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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-05
(45)【発行日】2022-04-13
(54)【発明の名称】電子蒸気供給装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/51 20200101AFI20220406BHJP
   A24F 40/10 20200101ALI20220406BHJP
【FI】
A24F40/51
A24F40/10
【請求項の数】 25
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021000667
(22)【出願日】2021-01-06
(62)【分割の表示】P 2018086172の分割
【原出願日】2013-10-09
(65)【公開番号】P2021058213
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】1218816.5
(32)【優先日】2012-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519138265
【氏名又は名称】ニコベンチャーズ トレーディング リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100183782
【弁理士】
【氏名又は名称】轟木 哲
(72)【発明者】
【氏名】ロード、クリストファー
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特許第5041550(JP,B2)
【文献】国際公開第2011/137453(WO,A2)
【文献】特表2012-506263(JP,A)
【文献】特開平11-2577(JP,A)
【文献】特開2007-192802(JP,A)
【文献】国際公開第2011/067877(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/51
A24F 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池及びコンピューターを備え、前記コンピューターがコンピューター処理装置、記憶装置及び入出力手段を含む電子蒸気供給装置であって、さらに圧力センサー及び温度センサーを備え、
前記温度センサー及び前記圧力センサーが複合型センサーを形成し、
前記複合型センサーは、使用時に、前記温度センサーから温度読み取り値を、前記圧力センサーから圧力読み取り値をそれぞれ取得し、前記圧力読み取り値を調整して前記温度読み取り値を補償し補償された圧力読み取り値を出力するように構成される電子蒸気供給装置。
【請求項2】
前記電子蒸気供給装置が電子タバコである、ことを特徴とする請求項1に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項3】
前記コンピューターがマイクロプロセッサーである、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項4】
前記複合型センサーは、複合型センサーが補償された圧力読み取り値を直接出力できるように内部にマイクロプロセッサーを含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の電子蒸気供給装置。
【請求項5】
前記複合型センサーからの出力はデジタル式であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の電子蒸気供給装置
【請求項6】
前記電子蒸気供給装置は第1端部及び第2端部を備え、前記第1端部は吸い口端部であり、前記第2端部は先端部であって、前記温度センサーが前記先端部近くに設置されている、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項7】
前記コンピューターが前記先端部近くに設置されている、ことを特徴とする請求項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項8】
前記複合型センサーが前記先端部近くに設置されている、ことを特徴とする請求項または請求項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項9】
前記温度センサーは、使用時に周囲温度を測定するように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項10】
前記圧力センサーは、使用時に周囲圧力を測定するように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項11】
前記複合型センサーが校正済みセンサーである、ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項12】
前記校正済みセンサーが圧力及び温度に対して校正されている、ことを特徴とする請求項11に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項13】
前記校正済みセンサーが大気条件で用いるように校正されている、ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項14】
前記複合型センサーが単一の電子部品として構成される、ことを特徴とする請求項1乃13のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項15】
前記複合型センサーは、使用時に、前記温度及び前記圧力を求め、電圧出力と前記測定圧力との間に略線形関係を与えるように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃14のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項16】
前記コンピューターは、使用時に、前記圧力センサーで測定した圧力が減少してしきい圧力を下回ったとき加熱素子に電流を印加するように構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項17】
前記電子蒸気供給装置は制御部及び気化器を備え、前記制御部は前記動力電池、前記コンピューター、前記圧力センサー及び前記温度センサーを含み、前記気化器は加熱素子を含む、ことを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項18】
前記電子蒸気供給装置は、さらに液体貯蔵部を備え、使用時に前記加熱素子に液体を供給するように構成されている、ことを特徴とする請求項17に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項19】
前記コンピューターは、使用時に、前記気化器が所定量の液体を気化させるように構成されている、ことを特徴とする請求項18に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項20】
前記コンピューターは、使用時に、前記気化器が単位時間当たりに所定量の液体を気化させるように構成されている、ことを特徴とする請求項18または請求項19に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項21】
前記コンピューターは、使用時に、前記気化器が毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている、ことを特徴とする請求項18乃至20のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項22】
前記コンピューターは、使用時に、前記気化器が単位時間当たりに毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている、ことを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項23】
前記コンピューターは、使用時に、前記圧力センサーから圧力読み取り値を取得し、前記気化を調整して前記気化器が単位時間当たりに毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている、ことを特徴とする請求項18乃至22のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項24】
前記コンピューターは、使用時に、前記圧力センサーから圧力読み取り値を取得し、前記圧力読み取り値に基づいて前記加熱素子の加熱温度を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項17乃至23のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【請求項25】
前記コンピューターは、使用時に、前記圧力センサーから圧力読み取り値を取得し、前記圧力読み取り値に基づいて前記気化器に印加する電流を調整するように構成されている、ことを特徴とする請求項17乃至24のいずれか1項に記載の電子蒸気供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電子蒸気供給装置に関し、詳しくはそれに限定するものではないが、本明細書は、電子タバコなどの電子蒸気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子蒸気供給装置は、典型的には紙巻きタバコの大きさであり、利用者が吸い口に吸引力を加えることにより、液体貯蔵部からニコチン蒸気を吸入できるように機能するものである。一部の電子蒸気供給装置は、利用者が吸引力を加えたときに作動し、加熱コイルを熱して液体を気化させる圧力センサーを備える。電子蒸気供給装置には、電子タバコが含まれる。
【発明の概要】
【0003】
動力電池及びコンピューターを備え、コンピューターがコンピューター処理装置、記憶装置及び入出力手段を含む電子蒸気供給装置であって、さらに圧力センサー及び温度センサーを備える電子蒸気供給装置。
【0004】
温度センサーを備えることにより、装置が温度読み取り値を用いることが可能になるため、装置がより高性能になって、制御動作と安全動作の両方が実現されるという利点がある。
【0005】
好ましくは、電子蒸気供給装置は、電子タバコである。
【0006】
好ましくは、コンピューターはマイクロプロセッサーである。
【0007】
好ましくは、電子蒸気供給装置は第1端部及び第2端部を備え、第1端部は吸い口端部であり、第2端部は先端部であって、温度センサーは先端部近くに設置されている。好ましくは、コンピューターは先端部近くに設置されている。好ましくは、圧力センサーは先端部近くに設置されている。
【0008】
温度センサーを装置の先端部近くに設置することにより、センサーが吸い口端部から最も離れていることが保証される。通常、吸い口端部近くには加熱素子を備えた気化器が設置されているため、温度センサーを離しておくことが有利である。これにより、温度センサーが加熱素子からの熱による影響をほとんど受けなくなるため、温度センサーが周囲環境温度をより確実に測定できることが保証される。また、液体貯蔵部は通常、吸い口端部近くに設置されている。そのため、先端部近くに温度センサー、圧力センサー及びコンピューターを設置することにより、これらの構成部品に液体がかかる危険性が最小限になる。
【0009】
好ましくは、温度センサーは、使用時に周囲温度を測定するように構成されている。好ましくは、圧力センサーは、使用時に周囲圧力を測定するように構成されている。好ましくは、コンピューターは、使用時に圧力と温度の両方を略同時に読み込むように構成されている。
【0010】
温度と圧力の両方を略同時に測定することにより、コンピューターは、それ故にこれらの瞬時値を得ることができ、必要とされる任意の物理的調整または補償を行うことが可能となる。
【0011】
好ましくは、温度センサー及び圧力センサーは、複合型センサーを形成している。
【0012】
好ましくは、複合型センサーは校正済みセンサーである。好ましくは、校正済みセンサーは圧力及び温度に対して校正されている。好ましくは、校正済みセンサーは大気条件で用いるように校正されている。
【0013】
好ましくは、複合型センサーは単一の電子部品として構成される。
【0014】
複合型センサーを用いることにより、温度と圧力を同時に測定するのみならず、これらが同一の場所にあることが保証される。これにより、極めて正確にこれらの値が求まる。複合型ユニットには、単一のユニットのみが必要とされることにより、作製がより容易になり、かつ構成部品がより小さくなるという利点もある。また、温度と圧力の両方を同時に同一の場所で測定するように合目的に設計されたセンサーを用いることにより、特にこの目的用に校正された校正済みセンサーを利用することが可能となるため、より正確な読み取り値が得られる。
【0015】
好ましくは、複合型センサーは使用時に、温度及び圧力を求め、温度に依存する圧力読み取り値を提供するように構成されている。
【0016】
好ましくは、複合型センサーは使用時に、温度及び圧力を求め、電圧出力と測定圧力との間に略線形関係を与えるように構成されている。
【0017】
好ましくは、コンピューターは使用時に、温度センサーから温度読み取り値を、圧力センサーから圧力読み取り値をそれぞれ取得し、圧力読み取り値を調整して温度読み取り値を補償するように構成されている。
【0018】
圧力と温度は互いに相関し影響し合うため、複合型センサーは、所与の温度に対する圧力への変化を補償するのに用いることができる。有利には、これは複合型センサー自体またはコンピューターによって実現可能である。
【0019】
好ましくは、コンピューターは使用時に、圧力センサーで測定した圧力が減少してしきい圧力を下回ったとき加熱素子に電流を印加するように構成されている。好ましくは、コンピューターは使用時に、温度センサーから温度読み取り値を取得し、温度読み取り値に基づいてしきい圧力を調整するように構成されている。
【0020】
利用者が装置を吸入し、圧力がしきい圧力よりも減少したことによって装置が作動することを考えると、正しく利用するためには圧力を正確に測定することが必須である。従って、このしきい圧力値を変更できるようにすることで、より正確な装置が得られる。
【0021】
好ましくは、電子蒸気供給装置は制御部及び気化器を備え、制御部は動力電池、コンピューター、圧力センサー及び温度センサーを含み、気化器は加熱素子を含む。
【0022】
好ましくは、電子蒸気供給装置は、さらに液体貯蔵部を備え、使用時に加熱素子に液体を供給するように構成されている。
【0023】
好ましくは、コンピューターは使用時に、気化器が所定量の液体を気化させるように構成されている。
【0024】
好ましくは、コンピューターは使用時に、気化器が単位時間当たりに所定量の液体を気化させるように構成されている。
【0025】
好ましくは、コンピューターは使用時に、気化器が毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている。
【0026】
好ましくは、コンピューターは使用時に、気化器が単位時間当たりに毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている。
【0027】
好ましくは、コンピューターは使用時に、温度センサーから温度読み取り値を取得し、気化を調整して気化器が単位時間当たりに毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている。
【0028】
好ましくは、コンピューターは使用時に、圧力センサーから圧力読み取り値を取得し、気化を調整して気化器が単位時間当たりに毎回、略同量の液体を気化させるように構成されている。
【0029】
好ましくは、コンピューターは使用時に、温度センサーから温度読み取り値を取得し、温度読み取り値に基づいて加熱素子の加熱温度を調整するように構成されている。
【0030】
好ましくは、コンピューターは使用時に、圧力センサーから圧力読み取り値を取得し、圧力読み取り値に基づいて加熱素子の加熱温度を調整するように構成されている。
【0031】
好ましくは、コンピューターは使用時に、温度センサーから温度読み取り値を取得し、温度読み取り値に基づいて気化器に印加する電流を調整するように構成されている。
【0032】
好ましくは、コンピューターは使用時に、圧力センサーから圧力読み取り値を取得し、圧力読み取り値に基づいて気化器に印加する電流を調整するように構成されている。
【0033】
好ましくは、コンピューターは、周囲温度が上昇するにつれて、加熱素子に印加する加熱用電力を減少させるように構成されている。
【0034】
加熱素子の熱出力は、始動時の温度及び加熱用電力に依存する。始動時の温度は気化される液体の粘度に影響を及ぼすため、気化効果も始動時の温度に依存する。始動時の温度を測定することにより、加熱用電力を制御して、熱及び気化効果を安定にすることができる。
【0035】
好ましくは、コンピューターは使用時に、温度読み取り値が第1のしきい温度を超えたときに待機モードに入るように構成されている。好ましくは、待機モードは、通常動作モードに比べて低電力モードである。
【0036】
好ましくは、待機モードでは気化器が作動不可能である。
【0037】
好ましくは、コンピューターは、所定の待機時間は待機モードにとどまるように構成されている。
【0038】
温度が高くなりすぎたときに待機モードに入ることにより、利用者の安全性がさらに向上し、利用者が被害を受けないことが保証される。
【0039】
好ましくは、待機モードを終える前において、コンピューターは使用時に、温度が第2のしきい温度を上回った場合には温度の測定後に待機モードにとどまり、あるいは温度が第2のしきい温度を下回った場合には待機モードを終えるように構成されている。好まし
くは、第1のしきい温度は第2のしきい温度に等しい。
【0040】
好ましくは、コンピューターは使用時に、温度センサーで測定した温度が限定しきい温度を上回った場合には装置を使用不可能にするように構成されている。好ましくは、装置はさらに、コンピューターに接続されたヒューズを備え、装置はヒューズを飛ばすことによって使用不可能になる。
【0041】
装置に損傷が発生した可能性のある安全動作温度を装置が超えた場合には、装置を使用不可能にすることが有利である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
次に、本開示への理解を促し、かつ実施形態をどのように実施し得るかを示すために、以下の添付図面を参照する。
図1】電子蒸気供給装置の側面斜視図である。
図2図1の装置の側面断面図である。
図3】分離式の吸い口及び制御部を備えた電子蒸気供給装置の分解側面斜視図である。
図4図3の装置において、吸い口及び制御部を接続した状態の側面断面図である。
図5】分離式の吸い口、気化器及び制御部を備えた電子蒸気供給装置の分解側面斜視図である。
図6図5の装置において、吸い口、気化器及び制御部を接続した状態の側面断面図である。
図7図3及び図4並びに図5及び図6の各電子蒸気供給装置と同様の電子蒸気供給装置の別の実施形態において、その内部構成部品をより詳細に示した、長手方向の分解断面図である。
図8図7の電子蒸気供給装置を組み立てたときの断面図である。
図9図7及び図8の蒸気発生装置の概略回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1及び図2を参照すると、電子蒸気供給装置が、紙巻きタバコ型電子タバコの形態で示されている。電子蒸気供給装置は、吸い口2及び紙巻きタバコ本体4を備える。吸い口2は、第1端部に空気出口6を備えており、第2端部にてタバコ本体4に接続される。
【0044】
電子蒸気供給装置の内部には、吸い口端部に向かって液体貯蔵部8が設けられ、さらに、加熱コイル12を有する気化器10が設けられている。気化器10は、液体貯蔵部8の隣に配置されており、液体をこの気化器10へと移して気化できるようになっている。回路基板14には、圧力センサー16、温度センサー18及びコンピューター20が搭載されている。動力電池22は、装置に電力を供給する。
【0045】
この電子蒸気供給装置の全般的な動作は、既知の装置の動作と同様である。利用者が電子蒸気供給装置で一服する際、吸い口2及び空気出口6に吸引力が加わる。電子蒸気供給装置内部で圧力が減少すると、動力電池22から気化器10に電力が供給され、この気化器10によってニコチン液体溶液が気化される。次いで、こうして得られた蒸気が、利用者によって吸引される。
【0046】
本実施例において、電子蒸気供給装置の動作は、一般的な装置の動作にとどまらない。使用の際、利用者が電子蒸気供給装置に吸引力を加えると、気流が生じることにより、装置内で、大気圧からより低い圧力へと圧力降下が生じる。圧力センサー16は、コンピューター20に信号を送信する。コンピューター20は、圧力センサー16からの圧力信号
を監視するソフトウェアを実行し、圧力が減少してしきい圧力を下回ったのを判定すると、加熱コイル12を熱して液体貯蔵部8からの液体を気化させるため、加熱コイル12に電流を流す。
【0047】
温度センサー18は、圧力センサー16に隣接しており、これもコンピューター20に温度信号を送信する。圧力センサー16、温度センサー18及びコンピューター20を搭載した回路基板14は、装置の先端近くに設置されている。このようにして、温度センサー18は、気化器10及び加熱コイル12からできるだけ離れた場所に設置されている。これにより、温度センサー18が、周囲温度を測定する機能を果たすと共に、使用時に加熱コイル12が熱くなってもその影響を受けないことが保証される。
【0048】
コンピューター20は、圧力センサー16及び温度センサー18から信号を受け取り、周囲圧力と周囲温度の両方を同時に求めることができる。このように、測定圧力は、その圧力を測定したときの温度に依存するため、コンピューター20は、所与の温度に対して圧力測定を調整することができる。使用の際、次いでコンピューターは、この調整済み圧力を用いることが可能であり、この調整済みの圧力が利用者の吸引によって減少してしきい圧力値を通過したことを判定する。
【0049】
あるいは、コンピューター20は、周囲圧力及び周囲温度の値を得て、しきい圧力値を調整することにより、補償済みのしきい圧力を設定することもできる。使用の際は、測定圧力が補償済みのしきい圧力よりも減少したときに、加熱コイル12を作動させる。
【0050】
コンピューター20は、温度読み取り値を他の目的に利用することもできる。周囲温度は、液体の気化に2通りの影響を及ぼす。第1に、液体の粘度は温度依存であり、従って、液体が加熱コイル12へと流れる速度及び気化が起こる速度は、周囲温度にある程度依存する。第2に、加熱コイルの到達温度は、コイルに印加された電流または電力に依存すると共に、気化自体によってコイルから熱が奪われるため、コイルの始動時の温度及び液体がコイルに移動する速度にも依存する。そこで、コンピューター20は、周囲温度を測定して、コイルに印加する電流及び加熱用電力を調整することにより、周囲圧力の変化を補償することができる。従って、これにより、周囲温度の変化に関わらず、気化を安定にすることが可能となる。
【0051】
また、コンピューター20は、温度センサー18からの周囲温度読み取り値を監視して、利用者が操作するのに装置が安全かどうかを判定する。周囲温度が、第1の安全しきい温度を上回っていた場合、装置は、気化を止める待機モードに入ることができる。装置は、温度を周期的に測定して、安全な周囲温度に戻り、第2の安全しきい温度を下回ったことを判定する。第1及び第2の安全しきい温度は、同一温度にすることができる。また、第1の安全しきい温度を第2の安全しきい温度よりも高くし、あるいは第2の安全しきい温度を第1の安全しきい温度よりも高くすることもできる。
【0052】
温度センサー18を、周囲温度が限界安全温度を超えたことを判定するのに利用することもできる。限界安全温度とは、装置を安全に使用することが永久にできなくなる損傷を、装置に与える可能性のある温度である。この場合、回路基板14のヒューズを飛ばすことにより、装置は永久に使用不可能になる。
【0053】
図3及び図4は、図1及び図2に関して示した電子蒸気供給装置と同様の電子蒸気供給装置を示す図である。その違いは、吸い口2がタバコ本体4に対して脱着可能になっている点である。吸い口は、雌ねじ山の接続手段を備える。また、装置本体4は、雄ねじ山の接続手段を備えた制御部24である。吸い口2と制御部24を螺合あるいは分離することができる。
【0054】
本実施例では、吸い口2は、液体貯蔵部8及び加熱コイル12を有する気化器10を備える。制御部24は、動力電池22並びに圧力センサー16、温度センサー18及びコンピューター20を搭載した回路基板14を備える。吸い口2と制御部24を螺合接続すると電気的接続が得られ、気化器10の作動時に加熱コイル12に電流を印加できるようになっている。
【0055】
図5及び図6は、図3及び図4に関して示した電子蒸気供給装置と同様の電子蒸気供給装置を示す図である。ただし、本実施例では、気化器10が吸い口2から取り外し可能になっている。また、吸い口2は、円筒形の開口部を備え、この開口部に気化器10を押し込むと締まり嵌めされる。このようにして、吸い口2を気化器10から分離することができる。吸い口2は、液体貯蔵部8を備える。気化器10は、加熱コイル12及び芯26を備える。芯26は気化器10の端から突出しており、吸い口2と制御部10を接続したとき液体貯蔵部8内に浸漬するようになっている。
【0056】
使用時に利用者が装置で吸入すると、液体は液体貯蔵部8から芯26へ移動し、その後気化用の加熱コイル12へ移動する。
【0057】
本実施例の装置は、温度センサー及び圧力センサーが複合型センサー28を形成している点でも、前述の実施例とは異なる。従って、複合型センサー28は、単一の電子部品としてコンピューターに接続される。複合型センサー28は、温度と圧力の両方を同時に読み出してコンピューター20に提供することができる。複合型センサー28は、校正済みのセンサーであり、互いに依存する正確な圧力信号及び温度信号を提供するように校正されている。こうして、センサー自体が、温度変化を補償するように調整された圧力読み取り値を提供することができる。
【0058】
圧力センサー16及び/または圧力・温度の複合型センサー28は、上述した所望の設定値に応じて動作できるように十分な感度を有することが好ましい。その際のセンサーの感度は、+/-5パスカル前後でもよく、+/-3パスカルでもよく、より好ましくは+/-1パスカルでもよい。標準大気圧が100,000パスカル前後程度であれば、センサー16/28が高感度であるのは明らかである。感度の度合いは、センサー自体に用いられるハードウェア、及びセンサーで提供され、コンピューター20に読み込まれる補償アルゴリズムによって規定され得る。使用の際、未処理の圧力データはセンサーが提供し、未処理の温度データは、分離型の温度センサー18、または圧力・温度の複合型センサー28のいずれかから提供することができる。これは、温度補償した圧力を算出するコンピューター20に入力される。しかしながら、別の実施形態では、センサー16、18、28がマイクロプロセッサーを内部に備えて、センサー16、18、28自体が補償済みの読み取り値を直接出力できるようになっていてもよい。温度センサー18及び圧力センサー16、あるいは温度・圧力の複合型センサー28は、一体として、すなわち一枚の回路基板14に存在している。このことは、電子蒸気供給装置に有利である。なぜなら、例えば、加熱器の作動や装置の保持などの複数の理由により、この装置全体の温度分布にバラツキが生じ得るためである。1つまたは複数のセンサー16、18、28からの出力もデジタル式であるが、これは、装置に関して全体的には有利である。
【0059】
上述した装置内では、圧力読み取り値の補償データを提供するのに加えて、温度を別個に監視することもできる。これは、1つまたは複数のセンサーが、温度出力及び圧力出力を未処理のまま提供するためである。これにより、1つまたは複数のセンサーが安全部品として機能して、装置の温度に関する情報をコンピューターに提供することができ、次いでコンピューターが、ある所定温度(例えば、50℃)で遮断信号を出力できるようになる。
【0060】
また、補償済みの圧力読み取りも重要である。規制目的のため、不意に(装置が口にないときや、さらには利用者の口に装置があるものの、利用者が意図的に吸入していないときなど)装置が動作しないことが有利である。これを実現する1つの方法は、規定圧力しきい値を複数設定して、誤検知の結果これらの値に「違反」することがないようにすることである。
【0061】
図7及び図8は、電子タバコの形態での電子蒸気供給装置における別の実施形態を示す図である。この装置は、図3及び図4に示した実施形態、並びに図5及び図6に示した実施形態と同様であるが、図7及び図8の実施形態は、その内部構成部品をより詳細に示している。この装置は、吸い口31、気化装置32及び制御部33を備えており、これらは図8に示すように組み立て可能である。これにより略円筒形の装置が提供され、これを紙巻きタバコに火をつける従来のタバコの代わりとして利用することができる。制御部33には、ねじ式延長部34が設けられており、気化装置32の内側ねじ山35で、このねじ式延長部34を受ける。吸い口31は、略円筒形の樹脂ケース36を備え、ここに気化装置32を押し込んで取り付けることができる。
【0062】
吸い口31は、蒸気を利用者の口に供給するための出口37、及び使用時に気化装置32で生成される蒸気用の排出路38を備える。吸い口31はまた、気化可能な液体(使用時に気化装置32によって気化されるニコチン含有液体など)に含浸させた樹脂製の連続発泡材料など、多孔性の貯蔵基材39で構成される液体貯蔵部も含む。この基材39は、液体の貯蔵所として機能すると共に、吸い口31が容易に取り外し可能かつ交換可能であるため、多孔性基材39内の液体を使い切って補充する必要があるときに、詰め替えカプセルとして利用することもできる。
【0063】
気化装置32は、セラミック基材42に支持され、セラミック芯41に巻回させた電子加熱コイル40を含む。略U字型の吸上部材43は、毛細管作用によって貯蔵基材39から加熱素子40に向かって液体を吸い上げるように構成されている。吸上部材43は、例えばニッケル発泡体などの金属発泡体で作製してもよい。
【0064】
加熱コイル40には、制御部33内に設置された充電式電池44から、電気接点48、49(図7及び図8には図示せず、図9を参照)を通じて電力が供給される。さらに、ねじ山34、35を係合させて制御部33を気化装置32に取り付けると、これらの接点により加熱コイルが電池44に電気的に接続される。電池44からの電力は、制御部33内の回路基板46に実装された制御回路45の制御を受けて加熱コイル40に供給される。
【0065】
図9に示すように、制御回路45はマイクロコントローラー47を含み、このマイクロコントローラー47には、接点48、49を通じてコイル40に加熱用電流を供給するための電力が電池44から供給される。さらに、図7に示すねじ山34、35によって制御部33を気化装置32にねじ係合させると、これらの接点により電気的接続が得られる。
【0066】
以下でより詳細に説明するように、圧力センサー50は、利用者が吸い口38を使用することを検出する。
【0067】
また、信号部51を設けることにより、装置の動作状態を示す音声出力または映像出力が利用者に提供される。例えば、信号装置には、利用者が装置を使用する際、赤色に光る発光ダイオードを含めてもよい。また、所定の音声信号または映像信号を信号装置が提供することにより、例えば、電池44が再充電を必要とすることを示してもよい。
【0068】
電池44からマイクロコントローラーへの電流供給は、スイッチングトランジスタ52
によって制御される。
【0069】
利用者が吸い口31を使用して出口37から蒸気を吸い込む際、圧力センサー50は、気化装置32内から制御部33の内部を介して回路基板45へと伝わる圧力降下を検出する。マイクロコントローラー47は、センサー50で検出された圧力降下に応答して加熱コイル40に電流を供給する。これにより、毛細管作用によってU字型の吸上部材43を通じて吸い上げられた液体を気化させる。空気流入路55は、気化装置32と制御部33の間の結合部に設けられ、制御部33のねじ式延長部34を介して気化装置32内へと矢印Aの方向に空気を引き込むことができるようになっている。従って、得られた蒸気は、排出路38を介して出口37へと矢印Bの方向に引き出される。
【0070】
図7及び図8の装置の動作は、上述した図1から図6の装置の動作と同じでよいため、かかる動作の詳細な説明は、ここでは繰り返さない。しかしながら、図7及び図8の実施形態の回路基板46を、図1から図6の実施形態の回路基板14のように構成してもよく、図1から図6の実施形態の回路基板14を、図7及び図8の実施形態の回路基板46のように構成してもよいことが意図される。具体的には、回路基板46は、温度センサー18または温度・圧力の複合型センサー28を備えてもよい。また、圧力センサー50を制御部33内の回路基板46に配置し、気化装置32を、例えば、開口部した流路(図示せず)を経て制御部33内の領域と流体連通させて、制御部33内の回路基板46に搭載された圧力センサーで気化装置32内の圧力降下を検出できるようにしてもよい。また、図7及び図8の実施形態のマイクロコントローラー47を、図1から図6の実施形態のコンピューター20のようにプログラムして、1つまたは複数のセンサーからの測定温度及び測定圧力の両方を監視し、それに応じて上述の通り装置を制御するようにしてもよい。
【0071】
実施例を示して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正をなし得ることは、当業者にとって理解されよう。コンピューター処理装置は、マイクロプロセッサーまたはマイクロコントローラーとしてもよい。また、本装置は、紙巻きタバコ型に限定されるものではない。コンピューター処理装置、温度センサー及び圧力センサーを同一の回路基板に搭載することに限定されない。気化用の加熱コイルは、別の種類の非コイル式加熱素子に置き換えることもできる。
【0072】
種々の問題に対処し本技術を促進するため、本開示の全体は、種々の実施形態を一例として示す。その実施形態の中で特許請求の範囲に記載の1つまたは複数の発明が実践され、優れた電子蒸気供給装置が提供される。本開示の利点及び特徴は、単に実施形態の代表的事例であって、これらに限定されるものではない。これらは単に特許請求された特徴の理解を助け、教示するために提示される。本開示の利点、実施形態、実施例、機能、特徴、構造、及び/または他の態様は、特許請求の範囲で規定される本開示またはその均等物を限定するものではなく、本開示の範囲及び/または概念から逸脱することなく他の実施形態を利用し改変することができることを理解すべきである。種々の実施形態は、開示された要素、構成要素、特徴、部品、工程、手段などの種々の組み合わせを好適に含んでも、それらで構成されても、または本質的にそれらで構成されてもよい。さらに本開示には、現在特許請求されていないが将来特許請求される可能性がある他の発明も含まれる。いずれの実施形態のいずれの特徴も、他のいずれかの特徴と別個に、あるいはこれと組み合わせて用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9