの間にRNA塩基を含み、または含まない第1のPCRプライマー対を、単一のチューブ中でrcMID+p5/p7プライマーと混合した。好適なアダプターを含む第2ラウンドの増幅生成物を産生させることを意図した1ステップPCRを、単一の反応で30PCRサイクルより多く、実施した。両方の実験について、50ngのインプットゲノムDNAを用いた。第1のプライマーのプライマー濃度は、標準の(標的特異的)マルチプレックスPCR反応で用いたプライマー濃度と比較して1:8であった。熱安定性RNase H2(IDT)も、反応あたり9.1mU(0.45mU/μl)の濃度で反応に加えた。
【0238】
(結果)
概念実証実験の結果を図17および図18に示す。これらの図は断片解析の結果を表し、アンプリコンの長さをX軸に、それぞれのピークの高さとして表したそれぞれのアンプリコンの収率をY軸に示す(ピークが高ければ収率が良い)。
【0239】
RNA塩基を含む第1のプライマー対を用いない1ステップ反応では主として第1のプライマー対による増幅に対応する増幅生成物が得られることが予想された。これらの増幅生成物はユニバーサル(MID)プライマーを用いて産生される第2の増幅の後で生じる所望の増幅生成物より短い。図17から明らかなように、この結果がまさに観察された。
【0240】
上のパネル(図17A)は、第1のプライマー対にRNA塩基を含まない1ステップPCRの断片解析の結果を示す。中央のパネル(図17B)は同じ結果であるが長方形(灰色のバンド)を重ねて示し、それぞれの長方形が第1のPCR生成物の予想される大きさを表す。図17Bから、形成された全てのアンプリコンが第1の(標的特異的)増幅から予想される短いアンプリコンであった一方、ユニバーサルPCRからの第2ラウンドのアンプリコンが欠失していたことが明らかである。図17Cはこれを確認しており、ここで長方形(灰色のバンド)はユニバーサルPCRの後のPCR生成物の予想される大きさを表している。
【0241】
対照的に、RNA塩基を含む第1のプライマー対を用いた1ステップ反応では主として第2ラウンドのユニバーサルPCRから生じる所望の増幅生成物が得られることが予想された。これらの増幅生成物は第1のプライマー対を用いて産生される予想される断片より長い。図18から明らかなように、この結果がまさに観察された。
【0242】
上のパネル(図18A)は、第1のプライマー対にRNA塩基を含む1ステップPCRの断片解析の結果を示す。下のパネル(図18C)は同じ結果であるが長方形(灰色のバンド)を重ねて示し、それぞれの長方形がユニバーサルPCR生成物の予想される大きさを表す。図18Cから、形成されたアンプリコンの大部分が第2ラウンドのユニバーサル増幅から予想される長いアンプリコンであった一方、第1のPCRからのアンプリコンが欠失していたことが明らかである。図18Bはこれを確認しており、ここで長方形(灰色のバンド)は第1のPCRの後のPCR生成物の予想される大きさを表している。
【0243】
この概念実証実験は、第1のプライマー対にRNA塩基を添加することによって1ステップ反応を介する標的特異的増幅およびユニバーサル増幅の実施が可能になり、所望のユニバーサルPCRの大きさの生成物の形成がもたらされることを明らかに示している。対照的に、第1のプライマー対に含まれるRNA塩基がない場合には、第1のPCRから予想される増幅生成物のみが観察された。
【0244】
本発明は本明細書に記載した具体的な実施形態による範囲に限定されるべきではない。まさに、本明細書に記載した改変に加えて、本発明の種々の改変は、上記の説明および添付した図面から当業者には明白になる。そのような改変は添付した特許請求の範囲に含まれることが意図されている。さらに、本明細書に記載した全ての実施形態は広く適用可能であり、矛盾のない他の全ての実施形態と必要に応じて組合せ可能であると考えられる。
【0245】
本明細書に種々の出版物を引用したが、その開示は参照により全体として組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16
図17
図18
【配列表】
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