(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/182 20210101AFI20220407BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20220407BHJP
【FI】
G02B7/182
B60R11/02 C
(21)【出願番号】P 2018550190
(86)(22)【出願日】2017-11-06
(86)【国際出願番号】 JP2017039946
(87)【国際公開番号】W WO2018088361
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】P 2016218772
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】山谷 修一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 元一郎
【審査官】岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-109712(JP,U)
【文献】特開2011-197668(JP,A)
【文献】特開2010-134084(JP,A)
【文献】特開2014-085370(JP,A)
【文献】実開昭56-134013(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/00
G02B 7/18-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像を表す表示光を出射する表示部と、前記表示光を投射部材に反射させるミラーユニットと、前記ミラーユニットを回転させ前記投射部材に投射される前記表示光の位置を変更する変更機構と、を備え、前記表示光の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ミラーユニットは、
長手方向に湾曲する光を反射する凹鏡面を含む鏡と、
一対の回転軸部を有し、前記鏡に沿って湾曲し、前記鏡に接着された状態で前記鏡を保持するホルダと、
を備え、
前記鏡に接着する前記ホルダの接着面部は、前記一対の回転軸部の一方側と他方側とにそれぞれ形成される凹凸溝を有し、
前記凹凸溝は、前記ホルダの長手方向と直交する方向に延びる、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記凹凸溝は、前記接着面部の中央を通り直交する2つの直線上の交点と前記交点から所定距離離れた前記直線上の4点が、凸となる、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記接着面部は、前記凹凸溝を囲う凸状の枠部を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヘッドアップディスプレイ装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばヘッドアップディスプレイ等の光学機器の分野において、光を反射させるミラーユニットが知られている。例えば、特許文献1に開示されるように、ミラーユニットは、表示光を反射させつつ拡大する凹面鏡と、その凹面鏡を保持するホルダとを備える。凹面鏡は、両面粘着テープによってホルダに接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成では、高温環境下にミラーユニットが置かれると、凹面鏡とホルダが膨張し、ホルダから鏡が剥離してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、鏡を強固にホルダに接着したミラー
ユニットを備えるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るヘッドアップディスプレイ装置は、
像を表す表示光を出射する表示部と、前記表示光を投射部材に反射させるミラーユニットと、前記ミラーユニットを回転させ前記投射部材に投射される前記表示光の位置を変更する変更機構と、を備え、前記表示光の虚像を表示するヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記ミラーユニットは、
一対の回転軸部を有し、前記回転軸に沿って長くかつ湾曲する光を反射する凹鏡面を含む鏡と、
前記鏡に沿って湾曲し、前記鏡に接着された状態で、前記鏡を保持するホルダと、
を備え、
前記鏡に接着する前記ホルダの接着面部は、前記一対の回転軸部の一方側と他方側とにそれぞれ少なくとも1つ以上形成され、凹凸溝を有し、
前記凹凸溝は、前記ホルダの長手方向と直交する方向に延びる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鏡を強固にホルダに接着したミラーユニットを備えるヘッドアップディスプレイ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表示装置が搭載された車両の模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表示装置の構成を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るミラーユニットの分解斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るミラーユニットの分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る(a)はミラーユニットの平面図であって、(b)はミラーユニットの正面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る凹面鏡の正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るホルダの正面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るホルダの第1の位置決め凹部を拡大した斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る(a)はホルダの第2の位置決め凹部を拡大した斜視図であって、(b)はホルダの第3の位置決め凹部を拡大した斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る(a)は
図5(b)のA-A線断面図であって、(b)は
図5(b)のB-B線断面図であって、(c)は(a)の部分拡大図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るミラーユニットの背面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る(a)は
図11のG-G線断面図であって、(b)は
図11のF-F線断面図であって、(c)は
図11のH-H線断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係るモータおよび変換機構を拡大した斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るホルダの第1の接着面部37aを拡大した斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るホルダの第1の接着面部37aを拡大した上面図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係るホルダの第1の接着面部37aの断面図であって、(a)は
図15のI-I断面図であり、(b)は
図15のJ-J断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るミラーユニットを備えた表示装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る表示装置100は、
図1に示すように、例えば、車両200のダッシュボード内に設置される。表示装置100は、車両200のフロントガラス201(投射部材の一例)に向けて像を表す表示光Lを出射し、フロントガラス201で反射した表示光Lによって前記像の虚像Vを表示する、いわゆるヘッドアップディスプレイ装置として構成されている。このように虚像Vが表示されることで、視認者1(主に車両200の運転者)は、フロントガラス201の遠方に表示される画像を視認する。
【0011】
(表示装置の構成)
表示装置100は、
図2に示すように、表示部10と、折り返しミラー部材20と、ミラーユニット30と、モータ41と、変換機構42と、筐体60と、制御部70と、を備える。
【0012】
筐体60は、非透光性樹脂材料または金属材料で形成されるとともに、中空の略直方体をなす。筐体60には、フロントガラス201に対向する位置に開口部61が形成されている。筐体60は、開口部61を塞ぐ湾曲板状の窓部50を備える。この窓部50は、表示光Lが通過するアクリルなどの透光性樹脂材料からなる。筐体60内には、表示装置100の各構成が収納されている。
【0013】
表示部10は、所定の像を表す表示光Lを出射するものであり、詳しくは、光源11と、液晶表示パネル12と、光源用基板13と、拡散ケース14と、ヒートシンク15と、を備える。
【0014】
光源11は、複数のLED(Light Emitting Diode)から構成されている。光源11は、例えば、各種配線がプリントされたアルミ基板からなる光源用基板13上に実装される。光源11は、液晶表示パネル12を照明する光を出射する。光源11は、光源用基板13を介して制御部70に電気的に接続され、制御部70の制御のもとで発光する。拡散ケース14は、ポリカーボネート等の樹脂から白色に形成されている。拡散ケース14は、光源11と液晶表示パネル12との間に設けられ、光源11からの光を拡散して液晶表示パネル12を均一に照明する。液晶表示パネル12は、制御部70の制御のもとで、各画素を透過/不透過状態に切り替えることで、光源11からの光を受けて所定の像(車両情報を示す画像など)を表す表示光Lを射出する。ヒートシンク15は、アルミニウム等の金属で構成され、光源11で発生する熱を放散する。
【0015】
折り返しミラー部材20は、
図2に示すように、表示部10が出射した表示光Lをミラーユニット30に向けて反射させる。折り返しミラー部材20は、例えば、金型成形したポリカーボネートの樹脂にアルミを真空蒸着して形成される。
【0016】
ミラーユニット30は、表示部10から出射され、折り返しミラー部材20で反射した表示光Lをフロントガラス201に向けて拡大させつつ反射させる。ミラーユニット30の具体的な構成については後で詳述する。
【0017】
モータ41は、筐体60内に固定されるとともに、制御部70の制御のもと駆動する。変換機構42は、モータ41の回転運動を直線運動に変換する機構であって、詳しくは、
図13に示すように、外周にねじが切られたねじ軸42aと、ねじ軸42aの外周に一部が螺合された可動部42bとを備える。可動部42bは、ミラーユニット30の一部(後述する保持部38)を保持する。可動部42bは、モータ41の駆動に伴いねじ軸42aが軸回転することで、ねじ軸42aに沿って移動する。
【0018】
(ミラーユニットの構成)
ミラーユニット30は、
図3および
図4に示すように、表示光Lを反射させる鏡の一例である凹面鏡31と、凹面鏡31を保持するホルダ35とを備える。
【0019】
凹面鏡31は、略長方形の板状に形成され、その長手方向に沿って湾曲している。具体的には、凹面鏡31は、所定の曲率を有する凹状の曲面を含む合成樹脂製の基材と、その基材の曲面上に蒸着されるアルミニウム等の金属製の鏡面31aとを備える。凹面鏡31の基材は、合成樹脂、例えば、鏡面31aの曲面を精度よく成形するため、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂にて形成されてもよい。また、凹面鏡31の基材は、合成樹脂に限らず、ガラスにて形成されてもよい。
【0020】
本実施形態では、鏡面31aに沿うXY面座標のうちX方向が凹面鏡31の長手方向に対応し、このX方向に直交するY方向が凹面鏡31の短手方向に対応する。また、XY面に直交するZ方向は、凹面鏡31の厚さ方向に対応する。
【0021】
凹面鏡31は、
図4および
図6に示すように、その裏面(ホルダ35に対向する面)に凸状に形成される第1~第3の位置決め凸部32a~32cを備える。第1~第3の位置決め凸部32a~32cは、第1~第3のミラー側位置決め部の一例である。各位置決め凸部32a~32cは、凹面鏡31の鏡面31aから離間する方向に突出した先端が球状の円柱状で形成されている。
図4に示すように、第2の位置決め凸部32bは、第1の位置決め凸部32aおよび第3の位置決め凸部32cよりZ方向に高く形成されている。第1の位置決め凸部32aは、凹面鏡31の長手方向(X方向)における第1の端部31bに形成されている。第1の位置決め凸部32aは、凹面鏡31の短手方向(Y方向)における中央に位置する。第2の位置決め凸部32bおよび第3の位置決め凸部32cは、凹面鏡31の長手方向における第1の端部31bと反対側の第2の端部31cに形成されている。第2の位置決め凸部32bは、凹面鏡31の裏面における第2の端部31c側の一方の角部に位置し、第3の位置決め凸部32cは、凹面鏡31の裏面における第2の端部31c側の他方の角部に位置する。すなわち、第1の位置決め凸部32aから第2の位置決め凸部32bまでの距離および第1の位置決め凸部32aから第3の位置決め凸部32cまでの距離は、それぞれ同等の距離であって、かつ可能な限り大きく設定されている。
【0022】
ホルダ35は、凹面鏡31と同様に、略長方形の板状に形成され、その長手方向に沿って湾曲している。ホルダ35は、合成樹脂、例えば、ポリカーボネート(PC)とポリエチレンテレフタラート(PET)のポリマーアロイを用いて形成されている。また、ホルダ35は、例えば、その剛性を高めるために、このPC/PETポリマーアロイにグラスファイバーを10%程度混合させて形成されてもよい。
【0023】
ホルダ35は、
図3および
図7に示すように、その表面(凹面鏡31の裏面に対向する面)に凹状に形成される第1~第3の位置決め凹部36a~36cを備える。第1~第3の位置決め凹部36a~36cは、第1~第3のホルダ側位置決め部の一例である。ホルダ35の第1の位置決め凹部36aは、凹面鏡31の第1の位置決め凸部32aに対応して位置し、ホルダ35の第2の位置決め凹部36bは、凹面鏡31の第2の位置決め凸部32bに対応して位置し、ホルダ35の第3の位置決め凹部36cは、凹面鏡31の第3の位置決め凸部32cに対応して位置する。
【0024】
詳しくは、ホルダ35の第1の位置決め凹部36aは、ホルダ35の長手方向における第1の端部35aに形成されている。第1の位置決め凹部36aは、凹面鏡31の短手方向における中央に位置する。第1の位置決め凹部36aは、
図8および
図12(c)に示すように、先端が球状の円錐形状をなす。第1の位置決め凹部36aは、第1の位置決め凸部32aの先端部と同様の大きさで形成される。第1の位置決め凸部32aの先端部が第1の位置決め凹部36aに当接することで、この第1の当接位置P1(
図5(b)参照)において、X方向、Y方向、およびZ方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置が決まる。
【0025】
第2の位置決め凹部36bおよび第3の位置決め凹部36cは、
図3および
図7に示すように、ホルダ35の長手方向における第1の端部35aと反対側の第2の端部35bに形成されている。第2の位置決め凹部36bは、ホルダ35の表面における第2の端部35b側の一方の角部に位置し、第3の位置決め凹部36cは、ホルダ35の表面における第2の端部35b側の他方の角部に位置する。
【0026】
ホルダ35の第2の位置決め凹部36bは、
図7および
図9に示すように、ホルダ35を表面からみて、第2の位置決め凹部36bと第1の位置決め凹部36aとを結ぶ仮想的な接続線Lに沿って延出する略V字状に形成されている。この接続線Lは、X方向に沿うように、具体的には、接続線LとX方向とがなす角度が、接続線LとY方向とがなす角度より小さくなる方向に延出している。第2の位置決め凹部36bの接続線Lに沿う方向の長さは、ホルダ35の形状誤差(特にX方向の形状誤差)に関わらず、第2の位置決め凸部32bが第2の位置決め凹部36b内に位置するように設定されている。第2の位置決め凹部36bは、
図11のF-F線断面図である
図12(b)に示すように、接続線Lに直交する方向(Y方向に沿う方向)に対面する一対の内面に第2の位置決め凸部32bが当接するように構成されている。第2の位置決め凸部32bの先端部が第2の位置決め凹部36bに当接することで、この第2の当接位置P2(
図5(b)参照)において、Y方向およびZ方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置が決まる。第1および第2の当接位置P1,P2での位置決めにより、凹面鏡31がホルダ35に対して、第1の当接位置P1を回転中心としたXY平面における回転とYZ平面におけるホルダ35に向かう回転が抑制される。また、上述のように第2の位置決め凹部36bが概ねX方向に沿って延出しているため、第2の当接位置P2において、X方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置は決まらない。
【0027】
ホルダ35の第3の位置決め凹部36cは、
図9(b)に拡大して示すように、XY面に沿って延出する当接面の一例である底面36c1と、略J字状に形成される側面36c2とを備える。側面36c2は、ホルダ35の短手方向に延びる端面からホルダ35の長手方向に延びる端面に亘って延出している。第3の位置決め凹部36cは、ホルダ35の側面から外部空間に向かって開放している。底面36c1の面積は、ホルダ35のX方向およびY方向の形状誤差に関わらず、底面36c1上に第3の位置決め凸部32cが位置するように設定される。
図12(a)に示すように、第3の位置決め凸部32cの先端部が第3の位置決め凹部36cの底面36c1に当接することで、その第3の当接位置P3(
図5(b)参照)において、Z方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置が決まる。第1~第3の当接位置P1,P2,P3での位置決めにより、凹面鏡31がホルダ35に対して、第1の当接位置P1および第2の当接位置P2を結ぶ線分(図示略)を中心に、ホルダ35に向かうZ方向への回転が抑制される。第3の位置決め凸部32cは側面36c2に当接しないため、第3の当接位置P3において、X方向およびY方向の凹面鏡31の位置は決まらない。
【0028】
さらに、ホルダ35は、
図7および
図11に示すように、その表面に円板状の第1~第5の接着面部37a~37eを備える。第1の接着面部37aは、ホルダ35の表面の中央に位置し、第2~第5の接着面部37b~37eは、ホルダ35の表面の各角部に位置する。第2の接着面部37bは、第2の位置決め凹部36bの周辺であって、第2の位置決め凹部36bと第1の接着面部37aとの間に位置する。第3の接着面部37cは、第3の位置決め凹部36cの周辺であって、第3の位置決め凹部36cと第1の接着面部37aとの間に位置する。第4の接着面部37dは、ホルダ35の表面における第1の端部35a側の一方の角部に位置し、第5の接着面部37dは、ホルダ35の表面における第1の端部35a側の他方の角部に位置する。ホルダ35に凹面鏡31が組み付けられた状態において、各接着面部37a~37eは、ホルダ35の厚さ方向において、一定距離の隙間を持って凹面鏡31の裏面に対面する。
図10(c)には、第1の接着面部37aと凹面鏡31の裏面との間の隙間のみ図示されているが、第2~第5の接着面部37b~37eと凹面鏡31の裏面との間にも同様の隙間が形成されている。各接着面部37a~37eにおける凹面鏡31の裏面に対面する上面が接着面に相当する。
図10(a)~(c)に示すように、第1の接着面部37aと凹面鏡31の裏面との間には、接着剤55が充填されている。第2~第5の接着面部37b~37eと凹面鏡31の裏面との間にも同様に接着剤55が充填されている。この接着剤55による接着力により、ホルダ35と凹面鏡31とが接着される。例えば、接着剤として、熱可逆性樹脂成分の固形接着剤が採用されてもよい。接着剤は、接着対象となる凹面鏡31の基材およびホルダ35のそれぞれの材質に応じて適宜選択される。具体的には、一例として、凹面鏡31の基材がCOPで形成され、ホルダ35がPC/PETで形成される場合、湿気硬化型の反応性ホットメルト接着剤(ジェットウエルド)と呼ばれる、ウレタン樹脂を主成分としホットメルトに反応系の特性を付与した接着剤を用いて凹面鏡31およびホルダ35を接着してもよい。
【0029】
また、ホルダ35は、
図3に示すように、その短手方向に延びる両側面に、その長手方向に延びる筒状の第1および第2の回転軸部39a,39bを備える。第1の回転軸部39aは、第1の位置決め凹部36aに対応する位置に設けられ、第2の回転軸部39bは、第2の位置決め凹部36bおよび第3の位置決め凹部36cの中間に設けられている。ホルダ35は、第1および第2の回転軸部39a,39bを介して、筐体60内に回転可能に支持されている。
【0030】
また、ホルダ35は、
図3に示すように、その長手方向に延びる両側面のうち第3の位置決め凹部36c側の側面に、略L字状の保持部38を備える。保持部38は、
図13に示すように、ホルダ35の長手方向の中央に位置し、変換機構42の可動部42bに係合している。可動部42bがねじ軸42aに沿って移動することで、可動部42bから、保持部38ひいてはホルダ35に回転力が加えられる。これにより、ホルダ35は、第1および第2の回転軸部39a,39bを中心に回転可能となる。ホルダ35の回転に伴い、ミラーユニット30の鏡面31aに対する表示光Lの入射角が変化し、ミラーユニット30で反射した後の表示光Lの光路が変更され、Z方向における虚像Vの表示位置が変化する。
【0031】
また、ホルダ35の円板状の第1~第5の接着面部37a~37eは、凹凸溝370が形成されている。この凹凸溝370の構成を、
図14,
図15および
図16に示す第1の接着面部37aで説明する。
【0032】
第1の接着面部37aは、ホルダ35の長手方向(X方向)と直交する短手方向(Y方向)に延びる凹凸溝370が形成されている。
【0033】
凹凸溝370は、凹部371と、凸部372と、凹部371と凸部372とを囲う枠部373と、から構成される。
【0034】
凹部371は、すり鉢状の凹形状である。枠部373によって囲まれた凹部371は、硬化前の接着剤を溜める収容部としての機能する。
【0035】
凸部372は、ホルダ35の長手方向(X方向)と直交する短手方向(Y方向)に延びる凸形状である。凹部371と凸部372の凹凸形状により第1の接着面部37aの表面積が大きくなり接着力が増す。また、凹部371と凸部372の凹凸形状はホルダ35の長手方向(X方向)と直交する短手方向(Y方向)に延びることにより、ホルダ35およびホルダ35に接着された凹面鏡31が高温環境下におかれた際に接着面部37aにかかるせん断応力に対しての耐久力が向上し、ホルダ35から凹面鏡31が剥離する虞が低減する。
【0036】
また、第1の接着面部37aの中央を通り直交する2つの直線上の交点P1と前記交点から所定距離離れた当該直線上の4点P2~P5とから構成される所定箇所は天面が平らな凸となっている。これにより、少なくともP1~P5の5点が所定のクリアランスでホルダ35と鏡31とが接着するため、ホルダ35と凹面鏡31との接着力が安定する。
【0037】
また、ホルダ35の樹脂成形は、単一の金型で成形してもよいし、複数の金型を組み合わせて成形してもよい。なお、複数の金型を組み合わせて成形する場合においては、ホルダ35の第1~第5の接着面部37a~37eの周囲に、上方(凹面鏡31が配置される方向)に向かうバリが出ないように金型の継ぎ目を設定することが好ましい。
【0038】
(ミラーユニットの組み立て方法)
次に、ミラーユニット30の組み立て方法について説明する。
まず、各接着面部37a~37eの表面(凹面鏡31に対向する面)に、例えば加熱により液化した接着剤が塗布される。そして、その接着剤が塗布されたホルダ35に凹面鏡31が組み付けられる。このとき、凹面鏡31の第1の位置決め凸部32aがホルダ35の第1の位置決め凹部36a内に位置し、凹面鏡31の第2の位置決め凸部32bがホルダ35の第2の位置決め凹部36b内に位置し、凹面鏡31の第3の位置決め凸部32cがホルダ35の第3の位置決め凹部36c内に位置する。その塗布された接着剤は、例えば空気中の水分に反応することで硬化する。この硬化態様は、選択される接着剤の種類によって異なる。
図10(a)~(c)に示すように、硬化した接着剤55は、凹面鏡31とホルダ35(正確には、第1~第5の接着面部37a~37e)とを接着する。以上で、ミラーユニット30の組み立てが完了する。
【0039】
(作用および効果)
以上、説明した一実施形態によれば、以下の作用および効果を奏する。
【0040】
(1)凹面鏡31は、
図4に示すように、第1~第3の位置決め凸部32a~32cを備える。ホルダ35は、
図3に示すように、第1~第3の位置決め凸部32a~32cに対応する第1~第3の位置決め凹部36a~36cを備える。第1の位置決め凹部36aは、第1の位置決め凸部32aとの接触を通じて、鏡面31aに沿うXY面座標のうち少なくともX方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。第2の位置決め凹部36bは、第2の位置決め凸部32bとの接触を通じて、鏡面31aに沿うXY面座標のうち少なくともY方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。第3の位置決め凹部36cは、第3の位置決め凸部32cとの接触を通じて、XY面に直交するZ方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。このように、3点でXYZ方向に凹面鏡31がホルダ35に対して位置決めされることで、凹面鏡31がホルダ35に対してずれることが抑制される。したがって、このずれに伴ってホルダ35から凹面鏡31に接着剤55を介して意図しない外力が加わることが抑制され、ひいては鏡面31aに歪みが発生することが抑制される。
【0041】
(2)第1の位置決め凹部36aは、第1の位置決め凸部32aとの接触を通じて、X方向、Y方向およびZ方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。また、第2の位置決め凹部36bは、第2の位置決め凸部32bとの接触を通じて、Y方向およびZ方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。さらに、上述のように、第3の位置決め凹部36cは、第3の位置決め凸部32cとの接触を通じて、Z方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。すなわち、第2の位置決め凹部36bは、第2の位置決め凸部32bをX方向に拘束せず、第3の位置決め凹部36cは、第3の位置決め凸部32cをX方向およびY方向に拘束しない。このように、凹面鏡31をホルダ35に少ない拘束で位置決めすることで、ホルダ35から凹面鏡31に接着剤55を介して意図しない外力が加わることが抑制される。これにより、鏡面31aの歪みを抑制することができる。
【0042】
(3)第2の位置決め凹部36bは、
図7に示すように、第1の位置決め凹部36aと第2の位置決め凹部36bとを結ぶ仮想的な接続線Lに沿って延出する凹状をなす。一般的に、ホルダ35は全体が樹脂により形成されるため、凹面鏡31に比べて形状精度が低い。本実施形態では、たとえホルダ35に形状誤差(特にX方向の形状誤差)が生じた場合であっても、第2の位置決め凹部36b内に第2の位置決め凸部32bが位置する。このため、より確実に凹面鏡31がホルダ35に保持される。
【0043】
また、第3の位置決め凹部36cは、
図9(b)に示すように、第1の位置決め凸部32aの先端が当接する当接面の一例である底面36c1を備える。この底面36c1は、例えば、XY平面に沿って延びるとともに、第1の位置決め凹部36aよりも大きい面積に設定される。これにより、第3の位置決め凹部36cの底面36c1には、ホルダ35のX方向およびY方向の形状誤差に関わらず、第3の位置決め凸部32cが当接する。このため、より確実に凹面鏡31がホルダ35に保持される。
【0044】
(4)第1の位置決め凹部36aは、
図3に示すように、ホルダ35のX方向における第1の端部35aに設けられ、第2の位置決め凹部36bおよび第3の位置決め凹部36cは、第1の端部35aの反対側の第2の端部35bにおいて、互いにY方向に離間して設けられる。このように、第1~第3の位置決め凹部36a~36cをできる限り離間して配置することで、凹面鏡31をホルダ35により精度よく保持することができる。
【0045】
(5)ホルダ35は、
図3に示すように、一定距離の隙間を持って、凹面鏡31における鏡面31aと反対側の裏面に対面する第1~第5の接着面部37a~37eを備える。第1~第5の接着面部37a~37eと凹面鏡31の裏面との間の隙間に、
図10(a)~(c)に示すように、接着剤55が充填される。このため、凹面鏡31およびホルダ35を接着する際、凹面鏡31がホルダ35に対して位置ずれすることが抑制される。
【0046】
また、第1~第5の接着面部37a~37eは、凹面鏡31の裏面に均等に配置されている。このため、凹面鏡31には、バランスよく、接着剤55を介してホルダ35から力が加わる。したがって、凹面鏡31の鏡面31aが歪むように、ホルダ35から凹面鏡31に力が加わることが抑制される。
【0047】
また、例えば、塗布時には液状の接着剤が採用されることで、接着剤は第1~第5の接着面部37a~37eと凹面鏡31の裏面との間に挟まれて適宜変形する。ここで、上記特許文献1のように両面粘着テープを使用した場合には、両面粘着テープの厚み、または両面粘着テープが貼り付けられる部分における凹面鏡またはホルダの表面粗さ等によって、凹面鏡がホルダに対して位置ずれするおそれがある。この点、本実施形態では、接着剤は、上記隙間に合わせて流動することで、上記特許文献1のような凹面鏡31の位置ずれが抑制される。
【0048】
(6)本実施形態のミラーユニット30は、
図2に示すように、表示装置100に適用され、表示光Lを拡大させつつ反射させる。このため、ミラーユニット30の凹面鏡31に生じた僅かな歪みであっても、虚像が大きく歪むおそれがある。このため、特に表示装置に適用されるミラーユニットの鏡面には、高い形状精度が要求される。この点、本実施形態では、上述のように鏡面31aの歪みが抑制されるため、ミラーユニット30は、表示装置100に適用することが好ましい。
【0049】
(7)本実施形態のミラーユニット30は、光を反射する鏡面31aを含む鏡31と、鏡31に接着された状態で、鏡31を保持するホルダ35と、を備え、鏡31に接着するホルダ35の接着面部37a~37eは、凹凸溝370を有する。
この構成により、接着面部37a~37eの表面積が大きくなるため、ホルダ35が鏡31を強固に接着でき、ホルダ35から鏡31が剥離する虞が低減する。
【0050】
(8)また、凹凸溝370は、ホルダ35の長手方向と直交する方向に延びる。
この構成により、ミラーユニット30が高温環境下におかれた際の接着面部37aにかかるせん断応力に対しての耐久力が向上し、ホルダ35から鏡31が剥離する虞が低減する。
【0051】
(9)また、凹凸溝370は、接着面部37a~37eの中央を通り直交する2つの直線上の交点P1と前記交点から所定距離離れた前記直線上の4点P2~P5と、から構成される所定箇所P1~P5が凸となる。
この構成により、少なくともP1~P5の5点が所定のクリアランスでホルダ35と鏡31とが接着するため、接着力が安定したミラーユニット30を提供できる。
【0052】
(10)また、接着面部37a~37eは、凹凸溝370を囲う凸状の枠部373を有する。
この構成により、枠部373によって囲まれた凹部371は、硬化前の接着剤を溜める収容部としての機能し、硬化前に接着剤が流出することなく接着面部37a~37eに留まるので、確実にホルダ35に鏡31を接着できる。
【0053】
(変形例)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0054】
上記実施形態における表示装置100の構成は適宜変更可能である。例えば、折り返しミラー部材20を省略して、表示部10からの表示光Lを直接にミラーユニット30に照射してもよい。また、モータ41および変換機構42を省略してもよい。この場合、ミラーユニット30は固定的に筐体60内に設置されるため、ミラーユニット30の両回転軸部39a,39bおよび保持部38を省略してもよい。
【0055】
上記実施形態では、第1の位置決め凸部32aは、凹面鏡31の短手方向における中央に位置していたが、凹面鏡31の角部、例えば、ホルダ35の第4の接着面部37dまたは第5の接着面部37eに対応する角部に位置してもよい。これに応じて、ホルダ35の第1の位置決め凹部36aの位置も変更する必要がある。
【0056】
また、ホルダ35の第1~第3の位置決め凹部36a~36cの位置は適宜入れ替えてもよい。これに応じて、凹面鏡31の第1~第3の位置決め凸部32a~32cの位置も入れ替え可能である。
【0057】
さらに、ホルダの位置決め凹部および凹面鏡の位置決め凸部の数を増やしてもよい。例えば、接続線Lに沿う位置に、第2の位置決め凹部36bとは別に第2の位置決め凹部36bと同形状の第4の位置決め凹部を形成してもよい。この場合、この第4の位置決め凹部に対応する第4の位置決め凸部が凹面鏡31に新たに設けられる。同様に、第1の位置決め凸部32aおよび第1の位置決め凹部36aと同形状の新たな位置決め凹部および位置決め凸部を設けてもよいし、第3の位置決め凸部32cおよび第3の位置決め凹部36cと同形状の新たな位置決め凹部および位置決め凸部を設けてもよい。
【0058】
上記実施形態では、ホルダ35に第1~第3の位置決め凹部36a~36cが形成され、凹面鏡31に第1~第3の位置決め凸部32a~32cが形成されていた。しかし、反対に、ホルダ35に第1~第3の位置決め凸部が形成され、凹面鏡31に第1~第3の位置決め凹部が形成されてもよい。
【0059】
ホルダ35の第1~第3の位置決め凹部36a~36cの形状を適宜変更してもよい。例えば、全ての位置決め凹部を、第1の位置決め凹部36aと同様の形状としてもよい。この構成でも、少なくとも上記作用および効果の(1)を奏することができる。
【0060】
また、第1の位置決め凹部36aを、Y方向または、接続線Lに直交する方向に延びる凹状に形成してもよい。この構成では、第1の位置決め凹部36aは、第1の位置決め凸部32aとの接触を通じて、X方向およびZ方向における凹面鏡31のホルダ35に対する位置を決める。また、第1の位置決め凹部36aは円錐状で形成されていたが、円柱状で形成されてもよい。この場合、第1の位置決め凹部および第1の位置決め凸部によって、Z方向に凹面鏡31は位置決めされない。同様の観点から、第2の位置決め凹部36bもV字状でなく、例えばU字状、凹字状に形成されてもよい。さらに、第1の位置決め凹部および第2の位置決め凹部は、ホルダ35を厚さ方向に貫通していてもよい。
【0061】
上記実施形態では、第1~第3の位置決め凸部32a~32cは先端が球状の円柱状に形成されていたが、これに限定されず、例えば、普通の円柱状または半球状に形成されてもよい。
【0062】
上記実施形態では、接着剤として、例えば、熱可逆性樹脂成分の固形接着剤が採用されていたが、接着剤として両面粘着テープを採用してもよい。
【0063】
上記実施形態では、鏡として凹面鏡31が採用されていたが、鏡であれば凸面鏡、平面鏡等であってもよい。
【0064】
上記実施形態では、本発明に係る表示装置を車載用のヘッドアップディスプレイ装置に適用したが、車載用に限らず、飛行機、船等の乗り物に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置に適用してもよい。また、投射部材はフロントガラスに限られず、専用のコンバイナであってもよい。また、本発明に係る表示装置をヘッドアップディスプレイ装置ではなく、屋内または屋外で使用されるプロジェクタ等の表示装置に適用してもよい。また、投射部材は透光性を有するものに限られず、反射型のスクリーンなどであってもよい。また、例えば、本発明に係る表示装置をメガネ型ウェアラブル端末に搭載してもよい。
【0065】
さらに、上記実施形態では、ミラーユニット30は、表示装置100に適用されていたが、その他の光学製品に適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…視認者
10…表示部
11…光源
12…液晶表示パネル
13…光源用基板
14…拡散ケース
15…ヒートシンク
20…折り返しミラー部材
30…ミラーユニット
31…凹面鏡
31a…鏡面
31b…第1の端部
31c…第2の端部
32a~32c…第1~第3の位置決め凸部
35…ホルダ
35a…第1の端部
35b…第2の端部
36a~36c…第1~第3の位置決め凹部
36c1…底面
36c2…側面
37a~37e…第1~第5の接着面部
370…凹凸溝
371…凹部
372…凸部
373…枠部
P1~P5…所定箇所
38…保持部
55…接着剤
60…筐体
100…表示装置