(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-06
(45)【発行日】2022-04-14
(54)【発明の名称】採血管ホルダ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/153 20060101AFI20220407BHJP
【FI】
A61B5/153 300
(21)【出願番号】P 2017046558
(22)【出願日】2017-03-10
【審査請求日】2019-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】三宅 貴子
(72)【発明者】
【氏名】中川 直己
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0028152(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102005054989(DE,A1)
【文献】特表平07-502440(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0187493(US,A1)
【文献】特開2007-152083(JP,A)
【文献】特開平10-080486(JP,A)
【文献】特開平10-057489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に採血針が装着された筒状のホルダ部の先端部分に対して、使用済の該採血針を覆うプロテクタがカラー部において外挿状態で取り付けられた採血管ホルダであって、
前記ホルダ部には、前記採血針を覆う取外し可能なキャップが取り付けられている一方、
該キャップと該ホルダ部との
間に跨って貼付されるシールを有しており、
該ホルダ部の先端部分への前記カラー部の外挿による取り付けに際して該キャップと該ホルダ部との
間に跨って貼付された該シールへの該カラー部の接触を緩和する接触緩和機構が該カラー部に設けられている一方、
前記プロテクタが連結部によって前記カラー部の先端部分へ連結されており、
該カラー部の先端が該ホルダ部の
軸方向中間部分の外周面に
おいてシール貼付位置よりも基端側に突設された係合突起へ係合することで、該カラー部の該ホルダ部からの抜けを防止する抜止係合部が設けられており、
該カラー部の内周面において前記ホルダ部の外周面に近接する小径部が、該カラー部の先端部から軸方向に延びて設けられていると共に、
前記接触緩和機構として、該小径部における
該ホルダ部への取付方向前方側の端部には取付方向前方側に向かって拡径する拡径部が設けられている採血管ホルダ。
【請求項2】
前記ホルダ部は、該ホルダ部の先端部分に設けられた外周筒部を有し、
前記シールは、該外周筒部に貼付されており、
前記接触緩和機構の内径は、該シールを含む該外周筒部の外径寸法以上の大きさである請求項1に記載の採血管ホルダ。
【請求項3】
前記接触緩和機構として、前記カラー部の前記ホルダ部に対する取付方向前方側の内周面に設けられた大径部と、該大径部から取付方向後方側の小径部に向かって次第に内径が変化する傾斜部とを有する該カラー部の内周面が採用されている請求項1又は2に記載の採血管ホルダ。
【請求項4】
前記接触緩和機構として、前記カラー部の前記ホルダ部に対する取付方向前方側の内周角部に設けられた面取り部が採用されている請求項1又は2に記載の採血管ホルダ。
【請求項5】
前記シールは、前記採血管ホルダの未使用状態を確認できる未使用確認シールであって、前記キャップと前記ホルダ部との間に跨って貼付されて使用時の該キャップの取外しにより切断されるようになっている請求項1~
4の何れか1項に記載の採血管ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血に際して用いられる採血管を保持する採血管ホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において患者から採血の処置を行うに際しては、血液を採血管に採取しており、一般に、当該採血管を保持する採血管ホルダが用いられている。
【0003】
ところで、採血針を患者に穿刺して使用した後に、抜去した採血針が暴露されたままになっていると、医師や看護師、廃棄業者等が誤穿刺等するおそれがある。誤穿刺などの事故が発生した場合、採血針に付着した血液により感染症をひき起こしてしまう危険がある。
【0004】
そこで、使用後の採血針を覆うプロテクタが提案されている。例えば特許第3109831号公報(特許文献1)に記載のものがそれである。すなわち、採血管ホルダにおけるホルダ部の先端部分に対して、プロテクタに設けられたリング状のカラー部が外側から嵌合されることで、プロテクタを備える採血管ホルダが構成されている。したがって、ホルダ部からのプロテクタの脱落を防止するために、ある程度の嵌合力を確保する必要があり、カラー部の内径寸法をより小さくすることが好ましかった。
【0005】
ところで、本発明者らは、採血管ホルダが未使用な状態であるか否かを確認するために、または製造元や製品番号を示すために、ホルダ部の先端部分と、そこに装着されるキャップとの少なくとも一方にシールを貼付することを検討した。しかし、製造工程上などの理由で、ホルダ部の先端部分やキャップに対して、シールを貼付した後に、カラー部を外挿して組み付ける場合には、内径が小さくされたカラー部をホルダ部の先端部分に嵌合する製造段階において、かかるシールがカラー部の内周面により擦られて損傷するおそれがあった。
【0006】
なお、かかる問題を解消するために、カラー部の内径寸法をシールに擦らない程度に大きくすることも検討したが、単にカラー部の内径寸法を大きくしただけでは、カラー部におけるホルダ部の先端部分への嵌合力が小さくなり、カラー部がホルダ部から抜け落ちてしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、カラー部によるホルダ部への嵌合力を十分に確保しつつ、シールの損傷を防止することができると共に、ホルダ部からのカラー部の抜けも防止することができる、新規な構造の採血管ホルダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
本発明の第1の態様は、先端側に採血針が装着された筒状のホルダ部の先端部分に対して、使用済の該採血針を覆うプロテクタがカラー部において外挿状態で取り付けられた採血管ホルダであって、前記ホルダ部には、前記採血針を覆う取外し可能なキャップが取り付けられている一方、該キャップと該ホルダ部との間に跨って貼付されるシールを有しており、該ホルダ部の先端部分への前記カラー部の外挿による取り付けに際して該キャップと該ホルダ部との間に跨って貼付された該シールへの該カラー部の接触を緩和する接触緩和機構が該カラー部に設けられている一方、前記プロテクタが連結部によって前記カラー部の先端部分へ連結されており、該カラー部の先端が該ホルダ部の軸方向中間部分の外周面においてシール貼付位置よりも基端側に突設された係合突起へ係合することで、該カラー部の該ホルダ部からの抜けを防止する抜止係合部が設けられており、該カラー部の内周面において前記ホルダ部の外周面に近接する小径部が、該カラー部の先端部から軸方向に延びて設けられていると共に、前記接触緩和機構として、該小径部における該ホルダ部への取付方向前方側の端部には取付方向前方側に向かって拡径する拡径部が設けられているものである。
【0011】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、カラー部に、シールへの接触を緩和する接触緩和機構を設けることで、シールの損傷を回避しつつ、カラー部をホルダ部の先端部分に取り付けることができる。それに加えて、ホルダ部とカラー部との間に、カラー部の抜けを防止する抜止係合部を設けることで、カラー部の抜けが防止され得るのである。すなわち、本態様の採血管ホルダでは、カラー部におけるホルダ部への十分な嵌合力を確保しつつシールの損傷を防止するという、相反する効果を両立して発揮するものであり、且つホルダ部からのカラー部の脱落も効果的に防止するものである。
【0012】
前記第1の態様における接触緩和機構は、以下の第2~第4の何れかの態様をもって構成されることが好適である。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る採血管ホルダにおいて、前記ホルダ部は、該ホルダ部の先端部分に設けられた外周筒部を有し、前記シールは、該外周筒部に貼付されており、前記接触緩和機構の内径は、該シールを含む該外周筒部の外径寸法以上の大きさであるものである。
【0014】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に係る採血管ホルダにおいて、前記接触緩和機構として、前記カラー部の前記ホルダ部に対する取付方向前方側の内周面に設けられた大径部と、該大径部から取付方向後方側の小径部に向かって次第に内径が変化する傾斜部とを有する該カラー部の内周面が採用されているものである。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第1又は第2の態様に係る採血管ホルダにおいて、前記接触緩和機構として、前記カラー部の前記ホルダ部に対する取付方向前方側の内周角部に設けられた面取り部が採用されているものである。
【0020】
本発明の第5の態様は、前記第1~第4の何れかの態様に係る採血管ホルダにおいて、前記シールは、前記採血管ホルダの未使用状態を確認できる未使用確認シールであって、前記キャップと前記ホルダ部との間に跨って貼付されて使用時の該キャップの取外しにより切断されるようになっているものである。
【0021】
本態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、未使用な状態にあるか否かを判別する手段として、キャップとホルダ部との間に跨って貼付される未使用確認シールを採用している。すなわち、ホルダ部からキャップを取り外すことで、未使用確認シールが切断されるようになっており、採血管ホルダの使用時に、未使用確認シールを目視で確認することで、採血管ホルダが未使用か否かを判別することができるようになっている。これにより、採血管ホルダが未使用な状態にあるか否かをより確実に判別することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に従う構造とされた採血管ホルダによれば、ホルダ部への嵌合力を十分に確保しつつ、接触緩和機構を設けることで、カラー部とシールとの接触が緩和されて、シールの損傷を効果的に防止することができる。また、抜止係合部が設けられることで、ホルダ部からのカラー部の抜けが効果的に防止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態としての採血管ホルダを製品出荷状態で示す斜視図。
【
図3】
図1に示された採血管ホルダを採血状態で示す斜視図。
【
図4】
図3に示された採血管ホルダを拡大して示す平面図。
【
図5】
図1に示された採血管ホルダにおいて採血後にプロテクタを回動させて安定位置に移動させた状態を示す正面図。
【
図6】
図1に示された採血管ホルダにおいて採血後にプロテクタを回動させて採血針をプロテクタで覆った状態を示す斜視図。
【
図10】
図8におけるX-X断面を拡大して示す横断面図。
【
図11】
図8におけるXI-XI断面を拡大して示す横断面図。
【
図12】
図1に示された採血管ホルダにおける要部を拡大して示す縦断面図。
【
図13】本発明の第2の実施形態としての採血管ホルダの要部を拡大して示す横断面図であって、
図12におけるXIII-XIII断面に相当する図。
【
図14】本発明の第3の実施形態としての採血管ホルダの要部を拡大して示す縦断面図。
【
図15】
図14に示された採血管ホルダを構成するプロテクタのカラー部における要部を拡大して示す縦断面図。
【
図16】
図14に示された採血管ホルダの変形例の要部を拡大して示す縦断面図。
【
図17】本発明の別の態様としての採血管ホルダを拡大して示す平面図。
【
図18】本発明の更に別の態様としての採血管ホルダを示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
先ず、
図1,2には、本発明の第1の実施形態としての採血管ホルダ10が製品出荷状態で示されている。この採血管ホルダ10は、皮膚に穿刺される医療用の採血針12(
図3等参照)とホルダ部14を備えている。そして、ホルダ部14にはプロテクタ16が取り付けられており、採血針12の穿刺後、プロテクタ16をホルダ部14に対して回動変位させることで使用済の採血針12がプロテクタ16により側方から覆われて保護されるようになっている。なお、
図1に示す初期状態(製品出荷状態)では、採血針12が露出しないように、採血針12が外側からキャップ18により覆われている。また、以下の説明において、軸方向とは、採血針12の針軸方向である
図2中の上下方向をいう。さらに、先端側とは、採血針12の皮膚に穿刺される側である
図2中の上側をいう一方、基端側とは、採血針12において採血管20(
図3等参照)が接続される側である
図2中の下側をいう。
【0026】
より詳細には、本実施形態の採血針12は中空の両頭針とされており、即ち採血針12の先端と基端には、それぞれ鋭利な針先22,24(
図9参照)が設けられている。特に、先端側の針先22には、穿刺し易いように刃面26(
図3等参照)が形成されており、当該刃面26が、軸方向に対して傾斜する傾斜面とされている。また、本実施形態では、当該採血針12の長さ方向中間部分において、周壁の一部が切り欠かれた切欠部28(
図9参照)が形成されている。
【0027】
かかる採血針12は、その長さ方向中間部分またはその基端側において、ハブとしての針ハブ30(
図4等参照)に固定支持されている。この針ハブ30は、略筒状とされており、中心孔に採血針12が挿通されて接着剤で接着されることなどにより、採血針12が針ハブ30に固定支持されている。また、針ハブ30の長さ方向中間部分の外周面には雄ねじ32(
図9参照)が形成されているとともに、基端の外周面には、外周側に突出する大径の固定部34(
図9参照)が形成されている。
【0028】
一方、針ハブ30の先端部分は小径筒部36(
図4等参照)とされており、当該小径筒部36の外周面には、外周側に放射状に突出する複数の(本実施形態では4つの)突出部38(
図4等参照)が設けられている。そして、小径筒部36の内周側に採血針12の切欠部28が位置するように採血針12と針ハブ30が軸方向で位置合わせされた状態で、採血針12が針ハブ30に固定支持されている。
【0029】
この針ハブ30には、例えば特開2002-325750号公報に示す如きフラッシュバック観察部40が設けられている。すなわち、この針ハブ30は、透明な合成樹脂材料により一体形成されており、採血針12を皮膚に穿刺することで採血針12内に血液が流入して、透明な針ハブ30を介して切欠部28によりフラッシュバックが観察または確認できるようになっている。したがって、小径筒部36の周壁において、切欠部28の外周側に位置する部分がフラッシュバック観察部40とされている。
【0030】
なお、本実施形態では、フラッシュバックが観察または確認できるように、採血針12の軸方向中間部分に切欠部28を設けていたが、採血針は、特開2002-325750号公報の
図1,3,4等に示すように先端側針管と基端側針管の2部材からなるようにしてもよいし、針ハブ30の形状等も、例えば特開2002-325750号公報の
図1~4等に記載のものなど、従来公知の形状が採用され得る。尤も、かかるフラッシュバック観察部は、本発明において、必須なものではない。
【0031】
そして、かかる針ハブ30の基端には、ラバースリーブ42(
図9参照)が取り付けられて、採血針12の基端側が当該ラバースリーブ42により覆われている。このラバースリーブ42は、ゴム製の略有底円筒形状の部材とされており、中心孔に採血針12の基端側が挿入されるとともに、先端側開口部が針ハブ30の基端の固定部34に係止されることで針ハブ30に液密的に取り付けられている。これにより、未使用時における採血針12の基端側の針先24の露出が回避されている。
【0032】
かかる針ハブ30は、ホルダ部14に取り付けられている。ホルダ部14は、全体として筒状とされており、本体部44と、当該本体部44の基端側から挿入される保持部46(
図9参照)とから構成されている。
【0033】
本体部44は、透明な合成樹脂材料により形成されることが好適であり、全体として、略有底円筒形状とされている。すなわち、本体部44は、略軸直角方向に広がると共に中央に貫通孔48(
図9参照)を有する環状の底壁部50と、当該底壁部50の外周縁部から基端側に向かって僅かに拡径しながら延びる略テーパ筒状の側壁としての周壁部52とを備えている。
【0034】
そして、底壁部50の径方向中間部分において、先端側端面からは、先端側(軸方向外方)に突出する筒状の外周筒部54が形成されているとともに、内周縁部からは、先端側に突出する筒状の内周筒部56(
図9参照)が形成されている。この内周筒部56の突出高さ寸法(軸方向寸法)は、外周筒部54の突出高さ寸法(軸方向寸法)よりも小さくされており、外周筒部54が、内周筒部56よりも先端側に突出している。すなわち、本体部44の先端側は、内周筒部56の形成位置において二重筒構造とされており、ホルダ部14の先端部分が、外周筒部54を含んで構成されている。また、内周筒部56の内周面には、針ハブ30の雄ねじ32に対応する雌ねじ58(
図9参照)が形成されている。
【0035】
一方、外周筒部54の外周面60には、その軸方向中間部分において、周方向の全周に亘って連続して延びる係合突起としての突出リブ62が形成されている。かかる突出リブ62の、外周筒部54の外周面60からの突出寸法A(
図2参照)は何等限定されるものではなく、後述するカラー部82がキャップ18の先端側から外挿される際に、基端方向に突出リブ62を乗り越えることを阻害せず、且つ突出リブ62を乗り越えた後は、カラー部82が先端方向に動くことを防止できるように構成されていればよい。なお、カラー部82による突出リブ62の乗越時には、カラー部82および/または突出リブ62が、多少の変形を伴うようになっていてもよい。
【0036】
また、周壁部52の基端側開口部64(
図9参照)には、径方向外方に突出するフランジ66が一体形成されている。本実施形態では、当該フランジ66が、周方向の全周に亘って連続して形成されており、周方向でその突出寸法が異ならされている。すなわち、フランジ66の径方向1方向の両側(本実施形態では、
図2中の左右方向の両側)には、突出寸法が大きくされた大径部68a,68aが設けられている一方、これら大径部68a,68aの対向方向と直交する方向の両側(
図4中の上下方向両側)には、突出寸法が小さくされた小径部68b,68bが設けられている。特に、本実施形態では、両大径部68a,68aのそれぞれの周方向中央部分に、当該大径部68a,68aよりも突出寸法の小さくされた凹部68c,68cが設けられている。
【0037】
一方、保持部46は、全体として、略円筒形状とされており、内周面が略ストレートとされた筒状部70(
図9参照)の先端から、径方向で弾性変形可能な保持爪部72(
図9参照)が先端側に突出している。本実施形態では、4つの保持爪部72が設けられており、筒状部70の先端において、周方向に等間隔で形成されている。なお、これらの保持爪部72は、それぞれ略くの字状に屈曲する形状とされており、相互に当接することなく、それぞれ所定の周方向距離を隔てて位置している。
【0038】
以上の如き構造とされた本体部44の基端側開口部64から保持部46が挿入されて一体的に組み付けられることで、ホルダ部14が構成されている。なお、保持爪部72の突出先端は、底壁部50までは至らずに、ホルダ部14内で自由端として位置せしめられている。また、本体部44と保持部46との固定手段は、何等限定されるものではなく、溶着や接着などであってもよいが、本実施形態では、本体部44の内周面と保持部46の外周面との間に凹凸が設けられて、これらの凹凸嵌合により相互に係止固定されるようになっている。
【0039】
また、かかるホルダ部14の基端側開口部64は、蓋シートとしての空気透過性シート74で覆われている。この空気透過性シート74は、気体は透過する一方、細菌は透過しない、例えば多孔性のシートとされており、当該空気透過性シート74が、ホルダ部14の基端に設けられたフランジ66の基端面に対して溶着や接着などの手段により固着されている。
【0040】
そして、かかる構造とされたホルダ部14に対して、採血針12が固定された針ハブ30が取り付けられている。すなわち、ホルダ部14の本体部44における内周筒部56の先端側開口から採血針12が固定された針ハブ30が挿入されて、雄ねじ32と雌ねじ58が螺合することで、ホルダ部14に対して採血針12および針ハブ30が取り付けられている。これにより、ホルダ部14の先端側に採血針12が装着される。
【0041】
かかる採血針12および針ハブ30のホルダ部14への取付状態では、これら採血針12および針ハブ30が外周筒部54および内周筒部56に囲まれている一方、採血針12の先端側の針先22がホルダ部14よりも先端側に突出している。それとともに、採血針12の切欠部28および針ハブ30のフラッシュバック観察部40が、本体部44の内周筒部56よりも先端側、且つ外周筒部54の内周側に位置している。一方、採血針12の基端側の針先24は、ラバースリーブ42に覆われた状態で底壁部50の貫通孔48に挿通されて、ホルダ部14における周壁部52の内部に位置している。特に、本実施形態では、かかる採血針12の基端側の針先24が、保持爪部72の軸方向中間部分に相当する軸方向位置で、各保持爪部72の内周側に位置している。
【0042】
また、キャップ18は、基端側に開口する略有底の筒形状とされており、軸方向に延びている。本実施形態のキャップ18は、先端部分が、先端側に向かって外径寸法が次第に小径となるテーパ筒形状とされているとともに、軸方向中間部分には、略一定の外径寸法をもって軸方向に延びるシール貼付部76が形成されている。このシール貼付部76の外径寸法は、ホルダ部14の本体部44における外周筒部54の外径寸法と略等しくされている。一方、キャップ18の基端部分は、当該シール貼付部76の外径寸法よりも小さくされており、かかるキャップ18の基端部分の外径寸法が、外周筒部54の内径寸法と略等しくされている。
【0043】
そして、キャップ18の基端側開口から採血針12の先端側が挿入されて、当該キャップ18の基端部分が外周筒部54に内嵌されることにより、ホルダ部14に対してキャップ18が、採血針12におけるホルダ部14からの突出部分を覆った状態で取り付けられるようになっている。なお、キャップ18の基端側開口部における内周面には、内周側に突出する突部が周方向で複数設けられており、針ハブ30の先端に設けられた突出部38と周方向で係合することで、キャップ18がホルダ部14に対して周方向で回転することが防止されている。
【0044】
ここにおいて、
図1,2に示される製品出荷状態では、ホルダ部14における外周筒部54とキャップ18におけるシール貼付部76とに跨って、シールとしての未使用確認シール78が貼付されている。この未使用確認シール78は、何等限定されるものではないが、例えば内面に接着剤が塗布された樹脂テープなどとされており、所定の軸方向寸法をもって周方向に延びている。かかる未使用確認シール78の周方向寸法は何等限定されるものではないが、本実施形態では、1/3周よりも短い周方向寸法をもって形成されている。また、未使用確認シール78の軸方向寸法も何等限定されるものではないが、外周筒部54に貼付される部分は、突出リブ62にまでは至らない軸方向寸法をもって形成されている。さらに、未使用確認シール78の周上における貼付位置も何等限定されるものではないが、本実施形態では、採血針12において刃面26が設けられている方向(
図2中の紙面手前方向)に対して直交する方向(
図2中の左方)に、未使用確認シール78が貼付されている。
【0045】
なお、未使用確認シール78の軸方向中間部分において、ホルダ部14とキャップ18との境界に位置する部分には、点線状の切断容易部80が設けられており、ホルダ部14からのキャップ18の取外し時に、未使用確認シール78が容易に切断され易くなっている。また、本実施形態の未使用確認シール78には、ホルダ部14からのキャップ18の取外し方向(即ち、上方)を示す矢印や、使用者がキャップ18の取外し操作が視覚的に分かり易いように、PULL等の文字が印刷されている。尤も、未使用確認シール78の印刷は特に限定されるものではない。
【0046】
以上の如き採血針12を備えたホルダ部14に対して、プロテクタ16が取り付けられることにより、本実施形態の採血管ホルダ10が構成されている。このプロテクタ16は、ホルダ部14に外挿状態で取り付けられるカラー部82と、ホルダ部14に対して回動することで使用済の採血針12を側方から覆って保護するプロテクタ本体84とを含んで構成されている。
【0047】
このカラー部82は、周方向の全周に亘って連続して延びる筒状とされている。そして、当該カラー部82の内径寸法は、未使用確認シール78を含む外周筒部54の外径寸法と等しいか、僅かに大きくされている。
【0048】
一方、プロテクタ本体84は、全体として溝幅寸法に対して溝長さ寸法が大きくされた長手の凹溝状とされており、即ち、長手の底壁としての溝底壁部86と、当該溝底壁部86の周方向両端から、溝底壁部86の厚さ方向のうちの一方の側に突出する一対の側壁部88,88を備えている。そして、これら溝底壁部86と両側壁部88,88により、採血針12を側方から覆うための側方開口部90が形成されている。換言すれば、プロテクタ本体84には、回動方向において、採血針12に向かって開口する側方開口部90が形成されている。
【0049】
また、かかるプロテクタ本体84の凹溝(側方開口部90)は、長さ方向一方の側(
図1,2中の上方)で基端側開放部92をもって開放されている一方、長さ方向他方の側(
図1,2中の下方)で先端側壁部94(
図3等参照)をもって閉塞する行き止まり形状とされている。
【0050】
さらに、プロテクタ本体84の凹溝内には、採血針12がプロテクタ本体84に収容された際に、採血針12を係止して収容状態を保持する係止部96(
図3等参照)が形成されている。本実施形態では、係止部96が、溝底壁部86から側方開口部90の開口側に向かって突出しており、その突出先端において溝底壁部86側に折り返されて略レの字状とされている。そして、かかる屈曲部分に採血針12が係止されることで、プロテクタ本体84が採血針12の収容状態に保持されるようになっている。なお、本実施形態では、プロテクタ本体84の凹溝内において、2つの係止部96,96が、軸方向で相互に離隔して形成されている。
【0051】
かかる形状とされたプロテクタ本体84がカラー部82の外周側に位置しており、これらカラー部82とプロテクタ本体84とが、連結部98により相互に接続されている。すなわち、連結部98は、カラー部82から外周側に延び出しており、カラー部82の外周面100と、プロテクタ本体84の溝底壁部86における側壁部88,88が突出していない側の端面とが、連結部98により相互に接続されている。特に、この連結部98は、カラー部82における先端と、プロテクタ本体84の溝底壁部86における長さ方向一方の側(基端側開放部92が形成されている側)の端部を接続している。
【0052】
本実施形態では、かかる連結部98が、プロテクタ本体84の回動に伴って折れ曲がることが可能な連結アーム102と、プロテクタ本体84に回動するための付勢力を与える付勢アーム104とから構成されている。特に、本実施形態では、付勢アーム104の周方向両側のそれぞれに連結アーム102,102が形成されている。
【0053】
これらの連結アーム102,102は全体としてそれぞれ略板状とされており、その長さ方向中間部分に厚さ寸法が小さくされたヒンジ状の薄肉部106,106を有しているとともに、当該薄肉部106を挟んだ両側が厚肉部108,108とされている。かかる薄肉部106,106により連結アーム102,102が自由に折れ曲がる、即ち両厚肉部108,108が形成する角度を自由に変更することが可能とされている。
【0054】
一方、付勢アーム104は、板状の部材の長さ方向中間部分を基端側へ湾曲または屈曲せしめて弾性を付与した弾性片により構成されており、当該長さ方向中間部分が屈曲部110とされている。
【0055】
そして、かかる付勢アーム104を弾性変形させることにより、プロテクタ本体84がホルダ部14に対して回動変位せしめられて、プロテクタ本体84が初期位置とは異なる、他の安定位置へ向かって移動するようになっている。要するに、かかる付勢アーム104により、プロテクタ本体84を複数の安定位置で選択的に位置決めすることができるようになっている。
【0056】
すなわち、採血針12の初期状態または穿刺時における安定位置では、付勢アーム104が屈曲部110において湾曲または屈曲せしめられてカラー部82とプロテクタ本体84との離隔距離が小さくされているが、プロテクタ本体84の回動変位に伴って付勢アーム104の屈曲部110が伸長せしめられてカラー部82とプロテクタ本体84との離隔距離が大きくされることにより、付勢アーム104には元の湾曲または屈曲の状態に戻ろうとする復元力(カラー部82とプロテクタ本体84とが接近しようとする方向の力)が及ぼされる。そして、更なるプロテクタ本体84の回動により付勢アーム104における屈曲部110が湾曲または屈曲する状態に復元してカラー部82とプロテクタ本体84との離隔距離が小さくされることで、プロテクタ本体84が初期位置とは異なる、他の安定位置に位置せしめられるようになっている。
【0057】
なお、かかる付勢アーム104の長さ寸法や形状等は何等限定されるものではないが、プロテクタ本体84の回動変位に際して、プロテクタ本体84の、ホルダ部14などの他部材への干渉を回避するように設定されることが好適である。
【0058】
また、以上の如きプロテクタ16は、カラー部82とプロテクタ本体84と連結部98(連結アーム102,102および付勢アーム104)とを備えた合成樹脂の一体成形品として形成されている。
【0059】
ここにおいて、かかるプロテクタ16が採血針12を備えるホルダ部14に取り付けられている。すなわち、プロテクタ16におけるカラー部82が、ホルダ部14の本体部44における外周筒部54に対して先端側から外嵌されている。すなわち、カラー部82のホルダ部14に対する取付方向が、先端側から基端側に向かう方向、すなわち上方から下方に向かう方向とされている。そして、プロテクタ本体84がホルダ部14の外周側に位置しており、プロテクタ本体84が連結部98を中心に回動変位することで採血針12を側方から覆って保護するようになっている。
【0060】
かかるカラー部82の外周筒部54への外嵌の際、カラー部82が、外周筒部54の外周面60に設けられた突出リブ62を乗り越えるようになっており、カラー部82が突出リブ62よりも基端側に位置せしめられるようになっている。そして、当該突出リブ62が、カラー部82において抜け方向の端部となる上端部と係合することにより、カラー部82の外周筒部54からの抜けが防止されている。なお、本実施形態では、カラー部82が、フラッシュバック観察部40を避けた位置(フラッシュバック観察部40よりも基端側)において、外周筒部54に外挿されて取り付けられるようになっている。
【0061】
そして、外周筒部54に対してカラー部82が外挿状態で取り付けられることにより、プロテクタ16が外周筒部54に対して周方向に移動可能(回転可能)とされている。尤も、カラー部82の内周面と外周筒部54の外周面60とは、ある程度の摩擦力をもって当接しており、プロテクタ16がホルダ部14に対して自由に回転しない、周方向での位置決め状態で取り付けられている。すなわち、プロテクタ16に対して所定量以上の周方向の外力を加えることで、プロテクタ16がホルダ部14に対して周方向で回転可能とされている。
【0062】
なお、本実施形態において、
図1,2に示す製品出荷状態では、プロテクタ16におけるプロテクタ本体84の周方向位置がホルダ部14の基端に設けられたフランジ66の一方の大径部68a(
図2中の右方)の延出方向と周上で同位置とされている。そして、かかる製品出荷状態におけるプロテクタ本体84の周方向位置が、採血針12を挟んで、未使用確認シール78と反対側とされている。これにより、例えばプロテクタ本体84により未使用確認シール78が見えなくなるなどのおそれが低減され得る。
【0063】
このような採血管ホルダ10は、例えば滅菌ガスによって効果的に滅菌され得る。すなわち、ホルダ部14の基端側開口部64が空気透過性シート74で覆われていることから、ホルダ部14内に滅菌ガスが導入されてホルダ部14内が滅菌される一方、ホルダ部14内への細菌等の侵入が防止されて、ホルダ部14内が滅菌状態で保持され得る。なお、かかる滅菌処理は、プロテクタ16をホルダ部14に組み付ける前であってもよい。
【0064】
以上の如き構造とされた本実施形態の採血管ホルダ10は、
図1,2に示されるように、製品出荷状態では、プロテクタ16のプロテクタ本体84の長さ方向が針軸方向と平行になる、即ちプロテクタ本体84がホルダ部14に沿った状態となる安定位置で保持せしめられている。この際、ホルダ部14の周壁部52とプロテクタ本体84の溝底壁部86との間には、所定の大きさの隙間112が形成されており、本実施形態では、プロテクタ本体84における長さ方向の略全長に亘って隙間112が形成されている。
【0065】
そして、採血時には、先ず、キャップ18を先端側に引き抜いてホルダ部14から取り外し、
図3,4に示されるように、採血針12の針先22を露出させる。その際、キャップ18とホルダ部14の外周筒部54に跨って貼付されている未使用確認シール78が、切断容易部80で切断される。なお、採血時には、プロテクタ16をホルダ部14に対して周方向で回転せしめて、プロテクタ本体84を、針先22に形成された刃面26の向きと周上で同方向に位置させることも可能である。これにより、採血針12の穿刺時に、刃面26を皮膚とは反対側に向けて穿刺する際に、プロテクタ本体84が皮膚側に位置することがなく、皮膚に対する角度を小さくして採血針12を穿刺することができる。この結果、患者が痛みを感じたり、血管が損傷したりするおそれが低減され得る。
【0066】
その後、採血針12を患者に穿刺する。その際、針ハブ30およびホルダ部14の本体部44が透明の部材とされていることから、これらを通じてフラッシュバック観察部40により血液のフラッシュバックが確認され得る。なお、採血針12の基端側にはラバースリーブ42が被せられていることから、基端側の針先24からの血液の漏出が防止され得る。
【0067】
続いて、ホルダ部14の基端側開口部64に固着された空気透過性シート74を引き剥がしてホルダ部14から取り外し、採血管20を挿入して、採血針12に接続する。採血管20の構造は限定されるものではないが、本実施形態では、管本体114の先端開口部にゴム栓116が装着されて、減圧状態で密閉された構造とされている。そして、ホルダ部14の基端側開口部64から採血管20を挿入することにより、各保持爪部72が外周側に押し込まれるとともに、その復元反力によりホルダ部14の、特に保持爪部72により採血管20が保持されるようになっている。それと共に、採血針12の基端側の針先24がラバースリーブ42を介してゴム栓116に当接する。その後、更に採血管20を押し込むことにより、針先24がラバースリーブ42とゴム栓116を貫通して、管本体114内に挿入される。これにより、採血針12を通じて採血管20内に血液が採取される。
【0068】
そして、血液の採取後に、プロテクタ本体84を採血針12に接近する方向へ回動変位させる。すなわち、ホルダ部14とプロテクタ本体84との隙間112に手指を挿し入れて、プロテクタ本体84に回動方向の外力を及ぼすことにより、付勢アーム104における屈曲部110が伸長する方向(カラー部82とプロテクタ本体84とが離隔する方向)に弾性変形せしめられて、それと共に、付勢アーム104に湾曲する方向(カラー部82とプロテクタ本体84とが接近する方向)の力が及ぼされる。そして、プロテクタ本体84を更に回動変位させることにより、
図5に示すように、付勢アーム104の屈曲部110が湾曲または屈曲する状態に復元して、プロテクタ本体84が安定位置へと自動的に変位せしめられる。要するに、プロテクタ本体84の安定位置として、
図1,2に示される如き採血針12から離れる離隔位置と
図5に示される如き採血針12に近づく接近位置とが設定されており、これらのうちの何れかの安定位置が、付勢アーム104の弾性変形により選択され得るようになっている。
【0069】
なお、これら離隔位置と接近位置とは、プロテクタ本体84の回動方向で90度以上離れていることが好適であり、より好ましくは120度以上とされる。すなわち、離隔位置と接近位置とが回動方向で90度以上離れていることで、プロテクタ本体84が離隔位置にある場合には、採血針12の針先22がより確実に露出されて、穿刺操作の際に、プロテクタ本体84により穿刺部位が見えなくなるなどのおそれが低減され得る。また、プロテクタ本体84が接近位置にある場合には、プロテクタ本体84を採血針12により近づけることができることから、その後の採血針12の保護操作を行い易くすることができる。
【0070】
そして、接近位置に位置するプロテクタ本体84を採血針12に更に接近する方向(回動方向)に手指などで押圧することにより、
図6~
図11に示されるように、プロテクタ本体84を、採血針12を収容する収容位置に位置せしめる。これにより、採血針12が側方からプロテクタ本体84により覆われて、保護され得る。また、付勢アーム104の付勢力は、プロテクタ本体84が収容位置に至る前の位置で止まるように設計してもよい。このように構成した場合、使用者はプロテクタ本体84を手指などで押圧したり、机等の平らな面に押し当てる等して、プロテクタ本体84を、採血針12を収容する収容位置に位置せしめる。
【0071】
かかる収容状態は、採血針12が係止部96,96に係止されることで保持され得る。すなわち、採血針12または係止部96,96、或いはその両方が相互に当接することで弾性変形する一方、採血針12が係止部96,96の折り返された先端を乗り越えることで、採血針12または係止部96,96、或いはその両方が復元変形して、採血針12が係止部96,96に係止されるようになっている。これにより、プロテクタ本体84による採血針12の収容後に、プロテクタ本体84が採血針12から離隔する方向に回動変位して採血針12が再露出することが防止されている。
【0072】
なお、採血針12を側方から覆うためのプロテクタ本体84の回動方向の変位は、採血針12がプロテクタ本体84の溝底壁部86に当接することによっても制限され得るが、例えばプロテクタ本体84の長さ方向一方の端面がカラー部82の上端部に当たることや、外周筒部54に設けられた突出リブ62に当たることなどによって制限されてもよい。
【0073】
以上の如き構造とされた本実施形態の採血管ホルダ10において、本発明の特徴的な部分であるプロテクタ16のカラー部82について詳述すると、
図12に示される如き構造とされる。なお、
図12では、プロテクタ16におけるプロテクタ本体(84)と連結部(98)の図示を省略する。
【0074】
すなわち、本実施形態では、カラー部82において、ホルダ部14における外周筒部54への取付方向前方となる下方の内周角部には、面取り部118が設けられている。かかる面取り部118では、カラー部82の下端面が、全面に亘ってR面状に湾曲せしめられており、内周側に向かってカラー部82の軸方向寸法が次第に小さくなるようになっている。これにより、面取り部118の最小内径寸法が、カラー部82の内径寸法と等しくされており、未使用確認シール78を含む外周筒部54の外径寸法と等しいか僅かに大きくされている。換言すれば、面取り部118の全体に亘って、その内径寸法が、未使用確認シール78を含む外周筒部54の外径寸法以上とされている。なお、
図12に示される縦断面において、面取り部118を構成するR面の曲率中心は、当該面取り部118よりも上方に位置している。また、本実施形態では、かかる面取り部118が、周方向の全周に亘って連続して設けられている。なお、
図12では、カラー部82において特徴となる面取り部118を分かり易さのために誇張して示しており、必ずしも実際の形状や寸法などと一致するものではない。
【0075】
かかる形状とされたカラー部82を採用することにより、カラー部82を外周筒部54に対して外挿して取り付ける際に、カラー部82と外周筒部54との嵌合力を十分に得るために、カラー部82をより小径とする場合であっても、外周筒部54の外周面60に貼付された未使用確認シール(78)と擦られ易い内周角部をR面状とすることで、未使用確認シール(78)との接触が緩和されて、未使用確認シール(78)が損傷することが防止され得る。すなわち、本実施形態では、かかる面取り部118により、未使用確認シール(78)へのカラー部82の接触を緩和する接触緩和機構が構成されている。
【0076】
また、本実施形態では、外周筒部54の外周面60に、外周側に突出する突出リブ62が形成されている。かかる突出リブ62を設けることで、突出リブ62とカラー部82の抜け方向の端部である上端部とが係合して、カラー部82の上方への抜けが防止されている。すなわち、本実施形態では、ホルダ部14とカラー部82との間において、カラー部82の抜けを防止する抜止係合部が、突出リブ62を含んで構成されている。
【0077】
以上の如き構造とされた本実施形態の採血管ホルダ10によれば、初期状態において、採血針12がキャップ18で覆われている一方、基端側開口部64が空気透過性シート74で覆われていることから、ホルダ部14内の滅菌状態が安定して保持され得る。これにより、従来の採血管ホルダのように、ブリスターパックによる個別包装を行うことなく、そのままの状態で梱包容器中に収納することができる。なお、空気透過性シート74は、必ずしも必須の構成ではなく、空気透過性シート74を貼り付けない場合には、ブリスターパックによる個別包装を行う等して、梱包容器中に収納することができる。
【0078】
そして、かかる構造を採用することに伴い、採血管ホルダ10が未使用であるか否かを判別するための手段として、ホルダ部14の外周筒部54とキャップ18とに跨って貼付される未使用確認シール78が採用されている。この未使用確認シール78が切断されているかを目視で確認することにより、採血管ホルダ10が未使用であるか否かを判別することができる。かかる未使用確認シール78の採用下において、カラー部82の内周角部に面取り部118を設けることで、カラー部82を外周筒部54に組み付けるに際して、カラー部82と未使用確認シール78との接触が緩和されて、未使用確認シール78が損傷することが効果的に防止され得る。
【0079】
また、かかる面取り部118の採用下においても、外周筒部54の外周面60に突出リブ62を設けることで、突出リブ62とカラー部82の上端部分が係合して、外周筒部54からのカラー部82の抜けが効果的に防止され得る。
【0080】
次に、
図13には、本発明の第2の実施形態としての採血管ホルダ120が示されている。この採血管ホルダ120のプロテクタ(16)は、
図13に示されるカラー部122を含んで構成されている。なお、以下の実施形態において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。また、
図13においても、プロテクタ(16)におけるプロテクタ本体(84)や連結部(98)の図示を省略する。
【0081】
すなわち、本実施形態のカラー部122の内周面124には、内周側に突出する当接突条126が設けられている。この当接突条126は、略半円形断面をもって、カラー部122の軸方向略全長に亘って延びている。本実施形態では、カラー部122の内周面124において、3つの当接突条126,126,126が、周方向で略等間隔に形成されている。そして、本実施形態のカラー部122の内周面124における内径寸法は、外周筒部54の外周面60における外径寸法よりも大きくされている。これにより、カラー部122を外周筒部54に取り付けた際に、カラー部122の内周面124と外周筒部54の外周面60とが相互に当接することのないようにされている。一方、それぞれの当接突条126,126,126の内周端部となる頂部が、外周筒部54の外周面60に当接しており、かかる嵌合力により、外周筒部54に対してカラー部122が外挿状態で取り付けられるようになっている。
【0082】
なお、かかる当接突条126の、カラー部122の内周面124からの突出寸法B(
図13参照)は、何等限定されるものではなく、カラー部122がキャップ18の先端側から外挿されることを阻害せず、且つ外周筒部54に対してカラー部122が先端方向に動くことを防止するように構成されていればよい。尤も、
図13では、カラー部122において特徴となる当接突条126,126,126を分かり易さのために誇張して示しており、必ずしも実際の形状や寸法などと一致するものではない。
【0083】
ここにおいて、本実施形態の未使用確認シール78(
図13中に2点鎖線で図示)は、1/3周よりも短い周方向寸法とされており、隣り合う当接突条126,126の周方向間に位置している。換言すれば、これら当接突条126,126,126が、未使用確認シール78を周方向で外れた位置に設けられている。これにより、カラー部122を外周筒部54に取り付ける際に、当接突条126,126,126と未使用確認シール78との接触が回避(緩和)されることから、未使用確認シール78が損傷することが防止され得る。それ故、本実施形態では、未使用確認シール78への接触を緩和する接触緩和機構が、当接突条126,126,126により構成されている。特に、本実施形態では、未使用確認シール78への接触が完全に回避されることから、当接突条126の、カラー部122の内周面124からの突出寸法を大きくして、カラー部122の外周筒部54に対する嵌合力を大きく確保することも可能となる。
【0084】
また、本実施形態においても、外周筒部54の外周面60に突出リブ62が設けられていることから、突出リブ62と、カラー部122の特に当接突条126,126,126の上端部が当接することで、外周筒部54からのカラー部122の抜けが効果的に防止され得る。
【0085】
したがって、以上の如き構造とされた本実施形態の採血管ホルダ120においても、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0086】
次に、
図14には、本発明の第3の実施形態としての採血管ホルダ130が示されている。この採血管ホルダ130のプロテクタ(16)は、
図15に示されるカラー部132を含んで構成されている。また、
図14,15においても、プロテクタ(16)におけるプロテクタ本体(84)や連結部(98)の図示を省略する。
【0087】
すなわち、本実施形態のカラー部132では、基端側の内径寸法が先端側の内径寸法よりも大きくされており、カラー部132において、外周筒部54への取付方向前方側である基端側が大径部134、外周筒部54への取付方向後方側である先端側が小径部136とされている。そして、カラー部132の内周面138において、これら大径部134と小径部136とが、内径寸法が次第に変化する傾斜部140により接続されている。かかる傾斜部140は、周方向の全周に亘って連続して設けられている。特に、本実施形態では、傾斜部140の内周面が、先端側に向かって次第に内径寸法が小さくなる湾曲面142とされており、
図15に示される縦断面において、湾曲面142の曲率中心が、当該湾曲面142よりも上方に位置している。なお、
図15では、カラー部132において特徴となる傾斜部140および湾曲面142を分かり易さのために誇張して示しており、必ずしも実際の形状や寸法などと一致するものではない。また、
図15において、傾斜部140はカラー部132の先端部に位置しているが、傾斜部140の軸方向の位置や寸法は何等限定されたものではない。小径部136および/または傾斜部140の軸方向寸法を長くすることで、外周筒部54の外周面60と嵌合する面積が増加して、カラー部132と外周筒部54との嵌合固定をより強固にすることができる。
【0088】
かかる大径部134の内径寸法は、未使用確認シール(78)を含む外周筒部54の外径寸法よりも大きくされている。なお、小径部136の内径寸法は、何等限定されるものではなく、カラー部132をキャップ18の先端側から外挿することを阻害せず、且つ未使用確認シール(78)を含む外周筒部54の外径寸法以上且つカラー部132が外周筒部54に取り付けられた際に、カラー部132が先端方向に動くことを防止するように構成されていればよい。すなわち、本実施形態では、カラー部132の内周面138の全体に亘って、その内径寸法が、未使用確認シール(78)を含む外周筒部54の外径寸法以上とされている。
【0089】
また、本実施形態では、ホルダ部14の底壁部50において、外周筒部54よりも外周側には、上方に突出する嵌合筒部144が設けられている。この嵌合筒部144は、周方向の全周に亘って連続して設けられており、その軸方向寸法が、カラー部132の軸方向寸法よりも小さくされている。特に、本実施形態では、カラー部132の外周面145の基端部分における外径寸法と嵌合筒部144の内径寸法が略等しくされており、外周面145の基端部分と嵌合筒部144とが相互に嵌合することによってホルダ部14とカラー部132とが相互に固定されている。なお、本実施形態では、カラー部132の先端側が突出リブ62によって係止されることで、カラー部132の先端方向への抜けが防止されているが、かかる構成は必ずしも必須の構成ではなく、外周面145の基端部分と嵌合筒部144との嵌合、またはカラー部132の先端側と突出リブ62との係止との何れか一方によって、ホルダ部14とカラー部132とが固定されていてもよい。
【0090】
また、本実施形態の変形例として、
図16に示される採血管ホルダ130’のように、嵌合筒部144の内周面に、内周側に開口する係合凹部146を周方向の全周に亘って連続して設ける一方、カラー部132の外周面145における基端に、外周側に突出する係合凸部148を周方向の全周に亘って連続して設けてもよい。
【0091】
以上の如き構造とされたプロテクタ(16)のカラー部132が、ホルダ部14の外周筒部54に外挿状態で取り付けられることで、本実施形態の採血管ホルダ130が構成されている。かかるカラー部132の外周筒部54への取付けに際しては、カラー部132の基端側が、未使用確認シール(78)を含む外周筒部54の外径寸法よりも内径寸法が大きくされた大径部134とされていることから、未使用確認シール(78)への接触が回避される。また、仮に、カラー部132の先端側の小径部136が未使用確認シール(78)へ接触する場合でも、カラー部132の内周面138において、小径部136と大径部134とが湾曲面142により接続されている、即ち小径部136の内周角部が湾曲面142とされていることから、未使用確認シール(78)への接触が緩和される。したがって、本実施形態では、大径部134と小径部136と傾斜部140とを有する、カラー部132の内周面138により、未使用確認シール(78)への接触を緩和する接触緩和機構が構成されている。
【0092】
また、
図16に示される態様では、カラー部132の基端部分が、嵌合筒部144と外周筒部54との径方向間に挿し入れられて、係合凹部146と係合凸部148とが嵌合状態で係合されている。これにより、カラー部132の外周筒部54からの上方への抜けが防止されており、本態様では、外周筒部54の外周面60に設けられた突出リブ62に加えて、カラー部132の外周面145とホルダ部14の嵌合筒部144の内周面との間に設けられる、これら係合凹部146と係合凸部148により、抜止係合部が構成されている。
【0093】
したがって、以上の如き構造とされた本実施形態の採血管ホルダ130,130’においても、前記第1の実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0095】
たとえば、前記実施形態では、
図1などに示される製品出荷状態では、プロテクタ本体84が、ホルダ部14の基端のフランジ66における一方の大径部68aと周上で同方向(
図2中の右方)に位置していたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、
図17に示される採血管ホルダ150のように、プロテクタ本体84をホルダ部14の基端のフランジ66において小径部68b,68bの位置する方向(例えば
図17中の右方)に位置させてもよい。あるいは、プロテクタ本体84が、他方の大径部68aと周上で同方向に位置していてもよく、即ち未使用確認シール(78)が設けられる方向と同方向に位置していてもよい。
【0096】
また、前記実施形態では、ホルダ部14とプロテクタ16とを
図1,2に示す状態で組み付けて、そのままの状態、即ちプロテクタ本体84がホルダ部14に沿った状態で、例えば梱包容器中に梱包されて製品出荷状態とされていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、
図18に示される採血管ホルダ160のように、
図1,2に示されるよりもプロテクタ本体84が採血針12に接近する方向に回動変位せしめられた状態で梱包容器中に梱包されて製品出荷状態とされてもよい。
【0097】
なお、プロテクタにおけるプロテクタ本体や連結部の構造は、前記実施形態に記載のものに限定されるものではない。すなわち、例えばプロテクタ本体は、使用後の採血針を側方から覆い得るように、側方開口部が設けられていればよい。また、前記実施形態では、連結部98が、連結アーム102,102と付勢アーム104とから構成されていたが、付勢アームは必須なものではなく、プロテクタ本体を離隔位置から収容位置まで手動で移動させるようにしてもよい。
【0098】
さらに、前記実施形態では、ホルダ部14の先端部分が、内周筒部56と外周筒部54による二重筒構造とされて、内周筒部56に対して針ハブ30が取り付けられるとともに、外周筒部54に対してカラー部82,122,132が外挿状態で取り付けられるようになっていたが、かかる構造に限定されるものではない。すなわち、例えばホルダ部の先端部分は単筒構造とされてもよく、かかる筒部の内周側に針ハブが取り付けられるとともに、外周側にカラー部が外挿状態で取り付けられてもよい。すなわち、前記実施形態において、外周筒部54は必須なものではなく、内周筒部によりホルダ部の先端部分が構成されて、当該内周筒部にカラー部が外挿状態で取り付けられるようになっていてもよい。
【0099】
更にまた、前記第1の実施形態では、カラー部82において、周方向の全周に亘って面取り部118が設けられていたが、周上において、少なくとも未使用確認シールなどのシールが貼付される部分に設けられていればよい。
【0100】
同様に、前記第3の実施形態では、カラー部132において、大径部134や傾斜部140が周方向の全周に亘って設けられていたが、周上において、少なくとも未使用確認シールなどのシールが貼付される部分に設けられていればよい。
【0101】
尤も、未使用確認シールなどのシールは、前記実施形態に記載のように、周方向寸法が1/3周より短い態様に限定されるものではなく、例えば周方向の全周に亘って連続して設けられてもよいし、周方向の全周に亘って断続的に設けられてもよい。
【0102】
また、前記第2の実施形態では、3つの当接突条126,126,126が設けられていたが、未使用確認シールなどのシールの配設態様に応じて、数や周方向寸法などが変更、設定されてもよい。さらに、当接突条は、カラー部の軸方向全長に亘って連続して設けられる必要はなく、軸方向で部分的に設けられてもよい。更にまた、当接突条の断面形状は半円形状に限定されるものではなく、矩形状や多角形状など、各種形状が採用され得る。
【0103】
さらに、前記第1の実施形態では、カラー部82の内周角部が全体に亘ってR面状に面取りされて面取り部118が構成されており、同様に、前記第3の実施形態では、小径部136の内周角部が全体に亘ってR面状に面取りされて傾斜部140(湾曲面142)が構成されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、全体に亘ってC面状に面取りされてもよいし、C面状に面取りされた部分の内周角部をR面状に面取りするなどしてもよい。また、前記第3の実施形態では、傾斜部140を構成せずに、大径部134と小径部136とが径方向に広がる段差によって接続されていてもよい。
【0104】
更にまた、
図16に示される前記第3の実施形態の変形例では、突出リブ62に加えて、係合凹部146および係合凸部148により抜止係合部が構成されていたが、抜止係合部は、係合凹部および係合凸部のみによって構成されてもよい。すなわち、本発明において突出リブは必須なものではなく、前記第1,2の実施形態においても、突出リブに加えて、係合凹部および係合凸部が採用されて抜止係合部が構成されてもよいし、突出リブを設けることなく、係合凹部および係合凸部のみによって、抜止係合部が構成されてもよい。
【0105】
なお、
図16に示される前記第3の実施形態の変形例では、カラー部132に係合凸部148が設けられるとともに、ホルダ部14の嵌合筒部144に係合凹部146が設けられていたが、凹凸が逆に設けられてもよい。または、このように凹凸係合してカラー部の抜けを防止する抜止係合部が、外周筒部の外周面とカラー部の内周面との間に設けられてもよい。
【0106】
あるいは、カラー部の基端面において下方に突出すると共に突出先端が軸直角方向に屈曲する係止突起を設ける一方、ホルダ部の底壁部において軸方向に貫通する貫通孔を設けてもよい。かかる場合には、当該貫通孔に係止突起を挿通させて、底壁部に対して係止突起を係止させることで、ホルダ部からのカラー部の上方への抜けが防止され得る。すなわち、かかる場合には、これら係止突起と貫通孔により抜止係合部が構成される。
【0107】
また、前記実施形態では、突出リブ62が周方向の全周に亘って連続して設けられていたが、突出リブは、周方向で部分的に設けられていてもよい。同様に、
図16に示される前記第3の実施形態の変形例では、係合凹部146および係合凸部148が周方向の全周に亘って連続して設けられていたが、これら係合凹部および係合凸部は、周方向で部分的に設けられていてもよい。
【0108】
なお、前記第1~第3の実施形態では、カラー部82,122,132において、それぞれ別の接触緩和機構が採用されていたが、これらのうち2つまたは3つを相互に組み合わせて採用してもよい。すなわち、例えば、カラー部において、基端の内周角部を面取り部とする態様と、内周面に当接突条を設ける態様が同時に採用されてもよい。
【0109】
また、前記実施形態では、未使用確認シール78が、キャップ18とホルダ部14の外周筒部54とに跨って貼付されていたが、かかる態様に限定されるものではない。すなわち、未使用確認シールなどのシールは、キャップとホルダ部との何れか一方、要するにキャップのみに貼付されてもよいし、ホルダ部のみに貼付されてもよい。未使用確認シールがキャップとホルダ部との何れか一方に貼付される場合には、例えばキャップとホルダ部との何れか他方において未使用確認シールと対応する位置に目印などを設けて、これら未使用確認シールと目印が対応する位置にあるか否かを目視で確認することで、採血管ホルダが未使用か否かを判別することができる。また、未使用確認シールがキャップとホルダ部の両方に貼付される場合であっても、これらの間に跨って貼付される必要はなく、未使用確認シールにおいてキャップ部に貼付される部分とホルダ部に貼付される部分とが相互に離隔していてもよい。
【0110】
さらに、前記実施形態では、キャップ18とホルダ部14の外周筒部54とに跨って、採血管ホルダ10,120,130,130’,150,160が未使用であるか否かを確認するための未使用確認シール78が貼付されていたが、キャップおよび/またはホルダ部に貼付されるシールは、かかる未使用確認シールに限定されるものではない。すなわち、キャップとホルダ部との少なくとも一方に貼付されるシールは、例えば会社のロゴや製品番号などを記載したものであってもよい。
また、本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
(i) 先端側に採血針が装着された筒状のホルダ部の先端部分に対して、使用済の該採血針を覆うプロテクタがカラー部において外挿状態で取り付けられた採血管ホルダであって、前記ホルダ部には、前記採血針を覆う取外し可能なキャップが取り付けられている一方、該キャップと該ホルダ部との少なくとも一方に貼付されるシールを有しており、該ホルダ部の先端部分への前記カラー部の外挿による取り付けに際して該キャップと該ホルダ部との少なくとも一方に貼付された該シールへの該カラー部の接触を緩和する接触緩和機構が該カラー部に設けられている一方、該ホルダ部と該カラー部との間には、該カラー部の抜けを防止する抜止係合部が設けられていることを特徴とする採血管ホルダ、
(ii) 前記ホルダ部は、該ホルダ部の先端部分に設けられた外周筒部を有し、前記シールは、該外周筒部に貼付されており、前記接触緩和機構の内径は、該シールを含む該外周筒部の外径寸法以上の大きさである(i)に記載の採血管ホルダ、
(iii) 前記接触緩和機構として、前記カラー部の前記ホルダ部に対する取付方向前方側の内周面に設けられた大径部と、該大径部から取付方向後方側の小径部に向かって次第に内径が変化する傾斜部とを有する該カラー部の内周面が採用されている(i)又は(ii)に記載の採血管ホルダ、
(iv) 前記接触緩和機構として、前記カラー部の前記ホルダ部に対する取付方向前方側の内周角部に設けられた面取り部が採用されている(i)又は(ii)に記載の採血管ホルダ、
(v) 前記接触緩和機構として、前記カラー部の内周面において前記シールを周方向に外れた位置に設けられた当接突条が採用されている(i)に記載の採血管ホルダ、
(vi) 前記抜止係合部として、前記ホルダ部の先端部分の外周面に突設されて前記カラー部の抜け方向の端部に係合される係合突起が採用されている(i)~(v)の何れか一項に記載の採血管ホルダ、
(vii) 前記抜止係合部として、前記カラー部の外周面と前記ホルダ部との間に設けられて相互に凹凸係合する凹部および凸部が採用されている(i)~(vi)の何れか一項に記載の採血管ホルダ、
(viii) 前記シールは、前記採血管ホルダの未使用状態を確認できる未使用確認シールであって、前記キャップと前記ホルダ部との間に跨って貼付されて使用時の該キャップの取外しにより切断されるようになっている(i)~(vii)の何れか一項に記載の採血管ホルダ、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、カラー部に、シールへの接触を緩和する接触緩和機構を設けることで、シールの損傷を回避しつつ、カラー部をホルダ部の先端部分に取り付けることができる。それに加えて、ホルダ部とカラー部との間に、カラー部の抜けを防止する抜止係合部を設けることで、カラー部の抜けが防止され得るのである。すなわち、本態様の採血管ホルダでは、カラー部におけるホルダ部への十分な嵌合力を確保しつつシールの損傷を防止するという、相反する効果を両立して発揮するものであり、且つホルダ部からのカラー部の脱落も効果的に防止するものである。
上記(i)に記載の態様における接触緩和機構は、上記(ii)~(v)の何れかの態様をもって構成されることが好適である。
また、上記(i)に記載の態様における抜止係合部は、上記(vi)又は(vii)の態様をもって構成されることが好適である。
上記(viii)に記載の態様に従う構造とされた採血管ホルダによれば、未使用な状態にあるか否かを判別する手段として、キャップとホルダ部との間に跨って貼付される未使用確認シールを採用している。すなわち、ホルダ部からキャップを取り外すことで、未使用確認シールが切断されるようになっており、採血管ホルダの使用時に、未使用確認シールを目視で確認することで、採血管ホルダが未使用か否かを判別することができるようになっている。これにより、採血管ホルダが未使用な状態にあるか否かをより確実に判別することができる。
【符号の説明】
【0111】
10,120,130,130’,150,160:採血管ホルダ、12:採血針、14:ホルダ部、16:プロテクタ、18:キャップ、54:外周筒部(ホルダ部の先端部分)、60:ホルダ部の先端部分の外周面、62:突出リブ(係合突起、抜止係合部)、74:空気透過シート(蓋シート)、78:未使用確認シール(シール)、82,122,132:カラー部、100,145:カラー部の外周面、118:面取り部(接触緩和機構)、124:内周面、126:当接突条(接触緩和機構)、134:大径部、136:小径部、138:内周面(接触緩和機構)、140:傾斜部、146:係合凹部(抜止係合部)、148:係合凸部(抜止係合部)