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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】アンテナ装置および時計
(51)【国際特許分類】
   G04R 60/06 20130101AFI20220407BHJP
   G04G 21/04 20130101ALI20220407BHJP
   G04C 9/00 20060101ALI20220407BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20220407BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
G04R60/06
G04G21/04
G04C9/00 301A
H01Q1/22 Z
H01Q1/52
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017194004
(22)【出願日】2017-10-04
(65)【公開番号】P2019066401
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(72)【発明者】
【氏名】植松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴司
(72)【発明者】
【氏名】川口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】市村 龍美
(72)【発明者】
【氏名】安田 巧
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-62847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R 20/00 - 60/14
G04G 3/00 - 99/00
G04C 1/00 - 99/00
H01Q 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のケース本体と、
前記ケース本体の上部に設けられ、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材と、
前記外装アンテナ部材の近傍に設けられた金属部品と、
を備え、
前記外装アンテナ部材と前記金属部品との間隔は、容量結合が弱くなる長さに設定した、且つ前記電波の共振周波数の変化量が小さいときの長さを基準値として設定したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との前記間隔は、前記基準値の長さに対して所定の振れ幅を持った長さに設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ装置において、前記基準値の長さに対して前記所定の振れ幅を持った長さは、前記ケース本体に対する前記外装アンテナ部材と前記ケース本体に対する前記金属部品とにおける両方の寸法公差の範囲に設定されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
合成樹脂製のケース本体と、
前記ケース本体の上部に設けられ、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材と、
前記ケース本体の側部且つ前記外装アンテナ部材の近傍に設けられ、金属部を備えたスイッチ釦である金属部品と、
を備え、
前記スイッチ釦の操作方向における前記外装アンテナ部材と前記スイッチ釦の前記金属部との間の距離を、前記スイッチ釦の外周方向における前記外装アンテナ部材と前記スイッチ釦の前記金属部との間の距離よりも短く設定することで、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との間隔を、容量結合が弱くなる長さに設定したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載されたアンテナ装置を備え、前記ケース本体の下部に設けられた裏蓋と、前記ケース本体の貫通孔に嵌め込まれた金属部を含むスイッチ釦と、前記ケース本体の上部に、ガラスが設けられた前記外装アンテナ部材と、を備えていることを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、腕時計などの電子機器に用いられるアンテナ装置およびそれを備えた時計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、腕時計においては、特許文献1に記載されているように、合成樹脂製のケース本体の上部に合成樹脂製の外装部材を設け、ケース本体の内部にアンテナを設けた構造のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-184090号公報
【0004】
このような腕時計では、ケース本体の上部開口部に時計ガラスが嵌め込まれた際のケース本体の変形を抑えるために、金属製の補強部材をグランド電位と非導通状態でケース本体に埋め込んで、アンテナが電波を受信する際に、アンテナの電波受信に対する補強部材による影響を軽減しているが、電波受信に対する補強部材による影響を完全に払拭することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、このような腕時計においては、合成樹脂製のケース本体の上部に電波を受信する金属製の外装アンテナ部材を設けたものが開発されている。
【0006】
しかしながら、このような腕時計では、ケース本体に金属部品を備えたスイッチ釦が外装アンテナ部材に接近して配置されている場合、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材とスイッチ釦の金属部品との間隔がアンテナ特性に影響するという問題がある。
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、アンテナ特性を安定させることができるアンテナ装置およびそれを備えた時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この一の発明は、合成樹脂製のケース本体と、前記ケース本体の上部に設けられ、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材と、前記外装アンテナ部材の近傍に設けられた金属部品と、を備え、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との間隔は、容量結合が弱くなる長さに設定した、且つ前記電波の共振周波数の変化量が小さいときの長さを基準値として設定したことを特徴とするアンテナ装置である。
この他の発明は、合成樹脂製のケース本体と、前記ケース本体の上部に設けられ、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材と、前記ケース本体の側部且つ前記外装アンテナ部材の近傍に設けられ、金属部を備えたスイッチ釦である金属部品と、を備え、前記スイッチ釦の操作方向における前記外装アンテナ部材と前記スイッチ釦の前記金属部との間の距離を、前記スイッチ釦の外周方向における前記外装アンテナ部材と前記スイッチ釦の前記金属部との間の距離よりも短く設定することで、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との間隔を、容量結合が弱くなる長さに設定したことを特徴とするアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、アンテナ特性を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明を腕時計に適用した一実施形態を示した拡大正面図である。
図2図1に示された腕時計のA-A矢視における要部を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1および図2を参照して、この発明を腕時計に適用した一実施形態について説明する。
この腕時計は、図1および図2に示すように、腕時計ケース1を備えている。この腕時計ケース1の上部開口部には、時計ガラス2がガラスパッキン2aを介して設けられている。この腕時計ケース1の下部には、裏蓋3が防水パッキン3aを介して取り付けられている。
【0012】
この腕時計ケース1の12時側と6時側との各側部には、図1に示すように、時計バンド(図示せず)が取り付けられるバンド取付部4が設けられている。また、この腕時計ケース1の3時側の側部には、スイッチ釦5が設けられている。この腕時計ケース1の内部には、図2に示すように、時計モジュール6が設けられている。
【0013】
この時計モジュール6は、指針を運針させて時刻を指示する時計ムーブメント、時刻などの情報を電気光学的に表示する表示部(いずれも図示せず)、これらを電気的に制御して駆動するための回路基板7(図2参照)などの時計機能に必要な各種の電子部品を備えている。
【0014】
ところで、腕時計ケース1は、図2に示すように、硬質の合成樹脂製のケース本体8と、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材9と、を備えている。ケース本体8は、ほぼ円形のリング状に形成されている。このケース本体8の側部には、スイッチ釦5が設けられている。また、このケース本体8の内部には、時計モジュール6が設けられている。
【0015】
外装アンテナ部材9は、高周波(例えば1575.42MHz)の電波を受信するGPS用のアンテナであり、図1および図2に示すように、ケース本体8とほぼ同じ形状のリング状に形成され、時計のベゼルとしても機能し、ケース本体8の上部に防水リング8aを介して複数のねじ9aによって取り付けられている。この外装アンテナ部材9の内部には、時計ガラス2がガラスパッキン2aを介して取り付けている。
【0016】
この外装アンテナ部材9は、図1および図2に示すように、時計モジュール6の回路基板7に搭載された受信回路部11と端子等により電気的に接続されている。これにより、外装アンテナ部材9と回路基板7の受信回路部11とによって、アンテナ装置が構成されている。
【0017】
一方、スイッチ釦5は、図2に示すように、操作軸12と釦部13とを備え、これらが金属によって一体に形成されて、ケース本体8の貫通孔10に嵌め込まれた金属製の筒状部材14内に配置されている。筒状部材14は、ケース本体8の貫通孔10の小径孔部10aに嵌め込まれる小径部14aと、貫通孔10の大径孔部10bに嵌め込まれる中径部14bと、ケース本体8の外部に突出して配置される大径部14cと、を備えている。
【0018】
この筒状部材14の小径部14aは、図2に示すように、外径が貫通孔10の小径孔部10aの内径と同じ大きさで、軸方向の長さがケース本体8の貫通孔10の軸方向の長さのほぼ半分の長さに形成されている。中径部14bは、その外径が貫通孔10の大径孔部10bの内径と同じ大きさで、内径が小径部14aの内径と同じ大きさに形成されている。
【0019】
また、この中径部14bは、図2に示すように、軸方向の長さがケース本体8の貫通孔10の軸方向の長さよりも短く、かつ貫通孔10の軸方向の長さのほぼ半分の長さよりも長く形成されている。このため、小径部14aは、ケース本体8の貫通孔10に中径部14bと共に嵌め込まれて大径部14cがケース本体8の外面に当接した際に、内端部がケース本体8内に突出するように構成されている。
【0020】
この場合、この小径部14aは、図2に示すように、ケース本体8内に突出した内端部にEリングなどの第1抜止め部15が取り付けられている。この第1抜止め部15は、ケース本体8の内面に当接して筒状部材14がケース本体8の外部に抜け出さないように構成されている。
【0021】
また、この中径部14bの外周面には、図2に示すように、複数の第1防水リング16が取り付けられている。これら複数の第1防水リング16は、その各外周部がケース本体8の貫通孔10の内周面に圧接することにより、中径部14bの外周面と貫通孔10の内周面との間の防水を図っている。
【0022】
大径部14cは、図2に示すように、外径がケース本体8の上下方向の長さとほぼ同じ大きさで、外周部の上部が外装アンテナ部材9に設けられた後述する食込み部20に食い込んだ状態で配置されている。また、この大径部14cは、軸方向の長さがケース本体8の貫通孔10の軸方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。
【0023】
一方、操作軸12は、図2に示すように、筒状部材14内にスライド可能に配置されている。この操作軸12は、外径が筒状部材14の小径部14aの内径と同じ大きさで、軸方向の長さが筒状部材14の軸方向の長さよりも長く形成されている。この場合、操作軸12は、内端部がケース本体8内に突出し、この突出した内端部に第2抜止め部17が取り付けられ、この第2抜止め部17が筒状部材14の小径部14aの内端部に当接して筒状部材14から抜け出さないように構成されている。
【0024】
また、この操作軸12の外周には、図2に示すように、複数の第2防水リング18が取り付けられている。これら複数の第2防水リング18は、その各外周部が筒状部材14の小径部14aと中径部14bとの各内周面に摺動可能な状態で圧接することにより、小径部14aと中径部14bの内周面と操作軸12の外周面との間の防水を図っている。
【0025】
釦部13は、図2に示すように、操作軸12の外端部に一体に設けられて、筒状部材14の大径部14c内にスライド可能に配置されている。この釦部13は、その外径が大径部14cの内径とほぼ同じ大きさで、軸方向の長さが大径部14cの軸方向の長さとほぼ同じ長さに形成されている。
【0026】
この場合、釦部13の内部には、図2に示すように、円筒部13aが操作軸12と同心円状に設けられている。この円筒部13aは、外径が筒状部材14の中径部14bの外径ほぼ同じ大きさで、内径が小径部14aの外径とほぼ同じ大きさに形成されている。
【0027】
また、操作軸12の外周には、図2に示すように、コイルばね19が配置されている。このコイルばね19は、釦部13をケース本体8の外部に向けて押し出す方向に付勢するものであり、内端部が中径部14bの外端部に弾接し、外端部が円筒部13aの内端部に弾接し、この状態で釦部13をケース本体8の外部に向けて押し出すように構成されている。
【0028】
これにより、スイッチ釦5は、図2に示すように、通常の状態のときに、コイルばね19のばね力によって釦部13が操作軸12と共にケース本体8の外部に押し出され、操作軸12の内端部に取り付けられた第2抜止め部17が筒状部材14の小径部14aの内端部に当接するように構成されている。この状態では、操作軸12は、内端部が時計モジュール6のスイッチ接点部6aから離れて、スイッチ接点部6aをオフ状態にする。
【0029】
また、このスイッチ釦5は、図2に示すように、釦部13がコイルばね19のばね力に抗して筒状部材14の大径部14c内に押し込まれた際に、操作軸12の第2抜止め部17が筒状部材14の小径部14aの内端部から離れて、時計モジュール6のスイッチ接点部6aに押し当てられて、スイッチ接点部6aをオン動作させるように構成されている。
【0030】
ところで、金属製の外装アンテナ部材9の外周における下部には、図2に示すように、金属製の筒状部材14における大径部14cの上部が食い込む食込み部20が設けられている。この食込み部20は、大径部14cとの間に隙間を持って、大径部14cの上部が配置される切欠き部である。
【0031】
この食込み部20は、図2に示すように、ケース本体8側に位置する大径部14cの上部における内端面に対面する内面20aと、大径部14cの外周面に対面する上面20bと、を備えている。この食込み部20における金属製の外装アンテナ部材9と金属製の筒状部材14との間隔は、容量結合が弱くなる長さに設定されている。
【0032】
この場合、容量結合の容量は、面積に比例し、距離に反比例する。また、結合インピーダンスは、容量に反比例し、かつ周波数にも反比例する。このため、食込み部20における金属製の外装アンテナ部材9と金属製の筒状部材14との間隔は、その間隔に応じて発生する高周波の共振周波数における変化量が小さいときの長さ、つまり共振周波数の変化量が小さく安定しているときの長さを基準値として、設定されている。
【0033】
つまり、外装アンテナ部材9金属製の筒状部材14との間隔に応じて発生する高周波の共振周波数は、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が狭いと、共振周波数の変化量が大きく、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が広くなるに従って次第に共振周波数の変化量が小さくなり、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が0.5mm~0.7mmの範囲のときに、変化量が小さく安定する特性がある。
【0034】
このため、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔は、その間隔に応じて発生する共振周波数の変化量が小さいときの長さ、つまり共振周波数の変化量が安定しているときの長さ、例えば0.5mm~0.7mmの範囲の長さであることが望ましい。また、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔は、共振周波数の変化量が小さく安定しているときの長さを基準値として、その基準値の長さに対して所定の振れ幅を持った長さに設定されている。
【0035】
この場合、ケース本体8に対する外装アンテナ部材9の取付寸法とケース本体8に対する筒状部材14の取付寸法とには、公差がある。このため、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔は、0.5mm~0.7mmの範囲の長さを基準値として、所定の振れ幅、つまり寸法公差の振れ幅を持った長さに設定されていることが望ましい。
【0036】
すなわち、基準値の長さに対して所定の振れ幅を持った長さは、ケース本体8に対する外装アンテナ部材9の取付寸法と、ケース本体8に対する筒状部材14の取付寸法とにおける両方の寸法公差の範囲が、例えば約±0.3mmの範囲である場合、0.4mm~1.0mmの範囲に設定されていることが望ましい。
【0037】
この場合、スイッチ釦5の操作方向における外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の筒状部材14との間の距離、つまり外装アンテナ部材9の食込み部20の内面20aとこれに対面する大径部14cの内端面との間隔S1は、図2に示すように、スイッチ釦5の外周方向における外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の筒状部材14との間の距離、つまり外装アンテナ部材9の食込み部20の内面20aとこれに対面する大径部14cの外周面との間隔S2よりも短く(S1<S2)設定されている。
【0038】
次に、このような腕時計の作用について説明する。
この腕時計では、腕時計ケース1が合成樹脂製のケース本体8とこのケース本体8の上部に設けられた金属製の外装アンテナ部材9とで構成されているので、この外装アンテナ部材9によって電波を良好に受信することができる。
【0039】
この場合、ケース本体8の側部には、スイッチ釦5が設けられ、このスイッチ釦5をケース本体8に対して取り付けるための金属製の筒状部材14が外装アンテナ部材9に接近して設けられていても、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が、容量結合を弱くする長さに設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔のバラツキによって発生するアンテナ効率のバラツキが軽減されて、外装アンテナ部材9のアンテナ特性が安定する。
【0040】
すなわち、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔に応じて発生する高周波の共振周波数は、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が狭いと、共振周波数の変化量が大きく、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が広くなるに従って次第に共振周波数の変化量が小さくなり、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が0.5mm~0.7mmの範囲のときに、変化量が小さく安定する特性がある。
【0041】
このため、金属製の外装アンテナ部材9の食込み部20とこの食込み部20に食込む金属製の筒状部材14との間隔は、その間隔によって発生する共振周波数の変化量が小さく安定しているときの長さを基準値とする範囲で、例えば0.5mm~0.7mmの範囲に設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔のバラツキによって発生するアンテナ効率のバラツキが軽減されて、外装アンテナ部材9のアンテナ特性が安定する。
【0042】
すなわち、金属製の外装アンテナ部材9の食込み部20とこの食込み部20に食込む金属製の筒状部材14との間隔は、その間隔によって発生する共振周波数の変化量が小さく安定化しているときの長さを基準値として設定されていることにより、外装アンテナ部材9のアンテナ効率のバラツキが抑えられ、アンテナ特性が安定する。
【0043】
このため、外装アンテナ部材9が電波を受信する際には、金属製の外装アンテナ部材9の食込み部20とこの食込み部20に食込む金属製の筒状部材14との間に設けられた間隔にバラツキがあっても、外装アンテナ部材9のアンテナ効率のバラツキが抑えられ、アンテナ特性が安定し、外装アンテナ部材9で電波を良好に受信できる。
【0044】
また、金属製の外装アンテナ部材9の食込み部20とこの食込み部20に食込む金属製の筒状部材14との間隔は、基準値の長さに対して所定の振れ幅、例えば約±0.3mmの範囲の振れ幅を持った長さ、例えば0.4mm~1.0mmの範囲に設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔のバラツキによって発生するアンテナ効率のバラツキが確実に防げるので、より一層、アンテナ特性が安定する。
【0045】
この場合、外装アンテナ部材9と筒状部材14とは、ケース本体8に対する外装アンテナ部材9の取付寸法とケース本体8に対する筒状部材14の取付寸法とに公差があるため、0.5mm~0.7mmの範囲の長さを基準値として、所定の振れ幅つまり寸法公差の振れ幅を持った長さに設定されていることにより、外装アンテナ部材9のアンテナ特性が更に安定する。
【0046】
このため、外装アンテナ部材9の食込み部20とこの食込み部20に食込む金属製の筒状部材14との間隔が、寸法公差によって変動しても、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔の変動によって発生するアンテナ効率のバラツキが確実に抑えられ、外装アンテナ部材9のアンテナ特性を安定させて、外装アンテナ部材9で電波を良好に受信することができる。
【0047】
この場合、スイッチ釦5の操作方向における外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の筒状部材14との間の距離が、スイッチ釦5の外周方向における外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の筒状部材14との間の距離よりも短く設定されていることにより、これによっても外装アンテナ部材9のアンテナ効率のバラツキが抑えられて、外装アンテナ部材9のアンテナ特性が安定する。
【0048】
すなわち、外装アンテナ部材9の食込み部20の内面20aとこれに対面する大径部14cの内端面との間隔S1は、外装アンテナ部材9の食込み部20の内面20aとこれに対面する大径部14cの外周面との間隔S2よりも短く(S1<S2)設定されていることにより、外装アンテナ部材9のアンテナ効率のバラツキが抑えられて、外装アンテナ部材9のアンテナ特性が安定する。
【0049】
このように、この腕時計によれば、合成樹脂製のケース本体8と、このケース本体8の上部に設けられ、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材9と、この外装アンテナ部材9の近傍に設けられたスイッチ釦5と、を備え、外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の金属製の筒状部材14との間隔を、容量結合が弱くなる長さに設定したことにより、外装アンテナ部材9のアンテナ特性を安定させることができる。
【0050】
すなわち、この腕時計では、スイッチ釦5の金属製の筒状部材14が外装アンテナ部材9に接近して設けられていても、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔を、容量結合が弱くなる長さに設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔のバラツキによって発生するアンテナ効率のバラツキを軽減することができるので、外装アンテナ部材9のアンテナ特性を安定させることができる。
【0051】
この場合、この腕時計では、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が、その間隔に応じて発生する共振周波数の変化量が小さく安定しているときの長さを基準値として設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔のバラツキによって発生するアンテナ効率のバラツキを良好に軽減することができるので、アンテナ特性を安定させることができる。
【0052】
また、この腕時計では、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔に応じて発生する共振周波数の変化量が小さいときの長さを基準値として、この基準値の長さに対して所定の振れ幅を持った長さに設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔のバラツキによって発生するアンテナ効率のバラツキを確実に防ぐことができるので、より一層、アンテナ特性を安定させることができる。
【0053】
この場合、この腕時計では、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔に応じて発生する共振周波数の変化量が小さく安定しているときの長さを基準値として、この基準値の長さに対して更に所定の振れ幅を持った長さが、ケース本体8に対する外装アンテナ部材9とケース本体8に対する筒状部材14とにおける両方の寸法公差の範囲に設定されていることにより、外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が寸法公差によって変動しても、アンテナ特性を安定させることができる。
【0054】
すなわち、この腕時計では、ケース本体8に対する外装アンテナ部材9の取付寸法とケース本体8に対する筒状部材14の取付寸法とに公差があり、その寸法公差によって外装アンテナ部材9と筒状部材14との間隔が変動しても、外装アンテナ部材9のアンテナ効率のバラツキを確実に防ぐことができるので、アンテナ特性を安定させることができ、これにより外装アンテナ部材9で電波を良好に受信することができる。
【0055】
さらに、この腕時計では、スイッチ釦5の操作方向における外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の筒状部材14との間の距離が、スイッチ釦5の外周方向における外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の筒状部材14との間の距離よりも短く設定されていることにより、これによってもアンテナ効率のバラツキを抑えて、外装アンテナ部材9のアンテナ特性を安定させることができる。
【0056】
すなわち、この腕時計では、外装アンテナ部材9の食込み部20の内面20aとこれに対面する大径部14cの内端面との間隔S1が、外装アンテナ部材9の食込み部20の内面20aとこれに対面する大径部14cの外周面との間隔S2よりも短く(S1<S2)設定されていることにより、アンテナ効率のバラツキを抑えることができるので、外装アンテナ部材9のアンテナ特性を安定させることができる。
【0057】
このため、この腕時計では、スイッチ釦5が取り付けられる金属製の筒状部材14と外装アンテナ部材9との間隔を確保することにより、筒状部材14の大径部14cを大きく形成して、スイッチ釦5の釦部13を大きく形成することができるので、スイッチ釦5の大型化をはかることができる。
【0058】
また、この腕時計では、筒状部材14と外装アンテナ部材9との間隔を確保することにより、ケース本体8を小さく形成して外装アンテナ部材9を小さく形成することができるので、ケース全体の小型化を図ることができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、腕時計ケース1の3時側の側部にスイッチ釦5を設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、2時側、4時側、8時側、9時側、10時側の複数箇所にスイッチ釦5を設けても良い。
【0060】
また、上述した実施形態では、ケース本体8の側部に設けられた金属製の筒状部材14にスイッチ釦5を設けた場合について述べたが、この発明は、これに限らず、例えば筒状部材14を用いずに、直接、スイッチ釦5の操作軸12をケース本体8に設けた構成であっても良い。この場合には、外装アンテナ部材9とスイッチ釦5の釦部13との間隔を上述したような間隔に設定すれば良い。
【0061】
また、食込み部20は、金属製の筒状部材14などの金属部品を削ることで、外装アンテナ部材9との間隔を設定するようにしても良い。
【0062】
また、上述した実施形態では、外装アンテナ部材9は、ケース本体8の上部に露出して設けられているが、外装アンテナ部材9を覆うウレタン等の外装部材をさらに設けても良く、また、外装アンテナ部材9が合成樹脂製のケース本体や合成樹脂製の外装部材にインサート成形され、露出していなくても良い。この場合でも、外装アンテナ部材9と金属部品との間隔を上述したような間隔に設定すれば良い。
【0063】
また、上述した実施形態では、腕時計ケース1の側部に金属製の筒状部材14を備えたスイッチ釦5を設けた場合について述べたが、この発明は、必ずしもスイッチ釦5である必要はなく、例えば圧力センサ、温度センサなどの腕時計ケース1の外部環境を検出するための金属部品を備えたセンサであっても良い。
【0064】
さらに、上述した実施形態では、腕時計に適用した場合について述べたが、この発明は、必ずしも腕時計である必要はなく、例えばトラベルウオッチ、目覚まし時計、置き時計、掛け時計などの各種の時計に適用することができる。また、この発明は、必ずしも時計である必要はなく、携帯電話機、携帯端末などの各種の電子機器に広く適用することができる。
【0065】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0066】
(付記)
請求項1に記載の発明は、合成樹脂製のケース本体と、前記ケース本体の上部に設けられ、電波を受信する金属製の外装アンテナ部材と、前記外装アンテナ部材の近傍に設けられた金属部品と、を備え、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との間隔を、容量結合が弱くなる長さに設定したことを特徴とするアンテナ装置である。
【0067】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との前記間隔は、前記電波の共振周波数の変化量が小さいときの長さを基準値として設定されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0068】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のアンテナ装置において、前記外装アンテナ部材と前記金属部品との前記間隔は、前記基準値の長さに対して所定の振れ幅を持った長さに設定されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0069】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のアンテナ装置において、前記基準値の長さに対して前記所定の振れ幅を持った長さは、前記ケース本体に対する前記外装アンテナ部材と前記ケース本体に対する前記金属部品とにおける両方の寸法公差の範囲に設定されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0070】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載のアンテナ装置において、前記金属部品は、前記ケース本体の側部に設けられて、金属部を備えたスイッチ釦であることを特徴とするアンテナ装置である。
【0071】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のアンテナ装置において、前記スイッチ釦の操作方向における前記外装アンテナ部材と前記スイッチ釦の前記金属部との間の距離は、前記スイッチ釦の外周方向における前記外装アンテナ部材と前記スイッチ釦の前記金属部との間の距離よりも短く設定されていることを特徴とするアンテナ装置である。
【0072】
請求項7に記載の発明は、請求項1~請求項6のいずれかに記載されたアンテナ装置を備え、前記ケース本体の下部に設けられた裏蓋と、前記ケース本体の貫通孔に嵌め込まれた金属部を含むスイッチ釦と、前記ケース本体の上部に、ガラスが設けられた前記外装アンテナ部材と、を備えていることを特徴とする時計である。
【符号の説明】
【0073】
1 腕時計ケース
5 スイッチ釦
6 時計モジュール
7 回路基板
8 ケース本体
9 外装アンテナ部材
10 貫通孔
11 受信回路部
12 操作軸
13 釦部
14 筒状部材
14a 小径部
14b 中径部
14c 大径部
20 食込み部
図1
図2