(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20220406BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20220406BHJP
F25B 41/42 20210101ALI20220406BHJP
【FI】
F25B1/00 331E
F25B1/00 101E
F25B43/00 L
F25B41/42
(21)【出願番号】P 2020547626
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035376
(87)【国際公開番号】W WO2020065712
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今任 尚希
(72)【発明者】
【氏名】三浦 賢
(72)【発明者】
【氏名】伊内 啓
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕文
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143614(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第02134939(DE,A)
【文献】実開平04-061262(JP,U)
【文献】特開平05-322383(JP,A)
【文献】中国実用新案第205784060(CN,U)
【文献】国際公開第2018/047511(WO,A1)
【文献】特開2000-179968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 43/00
F25B 41/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、
凝縮器と、
室内膨張弁と、
前記凝縮器と前記室内膨張弁との間に配置される過冷却回路と、
蒸発器と、
前記圧縮機、前記凝縮器、前記過冷却回路、前記室内膨張弁、および前記蒸発器を接続して冷媒を流通させる冷媒管と、を備え、
前記冷媒管は、前記圧縮機、前記凝縮器、前記過冷却回路、前記室内膨張弁、および前記蒸発器に前記冷媒を循環させる主回路管と、前記過冷却回路と前記室内膨張弁とを繋ぐ前記主回路管の途中から分岐して前記圧縮機へ前記冷媒を迂回させるバイパス回路管と、前記主回路管と前記バイパス回路管との分岐部と、を有し、
前記分岐部は、上流管部と、前記上流管部から上方へ向かって分岐して前記室内膨張弁へ向かう主回路分岐管部と、前記上流管部から下方へ向かって分岐して前記過冷却回路へ向かうバイパス回路分岐管部と、を有
し、
前記主回路分岐管部と前記バイパス回路分岐管部とは、ひと続きの直管であり、
前記上流管部は、前記直管に突き立てられ、
前記直管の流路断面積は、前記上流管部の流路断面積の2倍以上ある冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記上流管部は、実質的に水平方向へ延び、
前記主回路分岐管部および前記バイパス回路分岐管部は実質的に鉛直方向へ延びている請求項
1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記上流管部の中心線の延長線は、前記主回路分岐管部の中心線および前記バイパス回路分岐管部の中心線に交差しない請求項1
または2に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過冷却回路と、過冷却回路の上流側に設けられる気液分離器と、を備える冷凍サイクル装置が知られている。
【0003】
従来の冷凍サイクル装置は、気液分離器で気液二層状態の冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、分離した液冷媒のみを過冷却回路に流入させ、分離したガス冷媒を圧縮機へ迂回させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の冷凍サイクル装置は、気液分離器、および分離したガス冷媒を圧縮機へ迂回させる配管を要する。これら気液分離器およびバイパス管は、冷凍サイクル装置のコストアップや、配管系統の複雑化を招く。
【0006】
そこで、本発明は、容易な構成で過冷却回路の性能を十分に発揮可能な冷凍サイクル装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置は、圧縮機と、凝縮器と、室内膨張弁と、前記凝縮器と前記室内膨張弁との間に配置される過冷却回路と、蒸発器と、前記圧縮機、前記凝縮器、前記過冷却回路、前記室内膨張弁、および前記蒸発器を接続して冷媒を流通させる冷媒管と、を備え、前記冷媒管は、前記圧縮機、前記凝縮器、前記過冷却回路、前記室内膨張弁、および前記蒸発器に前記冷媒を循環させる主回路管と、前記過冷却回路と前記室内膨張弁とを繋ぐ前記主回路管の途中から分岐して前記圧縮機へ前記冷媒を迂回させるバイパス回路管と、前記主回路管と前記バイパス回路管との分岐部と、を有し、前記分岐部は、上流管部と、前記上流管部から上方へ向かって分岐して前記室内膨張弁へ向かう主回路分岐管部と、前記上流管部から下方へ向かって分岐して前記過冷却回路へ向かうバイパス回路分岐管部と、を有し、前記主回路分岐管部と前記バイパス回路分岐管部とは、ひと続きの直管であり、前記上流管部は、前記直管に突き立てられ、前記直管の流路断面積は、前記上流管部の流路断面積の2倍以上ある。
【0010】
本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の前記上流管部は、実質的に水平方向へ延び、前記主回路分岐管部および前記バイパス回路分岐管部は実質的に鉛直方向へ延びていることが好ましい。
【0011】
本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の前記上流管部の中心線の延長線は、前記主回路分岐管部の中心線および前記バイパス回路分岐管部の中心線に交差しないことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の模式図。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の過冷却回路の模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の過冷却回路の熱交換量と比較例の過冷却回路の熱交換量とを比べた図。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の分岐部の他の例を示す断面図。
【
図5】本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の分岐部の他の例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る冷凍サイクル装置の実施形態について、
図1から
図5を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当する構成には同一の符号が付されている。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の模式図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、例えば空気調和機である。冷凍サイクル装置1は、圧縮機2と、室外熱交換器3と、室外膨張弁9と、過冷却回路5と、室内膨張弁6と、室内熱交換器7と、圧縮機2、室外熱交換器3、過冷却回路5、室内膨張弁6、および室内熱交換器7を接続して冷媒を流通させる冷媒管8と、を備えている。
【0016】
また、冷凍サイクル装置1は、圧縮機2から吐出される冷媒を室外熱交換器3および室内熱交換器7のいずれか一方へ送り、室外熱交換器3および室内熱交換器7のいずれか他方を通過した冷媒を再び圧縮機2に吸い込ませる四方弁11と、四方弁11と圧縮機2との間の冷媒管8に設けられるアキュムレータ12と、を備えている。
【0017】
さらに、冷凍サイクル装置1は、家屋やビル等の建物の外側に設置される室外ユニット15と、建物の内側に設置される室内ユニット16と、を備えている。本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、例えば1つの室外ユニット15と、室外ユニット15に並列に接続される複数の室内ユニット16と、を備えている。
【0018】
室外ユニット15には、圧縮機2、室外熱交換器3、室外膨張弁9、過冷却回路5、四方弁11、およびアキュムレータ12が収容されている。室外ユニット15は、室外ユニット15の外側から空気を吸い込み、室外熱交換器3との間で熱交換した空気を室外ユニット15の外側へ吹き出させる室外送風機21が設けられている。室外送風機21は、室外熱交換器3に対向するプロペラファン22と、プロペラファン22を回転駆動させる電動機23と、を備えている。
【0019】
室内ユニット16には、室内膨張弁6、および室内熱交換器7が収容されている。室内ユニット16は、室内ユニット16の外側から空気を吸い込み、室内熱交換器7との間で熱交換した空気を室内ユニット16の外側へ吹き出させる室内送風機25が設けられている。室内送風機25は、室内熱交換器7に対向するプロペラファン26と、プロペラファン26を回転駆動させる電動機27と、を備えている。
【0020】
室外熱交換器3および室内熱交換器7は、例えばフィンアンドチューブ型である。
【0021】
室外熱交換器3は、冷凍サイクル装置1を冷房運転する場合には、凝縮器として機能し、冷凍サイクル装置1を暖房運転する場合には、蒸発器として機能する。
【0022】
室内熱交換器7は、冷凍サイクル装置1を冷房運転する場合には、蒸発器として機能し、冷凍サイクル装置1を暖房運転する場合には、凝縮器として機能する。
【0023】
圧縮機2は、冷媒を圧縮し、昇圧して吐出する。圧縮機2は、例えば公知のインバータ制御によって運転周波数を変更可能なものであっても良いし、運転周波数を変更できないものであっても良い。
【0024】
室内膨張弁6および室外膨張弁9は、例えばPMV(Pulse Motor Valve)である。室内膨張弁6および室外膨張弁9は、弁開度を調節できる。室内膨張弁6は、主に冷房運転時に膨張弁として機能し、主に暖房運転時に室内熱交換器7の過冷却度の調整弁として機能する。一方、室外膨張弁9は、主に暖房運転時に膨張弁として機能し、主に冷房運転時に室外熱交換器3の過冷却度の調整弁として機能する。図示は省略するが、室内膨張弁6および室外膨張弁9は、例えば、貫通孔を有する弁本体と、貫通孔に対して進退可能なニードルと、ニードルを進退させる動力源と、を備えている。貫通孔をニードルで塞いだ場合に、室内膨張弁6および室外膨張弁9は、冷凍サイクル装置1の冷媒の流通を止める(遮断する)。このとき、室内膨張弁6および室外膨張弁9は閉じた状態であり、室内膨張弁6および室外膨張弁9の開度は最も小さい。ニードルが貫通孔から最も離れた場合に、冷凍サイクル装置1の冷媒の流通量は、最大化する。このとき、室内膨張弁6および室外膨張弁9の開度は最も大きい。
【0025】
動力源は、例えば、ステッピングモーターである。ステッピングモーターに入力されるパルス数が0パルスのとき、室内膨張弁6および室外膨張弁9は閉じる。ステッピングモーターに入力されるパルス数が最大パルスのとき、室内膨張弁6および室外膨張弁9は最大開度に達する。最大パルス数は、例えば数百パルスであり、例えば500パルスである。
【0026】
冷媒管8は、圧縮機2、アキュムレータ12、四方弁11、室外熱交換器3、室外膨張弁9、過冷却回路5、室内膨張弁6、および室内熱交換器7を接続している。冷媒管8は、圧縮機2、アキュムレータ12、四方弁11、室外熱交換器3、室外膨張弁9、過冷却回路5、室内膨張弁6、および室内熱交換器7に冷媒を循環させる主回路管31と、過冷却回路5と室内膨張弁6とを繋ぐ主回路管31の途中から分岐して圧縮機2へ冷媒を迂回させるバイパス回路管32と、主回路管31からバイパス回路管32を分岐させる分岐部33と、を備えている。
【0027】
主回路管31は、圧縮機2の吐出側と四方弁11とを繋ぐ第一主冷媒管31aと、圧縮機2の吸込側と四方弁11とを繋ぐ第二主冷媒管31bと、四方弁11と室外熱交換器3とを繋ぐ第三主冷媒管31cと、室外熱交換器3と室内熱交換器7とを繋ぐ第四主冷媒管31dと、室内熱交換器7と四方弁11とを繋ぐ第五主冷媒管31eと、を含んでいる。
【0028】
第四主冷媒管31dは、室外ユニット15の第一配管接続部31fと室内ユニット16の第二配管接続部31gとを経て室外熱交換器3と室内熱交換器7とを繋いでいる。
【0029】
第五主冷媒管31eは、室内ユニット16の第三配管接続部31hと室外ユニット15の第四配管接続部31iとを経て室内熱交換器7と四方弁11とを繋いでいる。
【0030】
分岐部33は、室外熱交換器3と室外ユニット15の第一配管接続部31fとを繋ぐ第四主冷媒管31dの途中に配置されている。
【0031】
アキュムレータ12は、第二主冷媒管31bの途中に設けられている。
【0032】
室外膨張弁9、過冷却回路5および室内膨張弁6は、第四主冷媒管31dの途中に設けられている。過冷却回路5は、室内膨張弁6よりも室外熱交換器3に近い。室外膨張弁9は、過冷却回路5よりも室外熱交換器3に近い。室内膨張弁6は、過冷却回路5よりも室内熱交換器7に近い。換言すると、室外膨張弁9は、室外熱交換器3と過冷却回路5との間に配置されている。過冷却回路5は、室外熱交換器3と室内膨張弁6との間に配置されている。過冷却回路5は、室外膨張弁9と室内膨張弁6との間に配置されている。また、室外膨張弁9は、室外熱交換器3と室外ユニット15の第一配管接続部31fとを繋ぐ第四主冷媒管31dの途中に配置されている。過冷却回路5は、室外熱交換器3と室外ユニット15の第一配管接続部31fとを繋ぐ第四主冷媒管31dの途中に配置されている。室内膨張弁6は、室内ユニット16の第二配管接続部31gと室内熱交換器7とを繋ぐ第四主冷媒管31dの途中に配置されている。
【0033】
四方弁11は、冷媒管8における冷媒の流れの向きを切り替える。冷凍サイクル装置1を冷房運転(
図1中、実線で示す冷媒の流れ)して建物内の室温を下降させる場合、四方弁11は、第一主冷媒管31aから第三主冷媒管31cへ冷媒を流通させ、かつ第五主冷媒管31eから第二主冷媒管31bへ冷媒を流通させる。冷凍サイクル装置1を暖房運転(
図1中、破線で示す冷媒の流れ)して建物内の室温を上昇させる場合、四方弁11は、第一主冷媒管31aから第五主冷媒管31eへ冷媒を流通させ、かつ第三主冷媒管31cから第二主冷媒管31bへ冷媒を流通させる。
【0034】
図2は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の過冷却回路の模式図である。
【0035】
図1および
図2に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1の過冷却回路5は、バイパス回路管32と、過冷却用膨張弁41と、過冷却熱交換器42と、を備えている。
【0036】
バイパス回路管32は、冷房運転時に室外熱交換器3から室内熱交換器7へ向かう主回路管31の冷媒を分岐させて、室内膨張弁6および室内熱交換器7を介さずに、アキュムレータ12へ迂回させる。バイパス回路管32は、分岐部33、つまり室外熱交換器3と室外ユニット15の第一配管接続部31fとを繋ぐ第四主冷媒管31dの途中から分岐している。バイパス回路管32は、アキュムレータ12と四方弁11とを繋ぐ第二主冷媒管31bの途中で主回路管31の第二主冷媒管31bに合流している。
【0037】
過冷却用膨張弁41は、分岐部33からバイパス回路管32に流れ込んだ冷媒を減圧する。
【0038】
過冷却熱交換器42は、過冷却用膨張弁41で減圧された冷媒と主回路管31(詳細には第四主冷媒管31dにおける分岐部33よりも上流部分)を流れる冷媒との間で熱交換を行い、主回路管31を流れる冷媒を過冷却する。
【0039】
バイパス回路管32は、分岐部33と過冷却用膨張弁41とを繋ぐ第一迂回冷媒管32aと、過冷却用膨張弁41と過冷却熱交換器42とを繋ぐ第二迂回冷媒管32bと、過冷却熱交換器42と主回路管31の第二主冷媒管31bとを繋ぐ第三迂回冷媒管32cと、を含んでいる。
【0040】
また、冷凍サイクル装置1は、四方弁11に信号線(図示省略)を介して電気的に接続される制御部45を備えている。制御部45は、運転周波数を変更可能な圧縮機2に接続されていても良い。
【0041】
制御部45は、中央演算処理装置(図示省略)と、中央演算処理装置が実行する各種演算プログラム、パラメータなどを記憶する記憶装置(図示省略)と、を備えている。制御部45は、各種制御プログラムを補助記憶装置から主記憶装置へ読み込み、主記憶装置に読み込まれた各種制御プログラムを中央演算処理装置で実行する。
【0042】
制御部45は、例えばリモートコントローラーのような入力装置に入力される要求に基づいて四方弁11の状態を切り替えて、冷凍サイクル装置1の冷房運転と暖房運転とを切り替える。
【0043】
また、制御部45は、室外熱交換器3と過冷却回路5との間の第四主冷媒管31dに流れる冷媒の温度を測定する第一温度センサ46、過冷却回路5と第一配管接続部31fとの間の第四主冷媒管31dに流れる冷媒の温度を測定する第二温度センサ47、第三迂回冷媒管32cに流れる冷媒の温度を測定する第三温度センサ48、および吸込飽和温度に基づいて、過冷却用膨張弁41の開度を制御する。
【0044】
吸込飽和温度は、第四主冷媒管31dに流れる冷媒の圧力を測定する吸込圧力センサ49の値を換算して求められる。
【0045】
冷房運転の際、冷凍サイクル装置1は、圧縮された高温高圧の冷媒を圧縮機2から吐出し、四方弁11を介してこの冷媒を室外熱交換器3へ送る。室外熱交換器3は、建物の外の空気とチューブ内を通る冷媒との間で熱交換を行い、冷媒を冷却して高圧の液状態にする。つまり、冷房運転時、室外熱交換器3は、凝縮器として機能する。室外熱交換器3を通過した冷媒は、室内膨張弁6を通過して減圧され低圧の気液二相冷媒になって室内熱交換器7に到達する。室内熱交換器7は、建物の中の空気とチューブ内を通る冷媒との間で熱交換を行い、建物内の空気を冷却する。このとき、室内熱交換器7は、冷媒を蒸発させて気体状態にする蒸発器として機能する。室内熱交換器7を通過した冷媒は、圧縮機2へ吸い込まれて戻る。
【0046】
他方、暖房運転の際、冷凍サイクル装置1は、四方弁11を反転させて冷凍サイクルに冷房時の冷媒の流れと逆向きの冷媒の流れを生じさせ、室内熱交換器7を凝縮器として機能させ、室外熱交換器3を蒸発器として機能させる。
【0047】
なお、冷凍サイクル装置1は、四方弁11を備えない、冷却専用のものであってもよい。この場合、圧縮機2の吐出側は冷媒管8を通じて室外熱交換器3に接続され、圧縮機2の吸込側は冷媒管8を通じて室内熱交換器7に接続される。
【0048】
そして、過冷却回路5は、室外熱交換器3から室内膨張弁6へ向かう冷媒の乾き度を低減させるため、また室内ユニット16を循環する冷媒の量を低減するために用いられる。
【0049】
過冷却回路5は、一般的には冷房運転で使用される。過冷却回路5は、室外熱交換器3で凝縮された液冷媒の一部を分岐部33で分岐し、過冷却用膨張弁41で低圧膨張させる。過冷却熱交換器42は、過冷却用膨張弁41で低圧膨張した二相冷媒と主回路管31(詳細には第四主冷媒管31dにおける分岐部33よりも上流部分)を流れる冷媒とを熱交換させて、主回路管31を流れる冷媒を冷却する。
【0050】
ところで、室外熱交換器3で冷媒の一部が凝縮されず、ガス冷媒のまま第四主冷媒管31dに流れ出た場合には、過冷却回路5に二相冷媒が流入する虞がある。一般的に、過冷却用膨張弁41は、二相冷媒を流通させるための十分な配管径を有していない。したがって、過冷却回路5は、冷媒の流通量を十分に確保できない。そして、過冷却回路5の熱交換量は低下する。過冷却回路5の熱交換量が低下した場合には、主回路管31の第四主冷媒管31dにガス冷媒が混入し、ガス冷媒が室内ユニット16に送られてしまう。
【0051】
そこで、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1の分岐部33は、上流管部51と、上流管部51から上方(
図2中の実線矢印U)へ向かって分岐して室内膨張弁6へ向かう主回路分岐管部52と、上流管部51から下方(
図2中の実線矢印D)へ向かって分岐して過冷却回路5へ向かうバイパス回路分岐管部53と、を備えている。上流管部51および主回路分岐管部52は、主回路管31の第四主冷媒管31dの一部に相当し、バイパス回路分岐管部53は、バイパス回路管32の第一迂回冷媒管32aの一部に相当する。
【0052】
主回路分岐管部52とバイパス回路分岐管部53とは、ひと続きの直管55である。換言すると、直管55の一部である主回路分岐管部52は、主回路管31の第四主冷媒管31dの一部に相当し、直管55の残部であるバイパス回路分岐管部53は、バイパス回路管32の第一迂回冷媒管32aの一部に相当する。直管55は、主回路分岐管部52に相当する部位からバイパス回路分岐管部53に相当する部位に掛けて実質的に一様な流路断面積を有している。主回路管31の第四主冷媒管31dおよびバイパス回路管32の第一迂回冷媒管32aの境界は、直管55と上流管部51との合流部分である。
【0053】
なお、第四主冷媒管31dは、直管55の一部に相当する部位を除けば屈曲していても良い。また、第一迂回冷媒管32aは、直管55の残部に相当する部位を除けば屈曲していても良い。
【0054】
主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53は、実質的に鉛直方向へ延びている。主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53は、鉛直線VLに対して30度(±30度)の範囲で傾いていても良い。
【0055】
上流管部51は、直管55に突き立てられている。換言すると、上流管部51は、直管55の径方向から直管55に突き当たっている。上流管部51は、実質的に水平方向へ延びている。上流管部51は、水平面HPに対して45度(±45度)の範囲で傾いていても良い。なお、上流管部51と直管55とがなす角θは、45度以上であることが好ましい。
【0056】
例えば、上流管部51が直管55の径方向から直管55に突き当たっている場合には、上流管部51と直管55とがなす角θは90度である。この場合、上流管部51および直管55は、T字を90度倒したような形状を呈する。
【0057】
直管55の流路断面積PA1は、上流管部51の流路断面積PA2の2倍以上ある。
【0058】
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1の分岐部33は、
図2中の実線矢印Aの方向へ主流(主回路管31を流れる冷媒の流れ)を生じさせ、
図2中の実線矢印Bの方向へ迂回流(過冷却回路5を流れる冷媒の流れ)を生じさせる。過冷却回路5へ迂回する冷媒量は、バイパス回路管32の内径および過冷却用膨張弁41の弁開度によって決まる。過冷却回路5へ迂回する冷媒量は、例えば、主流の0パーセント(過冷却用膨張弁41全閉時)から20パーセント(過冷却用膨張弁41全開時)である。そのため、第一迂回冷媒管32a内では、浮力と重力との影響によって、ガス冷媒は上方へと、液冷媒は下方へと分離される。そして、過冷却回路5へ流れ込む液冷媒の割合が増加し、過冷却回路5へ流れ込むガス冷媒の割合が減少する。
【0059】
一度、過冷却回路5へ流れる液冷媒の流量が確保されると、室外熱交換器3から気液二相冷媒が流出したとしても、過冷却回路5で気液二相冷媒を液冷媒に凝縮させることが可能になる。つまり、室内ユニット16側へのガス冷媒の流出は、抑制される。
【0060】
直管55の流路断面積が上流管部51の流路断面積の2倍以上ある場合には、直管55における冷媒の流速が抑制される。この抑制効果は、第一迂回冷媒管32aにおける冷媒の流速(つまり迂回流の流速)を第四主冷媒管31dにおける冷媒の流速(つまり主流の流速)の例えば1割程度に抑える。この冷媒の流速の抑制は、ガス冷媒の浮力を液冷媒の流れから受ける力より大きくする。そのため、気液分離の効果がより顕著に表れる。
【0061】
図3は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の過冷却回路の熱交換量と比較例の過冷却回路の熱交換量とを比べた図である。
【0062】
図3中の実線αは、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1の過冷却回路5における乾き度と熱交換量との関係を表している。
図3中の破線βは、比較例の冷凍サイクル装置の過冷却回路における乾き度と熱交換量との関係を表している。
【0063】
ここで先ず、比較例の冷凍サイクル装置の分岐部は、室外熱交換器3と室内熱交換器7とを繋いで水平方向に延びる主回路配管(第四主冷媒管31dに相当する。)と、主回路配管の下面から下方へ垂れ下がって分岐し、過冷却用膨張弁41に繋がるバイパス回路管(第一迂回冷媒管32aに相当する。)と、を備えているものとする。換言すると、比較例の冷凍サイクル装置は、主回路配管、および主回路配管の直管部分から垂れ下がるバイパス回路管が描くT字形の分岐部を備えている。
【0064】
図3に示すように、比較例の冷凍サイクル装置は、乾き度が零値以下でなければ過冷却膨張弁における流量を確保できない。そのため、比較例の過冷却回路は、乾き度が零値を超えると熱交換量が不足する。
【0065】
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、分岐部33の気液分離効果によって、乾き度が零値より大きい気液二相領域であっても、過冷却用膨張弁41に液冷媒を流すことができる。そのため、本実施形態に係る過冷却回路5は、乾き度が零値より大きい場合であっても、熱交換量を上昇させることが可能である。
【0066】
図4および
図5は、本発明の実施形態に係る冷凍サイクル装置の分岐部の他の例を示す断面図である。
図4は、分岐部33の上流管部51の中心を通り、かつ主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53の中心に直交する断面図である。
図5は、主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53の中心を通る断面図である。
【0067】
図4および
図5に示すように、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は分岐部33Aを備えている。分岐部33Aの上流管部51の中心線Caの延長線は、主回路分岐管部52の中心線Cbおよびバイパス回路分岐管部53の中心線Ccに交差しない。換言すると、上流管部51の中心線Caの延長線は、主回路分岐管部52の中心線Cbおよびバイパス回路分岐管部53の中心線Ccに対して、主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53の径方向外側へ偏倚している。
【0068】
なお、上流管部51は、
図4の断面において、主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53の接線TLに沿って接続されていることが好ましい。
【0069】
また、上流管部51の管径は、主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53の管径の2分の1以下であることが好ましい。
【0070】
分岐部33Aでは、上流管部51から直管55(主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53)に流れ込む冷媒が直管55内に円周方向の流れ(実線矢印R)を生じさせる。この旋回流Rは、上流管部51と直管55との分岐部分において遠心力によるガス冷媒gと液冷媒lとの分離効果を生じる。また、旋回流Rは、直管55における長手方向の冷媒の流速を低下させる。この流速の低下は、ガス冷媒を上方へ浮き上がらせ易くし、液冷媒を下方へ落下(降下)させ易くする。つまり、過冷却回路5への液冷媒の供給割合が向上する。
【0071】
本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上流管部51から上方へ向かって分岐して室内膨張弁6へ向かう主回路分岐管部52と、上流管部51から下方へ向かって分岐して過冷却回路5へ向かうバイパス回路分岐管部53と、を有する分岐部33、33Aを備えている。そのため、冷凍サイクル装置1は、室外熱交換器3から気液二相状態の冷媒が流れ出た場合であっても、過冷却回路5へ流れ込む液冷媒の割合を増加させ、過冷却回路5へ流れ込むガス冷媒の割合を減少させる。そして、一度、過冷却回路5へ流れる液冷媒の流量が確保されると、室外熱交換器3から気液二相状態の冷媒が流れ出たとしても、過冷却回路5で気液二相状態の冷媒を液冷媒に凝縮させることが可能になる。つまり、冷凍サイクル装置1は、簡便な構造の分岐部33、33Aによって、室内ユニット16側へのガス冷媒の流出を抑制できる。
【0072】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53としてのひと続きの直管55と、直管55に突き立てられる上流管部51と、を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1は、極めて簡便な構造の分岐部33、33Aによって、室内ユニット16側へのガス冷媒の流出を抑制できる。
【0073】
さらに、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、上流管部51の流路断面積の2倍以上の流路断面積を有する直管55を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1は、直管55における冷媒の流速を抑制できる。この抑制効果は、第一迂回冷媒管32aにおける冷媒の流速を第四主冷媒管31dにおける冷媒の流速よりも大きく低減する。この冷媒の流速の低減は、ガス冷媒の浮力を液冷媒の流れから受ける力より大きくする。つまり、冷凍サイクル装置1は、気液分離の効果をより顕著に発揮できる。
【0074】
また、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、実質的に水平方向へ延びる上流管部51と、実質的に鉛直方向へ延びる主回路分岐管部52およびバイパス回路分岐管部53と、を備えている。そのため、冷凍サイクル装置1は、分岐部33、33Aに流れ込む気液二相状態の冷媒をより確実にガス冷媒と液冷媒に分離し、かつ分離した液冷媒を過冷却回路5へ導入できる。
【0075】
さらに、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、主回路分岐管部52の中心線およびバイパス回路分岐管部53の中心線に交差しない、上流管部51の中心線の延長線を有している。そのため、冷凍サイクル装置1は、分岐部33Aに旋回流を生じさせ、重力によるガス冷媒と液冷媒との分離効果に加えて、遠心力によるガス冷媒と液冷媒との分離効果を相乗させることができる。
【0076】
したがって、本実施形態に係る冷凍サイクル装置1によれば、容易な構成の分岐部33、33Aによって過冷却回路5の性能を十分に発揮することができる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…冷凍サイクル装置、2…圧縮機、3…室外熱交換器、5…過冷却回路、6…室内膨張弁、7…室内熱交換器、8…冷媒管、9…室外膨張弁、11…四方弁、12…アキュムレータ、15…室外ユニット、16…室内ユニット、21…室外送風機、22…室外送風機のプロペラファン、23…室外送風機の電動機、25…室内送風機、26…室内送風機のプロペラファン、27…室内送風機の電動機、31…主回路管、31a…第一主冷媒管、31b…第二主冷媒管、31c…第三主冷媒管、31d…第四主冷媒管、31e…第五主冷媒管、31f…第一配管接続部、31g…第二配管接続部、31h…第三配管接続部、31i…第四配管接続部、32…バイパス回路管、32a…第一迂回冷媒管、32b…第二迂回冷媒管、32c…第三迂回冷媒管、33、33A…分岐部、41…過冷却用膨張弁、42…過冷却熱交換器、45…制御部、46…第一温度センサ、47…第二温度センサ、48…第三温度センサ、51…上流管部、52…主回路分岐管部、53…バイパス回路分岐管部、55…直管。